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「霊仙山」の版間の差分

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{{Infobox 山
{{Infobox 山
|名称=霊仙山
|名称=霊仙山
|画像=[[画像:Ryozensan 2008-12-8.jpg|300px]]<br/>西南尾根から望む霊仙山
|画像=[[File:Mount Ryozen and Mount Kojin from Oki island.jpg|300px]]
|画像キャプション = 霊仙山を西南西の[[沖島 (琵琶湖)|沖島]]から望む<br />手前は[[荒神山 (滋賀県)|荒神山]]
|標高=1,083<small>.45</small>
|標高=1,094<ref name="kokudo">{{Cite web|和書|url=https://www.gsi.go.jp/kihonjohochousa/kihonjohochousa41139.html |title=日本の主な山岳標高 |publisher=[[国土地理院]] |accessdate=2011-03-21}}</ref><ref name="新日本山岳誌 (2005)、1237-1238頁">[[#新日本山岳誌|新日本山岳誌 (2005)、1237-1238頁]]</ref>
|座標={{ウィキ座標2段度分秒|35|16|50|N|136|22|36|E}}
|座標={{ウィキ座標2段度分秒|35|16|45|N|136|22|53|E}}{{r|kokudo}}
|所在地=[[滋賀県]][[犬上郡]][[多賀町]]、<br />[[米原市]]
|所在地={{JPN}}<br />[[滋賀県]][[犬上郡]][[多賀町]]、[[米原市]]<br />[[岐阜県]][[大垣市]][[上石津町]]、[[不破郡]][[関ケ原町]]
|山系=[[鈴鹿山脈]]
|山系=[[鈴鹿山脈]]
|種類=堆積岩([[石灰岩]])
|種類=[[堆積岩]]([[石灰岩]]){{r|新日本山岳誌 (2005)、1237-1238頁}}<ref name="jiten">{{Cite book|和書 |editor=徳山球雄 |date=1992-10-15 |edition=第9版 |title=コンサイス日本山名辞典 |publisher=[[三省堂]] |isbn=4-385-15403-1 |page=551}}</ref>
|地図 = {{Embedmap|136.37675|35.280427|300}}{{日本の位置情報|35|16|50|136|22|36|霊仙岳|35.280427,136.37675|霊仙岳}}
|地図 = {{Location map|Japan Mapplot|coordinates={{Coord|35.279167|136.381389}}|caption=|width=300}}霊仙山の位置{{日本の位置情報|35|16|45|136|22|53|霊仙山|35.279167,136.381389|霊仙山|nocoord=Yes}}
}}
}}


'''霊仙山'''(りょうぜんん、りょうぜんやま)は、[[滋賀県]]の[[犬上郡]][[多賀町]]と[[米原市]]にまたがる[[鈴鹿山脈|鈴鹿山系]]の最北に位置する[[高さ#地理|標高]]1,083[[メートル|m]]の[[山]]。山頂に[[三角点|二等三角点]]があり、この南東に最高点(1,094m、[[地形図]]には1,094表記してあり、本よって1,098mの記載る<ref>*『名古屋周辺の山200』[[山と渓谷社]]、ISBN 4-635-18022-0、P334</ref>。)があり、北西には北霊仙山と呼ばる経塚山のる。
'''霊仙山'''(りょうぜんん、りょうぜんやま)は、[[滋賀県]]の[[犬上郡]][[多賀町]]と[[米原市]]にまたがる[[鈴鹿山脈]]の最北に位置する[[高さ#地理|標高]]1,094 [[メートル|m]]の[[山]]。山の東山腹は[[岐阜県]][[大垣市]][[上石津町]]と[[不破郡]][[関ケ原町]]に属する。北側には[[伊吹山]]対峙してい。『[[花の百名山]]』<ref name="Tabaka">{{Cite book|和書 |author=田中澄江|authorlink=田中澄江 |year=1997 |month=05 |title=花百名 |publisher=[[文藝春秋]] |edition=愛蔵版 |isbn=4-16-352790-7 |pages=327-330}}</ref>として花の多いであるこが知らていて<ref name="花の旅 (2001)、80-83頁">[[#花山旅|花の山旅 (2001)、80-83頁]]</ref>、シズン中は多くの登山者訪れる。


== 由来・歴史 ==
== 由来・歴史 ==
正式な読みは「りょうぜんん」であるが、「りょうぜんやま」と読まれたり、「'''霊仙'''」と略称されることも多い。
正式な読みは「りょうぜんん」であるが{{r|新日本山岳誌 (2005)、1237-1238頁|jiten}}、「りょうぜんやま」と読まれたり、「'''霊仙'''」と略称されることも多い。


[[近江国]][[坂田郡]](現・米原市)を根拠地とする地方[[豪族]]・[[息長氏]]の出身とも伝えられる[[平安時代]]前期の[[法相宗]]の[[僧]]であり、日本で唯一の[[三蔵法師]]である[[霊仙]]を、[[エポニム|名祖(なおや)]]とする。「霊仙三蔵堂」が麓の[[醒井養鱒場]]の脇に建立されている<ref name="鈴鹿の山万能ガイド (2006)、34-35頁">[[#鈴鹿の山万能ガイド|鈴鹿の山万能ガイド (2006)、34-35頁]]</ref>。[[明治]]以前には「霊山」と呼ばれていて、祖先の霊が籠る山であることが山名の由来であるとする説もある{{r|新日本山岳誌 (2005)、1237-1238頁}}。[[奈良時代]]に山頂に「霊仙寺」が建立されたと伝えられているが、現在はその痕跡は見られない{{r|滋賀県の山 (2000)、88-89頁}}。榑ヶ畑コースの登山口付近には、[[第二次世界大戦]]には約50戸、160人の榑ヶ畑集落があったが、1957年(昭和32年)に[[廃村]]となった{{r|滋賀県の山 (2000)、88-89頁}}。現在は緩やかな山の斜面に民家の石垣が残され、[[ユキノシタ]]が見られる<ref name="花の山旅 (2001)、54-58頁">[[#花の山旅|花の山旅 (2001)、54-58頁]]</ref>。経塚山(北霊仙山)に[[役小角]]の修行所があり、宣教大師が山麓に7つの寺院を建立したと伝えられていて、[[松尾寺 (米原市)|松尾寺]]がその一つである<ref name="鈴鹿を歩く (1995)、32-35頁">[[#鈴鹿を歩く|鈴鹿を歩く (1995)、32-35頁]]</ref>。
[[近江国]][[坂田郡]](現・米原市)を根拠地とする地方[[豪族]]・[[息長氏]]の出身とも伝えられる[[平安時代]]前期の[[法相宗]]の[[僧]]であり、日本で唯一の[[三蔵法師]]である[[霊仙]]を、[[エポニム|名祖(なおや)]]とする。
*[[672年]]([[白鳳]]元年)と[[704年]]([[慶雲]]元年)と2度に渡り、山頂に'''霊仙寺'''が建立され、そこで研いだ米の水が溜まって山頂の北側にある「お虎ヶ池」となり、それが流れ出して「漆ヶ滝」ができたという伝説がある<ref>『コンサイス 日本山名事典』[[三省堂]]、ISBN 4-385-15403-1</ref>。
*[[1950年]]([[昭和]]25年)に、[[琵琶湖国定公園]]の特別地区に編入される。
*[[1968年]](昭和43年)に、[[鈴鹿国定公園]]に指定される。
*[[1998年]]([[平成]]10年)に、[[台風]]で霊仙山の山頂北東の[[避難小屋]]が倒壊した。
*[[2003年]](平成15年)に、霊仙山の山頂北東の避難小屋が再建された。


*[[672年]]([[白鳳]]元年) - [[704年]]([[慶雲]]元年)と2度に渡り、山頂に'''霊仙寺'''が建立され、そこで研いだ米の水が溜まって山頂の北側にある「お虎ヶ池」となり、それが流れ出して「漆ヶ滝」ができたという伝説がある{{r|jiten}}。
== 特徴 ==
*[[1950年]]([[昭和]]25年) - [[琵琶湖国定公園]]の特別地区に編入される。
鈴鹿山脈の最北端にあたる。多賀町の北東部に位置している山頂からは[[近江盆地]]と[[琵琶湖]]が一望できる。
*[[1998年]]([[平成]]10年)- [[台風]]で霊仙山の山頂北東の[[山小屋#日本の無人小屋、避難小屋|避難小屋]]が倒壊した。
*[[2003年]](平成15年) - 霊仙山の山頂北東の避難小屋が再建された。


== 自然環境 ==
[[スキー場]]などの大規模[[開発#自然開発|開発]]がほとんど行われていないため、豊かな自然が残っている。比較的登りやすいなだらかな山であり、[[登山道]]も整備されているため、登山初心者を始め登山客に人気が高い。春には西南尾根に[[フクジュソウ]](福寿草)の[[群生|群落]]が見られ、夏から秋には山頂一帯に[[トリカブト]]が多く咲き、[[花の百名山]]<ref>[[田中澄江]]の著書『花の百名山』([[文春文庫]]、ISBN 4-16-352790-7)</ref>及び[[関西百名山]]<ref>『関西百名山地図帳』山と溪谷社、ISBN 978-4-635-53057-6</ref>に選定されている。登山道の下部では、春先に[[ミスミソウ]]や[[スミレ]]などが見られる。山頂部は[[石灰岩]]が露出する[[カルスト台地]]となっている。夏場や湿度の高い時期には[[ヒル (動物)|山ヒル]]が多い地域があるため、事前の情報収集やヒル対策が必要である<ref>[http://www.city.maibara.lg.jp/index.php?oid=2324&dtype=1000&pid=312 米原市HP(霊仙山)]</ref>。冬には、日本海側からの[[季節風]]の影響を受け、[[雪雲]]が流れ込み易く、山頂部は1mを越える積雪となることが多い。
山体は[[石灰岩]]からなり、なだらかな山の上部にはカレンフェルトや[[ドリーネ]]などの[[カルスト地形]]が見られ<ref name="滋賀県の山 (2000)、88-89頁">[[#滋賀県の山|滋賀県の山 (2000)、88-89頁]]</ref>、「近江カルスト」の一角をなしている<ref name="shiga">{{Cite web|和書|url=http://www.pref.shiga.jp/d/shizenkankyo/furusato/field/07.html |title=霊仙山~カルスト地帯特有の景観や生き物の観察~ |publisher=滋賀県 |accessdate=2012-01-06}}</ref>。山頂部には窪みが多数あり、「お虎ヶ池」はドリーネにたまった池とみられている。南西の山麓には[[河内風穴]]の[[鍾乳洞]]がある。多賀町の北東部に位置している山頂からは[[近江盆地]]と[[琵琶湖]]が一望できる。
[[ファイル:Ryozensan 2008-12-8.jpg|thumb|200px|南西尾根の近江展望台から望む霊仙山の頂上部、[[石灰岩]]が散乱する稜線で、[[フクジュソウ]]や[[ヤマシャクヤク]]の群生地がある。]]


[[スキー場]]などの大規模[[開発#自然開発|開発]]がほとんど行われていないため、豊かな自然が残っている。比較的登りやすいなだらかな山であり、[[登山道]]も整備されているため、登山初心者を始め登山客に人気が高い。山頂部にあるお虎ヶ池には霊仙[[神社]]がある。冬には、日本海側の[[若狭湾]]方面からの[[季節風]]の影響を受け[[雪雲]]が流れ込み易く{{r|新日本山岳誌 (2005)、1237-1238頁}}、山頂部は1 mを越える積雪となることが多い。
=== 周辺の動植物 ===
=== 動物 ===
山中には、[[アズマヒキガエル]]、[[ニホンジカ]]、[[ニホンリス]]、[[アカゲラ]]、[[イヌワシ]]などが生息している{{r|shiga}}。夏場や湿度の高い時期には[[ヤマビル]]が多い地域であるため<ref name="花の山旅 (2001)、55頁">[[#花の山旅|花の山旅 (2001)、55頁]]</ref>、事前の情報収集やヒル対策が必要である<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.city.maibara.lg.jp/index.php?oid=2324&dtype=1000&pid=312 |title=霊仙山 |publisher=[[米原市]]観光ナビ |accessdate=2011-03-21}}</ref>。登山道では花を吸蜜する[[ウスバシロチョウ]]、[[キアゲハ]]、[[スジグロシロチョウ]]などが見られる。山頂直下にある「お虎ヶ池」では、[[アキアカネ]]や[[オニヤンマ]]が見られる<ref name="名古屋周辺の山 (2010)、334-335頁">[[#名古屋周辺の山|名古屋周辺の山 (2010)、334-335頁]]</ref>。
{| class="wikitable"
{| class="wikitable"
|-
|-
! [[ニホンジカ]] !! [[ヒル (動物)|山ヒル]] !! [[フクジュソ]] !! [[ミミソウ]] !! [[トリブト]]!! [[ヤマツツジ]]
! [[ニホンジカ]] !! [[ヤマビル]] !! [[ウスバシロチョウ]] !! [[アキア]]
|-
|-
|[[File:Cervus nippon Nagoya castle 2010-10-3.JPG|100px]]
|[[ファイル:Cervus nippon Nagoya castle 2010-10-3.JPG|x110px]]
|[[ファイル:Haemadipsa zeylanica japonica in Mount Nogohaku 2011-06-12.jpg|x110px]]
|[[File:Sydney leech.jpg|100px]]
|[[ファイル:Parnassius glacialis in Mount Ryozen 2011-06-04.jpg|x110px]]
|[[File:Adonis ramosa Ryozensan 2009-3-16.jpg|100px]]
|[[ファイル:Sympetrum frequens.jpg|x110px]]
|[[File:Anemone hepatica Ryozensan 2009-3-16.jpg|100px]]
|}
|[[File:Aconitum degeni ENBLA01.JPG|100px]]
=== 植物 ===
|[[File:Rhododendron kaempferi var. kaempferi 、ヤマツツジ4256409.JPG|100px]]
山頂部には[[カエデ属]]の[[オオイタヤメイゲツ]]、[[クマザサ]]や[[ススキ]]などが分布している{{r|shiga}}。中腹下部では炭焼きに利用されていた[[ブナ]]などの[[広葉樹林]]の二次林があり、下部一帯は[[スギ]]の植林地となっている{{r|新日本山岳誌 (2005)、1237-1238頁}}。[[田中澄江]]により『花の百名山』に選定されていて、その著書で代表する花として「ヒロハノアマナ」が紹介された{{r|Tabaka}}。春には石灰岩質の西南尾根に[[フクジュソウ]](福寿草)の群落や[[ニリンソウ]]、[[ベンケイソウ科]]の[[ヒメレンゲ]]、[[ヤマシャクヤク]]などが見られ、夏から秋には山頂一帯に[[アザミ|イブキアザミ]]、[[イブキトラノオ]]、[[トリカブト]]や[[リュウノウギク]]、[[リンドウ]]などが咲き{{r|花の山旅 (2001)、80-83頁}}<ref name="花の百名山地図帳|花の百名山地図帳 (2007)、200-201頁" />。山頂部直下北側にあるお虎ヶ池では[[ヒルムシロ]]が見られる<ref name="花の百名山地図帳|花の百名山地図帳 (2007)、200-201頁">[[#花の百名山地図帳|花の百名山地図帳 (2007)、200-201頁]]</ref>。登山道の周辺では、春から初夏にかけて[[アカモノ]]、[[イチリンソウ]]、[[エビネ]]、[[キツリフネ]]、[[サワギク]]、[[スミレ]]、[[チゴユリ]]、[[バイケイソウ]]、[[ハシリドコロ]]、[[ヒトリシズカ]]、[[ヒロハノアマナ]]、[[フウロソウ属]]の[[ヒメフウロ]]、[[ホウチャクソウ]]、[[ミスミソウ]]などの花も見られる{{r|花の山旅 (2001)、80-83頁|鈴鹿を歩く (1995)、32-35頁|shiga}}<ref name="鈴鹿・大峰・大台ヶ原 (2004)、36-39頁">[[#鈴鹿・大峰・大台ヶ原|鈴鹿・大峰・大台ヶ原 (2004)、36-39頁]]</ref>。
{| class="wikitable"
|-
! [[フクジュソウ]] !! [[ミスミソウ]] !! [[トリカブト]]!! [[ヤマツツジ]]
|-
|[[ファイル:Adonis ramosa Ryozensan 2009-3-16.jpg|x100px]]
|[[ファイル:Hepatica asiatica, Ryozensan 2009-3-16.jpg|x100px]]
|[[ファイル:Aconitum degeni ENBLA01.JPG|x100px]]
|[[ファイル:Rhododendron kaempferi var. kaempferi 、ヤマツツジ4256409.JPG|x100px]]
|}
|}


== 登山 ==
== 登山 ==
[[登山家]]の[[内田嘉弘]]は1957年に霊仙山へ登ったことがきっかけとなり、その道に進んだ。花の百名山、[[ぎふ百山]]<ref>{{Cite book|和書 |author=岐阜県山岳連盟 |year=1987 |month=7 |title=ぎふ百山 |publisher=[[岐阜新聞社]] |pages= |isbn=4905958474}}</ref>、[[関西百名山]]<ref>{{Cite book|和書 |editor=山と溪谷社 |date=2010-02-25 |title=関西百名山地図帳 |publisher=[[山と渓谷|山と溪谷社]] |isbn=978-4-635-53057-6 |pages=24-25}}</ref>に選定されている。
==== 登山コース ====
=== 登山コース ===
* 樽ヶ畑コース - 醒ヶ井養鱒場の林道の先の[[廃村]]となった樽ヶ畑が登山口<ref>『改訂新版 名古屋周辺の山』山と渓谷社、ISBN 978-4-635-18017-7
[[ファイル:Otoragaike and Ryozen shrine.jpg|thumb|200px|榑ヶ畑コースの[[登山道]]にある「お虎ヶ池」と霊仙神社]]
</ref>。汗拭峠からお虎ヶ池への西尾根を経て、経塚山から回り込むコース。霊仙山への最短コース。
各方面からの以下の[[登山道]]がある<ref name="山と高原地図 (2011)、地図表面">[[#山と高原地図|山と高原地図 (2011)、地図表面]]</ref>。登山道は地元の住人らにより整備されている。山頂部は高い樹木が生育できず、石灰岩が点在し360度の良好な展望がある{{r|鈴鹿を歩く (1995)、32-35頁}}。榑ヶ畑コースが最短のコースで、よく利用されている。
* 谷山谷コース - 上丹生集落の先の[[天野川 (滋賀県) |天野川]]の[[支流]]の丹生川に沿ったコースで、途中に漆ヶ滝がある。谷山との鞍部で柏原からのコースに合流し、山頂避難小屋と経塚山を経て山頂に至る。途中に山腹を巻く枝道がある。
* 榑ヶ畑コース - 醒ヶ井養鱒場の林道の先の廃村となった榑ヶ畑が登山口から、山小屋かなや、二合目の汗拭き峠、五合目の近江見晴らし台、お猿岩、お虎ヶ池と霊仙神社、経塚山を経て山頂に至るコースである{{r|滋賀県の山 (2000)、88-89頁|花の山旅 (2001)、54-58頁|鈴鹿を歩く (1995)、32-35頁|名古屋周辺の山 (2010)、334-335頁}}<ref name="鈴鹿の山万能ガイド (2006)、36-37頁">[[#鈴鹿の山万能ガイド|鈴鹿の山万能ガイド (2006)、36-37頁]]</ref><ref name="地図で歩く鈴鹿の山 (2003)、138-139頁">[[#地図で歩く鈴鹿の山|地図で歩く鈴鹿の山 (2003)、138-139頁]]</ref>。登山口に休憩所が設置されている。
* 今畑コース - 廃村となった今畑から笹峠を経て、西南尾根に沿った花の多いコース。近江展望台からは、琵琶湖などの展望が良い。
* 谷山谷コース - 上丹生集落の先の[[天野川 (滋賀県)|天野川]]の[[支流]]の丹生川に沿ったコースで、谷山谷沿いには屏風岩、コウモリ穴、くぐり岩、漆ヶ滝がある{{r|新日本山岳誌 (2005)、1237-1238頁|滋賀県の山 (2000)、88-89頁}}。谷山との鞍部で柏原からのコースに合流し、経塚山を経て山頂に至る{{r|花の山旅 (2001)、54-58頁}}<ref name="花の百名山地図帳|花の百名山地図帳 (2007)、200-201頁" /><ref name="地図で歩く鈴鹿の山 (2003)、136-137頁">[[#地図で歩く鈴鹿の山|地図で歩く鈴鹿の山 (2003)、136-137頁]]</ref>。途中に山腹を巻く枝道がある。
* 柏原コース - [[東海旅客鉄道|JR東海]]の[[東海道線 (名古屋地区)|東海道本線]][[柏原駅 (滋賀県)|柏原駅]]からの北東の尾根に沿ったコースで、四合目と経塚山手前に[[避難小屋]]がある。
* 今畑コース - 廃村となった今畑から宗金寺、笹峠、近江展望台、南霊山を経て最高点の至る西南尾根に沿ったフクジュソウなどの花の多いコース{{r|鈴鹿・大峰・大台ヶ原 (2004)、36-39頁}}。近江展望台からは琵琶湖などの展望が良い{{r|鈴鹿の山万能ガイド (2006)、36-37頁}}<ref name="地図で歩く鈴鹿の山 (2003)、138-141頁">[[#地図で歩く鈴鹿の山|地図で歩く鈴鹿の山 (2003)、138-141頁]]</ref>。
* 柏原コース - [[東海旅客鉄道|JR東海]]の[[東海道線 (名古屋地区)|東海道本線]][[柏原駅 (滋賀県)|柏原駅]]からの北東の尾根に沿ったコースで、四合目と経塚山手前に避難小屋がある。谷山(標高993 m)の北側斜面を巻き、山頂避難小屋と経塚山を経て山頂に至る{{r|鈴鹿の山万能ガイド (2006)、34-35頁}}。
* 梓河内コース - 天野川の支流の梓川に沿った梓河内の集落からの北側の尾根に沿ったコースで、柏原からのコースの七合目で合流する。
* 梓河内コース - 天野川の支流の梓川に沿った梓河内の集落からの北側の尾根に沿ったコースで、柏原からのコースの七合目で合流する。
他にバリエーションルートがある<ref>『地図で歩く 鈴鹿の山[[中日新聞社]]、ISBN 4-8062-0464-1</ref>。
他にバリエーションルートがある<ref name="地図で歩く鈴鹿の山 (2003)、131-141頁">[[#地図で歩く鈴鹿の山|地図で歩く鈴鹿の山 (2003)、131-141頁]]</ref>。


==== 周辺の山小屋 ====
=== 周辺の山小屋 ===
登山道にある[[山小屋]]を下表に示す<ref>{{Cite book|和書 |date=2010-12-15 |title=山と溪谷2011年1月号付録(山の便利手帳2011) |publisher=山と溪谷社 |page=178 |asin=B004DPEH6G}}</ref>。「かなや」のみが有人の小屋で[[キャンプ場]]が併設されていて、他は無人の避難小屋である。山小屋かなやの横には、[[大阪府立今宮工科高等学校]]の私有の山小屋がある。
* かなや - 樽ヶ畑コースの一合目付近の有人の[[山小屋]]で、[[キャンプ場]]がある。
{| class="wikitable"
* 四合目避難小屋 - 柏原コースに[[コンテナ]]を利用した避難小屋がある。
|-
* 山頂避難小屋 - 経塚山から[[東北東]]側に300m程の標高1,019mの位置に避難小屋がある。土間と板間があり、[[伊吹山]]の展望が良い。
!画像
!名称
!所在地
![[標高]]<br />([[メートル|m]])
!霊仙山からの<br />方角と[[距離]] ([[キロメートル|km]])
!収容<br />人数
!備考
|-
|[[ファイル:Mountain Hut in Mount Ryozen.JPG|80px]]
|'''山頂避難小屋'''
|経塚山頂上直下北東
|style="text-align:right;"|1,017
|{{direction|NE}}北東 0.8
|style="text-align:right;"|10
|土間と板間があり<br />[[伊吹山]]の展望が良い
|-
|[[ファイル:Kanaya in Mount Ryozen.jpg|80px]]
|'''かなや'''
|汗拭峠直下北西
|style="text-align:right;"|430
|{{direction|W}}西 1.6
|style="text-align:right;"|30
|[[キャンプ場]]併設<br />テント5張
|-
|[[ファイル:Shelter in Mount Ryozen 4th.JPG|80px]]
|'''四合目避難小屋'''
|柏原コース四合目
|style="text-align:right;"|750
|{{direction|NE}}北東 3.3
|style="text-align:right;"|数人
|[[コンテナハウス|コンテナボックス]]<br />緊急避難用
|}

== ギャラリー ==
<gallery>
File:汗拭き峠(霊仙山).jpg|汗拭き峠
File:霊仙山のカレンフェルトと琵琶湖.jpg|カレンフェルトと琵琶湖
File:霊仙山山頂.jpg|霊仙山山頂
File:霊仙山から御池岳と御在所岳.jpg|山頂から御池岳と御在所岳
File:霊仙山最高点から伊吹山.jpg|霊仙山最高点から伊吹山
File:伊吹山五合目からの霊仙山.jpg|伊吹山五合目からの霊仙山
</gallery>


== 地理 ==
== 地理 ==
==== 周辺の山 ====
=== 周辺の山 ===
[[ファイル:Ryouzenzan various 2008 12 8etc.jpg|thumb|260px|霊仙山周辺の景と]]
[[ファイル:Mount Ibuki from Mount Fujiwara.jpg|thumb|250px|[[藤原岳]]方面から望む[[鈴鹿脈]]北部の周辺の山、左上が霊仙山、遠は[[伊吹山]][[白山]]]]
鈴鹿山脈の最北端に位置し、その北側が[[近江盆地]]と[[濃尾平野]]の[[分水界|分水嶺]]となっている。その北側には[[伊吹山地]]があり、伊吹山が対峙している。最高点の北側のピークは「経塚山」(北霊仙山、標高1,040 m)と呼ばれている{{r|名古屋周辺の山 (2010)、334-335頁|鈴鹿を歩く (1995)、32-35頁}}<ref name="山と高原地図 (2011)、地図表面" />。最高点から北西約400 mには[[三角点|二等三角点]]があるピークがある<ref name="kijyun">{{Cite web|和書|url=https://sokuseikagis1.gsi.go.jp/top.html |title=基準点成果等閲覧サービス |publisher=国土地理院|accessdate=2011-03-21}}</ref>。
{| class="wikitable"
{| class="wikitable"
|-
|-
!山容
!山容
!名
!
![[標高]]<br>[[メートル|m]]
![[標高]]<br>([[メートル|m]]){{r|kokudo|kijyun}}
![[三角点]]
![[三角点]]等級<br />基準点名{{r|kijyun}}
!霊仙山の<br>距離[[キロメートル|km]]
!霊仙山からの<br />方角と[[距離]]([[キロメートル|km]])
!備考
!備考
|-
|-
|[[File:Ibukiyama from third point 2008-1-6.JPG|70px]]
|[[ファイル:Mount Ibuki from Mount Ryozen (2015-02-21 s2).JPG|80px]]
|[[伊吹山]]
|[[伊吹山]]
|1,377.<small>31</small>
|1,377.<small>31</small>
| 一等
| 一等<br />「伊吹山」
| 15.5
|{{direction|N}}北 15.5
|[[日本百名山]]
|<small>[[日本百名山]]</small><br />[[各都道府県の最高峰|滋賀県の最高峰]]
|- style="background-color:#ccc"
|- style="background-color:#ccc"
|[[ファイル:Mount Kyoduka from Mount Ryozen.jpg|80px]]
|[[File:Ryozensan 2008-12-8.jpg|70px]]
|[[霊仙山]]
|'''霊仙山'''
|1,094
|1,083.<small>45</small><ref>[http://sokuservice1.gsi.go.jp/datums/ 基準点成果等閲覧サービス]([[国土地理院]])</ref>
|(二等)「霊仙山」<br />(1,083.<small>45</small>)
| 二等
|{{direction|O}} 0
| 0
|[[花の百名山]]<br>[[関西百名山]]
|[[花の百名山]]<br>[[関西百名山]]
|-
|-
|[[ファイル:Oikedake from East 2009-2-15.jpg|70px]]
|[[ファイル:Mount Sonodo from Mount Eboshi.jpg|80px]]
|[[ソノド]]
| 926.<small>0</small>
| 三等<br />「ソノドヲ」
|{{direction|ESE}}東南東 3.2
|-
|[[ファイル:Mount Eboshi from Mount Mikuni.jpg|80px]]
|[[烏帽子岳 (鈴鹿山脈)|烏帽子岳]]
| 864.<small>73</small>
| 三等<br />「烏帽子岳」
|{{direction|SE}}南東 7.4
|
|-
|[[ファイル:Mikunidake from Chano 2009-12-1.jpg|80px]]
|[[三国岳 (岐阜県・三重県・滋賀県)|三国岳]]
| 894
|(三等)「阿惣」<br />(814.<small>97</small> m)
|{{direction|SSE}}南南東 7.8
|岐阜・三重・滋賀県境
|-
|[[ファイル:Mount Oike from Zudagahira 2011-02-19.jpg|80px]]
|[[御池岳]]
|[[御池岳]]
|1,247
|1,247
|
|
|{{direction|SSE}}南南東 11.8
| 11.8
|[[鈴鹿山脈]]の[[最高峰]]<br>[[カルスト台地]]
|[[鈴鹿山脈]]の[[最高峰]]
|-
|-
|[[File:Yorosan from the foot in mountain 2008 04 20.jpg|70px]]
|[[ファイル:Yorosan from the foot in mountain 2008 04 20.jpg|80px]]
|[[養老山 (岐阜県)|養老山]]
|[[養老山 (岐阜県)|養老山]]
| 859.<small>31</small>
| 859.<small>31</small>
| 一等
| 一等<br />「養老山」
|{{direction|E}}東 13.0
| 13.5
|[[養老山地]]
|[[養老山地]]
|-
|[[ファイル:Hujiwaradake from ninose 2 2010 5 15.jpg|70px]]
|[[藤原岳]]
|1,044
| 二等
| 15.2
|(標高未確定)
|}
|}


==== 源流の河川 ====
=== 源流の河川 ===
[[ファイル:Urushigataki in Mount Ryozen.jpg|thumb|150px|丹生川上流部の谷山谷の登山道脇に「漆ヶ滝」がある。上段と下段合わせて落差15 m程]]
*丹生、宗谷川([[天野川 (滋賀県) |天野川]]の[[支流]])
以下の源流となる[[河川]]は、琵琶湖及び[[伊勢湾]]へ流れる{{r|山と高原地図 (2011)、地図表面}}。
*大洞谷、権現谷([[芹川 (滋賀県)|芹川]]の支流)
* 丹生川、宗谷川([[天野川 (滋賀県)|天野川]]の[[支流]]) - 宗谷川の醒井峡谷には1878年(明治11年)に設立された日本最古の滋賀県営の大規模な醒井養鱒場がある{{r|滋賀県の山 (2000)、88-89頁}}。丹生川上流部の谷山谷の登山道脇に「漆ヶ滝」がある。上段と下段合わせて落差15 mほど{{r|滋賀県の山 (2000)、88-89頁}}。
*薮ヶ谷、幾里谷、今須川、梓川([[牧田川]]の支流)
* 大洞谷、権現谷([[芹川 (滋賀県)|芹川]]の支流)
* 薮ヶ谷、幾里谷、今須川、梓川([[木曽川]]水系[[牧田川]]の支流)


==== 交通・アクセス ====
=== 交通・アクセス ===
*最寄りの駅は、[[東海道線 (名古屋地区)|東海道本線]]の[[醒井駅]][[柏原駅 (滋賀県) |柏原駅]]ある。 
* [[東海旅客鉄道|JR東海]][[東海道線 (名古屋地区)|東海道本線]]の[[醒井駅]]が山頂の北北西6.0 [[キロメートル|km]]にあり、[[柏原駅 (滋賀県)|柏原駅]]が山頂の北北東7.5 kmにある。
*最寄りの[[インターチェンジ]]は、[[北陸自動車道]][[米原インターチェンジ]][[名神高速道路]][[関ヶ原インターチェンジ]]ある。 
* [[北陸自動車道]][[米原インターチェンジ]]が山頂の南西6.5kmにあり、[[名神高速道路]][[関ヶ原インターチェンジ]]が山頂の北東12.0 kmにある。
* 北山麓を[[東海道新幹線]]、東海道本線、名神高速道路、[[国道21号]]が通る。
* 西山麓を[[滋賀県道17号多賀醒井線]]が通る。
* 山腹には植林のための林道が敷設されている。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
117行目: 191行目:


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
* {{Cite book |和書 |author1=吉住友一 |author2=田中均 |author3=笠井道男 |author4=岩井好晃、山中保一 |date=1995-12-15 |title=鈴鹿を歩く |series=フルカラー特選ガイド |publisher=[[山と渓谷|山と溪谷社]] |isbn=978-4-63-517084-0 |ref=鈴鹿を歩く }}
*『鈴鹿の山 万能ガイド』[[中日新聞社]]、ISBN 4-8062-0526-5
* {{Cite book |和書 |author1=片岡浜子 |author2=沢原道則 |author3=山本武人 |author4=米田実 |date=2000-06 |title=滋賀県の山 |series=分県登山ガイド |edition=改訂第2版 |publisher=山と溪谷社 |isbn=978-4-63-502184-5 |ref=滋賀県の山 }}
*『改訂版 三重県の山』[[山と渓谷社]]、ISBN 978-4-635-02373-3
* {{Cite book |和書 |author=金丸勝実 |date=2001-06-10 |title=鈴鹿・伊吹山 |series=花の山旅 |publisher=山と溪谷社 |isbn=978-4-63-501413-7 |ref=花の山旅 }}
*『御在所・霊仙・伊吹 2010年版 (山と高原地図 44)』[[昭文社]]、ISBN 978-4-398-75724-1
* {{Cite book |和書 |author=西内正弘 |date=2003-09 |title=地図で歩く鈴鹿の山 ハイキング100選 |publisher=[[中日新聞社]] |isbn=978-4-80-620464-0 |ref=地図で歩く鈴鹿の山 }}
* {{Cite book |和書 |author=小嶋誠孝、金丸勝実 |date=2004-08 |title=鈴鹿・大峰・大台ヶ原 |series=YAMAPシリーズ |publisher=山と溪谷社 |isbn=978-4-63-553113-9 |ref=鈴鹿・大峰・大台ヶ原 }}
* {{Cite book |和書 |author=日本山岳会|authorlink=日本山岳会 |date=2005-11 |title=新日本山岳誌 |publisher=[[ナカニシヤ出版]] |isbn=978-4-77-950000-8 |ref=新日本山岳誌 }}
* {{Cite book |和書 |author=西内正弘 |date=2006-09 |title=鈴鹿の山万能ガイド |publisher=中日新聞社 |isbn=978-4-80-620526-5 |ref=鈴鹿の山万能ガイド }}
* {{Cite book |和書 |editor=山と溪谷社 |date=2007-06-20 |title=花の百名山地図帳 |publisher=山と溪谷社 |pages= |isbn=978-4-63-592246-3 |ref=花の百名山地図帳 }}
* {{Cite book |和書 |editor=山と溪谷社 |date=2010-07-28 |title=改訂新版 名古屋周辺の山 |series=週末登山コースの百科事典 |publisher=山と溪谷社 |isbn=978-4-63-518017-7 |ref=名古屋周辺の山 }}
* {{Cite book |和書 |author= |date=2011-02-10 |title=御在所・霊仙・伊吹 |series=[[山と高原地図]] 2011年版 |publisher=[[昭文社]] |isbn=978-4-39-875784-5 |ref=山と高原地図 }}


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
* [[花の百名山]]、[[フクジュソウ]]
* [[花の百名山]]、[[フクジュソウ]]
* [[関西百名山]]
* [[関西百名山]]、[[ぎふ百山]]
* [[鈴鹿山脈]][[鈴鹿国定公園]]
* [[鈴鹿山脈]]
* [[琵琶湖国定公園]]
* [[カルスト台地]]
* [[カルスト台地]]
*[[日本の山一覧]]
* [[霊仙]]

== 外部リンク ==
{{commonscat|Mount Ryozen (Suzuka Mountains)}}
* {{Cite web|和書|url=http://watchizu.gsi.go.jp/watchizu.html?longitude=136.37863022222&latitude=35.280965527778 |title=地図閲覧サービス・霊仙山 |publisher=国土地理院 |accessdate=2012-01-06}}
* {{Cite web|和書|url=http://www.city.maibara.lg.jp/index.php?oid=1105&dtype=1013&pid=227 |title=霊仙山登山之絵地図(霊仙登山マップ) |publisher=米原市 |date=2011-04-22 |accessdate=2012-01-06}}


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2024年2月6日 (火) 23:42時点における最新版

霊仙山
霊仙山を西南西の沖島から望む
手前は荒神山
標高 1,094[1][2] m
所在地 日本の旗 日本
滋賀県犬上郡多賀町米原市
岐阜県大垣市上石津町不破郡関ケ原町
位置 北緯35度16分45秒 東経136度22分53秒 / 北緯35.27917度 東経136.38139度 / 35.27917; 136.38139[1]
山系 鈴鹿山脈
種類 堆積岩石灰岩[2][3]
霊仙山の位置(日本内)
霊仙山
霊仙山の位置
プロジェクト 山
テンプレートを表示

霊仙山(りょうぜんざん、りょうぜんやま)は、滋賀県犬上郡多賀町米原市にまたがる鈴鹿山脈の最北に位置する標高1,094 m。山の東山腹は岐阜県大垣市上石津町不破郡関ケ原町に属する。北側には伊吹山が対峙している。『花の百名山[4]として花の多い山であることが知られていて[5]、シーズン中は多くの登山者が訪れる。

由来・歴史

[編集]

正式な読みは「りょうぜんざん」であるが[2][3]、「りょうぜんやま」と読まれたり、「霊仙」と略称されることも多い。

近江国坂田郡(現・米原市)を根拠地とする地方豪族息長氏の出身とも伝えられる平安時代前期の法相宗であり、日本で唯一の三蔵法師である霊仙を、名祖(なおや)とする。「霊仙三蔵堂」が麓の醒井養鱒場の脇に建立されている[6]明治以前には「霊山」と呼ばれていて、祖先の霊が籠る山であることが山名の由来であるとする説もある[2]奈良時代に山頂に「霊仙寺」が建立されたと伝えられているが、現在はその痕跡は見られない[7]。榑ヶ畑コースの登山口付近には、第二次世界大戦には約50戸、160人の榑ヶ畑集落があったが、1957年(昭和32年)に廃村となった[7]。現在は緩やかな山の斜面に民家の石垣が残され、ユキノシタが見られる[8]。経塚山(北霊仙山)に役小角の修行所があり、宣教大師が山麓に7つの寺院を建立したと伝えられていて、松尾寺がその一つである[9]

  • 672年白鳳元年) - 704年慶雲元年)と2度に渡り、山頂に霊仙寺が建立され、そこで研いだ米の水が溜まって山頂の北側にある「お虎ヶ池」となり、それが流れ出して「漆ヶ滝」ができたという伝説がある[3]
  • 1950年昭和25年) - 琵琶湖国定公園の特別地区に編入される。
  • 1998年平成10年)- 台風で霊仙山の山頂北東の避難小屋が倒壊した。
  • 2003年(平成15年) - 霊仙山の山頂北東の避難小屋が再建された。

自然環境

[編集]

山体は石灰岩からなり、なだらかな山の上部にはカレンフェルトやドリーネなどのカルスト地形が見られ[7]、「近江カルスト」の一角をなしている[10]。山頂部には窪みが多数あり、「お虎ヶ池」はドリーネにたまった池とみられている。南西の山麓には河内風穴鍾乳洞がある。多賀町の北東部に位置している山頂からは近江盆地琵琶湖が一望できる。

南西尾根の近江展望台から望む霊仙山の頂上部、石灰岩が散乱する稜線で、フクジュソウヤマシャクヤクの群生地がある。

スキー場などの大規模開発がほとんど行われていないため、豊かな自然が残っている。比較的登りやすいなだらかな山であり、登山道も整備されているため、登山初心者を始め登山客に人気が高い。山頂部にあるお虎ヶ池には霊仙神社がある。冬には、日本海側の若狭湾方面からの季節風の影響を受け雪雲が流れ込み易く[2]、山頂部は1 mを越える積雪となることが多い。

動物

[編集]

山中には、アズマヒキガエルニホンジカニホンリスアカゲライヌワシなどが生息している[10]。夏場や湿度の高い時期にはヤマビルが多い地域であるため[11]、事前の情報収集やヒル対策が必要である[12]。登山道では花を吸蜜するウスバシロチョウキアゲハスジグロシロチョウなどが見られる。山頂直下にある「お虎ヶ池」では、アキアカネオニヤンマが見られる[13]

ニホンジカ ヤマビル ウスバシロチョウ アキアカネ

植物

[編集]

山頂部にはカエデ属オオイタヤメイゲツクマザサススキなどが分布している[10]。中腹下部では炭焼きに利用されていたブナなどの広葉樹林の二次林があり、下部一帯はスギの植林地となっている[2]田中澄江により『花の百名山』に選定されていて、その著書で代表する花として「ヒロハノアマナ」が紹介された[4]。春には石灰岩質の西南尾根にフクジュソウ(福寿草)の群落やニリンソウベンケイソウ科ヒメレンゲヤマシャクヤクなどが見られ、夏から秋には山頂一帯にイブキアザミイブキトラノオトリカブトリュウノウギクリンドウなどが咲き[5][14]。山頂部直下北側にあるお虎ヶ池ではヒルムシロが見られる[14]。登山道の周辺では、春から初夏にかけてアカモノイチリンソウエビネキツリフネサワギクスミレチゴユリバイケイソウハシリドコロヒトリシズカヒロハノアマナフウロソウ属ヒメフウロホウチャクソウミスミソウなどの花も見られる[5][9][10][15]

フクジュソウ ミスミソウ トリカブト ヤマツツジ

登山

[編集]

登山家内田嘉弘は1957年に霊仙山へ登ったことがきっかけとなり、その道に進んだ。花の百名山、ぎふ百山[16]関西百名山[17]に選定されている。

登山コース

[編集]
榑ヶ畑コースの登山道にある「お虎ヶ池」と霊仙神社

各方面からの以下の登山道がある[18]。登山道は地元の住人らにより整備されている。山頂部は高い樹木が生育できず、石灰岩が点在し360度の良好な展望がある[9]。榑ヶ畑コースが最短のコースで、よく利用されている。

  • 榑ヶ畑コース - 醒ヶ井養鱒場の林道の先の廃村となった榑ヶ畑が登山口から、山小屋かなや、二合目の汗拭き峠、五合目の近江見晴らし台、お猿岩、お虎ヶ池と霊仙神社、経塚山を経て山頂に至るコースである[7][8][9][13][19][20]。登山口に休憩所が設置されている。
  • 谷山谷コース - 上丹生集落の先の天野川支流の丹生川に沿ったコースで、谷山谷沿いには屏風岩、コウモリ穴、くぐり岩、漆ヶ滝がある[2][7]。谷山との鞍部で柏原からのコースに合流し、経塚山を経て山頂に至る[8][14][21]。途中に山腹を巻く枝道がある。
  • 今畑コース - 廃村となった今畑から宗金寺、笹峠、近江展望台、南霊山を経て最高点の至る西南尾根に沿ったフクジュソウなどの花の多いコース[15]。近江展望台からは琵琶湖などの展望が良い[19][22]
  • 柏原コース - JR東海東海道本線柏原駅からの北東の尾根に沿ったコースで、四合目と経塚山手前に避難小屋がある。谷山(標高993 m)の北側斜面を巻き、山頂避難小屋と経塚山を経て山頂に至る[6]
  • 梓河内コース - 天野川の支流の梓川に沿った梓河内の集落からの北側の尾根に沿ったコースで、柏原からのコースの七合目で合流する。

他にバリエーションルートがある[23]

周辺の山小屋

[編集]

登山道にある山小屋を下表に示す[24]。「かなや」のみが有人の小屋でキャンプ場が併設されていて、他は無人の避難小屋である。山小屋かなやの横には、大阪府立今宮工科高等学校の私有の山小屋がある。

画像 名称 所在地 標高
(m)
霊仙山からの
方角と距離 (km)
収容
人数
備考
山頂避難小屋 経塚山頂上直下北東 1,017 北東 0.8 10 土間と板間があり
伊吹山の展望が良い
かなや 汗拭峠直下北西 430 西 1.6 30 キャンプ場併設
テント5張
四合目避難小屋 柏原コース四合目 750 北東 3.3 数人 コンテナボックス
緊急避難用

ギャラリー

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地理

[編集]

周辺の山

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藤原岳方面から望む鈴鹿山脈北部の周辺の山、左上が霊仙山、遠景は伊吹山白山

鈴鹿山脈の最北端に位置し、その北側が近江盆地濃尾平野分水嶺となっている。その北側には伊吹山地があり、伊吹山が対峙している。最高点の北側のピークは「経塚山」(北霊仙山、標高1,040 m)と呼ばれている[13][9][18]。最高点から北西約400 mには二等三角点があるピークがある[25]

山容 山名 標高
(m)[1][25]
三角点等級
基準点名[25]
霊仙山からの
方角と距離(km)
備考
伊吹山 1,377.31  一等
「伊吹山」
北 15.5 日本百名山
滋賀県の最高峰
霊仙山 1,094 (二等)「霊仙山」
(1,083.45)
0 花の百名山
関西百名山
ソノド  926.0  三等
「ソノドヲ」
東南東 3.2
烏帽子岳  864.73  三等
「烏帽子岳」
南東 7.4
三国岳  894 (三等)「阿惣」
(814.97 m)
南南東 7.8 岐阜・三重・滋賀県境
御池岳 1,247 南南東 11.8 鈴鹿山脈最高峰
養老山  859.31  一等
「養老山」
東 13.0 養老山地

源流の河川

[編集]
丹生川上流部の谷山谷の登山道脇に「漆ヶ滝」がある。上段と下段合わせて落差15 m程

以下の源流となる河川は、琵琶湖及び伊勢湾へ流れる[18]

  • 丹生川、宗谷川(天野川支流) - 宗谷川の醒井峡谷には1878年(明治11年)に設立された日本最古の滋賀県営の大規模な醒井養鱒場がある[7]。丹生川上流部の谷山谷の登山道脇に「漆ヶ滝」がある。上段と下段合わせて落差15 mほど[7]
  • 大洞谷、権現谷(芹川の支流)
  • 薮ヶ谷、幾里谷、今須川、梓川(木曽川水系牧田川の支流)

交通・アクセス

[編集]

脚注

[編集]
  1. ^ a b c 日本の主な山岳標高”. 国土地理院. 2011年3月21日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g 新日本山岳誌 (2005)、1237-1238頁
  3. ^ a b c 徳山球雄 編『コンサイス日本山名辞典』(第9版)三省堂、1992年10月15日、551頁。ISBN 4-385-15403-1 
  4. ^ a b 田中澄江『花の百名山』(愛蔵版)文藝春秋、1997年5月、327-330頁。ISBN 4-16-352790-7 
  5. ^ a b c 花の山旅 (2001)、80-83頁
  6. ^ a b 鈴鹿の山万能ガイド (2006)、34-35頁
  7. ^ a b c d e f g 滋賀県の山 (2000)、88-89頁
  8. ^ a b c 花の山旅 (2001)、54-58頁
  9. ^ a b c d e 鈴鹿を歩く (1995)、32-35頁
  10. ^ a b c d 霊仙山~カルスト地帯特有の景観や生き物の観察~”. 滋賀県. 2012年1月6日閲覧。
  11. ^ 花の山旅 (2001)、55頁
  12. ^ 霊仙山”. 米原市観光ナビ. 2011年3月21日閲覧。
  13. ^ a b c 名古屋周辺の山 (2010)、334-335頁
  14. ^ a b c 花の百名山地図帳 (2007)、200-201頁
  15. ^ a b 鈴鹿・大峰・大台ヶ原 (2004)、36-39頁
  16. ^ 岐阜県山岳連盟『ぎふ百山』岐阜新聞社、1987年7月。ISBN 4905958474 
  17. ^ 山と溪谷社 編『関西百名山地図帳』山と溪谷社、2010年2月25日、24-25頁。ISBN 978-4-635-53057-6 
  18. ^ a b c 山と高原地図 (2011)、地図表面
  19. ^ a b 鈴鹿の山万能ガイド (2006)、36-37頁
  20. ^ 地図で歩く鈴鹿の山 (2003)、138-139頁
  21. ^ 地図で歩く鈴鹿の山 (2003)、136-137頁
  22. ^ 地図で歩く鈴鹿の山 (2003)、138-141頁
  23. ^ 地図で歩く鈴鹿の山 (2003)、131-141頁
  24. ^ 『山と溪谷2011年1月号付録(山の便利手帳2011)』山と溪谷社、2010年12月15日、178頁。ASIN B004DPEH6G 
  25. ^ a b c 基準点成果等閲覧サービス”. 国土地理院. 2011年3月21日閲覧。

参考文献

[編集]

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]