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== 商品名 ==
== 商品名 ==
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トリアゾラムは先発品としてのハルシオン([[ファイザー]]製)のほか、後述する[[後発医薬品]]も出ている。
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* ミンザイン([[日医工]])
* ミンザイン([[日医工]])

2012年9月28日 (金) 11:48時点における版

トリアゾラム
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
胎児危険度分類
法的規制
投与経路 経口投与
薬物動態データ
生物学的利用能44% (経口) 53% (舌下)
代謝肝臓
半減期1.5-5.5時間
排泄尿中82% 糞便中8%
識別
CAS番号
28911-01-5
ATCコード N05CD05 (WHO)
PubChem CID: 5556
DrugBank APRD00313
KEGG D00387
化学的データ
化学式C17H12Cl2N4
分子量343.2
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トリアゾラム (Triazolam) とは、第3種向精神薬の超短期作用型ベンゾジアゼピン睡眠導入剤である。商品名は、ハルシオン (Halcion) として米国アップジョン社が開発・販売を行した。その後、合併・買収を経て2003年よりファイザーから発売されている

商品名の「ハルシオン」はギリシャ神話に登場する風波を静めるという伝説の鳥、Halcyonに由来する[1]

日本では薬事法に基づく要指示薬指定医薬品・習慣性医薬品である。入手には医師処方箋が必要である。

作用機序

最高血中濃度到達時間は約1時間、半減期は約2.9時間、作用時間は約2時間である、超短期作用型の睡眠薬である。ベンゾジアゼピン系薬物の一般的機序は、GABA受容体のサブタイプのω1受容体に作用することで、Clチャネルを開口させることでClの透過性を亢進させ、過分極を発生させることで、活動電位の発生を抑制することにより、催眠作用を発現する。

肝臓のCYP3A4という酵素で代謝されるため、この酵素を阻害する薬物や、薬物の作用が高まる可能性があるので注意する必要がある。

歴史

製薬会社アップジョンは、1982年にトリアゾラムのFDA承認を受けた。

トリアゾラムは重大な副作用(主に精神的な)を懸念して市場から回収された国もあるが、アメリカ食品医薬品局(FDA)などは低用量での使用を許容していて、他にも認める国が存在する。

研究では、トリアゾラムは0.125 mgの低用量使用の場合でも精神障害(ときおり重度)と高い関連性を持つことが発見され、さらに患者がトリアゾラムをたった3週間だけ使用しただけでも、著しく不安を起こす人が多いことが分かった。重度の精神障害が頻発する事が判明し、 イギリスブラジルはトリアゾラムを禁止することを決めた[2][3]オランダは1979年に禁止し、ノルウェー・バミューダ・ジャマイカ・フィンランドでも禁止された。

医学文献では、トリアゾラムははるかに他のベンゾジアゼピンより、精神的・暴力反応などの奇妙な現象が発生していることを示している。トリアゾラムによる副作用の発生率の増加は、トリアゾラムの超短半減期と受容体への高親和性結合性(高力価)といった薬理学的特性によるものである。トリアゾラム短半減期と非常に高い力価が、昼間の不安リバウンド・記憶喪失・混乱・精神症について、他のベンゾジアゼピンより多く発生し、また重篤な理由である。 睡眠薬で多くの論文を発表しているあるアメリカの精神科医によると、低用量でもトリアゾラムのリスク/ベネフィット比によって、トリアゾラムは米国で市場に残るかどうか、彼は疑問を呈している。[4][5] トリアゾラムが暴力を扇動することは、いくつかの試験では受け入れられている。(特に暴力犯罪の被告人に傾向が高い)[6]

副作用

最も多いものに、一過性前向性健忘抗コリン作用・翌朝への持ち越しがあるとされている。また、大量服用により、呼吸抑制を起こすことがある。

めまい・ふらつきが起きる事が有るので、原則として就寝直前に服用するよう処方される。また、極稀であるが、夢遊病(意識のないまま、車を運転する・食事を取る・活動するなど)のような症状を起こすこともあるとされている。

アルコール飲酒)との併用にて、薬効が高まりすぎてしまうので、禁忌である。

依存性と離脱

トリアゾラムを含むベンゾジアゼピンの長期的使用は、薬剤耐性・薬物依存・リバウンド不眠症・中枢神経副作用に関わるとの文献が存在する。よってベンゾジアゼピン睡眠薬は、可能な限り低用量・短期間での使用が推奨される。非薬理学的治療法についても睡眠の質の向上となることが分かっている。[7] トリアゾラムの離脱・薬物依存のリスクは、他のベンゾジアゼピンよりはるかに高い。[8] トリアゾラムは、日常的に多量を服用するユーザに対して非常に高い依存性のリスクがある。[9] トリアゾラムの日常使用は催眠の薬物依存を発生させる。離脱症状は通常、トリアゾラム投与量を減量した際、または完全に停止した場合に現れる。短期的に夜間のみの服用であっても、トリアゾラムを中止した後には不眠症の悪化などの離脱症状(リバウンド不眠症)が発生する。[10][11]

日中の離脱症状は一般的にトリアゾラムが関連している。これは非常に半減期が短いためである。10日間の服用のみで、患者は不安・悩み・視野の欠落・パニック経験・うつ経験・非現実感・妄想を経験している。これらの反応は中間半減期を持つロルメタゼパムよりトリアゾラムのほうが一般的に発生している。このことより、より短時間作用型のベンゾジアゼピン系睡眠薬の服用は、深刻な昼間の禁断症状を発生させている。[12]この夜間の催眠作用のため、昼間に離脱不安を起こす現象は、トリアゾラムだけのものではないが、他の睡眠薬ではトリアゾラムで見られるほど重篤ではない。[13]

トリアゾラム長期使用後の急激な断薬は、重度のベンゾジアゼピン離脱症候群を起こす。トリアゾラムおよびニトラゼパムの突然の断薬後、患者には幻聴・視覚認知障害などの精神病を起こすことが報告されている。投与量の段階的かつ慎重な削減が、重度の離脱症候の発生を防ぐために推奨されている。[14]

用量・用法

通常成人1日 0.125mg から 0.25mg を就寝前に経口投与する。また高度な不眠症の場合 0.5mg を投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。不眠症の他、麻酔前や手術前にも使用される。

緑内障の者や気管支喘息などで呼吸機能が低下している者は投与してはならない。また、他の中枢神経抑制作用のある薬やアルコール、バルビツール酸誘導体などの強い影響下にある者への投与は禁止されている。

臨床では、高度の不眠症の高齢者では1回服用量 0.25 mg までという制限があり、高度な健常人の不眠症では1回服用量 0.5 mg までという制限がある。

トリアゾラムの発売当初、米国では 1 mg 錠も存在した。

薬物乱用

娯楽目的で服用する者もいるが、麻薬や他の一部の向精神薬のような多幸感はなく、サイケデリックを見るわけでもない。生じるのはに酔ったような酩酊感である。それに加え、健忘により思わぬ事故を引き起こす可能性があるため、睡眠目的以外の使用は禁忌である。

治療目的以外で、使用する目的もなく所持すると、麻薬及び向精神薬取締法にて、逮捕・処罰される。

トリアゾラムは乱用される可能性を持つ薬物である。娯楽用途・高い幸福感を得るために、医学的助言無しに長期間摂取されている。[15] ヒヒの研究では、嗜好薬剤自己注入テストによると、トリアゾラムが最も好まれるベンゾジアゼピンであることを示した。[16] 連続殺人犯の Jeffrey Dahmer はトリアゾラム(ハルシオン)を被害者の沈静目的に用いており、彼の伝記では Motley Crue のメンバーの Nikki Sixx がコカインとヘロインをハルシオンと共に用いていたことを参考にしていた。[17]

種類

日本で処方されるハルシオン0.25mgの錠剤 10錠包装
  • 錠剤:0.125mg, 0.25mg

錠剤SP包装に入っており、0.125 mg の規格と 0.25 mg の規格がある。

0.125 mg の錠剤は薄紫(0.25mgより薄い青色のため薄紫)であり、0.25 mg の錠剤は青色である。

ただし、後発医薬品の場合は包装および錠剤本体の色彩・形状ともに、見た目がまったく異なるものも存在する(トリアゾラム錠0.25mg「JG」など)。

脚注

  1. ^ "Frequently Asked Questions" (Press release). ファイザー. 2010年6月16日閲覧
  2. ^ Adam K, Oswald I (May 1993). “Triazolam. Unpublished manufacturers research unfavourable”. BMJ 306 (6890): 1475?6. doi:10.1136/bmj.306.6890.1475-b. PMC 1677863. PMID 8292128. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1677863/. 
  3. ^ Bramness JG, Olsen H (May 1998). “[Adverse effects of zopiclone]” (Norwegian). Tidsskr. Nor. Laegeforen. 118 (13): 2029?32. PMID 9656789. 
  4. ^ Kales A (September 1990). “Benzodiazepine hypnotics and insomnia”. Hosp. Pract. (Off. Ed.) 25 Suppl 3: 7?21; discussion 22?3. PMID 1976124. 
  5. ^ Manfredi RL, Kales A (September 1987). “Clinical neuropharmacology of sleep disorders”. Semin Neurol 7 (3): 286?95. doi:10.1055/s-2008-1041429. PMID 3332464. 
  6. ^ Abraham, John, "Transnational....: Adverse Drug Reactions and the Crisis Over the Safety of Halcion [triazolam] in the Netherlands and the UK. Social Science and Medicine: 55 (2002)1671?1690. http://www.sussex.ac.uk/sociology/documents/ssm02.pdf
  7. ^ Kirkwood CK (1999). “Management of insomnia”. J Am Pharm Assoc (Wash) 39 (5): 688?96; quiz 713?4. PMID 10533351. 
  8. ^ Altamura AC, Colacurcio F, Mauri MC, et al. (1989). “[Controlled clinical study on the effect of quazepam versus triazolam in patients with sleep disorders]” (Italian). Minerva Psichiatr 30 (3): 159?64. PMID 2691808. 
  9. ^ Veje JO; Andersen K, Gjesing S, Kielgast H. (1989-08-21). “Prescription of tranquilizers and hypnotics in the municipality of Holbaek”. Ugeskr Laeger. 151 (34): 2134?6. PMID 2773144. 
  10. ^ Kales A; Scharf MB, Kales JD, Soldatos CR. (1979-04-20). “Rebound insomnia. A potential hazard following withdrawal of certain benzodiazepines”. JAMA : the Journal of the American Medical Association. 241 (16): 1692?5. doi:10.1001/jama.241.16.1692. PMID 430730. 
  11. ^ Mamelak M, Csima A, Price V (1984). “A comparative 25-night sleep laboratory study on the effects of quazepam and triazolam on chronic insomniacs”. J Clin Pharmacol 24 (2-3): 65?75. PMID 6143767. http://jcp.sagepub.com/cgi/pmidlookup?view=long&pmid=6143767. 
  12. ^ Adam K; Oswald I (May 1989). “Can a rapidly-eliminated hypnotic cause daytime anxiety?”. Pharmacopsychiatry 22 (3): 115?9. doi:10.1055/s-2007-1014592. PMID 2748714. 
  13. ^ Fontaine, R; Beaudry, P; Le, Morvan, P; Beauclair, L; Chouinard, G (July 1990). “Zopiclone and triazolam in insomnia associated with generalized anxiety disorder: a placebo-controlled evaluation of efficacy and daytime anxiety.” (PDF). International clinical psychopharmacology 5 (3): 173?83. doi:10.1097/00004850-199007000-00002. ISSN 0268-1315. PMID 2230061. 
  14. ^ Terao T; Tani Y. (1988-09-01). “Two cases of psychotic state following normal-dose benzodiazepine withdrawal”. J Uoeh. 10 (3): 337?40. PMID 2902678. 
  15. ^ Griffiths RR, Johnson MW (2005). “Relative abuse liability of hypnotic drugs: a conceptual framework and algorithm for differentiating among compounds”. J Clin Psychiatry 66 Suppl 9: 31?41. PMID 16336040. 
  16. ^ Griffiths RR, Lamb RJ, Sannerud CA, Ator NA, Brady JV (1991). “Self-injection of barbiturates, benzodiazepines and other sedative-anxiolytics in baboons”. Psychopharmacology (Berl.) 103 (2): 154?61. doi:10.1007/BF02244196. PMID 1674158. 
  17. ^ Tom Mathews (1992年2月3日). “Secrets of a Serial Killer - Jeffrey Dahmer Is A Case Study Of A Criminal Soul In Torment, Languid One Moment, Frantic The Next -- And Always Deadly”. NEWSWEEK. 2009年2月5日閲覧。

商品名

トリアゾラムは先発品としてのハルシオン(ファイザー製)のほか、後述する後発医薬品も出ている。

その他にも、後発医薬品に何種類かある。

外部リンク

Frequently Asked Questions(日本語) - ファイザーによるハルシオンの解説