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* 菊池晴彦<ref name="sawa"/> - 脳神経外科学者、京都大学名誉教授 |
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* 鈴木寧 - 英文学者、[[東京都立大学 (1949-2011)]]名誉教授 |
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* 関口守正 - 医学者、東京大学名誉教授 |
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* 根本敬久 - 海洋学者、東京大学海洋研究所所長 |
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* 平田賢 - 工学者、東京大学名誉教授 |
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* 穂積忠夫 - 弁護士(東京帝国大学法科大学長・貴族院議員の[[穂積八束]]の孫) |
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* 三輪浩 - 物理学者、[[信州大学]][[名誉教授]] |
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* 山口迪夫 - 栄養学者、[[実践女子大学]]教授 |
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* [[吉田庄一郎]] - [[ニコン]]元会長<ref name=わが人生11 />、現相談役 |
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* 和久本芳彦 - [[東芝]]顧問、国際文化交流推進協会理事長 |
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== 脚注 == |
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2021年1月5日 (火) 23:45時点における版
特別科学学級(とくべつかがくがっきゅう)とは、第二次世界大戦末期、日本を支える優秀な科学者や技術者の育成を目的として設けられた英才学級のことである。全国から選抜された児童・生徒が高度なエリート教育を受け、結果的に敗戦後の高度経済成長を牽引する人材として、理工系をはじめ各界で活躍した。 「特別科学教育学級」、「特別科学教育班」、「特別科学組」とも呼ぶ。
概要
1944年9月9日、衆議院議員永井柳太郎によって「戦時穎才教育機関設置に関する建議案」が衆議院に建議され、同年9月11日に可決[1]。
同年12月26日、文部省は、「科学に関し高度の天分を有する学徒に対し特別なる科学教育を施し我国科学技術の飛躍的向上を図らんが為之が実施に関する方途を研究せんとす」として、
に特別科学教育班を設置。
特別科学学級の設置校
全国各地の国民学校の4〜6年生および旧制中学校の1〜3年生の中から物理学・化学・生物学・数学に秀でた児童・生徒を選抜し、上記各高師・女高師の附属小中学校(金沢高師のみ当時附属校が存在しなかったため近隣の小中学校)、
- 東京高師附属国民学校・中学校(現:筑波大附属小、筑波大附属中・高)
- 東京女高師附属国民学校・中学校(現:お茶の水女子大附属小、お茶の水女子大附属中・お茶の水女子大附属高)
- 広島高師附属国民学校・中学校(現:広島大附属小、広島大附属中・高)
- 石川師範附属国民学校(現:金沢大附属小)、石川県立金沢第一中学校(現:石川県立金沢泉丘高)
- ただし、金沢一中特別科学学級の生徒は戦後設立の金沢高師附属中(現:金沢大附属高)に編入し、その母体となった。
さらに同年4月からは湯川秀樹や駒井卓たちの意向により、京都帝国大学にも特別科学教育班が設置された。京都帝国大学には附属校が存在しなかったので、
- 京都師範学校附属国民学校(現:京都教育大附属京都小中)
- 京都府立第一中学校(現:京都府立洛北高)
に特別科学学級が設置され[1]、こちらは同年5月22日から授業が始まった。各学年の定員は30名だった[2]。
カリキュラム
授業の内容は数学や物理学や化学はいうに及ばず、当時敵性語だった英語、さらには国語・漢文・歴史にもわたっており、その程度は「旧制高校第2学年修了迄の全教育内容を、旧制中学第4学年卒業(旧制中学は本来5年制)までに理解把握させる」ものであり、例えば数学では、中学1年で関数、対数、3年で導関数、積分、微分方程式を学ばせた[3]。特別科学学級では、各高等師範学校や帝国大学の教官がじきじきに旧制高等学校(現在の四年制大学教養課程)レベルの授業を行い、物理・化学の実験や、生物の実習などにも重点が置かれた。
経済学者の佐和隆光によると、ある京都大学名誉教授は湯川から直接物理学を教わったと証言している[1]。当時、禁書とされていた津田左右吉の『古事記及び日本書紀の新研究』を題材に用いるなど、当時の軍国主義的イデオロギーにとらわれない高度な内容の授業で進み方も速かった[2]。
さらに、特別科学学級の児童・生徒は学徒動員が免除され[4]、学習を継続しうる特権を持つとともに、上級学校への進学が保証された[4]。
制度の終焉とその後
第二次世界大戦で日本が敗北してから「差別的で民主主義に反する」との批判を受けて1946年11月に廃止が決定され、1947年3月31日をもって特別科学学級は終了となった[1][2][3]。
しかし、特別科学学級の出身者は、戦後の高度経済成長を牽引するエリートとして、理工系だけでなく各界で活躍した。また、現在のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)構想に特別科学学級の精神が受け継がれているとみる向きは多い。
主な特別科学学級出身者
卒業生の多くは東京大学に進んだ。たとえば東京高等師範学校附属中学校(現・筑波大学附属中学校・高等学校)の場合、
- I期生17名(1948年ならびに1949年に同校を卒業)の進学先は東京大学が10名、大阪大学、名古屋大学、東京薬科大学、東京工業大学が各1名ずつ、東京教育大学が2名、就職者が1名。
- II期生15名(1948年ならびに1950年に同校を卒業)の進学先は全員が東京大学(文系9名、理系6名)。
- III期生33名(1951年に同校を卒業)の進学先は東京大学21名、慶應義塾大学5名、東京教育大学2名、一橋大学、埼玉大学、東京学芸大学と札幌医科大学、早稲田大学が各1名ずつ。
- IV期生25名(1952年に同校を卒業)の進学先は東京大学12名、早稲田大学4名、慶應義塾大学3名、京都大学、北海道大学、順天堂医科大学、昭和医科大学、学習院大学、成蹊大学が各1名ずつ。
といった具合であった。
佐和隆光は映画監督の伊丹十三と共に小説家の筒井康隆を特別科学学級出身者に挙げているが[1]、筒井当人は自分が学んでいたのは政府設置の特別科学学級ではなく大阪市設置の特別教室だったと述べている[5]。
卒業者の結束は固く、第二次世界大戦後もしばしば同窓会をおこなっている[2]。
- 青山博之 - 建築学者[6]、東京大学名誉教授(元東京大学工学部長・東京大学名誉教授の青山秀三郎の子息)
- 石崎津義男 - 岩波書店元専務取締役
- 伊丹十三 - 映画監督(映画監督の伊丹万作の子息)
- 糸川嘉則 - 衛生学者、京都大学名誉教授
- 上村淳之[1] - 日本画家(日本画家の上村松篁の子息)
- 浦達也 - 元NHKディレクター、評論家、江戸川大学名誉教授
- 大越孝敬 - 電子工学者[6]、東京大学名誉教授、東京大学先端科学技術センター初代所長(東京大学教授の大越諄の子息)
- 鹿島昭一 - 鹿島建設最高相談役(外交官・鹿島建設会長・参議院議員の鹿島守之助の子息)
- 金丸由雄 - 社会学者、駒澤大学教授
- 上坂修夫 - 経済学者、駒澤大学名誉教授
- 河合秀和[1] - 政治学者、学習院大学名誉教授
- 川那部浩哉[1] - 生物学者、京都大学名誉教授
- 川西進 - 英文学者[6]、東京大学名誉教授
- 菊池晴彦[1] - 脳神経外科学者、京都大学名誉教授
- 久城育夫 - 地球科学者、東京大学名誉教授
- 佐伯禎明 - ドイツ語学者、創価大学教授
- 柴沼明 - 三井不動産取締役、ららぽーと元会長(文部官僚で東京教育大学初代学長の柴沼直の子息)
- 定塚英一 - 弁護士
- 鈴木寧 - 英文学者、東京都立大学 (1949-2011)名誉教授
- 鈴木淑夫[1] - 日本銀行理事、野村総合研究所理事長、衆議院議員[6]
- 関口守正 - 医学者、東京大学名誉教授
- 田村晃 - 医学者、帝京大学教授
- 都築正和 - 医学者、東京大学名誉教授
- 徳山明 - 教育学者、兵庫教育大学大学院名誉教授
- 中江陽三 - 元NHKアナウンサー[4]
- 西川禕一[1] - 電気工学者、京都大学名誉教授
- 仁科雄一郎 - 物理学者、東北大学名誉教授(理化学研究所所長仁科芳雄の子息)
- 根本敬久 - 海洋学者、東京大学海洋研究所所長
- 林順雄 - 電気工学者、千葉工業大学教授
- 春田博 - シチズン時計社長
- 東村敏延[7] - 化学者、京都大学名誉教授
- 平川祐弘 - 比較文学者[6]、東京大学名誉教授
- 平田賢 - 工学者、東京大学名誉教授
- 藤井裕久 - 衆議院議員・財務大臣[4]
- 穂積忠夫 - 弁護士(東京帝国大学法科大学長・貴族院議員の穂積八束の孫)
- 松原謙一 - 生化学者、大阪大学名誉教授
- 三須明 - 物理学者、東京理科大学教授
- 水島昭二 - 生化学者、東京大学名誉教授(化学者・東京大学名誉教授の水島三一郎の子息)
- 三輪浩 - 物理学者、信州大学名誉教授
- 藪忠綱 - 外交官、駐ギリシャ大使、常磐大学教授
- 山口迪夫 - 栄養学者、実践女子大学教授
- 吉田庄一郎 - ニコン元会長[4]、現相談役
- 和久本芳彦 - 東芝顧問、国際文化交流推進協会理事長
脚注
- ^ a b c d e f g h i j k l 佐和隆光「基礎科学の軽視が国を滅ぼす」『経』第67号、ダイヤモンド社、東京、2007年5月、全国書誌番号:00118388、2008年11月26日閲覧。
- ^ a b c d e 片岡宏「戦時下の特別科学教育について」(PDF)『京都大学大学文書館だより』第4号、京都大学大学文書館、京都、2003年4月30日、4-6頁、全国書誌番号:01028812、2020年12月24日閲覧。
- ^ a b c 金沢大学資料館, 金沢大学附属図書館「教える×学ぶ:師範学校といしかわの教員養成史」(PDF)、金沢大学資料館・金沢大学附属図書館、2007年10月25日、全国書誌番号:2142646、 オリジナルの2016年3月4日時点におけるアーカイブ、2020年12月25日閲覧。
- ^ a b c d e 藤井裕久「わが人生 藤井裕久<11>」『神奈川新聞』神奈川新聞社、神奈川、2020年12月16日、第28132号、9面、全国書誌番号:00061495。
- ^ flow2005 (2010年11月24日). “筒井康隆作家生活五十周年記念〜現代語裏辞典ライブ”. 筒井康隆氏についての…. はてなブログ. はてな. 2020年12月25日閲覧。
- ^ a b c d e 藤井裕久「わが人生 藤井裕久<15>」『神奈川新聞』神奈川新聞社、神奈川、2020年12月22日、第28138号、8面、全国書誌番号:00061495。
- ^ 東村敏延「出合いと選択」(PDF)『京都大学 工学部報』第10号、京都大学、1990年7月、p. 2、2009年11月26日閲覧。
参考文献
- 片岡宏「戦時下の特別科学教育について」(PDF)『京都大学大学文書館だより』第4号、京都大学大学文書館、京都、2003年4月30日、4-6頁、全国書誌番号:01028812、2020年12月24日閲覧。
- 金崎肇「特別科学教育班--理科教育史のひとコマ」『金沢大学教育学部紀要.人文・社会・教育科学編』第15号、金沢大学教育学部、金沢、1966年12月、29-44頁、ISSN 0387091X、NAID 110006434127、全国書誌番号:00004103。
- 大越孝敬「忘れられつつある歴史 - 第二次大戦中の特別科学学級について」(PDF)『応用物理』第89巻第12号、応用物理学会、東京、1993年12月10日、1179頁、doi:10.11470/oubutsu1932.62.1179、ISSN 03698009、全国書誌番号:00002432、2020年12月24日閲覧。
- Ouchi Isuke "A Note on the "Experimental Class for Science education" in the Secondary School during 1945 to 1948"8The journal of the Faculty of General Education Vol.28, 1994)pp.125-134(大内伊助「科学教育実験学級覚え書」『鳥取大学教養部紀要』第28号(1994年))
- 佐々木元太郎、平川祐弘『特別科学組東京高師附属中学の場合 もう一つの終戦秘話』大修館書店、東京、1995年7月。ISBN 4469243655。全国書誌番号:95080021。
- 鈴木一正「特別科学教育の実施から打ち切りまで」『福岡教育大学紀要』第4巻第4号、福岡教育大学、福岡、1991年、377頁、NAID 10006624140。
- 浦達也「封印された特別科学組の試み」『imago』第6巻第12号、青土社、東京、1995年11月、doi:10.11501/1746312、全国書誌番号:00079456。
- 東京女高師附属高等女学校「科学組」の記録を残す会 編『科学組の記録:文部省「特別科学教育研究実施要項」による東京女高師附属高等女学校の場合』(補遺)東京女高師附属高等女学校・お茶の水女子大学附属高等学校同窓会「作楽会」、東京、1999年7月。全国書誌番号:99119197。
- 小穴雄康『人数半ばに満たずとも:わが心の特別科学学級』小穴雄康、東京、2002年11月。全国書誌番号:20409506。
- 小坂,弘尚「二次世界大戦期における特別科学教育の実態:自由研究を中心として」(PDF)『日本理科教育学会中国支部大会研究発表要項』第53号、日本理科教育学会中国支部大会実行委員会、2004年12月11日、18頁、NAID 110004558572、2020年12月24日閲覧。
- 小坂弘尚「特別科学教育の教育内容と教授方略」(PDF)『日本理科教育学会全国大会要項』第55号、日本理科教育学会、東京、2005年、206頁、NAID 110005854021、2020年12月24日閲覧。
- 浦達也『実感の同時代史:戦争からラストモダンまで』批評社、東京、2006年6月。ISBN 4826504462。全国書誌番号:21070652。
- 吉田庄一郎『超精密マシンに挑む:ステッパー開発物語』日本経済新聞出版社、東京、2008年2月。ISBN 9784532313739。全国書誌番号:21385536。
- 著者は特別科学学級出身。第2章に特別科学学級の回想が記されている。
関連項目
- 金沢大学附属高等学校 - 1945年1月に、金沢高等師範学校に設けられた特別科学班を発祥としている。
- エリート
- スーパーサイエンスハイスクール (SSH)