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「男性差別」の版間の差分

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'''男性差別'''(だんせいさべつ)とは、[[男性]]に不利益となる[[性差別]]のことである。対義語は[[女性差別]]。
'''男性差別'''(だんせいさべつ)とは、[[男性]]に対する[[性差別]]である。'''女尊男卑'''(じょそんだんぴ)と呼ぶ人もいる。対義語は[[女性差別]]、または[[女性差別|男尊女卑]]という。男性差別撤廃を目指す思想や運動を[[マスキュリズム]]といい、[[ワレン・ファレル]]や[[久米泰介]]といった研究者が考察を行っている。また、男性解放を目指す[[メンズリブ]]という運動もある


男性差別に対する国際的な動きも存在する。例えば1999年以来、毎年11月19日が[[国際男性デー]](International Men's Day)として定められ、男性や少年の健康、[[ジェンダー]]関係の改善、男女平等の促進、正しい男性のロールモデルの形成、コミュニティ・家族・結婚・育児への男性の貢献などに焦点をあて、男性差別と少年差別を強調しながら世界各国で活動している<ref name="IMD">[http://www.internationalmensday.com/ International Men's Day]</ref>。2018年時点で、国際男性デーのイベントは60カ国以上で開催された<ref name="IMD" />。
== 概要 ==
男性差別には、[[基本的人権]]にかかわるものなど社会制度の差別や、[[文化]]的・[[慣習]]的な行動様式としての差別がある。個人での匿名の情報発信が容易なインターネットで男性差別に関する議論が盛り上がっていることが指摘されており<ref name="jcast20060918">2006年9月18日付配信 [[ジェイ・キャスト#J-CASTニュース|J-CASTニュース]]</ref>、また、2006年3月には、ニスコム株式会社、株式会社[[パソナ]]グループなどに、男性差別による[[就職]]差別が行われたとして男性が提訴した例もある<ref>2006年5月14日付[[毎日新聞]]。「性別を理由にした就職差別を巡る男性の訴訟はきわめて異例。国会でも男性への差別禁止を明記した男女雇用機会均等法の改正案が審議されており、訴訟は潜在する「男性差別」への警鐘になりそうだ」とコメントされている。</ref>。


== 理論的検討 ==
'''女性差別を是正するため'''に女性を優遇する措置を講じたことにより、男性が不利益を被ることを「[[逆差別]]」と表現する場合がある。日本においては、'''犯罪者が男性に多い為、性差別は「男性が加害者、女性が被害者」'''という構図で語られる事が多い。
ある制度や慣習が男性差別と言えるのかどうか、という点については様々な立場からの議論がある。
=== マスキュリズムにおける議論 ===
[[マスキュリズム|マスキュリスト]]の[[ワレン・ファレル]]は、[[性差別]]は男性から女性への一方向的なものではなく、双方向的なものであり、「どちらの性も抑圧されてきた」としたうえで、女性にとって不利益となる抑圧を[[女性差別]]と呼び、男性にとって不利益となる抑圧を男性差別と呼んでいる<ref>『男性権力の神話 《男性差別》の可視化と撤廃のための学問』p.34</ref>。ファレルは、男性が一方的に女性を支配しているという想定に反論し、実際には男性支配と女性支配が組み合わさっていると主張する。ファレルは女性差別の存在を否定しているわけではなく、男性差別も同時に存在していると論じ、男性差別について多くの具体例を挙げている。


一方で、社会学者([[男性学]])の[[田中俊之]]は、ファレルの見解について、差別や権力に関する理論的な考察が不十分であり<ref>「ファレルは権力を,「自身の人生をコントロールする」[Farrell, W 1993=2014:46]能力と定義している。これは社会学の領域では,かなり特殊な権力の定義だと考えられる。より マクロな観点の権力論はありうるにしても,M.ウェーバー以降,権力は「他者の行為を,その抵抗を排しても自己の意図する方向に制御しうる能力」[長谷川他 2007:79-80]という定義が基本となってきた。ファレルの権力の定義は,他者抜きのものであり,これでは男性自身が感じる男性として生きる上での「生きづらさ」を記述することは可能でも,差別や支配を論じることはできない。」(田中 2016: 59)</ref>、「なぜそれが男性差別であると言えるのか理論上の説得的な根拠が提示されないまま、次々と、女性差別を助長するような事例の紹介がされる」問題点があると指摘している<ref>{{Cite web|和書|url=http://oisr-org.ws.hosei.ac.jp/images/oz/contents/692_10.pdf|title=書評と紹介 ワレン・ファレル著/久米泰介訳『男性権力の神話 : 《男性差別》の可視化と撤廃のための学問』|accessdate=2018-10-05|publisher=田中 俊之}}</ref>。
== 男性差別との指摘のある事例(日本) ==
=== 政治 ===
* 男性も被害にあっている事柄を「女性と子供」に限定し、男性の生存権、人権を完全に無視する政策を行っている。例えば、[[社民党]]などは[[チベット問題]]を取り上げる際、(1997年末の時点で、監禁されているチベット人の政治犯や良心の囚人の数は、18歳以上の男性が73%であるにもかかわらず)「チベットにおける女性と子供の人権を守ろう」と女性・子供のみを取り上げている<ref>[http://tibet.turigane.com/tibetanrights.html チベットの女性と子供の人権]</ref>。
==== 条約 ====
* '''[[女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約|女子差別撤廃条約]]'''
*:同条約は第4条にて「男女の事実上の平等を促進するためのしばらくのあいだとられる特別措置([[ポジティブ・アクション]])は許されるもの」としているが、ポジティブ・アクションは男性差別になるという反対意見があり<ref>内閣府男女共同参画局HP 第6回男女共同参画会議議事録(2002年4月22日)にて「逆差別だというようなことで裁判になった」とあるhttp://www.gender.go.jp/danjo-kaigi/gijiroku/ka06-g.html</ref>、この条約の締結自体が「男性差別」であるとする意見が増えてきている<ref>内閣府男女共同参画局HP 監視・影響専門調査会(第12回)議事録(2006年7月25日)にて最近の要望として「男性に関する施策も取り組んでほしいという要望が多く出されております」とあるhttp://www.gender.go.jp/danjo-kaigi/kansieikyo/gijiroku/ka12-g.html</ref>。


=== ジェンダー論における議論 ===
==== 立法 ====
[[加藤秀一]]は、一見すると「女性優遇」と思われるような状況についても、「それらがなぜ、何のために行われ、どのような働きをしているのかといった'''社会的文脈'''の中に位置づけて」考える必要があると主張している<ref>加藤秀一(2017)『はじめてのジェンダー論』有斐閣.p.165 太字は原文。ただし傍点は省略。</ref>。たとえば[[女性専用車両]]は「女性たちに何かプラスをもたらしているわけではなく、せいぜい[[痴漢]]被害というマイナスを少しでも埋め合わせてゼロに戻そうとする補償的措置にすぎない」<ref>加藤秀一『はじめてのジェンダー論』(有斐閣、2017年)p.166</ref>ため、女性を「優遇」しているとは言えないとする<ref>「女性専用車両が痴漢対策として理想的な方法だというわけではありません。本来は痴漢という犯罪自体を撲滅することが望ましいに決まっているのですが、それが実現するのはいつのことになるのか――そもそも可能かどうかさえ――わからないので、さしあたりの対症療法がとられたということです」(加藤 2017 p.165)</ref>。また映画館のレディース・デイは、男女間の賃金格差という社会的文脈を考慮すれば「男性差別」とは言いきれず、「雇用や労働をめぐる男女平等が達成されれば、このようなサービスはおのずと消滅していく」だろうと述べている<ref>加藤秀一『はじめてのジェンダー論』(有斐閣、2017年)p.169</ref><ref>ただしレディース・デイに対しては「男性差別」とは異なる観点からの批判がある
* '''[[ポジティブ・アクション]]'''
「映画館はべつに収入の低い女性に対する福祉事業として割引サービスを行なっているわけではありません。それに、収入の低い人に対する割引というなら、映画好きの貧乏学生は男性であっても割引を受けるに値すると言うべきでしょう。さらに、他人の性別を判定するという作業そのものに伴う問題もあります。外見的に女性に見えない人はどのように扱われるのでしょうか。性別が記載された身分証明書が必要なのでしょうか。戸籍上は男性であるトランス女性が十分には女性としてパスできていない場合、割引を受けられるのでしょうか。」(加藤 2017 p.168-169)</ref>。
*:[[男女共同参画社会基本法]]では、積極的改善措置([[ポジティブ・アクション]])を含む施策を策定し実施すると規定している(男女共同参画社会基本法第8条)が、この制度は男性差別になるという反対意見がある<ref name="H7kyoudochosa">積極的差別是正措置に反対する男性の20.7%、女性の17.3% 「男女共同参画に関する世論調査」([[総理府]](現 [[内閣府]]))より</ref>。
* '''[[遺族年金]]'''
*:男女で遺族年金の支給要件に差があり、対応が必要な課題として俎上に挙がっている<ref name="lifestyle">「女性のライフスタイルの変化等に対応した年金のあり方に関する検討会」報告書([[厚生労働省]])</ref>。
* '''[[労働災害]]、[[遺族年金]]'''
*:夫が死亡した妻に対しては無条件で労災遺族年金支給されるのに対し、妻が死亡した夫に対しては55歳未満の場合は支給されない(詳細は、[[労働災害#労災遺族年金における男性差別問題|労災遺族年金における男性差別問題]]を参照)<ref>[http://allabout.co.jp/finance/nenkinreceive/closeup/CU20060322A/ 夫に冷たい、遺族年金]</ref>。
* '''[[寡婦年金]]'''
*:夫と死別した妻に対しては寡婦年金が支給される場合があるが、妻と死別した夫に対しては支給されない(詳細は、[[寡婦#寡婦に対する制度|寡婦に対する制度]]も参照のこと)<ref>[http://www.office-onoduka.com/morau_kahu/mk0601.html 寡夫年金Q&A]</ref>。
* '''[[児童扶養手当]]'''
*:2010年7月までは児童扶助手当が母子家庭には支給されるが父子家庭に対しては児童扶養手当が支給されなかったが、2010年8月からは父子家庭に対しても支給されるようになった<ref>
* [http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S36/S36HO238.html 児童扶養手当法(昭和36年法律第238号)]
* [http://www.zenfushiren.jp/ NPO法人全国父子家庭支援連絡会が児童扶養手当法改正に大きく貢献し父子家庭にも支給が実現]</ref>。
* '''[[生活保護]]'''
*:母子家庭には母子加算があったが、父子家庭に対しては加算されなかった(2009年4月廃止)<ref>民主党マニフェストの第2章 13項【 生活保護の母子加算を復元し、父子家庭にも支給する 】</ref>。
* '''[[強姦罪]]'''
*:女性も共同正犯や教唆犯などの場合は強姦罪に問われる。だが、[[強姦]]の被害者(客体)は定義上常に女性である(刑法177条<ref>参考:[http://www.cc.matsuyama-u.ac.jp/~tamura/keihou-3-tumi-2.htm わいせつ、姦淫及び重婚の罪]</ref>)。そのため男性の性的自由を他人が侵害([[逆レイプ]]、[[メイル・レイプ]])しても、[[強制わいせつ罪]]が適用されるのみで強姦罪は適用されない。しかも「男性はどんな形でもセックスをしてもらえたのだから喜ぶだろう」などという風説がまかり通ってしまっているのが現状である。これについて、通常、強姦罪は強制わいせつ罪より重い刑罰を科されることが多いため、男性差別であると主張する者も少なからず存在する。そもそも相手が望まない性行為を強要している時点で、加害者が女性であろうと男性へであろうと等しく罰せられるべき、というのが本来の法の精神である。
* '''結婚可能年齢'''
*:[[結婚]]可能年齢が、女子は16歳以上なのに対し、男子は18歳以上である。<ref>[http://www.dpj.or.jp/special/kosodate/03_01.html 民主党の未来世代応援政策]</ref><ref>[http://www.jcp.or.jp/akahata/aik09/2009-09-30/20090930faq12_01_0.html 日本共産男女の婚姻適齢の違いをどう考える?]</ref>。
* 離婚時の財産分与において、例え妻側の不倫が原因でも財産分与の金額に反映されない<ref>[http://profile.allabout.co.jp/ask/qa_detail.php/8032 All About プロファイル]村田法律事務所 村田 英幸 (弁護士)回答より</ref>。


女性の方が男性よりも社会福祉や公的扶助を利用しやすいという傾向について、[[京都大学]]准教授の丸山里美は、女性は雇用保険や年金の対象にならない低賃金の働き方の人が大半であることから、その利用が認められやすくなっていると論じている<ref>「女性の場合には、そもそも雇用保険や年金の対象にならない、社会保険の利用から排除された低賃金の働き方の人が大半を占めているため、男性と比べて福祉や公的扶助の利用が認められやすいのである」(丸山里美『女性ホームレスとして生きる――貧困と排除の社会学』(世界思想社、2013年)p.43-44</ref>。[[性別役割分業]]を前提とした[[近代家族]]モデルのもとで、男性は賃労働に就くことを期待されるのに対し、女性は家庭での再生産労働を期待され、この結果、労働報酬から保険料を拠出するような保険制度(雇用保険、医療保険、年金など)は男性と結びつき、公的扶助による生活保障は女性と結びつくことになるのだという<ref>丸山里美,2013,『女性ホームレスとして生きる――貧困と排除の社会学』世界思想社,p.43</ref>。さらに公的扶助の受給には[[社会的スティグマ]]をともなう<ref>「その [公的扶助:引用者注] 利用はスティグマをともなうものであり、利用に際して必要な資力調査は、女性本人の財産や収入だけではなく、収入をもたらしてくれる可能性のある男性関係にまで及び、生活の細部にわたって監視や管理が入り込むことになる」(丸山里美『女性ホームレスとして生きる─貧困と排除の社会学』(世界思想社、2013年)p.44</ref>ため、「保険と扶助のあいだには、序列が存在している」としている<ref>丸山里美『女性ホームレスとして生きる─貧困と排除の社会学』(世界思想社、2013年)p.43</ref>。
==== 行政 ====
* '''[[ドメスティックバイオレンス]]'''(DV)
*:DVは、婚姻や恋愛関係にある男女間での暴力であるため、本来女性から男性への暴力も含まれるが、「夫または恋人などの男性から女性への暴力」と説明される場合が多い。これは本来'''[[ジェンダーバイオレンス]](GV)'''と呼ばれるものであり、誤用である。ほとんどのDVが男性から女性への暴力と考えられる場合が多く<ref>[http://www.city.shizuoka.jp/deps/soumu/fuzoku_18_kaigi_fk087_1801.html 静岡市男女共同参画専門相談委員会会議録 松浦副主幹発言を参照]</ref>、被害者の95%が女性と主張する者も少なくない<ref>[http://www.jcp.or.jp/akahata/aik3/2004-02-21/10_01.html しんぶん赤旗 「〈取材して〉」の項を参照]</ref>。しかし、平成17年度に内閣府が実施した「男女間における暴力に関する調査」によると<ref>{{PDFlink|「[http://www.gender.go.jp/e-vaw/chousa/images/pdf/h18report2-3.pdf 配偶者からの被害経験]」(内閣府)}} 2006年4月</ref>、DVの被害を受けた経験がある女性は33.2%、男性は17.4%であり、圧倒的多数の被害者が女性というのは誤りである。また、事実、内閣府の調査によると[[ドメスティックバイオレンス]]の被害の相談については、「どこ(だれ)にも相談しなかった」は、女性で46.9%、男性では84.4%となっており、男性のほとんどはDVの被害に遭いながら相談しない(できない)という傾向がある事から、男性の被害者の割合は調査結果を大幅に上回ると見られる。<ref>「男女間における暴力に関する調査」報告書 内閣府(2006年4月)</ref>。さらに男女共同参画センターに男性センターがない場合や、あっても開設時間が短時間である場合が多い上、担当者が女性であることが多く、男性の被害者への態度には「相談者側に非がある」と追い詰るなどの冷淡な対応があり、男性被害者の利用を阻害している<ref>「女性センター等における「男性相談のあり方」研究報告書」(神奈川県立かながわ女性センター)2005年3月</ref>。なお、「デートDV」について神戸市が市内の高校生に行った調査によるとデートDVを受けたことがある、と回答したのは女子が38%で、男子が28.7%と女子の方が10%ほど高かったが、このうち、「なぐられたり、けられたりする」(男性3.9%、女性3.3%)、「命の危険を感じるほどの暴力をされる」(男性1.4%、女性1.3%)など直接的な暴力を振るわれるのは男子生徒の方が多いことがわかった<ref>[http://www.city.kobe.lg.jp/life/community/cooperation/oshirase/img/dvkonwakai20-1sankousiryou4.pdf 神戸市における高校生の男女共同参画と男女間の暴力に関するアンケート調査報告書]</ref>。本内容については、[[ドメスティックバイオレンス#被害者の状況]]を参照。
* '''[[丸刈り]]'''
*:[[自衛隊]]の新隊員への訓練、[[警察学校]]の学生、[[刑務所]]の[[受刑者]]においては男子に対してのみ丸刈りが画一的に課せられている。一方で大抵の場合、女子受刑者は髪型が自由で、収監時に染髪されている状態だった場合はそのままでいることが黙認されている<ref>福島瑞穂 『福島みずほの刑務所の話』 現代人文社、2003年10。なお、2005年に改正された法律により「受刑者に対する意に反する調髪は衛生上の必要性を除く調髪する事は無い」とされているものの、「衛生上の必要」という名目で、男子に対してのみ丸刈りが強制されている。</ref>。
* [[顔]]に傷が残る[[後遺障害]]について、女性の方が保険金額が高くなる([[自賠責]]保障法施行令第2条別表2による 男性への14級適用に対して2階級高い12級 大きな傷の場合には男性が12級適用に対して5階級高い7級<ref>[http://www.asahi-net.or.jp/~zi3h-kwrz/law2afteref.html 後遺障害等級表]</ref>)。その理由として、女性の方が容姿を重要視されるという考え方がある<ref>[http://www.kamo-law.com/column_b.htm 加茂隆康法律事務所]</ref>。[[労働災害]]においてこのような扱いは違憲であると京都地裁が判例を示し<ref>[http://mainichi.jp/select/today/news/20100527k0000e040077000c.html 労災で顔にやけど「性別で差」は違憲…京都地裁] 毎日新聞 2010年5月27日</ref>、これを受けて、認定業務を担当する厚生労働省労災補償部補償課は基準見直しを決定<ref>[http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2010061000368 男女差「違憲」で控訴断念=顔やけど跡の障害認定-厚労省]時事通信2010年6月10日</ref>。等級表の制定は[[1947年]]、等級表の元になった基準が制定されたのは労災保険法の前身の「工場法」によるもので[[1936年]]であるという<ref>[http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20100827k0000m070124000c.html 記者の目:顔の傷労災補償男女差]毎日新聞2010年8月27日、古屋敷尚子</ref>。


=== アファーマティブ・アクションに関する法学的な議論 ===
===== 教育 =====
[[女性差別撤廃条約]]第4条において、「男女の事実上の平等を促進することを目的とする暫定的な特別措置」は差別ではないと規定されている。また「母性を保護することを目的とする特別措置」も差別ではないとされている。ただし[[アファーマティブ・アクション]]はあくまでも一時的・暫定的なものであるため、「機会および待遇の平等」が実現されたときには、廃止されなければならない<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/josi/3b_001.html|title=女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約|accessdate=2018-10-05|publisher=外務省}}</ref>。[[アファーマティブ・アクション]]の法的根拠として、[[日本国憲法第14条|憲法第14条]]1項、[[男女共同参画社会基本法]]第2条・第8条、[[男女雇用機会均等法]]第8条などがある<ref>(辻村みよ子『ポジティヴ・アクション――「法による平等」の技法』(岩波書店、2011年)p.186-195</ref>。
* '''男子大学の不在'''
*:2011年4月現在、日本の大学に男子校は存在しない<ref>[[学校教育法]]による新学制施行以来、国立大学では[[東京商船大学]](現・[[東京海洋大学]])と[[神戸商船大学]](現・[[神戸大学]])、私立大学では[[東洋食品工業短期大学]]が男子学生のみだったが、両商船大は[[1980年代]]初めに女子学生を受け入れ[http://carrot.isl.e.kaiyodai.ac.jp/Ryo/shiryo/joshi-rinen-g.html][http://www.kobe-u.ac.jp/info/history/kaijikagaku.htm]、東洋食品工業短大は2008年度より共学化したことで、現在では男子大学は存在しない。</ref>のに対し、[[女子大学]]は私立に多数存在するほか、2011年時点において、国立では[[お茶の水女子大学]]<ref>例えばお茶の水女子大学大学院においては[http://devgen.igs.ocha.ac.jp/course/course.html 「日本においては,女性にとって大学院進学と研究の機会における実質的な平等が保障されていないことに考慮」](人間文化創生科学研究科ジェンダー社会科学専攻)するという理由によって男子の入学を認めていない。</ref>・[[奈良女子大学]]の2校、公立4年制大学では[[福岡女子大学]]・[[群馬県立女子大学]]の2校、公立短期大学では[[山形県立米沢女子短期大学]]・[[岐阜市立女子短期大学]]・[[福山市立女子短期大学]]・[[県立新潟女子短期大学]]<!--([[新潟県立大学]]開学に伴い2009年度より募集停止)-->の4校が女子大学である(女子大学や女子短大には、医学部、薬学部、看護学科や栄養学科といったような資格の取れる学部・学科が多いため、資格取得機会の面でも深刻な男性差別状況となっている)<ref>[http://okwave.jp/qa1095848.html 国立の女子大って男性差別で違憲じゃない?]No.4の回答。</ref>。これは日本の戦前の学校制度([[大学]]は原則男子のみの入学で、女子の高等教育機関として[[高等女学校]]・[[女子師範学校]]が置かれた)の名残であるともいわれる。なお、[[アメリカ合衆国]]では女子大学に男子学生を入学させないことを差別であるとしており<ref>[http://www.law.umkc.edu/faculty/projects/ftrials/conlaw/missu.html MISSISSIPPI UNIVERSITY FOR WOMEN ET AL. v. HOGAN]</ref>、また、男子大学も[[:en:Deep_Springs_College| Deep Springs College]]、[[:en:Hampden-Sydney_College|Hampden-Sydney College]]、[[モアハウス大学]]、[[:en:Wabash_College|Wabash College]]、[[:en:College of Saint Benedict/Saint John's University|Saint John's University(ミネソタ州)]]など数校が存在している<ref>[[:en:Single-sex education]]、[[:en:Men's colleges in the United States]]を参照</ref>。
* '''[[丸刈り]]'''
*:2009年現在、丸刈りが強制されているといわれている学校が[[鹿児島県]]に37校、[[長崎県]]に5校、[[青森県]]、[[沖縄県]]に各1校存在する。男子の丸刈りに対して、女子の髪型は自由か、強制があっても[[おかっぱ]]に留まり、丸刈りが強制されていない状態が差別として挙げられる場合もある。
* '''女性枠の設置'''
*:[[九州大学]]では理学部数学科の後期募集に、優秀な“理系女子”の獲得に向けた取組という名目で女性枠の設置を公表しており、その内容が一般枠4名、女性枠5名と男性に非常に不利な内容になっている<ref>『九州大学プレスリリース(2010/3/29)』http://www.kyushu-u.ac.jp/pressrelease/2010/2010-03-29-01.pdf</ref>。「差別だ」「法の下の平等に反する」と指摘が相次ぎ、2011年5月、見直しを迫られた。同様に“女子特別選抜”を行なった[[金沢工業大学]]では2008年の定員40人に対して志願者は12人、09年も志願者13人と4分の1に留まった為、制度を廃止している。


[[アファーマティブ・アクション]]は「格差是正のための暫定的なものである」という限りにおいて正当化されている。しかし具体的な制度設計のあり方によっては、逆差別やスティグマ化などの問題を引き起こしうる([[2018年に発覚した医学部不正入試問題]]も参照)<ref>「例えば、女性の医師を増やす必要があるからといって、国家試験の女性受験者だけ合格基準点を自動的に引き下げたりするなら、「女性は能力もないのに医師になれる」というマイナスの評価を生み出しかねません。これは適用を誤った例で、合憲性・合法性の観点からも問題があり、女性に対して劣性の烙印(スティグマ)を与えるものでもあるため、女性からも到底賛同を得ることはできないでしょう。大学教員等も同じことで、女性であることを理由に、自動的・優先的に採用することなどは、妥当な方法ではありません。(……)少なくとも、候補者の能力が採用水準を満たしている場合に限り、個別事情や必要性・緊急性・暫定性等を勘案して一定の措置をとること、さらに、それについてのコンセンサスを前提的に得ておくことが必要です。ポジティヴ・アクションの方法は多様ですので、目的に応じた措置を有効・適切に活用しなければなりません」(辻村みよ子『ポジティヴ・アクション――「法による平等」の技法』(岩波書店、2011年)p.26</ref>。差別是正措置にはさまざまな種類があり<ref>アファーマティブ・アクションの措置には「1.(逆差別が問題となりうるような)厳格な格差是正措置」「2.(性別を考慮に入れるなどの)中庸な格差是正措置」「3.(格差是正のための両立支援・環境整備など)一般的な施策を含めた緩やかな支援策」という三つの区別ができる(辻村 2011: 81)。日本の企業等で奨励されている3つめの措置についてはほとんど法的問題はないが、1つめの措置などについては、諸外国で違憲判決が出ている場合もある(辻村 2013: 37)</ref>、実施方法も多様であるため、社会状況に応じた適切な運用が必要だとされている<ref>(辻村みよ子『ポジティヴ・アクション――「法による平等」の技法』岩波書店、2011年)</ref>。
===== 図書館 =====
* '''女性専用席'''
*:[[公立図書館]]であるのに女性専用・優先席が設置されている。台東区中央図書館、荒川区南千住図書館<ref>南千住図書館に関しては、抗議により後に暮らしのコーナーに差し替えられている。</ref>、江東区東雲図書館、葛飾区お花茶屋図書館等で実施されており、「不公平だ」などと男性から抗議が寄せられている<ref>「図書館にも女性専用席、ホームレスや痴漢対策で。「不公平」の声も」 産経新聞、2008年8月30日。</ref>。


アファーマティブ・アクションは、女性の社会参画を促すものである。就労や政治参画における男女格差は、単に女性が不利益を被るだけでなく、男性にも権利侵害や不利益をもたらす<ref>「このような状況は、女性にとって不利益をもたらすだけでなく、男性にとっても、権利侵害や不利益を引き起こしています。過労死や自殺を強いられるほどの「会社人間」化の圧力や、育児の喜びを得ることができない長時間労働など、それはすでに明らかでしょう(辻村 2011: 3)」</ref>。それゆえ女性の社会参画を促す政策は、男性の権利侵害や不利益を解消する側面もあるとされている。
==== 司法 ====
* '''[[痴漢冤罪]]'''
*:満員電車において[[痴漢]]と間違えられ逮捕された男性に対し、[[警察官]]や[[検察官]]は男性の無罪主張を一切無視し、無理矢理自白させたり調書を捏造していることを主張する男性が多くいる<ref>映画「[[それでもボクはやってない]]」と映画製作の契機となった自らの痴漢冤罪体験を綴った[[矢田部孝司]]、あつ子著作「お父さんはやってない」、池上正樹「痴漢「冤罪裁判」―男にバンザイ通勤させる気か!」、鈴木健夫「ぼくは痴漢じゃない!―冤罪事件643日の記録」参照</ref>。こうした状況の下、[[示談]]金目的や、面白半分のゲーム感覚、職場や学校への遅刻の言い訳づくり、中には恨みを持つ男性を陥れる目的で「この人は痴漢だ」と虚偽の申告・証言をして、男性を犯罪者に仕立て上げようとする者も存在する<!--携帯電話を注意したら痴漢犯人とされた例--><ref>『どっちがホント痴漢裁判 刑事「やってない」民事「やった」』2006年4月11日付配信 [[スポーツ報知]]</ref>。極端な例では当日電車に乗り合わせてすらいなかった友人を証人として事件のでっち上げを行った事例までが存在している(被害者側の証言に大幅な矛盾が存在したため、男性は無罪となったが、この様な例は極めて稀で幸運である)。ほかにも、痴漢冤罪が起こるのは、そもそも男性が痴漢をするから、との論法で痴漢冤罪の責任を一方的に男性に押しつける女性は多い(女性を男性と間違えて痴漢冤罪をかけてしまった時等にこの論法は使われる)<ref>『なぜ女は男をみると痴漢だと思うのか なぜ男は女の不快感がわからないのか―痴漢大論争!』著者:蔦森 樹 / 池上 正樹 / 長崎 満 / 北原 みのり / 石橋 英子 出版:ビーケイシー</ref><ref>2008年4月6日放送の[[たかじんのそこまで言って委員会]]にて[[田嶋陽子]]は「痴漢冤罪は男が悪い」と発言している</ref>。
* '''離婚'''
*:[[離婚]]裁判は極めて妻側に有利で、夫の弁護を引き受ける弁護士は負け、妻の弁護を引き受ける弁護士は勝つ、というのが弁護士の間では常識と化している。事実証拠無関係で妻側に一方的に有利な判決を出す、離婚について妻の言い分だけを認める等ということが当たり前となっている<ref>{{Cite book|和書
|author=紺野朝子
|authorlink=紺野朝子
|year=2004
|title=ネコと裁判官
|publisher=父と子の会出版部
|id=ISBN 4-938746-16-6
}}</ref>。
* '''離婚時の親権'''
*:子供の父母が離婚し[[親権]]をめぐって訴訟が提起された場合、特段の事情がないかぎり、父親側より母親側に子供の親権が与えられることが圧倒的に多い<ref>[http://www.asahi-net.or.jp/~zi3h-kwrz/law2risinke.html 離婚の場合私が娘の親権者になれますか]</ref>。例えば、平成19年の離婚統計では「母親が全児の親権を行う場合」が81.1%であったのに対し、「父親が全児の親権を行う場合」は15.2%にすぎなかった<ref>[http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001032162 平成19年人口動態調査 第10-10表]</ref>。また、親権裁判において、母親による虐待などによって、父親側が養育すべき特段の事情がある場合においても、父親側に不利、母親側に有利な審理が行われ、母親が親権を獲得することもある<ref>{{Cite book|和書
|author=越智みさ子
|authorlink=越智みさ子
|year=2003
|title=負けた側の真実―親権裁判の切ない記録
|publisher=文芸社
|id=ISBN 978-4835564494
}}</ref>。
* '''DV冤罪'''
*:DVをしていなくても男性がDVで訴えられることがある<ref>[http://www7a.biglobe.ne.jp/~kspro/paper1.pdf 離婚における父子の引き離し問題と、そのカルト化事例としてのDV冤罪]</ref>。


=== 哲学的差別論における議論 ===
=== 経済 ===
近年は、何が不正な差別であるか、という問いをめぐる哲学的議論が展開されている<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.arsvi.com/2010/1403hy.htm|title=堀田義太郎「差別論のためのノート」|accessdate=2018-09-22|website=www.arsvi.com}}</ref>。たとえばデボラ・ヘルマンによれば、人々の間に区別を付けることが、その一方のグループに属する人々を価値の劣ったものとして貶めることになる場合、その区別は不正な差別である。このとき、何が不正な差別になるのかは'''社会的文脈'''によって決まる<ref>デボラ・ヘルマン著、池田喬・堀田義太郎訳『差別はいつ悪質になるのか』p.39</ref>。ヘルマンはこれを性別に関する差別について当てはめて議論を行っている<ref>デボラ・ヘルマン著、著池田喬・堀田義太郎訳『差別はいつ悪質になるのか』p.62-70</ref>。
==== 勤労 ====
* '''[[ポジティブ・アクション]]'''
*:[[雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律|男女雇用機会均等法]]では、男女間の処遇差の改善には「ポジティブ・アクション」(積極的差別是正措置)が最適としている<ref name="seisakukenkyukai">「男女雇用機会均等政策研究会」[http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/06/h0622-1.html 報告書][http://www2.mhlw.go.jp/topics/seido/josei/hourei/20000401-12.htm 参考](厚生労働省ホームページ)</ref>が、この制度は男性差別になるという反対意見もある(女性差別解消に関する積極的差別是正措置に反対する人の5人に1人が「同じ能力を持つ男性が差別される」ことを理由に挙げている<ref name="H7kyoudochosa">積極的差別是正措置に反対する男性の20.7%、女性の17.3% 「男女共同参画に関する世論調査」([[総理府]](現 [[内閣府]]))より</ref>)。
* '''[[雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律|男女雇用機会均等法]]'''
*:[[1985年]]に[[勤労婦人福祉法]]から改正され、男女の均等な雇用と待遇の確保を目的に制定された。当初この法律は、雇用における女性差別のみを禁止していた。その後、女性への[[セクシャルハラスメント]]を禁止し、さらに[[2007年]][[4月1日]]施行の改正法で、“女性に対する差別を禁止する法律”から“性別による差別を禁止する法律”へと大きく変わり、雇用における男性への差別のほか、セクハラも女性と同様に禁止された。しかし、守衛・警備員は防犯上の要請から男性に従事させることは適用除外にし、坑内業務の一部の作業へ女性を就かせることを禁止する。[[公衆浴場]]で女性従業員が男性の浴室の清掃をすることはあっても逆の場合は無いなど、男女の不平等な扱いはまだ残されている<ref name="SAPIO">[http://news.nifty.com/cs/magazine/detail/sapio-20090504-01/5.htm 恋愛、結婚、就職から人質救出まで 女に都合良く利用される「男らしさ」の受難][[SAPIO]]2009年5月号</ref>。
* '''就職差別'''
*:[[客室乗務員]]・[[秘書]]・受付・[[事務職]]、[[介護]]、[[看護]]、[[保育]]職、洋服屋、和菓子屋等において、男女雇用機会均等法が定められているために公には性別を特定しての募集はされていないものの、男性という理由で不採用となることがある(求人広告でも「女性が活躍しています」と暗に男性を敬遠するような文言が書かれている事もある)<ref>朝日新聞2008年2月22日首都圏版「声」に、介護職の募集に応じた男性が施設から「女性のみ受け付けます」と拒否された体験談を寄せている。</ref>。最近では[[一般職]]を志望する男性が増えてきており、一般職セミナーの会場で男子学生を目にすることも多くなった。しかし男性では一般職では[[面接]]段階で落とされる、もしくは面接さえ受けられないことも多い。特に一般職を志望する男性は「向上心がない」などの批判を受けることさえある<ref name="SAPIO"/>。一般職を志望しても性差別により不採用とされる可能性が高いと考える男性に、女性の活用を目的に設けられたエリア総合職が注目され始めており、あるメーカーでは、エリア総合職を導入したところ、男性社員の3分の1が応募したことがあった<ref>『[[日本経済新聞]]』2007年10月26日東京版夕刊、17面。</ref>。[[日本航空インターナショナル|日本航空]]と[[全日本空輸|全日空]]では、2009年現在[[契約制客室乗務員]]としての募集は事実上は女性のみを対象としており、男性にはいわゆる総合職(客室系総合職)としての採用しか行っていない。この採用時における男性差別は、[[1999年]]の男女雇用機会均等法の改正時に、主に男性の就職希望者から同法違反ではないかとして問題とされたが、しかし2社の労働組合とも会社側、反会社側を問わずこういった告発を無視した。その結果、日本航空と全日空、そしてそれらの子会社はその後も採用時の差別が続けられている(一方で「女性[[機長]]」は存在しており、イメージアップのための宣伝に使わるケースもある)。なお、[[スカイマーク]]や[[北海道国際航空]]といった日本の新興航空会社、そして[[アジア]]や[[ヨーロッパ]]、[[アメリカ]]など日本国外の航空会社では、非総合職の男性の客室乗務員も多数存在している。
*一部企業にある染髪に関する規定は、事実上男性に対してのみ適用されている場合がほとんどである。服装に関する規定でも、男性はスーツがほとんどだが、女性は特に規定がない場合もある。スーツは自宅で洗濯することが容易でなく、定期的にクリーニングに出す必要があり、これも男性にとって負担となっている。<ref>『新・オトナの学校 仕事常識』
著者:安部健太郎・石川淳一ら 発行元:日本経済新聞社(2004年3月16日発行)</ref><ref>「MarketingDataBank」の1327941 株式会社日本能率協会総合研究所</ref>
* '''[[育児休業]]'''
*:男性は女性に比べ、育児休業を取得することが困難である場合が多い。これは企業・職場において男性の育児休暇取得に対する理解がないためであり、男女を問わず、「男は仕事、女は家庭」という[[ステレオタイプ]]な固定観念を持つ者が多いことが背景にある。育児休暇は[[育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律|法律]]によって認められているが、女性の取得率が88.5%なのに対し、男性の取得率は僅か0.57%に留まっている<ref>[http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/08/h0809-1/index.html 平成18年度 女性雇用管理基本調査] 付属統計表>第26表を参照</ref>。『[[日経スペシャル ガイアの夜明け]]』で取り上げられた際には「男性の育児休暇制度だけを整備しても休暇取得率は上がらない。企業の、職場の意識を変える必要がある」という提起がされている<ref>「[http://www.tv-tokyo.co.jp/gaia/backnumber/preview050517.html 私が子供を産めたわけ]」『日経スペシャル ガイアの夜明け』2005年5月17日放送、テレビ東京。</ref>。
* '''[[ニート]]'''
*:実際には[[ニート]]に占める男女比はほぼ半々<ref>例えば、[[東村アキコ]]の漫画『[[海月姫]]』では、主人公(女性)とその仲間たち(全て女性)はニートという設定である。</ref>だが、一般的にニートは男性ばかりであるとするイメージがある。これは、無職女性は「[[主婦]]」、「[[家事手伝い]]」と名乗ることができる<ref>尤も、2000年代後半からは[[マスメディア]]において[[専業主婦]]であっても「無職」と報道するようになった。</ref>が、無職男性は、上述の通り「男は仕事、女は家庭」という社会のステレオタイプのプレッシャーを受け、自ら「[[主夫]]」、「家事手伝い」と名乗りにくいためである。そのため就職時の面接において就労していない「空白期間」を問われた場合、女性は「家事手伝い」が通用するが男性は「家事手伝い」が通用せず、男性は女性に比べニートから脱却するのに不利になっているとの指摘がある<ref>「[http://www.j-cast.com/2008/07/12023301.html 「ニートはどうして男だけなの?」 そんな疑問が正しくないワケ。]」[[J-CASTニュース]]、2008年7月12日</ref>。[[厚生労働省]]および[[内閣府]]が示したニートの定義を示す図では「主婦」の取り扱いはあるが、「主夫」の取り扱いがない<ref>[http://www.j-cast.com/2008/07/12023301.html J-CASTニュース:「ニートはどうして男だけなの?」 そんな疑問が正しくないワケ]<!-- このニュースが削除された後はウェブ魚拓[http://s02.megalodon.jp/2008-0712-1840-13/www.j-cast.com/2008/07/12023301.html (cache)J-CASTニュース:「ニートはどうして男だけなの?」 そんな疑問が正しくないワケ]にリンクを書き換えてください。 --></ref>。
* '''肉体労働'''
*:男女共同参画について、兵庫県が職員の意識、実態を調査したところ、見直すべき職場慣行として、「引っ越しなどの力仕事は男性のみでする傾向にあり、負担が大きい」「男性の方が長時間残業を強いられている」「災害時の人員配備で女性が免除されている」などの問題点が挙げられた<ref>『神戸新聞(2009/4/25)』http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/0001856474.shtml</ref>。
*'''[[助産師]]'''
*:[[アメリカ]]、[[イギリス]]、[[オーストラリア]]などでは男性の助産師も存在するが、日本では[[助産師国家試験]]の受験資格は女性のみとなっている。


つまり男女間で区別を設けることが必ずしも「男性差別」であるとはかぎらない。とはいえこれまで議論されてきたように、「男性差別」でないとしてもまったく問題がないとはかぎらない。また、「不当である」ということと「差別である」ということは異なる概念である。それゆえ事例を検討するときには、背景にある'''社会的文脈'''を考慮しながら、具体的にどのような点に問題があるのか、ということに注目する必要がある。
==== 商業活動 ====
* '''[[女性専用車両]]・座席等'''
*: {{Seealso|女性専用車両}}
*: [[都営地下鉄]]、[[大阪市営地下鉄]]などの主に都市鉄道において、女性専用車両が導入されている。J-CASTニュース[http://www.j-cast.com/2006/09/18002995.html 「女性専用は「男性差別」 ネット上で批判盛り上がる」]では、「インターネット上のブログ等では「男女平等なら男性専用車両を作るべきだ」といった意見も少なくない」と紹介されている<ref name="jcast20060918">2006年9月18日付配信 [[J-CAST]]ニュース</ref>。痴漢冤罪を防ぐ点から男性専用車両の導入を求める声もある。詳細は[[女性専用車両]]及び[http://www.youtube.com/watch?v=nTFkSRV5m4Y&p=2CBF5FE163F75C23 女性専用車両の問題を提言した番組]を参照。[[中華民国]]にも女性専用車両の構想があったが、試験導入から3か月で廃止され、[[大韓民国]]では女性団体の反対で導入が見送られた。なお、[[イスラム教]]信者が多い国などでも導入されているが、「男女同席は相応しくない」といった戒律上の理由である。
*: [[全日本空輸]]が、[[2010年]][[3月1日]]より国際線の中型機と大型機に女性専用のトイレを設置すると発表した<ref>{{cite web |title=ANA 国際線に「女性専用化粧室」を設置します! |publisher=ANAグループ |date=2010-02-23 |url=http://www.ana.co.jp/pr/10-0103/10-031.html |accessdate=2011-06-27}}</ref>。なお「体調不良時」には男性も使用できるとされているが、女性専用トイレと同時に男性向けのトイレを設置するわけではないため、性差別に当たるとの指摘もあり廃案となった。
* '''商店における男性の入場制限・禁止規定'''
*: 地方都市を中心とした一部商店には、女性のみの入店を許可し、男性を排除しているものがある。
*: たとえば、2006年4月、[[北海道旅客鉄道|JR北海道]][[函館駅]]内に、[[ジェイ・アールはこだて開発#女性専用パスタ店|「16時までは女性のみ」入店をうたったパスタ店]]が開店したが、約10件の問い合わせメールをはじめ、「男性差別では」という批判が寄せられた。その後、開店2か月後の2006年6月には、批判が寄せられたことを背景として女性専用の時間帯は14〜16時にまで縮小した(運営側は、「お客の要望に応えた」と説明している)。なお、女性専用時間を縮小したところ、来客数は増えているという<ref>2006年8月12日付配信 朝日新聞</ref>。現在は女性専用の時間帯は廃止されている。なお、2010年現在も前述の問題に対し店側からの公式な謝罪や説明などはない。
* '''[[ゲームセンター]]の[[プリントクラブ]]コーナーにおける入場・利用規制'''
*: 盗撮や[[ナンパ]]行為などの迷惑行為防止という名目で、男性のみでの立ち入りを一律に禁止したり、プリクラ機での撮影を認めない措置を取っている[[アミューズメント]]施設が多数存在する<ref>2009年1月7日付 朝日新聞夕刊</ref>。
* '''[[レディースプラン|レディースデー]]・女性限定割引'''
*: さまざまな商業施設、特に[[ホテル]]などの宿泊施設や[[居酒屋]]などを中心とした[[飲食店]]、[[映画館]]や[[パチンコ|パチンコ店]]・[[ゲームセンター]]などのアミューズメント施設、[[インターネットカフェ]]([[マンボー]]等)において<ref>
* [http://dom.jtb.co.jp/yado/List.aspx?ty=lady_p JTB「レディース・プラン」]
* [http://www.imperialhotel.co.jp/j/tokyo/stay_plan/189 帝国ホテル東京「フォーマイセルフ プレミア」]
* [http://www.movix.co.jp/movix_saitama/ryokin.html MOVIXさいたま] スペシャル・プライスの項を参照。
* [http://www.e-umejima.com/shop/shop9.php 村さ来(梅島店)] お得情報の項を参照。
* [http://www.walkerplus.com/yokohama/latestmovie/6MAFE001.html 横浜ニューテアトル] 割引情報の項を参照。
* [http://109cinemas.net/mm/prices.html 109シネマズMM横浜] 特別料金の項を参照。
* [http://snow.gnavi.co.jp/guide/eve.php?rid=r0231 ダイナランド] ページ下の表を参照。
* [http://www.ooedoonsen.jp/meal/lady.html 大江戸温泉物語] レディースデイを紹介するページである。
* [http://www.taito.co.jp/gc/details/south/fukuoka/sgc00244/news/1197519_2117.html 女性限定!浴衣で来たら超オトク♪(タイトーステーション福岡天神)]</ref>、「レディースデー」や「レディース・プラン」などと称し、女性客のみに対して割引や特典の提供をしたり、無料提供サービスを行ったりしている(ただし、一部の映画館やレンタルビデオ店等では「レディースデー」と対になった「メンズデー」<ref>
* [http://www.tohotheater.jp/theater/056/price.html 天神東宝料金・割引一覧]メンズデイ 毎週木曜日は、男性1,000円!
* [http://www.meijimura.com/event/yoi11.asp 野外博物館明治村]浴衣女性は1600円引きで無料。浴衣男性は200円引き。
* [http://www.cinemart.co.jp/blog/roppongi/2008/12/000246.html シネマート六本木スタッフの落書きノート]月曜日はメンズデイ!男性は鑑賞料金1000円です! シネマート六本木、シネマート新宿、シネマート心斎橋でも導入。
* [http://www.l-co.co.jp/times/log/05/050401/50.html 西広島タイムス2005年(平成17年)4月1日864号]
アルパークシネマ4日から「メンズデー」導入 広島市内ではスカラ座、シネツイン、サロンシネマが導入済み。同日からは、広島宝塚会館、TOHOシネマズ緑井でも導入。</ref>を別の日に行うことで差別問題を[[相殺]]しているケースも希にあり)。
*: この問題はマスコミで取り上げられることもあり、[[日本テレビ放送網|日本テレビ]]の番組「[[太田光の私が総理大臣になったら…秘書田中。]]」の2007年3月9日放送分で取り上げられ、インターネット上でアンケートが行われた。その結果、79%が廃止を支持している。その理由として「男女平等に反する(=男性差別である)」という意見が掲載されている<ref>[http://www.ntv.co.jp/souri/manifesto/20070309.html 太田光の私が総理大臣になったら…秘書田中。ホームページの該当部]</ref>。
:これらは「企業側の戦略によるものであり、男性差別に該当しない」という意見もある。
* '''F1世代戦略'''
*: F1世代、またはF1層とは[[マーケティング]]用語であり、'''20〜34歳の女性'''のことを指す。「F」は「Female(女性)」の頭文字、「1」は「1番消費する」の意<ref>故に、国や時代によっては「1」を占める女性が20〜34才でない場合もある。</ref>。その特徴として、相対的にF1世代は多少の不景気に関わりなく[[海外旅行]]、高級[[外食]]、[[ブランド]]品購入、都心居住、各種[[習い事]]といった高額[[個人消費]]を意欲的に継続する傾向が顕著であることから、関連業界や[[広告代理店]]は20歳-34歳女性をターゲットとして彼女たちを積極的にもてなし、もてはやすビジネス戦略に力を傾注する傾向が見受けられる。[[雑誌]]の広告営業において、発行部数の多少に関わらず女性誌の収益が男性誌の収益を圧倒しているのもこのためである。ただマーケティング上の戦略であり、男性を狙ったマーケティングも同様に存在するので、他の例とはいささか異なる。


=== 文化 ===
== 事例 ==
<!-- ウィキペディアの方針に従い、「男性差別」であることが直接的かつ明示的に外部文献で指摘されている事例だけを記載してください。 -->
==== 風土・慣習 ====
* [[レディファースト]]という習慣は男性差別にあたる、という意見がある。(詳細は[[レディファースト]]へ)また男女平等が大原則であり女性を優遇する必要は全くないとの主張もある。


==== マスメディ・報道・CM ====
===アメリカ===
*18歳から25歳までの永住権保持者または市民の男性には{{仮リンク|選抜徴兵登録制度|en|selective service system}}に郵便局で登録することが強制されている。拒否すると、州によっては罰金刑に処される他、政府の奨学金を受けられなくなるなどの各種不利益を受ける<ref>[http://www.sss.gov/ 選抜徴兵登録制度の公式ウェブサイト]</ref>。ただし、この男性限定の選抜徴兵登録については、連邦最高裁で男性差別ではなく合憲との判決が下されている。
* 治部れんげ([[日経BP]]社・ミシガン大学女性教育研究センター客員研究員)の指摘によれば、[[柳澤伯夫]]の「女性は産む機械」発言が[[女性差別]]として問題視されるならば、かつて流行したCMの「亭主元気で留守がいい」というフレーズや、定年退職後の夫を「濡れ落ち葉」「粗大ゴミ」と称することは、男性差別にあたる。こうした男性差別を、メディアが批判的に取り上げることはほとんどない<ref name="dibu">治部れんげ「[http://business.nikkeibp.co.jp/article/skillup/20070220/119382/ Working Woman キャリアセレブ塾 数字で見る男と女の働き方【第2回】語られざる男性差別 男性に“職業選択の自由”はあるのか]」、[http://business.nikkeibp.co.jp/ 日経ビジネスオンライン]、2007年2月25日。(参照:2008年11月30日。)</ref>。
*1996年7月9日付けの[[ボストン・グローブ]]紙では、13歳の少年を[[強姦]]したとして訴えられた37歳の女性の事件を報道したが、その中で「少年も望んでいたに違いないさ」「夢のようなことさ」「間違いなく強姦だけど、男の子は若いうちから性的に活発じゃなきゃっていう社会通念があるから、みんなどこかで許容してしまっている」といった、男性被害者に対する偏見があるとしている<ref>『少年への性的虐待—男性被害者の心的外傷と精神分析治療』(リチャード・B・ガートナー、1999年の書物の翻訳、2005年) 68・69ページ ISBN 4-86182-013-8 </ref>。
* [[収入]]の低い男性は[[結婚]]率が低いが、この事実は「収入の低い男性を差別することになる」として、2000年代まで報道することはタブーとされてきた<ref>『新平等社会』著:[[山田昌弘]] 文藝春秋 2006年9月</ref>。
*2005年に、8歳の少年が14歳の少女にわいせつ行為をされた際に「たとえ初めは少女が誘ったにせよ少年は対等の行為参加者だった」として少年のほうが「未成年者へのわいせつ行為」で訴えられた事件が報道された(後に検察側は起訴を取り下げた)。怒った母親は、こういう場合に親は息子が起訴されることを恐れず、州の担当部署に堂々と訴えるべきだと述べている<ref>{{cite web|url=http://www.canadiancrc.com/Newspaper_Articles/CBS_8_year_old_boy_sexual_conduct_sitter.aspx|title=8-Year-Old Charged For Sexual Conduct With Sitter|language=英語|work=CBSニュース|publisher=Canadian Childrens Rights Council|date=2005-07-28|accessdate=2012-08-26}}</ref>。
* ドラマやアニメなどで、女性の登場人物が暴行を受ける場面はシリアスに描かれるが、男性の登場人物が暴行を受ける場面は単なるギャグとされる場合が多い<ref>例『[[ダメおやじ]]』など。</ref>。
* 女性なら[[専業主婦]]や[[家事手伝い]]となるところ、男性だと[[ヒモ]]や[[ニート]]と表現が使用されることが多かった(現在は専業主婦、家事手伝いでも「無職」と表示されることが増えてきた。)。
*「[[成人向け漫画]]」の全国規制があるのは男性向けのみで、[[レディースコミック]]におけるそれは、自治体レベルの条例でしか存在しない。「[[有害図書]]」指定を受けた例もない。
* 2008年11月8日放送の[[TBSテレビ|TBS]]の[[報道番組]]『[[報道特集 (TBS)|報道特集NEXT]]』は、「日本の年間[[自殺]]者3万人」という数字の男女比内訳を伏せてまず提示し、次に、自殺未遂者は自殺者の10倍いるらしい、と自殺完遂よりも自殺未遂のほうが深刻であるかのようにナレーティング、さらにこの「未遂者」の数においてのみ男女比内訳をグラフで示し「女性の数が男性を圧倒している」と紹介した。実際は、日本の既遂年間自殺者の7割以上は男性であり、女性を圧倒している。同様に、『「BOOK」データベース』は、門倉貴史著『セックス格差社会』を紹介する際、「生涯未婚率」の女性の数字のみ(「3人に1人」)だけを先に紹介し、その後、比較対象ではなく相対的に比率数値の小さい別のデータ「独身男性の25%が中年童貞」を付帯させ、「生涯未婚率」の深刻さが女性のほうが大きいかのように印象操作している。実際は男性の生涯未婚率は女性の2倍にのぼる。
* 小粥義雄著/ヒトラー政治戦略研究会編『ヒトラー選挙戦略〜現代選挙必勝のバイブル〜』(永田書房1994) - ヒトラーに習った現代選挙の必勝ポイントの一つとして「女尊男卑の精神」を挙げている。* [[日本放送協会|NHK]]のワンテーマ[[報道番組]]『[[クローズアップ現代]]』「中高年の自殺」の収録中、ゲストの識者が“男は女に殺されているようなもの”との趣旨の発言をしたところ、[[国谷裕子]]に本番では絶対に言うなと口止めをされたとして、問題になった事がある<ref>日本経済新聞 03年5月11日版 [[大原健士郎]]・浜松医科大学教授のコラム。本人の実体験。</ref>。
* [[P&G]]の消臭剤[[ファブリーズ]]のCMでは、夫婦とその3人息子という5人家族という設定であるにもかかわらず、女性の加齢臭などには一切触れずに、臭いの原因を男性のみに限定している<ref>『加齢臭.com』http://kareishu.com/contents-04.htm</ref>。※加齢臭は女性に比して男性に強い傾向がある。詳細については[[加齢臭]]の項を参照のこと。一方、女性の足の臭いは夕方、男性よりも強くなることが判明している<ref>(シービック調べ。アメーバニュース2011年2月11日より)</ref>。
====ネットサービス====
*2009年5月にサービス開始された[[携帯電話]]用の女性向け[[ソーシャル・ネットワーキング・サービス]]である[[男の子牧場]]は、男性を馬・牛などの家畜にみたてて女性ユーザー間で情報を共有するサービス内容が男性差別的であるとして批判され<ref>「[http://www.j-cast.com/2009/05/14041144.html?p=2 「男性を家畜扱い」「個人情報どうなる」 婚活サイト「男の子牧場」に批判殺到(2/3)]」J-CASTニュース(2009年5月14日)</ref>、公開後数日で運営が停止された。
*2011年8月末に公開された[[スマートフォン]]向けアプリケーションの[[カレログ]]は、女性が恋人の端末にダウンロードし[[GPS]]機能を使って位置情報やバッテリー残量などを監視し[[浮気]]などを防止するといった使い方を想定したサービス内容で、[[プライバシー侵害]]などの問題のほか男性差別的な発想に基づくものだと批判された<ref>関口賢「[http://www.rbbtoday.com/article/2011/09/02/80566.html “彼氏を追跡できる”と話題の「カレログ」がお詫び「男性差別の意図ない」]」RBB TODAY(2011年9月2日)</ref>。


===イギリス===
== 男性差別との指摘のある事例(日本国外) ==
*かつて男性の[[自動車保険]]の保険料は女性の2倍であった。[[英国放送協会|BBC]]の自動車番組[[トップ・ギア]]では、それを皮肉って「[[陰茎|ペニス]]を切り落とせ」と言う台詞が出てくるほどであった<ref>Series13 Episode2。内容としては「17歳男性の為のクルマを司会者3人がそれぞれ選べ」というものだが、保険料がネックになっていた。「ペニスを切り落とせ」はそこで登場したセリフである。Zeisel, Hans 1985 Say it with figure Harper & Row:169ff.</ref>。なおこのような格差が生まれた背景は、男性は女性に比べ運転機会が多く、女性に比して44:32で事故発生を起こす危険性が高いため、男性の保険料を高く設定する必要があるためであり、単なる性別差別ではない{{要出典|date=2021年8月}}。また現在では、同じ保険であれば男女で同じ保険料とするよう法律で定められている。
=== アメリカ ===
* 家事事件、刑事事件において、陪審員等の男性に対するジェンダーバイアスが存在する点は日本と同じである。
* 女性教師の男子生徒に対する姦淫も[[法定強姦]]として起訴されるが、男性の強姦ほど重刑にならないことがある<ref>[http://edition.cnn.com/2005/LAW/11/22/teacher.sex/index.html Guilty of sex with student, teacher avoids prison]</ref>。
* 18歳から25歳の市民権か永住権のある男性に対し、選抜徴兵登録制度(Selective Service System)に郵便局で登録することが強制されている。拒否すると、州によっては罰金刑を受ける他、政府の奨学金を受けられなくなるなどの各種不利益を受ける<ref>[[:en:Selective Service System]]、[http://www.sss.gov 公式サイト]</ref>。また永住権保持者の場合、連続滞在期間の条件を満たしていても市民権が認められない。そもそも徴兵に応じる義務は男性にしか課されていない。
* 軍人の中の女性の割合は20%程だが、戦死者のほとんどが男性である。女性が男女平等を隠れ蓑にマスコミを通じて軍や国防総省に対圧力を掛け、危険な任務だけ男性に押し付けていると指摘されている。
* イラク戦争中に一部部隊において、兵士に対して任期中妊娠を禁止し、妊娠した場合は[[軍法会議]]にかけるという規則を設けたが人権団体・女性団体等の圧力によって撤回した。結局規則に違反し妊娠した女性兵士への処分は不問にされ、女性は本国に帰還し軍がマスコミの圧力に屈した形となったが、戦地で妊娠すれば女性は無条件で帰還でき戦死の危険を回避できるのであればきわめて不公平であり、生死をかける軍人の役目を放棄することであり、また軍を根本から揺るがしかねないと批判された。これも女性が子供を盾に危険な任務を人権団体・女性団体等の圧力を通じて故意に避け男性に押し付けているとの指摘が出されている。一方非番中の性行為において避妊を強制する権限が軍にあるのかとの根本的な疑問も出された。
* 兵卒では男性の割合が圧倒的に多いが、将校の男女比は拮抗している。ポジティブ・アクションの結果である。
* 日本の痴漢冤罪に代わって、強姦冤罪が多発している。復讐などを目的とする故意の虚偽告訴の事例も多いが、特に対策は採られていない。


=== 韓国 ===
===韓国===
* [[兵役]]の有無<ref>{{Cite book|和書
*[[徴兵制度|兵役]]の有無<ref>{{Cite book|和書
|author=尹載善
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|id=ISBN 978-4062810241
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}}</ref>。[[大韓民国|韓国]]の男子学生の46.3%は、韓国内に兵役などの男性差別があると考えている<ref>[http://www.chosunonline.com/article/20060813000011 『韓国の男子学生「大学には男性差別がある」46.3%』] 2006年08月13日付配信 朝鮮日報</ref>。
}}</ref>。[[大韓民国|韓国]]の男子学生の46.3%は、韓国内に兵役などの男性差別があると考えている<ref>[http://www.chosunonline.com/article/20060813000011 『韓国の男子学生「大学には男性差別がある」46.3%』] 2006年08月13日付配信 朝鮮日報</ref>。
* 男性は強姦罪の被害者にならない(日本と同じ)<ref name="chousennippou060117">[http://www.chosunonline.com/article/20060117000070 韓国男性を差別する法律の中身とは?』 2006年01月17日付配信 朝鮮日報]</ref>。
*2006年に民法が改正されるまでは、婚姻可能年齢を男性は満18歳、女性は満16歳と定めて(日本と同じ)<ref name="chousennippou060117">[https://transnews.exblog.jp/2545428/ 韓国男性を差別する法律の中身とは?]</ref>。しかし男女平等の観点から、2006年に男女とも満18歳に統一されている
* 2006年民法が改正されるまでは婚姻可能年齢を男性は満18歳、性は満16歳と定めていた(日本と同じ)<ref name="chousennippou060117" />。しかし、現在は男女平等の観点から是正されている
*国家有功者・独立有功者及びそれらの遺族ついて、国家養老施設で保護される条件が性は60以上性は65以上と定められてい<ref name="chousennippou060117" />。
*養老施設へ入居条件として女性は60歳以上性は65以上と定められ、女性が優先されている<ref name="chousennippou060117" />。
*直系尊属手当需給権者が男尊属の場合は60歳、尊属の場合55歳と定められている<ref name="chousennippou060117" />。
*[[大韓航空]]には、[[客室乗務員]]の募集と採用において、男性を排除する採用慣行が存在するため、2008年に国家人権委員会からこれを男性差別だと判断され、この採用慣行を是正するように勧告された<ref>{{cite news|url=http://news.sbs.co.kr/sports/section_sports/sports_read.jsp?news_id=N1000694716|title=大韓航空、男性差別是正勧告を拒否|publisher=SBS|date=2010年1月18日}}</ref>。
* 直系尊属家族の手当需給権者が男性尊属の場合は60歳、女性尊属の場合は55歳と定められている<ref name="chousennippou060117" />。
* 女性専用駐車場が存在する。(女性専用車両もあったが、女性団体からの反対により現在は行われていない)


=== その他 ===
===日本===
====政治====
* [[ドイツ]]と[[トルコ]]の徴兵制を男性差別とみなして抗議する運動が存在する。また、法律の上では女子徴兵制の存在する[[イスラエル]]でも、実務では女性の兵役義務を免除する取り扱いが為されている。
*結婚可能年齢 &mdash; 2022年3月31日まで、[[結婚]]可能年齢は男性は満18歳、女性は満16歳であったが<ref>[https://laws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089#2655 民法第731条]</ref>、民法の一部を改正する法律(平成30年6月20日法律第59号)により、2022年([[令和]]4年)4月1日から男女とも満18歳に統一された<ref>{{cite news|title = 民法の一部を改正する法律(成年年齢関係)について|url =https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00218.html|publisher = 法務省|date = | accessdate = 2020-1-27}}</ref>{{efn|現在は役目を終えているが、以前は[[経過措置]]として、2004年4月2日から2006年4月1日の間に生まれた女性は、18歳にならなくても結婚が可能であった。}}。
* [[カナダ]]では法廷での[[セカンドレイプ]]を防ぐという名目のもと、性犯罪に関する刑事訴訟で被告人の発言する権利が制限されている。冤罪が蔓延する一因となっている。
* [[強姦罪]] &mdash; かつて[[b:刑法第177条|刑法177条]]から[[b:刑法第180条|180条]]で規定されていた強姦罪では、女性に対する[[強姦]]の規定だけしか存在しなかった。これは、かつての強姦罪規定においては、強姦による妊娠が重要視されたためでもあり、男性に対する強姦と同様に肛門性交や口淫も含まれなかった。この定義の範囲を拡大して、男性に対する強姦も重大な犯罪とされることを確保することが、性差別是正の観点により[[国際連合]]の[[自由権規約人権委員会]]から日本に対して勧告されていた<ref>[https://www.mofa.go.jp/policy/human/civil_ccpr2.pdf 国連自由権規約委員会の最終見解]2008年10月10日</ref>。[[男性への強制性交]]も参照のこと。2017年(平成29年)7月13日に、男性が被害者の場合を含む[[強制性交等罪]]の規定が設けられることに伴い、強姦罪の名称は廃止された。法定刑は5年以上になった<ref>[https://dot.asahi.com/amp/wa/2019090600045.html 23歳の美人シングルマザーが小学6年生へのわいせつ行為で有罪判決] AREA dot</ref>。
* [[イギリス]]では、男性の[[自動車保険]]の保険料は女性の2倍である<ref>男性は女性に比べ運転機会が多く、女性に比して44:32で事故発生を起こす危険性が高いため、男性の保険料を高く設定する必要がるためであり、単なる性別差別ではない。Zeisel, Hans 1985 ''Say it with figure ''Harper & Row:169ff.</ref>。男性は[[骨粗鬆症]]を発症しても保険の対象外である。
* [[助産師]] &mdash; [[保健師助産師看護師法]]では[[助産師]]資格についての規定があるが、第3条で資格対象を女性のみに限定しており<ref>[https://laws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000203#6 保健師助産師看護師法第3条]</ref>、男性の産婦人科[[医師]]が存在するのに助産師になれないのは、男性差別の観点から疑問が呈されている<ref>[http://www.jclu.org/katsudou/seimei_ikensho/20030127/05midwife.html 女性差別撤廃条約日本政府報告書第3回審議] 社団法人自由人権協会</ref>。
* [[ノルウェー]]には、「母と子ども」専用で、父親は利用できない病院等の公的機関がある<ref>『[[読売新聞]]』2007年10月30日朝刊</ref>。
* [[労働災害]]、[[遺族年金]] &mdash; 夫が死亡した妻に対しては、無条件で労災遺族年金支給されるのに対し、妻が死亡した夫に対しては、55歳未満の場合は支給されない<ref>[https://allabout.co.jp/gm/gc/13524/ 夫に冷たい、遺族年金] - 和田雅彦、All About、2006年3月24日。</ref>。
* [[レソト]]では男子の識字率・就学率が女子より低い。[[日本ユニセフ協会]]は「レソトでは女子の識字率及び就学率は男子より高いです。これは男子は小学校を卒業すると南アフリカ共和国に出稼ぎに行き、残された女子が学校へ残るためだと考えられます」と報告している<ref>[http://www.unicef.or.jp/library/report/kin_africa07.html 「南部アフリカ危機報告会 南部アフリカにおける食料危機とHIV/エイズ:レソト王国の場合」]([[日本ユニセフ協会]])</ref>。
**[[大阪地方裁判所]]は2013年11月25日、[[地方公務員災害補償法]]による規定を、[[日本国憲法]]違反であると判断した<ref>[https://www.nikkei.com/article/DGXNASHC2501N_V21C13A1000000/ 遺族年金、受給資格の男女差「違憲」 大阪地裁が初判断] 日本経済新聞 2013年11月25日</ref>が、[[大阪高等裁判所]]で開かれた第二審では、労働環境の男女格差は現在も歴然として存在するとして、遺族年金の男女で異なる支給条件は、[[日本国憲法第14条]]の[[法の下の平等]]には違反しないとし、男性側の請求を棄却した<ref>[https://www.sankei.com/article/20150619-IASSJJG2JFNFBJVCZ7HMWQHZVI/ 遺族年金男女差、2審は合憲 1審「違憲」判決を取り消し 大阪高裁] - 産経ニュース、2015年6月19日</ref>。2017年(平成29年)3月21日に[[最高裁判所 (日本)|最高裁判所]]が高裁判決を支持し、男性の敗訴が決定した<ref>[https://www.nikkei.com/article/DGXLZO14328300R20C17A3CR8000/ 遺族年金の男女差「合憲」 最高裁が初判断 賃金格差踏まえ] - 日本経済新聞、2017年3月21日</ref>。{{main|労働災害#労災遺族年金における男性差別問題}}
*[[シンガポール]]の鞭打刑は16~50歳の男性で医師が執行可能と判断した者のみを対象としている<ref>参考:[en:Caning in Singapore]</ref>。
* [[寡婦年金]] &mdash; 夫と死別した妻に対しては寡婦年金が支給される場合があるが、妻と死別した夫に対しては支給されない<ref>[http://www.nenkin.go.jp/n/www/service/detail.jsp?id=5082 寡婦年金を受けられるとき] 日本年金機構</ref>。こういった女性だけにしか年金が支給されない点については、男性だからという理由で年金を受ける権利が与えられないのには違和感を覚えるという、男女平等や男性差別の観点から疑問が呈されている<ref>[http://www.office-onoduka.com/morau_kahu/mk0601.html 寡夫年金Q&A]</ref>。{{main|寡婦#寡婦に対する制度}}
* [[児童扶養手当]] &mdash; 2010年7月までは、児童扶助手当が母子家庭には支給されるが、父子家庭に対しては児童扶養手当が支給されなかったが、父子家庭を不当に排除しているとの批判もあり<ref>[https://www.jcp.or.jp/akahata/aik09/2009-07-08/2009070802_01_1.html なぜ父子家庭を排除するのか] しんぶん赤旗 2009年7月8日</ref>、2010年(平成22年)8月に[[児童扶養手当法]]が改正され、父子家庭に対しても支給されるようになった<ref>{{Egov law| 336AC0000000238 |児童扶養手当法(昭和36年法律第238号)}}、[http://www.zenfushiren.jp/ NPO法人全国父子家庭支援連絡会が児童扶養手当法改正に大きく貢献し父子家庭にも支給が実現]</ref>。
* [[後遺障害]] &mdash; [[顔]]に傷が残る後遺障害について、女性の方が保険金額が高くなる([[自賠責]]保障法施行令第2条別表2による 男性への14級適用に対して2階級高い12級 大きな傷の場合には男性が12級適用に対して5階級高い7級<ref>[http://www.asahi-net.or.jp/~zi3h-kwrz/law2afteref.html 後遺障害等級表]</ref>)。その理由として、女性の方が容姿を重要視されるという考え方がある<ref>[http://www.kamo-law.com/column_b.htm 加茂隆康法律事務所]</ref>。[[労働災害]]において、このような扱いは違憲であると[[京都地方裁判所]]が判例を示し<ref>[https://web.archive.org/web/20100530070856/mainichi.jp/select/today/news/20100527k0000e040077000c.html 労災で顔にやけど「性別で差」は違憲…京都地裁] 毎日新聞 2010年5月27日</ref>、これを受けて、認定業務を担当する厚生労働省労災補償部補償課は基準見直しを決定<ref>[http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2010061000368 男女差「違憲」で控訴断念=顔やけど跡の障害認定-厚労省]時事通信2010年6月10日</ref>。等級表の制定は[[1947年]](昭和22年)、等級表の元になった基準が制定されたのは、労災保険法の前身の「工場法」によるもので[[1936年]]([[昭和]]11年)であるという<ref>[https://archive.is/20120710160454/mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20100827k0000m070124000c.html 記者の目:顔の傷労災補償男女差]毎日新聞2010年8月27日、古屋敷尚子</ref>。
* [[丸刈り]] &mdash; [[自衛隊]]の新隊員への訓練、[[警察学校]]の学生、[[日本の刑務所]]の[[受刑者]]においては、男性に対してのみ丸刈りが画一的に課せられている。また、一部の学校では校則や部活動の規則<ref>特に運動部</ref>として、丸刈りやスポーツ刈りを規定している学校もある。一方で大抵の場合、女性受刑者は髪型が自由で、収監時に染髪されている状態だった場合は、そのままでいることが黙認されている<ref>福島瑞穂 『福島みずほの刑務所の話』 現代人文社、2003年10。なお、2005年に改正された法律により「受刑者に対する意に反する調髪は衛生上の必要性を除く調髪する事は無い」とされているものの、「衛生上の必要」という名目で、男子に対してのみ丸刈りが強制されている。</ref>。

====経済====
* 就職差別 &mdash; [[客室乗務員]]、[[秘書]]・受付事務・一般事務などの事務職、[[看護師]]・[[介護士]]・[[保育士]]などの専門職、食品・菓子店・[[スーパーマーケット]]の[[パートタイマー]]は、女性が多数を占める職種である<ref>[https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?tclass=000001013824&cycle=0&layout=datalist 人口・就業に関する統計表]平成19年就業構造基本調査</ref>。
*育児 &mdash; 男性は女性に比べ、育児休業を取得することが困難である。育児休暇の取得は、[[育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律|育児介護休業法]]によって性別に関係なく認められているが、厚生労働省が発表した2011年度の雇用均等基本調査によると、女性の育児休業取得率87.8%に対し、男性の育児休業取得率はわずか2.63%と極めて低くなっている<ref>[https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/71-23.html 雇用均等基本調査] 厚生労働省</ref>。この背景としては、企業・職場において女性に比べて男性の育児休暇取得に対する理解がないことや、男女を問わず「男は仕事、女は家庭」といった[[ステレオタイプ]]なジェンダー・バイアス(性的偏見、性差別)の風潮があることが指摘されている<ref>[https://oisr-org.ws.hosei.ac.jp/images/oz/contents/547-02.pdf 育児における男女共同参画] 下夷美幸, 大原社会問題研究所雑誌, 2004年6月</ref>。[[テレビ東京]]『[[日経スペシャル ガイアの夜明け]]』で取り上げられた際には「男性の育児休暇制度だけを整備しても、休暇取得率は上がらない。企業の、職場の意識を変える必要がある」という提起がされている<ref>「[https://www.tv-tokyo.co.jp/gaia/backnumber/preview050517.html 私が子供を産めたわけ]」『日経スペシャル ガイアの夜明け』2005年5月17日放送、テレビ東京。</ref>。
*肉体労働・命の危険が伴う労働 &mdash; [[男女共同参画]]について、[[兵庫県庁]]が職員の意識、実態を調査したところ、見直すべき職場慣行として「[[引越し]]などの力仕事は男性のみでする傾向にあり、負担が大きい」「男性の方が[[長時間労働]]を強いられている」「[[災害]]時の人員配備で、女性が免除されている」などの問題点が挙げられた<ref>{{Cite web|和書|publisher=神戸新聞|date=2009-04-25|accessdate=2009-04-25|url=http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/0001856474.shtml|url-status=dead|url-status-date=2012-08-29|archiveurl=https://web.archive.org/web/20090430185705/http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/0001856474.shtml|archivedate=2009-04-30|title=男女共同参画、溝くっきり 県職員意識調査|author=森本尚樹}}</ref>。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
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=== 注釈 ===
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=== 出典 ===
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== 参考文献 ==
== 参考文献 ==

* {{Cite book|和書
*[[加藤秀一]]『はじめてのジェンダー論』(有斐閣、2017年)ISBN 978-4-641-15039-3
|author=竹中英人
*Hellman, Deborah 2008 When Is Discrimination Wrong? Cambridge, Mass.: Harvard University Press. =池田喬・堀田義太郎訳(『差別はいつ悪質になるのか』法政大学出版局、2018年)ISBN 978-4-588-60354-9
|year=1999
*[[辻村みよ子]]『ポジティヴ・アクション――「法による平等」の技法』(岩波書店、2011年)ISBN 9784004313304
|title=男は虐げられている
*[[辻村みよ子]]『概説 ジェンダーと法』(信山社、2013年)ISBN 9784797286090
|publisher=郁朋社
|id=ISBN 978-4873020297
}}
* {{Cite book|和書
|author=千葉展正
|authorlink=千葉展正
|year=2004
|title=男と女の戦争—反フェミニズム入門
|publisher=展転社
|id=ISBN 978-4886562463
}}
* {{Cite book|和書
|author=フランシス・バウムリ
|coauthors=
|year=1991
|title=正しいオトコのやり方―ぼくらの男性解放宣言
|publisher=学陽書房
|id=ISBN 978-4313850620
}}
* {{Cite book
* {{Cite book
|last=Warren
|last=Warren
219行目: 98行目:
|publisher=Berkley Publishing Group
|publisher=Berkley Publishing Group
|id=ISBN 978-0425181447
|id=ISBN 978-0425181447
}}、邦訳は [[ワレン・ファレル]]著、久米泰介訳『男性権力の神話 《男性差別》の可視化と撤廃のための学問』([[作品社]]、2014年)ISBN 978-4-86182-473-9
}}


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
* [[性差別]]
* [[性差別]]
** [[女尊男卑]]
** [[女性差別]]
** [[女性差別]]
** [[間接差別]]
** [[間接差別]]
** [[ミソジニー]]
** [[ミサンドリー]]
** [[ミサンドリー]]
* [[メンズリブ]]・[[マスキュリズム]]
* [[マスキュリズム]]・[[メンズリブ]]
** [[ワレン・ファレル]]
** [[ワレン・ファレル]]
** [[久米泰介]]
* [[フェミニズム]]・[[フェミニスト]]
* [[クシャルハラスメ]]
* [[アファーマティブ・アクシン]]
* [[ポジティブ・アクション]]
* [[徴兵制度]]・[[兵役]]
* [[徴兵制度]]・[[兵役]]
* [[客室乗務員]]
* [[客室乗務員]]
** [[日本航空の労働組合]]
** [[日本航空の労働組合]]
* [[女性専用車両]]/専用席
* [[放送禁止用語]]
* [[痴漢冤罪]]
* [[ドメスティックバイオレンス]]
* [[メイル・レイプ]]
* [[主夫]]
* [[主夫]]
* [[女性専用車両]]
* [[ジェンダー]]・[[ジェンダーフリー]]
* [[ジェンダー]]・[[ジェンダーフリー]]
* [[日本弱者男性センター]]
* [[反フェミニズム]]
* [[弱者男性]]

== 外部リンク ==
* 男性団体
** [http://www.geocities.jp/mlfs2005/ メンズ・リブ・フォーラム札幌]
* 公的機関
** [http://www.gender.go.jp/ 内閣府男女共同参画局]


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[[Category:ジェンダー]]
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[[Category:男性学]]

[[en:Men's rights]]
[[pl:Maskulinizm]]
[[sv:Mansforskning]]
[[tr:Erkek hakları]]

2024年11月10日 (日) 19:52時点における最新版

男性差別(だんせいさべつ)とは、男性に対する性差別である。女尊男卑(じょそんだんぴ)と呼ぶ人もいる。対義語は女性差別、または男尊女卑という。男性差別撤廃を目指す思想や運動をマスキュリズムといい、ワレン・ファレル久米泰介といった研究者が考察を行っている。また、男性解放を目指すメンズリブという運動もある。

男性差別に対する国際的な動きも存在する。例えば1999年以来、毎年11月19日が国際男性デー(International Men's Day)として定められ、男性や少年の健康、ジェンダー関係の改善、男女平等の促進、正しい男性のロールモデルの形成、コミュニティ・家族・結婚・育児への男性の貢献などに焦点をあて、男性差別と少年差別を強調しながら世界各国で活動している[1]。2018年時点で、国際男性デーのイベントは60カ国以上で開催された[1]

理論的検討

[編集]

ある制度や慣習が男性差別と言えるのかどうか、という点については様々な立場からの議論がある。

マスキュリズムにおける議論

[編集]

マスキュリストワレン・ファレルは、性差別は男性から女性への一方向的なものではなく、双方向的なものであり、「どちらの性も抑圧されてきた」としたうえで、女性にとって不利益となる抑圧を女性差別と呼び、男性にとって不利益となる抑圧を男性差別と呼んでいる[2]。ファレルは、男性が一方的に女性を支配しているという想定に反論し、実際には男性支配と女性支配が組み合わさっていると主張する。ファレルは女性差別の存在を否定しているわけではなく、男性差別も同時に存在していると論じ、男性差別について多くの具体例を挙げている。

一方で、社会学者(男性学)の田中俊之は、ファレルの見解について、差別や権力に関する理論的な考察が不十分であり[3]、「なぜそれが男性差別であると言えるのか理論上の説得的な根拠が提示されないまま、次々と、女性差別を助長するような事例の紹介がされる」問題点があると指摘している[4]

ジェンダー論における議論

[編集]

加藤秀一は、一見すると「女性優遇」と思われるような状況についても、「それらがなぜ、何のために行われ、どのような働きをしているのかといった社会的文脈の中に位置づけて」考える必要があると主張している[5]。たとえば女性専用車両は「女性たちに何かプラスをもたらしているわけではなく、せいぜい痴漢被害というマイナスを少しでも埋め合わせてゼロに戻そうとする補償的措置にすぎない」[6]ため、女性を「優遇」しているとは言えないとする[7]。また映画館のレディース・デイは、男女間の賃金格差という社会的文脈を考慮すれば「男性差別」とは言いきれず、「雇用や労働をめぐる男女平等が達成されれば、このようなサービスはおのずと消滅していく」だろうと述べている[8][9]

女性の方が男性よりも社会福祉や公的扶助を利用しやすいという傾向について、京都大学准教授の丸山里美は、女性は雇用保険や年金の対象にならない低賃金の働き方の人が大半であることから、その利用が認められやすくなっていると論じている[10]性別役割分業を前提とした近代家族モデルのもとで、男性は賃労働に就くことを期待されるのに対し、女性は家庭での再生産労働を期待され、この結果、労働報酬から保険料を拠出するような保険制度(雇用保険、医療保険、年金など)は男性と結びつき、公的扶助による生活保障は女性と結びつくことになるのだという[11]。さらに公的扶助の受給には社会的スティグマをともなう[12]ため、「保険と扶助のあいだには、序列が存在している」としている[13]

アファーマティブ・アクションに関する法学的な議論

[編集]

女性差別撤廃条約第4条において、「男女の事実上の平等を促進することを目的とする暫定的な特別措置」は差別ではないと規定されている。また「母性を保護することを目的とする特別措置」も差別ではないとされている。ただしアファーマティブ・アクションはあくまでも一時的・暫定的なものであるため、「機会および待遇の平等」が実現されたときには、廃止されなければならない[14]アファーマティブ・アクションの法的根拠として、憲法第14条1項、男女共同参画社会基本法第2条・第8条、男女雇用機会均等法第8条などがある[15]

アファーマティブ・アクションは「格差是正のための暫定的なものである」という限りにおいて正当化されている。しかし具体的な制度設計のあり方によっては、逆差別やスティグマ化などの問題を引き起こしうる(2018年に発覚した医学部不正入試問題も参照)[16]。差別是正措置にはさまざまな種類があり[17]、実施方法も多様であるため、社会状況に応じた適切な運用が必要だとされている[18]

アファーマティブ・アクションは、女性の社会参画を促すものである。就労や政治参画における男女格差は、単に女性が不利益を被るだけでなく、男性にも権利侵害や不利益をもたらす[19]。それゆえ女性の社会参画を促す政策は、男性の権利侵害や不利益を解消する側面もあるとされている。

哲学的差別論における議論

[編集]

近年は、何が不正な差別であるか、という問いをめぐる哲学的議論が展開されている[20]。たとえばデボラ・ヘルマンによれば、人々の間に区別を付けることが、その一方のグループに属する人々を価値の劣ったものとして貶めることになる場合、その区別は不正な差別である。このとき、何が不正な差別になるのかは社会的文脈によって決まる[21]。ヘルマンはこれを性別に関する差別について当てはめて議論を行っている[22]

つまり男女間で区別を設けることが必ずしも「男性差別」であるとはかぎらない。とはいえこれまで議論されてきたように、「男性差別」でないとしてもまったく問題がないとはかぎらない。また、「不当である」ということと「差別である」ということは異なる概念である。それゆえ事例を検討するときには、背景にある社会的文脈を考慮しながら、具体的にどのような点に問題があるのか、ということに注目する必要がある。

事例

[編集]

アメリカ

[編集]
  • 18歳から25歳までの永住権保持者または市民の男性には選抜徴兵登録制度英語版に郵便局で登録することが強制されている。拒否すると、州によっては罰金刑に処される他、政府の奨学金を受けられなくなるなどの各種不利益を受ける[23]。ただし、この男性限定の選抜徴兵登録については、連邦最高裁で男性差別ではなく合憲との判決が下されている。
  • 1996年7月9日付けのボストン・グローブ紙では、13歳の少年を強姦したとして訴えられた37歳の女性の事件を報道したが、その中で「少年も望んでいたに違いないさ」「夢のようなことさ」「間違いなく強姦だけど、男の子は若いうちから性的に活発じゃなきゃっていう社会通念があるから、みんなどこかで許容してしまっている」といった、男性被害者に対する偏見があるとしている[24]
  • 2005年に、8歳の少年が14歳の少女にわいせつ行為をされた際に「たとえ初めは少女が誘ったにせよ少年は対等の行為参加者だった」として少年のほうが「未成年者へのわいせつ行為」で訴えられた事件が報道された(後に検察側は起訴を取り下げた)。怒った母親は、こういう場合に親は息子が起訴されることを恐れず、州の担当部署に堂々と訴えるべきだと述べている[25]

イギリス

[編集]
  • かつて男性の自動車保険の保険料は女性の2倍であった。BBCの自動車番組トップ・ギアでは、それを皮肉って「ペニスを切り落とせ」と言う台詞が出てくるほどであった[26]。なおこのような格差が生まれた背景は、男性は女性に比べ運転機会が多く、女性に比して44:32で事故発生を起こす危険性が高いため、男性の保険料を高く設定する必要があるためであり、単なる性別差別ではない[要出典]。また現在では、同じ保険であれば男女で同じ保険料とするよう法律で定められている。

韓国

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  • 兵役の有無[27][28]韓国の男子学生の46.3%は、韓国内に兵役などの男性差別があると考えている[29]
  • 2006年に民法が改正されるまでは、婚姻可能年齢を男性は満18歳、女性は満16歳と定めていた(日本と同じ)[30]。しかし男女平等の観点から、2006年に男女とも満18歳に統一されている。
  • 国家有功者・独立有功者及びそれらの遺族について、国家養老施設で保護される条件が、女性は60歳以上、男性は65歳以上と定められている[30]
  • 直系尊属家族の手当需給権者が男性尊属の場合は60歳、女性尊属の場合は55歳と定められている[30]
  • 大韓航空には、客室乗務員の募集と採用において、男性を排除する採用慣行が存在するため、2008年に国家人権委員会からこれを男性差別だと判断され、この採用慣行を是正するように勧告された[31]

日本

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政治

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  • 結婚可能年齢 — 2022年3月31日まで、結婚可能年齢は男性は満18歳、女性は満16歳であったが[32]、民法の一部を改正する法律(平成30年6月20日法律第59号)により、2022年(令和4年)4月1日から男女とも満18歳に統一された[33][注釈 1]
  • 強姦罪 — かつて刑法177条から180条で規定されていた強姦罪では、女性に対する強姦の規定だけしか存在しなかった。これは、かつての強姦罪規定においては、強姦による妊娠が重要視されたためでもあり、男性に対する強姦と同様に肛門性交や口淫も含まれなかった。この定義の範囲を拡大して、男性に対する強姦も重大な犯罪とされることを確保することが、性差別是正の観点により国際連合自由権規約人権委員会から日本に対して勧告されていた[34]男性への強制性交も参照のこと。2017年(平成29年)7月13日に、男性が被害者の場合を含む強制性交等罪の規定が設けられることに伴い、強姦罪の名称は廃止された。法定刑は5年以上になった[35]
  • 助産師保健師助産師看護師法では助産師資格についての規定があるが、第3条で資格対象を女性のみに限定しており[36]、男性の産婦人科医師が存在するのに助産師になれないのは、男性差別の観点から疑問が呈されている[37]
  • 労働災害遺族年金 — 夫が死亡した妻に対しては、無条件で労災遺族年金支給されるのに対し、妻が死亡した夫に対しては、55歳未満の場合は支給されない[38]
  • 寡婦年金 — 夫と死別した妻に対しては寡婦年金が支給される場合があるが、妻と死別した夫に対しては支給されない[42]。こういった女性だけにしか年金が支給されない点については、男性だからという理由で年金を受ける権利が与えられないのには違和感を覚えるという、男女平等や男性差別の観点から疑問が呈されている[43]
  • 児童扶養手当 — 2010年7月までは、児童扶助手当が母子家庭には支給されるが、父子家庭に対しては児童扶養手当が支給されなかったが、父子家庭を不当に排除しているとの批判もあり[44]、2010年(平成22年)8月に児童扶養手当法が改正され、父子家庭に対しても支給されるようになった[45]
  • 後遺障害に傷が残る後遺障害について、女性の方が保険金額が高くなる(自賠責保障法施行令第2条別表2による 男性への14級適用に対して2階級高い12級 大きな傷の場合には男性が12級適用に対して5階級高い7級[46])。その理由として、女性の方が容姿を重要視されるという考え方がある[47]労働災害において、このような扱いは違憲であると京都地方裁判所が判例を示し[48]、これを受けて、認定業務を担当する厚生労働省労災補償部補償課は基準見直しを決定[49]。等級表の制定は1947年(昭和22年)、等級表の元になった基準が制定されたのは、労災保険法の前身の「工場法」によるもので1936年昭和11年)であるという[50]
  • 丸刈り自衛隊の新隊員への訓練、警察学校の学生、日本の刑務所受刑者においては、男性に対してのみ丸刈りが画一的に課せられている。また、一部の学校では校則や部活動の規則[51]として、丸刈りやスポーツ刈りを規定している学校もある。一方で大抵の場合、女性受刑者は髪型が自由で、収監時に染髪されている状態だった場合は、そのままでいることが黙認されている[52]

経済

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  • 就職差別 — 客室乗務員秘書・受付事務・一般事務などの事務職、看護師介護士保育士などの専門職、食品・菓子店・スーパーマーケットパートタイマーは、女性が多数を占める職種である[53]
  • 育児 — 男性は女性に比べ、育児休業を取得することが困難である。育児休暇の取得は、育児介護休業法によって性別に関係なく認められているが、厚生労働省が発表した2011年度の雇用均等基本調査によると、女性の育児休業取得率87.8%に対し、男性の育児休業取得率はわずか2.63%と極めて低くなっている[54]。この背景としては、企業・職場において女性に比べて男性の育児休暇取得に対する理解がないことや、男女を問わず「男は仕事、女は家庭」といったステレオタイプなジェンダー・バイアス(性的偏見、性差別)の風潮があることが指摘されている[55]テレビ東京日経スペシャル ガイアの夜明け』で取り上げられた際には「男性の育児休暇制度だけを整備しても、休暇取得率は上がらない。企業の、職場の意識を変える必要がある」という提起がされている[56]
  • 肉体労働・命の危険が伴う労働 — 男女共同参画について、兵庫県庁が職員の意識、実態を調査したところ、見直すべき職場慣行として「引越しなどの力仕事は男性のみでする傾向にあり、負担が大きい」「男性の方が長時間労働を強いられている」「災害時の人員配備で、女性が免除されている」などの問題点が挙げられた[57]

脚注

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注釈

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  1. ^ 現在は役目を終えているが、以前は経過措置として、2004年4月2日から2006年4月1日の間に生まれた女性は、18歳にならなくても結婚が可能であった。

出典

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  1. ^ a b International Men's Day
  2. ^ 『男性権力の神話 《男性差別》の可視化と撤廃のための学問』p.34
  3. ^ 「ファレルは権力を,「自身の人生をコントロールする」[Farrell, W 1993=2014:46]能力と定義している。これは社会学の領域では,かなり特殊な権力の定義だと考えられる。より マクロな観点の権力論はありうるにしても,M.ウェーバー以降,権力は「他者の行為を,その抵抗を排しても自己の意図する方向に制御しうる能力」[長谷川他 2007:79-80]という定義が基本となってきた。ファレルの権力の定義は,他者抜きのものであり,これでは男性自身が感じる男性として生きる上での「生きづらさ」を記述することは可能でも,差別や支配を論じることはできない。」(田中 2016: 59)
  4. ^ 書評と紹介 ワレン・ファレル著/久米泰介訳『男性権力の神話 : 《男性差別》の可視化と撤廃のための学問』”. 田中 俊之. 2018年10月5日閲覧。
  5. ^ 加藤秀一(2017)『はじめてのジェンダー論』有斐閣.p.165 太字は原文。ただし傍点は省略。
  6. ^ 加藤秀一『はじめてのジェンダー論』(有斐閣、2017年)p.166
  7. ^ 「女性専用車両が痴漢対策として理想的な方法だというわけではありません。本来は痴漢という犯罪自体を撲滅することが望ましいに決まっているのですが、それが実現するのはいつのことになるのか――そもそも可能かどうかさえ――わからないので、さしあたりの対症療法がとられたということです」(加藤 2017 p.165)
  8. ^ 加藤秀一『はじめてのジェンダー論』(有斐閣、2017年)p.169
  9. ^ ただしレディース・デイに対しては「男性差別」とは異なる観点からの批判がある 「映画館はべつに収入の低い女性に対する福祉事業として割引サービスを行なっているわけではありません。それに、収入の低い人に対する割引というなら、映画好きの貧乏学生は男性であっても割引を受けるに値すると言うべきでしょう。さらに、他人の性別を判定するという作業そのものに伴う問題もあります。外見的に女性に見えない人はどのように扱われるのでしょうか。性別が記載された身分証明書が必要なのでしょうか。戸籍上は男性であるトランス女性が十分には女性としてパスできていない場合、割引を受けられるのでしょうか。」(加藤 2017 p.168-169)
  10. ^ 「女性の場合には、そもそも雇用保険や年金の対象にならない、社会保険の利用から排除された低賃金の働き方の人が大半を占めているため、男性と比べて福祉や公的扶助の利用が認められやすいのである」(丸山里美『女性ホームレスとして生きる――貧困と排除の社会学』(世界思想社、2013年)p.43-44
  11. ^ 丸山里美,2013,『女性ホームレスとして生きる――貧困と排除の社会学』世界思想社,p.43
  12. ^ 「その [公的扶助:引用者注] 利用はスティグマをともなうものであり、利用に際して必要な資力調査は、女性本人の財産や収入だけではなく、収入をもたらしてくれる可能性のある男性関係にまで及び、生活の細部にわたって監視や管理が入り込むことになる」(丸山里美『女性ホームレスとして生きる─貧困と排除の社会学』(世界思想社、2013年)p.44
  13. ^ 丸山里美『女性ホームレスとして生きる─貧困と排除の社会学』(世界思想社、2013年)p.43
  14. ^ 女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約”. 外務省. 2018年10月5日閲覧。
  15. ^ (辻村みよ子『ポジティヴ・アクション――「法による平等」の技法』(岩波書店、2011年)p.186-195
  16. ^ 「例えば、女性の医師を増やす必要があるからといって、国家試験の女性受験者だけ合格基準点を自動的に引き下げたりするなら、「女性は能力もないのに医師になれる」というマイナスの評価を生み出しかねません。これは適用を誤った例で、合憲性・合法性の観点からも問題があり、女性に対して劣性の烙印(スティグマ)を与えるものでもあるため、女性からも到底賛同を得ることはできないでしょう。大学教員等も同じことで、女性であることを理由に、自動的・優先的に採用することなどは、妥当な方法ではありません。(……)少なくとも、候補者の能力が採用水準を満たしている場合に限り、個別事情や必要性・緊急性・暫定性等を勘案して一定の措置をとること、さらに、それについてのコンセンサスを前提的に得ておくことが必要です。ポジティヴ・アクションの方法は多様ですので、目的に応じた措置を有効・適切に活用しなければなりません」(辻村みよ子『ポジティヴ・アクション――「法による平等」の技法』(岩波書店、2011年)p.26
  17. ^ アファーマティブ・アクションの措置には「1.(逆差別が問題となりうるような)厳格な格差是正措置」「2.(性別を考慮に入れるなどの)中庸な格差是正措置」「3.(格差是正のための両立支援・環境整備など)一般的な施策を含めた緩やかな支援策」という三つの区別ができる(辻村 2011: 81)。日本の企業等で奨励されている3つめの措置についてはほとんど法的問題はないが、1つめの措置などについては、諸外国で違憲判決が出ている場合もある(辻村 2013: 37)
  18. ^ (辻村みよ子『ポジティヴ・アクション――「法による平等」の技法』岩波書店、2011年)
  19. ^ 「このような状況は、女性にとって不利益をもたらすだけでなく、男性にとっても、権利侵害や不利益を引き起こしています。過労死や自殺を強いられるほどの「会社人間」化の圧力や、育児の喜びを得ることができない長時間労働など、それはすでに明らかでしょう(辻村 2011: 3)」
  20. ^ 堀田義太郎「差別論のためのノート」”. www.arsvi.com. 2018年9月22日閲覧。
  21. ^ デボラ・ヘルマン著、池田喬・堀田義太郎訳『差別はいつ悪質になるのか』p.39
  22. ^ デボラ・ヘルマン著、著池田喬・堀田義太郎訳『差別はいつ悪質になるのか』p.62-70
  23. ^ 選抜徴兵登録制度の公式ウェブサイト
  24. ^ 『少年への性的虐待—男性被害者の心的外傷と精神分析治療』(リチャード・B・ガートナー、1999年の書物の翻訳、2005年) 68・69ページ ISBN 4-86182-013-8
  25. ^ 8-Year-Old Charged For Sexual Conduct With Sitter” (英語). CBSニュース. Canadian Childrens Rights Council (2005年7月28日). 2012年8月26日閲覧。
  26. ^ Series13 Episode2。内容としては「17歳男性の為のクルマを司会者3人がそれぞれ選べ」というものだが、保険料がネックになっていた。「ペニスを切り落とせ」はそこで登場したセリフである。Zeisel, Hans 1985 Say it with figure Harper & Row:169ff.
  27. ^ 尹載善『韓国の軍隊―徴兵制は社会に何をもたらしているか』中公新書、2004年。ISBN 978-4121017628 
  28. ^ チュチュンヨン『韓国徴兵、オレの912日』講談社、2006年。ISBN 978-4062810241 
  29. ^ 『韓国の男子学生「大学には男性差別がある」46.3%』 2006年08月13日付配信 朝鮮日報
  30. ^ a b c 「韓国男性を差別する法律の中身とは?」
  31. ^ “大韓航空、男性差別是正勧告を拒否”. SBS. (2010年1月18日). http://news.sbs.co.kr/sports/section_sports/sports_read.jsp?news_id=N1000694716 
  32. ^ 民法第731条
  33. ^ “民法の一部を改正する法律(成年年齢関係)について”. 法務省. https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00218.html 2020年1月27日閲覧。 
  34. ^ 国連自由権規約委員会の最終見解2008年10月10日
  35. ^ 23歳の美人シングルマザーが小学6年生へのわいせつ行為で有罪判決 AREA dot
  36. ^ 保健師助産師看護師法第3条
  37. ^ 女性差別撤廃条約日本政府報告書第3回審議 社団法人自由人権協会
  38. ^ 夫に冷たい、遺族年金 - 和田雅彦、All About、2006年3月24日。
  39. ^ 遺族年金、受給資格の男女差「違憲」 大阪地裁が初判断 日本経済新聞 2013年11月25日
  40. ^ 遺族年金男女差、2審は合憲 1審「違憲」判決を取り消し 大阪高裁 - 産経ニュース、2015年6月19日
  41. ^ 遺族年金の男女差「合憲」 最高裁が初判断 賃金格差踏まえ - 日本経済新聞、2017年3月21日
  42. ^ 寡婦年金を受けられるとき 日本年金機構
  43. ^ 寡夫年金Q&A
  44. ^ なぜ父子家庭を排除するのか しんぶん赤旗 2009年7月8日
  45. ^ 児童扶養手当法(昭和36年法律第238号) - e-Gov法令検索NPO法人全国父子家庭支援連絡会が児童扶養手当法改正に大きく貢献し父子家庭にも支給が実現
  46. ^ 後遺障害等級表
  47. ^ 加茂隆康法律事務所
  48. ^ 労災で顔にやけど「性別で差」は違憲…京都地裁 毎日新聞 2010年5月27日
  49. ^ 男女差「違憲」で控訴断念=顔やけど跡の障害認定-厚労省時事通信2010年6月10日
  50. ^ 記者の目:顔の傷労災補償男女差毎日新聞2010年8月27日、古屋敷尚子
  51. ^ 特に運動部
  52. ^ 福島瑞穂 『福島みずほの刑務所の話』 現代人文社、2003年10。なお、2005年に改正された法律により「受刑者に対する意に反する調髪は衛生上の必要性を除く調髪する事は無い」とされているものの、「衛生上の必要」という名目で、男子に対してのみ丸刈りが強制されている。
  53. ^ 人口・就業に関する統計表平成19年就業構造基本調査
  54. ^ 雇用均等基本調査 厚生労働省
  55. ^ 育児における男女共同参画 下夷美幸, 大原社会問題研究所雑誌, 2004年6月
  56. ^ 私が子供を産めたわけ」『日経スペシャル ガイアの夜明け』2005年5月17日放送、テレビ東京。
  57. ^ 森本尚樹 (2009年4月25日). “男女共同参画、溝くっきり 県職員意識調査”. 神戸新聞. 2009年4月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年4月25日閲覧。

参考文献

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関連項目

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