性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律
この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律 | |
---|---|
日本の法令 | |
通称・略称 | 盗撮処罰法[1][2] |
法令番号 | 令和5年法律第67号 |
種類 | 刑法 |
効力 | 現行法 |
成立 | 2023年6月16日 |
公布 | 2023年6月23日 |
施行 | 2023年7月13日 |
所管 | 法務省[刑事局] |
主な内容 | 盗撮行為の禁止など |
関連法令 | 刑法、軽犯罪法、迷惑防止条例、児童買春・ポルノ禁止法 |
条文リンク | 性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律 - e-Gov法令検索 |
性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(せいてきなしたいをさつえいするこういとうのしょばつおよびおうしゅうぶつにきろくされたせいてきなしたいのえいぞうにかかるでんじてききろくのしょうきょとうにかんするほうりつ、令和5年法律第67号)は、性的な部位の撮影や下着などの肌着への盗撮行為、拡散行為等に対する刑罰、撮影データの没収・消去を定めた日本の法律。
略して、性的姿態撮影等処罰法や盗撮処罰法とも称される。
主務官庁
[編集]概要
[編集]2023年(令和5年)6月16日に国会で可決・成立した本法(盗撮処罰法)は、性的な部位や下着の盗撮行為および撮影データの提供・保管(性的姿態撮影罪、撮影罪)を処罰し、撮影データの没収・消去をすることによって、性的な姿態を撮影する行為等による被害の発生及び拡大を防止することを目的として制定された法律である。盗撮行為や撮影データの提供は3年以下の拘禁刑[注釈 1]または300万円以下の罰金、不特定多数への提供は5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金または併科、保管は2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金が科される[3][4]。
本法では、盗撮行為のほか、暴行・脅迫などによって性的姿態等を撮影する行為や対象者を騙して性的姿態等を撮影する行為も処罰の対象とされている。性的姿態等撮影罪の法定刑は、迷惑防止条例の盗撮処罰規定に比べて大幅に加重されているため、緊急逮捕も可能である[2][5]。
刑法に盗撮罪の規定はなく、捜査機関は迷惑防止条例や軽犯罪法、児童買春・ポルノ禁止法などを適用していたが、迷惑防止条例は自治体によって処罰の対象となる盗撮行為や罰則が異なっていた[6]。迷惑防止条例の場合、公共の場所や公共の乗り物で発生した盗撮のみを処罰の対象としていたことから、私有地である自宅や会社等の更衣室、タクシー内での盗撮被害などが含まれない自治体も存在した。たとえ、迷惑防止条例が適用される場所であっても盗撮を目的にカメラを設置しただけでは罪に問えない自治体も存在した[7]。また、航空機内での盗撮行為に関しても高速で移動する機内ではどの都道府県の上空で盗撮が行われたのかを立証する必要があり、迷惑防止条例の適用が困難であったが[8]、盗撮等処罰法は全国一律で適用されるため、どの都道府県で盗撮が行われたのか立証できない場合でも盗撮を行ったことが証拠上明らかであれば処罰が可能となる[2]。
これまでは捜査機関が被疑者に対し、スマートフォンなどに保存された撮影データを任意で削除するよう求めていたが、本法の制定により検察官の判断で撮影データを一括して削除する措置を取ることが可能となった[9]。児童買春・児童ポルノ禁止法違反やリベンジポルノ被害防止法に基づいて画像を押収しても有罪認定された犯罪事実に関する画像以外は、被疑者側の要請に応じて返却せざるをえなかったが、本法が制定されたことで、検察が捜査の過程で押収した性的画像を不起訴でも廃棄・消去することが可能となった[10]。
構成
[編集]- 第一章 総則(第一条)
- 第二章 性的な姿態を撮影する行為等の処罰(第二条―第七条)
- 第三章 性的な姿態を撮影する行為により生じた物を複写した物等の没収(第八条)
- 第四章 押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等
- 第一節 通則(第九条)
- 第二節 消去等の措置(第十条・第十一条)
- 第三節 消去等の手続(第十二条―第二十一条)
- 第四節 消去等の実施(第二十二条-第二十五条)
- 第五節 不服申立て等(第二十六条-第三十四条)
- 第六節 消去等に係る裁判手続の特例(第三十五条―第三十八条)
- 第七節 雑則(第三十九条―第四十二条)
- 第八節 罰則(第四十三条―第四十五条)
- 附則
適用例
[編集]非拡散約束撮影物の他者提供や拡散行為
[編集]2023年8月8日、10代の知人女性を「俺しか見ないから」などと騙して、性的動画を撮影した男が逮捕された[11][12]。逮捕された男は他者へ提供しようとしていたと報道された。
性的姿態物脅迫
[編集]2023年7月20日、顔見知りの20代の女性に、反社会的勢力との繋がりをほのめかして「家に押しかける」などと脅迫し、現金60万円と裸の画像を撮影して送るよう要求した男が逮捕された[13]。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 刑の種類の名称として「拘禁」ではなく「拘禁刑」である。2025年までに施行される刑法の改正までは、懲役になる。
出典
[編集]- ^ “撮影罪”で福岡県警が初の逮捕発表 九州朝日放送
- ^ a b c 盗撮をすると逮捕される可能性あり|成立する犯罪・罰則・刑事手続きの流れなどを解説|法律相談ナビ
- ^ “ANA西嶋氏「盗撮には毅然と対処」。性的姿態撮影罪の施行を前に定航協が啓発ポスター 撮影罪は明日13日施行”. トラベル Watch
- ^ “機内の盗撮許すな 撮影罪が7/13施行、ANAらポスター掲出”
- ^ 性的姿態撮影罪とは何か | 元検事の弁護士へのご相談なら
- ^ “「盗撮」罪の新設 厳罰化だけではなく”. 中日新聞
- ^ “47都道府県別 「迷惑防止条例」と盗撮 罰則となる行為や場所 <2022年9月30日版> - 性暴力を考える”. NHK みんなでプラス
- ^ “客室乗務員の7割「盗撮被害」訴え、「撮影罪」施行は10年越し悲願”. 日経ビジネス電子版
- ^ “「盗撮」取り締まり新法で何が変わる? 解消される問題と、画期的な追加規定”. 日刊ゲンダイDIGITAL
- ^ “性的盗撮に「撮影罪」…性犯罪規定見直し、強制性交罪などの成立要件拡大も”. 読売新聞
- ^ “10代女性の性的な動画を撮影した疑い 八戸市立市民病院職員を逮捕”. ABCニュース. 2023年8月25日閲覧。
- ^ “10代の女性の性的な動画を撮影した23歳の地方公務員の男を逮捕”. TBS NEWS DIG (2023年8月9日). 2023年8月25日閲覧。
- ^ “裸の画像と現金要求 「性的姿態等撮影の疑い」男を逮捕 青森県内初”. TBS NEWS DIG (2023年7月20日). 2023年8月9日閲覧。