「じゃがいも入りやきそば」の版間の差分
Miyuki Meinaka (会話 | 投稿記録) |
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[[ファイル:Yakisoba with Potato, Tochigi Onsen Yura no Sato.jpg|thumb|じゃがいも入りやきそば([[栃木温泉 湯楽の里]])]] |
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'''じゃがいも入りやきそば'''(じゃがいもいりやきそば)は[[栃木県]][[栃木市]]のご当地[[焼きそば]]。一口大に切ったゆでた[[ジャガイモ]]か、[[いもフライ]]を焼きそばと一緒に |
'''じゃがいも入りやきそば'''(じゃがいもいりやきそば)は[[栃木県]][[栃木市]]のご当地[[焼きそば]]。一口大に切ったゆでた[[ジャガイモ]]か、[[いもフライ]]を焼きそばと一緒に炒めたものである<ref name="ns1">{{Cite web|和書|url=https://www.nakazawa-seimen.com/yakisoba/sp/aboutyakisobasp.html|title=何でじゃがいもを焼きそばに入れるの?|publisher=中沢製麺|accessdate=2021-02-28}}</ref>。 |
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栃木県[[足利市]]や[[群馬県]][[桐生市]]など[[両毛]]地域では、同様の焼きそばが'''ポテト入りやきそば'''として普及している{{sfn|蔵の街栃木美味しいジャガイモ入り焼きそば研究会|2017|p=2}}。ただし、栃木市のじゃがいも入り焼きそばとは起源が異なるとされる{{sfn|蔵の街栃木美味しいジャガイモ入り焼きそば研究会|2017|p=2}}。 |
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== 背景 == |
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栃木市に限らず、[[北関東]]は[[粉食|粉もの]]料理の多い[[地方]]であり、[[群馬県]]には[[水沢うどん]]・[[ひもかわ]]うどん、[[茨城県]]には[[スタミナラーメン (茨城)|スタミナラーメン]]・[[那珂湊焼きそば]]などがある{{sfn|風来堂 編|2019|p=184-185, 188}}。栃木県の場合、[[佐野ラーメン]]の知名度が高い一方で、複数のご当地焼きそばが存在する{{sfn|風来堂 編|2019|pp=188-189}}。特に県北の[[スープ入り焼きそば]]と県南の'''じゃがいも入りやきそば'''・[[ポテト入りやきそば]]が2大名物となっている{{sfn|下野新聞社 編|2011|pp=4-5}}。粉もの料理が多く分布する理由は不明ながら、北関東3県はいずれも[[小麦]]生産で日本の上位に入ることから、小麦を入手しやすかったことが粉ものの普及に寄与した可能性がある{{sfn|風来堂 編|2019|p=189}}。また両毛は[[織物]]産地で[[働く女性|女工]]が活躍した地域であり、粉もの料理のほかに[[佐野市]]のいもフライ、[[前橋市]]・[[桐生市]]の[[ソースかつ丼]]、[[太田市]]の[[太田焼きそば]]など[[ソース (調味料)|ソース]]を使う料理も多く、女工向けの[[ファーストフード]]として普及した可能性も指摘されている{{sfn|関|2009|p=99}}。 |
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[[太平洋戦争]]後に[[小麦粉]]の輸入が増えて焼きそばが普及し、以前から同地でよく食べられていたジャガイモが具として入れられるようになったとされている。麺は長めの時間蒸した二度ぶかし麺を使う。栃木市では、この焼きそばを提供する飲食店、駄菓子屋など12店と製麺所など協賛企業5社が「蔵の街とちぎおいしいじゃがいも入りやきそば研究会」を組織して、[[町おこし]]を行っている<ref>【おらがぐるめ】じゃがいも入り焼きそば(栃木県栃木市)歯切れ良い二度ぶかし麺『[[産経新聞]]』朝刊2018年12月21日(22面)。</ref>。 |
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栃木市は[[江戸時代]]に[[日光例幣使街道]]の[[宿場町]]、[[明治|明治時代]]初期に栃木県の[[都道府県庁所在地|県庁所在地]]として発展してきた市であるが、[[栃木県庁|県庁]]が宇都宮へ移り、鉄道の[[幹線]]から外れると目立たない[[地方都市]]になっていった{{sfn|関|2009|p=100}}。栃木市では他の地域と同様に「食」を切り口とした[[まちづくり]]に取り組み、[[夕顔ラーメン]]・[[すいとん]]と並び、じゃがいも入り焼きそばが売り出された{{sfn|関|2009|p=101}}。 |
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テレビドラマ『[[ロングバケーション (テレビドラマ)|ロングバケーション]]』中で、[[山口智子]](栃木市出身)演じる葉山南が[[木村拓哉]]演じる瀬名秀俊と、焼きそばにジャガイモを入れるか入れないかについて議論する場面がある。 |
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[[大正|大正時代]]には存在したという説もあるが{{sfn|関|2009|p=104}}、[[太平洋戦争]]後に[[小麦粉]]の輸入が増えて焼きそばが普及し<ref name="ns1"/>、以前から同地でよく食べられていたジャガイモが具として入れられるようになったとする{{sfn|下野新聞社 編|2011|p=5}}、[[1950年代]]中期以降発祥説が優勢になっている{{sfn|蔵の街栃木美味しいジャガイモ入り焼きそば研究会|2017|p=2}}。これは[[富士宮やきそば]]や[[横手やきそば]]と同時期に当たる{{sfn|蔵の街栃木美味しいジャガイモ入り焼きそば研究会|2017|p=2}}。食糧難の時代にあって、焼きそばにジャガイモを入れてかさ増しをしたという説もある{{sfn|日本出版社|2011|p=95}}<ref name="ah0901">「食べるって何だ? 4 B級グルメ 街をPR いも入り栃木焼きそば」朝日新聞2009年1月5日付朝刊、栃木版33ページ</ref>。なお戦前はジャガイモより[[サトイモ]]の方がよく食べられていた<ref name="ah0901"/>。「蔵の街とちぎおいしいじゃがいも入りやきそば研究会」の調査では、「かさ増し説」は誤りであり、第二次世界大戦後に小麦粉の輸入が増えて焼きそば麺が普及し、地域で戦前から親しまれていたジャガイモが自然と具の定番になったとする<ref name="産経2019">{{Cite web|和書|publisher=[[産経新聞]]|url=https://www.sankei.com/article/20190110-EBUJXQXCIJN57C5HGE65GDS5M4/|title=栃木・栃木市「じゃがいも入り焼きそば」歯切れ良い二度ぶかし麺|date=2019-01-10|accessdate=2024-09-13}}</ref>。焼きそば麺を製造していた[[中沢製麺]](栃木市)社長が「焼きそばにジャガイモを入れると美味い」と焼きそば麺を売るために奔走した結果、[[いもフライ]]を販売していた駄菓子店でも蒸かしたイモをフライと焼きそばの両方に用いることができるということもあり広まったとされる{{R|産経2019}}。 |
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栃木で約40年前ほどからじゃがいも入り焼きそばを[[屋台]]で販売していた「とっぱのやきそば」が15年ぶりに二代目へ受け継がれて、栃木市大平町で復活したことが話題になっている。 |
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[[テレビドラマ]]『[[ロングバケーション (テレビドラマ)|ロングバケーション]]』中で、[[山口智子]](栃木市出身)演じる葉山南が[[木村拓哉]]演じる瀬名秀俊と、焼きそばにジャガイモを入れるか入れないかについて議論する場面がある<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.ritsumei.ac.jp/liberal/chiji/2009/20091126/20091126summary.htm|title=「〜とちぎを有名有力県へ〜」|work=知事リレー講義|publisher=[[立命館大学]]共通教育推進機構|date=2010-03-19|accessdate=2021-02-28}}</ref>。栃木市ではジャガイモを焼きそばに入れるのが当たり前であり、栃木市出身者は他者から指摘されるまでジャガイモを入れるのが珍しいということに気付かないという<ref name="nk0602">中村厚史「栃木にホクホク焼きそば ジャガイモ入り 戦後食糧難の名残 麺の増量材に 盛り付け豪快」日本経済新聞2006年2月4日付夕刊、7ページ</ref>。 |
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=== ご当地グルメ化 === |
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栃木市出身の阿部佳司は、[[東京]]で働いていた頃、東京では焼きそばにジャガイモを入れないことを知って栃木市へ帰郷した{{sfn|関|2009|p=103}}。飲食店・[[好古壱番館]]を開いた阿部は、じゃがいも入り焼きそばで[[まちおこし]]ができないかと[[1992年]]頃から活動を開始し、焼きそば店や製麺所などに働きかけを開始した{{sfn|関|2009|pp=102-103}}。活動を開始した当初は、食糧難の時代にかさ増しとしてジャガイモを入れたのがじゃがいも入り焼きそばの起源とされることから、「貧しさ」のイメージがあり、「なぜ今さら」と名物とすることに難色を示す店主もいた<ref name="ah0901"/>。[[2003年]][[10月4日]]に、焼きそば店など30店で「じゃがいも入り栃木やきそばの会」を設立し、最初の活動として翌[[10月5日]]に[[とちぎ山車会館]]前で500食を無料で振る舞った<ref>「栃木“第3の名物”PR ジャガイモ入り焼きそば 30店が会設立」読売新聞2003年10月5日付朝刊、栃木北28ページ</ref>。[[2006年]]時点の会員は17店であった<ref name="nk0602"/>。[[2009年]]時点では20店と製麺業者2社を会員としていたが、零細経営店舗が多いため地元のイベント時に出店するほかは目立った活動はせず、[[B-1グランプリ]]にも出場しなかった{{sfn|関|2009|p=104}}。 |
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[[2008年]]5月には、[[ローソン]]がじゃがいも入り焼きそばを[[焼きそばパン]]に仕立て「栃木やきそばロール」として[[関東地方]]で発売した<ref>"ローソンが「栃木県の味」"読売新聞2008年5月23日付朝刊、栃木2、23ページ</ref>。[[2010年]]3月に栃木市が[[大平町]]・[[藤岡町 (栃木県)|藤岡町]]・[[都賀町]]と合併し、新・栃木市となったことを記念して、新・栃木市域の[[セブン-イレブン]]全店でじゃがいも入り焼きそばが販売された<ref>"新生「栃木市」 フェア・記念酒でお祝い セブンイレブン■酒類卸の井上"日本経済新聞2010年3月26日付朝刊、地方経済面 栃木42ページ</ref>。[[2011年]][[7月1日]]には、ご当地B級グルメシリーズの1つとして「[[ランチパック]]じゃがいも入り栃木やきそば風」が関東地方で発売された<ref>「B級グルメのランチパック 焼そばやゼリーフライ 山崎製パン、関東で販売」日本経済新聞2011年6月30日付朝刊、地方経済面 北関東41ページ</ref>。 |
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[[2016年]]4月、「蔵の街栃木美味しいジャガイモ入り焼きそば研究会」が発足した<ref name="ns1"/>。栃木市の焼きそばを提供する飲食店、駄菓子屋など12店と製麺所など協賛企業5社が加入している<ref>{{Cite news|title=【おらがぐるめ】栃木・栃木市「じゃがいも入り焼きそば」歯切れ良い二度ぶかし麺|date=2019-01-10|newspaper=[[産経新聞]]2018年12月21日付朝刊|page=22|url=https://www.sankei.com/article/20190110-EBUJXQXCIJN57C5HGE65GDS5M4/|accessdate=2021-03-02}}</ref>。 |
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じゃがいも入り焼きそばの立役者である阿部は、じゃがいも入りやきそばを一過性のブームに終わらせないように、[[B級グルメ]]ではなく「路地裏グルメ」と呼んでいる<ref>松本晃「じゃがいも入り栃木やきそば 息長く愛される味に」毎日新聞2014年5月2日付朝刊、栃木版25ページ</ref>。 |
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== 調理法 == |
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栃木市食生活改善推進団体協議会による[[レシピ]]は以下の通り{{sfn|関|2009|pp=101-102}}。 |
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# 皮をむいたジャガイモを8等分し、[[電子レンジ]]で温め、竹串が通る程度のかたさにする。 |
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# [[キャベツ]]を一口大、[[シメジ]]は1本ずつに、[[豚肉]]は1 [[センチメートル|cm]]幅に切る。 |
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# [[フライパン]]に[[サラダ油]]を熱し、豚肉を炒め、キャベツ、[[モヤシ]]、シメジを追加して更に炒める。 |
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# 上記に、ほぐした中華麺とジャガイモを入れて炒め、ソースと[[コショウ]]で味を調える。 |
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=== 特徴 === |
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麺は長めの時間蒸した二度ぶかし麺を使う{{sfn|蔵の街栃木美味しいジャガイモ入り焼きそば研究会|2017|p=2}}。本来は売れ残った麺の品質低下を防ぐ工夫であったが、二度ぶかしすると麺に独特の香りと食感が生まれた{{sfn|蔵の街栃木美味しいジャガイモ入り焼きそば研究会|2017|p=2}}。二度ぶかし麺は炒める前から茶色をしている<ref name="ns1"/>。本来は二度ぶかしによって自然と茶色くなったが、21世紀現在は[[着色料]]で茶色にする店が多い<ref name="ns1"/>。足利・桐生のポテト入り焼きそばは二度ぶかし麺を使わないことから、栃木市のじゃがいも入り焼きそばとはルーツが異なるとされる{{sfn|蔵の街栃木美味しいジャガイモ入り焼きそば研究会|2017|p=2}}。 |
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じゃがいも入り焼きそばを供する栃木市内の店舗では、[[隠し味]]に[[ひき肉]]からとった肉だしスープを使う{{sfn|蔵の街栃木美味しいジャガイモ入り焼きそば研究会|2017|p=2}}。[[冷蔵庫]]がない時代、生肉を保存できなかった[[屋台]]や[[駄菓子屋]]で、焼きそばにほんのりと肉の味を付けるために生み出された{{sfn|蔵の街栃木美味しいジャガイモ入り焼きそば研究会|2017|p=2}}。 |
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[[21世紀]]の現在はふかしたジャガイモを入れるのが主流であるが、昔ながらのじゃがいも入り焼きそばはいもフライを入れる<ref name="ns1"/>。蔵の街栃木美味しいジャガイモ入り焼きそば研究会では、いもフライを入れるものを「クラシカルじゃがいも入りやきそば」、ふかしたジャガイモを入れるものを単に「じゃがいも入りやきそば」と呼び分けている<ref name="ns1"/>。ジャガイモの大きさは店舗によって異なり、ソースとの絡み方が変わる<ref name="ns1"/>。 |
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じゃがいも入り焼きそばが名物となる以前は、屋台や駄菓子屋で販売され{{sfn|蔵の街栃木美味しいジャガイモ入り焼きそば研究会|2017|p=2}}<ref name="nk0602"/>、[[居酒屋]]や[[スナックバー (飲食店)|スナック]]で〆の料理として供された{{sfn|関|2009|p=103}}。屋台は[[1990年代]]頃まで営業する姿が確認されており{{sfn|関|2009|p=104}}、駄菓子屋や駄菓子屋を起源とする焼きそば店は現役で営業している<ref name="nk0602"/>。 |
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屋台では、[[東日本旅客鉄道|JR]][[思川駅]]([[小山市]])周辺で30年ほど営業していた「とっぱさん」と呼ばれる人の屋台が周辺住民に愛されていた{{sfn|下野新聞社 編|2011|p=60}}。高齢になった「とっぱさん」は引退したが、「とっぱ」の名と味を引き継いだ店舗が営業している{{sfn|下野新聞社 編|2011|p=60}}。 |
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栃木市では学校帰りの児童・生徒が駄菓子屋に集って焼きそばや[[もんじゃ焼き]]を食べる文化が健在で{{sfn|関|2009|p=104}}、学校の近くにある店舗は「[[御用達]]」と呼ばれている店もある<ref name="yu1402">「ゴロっと食感 じゃが焼きそば 麺を二度蒸し 自分好みにトッピング」読売新聞2014年2月6日付朝刊、栃木F31ページ</ref>。 |
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じゃがいも入り焼きそばの専門店は少なく、学校の近くで営業する駄菓子屋と、名物になってからメニューの1つに加えた飲食店が中心である<ref name="yu1402"/>。基本の具材は中華麺とジャガイモのみで、客の注文に応じてキャベツ、モヤシ、豚肉などをトッピングする<ref name="yu1402"/>。 |
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== 参考文献 == |
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* {{Cite book|和書|author=関満博|authorlink=関満博|title=地域産業の「現場」を行く 誇りと希望と勇気の30話 第2集 新たな価値の創造|publisher=[[新評論]]|date=2009-06-15|isbn=978-4-7948-0806-6|page=274|ref={{sfnref|関|2009}}}} |
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* {{Cite book|和書|editor=下野新聞社|title=ソース香る懐かしの味 栃木の焼きそば|publisher=[[下野新聞社]]|date=2011-11-28|page=94|isbn=978-4-88286-463-9|ref={{sfnref|下野新聞社 編|2011}}}} |
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* {{Cite book|和書|editor=風来堂|title=群馬・栃木・茨城 くらべてみたら? 「北関東三県」の不思議と謎|publisher=[[実業之日本社]]|series=じっぴコンパクト新書364|date=2019-06-05|page=191|isbn=978-4-408-33862-0|ref={{sfnref|風来堂 編|2019}}}} |
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* {{Cite book|和書|title=関東周辺 ご当地B級グルメ2012|publisher=[[日本出版社]]|date=2011-11-25|page=143|isbn=978-4-7984-1101-9|ref={{sfnref|日本出版社|2011}}}} |
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* {{Cite book|和書|title=蔵の街栃木美味しいジャガイモ入り焼きそば研究会|publisher=蔵の街栃木美味しいジャガイモ入り焼きそば研究会 完全攻略MOOK|date=2017|page=26|ref={{sfnref|蔵の街栃木美味しいジャガイモ入り焼きそば研究会|2017}}}} |
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== 関連項目 == |
== 関連項目 == |
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* [[ポテト入りやきそば]] |
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* [[いもフライ]] |
* [[いもフライ]] |
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* [[B級ご当地グルメ一覧]] |
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* [[好古壱番館]] |
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== 外部リンク == |
== 外部リンク == |
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* [http:// |
* [http://www.100sama.tochigi.jp/100sama/page.php?id=71 じゃがいも入り焼きそば・ポテト入り焼きそば 様]{{deadlink|date=2024年9月13日 (金) 00:09 (UTC)}} - [[とちぎの百様]] |
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* [https://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000233872 栃木市ではじゃがいもの入ったやきそばが食べられている。この歴史、由来について書かれた資料はあるか。] - [[レファレンス協同データベース]] |
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* [http://tabelog.com/tochigi/A0902/A090201/9012325/ とっぱの焼きそば] |
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{{DEFAULTSORT:しやかいもいりやきそは}} |
{{DEFAULTSORT:しやかいもいりやきそは}} |
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[[Category:関東地方のご当地焼きそば]] |
[[Category:関東地方のご当地焼きそば]] |
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[[Category:栃木県の麺料理]] |
[[Category:栃木県の麺料理]] |
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[[Category:栃木市]] |
[[Category:栃木市の文化]] |
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[[Category:ジャガイモ料理]] |
[[Category:ジャガイモ料理]] |
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[[Category:とちぎの百様]] |
2024年9月13日 (金) 00:28時点における最新版
じゃがいも入りやきそば(じゃがいもいりやきそば)は栃木県栃木市のご当地焼きそば。一口大に切ったゆでたジャガイモか、いもフライを焼きそばと一緒に炒めたものである[1]。
栃木県足利市や群馬県桐生市など両毛地域では、同様の焼きそばがポテト入りやきそばとして普及している[2]。ただし、栃木市のじゃがいも入り焼きそばとは起源が異なるとされる[2]。
背景
[編集]栃木市に限らず、北関東は粉もの料理の多い地方であり、群馬県には水沢うどん・ひもかわうどん、茨城県にはスタミナラーメン・那珂湊焼きそばなどがある[3]。栃木県の場合、佐野ラーメンの知名度が高い一方で、複数のご当地焼きそばが存在する[4]。特に県北のスープ入り焼きそばと県南のじゃがいも入りやきそば・ポテト入りやきそばが2大名物となっている[5]。粉もの料理が多く分布する理由は不明ながら、北関東3県はいずれも小麦生産で日本の上位に入ることから、小麦を入手しやすかったことが粉ものの普及に寄与した可能性がある[6]。また両毛は織物産地で女工が活躍した地域であり、粉もの料理のほかに佐野市のいもフライ、前橋市・桐生市のソースかつ丼、太田市の太田焼きそばなどソースを使う料理も多く、女工向けのファーストフードとして普及した可能性も指摘されている[7]。
栃木市は江戸時代に日光例幣使街道の宿場町、明治時代初期に栃木県の県庁所在地として発展してきた市であるが、県庁が宇都宮へ移り、鉄道の幹線から外れると目立たない地方都市になっていった[8]。栃木市では他の地域と同様に「食」を切り口としたまちづくりに取り組み、夕顔ラーメン・すいとんと並び、じゃがいも入り焼きそばが売り出された[9]。
大正時代には存在したという説もあるが[10]、太平洋戦争後に小麦粉の輸入が増えて焼きそばが普及し[1]、以前から同地でよく食べられていたジャガイモが具として入れられるようになったとする[11]、1950年代中期以降発祥説が優勢になっている[2]。これは富士宮やきそばや横手やきそばと同時期に当たる[2]。食糧難の時代にあって、焼きそばにジャガイモを入れてかさ増しをしたという説もある[12][13]。なお戦前はジャガイモよりサトイモの方がよく食べられていた[13]。「蔵の街とちぎおいしいじゃがいも入りやきそば研究会」の調査では、「かさ増し説」は誤りであり、第二次世界大戦後に小麦粉の輸入が増えて焼きそば麺が普及し、地域で戦前から親しまれていたジャガイモが自然と具の定番になったとする[14]。焼きそば麺を製造していた中沢製麺(栃木市)社長が「焼きそばにジャガイモを入れると美味い」と焼きそば麺を売るために奔走した結果、いもフライを販売していた駄菓子店でも蒸かしたイモをフライと焼きそばの両方に用いることができるということもあり広まったとされる[14]。
テレビドラマ『ロングバケーション』中で、山口智子(栃木市出身)演じる葉山南が木村拓哉演じる瀬名秀俊と、焼きそばにジャガイモを入れるか入れないかについて議論する場面がある[15]。栃木市ではジャガイモを焼きそばに入れるのが当たり前であり、栃木市出身者は他者から指摘されるまでジャガイモを入れるのが珍しいということに気付かないという[16]。
ご当地グルメ化
[編集]栃木市出身の阿部佳司は、東京で働いていた頃、東京では焼きそばにジャガイモを入れないことを知って栃木市へ帰郷した[17]。飲食店・好古壱番館を開いた阿部は、じゃがいも入り焼きそばでまちおこしができないかと1992年頃から活動を開始し、焼きそば店や製麺所などに働きかけを開始した[18]。活動を開始した当初は、食糧難の時代にかさ増しとしてジャガイモを入れたのがじゃがいも入り焼きそばの起源とされることから、「貧しさ」のイメージがあり、「なぜ今さら」と名物とすることに難色を示す店主もいた[13]。2003年10月4日に、焼きそば店など30店で「じゃがいも入り栃木やきそばの会」を設立し、最初の活動として翌10月5日にとちぎ山車会館前で500食を無料で振る舞った[19]。2006年時点の会員は17店であった[16]。2009年時点では20店と製麺業者2社を会員としていたが、零細経営店舗が多いため地元のイベント時に出店するほかは目立った活動はせず、B-1グランプリにも出場しなかった[10]。
2008年5月には、ローソンがじゃがいも入り焼きそばを焼きそばパンに仕立て「栃木やきそばロール」として関東地方で発売した[20]。2010年3月に栃木市が大平町・藤岡町・都賀町と合併し、新・栃木市となったことを記念して、新・栃木市域のセブン-イレブン全店でじゃがいも入り焼きそばが販売された[21]。2011年7月1日には、ご当地B級グルメシリーズの1つとして「ランチパックじゃがいも入り栃木やきそば風」が関東地方で発売された[22]。
2016年4月、「蔵の街栃木美味しいジャガイモ入り焼きそば研究会」が発足した[1]。栃木市の焼きそばを提供する飲食店、駄菓子屋など12店と製麺所など協賛企業5社が加入している[23]。
じゃがいも入り焼きそばの立役者である阿部は、じゃがいも入りやきそばを一過性のブームに終わらせないように、B級グルメではなく「路地裏グルメ」と呼んでいる[24]。
調理法
[編集]栃木市食生活改善推進団体協議会によるレシピは以下の通り[25]。
- 皮をむいたジャガイモを8等分し、電子レンジで温め、竹串が通る程度のかたさにする。
- キャベツを一口大、シメジは1本ずつに、豚肉は1 cm幅に切る。
- フライパンにサラダ油を熱し、豚肉を炒め、キャベツ、モヤシ、シメジを追加して更に炒める。
- 上記に、ほぐした中華麺とジャガイモを入れて炒め、ソースとコショウで味を調える。
特徴
[編集]麺は長めの時間蒸した二度ぶかし麺を使う[2]。本来は売れ残った麺の品質低下を防ぐ工夫であったが、二度ぶかしすると麺に独特の香りと食感が生まれた[2]。二度ぶかし麺は炒める前から茶色をしている[1]。本来は二度ぶかしによって自然と茶色くなったが、21世紀現在は着色料で茶色にする店が多い[1]。足利・桐生のポテト入り焼きそばは二度ぶかし麺を使わないことから、栃木市のじゃがいも入り焼きそばとはルーツが異なるとされる[2]。
じゃがいも入り焼きそばを供する栃木市内の店舗では、隠し味にひき肉からとった肉だしスープを使う[2]。冷蔵庫がない時代、生肉を保存できなかった屋台や駄菓子屋で、焼きそばにほんのりと肉の味を付けるために生み出された[2]。
21世紀の現在はふかしたジャガイモを入れるのが主流であるが、昔ながらのじゃがいも入り焼きそばはいもフライを入れる[1]。蔵の街栃木美味しいジャガイモ入り焼きそば研究会では、いもフライを入れるものを「クラシカルじゃがいも入りやきそば」、ふかしたジャガイモを入れるものを単に「じゃがいも入りやきそば」と呼び分けている[1]。ジャガイモの大きさは店舗によって異なり、ソースとの絡み方が変わる[1]。
店舗
[編集]じゃがいも入り焼きそばが名物となる以前は、屋台や駄菓子屋で販売され[2][16]、居酒屋やスナックで〆の料理として供された[17]。屋台は1990年代頃まで営業する姿が確認されており[10]、駄菓子屋や駄菓子屋を起源とする焼きそば店は現役で営業している[16]。
屋台では、JR思川駅(小山市)周辺で30年ほど営業していた「とっぱさん」と呼ばれる人の屋台が周辺住民に愛されていた[26]。高齢になった「とっぱさん」は引退したが、「とっぱ」の名と味を引き継いだ店舗が営業している[26]。
栃木市では学校帰りの児童・生徒が駄菓子屋に集って焼きそばやもんじゃ焼きを食べる文化が健在で[10]、学校の近くにある店舗は「御用達」と呼ばれている店もある[27]。
じゃがいも入り焼きそばの専門店は少なく、学校の近くで営業する駄菓子屋と、名物になってからメニューの1つに加えた飲食店が中心である[27]。基本の具材は中華麺とジャガイモのみで、客の注文に応じてキャベツ、モヤシ、豚肉などをトッピングする[27]。
脚注
[編集]- ^ a b c d e f g h “何でじゃがいもを焼きそばに入れるの?”. 中沢製麺. 2021年2月28日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j 蔵の街栃木美味しいジャガイモ入り焼きそば研究会 2017, p. 2.
- ^ 風来堂 編 2019, p. 184-185, 188.
- ^ 風来堂 編 2019, pp. 188–189.
- ^ 下野新聞社 編 2011, pp. 4–5.
- ^ 風来堂 編 2019, p. 189.
- ^ 関 2009, p. 99.
- ^ 関 2009, p. 100.
- ^ 関 2009, p. 101.
- ^ a b c d 関 2009, p. 104.
- ^ 下野新聞社 編 2011, p. 5.
- ^ 日本出版社 2011, p. 95.
- ^ a b c 「食べるって何だ? 4 B級グルメ 街をPR いも入り栃木焼きそば」朝日新聞2009年1月5日付朝刊、栃木版33ページ
- ^ a b “栃木・栃木市「じゃがいも入り焼きそば」歯切れ良い二度ぶかし麺”. 産経新聞 (2019年1月10日). 2024年9月13日閲覧。
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参考文献
[編集]- 関満博『地域産業の「現場」を行く 誇りと希望と勇気の30話 第2集 新たな価値の創造』新評論、2009年6月15日、274頁。ISBN 978-4-7948-0806-6。
- 下野新聞社 編『ソース香る懐かしの味 栃木の焼きそば』下野新聞社、2011年11月28日、94頁。ISBN 978-4-88286-463-9。
- 風来堂 編『群馬・栃木・茨城 くらべてみたら? 「北関東三県」の不思議と謎』実業之日本社〈じっぴコンパクト新書364〉、2019年6月5日、191頁。ISBN 978-4-408-33862-0。
- 『関東周辺 ご当地B級グルメ2012』日本出版社、2011年11月25日、143頁。ISBN 978-4-7984-1101-9。
- 『蔵の街栃木美味しいジャガイモ入り焼きそば研究会』蔵の街栃木美味しいジャガイモ入り焼きそば研究会 完全攻略MOOK、2017年、26頁。