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「プッチンプリン」の版間の差分

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{{Infobox product
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| title = プッチンプリン
| title = プッチンプリン
| ロゴ = プッチンプリン.png
| ロゴ = プッチンプリン.png
| 画像 = Ezaki Glico Pucchin Pudding.jpg
| 画像 = 皿に乗せたプッチンプリン.jpg
| 画像説明 = 皿に移したプッチンプリン
| 画像説明 = 皿に移したプッチンプリン
| 種類 = [[食品]]
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| 発売開始年 = 1972年
| 発売開始年 = 1972年
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| 会社名 = グリコ協同乳業-[[グリコ乳業]]-[[江崎グリコ]]
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| 生産状況 = 生産中
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| 販売元 = 江崎グリコ
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}}
'''プッチンプリン'''({{Lang-en-short|Putchin Pudding}}<ref>{{Cite web |title=History {{!}} Ezaki Glico USA Corporation |url=https://www.glico.com/us/about/history/ |website=www.glico.com |access-date=2023-04-10 |language=en}}</ref>)は、[[1972年]]に[[グリコ乳業]]から発売された『グリコプリン』を前身とするプリンである<ref name=":0">{{Cite web |title=有馬 卓・柳澤 香|開発者インタビュープッチンプリン|グリコ |url=https://cp.glico.com/pucchin/interview01/ |website=cp.glico.com |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref>。2015年10月1日グリコ乳業は江崎グリコ株式会社と合併し、江崎グリコが存続会社となったため、以降は[[江崎グリコ]]から製造・販売されいる<ref>{{Cite web |title=連結子会社の吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知らせ {{!}} 【公式】江崎グリコ(Glico) |url=https://www.glico.com/jp/newscenter/pressrelease/9593/ |website=www.glico.com |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref>
'''プッチンプリン'''({{Lang-en-short|Putchin Pudding}}<ref>{{Cite web |url=https://www.glico.com/us/about/history/ |title=History |website=Ezaki Glico USA Corporation |access-date=2023-04-10 |language=en}}</ref>)は、[[江崎グリコ]]が製造・販売する[[チルド]]カップの[[カスタードプディング|プリン]]である{{Sfn|奥井|2022|p=140}}。[[1972年]]([[昭和]]47年)グリコ協同乳業(のち[[グリコ乳業]]から発売された『'''グリコプリン'''』を前身とする<ref name="pucchin-story" />。[[1974年]](昭和49年)にリニューアルとともに『プッチンプリン』の商品名変更し、[[テレビCM]]の効果もあっ大ヒットした{{Sfn|奥井|2022|p=141}}{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=211}}{{Sfn|藤井|2022|p=101}}。

容器の底にある「プッチン棒」と呼ばれる{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=212}}{{Sfn|田久|2013|p=29}}{{Sfn|Value creator編集部|2012|p=89}}ツマミを折ることでプリンが皿の上に滑り落ちる仕組みが最大の特徴であり{{Sfn|Value creator編集部|2012|p=88}}{{Sfn|日経デザイン|2016|p=58}}、その楽しさが魅力となっている{{Sfn|奥井|2022|p=140}}{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=212}}{{Sfn|Value creator編集部|2012|p=88}}{{Sfn|日経デザイン|2016|p=59}}。発売50年を超える[[ロングセラー]]商品であり{{Sfn|宣伝会議編集部|2021|p=10}}、[[2022年]]([[令和]]4年)現在もトップ[[市場占有率|シェア]]を誇る{{Sfn|奥井|2022|p=140}}、[[日本]]のプリンを代表する[[ブランド]]である{{Sfn|田久|2013|p=29}}{{Sfn|角山|2021|p=82}}。

なお、[[2015年]]([[平成]]27年)10月1日にグリコ乳業は江崎グリコと[[合併 (企業)|合併]]し、江崎グリコが存続会社となったため、以降は江崎グリコから製造・販売されている<ref>{{Cite press release |和書 |title=連結子会社の吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知らせ |date=2014-12-15 |publisher=江崎グリコ |url=https://www.glico.com/jp/newscenter/pressrelease/9593/ |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref>。『カフェオーレ』{{Efn|1979年発売<ref>{{Cite web |和書 |title=カフェオーレのひみつ |website=カフェオーレ |publisher=江崎グリコ |url=https://www.cafeore.jp/info/secret/ |access-date=2023-05-11 |language=ja}}</ref>。}}『朝食ヨーグルト』{{Efn|1997年発売<ref>{{Cite web |和書 |title=朝食りんごヨーグルトSTORY |url=https://cp.glico.com/ringo/story/ |website=朝食りんごヨーグルト |publisher=江崎グリコ |access-date=2023-05-11 |language=ja}}</ref>。}}『ドロリッチ』{{Efn|2007年発売開始。2019年生産終了<ref>{{Cite news |和書 |title=「ドロリッチ」の生産終了 グリコ、売り上げ減少で |newspaper=[[日本経済新聞]] |date=2019-02-20 |publisher=[[日本経済新聞社]] |url=https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41511210Q9A220C1000000/ |access-date=2023-05-11}}</ref>。}}とともに、旧グリコ乳業の主要ブランドの一つであった{{Sfn|Value creator編集部|2012|p=88}}

== 特徴 ==
<gallery>
ファイル:ツマミを折る前のプッチンプリン.jpg|ツマミを折る前のプッチンプリン
ファイル:ツマミを折ったあとのプッチンプリン.jpg|ツマミを折ったあとのプッチンプリン
ファイル:ツマミを折る前のプッチンプリン容器.jpg|ツマミを折る前の容器
ファイル:ツマミを折ったあとのプッチンプリン容器.jpg|ツマミを折ったあとの容器
</gallery>
底のツマミを折って中身を皿に出すことができることが最大の特徴である{{Sfn|Value creator編集部|2012|p=88}}<ref name="朝日新聞_2013-01-12">{{Cite news |和書 |title=累計51億個販売 プッチンプリン世界一 |newspaper=[[朝日新聞]] |date=2013-01-12 |edition=第14版、朝刊 |page=8 |publisher=[[朝日新聞社]]}}</ref>。これによって[[喫茶店]]などで提供されている[[カスタードプディング|プリン]]と同様[[カラメルソース]]が上になり{{Sfn|奥井|2022|p=140}}{{Sfn|藤井|2022|p=100}}、ひと口目からプリンとカラメルを同時に食べることができる{{Sfn|奥井|2022|p=141}}{{Sfn|角山|2021|p=82}}。同業他社の商品にはない{{Sfn|Value creator編集部|2012|p=88}}プリンがプルルンと皿に滑り落ちる楽しさが子どもたちの人気を集め{{Sfn|奥井|2022|p=140}}{{Sfn|角山|2021|p=82}}、一躍トップブランドになった{{Sfn|Value creator編集部|2012|p=88}}。容器に充填する際は、液体のままのプリン液をまず注ぎ、そのあとカラメルを注ぐ<ref name="serai_2021">{{Cite web |和書 |author=角山祥道 |date=2021-09-19 |title=まもなく発売50周年!「プッチンプリン」ロングセラーの理由 |website=[[サライ (雑誌)|サライ.jp]] |url=https://serai.jp/gourmet/1040914 |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref><ref name="lovely-lovely">{{Cite web |和書 |title=[WBS] 【ロングセラー研究所】プッチンプリン |url=https://lovely-lovely.net/business/glico/ |website=LOVELY-LOVELY.NET |access-date=2023-04-10}}</ref>。カラメル液の[[比重]]が重いため下にたまる<ref name="serai_2021" /><ref name="lovely-lovely" />。[[練乳]]も加えられ、蒸さずに冷やして作られる<ref name="serai_2021" /><ref name="fumufumunews">{{Cite web |和書 |author=池守りぜね |date=2022-04-02 |title=『プッチンプリン』発売から50年、コロナ禍でも売上を伸ばした「変わらぬ味」とパッケージの秘密 |website=フムフムニュース |publisher=主婦と生活社 |url=https://fumufumunews.jp/articles/-/22581 |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref><ref name="glico_2022-01-18">{{Cite web |和書 |url=https://www.glico.com/assets/files/NR20220118.pdf |title=発売50周年!「プッチンプリン」ブランド通信 |format=PDF |publisher=江崎グリコ |date=2022-01-18 |access-date=2023-04-11 |language=ja}}</ref>。

味は、[[シュークリーム]]を手本に再現した[[カスタードクリーム]]の[[コク]]と味わい{{Sfn|角山|2021|p=82}}、練乳と[[バニラ]]の風味が特徴とされる{{Sfn|Value creator編集部|2012|p=88}}。食感は、それまでの通常のプリンより柔らかく{{Sfn|藤井|2022|p=100}}プルルンとしたのど越しのよい食感となっている{{Sfn|角山|2021|p=82}}。味の基本は[[1974年]]([[昭和]]49年)のリニューアル以来維持しているものの{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=212}}、時代にあわせて甘さやコクなどを調整している{{Sfn|奥井|2022|p=140}}{{Sfn|ニューライフ編集部|2003|p=26}}。[[2022年]]([[令和]]4年)のリニューアルでは、以前から使用していなかった[[保存料]]と[[人工甘味料]]に加えて、[[着色料]]も不使用としている{{Sfn|奥井|2022|p=140}}。『植物生まれのプッチンプリン』では、それらに加えて[[乳化剤]]と[[カラメル色素]]も不使用とした{{Sfn|奥井|2022|p=140}}。

ツマミを折ってプリンを容器から出す構造がネーミングにも反映されているものの、江崎グリコが2022年(令和4年)におこなった[[キャンペーン]]「プッチンプリン国民投票」では「プッチンする派」の43.5&nbsp;[[パーセント|%]]に対し「プッチンしない派」が56.5&nbsp;%と上回った<ref>{{Cite web |和書 |title=プッチンプリン国民投票開催! |website=プッチンプリン |publisher=江崎グリコ |url=https://cp.glico.com/pucchin/2022spr/ |access-date=2023-04-11 |language=ja}}</ref>。[[2003年]]([[平成]]15年)には[[グリコ乳業]]商品開発第1特別グループの阪本健二が「いまではお皿にあけて食べる人が10人に1人しかいない」と言われているとも述べている{{Sfn|ニューライフ編集部|2003|p=26}}。それでも、「わくわく」感を演出するためには必要と考え、[[コスト]]がかかっても続けているという{{Sfn|ニューライフ編集部|2003|p=26}}。なお、グリコの[[研究員]]による[[官能検査]]で両方の食べ方の比較がなされており、ここでは「プッチンするのがおすすめ」と報告されている<ref>{{Cite web |和書 |title=する派?しない派?研究結果 |website=プッチンプリン |publisher=江崎グリコ |url=https://cp.glico.com/pucchin/laboratory/ |access-date=2023-04-12 |language=ja}}</ref>。

ラインナップは、ひと口サイズの『ちょこっとプッチンプリン』から380[[グラム]] (g) の『Happyプッチンプリン』など幅広く展開されている{{Sfn|藤井|2022|p=100}}。[[2020年]](令和2年)には、[[鶏卵|卵]]や[[乳]]を使わない、植物由来の原料のみを使用した『植物生まれのプッチンプリン』を発売している{{Sfn|角山|2021|p=83}}。これらのほかにも、[[2006年]](平成18年)の『Happyプッチンプリン』の発売以降、グリコ乳業では、『プッチンプリン』の楽しさと驚きを提供するための「ブランド全体の活性化」施策として、定期的に話題性の高い商品を投入してきた{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=211}}。

なお、最終的には保安検査場の検査員の判断となるが、プリンは液体物とされているため100[[ミリリットル]]を超える『Bigプッチンプリン』は[[国際線]]の[[航空機]]内には持ち込めない{{Sfn|チャーリィ|2019|p=183}}。


== 歴史 ==
== 歴史 ==
=== 背景 ===
1950年代ごろまでプリンは外食のデザートとして供されるか町のケーキ店での販売にとどまっていた<ref>{{Cite web |title=プリンの発祥は?蒸し料理からプディングになるまでの歴史 {{!}} 北の菓子 菓風 |url=https://kitanokashi-kafuu.com/%e3%83%97%e3%83%aa%e3%83%b3%e3%81%ae%e7%99%ba%e7%a5%a5%e3%81%af%ef%bc%9f%e8%92%b8%e3%81%97%e6%96%99%e7%90%86%e3%81%8b%e3%82%89%e3%83%97%e3%83%87%e3%82%a3%e3%83%b3%e3%82%b0%e3%81%ab%e3%81%aa%e3%82%8b/ |website=北の菓子 菓風 |date=2021-11-26 |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref><ref>{{Cite web |title=プリンって実はとってもSDGsなスイーツだった?プリンの歴史から紐解くプリンのすごさ、可能性について(後半)|プリン王子の今日のプリンあしたのプリン。 {{!}} スイーツのことならTASTEMADE |url=https://sweets.tastemade.jp/articles/2207-puding-history |website=sweets.tastemade.jp |access-date=2023-04-10}}</ref>。1962年、モロゾフが持ち帰り用のプリンを発売。陶器製の容器から皿に移すことでカラメルが上になるプリンが家庭で楽しめるようになった<ref>{{Cite web |title=プリンの歴史をご存じですか? 愛されスイーツの歩み「プリン年表」 |url=https://www.kateigaho.com/food/89965/ |website=雑誌 家庭画報公式サイト |access-date=2023-04-10}}</ref>。ただし皿に移すことなく食べられているケースも多かった<ref>{{Cite web |title=プッチンプリン {{!}} グリコ エピソード 1-04 |url=https://cp.glico.com/pucchin/assets/images/story/episode01/episode_ct_01_04.gif |website=cp.glico.com |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref>。
{{See also|プディング}}


==== プディングの発祥 ====
1964年[[ハウス食品|ハウス食品工業]]が、家庭でもプリンが手軽に作れる"プリンの素"である『プリンミクス』を発売<ref>{{Cite web |title=会社の歩み {{!}} 会社案内 {{!}} ハウス食品 |url=https://housefoods.jp/company/information/history.html |website=housefoods.jp |access-date=2023-04-10}}</ref><ref>{{Cite web |title=半世紀つづくロングセラーがフレッシュアップ!気分上がる、かんたん自家製スイーツ「パウダーデザートシリーズ」 |url=https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000094.000036263.html |website=プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES |access-date=2023-04-10}}</ref>。家庭で食べるプリンが普及していくきっかけとなった<ref>{{Cite web |title=プリンの歴史について |url=https://izu-toriyose.shop-pro.jp/?mode=f7 |website=伊豆のスイーツ・お土産・特産品の通販【伊豆取り寄せ宅急便】 |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref>。1968年、モロゾフがプリン工場生産を開始<ref>{{Cite web |title=かつて「プリン」は「レストランで食べるもの」だった?(ニッポン放送) |url=https://news.yahoo.co.jp/articles/f06810785d2dac2721382efd4d1854955fded04b |website=Yahoo!ニュース |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref>。
[[日本]]で[[カスタードプディング|プリン]]と呼ばれることになる[[プディング]]の発祥については、一説では[[1588年]]の[[英西戦争 (1585年-1604年)|英西戦争]]後に世界の海の[[覇権]]を握った[[イギリス海軍]]の艦上であったと言われている{{Sfn|吉田|2001|p=24}}。[[航海]]中の限られた[[食糧]]を無駄にしないために、余りものの[[パン]]屑や[[小麦粉]]、[[食肉|肉片]]、[[脂身]]、[[ナッツ]]類などを、卵とともに味付けして[[ナプキン]]で包み[[蒸し焼き]]にしたのが始まりとされる{{Sfn|角山|2021|p=70}}{{Sfn|吉田|2001|pp=25-26}}。16世紀後半から17世紀初頭に{{Sfn|角山|2021|p=71}}、船員たちが家庭に持ち込んで[[イギリス]]中に広まったとするものである{{Sfn|角山|2021|p=70}}{{Sfn|吉田|2001|p=26}}。


一方で、プディングの発祥は[[古代]]にまで遡れるともいわれる{{Sfn|クィンジオ|2021|p=20}}。古くは[[ホメロス]]の『[[オデュッセイア]]』に、[[豚]]の[[胃袋]]を用いたプディングが登場する{{Sfn|クィンジオ|2021|p=20}}。これは[[ソーセージ]]のようなもので{{Sfn|元村|2021|pp=174-175}}、当時は、[[解体]]された[[動物]]の肉や脂身などをパンや[[米]]などと混ぜ合わせ、その他のさまざまな[[食材]]や[[ハーブ]]、[[香辛料]]などとともに胃袋や[[腸]]に詰めたものが、茹でたり焼いたりして食された{{Sfn|クィンジオ|2021|p=20}}。こうしたプディングは、[[血液]]を含むブラッドプディングや含まないホワイトプディングなどとして伝わっている{{Sfn|クィンジオ|2021|pp=20-21}}。
グリコ乳業では1970年代に入り、プリンの素がよく売れていること、デザート商品としてのプリンがないことなどから、プリンの商品化を企画したが<ref name=":0" />、当時は小売デザート商品としてヨーグルトに力を入れていたこと、すでにプリンの商品が他社から出ていたことなどから、社長は開発に反対した<ref name=":0" /><ref name=":2">{{Cite web |title=『プッチンプリン』発売から50年、コロナ禍でも売上を伸ばした「変わらぬ味」とパッケージの秘密 |url=https://fumufumunews.jp/articles/-/22581 |website=fumufumu news -フムフムニュース- |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref>。


いずれにしても、今日のプリンにつながる[[菓子]]としての甘いプディングは、イギリスにおいて隆盛した{{Sfn|クィンジオ|2021|p=28}}。[[ジョージ1世]]が好んだことで広まったとも言われている{{Sfn|クィンジオ|2021|p=28}}。米、パン、[[スモモ亜属|プラム]]などさまざまなフィリング(具材)を用いたプディングが考案され{{Sfn|吉田|2001|pp=26-27}}、[[ドライフルーツ]]やナッツをふんだんに使い[[ラム酒]]を加える[[クリスマスプディング]]は、イギリスでは[[クリスマス]]に欠かせない[[デザート]]として今日まで受け継がれている{{Sfn|角山|2021|p=70}}{{Sfn|吉田|2001|pp=26-27}}。
その後も開発は続けられ、デザートで供されるような、最初からカラメルとプリンが楽しめる、カラメルが上の形で、手軽に皿に移して食べられる形状を模索した結果、洋菓子店でゼリーを型から外す際にアイスピックで穴を開けているところを見たのがヒントになり<ref>{{Cite web |title=プッチンプリン {{!}} グリコ エピソード 1-05 |url=https://cp.glico.com/pucchin/assets/images/story/episode01/episode_ct_01_04.gif |website=cp.glico.com |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref>、プラスティック製の容器の底のツマミを折ることにより空気を入れ、中身を容易に皿に落とせる形の容器が開発された<ref name=":0" /><ref>{{Cite web |title=まもなく発売50周年!「プッチンプリン」ロングセラーの理由 {{!}} サライ.jp|小学館の雑誌『サライ』公式サイト |url=https://serai.jp/gourmet/1040914 |website=serai.jp |date=2021-09-19 |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref><ref name=":2" />。試行錯誤の結果、ツマミと内部の円がずれているほうが折れやすいということがわかり採用される<ref>{{Cite web |title=プッチンプリン {{!}} グリコ エピソード 1-11 |url=https://cp.glico.com/pucchin/assets/images/story/episode01/episode_ct_01_11.gif |website=cp.glico.com |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref>。


イギリスから[[フランス]]に伝わったプディングは、菓子の本場でもデザートとして定着する{{Sfn|角山|2021|p=71}}。[[1828年]]には[[アントナン・カレーム]]が著書の中でプディングの[[レシピ]]を紹介している{{Sfn|角山|2021|p=71}}。そして、フィリングを徹底して排除した卵液のみで作る[[カスタードプディング]]が考案されたのも、この頃のフランスであったと考えられている{{Sfn|角山|2021|p=71}}。これは後に味覚を補うためにカラメルソースをかけて供されるようになった{{Sfn|角山|2021|p=71}}{{Sfn|吉田|2001|p=30}}。
1972年、『グリコプリン』の名前で商品化される<ref name=":0" />。


==== 日本伝来 ====
1974年の2代目パッケージから『プッチンプリン』に商品名を変更<ref name=":1">{{Cite web |title=プッチンプリン {{!}} グリコ history |url=https://cp.glico.com/pucchin/story/#a01 |website=cp.glico.com |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref>。
[[プディング]]が[[日本]]に伝来した時期については、[[江戸時代]]初期とする説がある{{Sfn|角山|2021|p=71}}。[[平戸藩|平戸]]の[[オランダ商館]]で食されていた可能性が指摘されているほか{{Sfn|吉田|2001|p=30}}、[[元禄]]2年([[1689年]])に完成した[[唐人屋敷]]の[[中国人]]経由で伝わったとも言われている{{Sfn|角山|2021|p=71}}。[[卓袱料理]]のうちの[[茶碗蒸し]]がそれであるという{{Sfn|角山|2021|p=71}}。これには異論もあり、茶碗蒸しはプディングとは関係なく日本で独自に生まれた料理であるとする見解もある{{Sfn|吉田|2001|p=31}}。[[西洋]]のプディングの影響があったか否かはともかく、卵の[[タンパク質]]の加熱凝固作用を利用した茶碗蒸しは{{Sfn|吉田|2001|p=31}}、プディングの一種と言える{{Sfn|吉田|2001|pp=30-31}}{{Sfn|元村|2021|p=176}}。また、[[天明]]5年([[1785年]])に刊行された『万宝料理秘密箱』で「冷し卵羊羹」が紹介されているなど{{Sfn|角山|2021|p=71}}{{Sfn|昭文社編集部|2020|p=98}}、日本では江戸時代から卵を使ったプリン様の料理が食されていたことは確かである{{Sfn|昭文社編集部|2020|p=98}}。


これらの説を措くと、一般的にはプディングが日本に伝来したのは江戸時代後期から[[明治]]初めと言われている{{Sfn|昭文社編集部|2020|p=98}}{{Sfn|元村|2021|p=175}}。[[文久]]2年([[1862年]])に「クラブホテル」、翌文久3年([[1863年]])には「アングロサクソンホテル」という[[イギリス人]]経営の[[ホテル]]が{{Sfn|吉田|2001|p=32}}、[[1860年代]]には[[フランス人]]サムエル・ペール(サミュエル・ピエールか?{{Sfn|吉田|2001|p=32}})による洋菓子店が{{Sfn|角山|2021|p=71}}、ともに[[横浜市|横浜]]に開業しており、これらでプディングが提供されていた可能性は高い{{Sfn|角山|2021|p=71}}{{Sfn|吉田|2001|p=32}}。なお、サムエル・ペールの洋菓子店には、明治3年([[1870年]])に[[大膳職]]にあった村上光保が派遣されて[[西洋料理]]を学んでいるため{{Sfn|角山|2021|p=71}}、[[日本人]]として初めてプディングを作った可能性がある{{Sfn|吉田|2001|p=33}}。
1990年、3個入りパック発売開始<ref name=":3">{{Cite web |title=まもなく発売50周年!「プッチンプリン」ロングセラーの理由 {{!}} サライ.jp|小学館の雑誌『サライ』公式サイト |url=https://serai.jp/gourmet/1040914 |website=serai.jp |date=2021-09-19 |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref>。


プディングが[[日本語]]の[[文献]]に最初に現れるのは、明治5年([[1872年]])発行の『西洋料理通』においてである{{Sfn|角山|2021|p=71}}{{Sfn|元村|2021|p=175}}{{Sfn|吉田|2001|p=33}}。ここでは「ポッディング」と表記され、[[干柿]]、[[生姜]]、米などを用いたメニューが紹介されている{{Sfn|昭文社編集部|2020|p=98}}{{Sfn|吉田|2001|p=33}}。『西洋料理通』の後はしばらくプディングを取り上げた文献は現れず、[[1889年]](明治22年)になって『和洋菓子製法独案内』で、パンと[[バター]]を使った「パンバタプリン」{{Sfn|吉田|2001|p=33}}、「ライスプリン」など複数のメニューが掲載されている{{Sfn|昭文社編集部|2020|p=98}}。これが、Puddingにプリンの読みをあてた初出とされる{{Sfn|昭文社編集部|2020|p=98}}。
1993年、ビッグサイズ発売開始<ref name=":3" />。


その後、プディングは急速に普及したようで、多くの文献に記述が見られるようになる{{Sfn|吉田|2001|p=34}}。[[夏目漱石]]の[[ロンドン]]留学時([[1900年]]から[[1902年]])の日記に「プッヂング」「プヂング」として{{Sfn|元村|2021|p=175}}、「江戸甘味處つくし」に残る[[1901年]](明治34年)のレシピに「西洋風茶碗蒸菓子」として{{Sfn|昭文社編集部|2020|p=99}}、[[1903年]](明治36年)の[[ベストセラー]]{{Sfn|角山|2021|p=71}}『[[食道楽 (村井弦斎)|食道楽]]』に「プデン」として{{Sfn|吉田|2001|p=34}}{{Sfn|昭文社編集部|2020|p=99}}、同じく1903年(明治36年)の『洋食のおけいこ』では「プッジング」として取り上げられている{{Sfn|吉田|2001|p=34}}。また、[[1908年]](明治41年)発行の『[[海軍割烹術参考書]]』でも[[ワッフル]]などとともに掲載されている{{Sfn|昭文社編集部|2020|p=99}}。
2006年、超特大サイズ発売開始<ref name=":3" />。


[[明治時代]]まではPuddingはさまざまに表記されていたが、しだいに呼びやすい「プリン」表記に収斂されていったと考えられている{{Sfn|吉田|2001|p=34}}。また、さまざまなプディングが紹介されていたが、[[大正]]以降は、『趣味と実用の西洋料理』で「ベイクドカスタード」、『欧米の菓子と料理』で「ボイルドカスタード」と「キャラメルカスタード」、『お菓子の作り方百卅種』では「カスター・プリン」としてカスタードプディングが紹介されるなど{{Sfn|昭文社編集部|2020|p=99}}、いつしか日本ではプリンと言えばカスタードプディングを指す語として広まっていった{{Sfn|角山|2021|p=71}}{{Sfn|元村|2021|p=174}}。
2014年、常温で約6か月保存可能なひとくちサイズのプリン『ちょこっとプッチンプリン』を発売開始。2018年、商品名を『ひとくちプッチンプリン』に変更<ref name=":1" />。


=== 開発 ===
2015年、子会社であったグリコ乳業を江崎グリコが吸収合併したため、江崎グリコからの販売となる<ref>{{Cite web |title=江崎グリコ、グリコ乳業を吸収合併 - 日本経済新聞 |url=https://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ15HO4_V11C14A2TI0000/?n_cid=nbpds_top3 |website=www.nikkei.com |access-date=2023-04-10}}</ref>。
==== 開発当時の状況 ====
[[1952年]]([[昭和]]27年)、[[砂糖]]の[[統制]]が撤廃され日本の菓子業界は活性化したが{{Sfn|昭文社編集部|2020|p=99}}、[[1950年代]]ごろまでプリンは[[外食]]の[[デザート]]として供されるか町のケーキ店での販売<ref>{{Cite web |和書 |title=プリンの発祥は?蒸し料理からプディングになるまでの歴史 |url=https://kitanokashi-kafuu.com/プリンの発祥は?蒸し料理からプディングになる/ |website=北の菓子 菓風 |publisher=田代製菓 |date=2021-11-26 |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref><ref>{{Cite web |和書 |author=プリン王子 |date=2022-08-15 |title=プリンって実はとってもSDGsなスイーツだった? プリンの歴史から紐解くプリンのすごさ、可能性について(後半)|プリン王子の今日のプリンあしたのプリン。 |url=https://sweets.tastemade.jp/articles/2207-puding-history |website=TASTEMADE |publisher=Tastemade Japan |access-date=2023-04-10}}</ref>、あるいは一部の家庭で楽しまれるにとどまっていた{{Sfn|昭文社編集部|2020|p=99}}。


[[1960年代]]になると、一般家庭でも気軽にプリンが作れる即席プリン(「プリンの素」)が発売された{{Sfn|昭文社編集部|2020|p=99}}。[[1960年]](昭和35年)に[[明治製菓]]が発売した即席プリンは半年で発売中止となったが{{Sfn|昭文社編集部|2019|p=115}}、[[1963年]](昭和38年)に[[ゼネラルフーヅ]]が粉末プリンの『バニラ・プディー』を発売し{{Sfn|昭文社編集部|2019|p=115}}、翌[[1964年]](昭和39年)には[[ハウス食品|ハウス食品工業]]が、家庭でもプリンが手軽に作れる“プリンの素”である『プリンミクス』を発売<ref>{{Cite web |和書 |title=会社の歩み {{!}} 会社案内 |url=https://housefoods.jp/company/information/history.html |publisher=ハウス食品 |access-date=2023-04-10}}</ref><ref>{{Cite press release |和書 |title=半世紀つづくロングセラーがフレッシュアップ!気分上がる、かんたん自家製スイーツ「パウダーデザートシリーズ」 |publisher=[[ハウス食品グループ本社]] |date=2020-01-15 |url=https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000094.000036263.html |via=[[PR TIMES]] |access-date=2023-04-10}}</ref>。この商品が家庭で食べるプリンの普及の契機となった<ref>{{Cite web |和書 |title=プリンの歴史について |url=https://izu-toriyose.shop-pro.jp/?mode=f7 |website=伊豆取り寄せ宅急便 |access-date=2023-04-10 |archive-url= https://web.archive.org/web/20230410155054/https://izu-toriyose.shop-pro.jp/?mode=f7 |archive-date=2023-04-10 |url-status=dead |url-status-date=2024-04-14|language=ja}}</ref>。同年には、[[ライオン (企業)|ライオン]]からも『ママプリン』が発売されている<ref>{{Cite journal |和書 |date=2021-12-20 |title=Talking About Sweets 02: PUDDING |journal=& Premium 2022年2月号 やっぱり、おやつは大切。 |volume=9 |issue=2 |publisher=[[マガジンハウス]] |id={{NDLBibID|025004279}} |page=42}}</ref>。
2016年の時点で、多い日には1日に15万の生産数<ref name=":4">{{Cite web |title=[WBS] 【ロングセラー研究所】プッチンプリン - LOVELY-LOVELY.NET |url=https://lovely-lovely.net/business/glico/ |website=lovely-lovely.net |access-date=2023-04-10}}</ref>。


この間、プリンを提供する洋菓子店や[[喫茶店]]も増え{{Sfn|昭文社編集部|2020|p=96}}、[[1962年]](昭和37年)には[[モロゾフ]]が持ち帰り用のプリンを発売<ref name="kateigaho">{{Cite web |和書 |title=プリンの歴史をご存じですか? 愛されスイーツの歩み「プリン年表」 |website=[[家庭画報|家庭画報.com]] |publisher=[[世界文化社]] |url=https://www.kateigaho.com/food/89965/ |date=2020-11-06 |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref>。[[陶器]]製の容器から[[皿]]に移すことでカラメルが上になるプリンが家庭で楽しめるようになった<ref name="kateigaho" />。ただし皿に移すことなく食べられているケースも多かった<ref>{{Cite web |和書 |title=マンガで読む!開発物語 第一話 プリンなんか売れるか! |page=4 |website=プッチンプリン |publisher=江崎グリコ |url=https://cp.glico.com/pucchin/assets/images/story/episode01/episode_ct_01_04.gif |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref>。[[1968年]](昭和43年)には、それまで[[職人]]の手作業で作っていたプリンを、[[工場]]で生産するようになった<ref>{{Cite web |和書 |author=NEWS ONLINE 編集部 |date=2023-03-21 |title=かつて「プリン」は「レストランで食べるもの」だった? |website=ニッポン放送 NEWS ONLINE |publisher=[[ニッポン放送]] |url=https://news.1242.com/article/424054 |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref>。
2020年、3年の開発期間を経て、動物性原料を使用しない『植物生まれのプッチンプリン』を発売。卵や乳アレルギーを気にせず食べられる商品<ref name=":1" /><ref>{{Cite web |title=〈植物生まれの〉Bigプッチンプリン(江崎グリコ)2023年2月20日発売 |url=https://news.nissyoku.co.jp/news/foodsnews230214-24-02 |website=日本食糧新聞電子版 |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref>。


そして、[[1971年]](昭和46年)に日本初の[[チルド]]カップのプリンとして、[[森永乳業]]から『森永プリン』が発売された{{Sfn|昭文社編集部|2019|p=115}}<ref>{{Cite web |和書 |url=https://www.morinagamilk.co.jp/100th/history.html |title=森永乳業商品ヒストリー {{!}} 100th anniversary |publisher=森永乳業 |access-date=2023-04-12}}</ref>。これらによって[[1970年代]]にプリンは、家庭で手軽に食べられるおやつとなり{{Sfn|昭文社編集部|2020|p=99}}、日本の[[国民食]]とも{{Sfn|角山|2021|p=70}}、[[ショートケーキ]]と[[シュークリーム]]に並ぶ日本の[[洋菓子]]の[[御三家]]とも呼ばれる地位を築きつつあった{{Sfn|吉田|2001|p=34}}。
2022年、発売50周年<ref>{{Cite web |title=「プッチンプリン」は今年で50周年! 原料を一から見直し、こだわり抜いたおいしさにリニューアル プッチンプリン国民投票開催!”プッチン”する派?しない派? 原寸大純金ツマミが当たるキャンペーンも実施! ~「グリコ研究員が探る!」”プッチン“する派?しない派?研究結果もブランドサイトで公開~ {{!}} 【公式】江崎グリコ(Glico) |url=https://www.glico.com/jp/newscenter/pressrelease/38713/ |website=www.glico.com |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref>。


== 製法 ==
==== 開発の経過 ====
[[グリコ協同乳業]]では[[1970年代]]に入り、プリンの素がよく売れていること、自社にはデザート商品としてのプリンがないことなどから、プリンの商品化を企画したが<ref>{{Cite web |和書 |title=マンガで読む!開発物語 第一話 プリンなんか売れるか! |page=2 |website=プッチンプリン |publisher=江崎グリコ |url=https://cp.glico.com/pucchin/assets/images/story/episode01/episode_ct_01_02.gif |access-date=2024-04-20 |language=ja}}</ref>、当時は小売デザート商品として[[ヨーグルト]]に力を入れていたこと、すでにプリンの商品が他社から出ていたことなどから、社長は開発に反対した<ref name="fumufumunews" />。同業他社が参入しているジャンルにわざわざ乗り込んでリスクを冒すより、主力商品のヨーグルトに専念した方が良いという判断であった{{Sfn|日経デザイン|2016|p=58}}。それでも開発チームはあきらめず{{Sfn|日経デザイン|2016|p=58}}、グリコらしい{{Sfn|藤井|2022|p=100}}他社にはないプリンを開発して経営陣を説得しようと開発を続けた{{Sfn|日経デザイン|2016|p=58}}。
容器に充填する際は、液体のままのプリン液をまず注ぎ、そのあとカラメルを注ぐ。カラメル液の比重が重いため下にたまる<ref name=":3" /><ref name=":4" />。シュークリームの味とコクをお手本に、練乳も加えられ、蒸さずに作られる<ref name=":3" /><ref name=":2" />。

喫茶店などで提供されるプリンは皿に乗せられて提供されており、[[消費者]]にも「プリンは皿にのせて食べるもの」という意識が定着していることが調査で明らかになっていた{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=211}}。開発チームは、なじみのある形で食べてもらおうと、簡単に取り出せる容器の開発を模索した{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=211}}。洋菓子店で[[ゼリー]]を型から外す際に[[アイスピック]]で穴を開けているところを見たのがヒントになり<ref>{{Cite web |和書 |title=マンガで読む!開発物語 第一話 プリンなんか売れるか! |page=5 |website=プッチンプリン |publisher=江崎グリコ |url=https://cp.glico.com/pucchin/assets/images/story/episode01/episode_ct_01_05.gif |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref>、底に穴を開ければ空気が入って皿に落ちることに気付いた{{Sfn|藤井|2022|p=100}}。しかし、家庭でアイスピックを使えというのは現実的ではなかった{{Sfn|日経デザイン|2016|p=58}}。そんな折、底のツマミを折ると穴が開く仕組みの容器が倉庫で発見される{{Sfn|日経デザイン|2016|p=58}}。過去に、海外に出張した社員が持ち帰っていたものだった{{Sfn|日経デザイン|2016|p=58}}。さっそく、それを基に[[試作品]]を作ってみたものの、ツマミが折れても穴が開かないなど、なかなか思い通りの容器にならなかった{{Sfn|日経デザイン|2016|p=58}}。試行錯誤を繰り返す中で、たまたま穴を開けるための底のくぼみとツマミの位置がずれた[[不良品]]が発生したが{{Sfn|日経デザイン|2016|p=59}}、むしろずれていた方が、ツマミが簡単に折れ<ref>{{Cite web |和書 |title=マンガで読む!開発物語 第一話 プリンなんか売れるか! |page=11 |website=プッチンプリン |publisher=江崎グリコ |url=https://cp.glico.com/pucchin/assets/images/story/episode01/episode_ct_01_11.gif |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref>、きれいに穴が開いた{{Sfn|日経デザイン|2016|p=59}}。

こうして、[[プラスチック]]製の容器の底のツマミを折ることにより空気を入れ、中身を容易に皿に落とせる形の容器が開発された{{Sfn|藤井|2022|p=100}}<ref name="serai_2021" /><ref name="fumufumunews" />。社長が当初反対したことで先行の他社製品との違いを明確にすることができたのだった<ref>{{Cite book |和書 |author=真下弘孝 |date=2008-03-15 |title=ドーナツの穴:食べもののかたちの秘密!? |publisher=[[大空出版]] |page=33 |isbn=978-4-903175-21-8}}</ref>。経営陣からも商品化が認められ{{Sfn|日経デザイン|2016|p=59}}、グリコ協同乳業では1億円以上をかけて充填機を新たに購入{{Sfn|ニューライフ編集部|2003|p=26}}。[[1972年]]([[昭和]]47年)7月に『'''グリコプリン'''』として発売された{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=212}}{{Sfn|Value creator編集部|2012|p=89}}。価格は、100&nbsp;g入りで50円であった{{Sfn|日経デザイン|2016|p=56}}。

=== 発売後 ===
==== 改名とリニューアル ====
『グリコプリン』はそこそこの売り上げをあげたものの、ヒットというほどでもなかった{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=211}}。そこで[[グリコ協同乳業]]は、[[オイルショック]]の最中ではあったが、[[品質]]を向上させる方向でのリニューアルに踏み切った{{Sfn|奥井|2022|p=141}}。

まず改善したのは味であった{{Sfn|藤井|2022|p=101}}。[[シュークリーム]]の[[カスタードクリーム]]の味を手本に{{Sfn|奥井|2022|p=140}}{{Sfn|ニューライフ編集部|2003|p=26}}、よりミルキーでコクがあり{{Sfn|藤井|2022|p=101}}、飽きのこない味を目指して改良された{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=211}}。併せて、商品名も、最大の特徴である「プッチンと折ってプルンと出す」{{Sfn|ニューライフ編集部|2003|p=26}}楽しさを直接伝える{{Sfn|日経デザイン|2016|p=59}}『'''プッチンプリン'''』に変更して、[[1974年]]([[昭和]]49年)から販売した<ref name="pucchin-story">{{Cite web |和書 |title=マンガで読む!開発物語 |url=https://cp.glico.com/pucchin/story/#a01 |website=プッチンプリン |publisher=江崎グリコ |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref>。

リニューアルと同時に[[テレビCM]]を大々的に展開した{{Sfn|日経デザイン|2016|p=59}}。これによって『プッチンプリン』人気に火がつき{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=211}}、[[命名|ネーミング]]の妙もあって売り上げは爆発的に増加{{Sfn|ニューライフ編集部|2003|p=26}}。一躍大ヒット商品となった{{Sfn|奥井|2022|p=141}}{{Sfn|藤井|2022|p=101}}{{Sfn|田久|2013|p=29}}{{Sfn|日経デザイン|2016|p=59}}。

==== ライバルへの対抗 ====
しかし、[[1980年代]]になって[[小売業]]の主流が[[スーパーマーケット]]、次いで[[コンビニエンスストア]]に移ると{{Sfn|日経デザイン|2016|p=59}}、[[個人商店]]などのグリコ特約店を中心に販売されていた{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=212}}『プッチンプリン』の売り上げは次第に低下していくようになる{{Sfn|日経デザイン|2016|p=59}}。これに対応するため、[[1990年]]([[平成]]2年)にスーパーマーケットでの[[主婦]]や子ども向けの商品として{{Sfn|日経デザイン|2016|p=59}}3個入りパックを発売{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=212}}<ref name="serai_2021" />。当時のレギュラーサイズが110&nbsp;g入りであったのに対して{{Sfn|ニューライフ編集部|2003|p=26}}、小ぶりな70&nbsp;g入りとした{{Sfn|日経デザイン|2016|p=56}}。[[1993年]](平成5年)には、コンビニエンスストアでの若い男性向けとして{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=212}}<ref name="glico_2022-01-18" />、レギュラーサイズの約1.6倍となる176&nbsp;g入り{{Sfn|奥井|2022|p=141}}{{Sfn|ニューライフ編集部|2003|p=26}}『'''Bigプッチンプリン'''』を投入した{{Sfn|奥井|2022|p=141}}{{Sfn|藤井|2022|p=101}}。これらは人気を集めて『プッチンプリン』の販売の中心を担うようになり{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=212}}{{Sfn|日経デザイン|2016|p=59}}、ついには従来のレギュラーサイズに代わって『Bigプッチンプリン』が『プッチンプリン』のスタンダードとなるにいたった{{Sfn|奥井|2022|p=141}}。これらによって『プッチンプリン』は一時の不振を脱した{{Sfn|日経デザイン|2016|p=59}}。

[[2000年代]]に入ると、[[焼きプリン]]や[[なめらかプリン]]などが台頭し、従来のプリンは苦戦を強いられた{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=212}}。また、[[2007年]](平成19年)以降は、プリン市場全体が縮小に転じた{{Sfn|Value creator編集部|2012|p=88}}。コンビニエンスストアやスーパーマーケットが[[プライベートブランド]]で手作り[[デザート|スイーツ]]の販売を拡大したことの影響とされている{{Sfn|Value creator編集部|2012|p=88}}。これらを打破するため、[[グリコ乳業]]では2000年代から[[2010年代]]初頭にかけて{{Sfn|奥井|2022|p=141}}、話題性のある商品を次々と投入していく{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=212}}。

[[2006年]](平成18年)、約3.8倍サイズの『'''Happyプッチンプリン'''』の販売を開始{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=212}}。[[大量生産]]が難しいことを逆手にとって、各店舗では1週間程度の販売とし、販売する店舗を短期間で次々と変えた{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=212}}。販売店舗は従業員にも知らされないという{{Sfn|藤井|2022|p=100}}。いつどこで買えるのか分からないこの販売手法は{{Sfn|奥井|2022|p=141}}{{Sfn|日経デザイン|2016|p=59}}、「ゲリラ販売」と呼ばれて[[インターネット]]を中心に話題となった{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=212}}。[[2008年]](平成20年)には、『Happyプッチンプリン』に底のツマミを4つ付け、そのうち一つだけが本物という『Happyプッチン運だめし』を発売したが{{Sfn|角山|2021|p=83}}、これは店頭で折られるいたずら被害が続出したことで販売中止となった{{Sfn|日経デザイン|2016|p=58}}。

[[2009年]](平成21年)には、レギュラーサイズの約10倍{{Sfn|奥井|2022|p=141}}、約1&nbsp;[[キログラム|kg]]のプリンが作れる専用キット『手づくりプッチンプリン』を開発{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=212}}{{Sfn|田久|2013|p=30}}。底にツマミのついたプラスチック容器と、プリンの素・カラメル[[シロップ]]各2個のセットで、繰り返し使えるよう別売りの詰め替えセットも販売された{{Sfn|田久|2013|p=30}}。[[東急ハンズ]]や[[ロフト (雑貨店)|ロフト]]などの雑貨店の店頭に並ぶと、驚きをもって迎えられた{{Sfn|奥井|2022|p=141}}。

翌[[2010年]](平成22年){{Efn|宣伝会議編集部著「ロングセラーブランドのコミュニケーション戦略 file.39」では2009年(平成21年)としている。}}、初めての別フレーバーを期間限定で発売{{Sfn|奥井|2022|p=141}}。カラメルソースを[[イチゴ]]味に変更したもので{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=212}}、大ヒットとなった{{Sfn|藤井|2022|p=101}}。

==== 40周年 ====
発売40周年となった[[2012年]]([[平成]]24年)、「プッチンプリンは、とんでもないことをやる[[ブランド]]だという驚きを与えたい」と{{Sfn|Value creator編集部|2012|p=91}}、「プッチンHAPPY!」をテーマに{{Sfn|Value creator編集部|2012|p=88}}「ネタの波状攻撃」を掲げて{{Sfn|Value creator編集部|2012|p=91}}さまざまな企画を次々と展開した{{Sfn|Value creator編集部|2012|p=88}}。40周年企画商品として発売された『Specialプッチンプリン』は{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=213}}、子どもには『プッチンプリン』を買い与えても自分用には焼きプリンやなめらかプリンを購入する傾向にある世代に向けて『プッチンプリン』初のなめらか系プリンとして開発され、[[消費者]]の嗜好の変化に合わせた、とろけるような[[食感]]と濃厚な[[カスタード]]の味わいが特徴であった{{Sfn|Value creator編集部|2012|p=89}}。3月には通常の『プッチンプリン』とどちらがいいかの「プッチンどっち派キャンペーン」を展開した{{Sfn|Value creator編集部|2012|p=89}}。

同年の企画で最も注目を集めたのは{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=212}}、6月から8月までの期間限定で148円で発売された『男のプッチンプリンおつまみ冷奴風』であった{{Sfn|Value creator編集部|2012|p=90}}。[[出汁]]と[[塩]]を利かせた[[豆乳プリン]]に[[生姜]]風味の[[しょうゆ]]ソースという、まさに[[冷奴]]そのものの{{Sfn|Value creator編集部|2012|p=89}}{{Sfn|日経デザイン|2016|p=58}}甘くないプリンであり{{Sfn|奥井|2022|p=141}}{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=212}}、[[ソーシャル・ネットワーキング・サービス|SNS]]や[[口コミ]]による情報拡散を狙った商品であった{{Sfn|Value creator編集部|2012|p=90}}。開発時には社内でも賛否があり{{Sfn|Value creator編集部|2012|p=89}}、[[販売店]]からは「どの売り場に置けばいいのか分からない」との声もあったが{{Sfn|日経デザイン|2016|p=58}}、多くの[[マスメディア]]に採り上げられ{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=212}}、癖になる味と{{Sfn|角山|2021|p=83}}人気となった{{Sfn|奥井|2022|p=141}}。

また、一般的にはオリジナルグッズを景品とする[[キャンペーン]]が減少している中で、同年「プッチンスライダープレート」が当たるプレゼントキャンペーンを実施{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=213}}。直径約264[[ミリメートル]]・高さ102ミリメートルで、一番高い所で「プッチン」するとプリンが滑り降りプルルン感をより楽しめるというもので、何度も試作して角度などを調整したという{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=213}}。[[グリコ乳業]]マーケティング部の和田健史は、「応募率を高めることを目標にするのであれば、[[現金]]を景品にしたほうが良いのかもしれません。しかし、それではほかの商品との差異化は図れない。[[商品開発]]にも通じますが、プッチンプリンのプレゼントキャンペーンではいつの時代も驚きを提供していきたいと思っています」と語っている{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=213}}。

こうした2012年(平成24年)の数々の企画については、「[[メーカー]]が一つのブランドで、ここまで立て続けにイベントを展開することは珍しい」と評された{{Sfn|Value creator編集部|2012|p=91}}。

==== さらなるニーズへの対応 ====
[[ファイル:Three types of Pucchin Pudding.jpg|thumb|『プッチンプリン』3種(上から時計回りに『ちょこっとプッチンプリン』、3個パック、『Bigプッチンプリン』)]]
[[2014年]]([[平成]]26年)には、『プッチンプリン』を[[弁当]]などとともに外で食べたいというニーズに応えて{{Sfn|藤井|2022|p=101}}、[[常温]]で約6か月保存可能な一口サイズのプリン『ひとくちプッチンプリン』を発売開始<ref name="pucchin-story" />。6個入りで{{Sfn|田中|2020|p=49}}、[[コップ|カップ]]の底をつまむだけで食べられる容器とした{{Sfn|藤井|2022|p=101}}。商品名は[[2018年]](平成30年)に『'''ちょこっとプッチンプリン'''』に変更された<ref name="pucchin-story" />。

同2014年(平成26年)にソースを増量し滝のように流れる『プッチンプリン ナイアガラソース』、翌[[2015年]](平成27年)にはブラックココア味で真っ黒な『真っ黒プッチンプリン』、[[2021年]]([[令和]]3年)には[[ミルクコーヒー]]味の『Bigプッチンプリン たっぷりミルクのミルクコーヒー』を販売している{{Sfn|角山|2021|p=83}}。

[[2020年]]([[令和]]2年)には、3年の開発期間を経て、動物性原料を使用しない『'''植物生まれのプッチンプリン'''』を発売した<ref name="pucchin-story" />。開発のきっかけは、「皆がおいしい時間を楽しめるように」という思いだったという{{Sfn|宣伝会議編集部|2021|p=10}}。例えば[[給食]]などでプリンが出ても、周りの人がおいしそうに食べる姿を見ることしかできなかった卵や乳に[[食物アレルギー|アレルギー]]を持つ子どもたちに、どうすればプリンのおいしさや食べる楽しさを知ってもらえるかを考えて開発されたものであった{{Sfn|宣伝会議編集部|2021|p=10}}。[[豆乳]]や[[アーモンド]]ペーストを使用し{{Sfn|奥井|2022|p=141}}{{Sfn|藤井|2022|p=101}}{{Sfn|田中|2020|p=48}}、従来の『プッチンプリン』と変わらない[[食感]]と味わいを再現{{Sfn|田中|2020|p=49}}。[[サトウキビ]]の風味を生かした{{Sfn|田中|2020|p=49}}きび砂糖で優しい甘さとなっている{{Sfn|奥井|2022|p=141}}。3個パックが1個65&nbsp;g入り、『植物生まれのBigプッチンプリン』は155&nbsp;g入りで{{Sfn|田中|2020|p=49}}、パッケージには植物由来を示す[[葉]]をデザインした{{Sfn|宣伝会議編集部|2021|p=10}}。

『植物生まれのプッチンプリン』の発売によって、これまでプリン市場のターゲットとなりえなかった{{Sfn|宣伝会議編集部|2021|p=10}}卵や牛乳アレルギーの子どもが友達と「プッチン」を体験ができるようになり{{Sfn|奥井|2022|p=141}}、[[江崎グリコ]]には、卵アレルギーの子どもを持つ親から「子どもにプリンを食べるという機会を与えてくれてありがとう」という感謝の声が寄せられた{{Sfn|宣伝会議編集部|2021|p=11}}。開発に携わった同社の[[ブランド]]担当の篠歌寿子は、せっかく新しい分野を開拓してもすぐに他社が追随して[[コモディティ化]]が進むのではないかとの指摘に対して、「私たちは“皆がおいしい時間を楽しめる”ことを目標に掲げています。当社のプッチンプリンブランドだけでなく、他のブランドでも多くの人がおいしい時間を楽しめるようになるのであれば、むしろコモディティを促進するきっかけになりたい」と答えている{{Sfn|宣伝会議編集部|2021|p=11}}。

『植物生まれのプッチンプリン』は、アレルギーを持つ子どもだけでなく、[[環境問題]]や[[健康]]に対する意識の高い女性からも歓迎されている{{Sfn|奥井|2022|p=141}}。江崎グリコ乳業・洋生菓子マーケティング部でブランドマネージャーを務め、[[2000年代]]から『プッチンプリン』の[[ブランディング]]を担ってきた有馬卓は、「今後も食に対する[[価値観]]が変化し続けるのは必至。100周年を迎える頃には、植物生まれのプッチンプリンがブランドの柱の一つとして存在感を示すことになるでしょう」と同製品の可能性を展望している{{Sfn|奥井|2022|p=141}}。

なお、[[原材料]]価格の高騰などにより、2015年(平成27年)4月に価格を維持したまま容量を減らした[[実質値上げ]]<ref name="朝日新聞_2019-02-07">{{Cite news |和書 |author=久保田侑暉 |date=2019-02-07 |title=「プッチンプリン」が値上げ 生乳価格の引き上げが影響 |newspaper=朝日新聞 |publisher=朝日新聞社 |url=https://www.asahi.com/articles/ASM275DMVM27PLFA00H.html |access-date=2023-05-16 |archive-url= https://web.archive.org/web/20230518140156/https://www.asahi.com/articles/ASM275DMVM27PLFA00H.html |archive-date=2023-05-18 |url-status=dead |deadlinkdate=2024-04-15}}</ref>、[[2019年]](平成31年)4月には約4&nbsp;%の値上げを実施した<ref>{{Cite news |和書 |title=グリコ、プリンなど値上げ |newspaper=日本経済新聞 |date=2019-02-08 |edition=第13版、朝刊 |page=16 |publisher=日本経済新聞社}}</ref>。これによって、[[メーカー希望小売価格]]は、3個入りパックが190円から200円、『Bigプッチンプリン』が130円から140円となった<ref name="朝日新聞_2019-02-07" />。[[2022年]](令和4年)9月にも再度の値上げを行っている<ref>{{Cite press release |和書 |title=一部製品の価格改定ならびに内容量変更のお知らせ |publisher=江崎グリコ |date=2022-05-26 |url=https://www.glico.com/assets/files/NR20220526.pdf |format=PDF |access-date=2023-05-16}}</ref><ref>{{Cite news |和書 |title=グリコも値上げ 原材料高が影響 ポッキーなど199品目 |newspaper=読売新聞 |date=2022-05-27 |edition=第13版、朝刊 |page=8}}</ref>。ただし、実勢価格では『Bigプッチンプリン』は2020年(令和2年)現在110円程度である{{Sfn|昭文社編集部|2020|p=96}}。

==== 50周年 ====
[[2022年]]([[令和]]4年)、発売50周年を迎え、5年をかけて開発したという[[桜]]の[[花びら]]の形をした特別容器入りのものが3月に数量限定で販売された{{Sfn|奥井|2022|pp=140-141}}。これが50周年に際して発売された唯一の特別な『プッチンプリン』であり、40周年の時と異なり、大々的にさまざまな企画を打つことはなかった{{Sfn|奥井|2022|p=141}}。これは、一過性の話題を狙うよりプリンそのものの「真面目な進化」によって本来のターゲットである子どもと母親に注力しようという姿勢の表れであると同時に、競合する[[コンビニスイーツ]]に対して、発売時の[[開発者]]の思いであったという「[[牛乳]]という完全栄養食を、子供たちが自然と欲しがる形で提供したい」という原点に立ち返り、「素材のおいしさと[[栄養分]]を生かす」ことで対抗したいという考え方からであった{{Sfn|奥井|2022|pp=140-141}}。実際、この年の4月に『プッチンプリン』と『植物生まれのプッチンプリン』をともにリニューアルし、従来から使っていなかった[[保存料]]や[[人工甘味料]]に加えて[[着色料]]も不使用としている{{Sfn|奥井|2022|p=141}}。『植物生まれのプッチンプリン』については、[[乳化剤]]や[[カラメル色素]]なども不使用とし、[[コク]]を増す改良も加えた{{Sfn|奥井|2022|pp=140-141}}。

『プッチンプリン』のブランド戦略について、ブランドマネージャーの有馬は、「今後10年、20年とトップブランドの座を守るためには、『最初に食べたプリン』はプッチンプリンだったという人を、できるだけ増やしたい。その人が大人になったとき、“プッチン”した楽しさを幸福な記憶として思い出すことが、次の世代への橋渡しとなるからです」と語っている{{Sfn|奥井|2022|pp=140-141}}。

=== 年表 ===
* [[1972年]]([[昭和]]47年) - 『グリコプリン』発売<ref name="pucchin-story" />{{Sfn|Value creator編集部|2012|p=89}}、100&nbsp;g入りで50円{{Sfn|日経デザイン|2016|p=56}}
* [[1974年]](昭和49年) - 味やパッケージをリニューアルし、『プッチンプリン』に商品名を変更<ref name="pucchin-story" />
* [[1990年]]([[平成]]2年) - 70&nbsp;gの{{Sfn|日経デザイン|2016|p=56}}3個入りパック発売開始<ref name="serai_2021" />{{Sfn|角山|2021|p=83}}
* [[1993年]](平成5年) - 176&nbsp;g入り{{Sfn|奥井|2022|p=141}}{{Sfn|ニューライフ編集部|2003|p=26}}の『Bigプッチンプリン』発売開始{{Sfn|角山|2021|p=83}}{{Sfn|日経デザイン|2016|p=56}}
* [[2006年]](平成18年) - 400&nbsp;g入りの『Happyプッチンプリン』発売開始{{Sfn|Value creator編集部|2012|p=89}}{{Sfn|日経デザイン|2016|p=57}}
* [[2014年]](平成26年) - 『ひとくちプッチンプリン』発売開始{{Sfn|角山|2021|p=83}}<ref name="pucchin-story" />
* [[2015年]](平成27年) - グリコ乳業を[[江崎グリコ]]が吸収合併したため、江崎グリコからの販売となる<ref>{{Cite news |和書 |title=江崎グリコ、グリコ乳業を吸収合併 |newspaper=日本経済新聞 |publisher=日本経済新聞社 |date=2014-12-15 |url=https://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ15HO4_V11C14A2TI0000/ |access-date=2023-04-10}}</ref>
* [[2016年]](平成28年) - 『ひとくちプッチンプリン』の商品名を『ちょこっとプッチンプリン』に変更<ref name="pucchin-story" />
* [[2020年]]([[令和]]2年) - 『植物生まれのプッチンプリン』発売開始<ref name="pucchin-story" /><ref>{{Cite news |和書 |title=〈植物生まれの〉Bigプッチンプリン(江崎グリコ)2023年2月20日発売 |newspaper=[[日本食糧新聞]]電子版 |publisher=[[日本食糧新聞社]] |url=https://news.nissyoku.co.jp/news/foodsnews230214-24-02 |access-date=2023-04-10 |archive-url=https://web.archive.org/web/20230410155050/https://news.nissyoku.co.jp/news/foodsnews230214-24-02 |archive-date=2023-04-10 |url-status=dead |deadlinkdate=2024-04-15}}</ref>
* [[2022年]](令和4年) - 発売50周年{{Sfn|角山|2021|p=83}}<ref>{{Cite press release |和書 |title=「プッチンプリン」は今年で50周年! 原料を一から見直し、こだわり抜いたおいしさにリニューアル プッチンプリン国民投票開催! “プッチン”する派?しない派? 原寸大純金ツマミが当たるキャンペーンも実施! ~「グリコ研究員が探る!」“プッチン”する派?しない派?研究結果もブランドサイトで公開~ |date=2022-03-30 |publisher=江崎グリコ |url=https://www.glico.com/jp/newscenter/pressrelease/38713/ |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref>
* [[2024年]](令和6年) - 4月に社内の[[情報システム]]に不具合が発生。プッチンプリンを含む冷蔵製品が1か月以上にわたり出荷不能になっている<ref>{{Cite news |和書 |url= https://www.yomiuri.co.jp/economy/20240419-OYT1T50136/ |title=江崎グリコ「プッチンプリン」など冷蔵品のほぼ全品出荷停止、物流・調達システムに障害…5月中旬の再開目指す |newspaper=[[読売新聞]]オンライン |publisher=[[読売新聞社]] |date=2024-04-19 |access-date=2024-04-20}}</ref><ref>{{Cite press release |和書 |title=当社基幹システム障害に伴うチルド食品(冷蔵品)の出荷停止期間の延長に関するお詫び |publisher=江崎グリコ |date=2024-05-01 |url=https://www.glico.com/jp/newscenter/pressrelease/46266/ |access-date=2024-05-30}}</ref>。

== 容器・包装 ==
蓋は、中央の赤・黄・緑のラインで上下に分け、上が白、下がオレンジというデザインになっており、これは発売当初から変更されていない{{Sfn|日経デザイン|2016|p=55}}。ただ、[[2014年]]([[平成]]26年)に、プリンの[[写真]]が前面に出る形に改められている{{Sfn|日経デザイン|2016|p=57}}。また、『グリコプリン』の時代でも「プッチンしてね」と記されていたように{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=211}}商品名の一部であるとともに特徴をもあらわす「プッチン」の[[ロゴ]]がデザインのポイントになっている{{Sfn|日経デザイン|2016|p=56}}。ロゴデザインは時代にあわせて何度か変更されているものの、基本的なイメージは変わっていない{{Sfn|日経デザイン|2016|p=55}}。

容器の[[プラスチック]]は、商品の[[品質]]の良さがアピールできるよう中身の見える透明の容器が採用されている{{Sfn|日経デザイン|2016|p=55}}。発売当初の側面は無地であったが{{Sfn|日経デザイン|2016|p=55}}、[[2004年]]([[平成]]16年)以降{{Sfn|日経デザイン|2016|p=57}}、[[コンビニエンスストア]]など商品の側面しか見えない陳列棚が増えたため、『プッチンプリン』であることが分かる図柄を入れるようになった{{Sfn|日経デザイン|2016|p=55}}。3個入りパックで商品全体を包む[[フィルム#延伸|シュリンク]]も、[[2007年]](平成19年)以降、全面印刷となっている{{Sfn|日経デザイン|2016|p=57}}。

容器の形状は、発売当初からの独特の花形を引き継いでいる{{Sfn|日経デザイン|2016|p=56}}。これは、おいしさや楽しさを表現しているだけでなく{{Sfn|日経デザイン|2016|p=56}}、構造的な強度を高めるとともに、中身を回りにくくするという機能がある{{Sfn|ニューライフ編集部|2003|p=26}}。なお、プッチンプリンの容器と同様の底のツマミを折ることで中身を出すことができるタイプのプリン容器は、製菓材料店や[[100円ショップ]]でも販売されている{{Sfn|田久|2013|p=30}}。

== 栄養素 ==
{| class="wikitable"
|+
!
!内容量
!エネルギー
!タンパク質
!脂質
!炭水化物
!食塩相当量
|-
|プッチンプリン(3個パック)
|67&nbsp;g×3
|89&nbsp;kcal
|1.1&nbsp;g
|4.0&nbsp;g
|12.1&nbsp;g
|0.13&nbsp;g
|-
|Bigプッチンプリン
|160&nbsp;g
|212&nbsp;kcal
|2.8&nbsp;g
|9.8&nbsp;g
|28.1&nbsp;g
|0.31&nbsp;g
|-
|ちょこっとプッチンプリン
|20&nbsp;g×6
|29&nbsp;kcal
|0.49&nbsp;g
|1.1&nbsp;g
|4.4&nbsp;g
|0.027&nbsp;g
|-
|ちょこっとプッチンプリン ミルクショコラ
|20&nbsp;g×6
|29&nbsp;kcal
|0.45&nbsp;g
|0.95&nbsp;g
|4.7&nbsp;g
|0.024&nbsp;g
|-
|植物生まれのBigプッチンプリン
|155&nbsp;g
|203&nbsp;kcal
|1.2&nbsp;g
|8.5&nbsp;g
|30.5&nbsp;g
|0.17&nbsp;g
|-
|植物生まれのプッチンプリン 3個パック
|65&nbsp;g×3
|86&nbsp;kcal
|0.51&nbsp;g
|3.5&nbsp;g
|13.0&nbsp;g
|0.071&nbsp;g
|}
『プッチンプリン』の公式WEBサイトによれば、製品1個あたりの内容量・栄養成分は上表のとおりである。ただし、[[実教出版]]編修部著『カラーグラフ食品成分表2022』では、『Bigプッチンプリン』1個あたり[[生理的熱量|エネルギー]]は225[[キロカロリー]]、[[たんぱく質]]2.8グラム、[[脂質]]11.4グラム、[[炭水化物]]27.9グラム、[[食塩]]相当量は0.3グラムとしている{{Sfn|実教出版編修部|2022|p=195}}。

元[[大阪大学]][[講師 (教育)|講師]]で[[医学博士]]の藤原邦達は、[[2003年]]([[平成]]15年)に『ニューライフ』誌での対談において、「この分量から3グラムのたんぱく質が摂取できるということは、[[筋肉]]や[[脳細胞]]、[[血管]]を作るために絶対に必要な[[栄養素]]ですから、[[おやつ]]としていい[[サプリメント]]効果を発揮しています」「成長期の子どもにとっては、[[脂肪]]分や炭水化物のカロリー補給も必要です」などとして、「栄養的にも非常に優れた食品」と評価している{{Sfn|ニューライフ編集部|2003|p=26}}。この対談の中で[[グリコ乳業]]商品開発第1特別グループ阪本健二は、子どもだけでなく、「高カロリーといわれていますが、[[サラリーマン]]の[[朝食]]代わりや[[OL]]さんが[[昼食]]をこれだけで済ませたり、即効性の[[糖質]]に加えて、たんぱく質は持続性がありますので、[[肉体労働者]]の方にも好評です」と応じている{{Sfn|ニューライフ編集部|2003|p=26}}。

== 評価 ==
『プッチンプリン』の味は、「[[牛乳]]の風味を生かした味わい」{{Sfn|新聞ダイジェスト社|2013|p=196}}「[[お菓子]]のような昔懐かしい甘さ」などと評される{{Sfn|昭文社編集部|2020|p=96}}。発売当時はプリンといえば蒸して作られるものであったが、その中に登場した『プッチンプリン』は、蒸さずにツルンとした食感のプリンであった{{Sfn|角山|2021|p=82}}。[[洋菓子]]研究家の[[吉田菊次郎]]は、『プッチンプリン』のこの食感を「画期的だった」と評している{{Sfn|角山|2021|p=82}}。

また、『プッチンプリン』は、ツマミを折って皿に出すことができるという、これも画期的な容器で登場した{{Sfn|日経デザイン|2016|p=59}}。おいしさに加えて、この楽しさが多くの人に愛され続けている理由の一つになっている{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=211}}。[[江崎グリコ]]で[[2000年代]]から『プッチンプリン』のブランディングを担っている有馬卓も、「おいしさと楽しさ」こそが「プッチンプリンの本質」と自任している{{Sfn|奥井|2022|p=140}}。

プリン市場が縮小する中でも、『プッチンプリン』の販売実績は常に1位か2位を保持しており{{Sfn|ニューライフ編集部|2003|p=25}}、[[2022年]]([[令和]]4年)時点で売り上げ・[[市場占有率|シェア]]ともに首位の座にある{{Sfn|奥井|2022|p=140}}。[[2016年]](平成28年)時点でも多い日には日産15万を製造していたが<ref name="lovely-lovely" />、[[2021年]](令和3年)度の販売は、前年比約10&nbsp;%増となり、ここ10年で最高であったという{{Sfn|奥井|2022|p=140}}。発売開始から40年が経過した[[2012年]](平成24年)までに、累計販売数は51億個を超え{{Sfn|田久|2013|p=29}}<ref name="朝日新聞_2013-01-12" />、翌[[2013年]](平成25年)1月に、最も売れたプリンのブランドとして[[ギネス世界記録]]に認定された<ref>{{Cite web |和書 |title=40年間で達成、世界一のクリームキャラメル~ギネス世界記録の地域活性 |url=https://www.guinnessworldrecords.jp/news/2013/1/40年間で達成、世界一のクリームキャラメル |website=ギネス世界記録 |date=2013-01-23 |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref>{{Efn|田久晶子著「プッチンプリンとドロリッチができたっ!!」および2013年(平成25年)1月12日付『朝日新聞』では認定は2012年(平成24年)10月としており、ギネス世界記録公式WEBサイトでは2013年(平成25年)1月21日に行われたのは授与式としている。}}。発売から50年が経過した『プッチンプリン』は、日本において誰もが知っており{{Sfn|昭文社編集部|2020|p=96}}、プリンと聞いて真っ先に思い浮かべるものの一つとなっている{{Sfn|角山|2021|p=82}}。

『プリン本』による、スーパーで売られているプリンの食べ比べチャートでは、対象となった9商品のうち、硬さは平均的であり、甘さは最も控えめであった{{Sfn|昭文社編集部|2019|pp=112-113}}。

[[Goo|gooランキング]]編集部は「自宅・自分用プリンのおすすめ」の1位に『Bigプッチンプリン』を選び、濃厚なカラメルソースとプルプルのプリンが口のなかでしっかりと味わえると評価した<ref>{{Cite web |和書 |title=プリンの人気おすすめランキング20選【固めのプリンやスーパーで買える市販の安いプリンも】 |url=https://ranking.goo.ne.jp/select/9303 |website=gooランキング |access-date=2023-05-13 |language=ja}}</ref>。


== 活用・その他 ==
== 活用・その他 ==
=== アレンジレシピ ===
3個入りプッチンプリンをそのまま使い、[[クリームチーズ]]と[[ホットケーキミックス]]でつくる「プリンチーズケーキ」は、カラメルをあらかじめ別にしておき最後に塗る<ref>{{Cite book |和書 |author=ゆかり |date=2022-03-16 |title=料理研究家ゆかりのおうちで簡単! 3時のおやつ |publisher=宝島社 |pages=51-52 |isbn=978-4-299-02613-2}}</ref>。また[[野外調理|キャンプ料理]]として、[[食パン]]2枚で挟んだプッチンプリンを網の上で焼く「パン・プッチンプリン・パン」<ref>{{Cite book |和書 |author=佐藤一博 |date=2021-07-31 |title=アルミホイル・ソロキャンレシピ |publisher=秀和システム |pages=72-73 |isbn=978-4-7980-6435-2}}</ref>、[[料理研究家]]の[[リュウジ]]による「スーパー・プッチンプリン・シェイク」などがある<ref>{{Cite book |和書 |author=リュウジ |date=2021-07-21 |title=お手軽食材で料理革命! リュウジのコンビニレストラン |publisher=宝島社 |page=93 |isbn=978-4-299-01848-9}}</ref>。製品の[[包装|パッケージ]]や[[ウェブサイト|公式サイト]]でも、[[2012年]]([[平成]]24年)5月から、[[パティシエ]]の[[辻口博啓]]との[[コラボレーション]]によるアレンジメニューを掲載している{{Sfn|Value creator編集部|2012|p=89}}。

=== ネーミングのオノマトペ ===
「プッチン」は、プリンを皿に容易に移すための動作音の[[オノマトペ]]である。商品名としてオノマトペの例示にたびたび使われており<ref>{{Cite journal |和書 |author=田嶋香織 |date=2006 |title=オノマトペ(擬音語擬態語)について |journal=関西外国語大学留学生別科日本語教育論集 |issue=16 |pages=193-205 |publisher=[[関西外国語大学]]留学生別科 |url=https://kansaigaidai.repo.nii.ac.jp/records/5910 |ncid=AN10416807}}</ref><ref>{{Cite journal |和書 |author=人見誠 |date=2007-10-15 |title=「食感のオノマトペ」から学びを広げる |journal=ことばの学び |volume=14 |pages=12-13 |publisher=[[三省堂]] |url=https://tb.sanseido-publ.co.jp/kokugo/Info/magazines/lang-edu/pdf/014_pdf/007.pdf |format=PDF}}</ref>、商品特性を生かしたネーミングになっている<ref>{{Cite web |和書 |author=大男 |title=【なめらか派】シェフパティシエが教える!生菓子の基本理論~プリンの作り方のポイント~前編【しっかり派】 |url=https://hanawamam.com/pudding-theory-1/ |website=スイーツだいすき大男 |date=2021-12-14 |access-date=2023-04-11 |language=ja}}</ref>。また2016年におこなわれた「プッチンする派なのか、しない派なのか」を問う「第1回 プッチン国民投票」などもあり、「プッチンする」などの[[動詞化]]の実例もある<ref name="glico_2022-01-18" /><ref>{{Cite video |和書 |title=「意外な才能!?クイズ力爆発の石山蓮華と卑屈芸?の土屋礼央」(石山蓮華×土屋礼央)_『こねくと』 |publisher =『[[こねくと]]』 [[TBSラジオ]] |via=YouTube |url=https://www.youtube.com/watch?v=wjl-7c940Jw&t=6461s |time=1:47:41 |date=2023-04-06 |accesss-date=2023-04-11}}</ref>。


=== 教育現場 ===
=== 教育現場 ===
2022年、プッチンプリンの空き容器を使って文房具を作るイベントが千葉県流山市の小学校で行われた。児童や家族が容器を集め江崎グリコが定規などに加工して児童に提供した<ref>{{Cite web |title=~「プッチンプリン」子どもたちと考えるSDGs取り組み~ 「プッチンプリン」の容器が文房具になる!子どもたちに特別授業 「プッチンプリン オリジナル文房具贈呈式」を開催 {{!}} 【公式】江崎グリコ(Glico) |url=https://www.glico.com/jp/newscenter/pressrelease/41501/ |website=www.glico.com |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref><ref>{{Cite web |title=プリン空き容器、文房具に再生 児童へ贈呈、千葉・流山(共同通信) |url=https://news.yahoo.co.jp/articles/c60cf52d08e92ad32d947768139dcf55ed0ae6d7 |website=Yahoo!ニュース |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref>。
2022年、プッチンプリンの空き容器を使って[[文房具]]を作るイベントが[[千葉県]][[流山市]]の小学校で行われた。児童や家族が容器を集め江崎グリコが[[定規]]などに加工して児童に提供した<ref>{{Cite press release |和書 |title=~「プッチンプリン」子どもたちと考えるSDGs取り組み~ 「プッチンプリン」の容器が文房具になる!子どもたちに特別授業 「プッチンプリン オリジナル文房具贈呈式」を開催 |publisher=江崎グリコ |date=2022-10-20 |url=https://www.glico.com/jp/newscenter/pressrelease/41501/ |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref><ref>{{Cite news |和書 |title=プリン空き容器、文房具に 児童へ贈呈、千葉・流山 |url=https://www.chibanippo.co.jp/newspack/20221019/987880 |newspaper=[[千葉日報]]オンライン |date=2022-10-19 |access-date=2024-04-20}}</ref>。


=== 医療 ===
=== 医療 ===
リハビリテーションに関する論文で、嚥下調整食として用いられる<ref>{{Cite web |url=http://www.reha.kobegakuin.ac.jp/~rehgakai/journal/files/no11-2/ronbun14.pdf |title=飲食物の違いによる嚥下音の変化について |format=PDF |publisher=神戸学院総合リハビリテーション研究 藤原有沙 古田恒輔 |accessdate=2023-04-11}}</ref>。また重症筋無力症による嚥下困難においては、普通のプリンは飲み込みにくいとされているが、プッチンプリンは飲み込みやすいとされている<ref>{{Cite web |title=飲み込みやすい食事、飲み込みにくい食事 {{!}} 重症筋無力症について |url=http://www.med.nagoya-cu.ac.jp/mammal.dir/mg/page14.html |website=www.med.nagoya-cu.ac.jp |access-date=2023-04-10}}</ref>。
[[リハビリテーション]]に関する論文で、[[摂食・嚥下|嚥下]]調整食として用いられる<ref>{{Cite journal |和書 |author1=藤原有沙 |author2=古田恒輔 |date=2016-03 |title=飲食物の違いによる嚥下音の変化について |journal=神戸学院総合リハビリテーション研究 |volume=11 |issue=2 |pages=147-154 |publisher=[[神戸学院大学]]総合リハビリテーション学会 |url=http://www.reha.kobegakuin.ac.jp/~rehgakai/journal/files/no11-2/ronbun14.pdf |format=PDF}}</ref>。また[[重症筋無力症]]による嚥下困難においては、普通のプリンは飲み込みにくいとされているが、プッチンプリンは飲み込みやすいとされている<ref>{{Cite web |和書 |author=藤井義敬 |title=飲み込みやすい食事、飲み込みにくい食事 {{!}} 重症筋無力症について |url=http://www.med.nagoya-cu.ac.jp/mammal.dir/mg/page14.html |publisher=名古屋市立大学 |access-date=2023-04-10}}</ref>。


=== 特許と商標 ===
=== 特許と商標 ===
1976年に容器は特許出願され、1978年に公開されており<ref>{{Cite web |title=j-platpat |url=https://www.j-platpat.inpit.go.jp/?uri=/c1800/PU/JP-S53-031476/EFE70D60CC1D0987E359F1204E35FA9BF7554A0C39E33BEB0DE640705810748C/11/ja |website=www.j-platpat.inpit.go.jp |access-date=2023-04-10}}</ref>商標は2023年現在、14登録されている<ref>{{Cite web |title=プッチンプリン 称呼(呼称)・ネーミング {{!}} 商標(商標出願・登録商標) 情報 |url=https://patent-i.com/tm/pron/%E3%83%97%E3%83%83%E3%83%81%E3%83%B3%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%B3/ |website=patent-i.com |access-date=2023-04-10 |language=ja |last=ブランドテラス}}</ref>。
1976年に容器は[[日本の特許制度|特許]]出願され、1978年に公開されている<ref>{{Cite web |title=特願昭51-106028 |url=https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-S51-106028/10/ja |website=[[J-PlatPat]] |publisher=[[工業所有権情報・研修館]] |access-date=2024-04-20}}</ref>。[[日本の商標制度|商標]]は2023年4月現在、グリコ乳業及び江崎グリコとして「プッチン」で50の登録があり、「プッチンプリン」では15の登録がある<ref>{{Cite web |和書 |author=大瀬佳之 |title=プッチンプリン 称呼(呼称)・ネーミング {{!}} 商標(商標出願・登録商標) 情報 |url=https://patent-i.com/tm/pron/%E3%83%97%E3%83%83%E3%83%81%E3%83%B3%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%B3/ |website=ブランドテラス |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref>{{Efn|2023年4月12日時点での[[特許情報プラットフォーム]]での検索結果による。}}


また、蓋の裏は特殊な加工がされており、プリンがくっつかないようになっている。この蓋の加工技術も凸版印刷によって特許が取得されており、発明品開発の際にはプッチンプリンが使用されている<ref>{{Cite web |url=https://ipforce.jp/patent-jp-B9-6354491 |title=特許第6354491号(P6354491) |access-date=2023-04-10 |publisher=知財ポータルサイトIP Force}}</ref>。
また、蓋の裏は特殊な加工がされており、プリンがくっつかないようになっている。この蓋の加工技術も[[凸版印刷]]によって特許が取得されており、発明品開発の際にはプッチンプリンが使用されている<ref>{{Cite web |和書 |url=https://ipforce.jp/patent-jp-B9-6354491 |title=特許第6354491号(P6354491) |access-date=2023-04-10 |publisher=知財ポータルサイト IP Force |language=ja}}</ref>。

=== ギネス記録 ===
2013年1月、最も売れたプリンのブランドとしてギネス世界記録に認定される。40年間の累計で51億個売れたとされている<ref>{{Cite web |title=40年間で達成、世界一のクリームキャラメル~ギネス世界記録の地域活性 |url=https://www.guinnessworldrecords.jp/news/2013/1/40%E5%B9%B4%E9%96%93%E3%81%A7%E9%81%94%E6%88%90%E3%80%81%E4%B8%96%E7%95%8C%E4%B8%80%E3%81%AE%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%A9%E3%83%A1%E3%83%AB |website=ギネス世界記録 |date=2013-01-23 |access-date=2023-04-10 |language=ja-JP}}</ref>。


== CM ==
== CM ==
[[1974年]]([[昭和]]49年)のリニューアルにあたって、グリコでは「プッチンしちゃお」という『プッチンプリン』の[[テレビCM]]を{{Sfn|角山|2021|p=83}}短期間に集中的に展開した{{Sfn|日経デザイン|2016|p=59}}{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|pp=212-213}}。当時としては[[デザート]]商品や{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=212}}[[乳製品]]の[[CM]]は珍しかったが{{Sfn|奥井|2022|p=141}}、プッチンする楽しさを伝えるためには、やはり[[ポスター]]などよりテレビCMが適しているとの判断からであった{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=212}}{{Sfn|日経デザイン|2016|p=59}}。グリコでは、「皿の上に乗せる際に感じる”プルルン”という[[シズル感]]と、プッチンアクションの楽しさを音楽で表現」することを狙ったという{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=213}}。テレビCMの効果が高かった時代でもあり{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=213}}、このCMの効果もあって『プッチンプリン』の売り上げは大きく拡大した{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=211}}{{Sfn|藤井|2022|p=101}}。


以降、『プッチンプリン』の[[広告]]手段としては、テレビCMが主に採用されている{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=211}}。CM[[キャラクター]]はそのときどきによって変更しており、[[1996年]]([[平成]]8年)には[[スキャットマン・ジョン]]が「プッチンパポペ エブリバディプリンプリン」と歌うCMを放映し{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=213}}、[[2012年]](平成24年)には「今っぽい楽しさ」のイメージを発信しようと[[きゃりーぱみゅぱみゅ]]を起用したが{{Sfn|Value creator編集部|2012|p=89}}、楽しさとシズル感を音楽で訴求するスタイルはあえて変えていない{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=213}}。これは、グリコによれば、「子どものころにテレビCMを見てプッチンプリンを食べていた世代に対して、同じアプローチをすることで商品を再想起させて販売につなげるため」の戦略である{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=213}}。
* 1974年 - 商品名変更とともにCM開始<ref name=":2" />。

* 1978年 - 林寛子<ref>{{Cite web |title=初代CMガール、世界中で食べたプッチンプリン/デイリースポーツ online |url=https://www.daily.co.jp/gossip/hiroko/2016/07/03/0009258776.shtml |website=デイリースポーツ online |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref>
* 1974年(昭和49年) - 商品名変更とともに[[コマーシャルメッセージ|CM]]開始<ref name="fumufumunews" />。
* 1982年 - [[秋本理央|橋本清美]]
* 1983年 - [[ゴジラ (1984年の映画)|ゴジラ]]<ref>{{Cite web |title=ゴジラ グリコプッチンプリン CM ゴジラ編/ゴジラ CM bb-navi |url=https://www.bb-navi.com/cm-douga/CMgodzilla.46089.html |website=www.bb-navi.com |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref>
* [[1978年]](昭和53 - [[林寛子 (タレント)|林寛子]]<ref>{{Cite web |和書 |title=初代CMガール、世界中で食べたプッチンプリン |url=https://www.daily.co.jp/gossip/hiroko/2016/07/03/0009258776.shtml |website=デイリースポーツ online |date=2016-07-03 |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref>
* 1990年 - [[川越]]
* [[1982]](昭和57年) - [[橋本清美]]
* [[1983年]](昭和58年) - [[ゴジラ (1984年の映画)|ゴジラ]]<ref>{{Cite web |和書 |title=ゴジラ グリコプッチンプリン CM ゴジラ編 |url=https://www.bb-navi.com/cm-douga/CMgodzilla.46089.html |website=CM総合サイト CM bb |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref>
* 1994年 - [[高橋玲奈]]
* [[1990年]](平成2年) - [[川越美和]]
* 1996年 - [[スキャットマン・ジョン]]<ref>{{Cite web |title=「プッチンプリン」CM│CM作品情報│東映ビデオ-あのテーマ |url=https://m.toei-video.co.jp/default.asp?d=70;t_T0000006007 |website=東映ビデオ-東映Vモバイル(あのテーマ)- |access-date=2023-04-10}}</ref>
* [[1994年]](平成6年) - [[高橋玲奈]]
* 1998年 - [[ウォレスとグルミット]]
* 1996年(平成8年) - スキャットマン・ジョン{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=213}}<ref>{{Cite web |和書 |title=「プッチンプリン」CM |url=https://m.toei-video.co.jp/default.asp?d=70;t_T0000006007 |website=東映ビデオ-あのテーマ |access-date=2023-04-10}}</ref> - イメージソング「[[プリプリ・スキャット]]」を歌唱し、CDシングルも発売された<ref>{{Cite web |和書 |author=有田シュン |date=2014-01-16 |title=スキャットマンが再ブレイクの兆し!? 「プッチンプリン」ギネス世界記録(TM)達成との、意外で懐かしい関係! |website=日刊サイゾー |url=https://www.cyzo.com/2014/01/post_15786_entry.html |access-date=2023-04-12 |language=ja}}</ref>。
* 2009年 - プッチン大統領。テーマソング - やくしまるえつこ<ref>{{Cite web |title=やくしまるえつこ「プッチン大統領」でプルルルルン |url=https://natalie.mu/music/news/24913 |website=音楽ナタリー |access-date=2023-04-10 |language=ja |first=Natasha |last=Inc}}</ref>
* [[1998年]](平成10年) - [[ウォレスとグルミット]]
* 2012年 - [[きゃりーぱみゅぱみゅ]]<ref>{{Cite web |title=きゃりーぱみゅぱみゅ グリコ乳業 プッチンプリン Specialプッチンプリン~とろける食感~ TV-CM プッチン体操 主…/きゃりーぱみゅぱみゅ CM bb-navi |url=https://www.bb-navi.com/cm-douga/CMkyarypamyupamyu.17292.html |website=www.bb-navi.com |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref>
* [[2009年]](平成21年) - プッチン大統領。テーマソング - やくしまるえつこ<ref>{{Cite web |和書 |author=音楽ナタリー編集部 |date=2009-12-09 |title=やくしまるえつこ「プッチン大統領」でプルルルルン |url=https://natalie.mu/music/news/24913 |website=[[ナタリー (ニュースサイト)|音楽ナタリー]] |publisher=ナターシャ |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref>
* 2015年 - [[本田望結]]<ref>{{Cite web |title=本田望結 東MAXに説教!?「お金で買えないものもある」 - スポニチ Sponichi Annex 芸能 |url=https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2015/02/03/kiji/K20150203009739870.html |website=スポニチ Sponichi Annex |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref>
* 2012年(平成24年) - きゃりーぱみゅぱみゅ{{Sfn|Value creator編集部|2012|p=89}}{{Sfn|宣伝会議編集部|2012|p=213}}<ref>{{Cite web|和書|title=きゃりーぱみゅぱみゅ グリコ乳業 プッチンプリン Specialプッチンプリン~とろける食感~ TV-CM プッチン体操 主婦篇,社長篇 |url=https://www.bb-navi.com/cm-douga/CMkyarypamyupamyu.17292.html |website=CM総合サイト CM bb |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref>
* 2019年 - [[Toshl|ToshI]]<ref>{{Cite web |title=Toshlが、プッチンプリンの化身“プッチンプリンスToshl”に!大人に向けて「おいしさのこだわり」を魂のシャウト!! |url=https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000086.000001124.html |website=プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES |access-date=2023-04-10}}</ref><ref>{{Cite web |title=Toshlがプッチンプリンへの愛込めたオリジナルソング制作、Web CMにも出演(動画あり / 写真32枚) |url=https://natalie.mu/music/news/327920 |website=音楽ナタリー |access-date=2023-04-10 |language=ja |first=Natasha |last=Inc}}</ref>
* 2020年 - [[真木よう子]](「マックシェイク “プッチン”できないけど プッチンプリン」)<ref>{{Cite web |title=真木よう子 マックシェイク プッチンプリン CM プッチンないけど プッチンプリン篇。「プッチンできねぇっす/真木よう子 CM bb-navi |url=https://www.bb-navi.com/cm-douga/CMmakiyouko.86228.html |website=www.bb-navi.com |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref>
* [[2015]](平成27年) - [[本田望結]]<ref>{{Cite web |和書 |title=本田望結 東MAXに説教!?「お金買えないものもある」 |url=https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2015/02/03/kiji/K20150203009739870.html |website=[[Sponichi Annex]] |publisher=スポーツニッポン新聞社 |date=2015-02-03 |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref>
* [[2019年]](平成31年) - [[Toshl]] - イメージソング「[[いトシのプッチンプリン]]」を歌唱し、CDシングルも発売された<ref>{{Cite press release |和書 |title=Toshlが、プッチンプリンの化身“プッチンプリンスToshl”に!大人に向けて「おいしさのこだわり」を魂のシャウト!! |publisher=江崎グリコ |date=2019-04-15 |url=https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000086.000001124.html |via=PR TIMES |access-date=2023-04-10 |archive-url= https://web.archive.org/web/20230416045153/https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000086.000001124.html |archive-date=2023-04-16 |url-status=dead}}</ref><ref>{{Cite web |和書 |author=音楽ナタリー編集部 |date=2019-04-19 |title=Toshlがプッチンプリンへの愛込めたオリジナルソング制作、Web CMにも出演 |url=https://natalie.mu/music/news/327920 |website=音楽ナタリー |publisher=ナターシャ |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref>。
* [[2020年]]([[令和]]2年) - [[真木よう子]](「マックシェイク “プッチン”できないけどプッチンプリン」)<ref>{{Cite web|和書|title=真木よう子 マックシェイク プッチンプリン CM プッチンできないけど プッチンプリン篇。「プッチンできねぇっす」|url=https://www.bb-navi.com/cm-douga/CMmakiyouko.86228.html |website=CM総合サイト CM bb |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref>


== コラボ商品 ==
== コラボ商品 ==
『プッチンプリン』の持つブランド力は、異業種の企業にとっても魅力的であり、[[コラボレーション]]企画の声を掛けられることも多い{{Sfn|Value creator編集部|2012|p=90}}。


* 2011年 - 宝島社 グリコ手づくりプッチンプリンジャンボ&ミニ&アニバーサリーBOOKセット<ref>{{Cite web |title=グリコ手づくりプッチンプリンジャンボ&ミニ&アニバーサリーBOOKセット│宝島社の公式WEBサイ 宝島チャンネル |url=https://tkj.jp/book/?cd=60871901 |website=宝島社の公式WEBサイト 宝島チャンネル |access-date=2023-04-10}}</ref>
[[2011年]]([[平成]]23年)11月に<ref>{{Cite web |和書 |title=グリコ手づくりプッチンプリンジャンボ&ミニ&アニバーサリーBOOKセット |url=https://tkj.jp/book/?cd=60871901 |website=宝島チャンネル |publisher=宝島社 |access-date=2023-04-10}}</ref>、[[宝島社]]とのコラボレーションで、『プッチンプリン』の歴史を記した[[ムック本]]と『手づくりプッチンプリン』のセットを書店で販売した{{Sfn|Value creator編集部|2012|pp=90-91}}。価格は2,200円であったが、予想を上回る販売数を記録したという{{Sfn|Value creator編集部|2012|p=91}}。[[2012年]](平成24年)5月に[[神戸屋]]で販売された『プッチンプリン蒸しパン』も、売り上げは非常に好調だったとされている{{Sfn|Value creator編集部|2012|p=91}}。
* 2020年 - 「マックシェイク “プッチン”できないけど プッチンプリン」<ref>{{Cite web |title=ニュースリリース {{!}} マクドナルド公式 |url=https://www.mcdonalds.co.jp/company/news/2020/0407a/ |website=www.mcdonalds.co.jp |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref>


同年7月からは、[[タカラトミーアーツ]]が『おかしなプッチンプリン プッチンアイス』を販売した{{Sfn|Value creator編集部|2012|p=91}}。「プッチンバー」と呼ぶ棒を『プッチンプリン』に刺して[[冷凍庫]]で凍らせると、容器から引き抜いて食べられるという商品である{{Sfn|Value creator編集部|2012|p=91}}。ズボッと引き抜く感覚の楽しさと、凍った『プッチンプリン』のモチモチ感が味わえる{{Sfn|Value creator編集部|2012|p=91}}。価格は997円で、プリン色と[[イチゴ]]色の2色がある{{Sfn|Value creator編集部|2012|p=91}}。コラボレーションにあわせて『プッチンプリン』は凍らせても美味しいというメッセージを売り場で発信したところ、通常は売り上げの落ちる夏場に大きく売り上げが向上したという{{Sfn|Value creator編集部|2012|p=91}}。
== 出典 ==

[[2020年]]([[令和]]元年)には、[[日本マクドナルド|マクドナルド]]から「マックシェイク “プッチン”できないけど プッチンプリン」が期間限定で発売された<ref>{{Cite press release |和書 |title=「マックシェイク®」と「プッチンプリン」が史上初のコラボ 江崎グリコのプッチンプリン担当者お墨付きの味の再現性! マックシェイク® “プッチン”できないけど プッチンプリン 4月13日(月)から期間限定販売! 自分で“プッチン”出来ちゃう?!「ちょい足しカラメルソース付」を特別限定で実施 |publisher=日本マクドナルド |date=2020-04-07 |url=https://www.mcdonalds.co.jp/company/news/2020/0407a/ |access-date=2023-04-10 |language=ja}}</ref>。

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}

=== 注釈 ===
{{Notelist}}

=== 出典 ===
{{Reflist|2}}
{{Reflist|2}}


== 参考文献 ==
* {{Cite journal |和書 |author=奥井真紀子 |date=2022-04-04 |title=攻める!長寿ブランド #10 プッチンプリン |journal=[[日経トレンディ]] |issue=491 |publisher=[[日経BP]] |ref={{SfnRef|奥井|2022}}}}
* {{Cite book |和書 |author=ジェリ・クィンジオ |translator=元村まゆ |date=2021-10-22 |title=プディングの歴史 |publisher=[[原書房]] |series=「食」の図書館 |isbn=978-4-562-05946-1 |ref={{SfnRef|クィンジオ|2021}}}}
** {{Wikicite |reference=元村まゆ 著「訳者あとがき」。|ref={{SfnRef|元村|2021}}}}
* {{Cite book |和書 |author=実教出版編修部 |date=2022-02-20 |title=カラーグラフ食品成分表2022 |publisher=[[実教出版]] |isbn=978-4-407-35243-6 |ref=harv}}
* {{Cite book |和書 |editor=昭文社編集部 |date=2019-11-22 |title=プリン本 |publisher=[[昭文社]] |isbn=978-4-398-14411-9 |ref=harv}}
* {{Cite book |和書 |editor=昭文社編集部 |date=2020-08-01 |title=プリン本 大阪・京都・神戸 |publisher=昭文社 |isbn=978-4-398-14412-6 |ref=harv}}
* {{Cite journal |和書 |editor=新聞ダイジェスト社 |date=2013-02-15 |title=プッチンプリン、販売世界一 ギネスが認定 |journal=月刊新聞ダイジェスト |volume=47 |issue=3 |pages= |publisher=新聞ダイジェスト社 |id={{NDLBibID|000000006853}} |ref=harv}}
* {{Cite journal |和書 |editor=宣伝会議編集部 |date=2012-09-01 |title=ロングセラーブランドのコミュニケーション戦略 file.39 1972~グリコ乳業「プッチンプリン」 誰もが笑顔になるような「楽しさ」と「驚き」を伝え続ける |journal=宣伝会議 |issue=844 |pages=211-213 |publisher=[[宣伝会議]] |id={{NDLBibID|023909814}} |ref=harv}}
* {{Cite journal |和書 |editor=宣伝会議編集部 |date=2021-09-01 |title=「プッチンプリン」から“植物生まれ”が登場 食べられなかった消費者へ向け新市場をつくる |journal=宣伝会議 |issue=960 |pages= |publisher=宣伝会議 |id={{NDLBibID|031687454}} |ref=harv}}
* {{Cite journal |和書 |author=田中理恵 |date=2020-03-25 |title=新発売 植物生まれのプッチンプリンで家族のハッピータイム |journal=[[レタスクラブ]] |issue=904 |pages= |publisher=[[KADOKAWA]] |id={{NDLBibID|000000059730}} |ref={{SfnRef|田中|2020}}}}
* {{Cite journal |和書 |author=田久晶子 |date=2013-03-02 |title=プッチンプリンとドロリッチができたっ!! |journal=[[サンキュ!]] |volume=17 |issue=12 |pages= |publisher=[[ベネッセコーポレーション]] |id={{NDLBibID|000007849235}} |ref={{SfnRef|田久|2013}}}}
* {{Cite book |和書 |author=チャーリィ古庄 |author-link=チャーリィ古庄 |date=2019-07-11 |title=ちょっと自慢できるヒコーキの雑学100 |publisher=[[インプレス]] |isbn=978-4-295-00656-5 |ref={{SfnRef|チャーリィ|2019}}}}
* {{Cite journal |和書 |author=角山祥道 |date=2021-09-10 |title=愛しの『プリン』 |journal=[[サライ (雑誌)|サライ]] |volume=33 |issue=10 |pages= |publisher=[[小学館]] |id= |ref={{SfnRef|角山|2021}}}}
* {{Cite book |和書 |editor=日経デザイン |editor-link=日経デザイン |date=2016-06-21 |title=ロングセラーパッケージ大全 |publisher=日経BP |isbn=978-4-8222-3514-7 |ref=harv}}
* {{Cite journal |和書 |editor=ニューライフ編集部 |date=2003-02-20 |title=デザートプリンの定番 ロングセラーを誇るプッチンプリン |journal=[[ニューライフ]] |volume=50 |issue=7 |pages= |publisher=ニューライフ |id= |ref=harv}}
* {{Cite journal |和書 |editor=Value creator編集部 |date=2012-06-25 |title=このブランド戦略が凄い!! プッチンプリン40周年 新商品、キャンペーン、異業種コラボレーション… グリコ乳業の『ネタの波状攻撃』に、今年は目が離せない! |journal=Value creator |issue=325 |pages=88-91 |publisher=Value creator社 |id={{NDLBibID|023865862}} |ref=harv}}
* {{Cite journal |和書 |author=藤井龍二 |date=2022-04-06 |title=商品に歴史あり 341 『プッチンプリン』 |journal=THE21 |volume=39 |issue=5 |pages= |publisher=[[PHP研究所]] |id= |ref={{SfnRef|藤井|2022}}}}
* {{Cite book |和書 |author=吉田菊次郎 |author-link=吉田菊次郎 |date=2001-12-19 |title=洋菓子はじめて物語 |publisher=[[平凡社]] |series=[[平凡社新書]] 121 |isbn=4-582-85121-5 |ref={{SfnRef|吉田|2001}}}}

== 外部リンク ==
* {{Official website|https://cp.glico.com/pucchin/|プッチンプリン}} - 江崎グリコ
* {{YouTube|ABH1Vft36aY|THE MAKING(329)プリンができるまで}}([[科学技術振興機構|SCIENCE CHANNEL]])


{{Good article}}
{{デフォルトソート:ふつちんふりん}}
{{DEFAULTSORT:ふつちんふりん}}
[[Category:江崎グリコ]]
[[Category:江崎グリコの製品]]
[[Category:カスタードプディング]]
[[Category:登録商標]]
[[Category:登録商標]]
[[Category:日本のギネス世界記録]]
[[Category:日本のギネス世界記録]]

2024年11月20日 (水) 13:50時点における最新版

プッチンプリン
皿に移したプッチンプリン
種類 食品
発売開始年 1972年
会社名 グリコ協同乳業-グリコ乳業-江崎グリコ
生産状況 生産中
販売元 江崎グリコ
ウェブサイト cp.glico.com/pucchin/
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プッチンプリン: Putchin Pudding[1])は、江崎グリコが製造・販売するチルドカップのプリンである[2]1972年昭和47年)にグリコ協同乳業(のちグリコ乳業)から発売された『グリコプリン』を前身とする[3]1974年(昭和49年)にリニューアルとともに『プッチンプリン』の商品名に変更し、テレビCMの効果もあって大ヒットした[4][5][6]

容器の底にある「プッチン棒」と呼ばれる[7][8][9]ツマミを折ることでプリンが皿の上に滑り落ちる仕組みが最大の特徴であり[10][11]、その楽しさが魅力となっている[2][7][10][12]。発売50年を超えるロングセラー商品であり[13]2022年令和4年)現在もトップシェアを誇る[2]日本のプリンを代表するブランドである[8][14]

なお、2015年平成27年)10月1日にグリコ乳業は江崎グリコと合併し、江崎グリコが存続会社となったため、以降は江崎グリコから製造・販売されている[15]。『カフェオーレ』[注釈 1]『朝食ヨーグルト』[注釈 2]『ドロリッチ』[注釈 3]とともに、旧グリコ乳業の主要ブランドの一つであった[10]

特徴

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底のツマミを折って中身を皿に出すことができることが最大の特徴である[10][19]。これによって喫茶店などで提供されているプリンと同様カラメルソースが上になり[2][20]、ひと口目からプリンとカラメルを同時に食べることができる[4][14]。同業他社の商品にはない[10]プリンがプルルンと皿に滑り落ちる楽しさが子どもたちの人気を集め[2][14]、一躍トップブランドになった[10]。容器に充填する際は、液体のままのプリン液をまず注ぎ、そのあとカラメルを注ぐ[21][22]。カラメル液の比重が重いため下にたまる[21][22]練乳も加えられ、蒸さずに冷やして作られる[21][23][24]

味は、シュークリームを手本に再現したカスタードクリームコクと味わい[14]、練乳とバニラの風味が特徴とされる[10]。食感は、それまでの通常のプリンより柔らかく[20]プルルンとしたのど越しのよい食感となっている[14]。味の基本は1974年昭和49年)のリニューアル以来維持しているものの[7]、時代にあわせて甘さやコクなどを調整している[2][25]2022年令和4年)のリニューアルでは、以前から使用していなかった保存料人工甘味料に加えて、着色料も不使用としている[2]。『植物生まれのプッチンプリン』では、それらに加えて乳化剤カラメル色素も不使用とした[2]

ツマミを折ってプリンを容器から出す構造がネーミングにも反映されているものの、江崎グリコが2022年(令和4年)におこなったキャンペーン「プッチンプリン国民投票」では「プッチンする派」の43.5 %に対し「プッチンしない派」が56.5 %と上回った[26]2003年平成15年)にはグリコ乳業商品開発第1特別グループの阪本健二が「いまではお皿にあけて食べる人が10人に1人しかいない」と言われているとも述べている[25]。それでも、「わくわく」感を演出するためには必要と考え、コストがかかっても続けているという[25]。なお、グリコの研究員による官能検査で両方の食べ方の比較がなされており、ここでは「プッチンするのがおすすめ」と報告されている[27]

ラインナップは、ひと口サイズの『ちょこっとプッチンプリン』から380グラム (g) の『Happyプッチンプリン』など幅広く展開されている[20]2020年(令和2年)には、を使わない、植物由来の原料のみを使用した『植物生まれのプッチンプリン』を発売している[28]。これらのほかにも、2006年(平成18年)の『Happyプッチンプリン』の発売以降、グリコ乳業では、『プッチンプリン』の楽しさと驚きを提供するための「ブランド全体の活性化」施策として、定期的に話題性の高い商品を投入してきた[5]

なお、最終的には保安検査場の検査員の判断となるが、プリンは液体物とされているため100ミリリットルを超える『Bigプッチンプリン』は国際線航空機内には持ち込めない[29]

歴史

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背景

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プディングの発祥

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日本プリンと呼ばれることになるプディングの発祥については、一説では1588年英西戦争後に世界の海の覇権を握ったイギリス海軍の艦上であったと言われている[30]航海中の限られた食糧を無駄にしないために、余りもののパン屑や小麦粉肉片脂身ナッツ類などを、卵とともに味付けしてナプキンで包み蒸し焼きにしたのが始まりとされる[31][32]。16世紀後半から17世紀初頭に[33]、船員たちが家庭に持ち込んでイギリス中に広まったとするものである[31][34]

一方で、プディングの発祥は古代にまで遡れるともいわれる[35]。古くはホメロスの『オデュッセイア』に、胃袋を用いたプディングが登場する[35]。これはソーセージのようなもので[36]、当時は、解体された動物の肉や脂身などをパンやなどと混ぜ合わせ、その他のさまざまな食材ハーブ香辛料などとともに胃袋やに詰めたものが、茹でたり焼いたりして食された[35]。こうしたプディングは、血液を含むブラッドプディングや含まないホワイトプディングなどとして伝わっている[37]

いずれにしても、今日のプリンにつながる菓子としての甘いプディングは、イギリスにおいて隆盛した[38]ジョージ1世が好んだことで広まったとも言われている[38]。米、パン、プラムなどさまざまなフィリング(具材)を用いたプディングが考案され[39]ドライフルーツやナッツをふんだんに使いラム酒を加えるクリスマスプディングは、イギリスではクリスマスに欠かせないデザートとして今日まで受け継がれている[31][39]

イギリスからフランスに伝わったプディングは、菓子の本場でもデザートとして定着する[33]1828年にはアントナン・カレームが著書の中でプディングのレシピを紹介している[33]。そして、フィリングを徹底して排除した卵液のみで作るカスタードプディングが考案されたのも、この頃のフランスであったと考えられている[33]。これは後に味覚を補うためにカラメルソースをかけて供されるようになった[33][40]

日本伝来

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プディング日本に伝来した時期については、江戸時代初期とする説がある[33]平戸オランダ商館で食されていた可能性が指摘されているほか[40]元禄2年(1689年)に完成した唐人屋敷中国人経由で伝わったとも言われている[33]卓袱料理のうちの茶碗蒸しがそれであるという[33]。これには異論もあり、茶碗蒸しはプディングとは関係なく日本で独自に生まれた料理であるとする見解もある[41]西洋のプディングの影響があったか否かはともかく、卵のタンパク質の加熱凝固作用を利用した茶碗蒸しは[41]、プディングの一種と言える[42][43]。また、天明5年(1785年)に刊行された『万宝料理秘密箱』で「冷し卵羊羹」が紹介されているなど[33][44]、日本では江戸時代から卵を使ったプリン様の料理が食されていたことは確かである[44]

これらの説を措くと、一般的にはプディングが日本に伝来したのは江戸時代後期から明治初めと言われている[44][45]文久2年(1862年)に「クラブホテル」、翌文久3年(1863年)には「アングロサクソンホテル」というイギリス人経営のホテル[46]1860年代にはフランス人サムエル・ペール(サミュエル・ピエールか?[46])による洋菓子店が[33]、ともに横浜に開業しており、これらでプディングが提供されていた可能性は高い[33][46]。なお、サムエル・ペールの洋菓子店には、明治3年(1870年)に大膳職にあった村上光保が派遣されて西洋料理を学んでいるため[33]日本人として初めてプディングを作った可能性がある[47]

プディングが日本語文献に最初に現れるのは、明治5年(1872年)発行の『西洋料理通』においてである[33][45][47]。ここでは「ポッディング」と表記され、干柿生姜、米などを用いたメニューが紹介されている[44][47]。『西洋料理通』の後はしばらくプディングを取り上げた文献は現れず、1889年(明治22年)になって『和洋菓子製法独案内』で、パンとバターを使った「パンバタプリン」[47]、「ライスプリン」など複数のメニューが掲載されている[44]。これが、Puddingにプリンの読みをあてた初出とされる[44]

その後、プディングは急速に普及したようで、多くの文献に記述が見られるようになる[48]夏目漱石ロンドン留学時(1900年から1902年)の日記に「プッヂング」「プヂング」として[45]、「江戸甘味處つくし」に残る1901年(明治34年)のレシピに「西洋風茶碗蒸菓子」として[49]1903年(明治36年)のベストセラー[33]食道楽』に「プデン」として[48][49]、同じく1903年(明治36年)の『洋食のおけいこ』では「プッジング」として取り上げられている[48]。また、1908年(明治41年)発行の『海軍割烹術参考書』でもワッフルなどとともに掲載されている[49]

明治時代まではPuddingはさまざまに表記されていたが、しだいに呼びやすい「プリン」表記に収斂されていったと考えられている[48]。また、さまざまなプディングが紹介されていたが、大正以降は、『趣味と実用の西洋料理』で「ベイクドカスタード」、『欧米の菓子と料理』で「ボイルドカスタード」と「キャラメルカスタード」、『お菓子の作り方百卅種』では「カスター・プリン」としてカスタードプディングが紹介されるなど[49]、いつしか日本ではプリンと言えばカスタードプディングを指す語として広まっていった[33][50]

開発

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開発当時の状況

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1952年昭和27年)、砂糖統制が撤廃され日本の菓子業界は活性化したが[49]1950年代ごろまでプリンは外食デザートとして供されるか町のケーキ店での販売[51][52]、あるいは一部の家庭で楽しまれるにとどまっていた[49]

1960年代になると、一般家庭でも気軽にプリンが作れる即席プリン(「プリンの素」)が発売された[49]1960年(昭和35年)に明治製菓が発売した即席プリンは半年で発売中止となったが[53]1963年(昭和38年)にゼネラルフーヅが粉末プリンの『バニラ・プディー』を発売し[53]、翌1964年(昭和39年)にはハウス食品工業が、家庭でもプリンが手軽に作れる“プリンの素”である『プリンミクス』を発売[54][55]。この商品が家庭で食べるプリンの普及の契機となった[56]。同年には、ライオンからも『ママプリン』が発売されている[57]

この間、プリンを提供する洋菓子店や喫茶店も増え[58]1962年(昭和37年)にはモロゾフが持ち帰り用のプリンを発売[59]陶器製の容器からに移すことでカラメルが上になるプリンが家庭で楽しめるようになった[59]。ただし皿に移すことなく食べられているケースも多かった[60]1968年(昭和43年)には、それまで職人の手作業で作っていたプリンを、工場で生産するようになった[61]

そして、1971年(昭和46年)に日本初のチルドカップのプリンとして、森永乳業から『森永プリン』が発売された[53][62]。これらによって1970年代にプリンは、家庭で手軽に食べられるおやつとなり[49]、日本の国民食とも[31]ショートケーキシュークリームに並ぶ日本の洋菓子御三家とも呼ばれる地位を築きつつあった[48]

開発の経過

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グリコ協同乳業では1970年代に入り、プリンの素がよく売れていること、自社にはデザート商品としてのプリンがないことなどから、プリンの商品化を企画したが[63]、当時は小売デザート商品としてヨーグルトに力を入れていたこと、すでにプリンの商品が他社から出ていたことなどから、社長は開発に反対した[23]。同業他社が参入しているジャンルにわざわざ乗り込んでリスクを冒すより、主力商品のヨーグルトに専念した方が良いという判断であった[11]。それでも開発チームはあきらめず[11]、グリコらしい[20]他社にはないプリンを開発して経営陣を説得しようと開発を続けた[11]

喫茶店などで提供されるプリンは皿に乗せられて提供されており、消費者にも「プリンは皿にのせて食べるもの」という意識が定着していることが調査で明らかになっていた[5]。開発チームは、なじみのある形で食べてもらおうと、簡単に取り出せる容器の開発を模索した[5]。洋菓子店でゼリーを型から外す際にアイスピックで穴を開けているところを見たのがヒントになり[64]、底に穴を開ければ空気が入って皿に落ちることに気付いた[20]。しかし、家庭でアイスピックを使えというのは現実的ではなかった[11]。そんな折、底のツマミを折ると穴が開く仕組みの容器が倉庫で発見される[11]。過去に、海外に出張した社員が持ち帰っていたものだった[11]。さっそく、それを基に試作品を作ってみたものの、ツマミが折れても穴が開かないなど、なかなか思い通りの容器にならなかった[11]。試行錯誤を繰り返す中で、たまたま穴を開けるための底のくぼみとツマミの位置がずれた不良品が発生したが[12]、むしろずれていた方が、ツマミが簡単に折れ[65]、きれいに穴が開いた[12]

こうして、プラスチック製の容器の底のツマミを折ることにより空気を入れ、中身を容易に皿に落とせる形の容器が開発された[20][21][23]。社長が当初反対したことで先行の他社製品との違いを明確にすることができたのだった[66]。経営陣からも商品化が認められ[12]、グリコ協同乳業では1億円以上をかけて充填機を新たに購入[25]1972年昭和47年)7月に『グリコプリン』として発売された[7][9]。価格は、100 g入りで50円であった[67]

発売後

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改名とリニューアル

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『グリコプリン』はそこそこの売り上げをあげたものの、ヒットというほどでもなかった[5]。そこでグリコ協同乳業は、オイルショックの最中ではあったが、品質を向上させる方向でのリニューアルに踏み切った[4]

まず改善したのは味であった[6]シュークリームカスタードクリームの味を手本に[2][25]、よりミルキーでコクがあり[6]、飽きのこない味を目指して改良された[5]。併せて、商品名も、最大の特徴である「プッチンと折ってプルンと出す」[25]楽しさを直接伝える[12]プッチンプリン』に変更して、1974年昭和49年)から販売した[3]

リニューアルと同時にテレビCMを大々的に展開した[12]。これによって『プッチンプリン』人気に火がつき[5]ネーミングの妙もあって売り上げは爆発的に増加[25]。一躍大ヒット商品となった[4][6][8][12]

ライバルへの対抗

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しかし、1980年代になって小売業の主流がスーパーマーケット、次いでコンビニエンスストアに移ると[12]個人商店などのグリコ特約店を中心に販売されていた[7]『プッチンプリン』の売り上げは次第に低下していくようになる[12]。これに対応するため、1990年平成2年)にスーパーマーケットでの主婦や子ども向けの商品として[12]3個入りパックを発売[7][21]。当時のレギュラーサイズが110 g入りであったのに対して[25]、小ぶりな70 g入りとした[67]1993年(平成5年)には、コンビニエンスストアでの若い男性向けとして[7][24]、レギュラーサイズの約1.6倍となる176 g入り[4][25]Bigプッチンプリン』を投入した[4][6]。これらは人気を集めて『プッチンプリン』の販売の中心を担うようになり[7][12]、ついには従来のレギュラーサイズに代わって『Bigプッチンプリン』が『プッチンプリン』のスタンダードとなるにいたった[4]。これらによって『プッチンプリン』は一時の不振を脱した[12]

2000年代に入ると、焼きプリンなめらかプリンなどが台頭し、従来のプリンは苦戦を強いられた[7]。また、2007年(平成19年)以降は、プリン市場全体が縮小に転じた[10]。コンビニエンスストアやスーパーマーケットがプライベートブランドで手作りスイーツの販売を拡大したことの影響とされている[10]。これらを打破するため、グリコ乳業では2000年代から2010年代初頭にかけて[4]、話題性のある商品を次々と投入していく[7]

2006年(平成18年)、約3.8倍サイズの『Happyプッチンプリン』の販売を開始[7]大量生産が難しいことを逆手にとって、各店舗では1週間程度の販売とし、販売する店舗を短期間で次々と変えた[7]。販売店舗は従業員にも知らされないという[20]。いつどこで買えるのか分からないこの販売手法は[4][12]、「ゲリラ販売」と呼ばれてインターネットを中心に話題となった[7]2008年(平成20年)には、『Happyプッチンプリン』に底のツマミを4つ付け、そのうち一つだけが本物という『Happyプッチン運だめし』を発売したが[28]、これは店頭で折られるいたずら被害が続出したことで販売中止となった[11]

2009年(平成21年)には、レギュラーサイズの約10倍[4]、約1 kgのプリンが作れる専用キット『手づくりプッチンプリン』を開発[7][68]。底にツマミのついたプラスチック容器と、プリンの素・カラメルシロップ各2個のセットで、繰り返し使えるよう別売りの詰め替えセットも販売された[68]東急ハンズロフトなどの雑貨店の店頭に並ぶと、驚きをもって迎えられた[4]

2010年(平成22年)[注釈 4]、初めての別フレーバーを期間限定で発売[4]。カラメルソースをイチゴ味に変更したもので[7]、大ヒットとなった[6]

40周年

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発売40周年となった2012年平成24年)、「プッチンプリンは、とんでもないことをやるブランドだという驚きを与えたい」と[69]、「プッチンHAPPY!」をテーマに[10]「ネタの波状攻撃」を掲げて[69]さまざまな企画を次々と展開した[10]。40周年企画商品として発売された『Specialプッチンプリン』は[70]、子どもには『プッチンプリン』を買い与えても自分用には焼きプリンやなめらかプリンを購入する傾向にある世代に向けて『プッチンプリン』初のなめらか系プリンとして開発され、消費者の嗜好の変化に合わせた、とろけるような食感と濃厚なカスタードの味わいが特徴であった[9]。3月には通常の『プッチンプリン』とどちらがいいかの「プッチンどっち派キャンペーン」を展開した[9]

同年の企画で最も注目を集めたのは[7]、6月から8月までの期間限定で148円で発売された『男のプッチンプリンおつまみ冷奴風』であった[71]出汁を利かせた豆乳プリン生姜風味のしょうゆソースという、まさに冷奴そのものの[9][11]甘くないプリンであり[4][7]SNS口コミによる情報拡散を狙った商品であった[71]。開発時には社内でも賛否があり[9]販売店からは「どの売り場に置けばいいのか分からない」との声もあったが[11]、多くのマスメディアに採り上げられ[7]、癖になる味と[28]人気となった[4]

また、一般的にはオリジナルグッズを景品とするキャンペーンが減少している中で、同年「プッチンスライダープレート」が当たるプレゼントキャンペーンを実施[70]。直径約264ミリメートル・高さ102ミリメートルで、一番高い所で「プッチン」するとプリンが滑り降りプルルン感をより楽しめるというもので、何度も試作して角度などを調整したという[70]グリコ乳業マーケティング部の和田健史は、「応募率を高めることを目標にするのであれば、現金を景品にしたほうが良いのかもしれません。しかし、それではほかの商品との差異化は図れない。商品開発にも通じますが、プッチンプリンのプレゼントキャンペーンではいつの時代も驚きを提供していきたいと思っています」と語っている[70]

こうした2012年(平成24年)の数々の企画については、「メーカーが一つのブランドで、ここまで立て続けにイベントを展開することは珍しい」と評された[69]

さらなるニーズへの対応

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『プッチンプリン』3種(上から時計回りに『ちょこっとプッチンプリン』、3個パック、『Bigプッチンプリン』)

2014年平成26年)には、『プッチンプリン』を弁当などとともに外で食べたいというニーズに応えて[6]常温で約6か月保存可能な一口サイズのプリン『ひとくちプッチンプリン』を発売開始[3]。6個入りで[72]カップの底をつまむだけで食べられる容器とした[6]。商品名は2018年(平成30年)に『ちょこっとプッチンプリン』に変更された[3]

同2014年(平成26年)にソースを増量し滝のように流れる『プッチンプリン ナイアガラソース』、翌2015年(平成27年)にはブラックココア味で真っ黒な『真っ黒プッチンプリン』、2021年令和3年)にはミルクコーヒー味の『Bigプッチンプリン たっぷりミルクのミルクコーヒー』を販売している[28]

2020年令和2年)には、3年の開発期間を経て、動物性原料を使用しない『植物生まれのプッチンプリン』を発売した[3]。開発のきっかけは、「皆がおいしい時間を楽しめるように」という思いだったという[13]。例えば給食などでプリンが出ても、周りの人がおいしそうに食べる姿を見ることしかできなかった卵や乳にアレルギーを持つ子どもたちに、どうすればプリンのおいしさや食べる楽しさを知ってもらえるかを考えて開発されたものであった[13]豆乳アーモンドペーストを使用し[4][6][73]、従来の『プッチンプリン』と変わらない食感と味わいを再現[72]サトウキビの風味を生かした[72]きび砂糖で優しい甘さとなっている[4]。3個パックが1個65 g入り、『植物生まれのBigプッチンプリン』は155 g入りで[72]、パッケージには植物由来を示すをデザインした[13]

『植物生まれのプッチンプリン』の発売によって、これまでプリン市場のターゲットとなりえなかった[13]卵や牛乳アレルギーの子どもが友達と「プッチン」を体験ができるようになり[4]江崎グリコには、卵アレルギーの子どもを持つ親から「子どもにプリンを食べるという機会を与えてくれてありがとう」という感謝の声が寄せられた[74]。開発に携わった同社のブランド担当の篠歌寿子は、せっかく新しい分野を開拓してもすぐに他社が追随してコモディティ化が進むのではないかとの指摘に対して、「私たちは“皆がおいしい時間を楽しめる”ことを目標に掲げています。当社のプッチンプリンブランドだけでなく、他のブランドでも多くの人がおいしい時間を楽しめるようになるのであれば、むしろコモディティを促進するきっかけになりたい」と答えている[74]

『植物生まれのプッチンプリン』は、アレルギーを持つ子どもだけでなく、環境問題健康に対する意識の高い女性からも歓迎されている[4]。江崎グリコ乳業・洋生菓子マーケティング部でブランドマネージャーを務め、2000年代から『プッチンプリン』のブランディングを担ってきた有馬卓は、「今後も食に対する価値観が変化し続けるのは必至。100周年を迎える頃には、植物生まれのプッチンプリンがブランドの柱の一つとして存在感を示すことになるでしょう」と同製品の可能性を展望している[4]

なお、原材料価格の高騰などにより、2015年(平成27年)4月に価格を維持したまま容量を減らした実質値上げ[75]2019年(平成31年)4月には約4 %の値上げを実施した[76]。これによって、メーカー希望小売価格は、3個入りパックが190円から200円、『Bigプッチンプリン』が130円から140円となった[75]2022年(令和4年)9月にも再度の値上げを行っている[77][78]。ただし、実勢価格では『Bigプッチンプリン』は2020年(令和2年)現在110円程度である[58]

50周年

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2022年令和4年)、発売50周年を迎え、5年をかけて開発したという花びらの形をした特別容器入りのものが3月に数量限定で販売された[79]。これが50周年に際して発売された唯一の特別な『プッチンプリン』であり、40周年の時と異なり、大々的にさまざまな企画を打つことはなかった[4]。これは、一過性の話題を狙うよりプリンそのものの「真面目な進化」によって本来のターゲットである子どもと母親に注力しようという姿勢の表れであると同時に、競合するコンビニスイーツに対して、発売時の開発者の思いであったという「牛乳という完全栄養食を、子供たちが自然と欲しがる形で提供したい」という原点に立ち返り、「素材のおいしさと栄養分を生かす」ことで対抗したいという考え方からであった[79]。実際、この年の4月に『プッチンプリン』と『植物生まれのプッチンプリン』をともにリニューアルし、従来から使っていなかった保存料人工甘味料に加えて着色料も不使用としている[4]。『植物生まれのプッチンプリン』については、乳化剤カラメル色素なども不使用とし、コクを増す改良も加えた[79]

『プッチンプリン』のブランド戦略について、ブランドマネージャーの有馬は、「今後10年、20年とトップブランドの座を守るためには、『最初に食べたプリン』はプッチンプリンだったという人を、できるだけ増やしたい。その人が大人になったとき、“プッチン”した楽しさを幸福な記憶として思い出すことが、次の世代への橋渡しとなるからです」と語っている[79]

年表

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  • 1972年昭和47年) - 『グリコプリン』発売[3][9]、100 g入りで50円[67]
  • 1974年(昭和49年) - 味やパッケージをリニューアルし、『プッチンプリン』に商品名を変更[3]
  • 1990年平成2年) - 70 gの[67]3個入りパック発売開始[21][28]
  • 1993年(平成5年) - 176 g入り[4][25]の『Bigプッチンプリン』発売開始[28][67]
  • 2006年(平成18年) - 400 g入りの『Happyプッチンプリン』発売開始[9][80]
  • 2014年(平成26年) - 『ひとくちプッチンプリン』発売開始[28][3]
  • 2015年(平成27年) - グリコ乳業を江崎グリコが吸収合併したため、江崎グリコからの販売となる[81]
  • 2016年(平成28年) - 『ひとくちプッチンプリン』の商品名を『ちょこっとプッチンプリン』に変更[3]
  • 2020年令和2年) - 『植物生まれのプッチンプリン』発売開始[3][82]
  • 2022年(令和4年) - 発売50周年[28][83]
  • 2024年(令和6年) - 4月に社内の情報システムに不具合が発生。プッチンプリンを含む冷蔵製品が1か月以上にわたり出荷不能になっている[84][85]

容器・包装

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蓋は、中央の赤・黄・緑のラインで上下に分け、上が白、下がオレンジというデザインになっており、これは発売当初から変更されていない[86]。ただ、2014年平成26年)に、プリンの写真が前面に出る形に改められている[80]。また、『グリコプリン』の時代でも「プッチンしてね」と記されていたように[5]商品名の一部であるとともに特徴をもあらわす「プッチン」のロゴがデザインのポイントになっている[67]。ロゴデザインは時代にあわせて何度か変更されているものの、基本的なイメージは変わっていない[86]

容器のプラスチックは、商品の品質の良さがアピールできるよう中身の見える透明の容器が採用されている[86]。発売当初の側面は無地であったが[86]2004年平成16年)以降[80]コンビニエンスストアなど商品の側面しか見えない陳列棚が増えたため、『プッチンプリン』であることが分かる図柄を入れるようになった[86]。3個入りパックで商品全体を包むシュリンクも、2007年(平成19年)以降、全面印刷となっている[80]

容器の形状は、発売当初からの独特の花形を引き継いでいる[67]。これは、おいしさや楽しさを表現しているだけでなく[67]、構造的な強度を高めるとともに、中身を回りにくくするという機能がある[25]。なお、プッチンプリンの容器と同様の底のツマミを折ることで中身を出すことができるタイプのプリン容器は、製菓材料店や100円ショップでも販売されている[68]

栄養素

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内容量 エネルギー タンパク質 脂質 炭水化物 食塩相当量
プッチンプリン(3個パック) 67 g×3 89 kcal 1.1 g 4.0 g 12.1 g 0.13 g
Bigプッチンプリン 160 g 212 kcal 2.8 g 9.8 g 28.1 g 0.31 g
ちょこっとプッチンプリン 20 g×6 29 kcal 0.49 g 1.1 g 4.4 g 0.027 g
ちょこっとプッチンプリン ミルクショコラ 20 g×6 29 kcal 0.45 g 0.95 g 4.7 g 0.024 g
植物生まれのBigプッチンプリン 155 g 203 kcal 1.2 g 8.5 g 30.5 g 0.17 g
植物生まれのプッチンプリン 3個パック 65 g×3 86 kcal 0.51 g 3.5 g 13.0 g 0.071 g

『プッチンプリン』の公式WEBサイトによれば、製品1個あたりの内容量・栄養成分は上表のとおりである。ただし、実教出版編修部著『カラーグラフ食品成分表2022』では、『Bigプッチンプリン』1個あたりエネルギーは225キロカロリーたんぱく質2.8グラム、脂質11.4グラム、炭水化物27.9グラム、食塩相当量は0.3グラムとしている[87]

大阪大学講師医学博士の藤原邦達は、2003年平成15年)に『ニューライフ』誌での対談において、「この分量から3グラムのたんぱく質が摂取できるということは、筋肉脳細胞血管を作るために絶対に必要な栄養素ですから、おやつとしていいサプリメント効果を発揮しています」「成長期の子どもにとっては、脂肪分や炭水化物のカロリー補給も必要です」などとして、「栄養的にも非常に優れた食品」と評価している[25]。この対談の中でグリコ乳業商品開発第1特別グループ阪本健二は、子どもだけでなく、「高カロリーといわれていますが、サラリーマン朝食代わりやOLさんが昼食をこれだけで済ませたり、即効性の糖質に加えて、たんぱく質は持続性がありますので、肉体労働者の方にも好評です」と応じている[25]

評価

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『プッチンプリン』の味は、「牛乳の風味を生かした味わい」[88]お菓子のような昔懐かしい甘さ」などと評される[58]。発売当時はプリンといえば蒸して作られるものであったが、その中に登場した『プッチンプリン』は、蒸さずにツルンとした食感のプリンであった[14]洋菓子研究家の吉田菊次郎は、『プッチンプリン』のこの食感を「画期的だった」と評している[14]

また、『プッチンプリン』は、ツマミを折って皿に出すことができるという、これも画期的な容器で登場した[12]。おいしさに加えて、この楽しさが多くの人に愛され続けている理由の一つになっている[5]江崎グリコ2000年代から『プッチンプリン』のブランディングを担っている有馬卓も、「おいしさと楽しさ」こそが「プッチンプリンの本質」と自任している[2]

プリン市場が縮小する中でも、『プッチンプリン』の販売実績は常に1位か2位を保持しており[89]2022年令和4年)時点で売り上げ・シェアともに首位の座にある[2]2016年(平成28年)時点でも多い日には日産15万を製造していたが[22]2021年(令和3年)度の販売は、前年比約10 %増となり、ここ10年で最高であったという[2]。発売開始から40年が経過した2012年(平成24年)までに、累計販売数は51億個を超え[8][19]、翌2013年(平成25年)1月に、最も売れたプリンのブランドとしてギネス世界記録に認定された[90][注釈 5]。発売から50年が経過した『プッチンプリン』は、日本において誰もが知っており[58]、プリンと聞いて真っ先に思い浮かべるものの一つとなっている[14]

『プリン本』による、スーパーで売られているプリンの食べ比べチャートでは、対象となった9商品のうち、硬さは平均的であり、甘さは最も控えめであった[91]

gooランキング編集部は「自宅・自分用プリンのおすすめ」の1位に『Bigプッチンプリン』を選び、濃厚なカラメルソースとプルプルのプリンが口のなかでしっかりと味わえると評価した[92]

活用・その他

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アレンジレシピ

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3個入りプッチンプリンをそのまま使い、クリームチーズホットケーキミックスでつくる「プリンチーズケーキ」は、カラメルをあらかじめ別にしておき最後に塗る[93]。またキャンプ料理として、食パン2枚で挟んだプッチンプリンを網の上で焼く「パン・プッチンプリン・パン」[94]料理研究家リュウジによる「スーパー・プッチンプリン・シェイク」などがある[95]。製品のパッケージ公式サイトでも、2012年平成24年)5月から、パティシエ辻口博啓とのコラボレーションによるアレンジメニューを掲載している[9]

ネーミングのオノマトペ

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「プッチン」は、プリンを皿に容易に移すための動作音のオノマトペである。商品名としてオノマトペの例示にたびたび使われており[96][97]、商品特性を生かしたネーミングになっている[98]。また2016年におこなわれた「プッチンする派なのか、しない派なのか」を問う「第1回 プッチン国民投票」などもあり、「プッチンする」などの動詞化の実例もある[24][99]

教育現場

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2022年、プッチンプリンの空き容器を使って文房具を作るイベントが千葉県流山市の小学校で行われた。児童や家族が容器を集め江崎グリコが定規などに加工して児童に提供した[100][101]

医療

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リハビリテーションに関する論文で、嚥下調整食として用いられる[102]。また重症筋無力症による嚥下困難においては、普通のプリンは飲み込みにくいとされているが、プッチンプリンは飲み込みやすいとされている[103]

特許と商標

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1976年に容器は特許出願され、1978年に公開されている[104]商標は2023年4月現在、グリコ乳業及び江崎グリコとして「プッチン」で50の登録があり、「プッチンプリン」では15の登録がある[105][注釈 6]

また、蓋の裏は特殊な加工がされており、プリンがくっつかないようになっている。この蓋の加工技術も凸版印刷によって特許が取得されており、発明品開発の際にはプッチンプリンが使用されている[106]

CM

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1974年昭和49年)のリニューアルにあたって、グリコでは「プッチンしちゃお」という『プッチンプリン』のテレビCM[28]短期間に集中的に展開した[12][107]。当時としてはデザート商品や[7]乳製品CMは珍しかったが[4]、プッチンする楽しさを伝えるためには、やはりポスターなどよりテレビCMが適しているとの判断からであった[7][12]。グリコでは、「皿の上に乗せる際に感じる”プルルン”というシズル感と、プッチンアクションの楽しさを音楽で表現」することを狙ったという[70]。テレビCMの効果が高かった時代でもあり[70]、このCMの効果もあって『プッチンプリン』の売り上げは大きく拡大した[5][6]

以降、『プッチンプリン』の広告手段としては、テレビCMが主に採用されている[5]。CMキャラクターはそのときどきによって変更しており、1996年平成8年)にはスキャットマン・ジョンが「プッチンパポペ エブリバディプリンプリン」と歌うCMを放映し[70]2012年(平成24年)には「今っぽい楽しさ」のイメージを発信しようときゃりーぱみゅぱみゅを起用したが[9]、楽しさとシズル感を音楽で訴求するスタイルはあえて変えていない[70]。これは、グリコによれば、「子どものころにテレビCMを見てプッチンプリンを食べていた世代に対して、同じアプローチをすることで商品を再想起させて販売につなげるため」の戦略である[70]

コラボ商品

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『プッチンプリン』の持つブランド力は、異業種の企業にとっても魅力的であり、コラボレーション企画の声を掛けられることも多い[71]

2011年平成23年)11月に[118]宝島社とのコラボレーションで、『プッチンプリン』の歴史を記したムック本と『手づくりプッチンプリン』のセットを書店で販売した[119]。価格は2,200円であったが、予想を上回る販売数を記録したという[69]2012年(平成24年)5月に神戸屋で販売された『プッチンプリン蒸しパン』も、売り上げは非常に好調だったとされている[69]

同年7月からは、タカラトミーアーツが『おかしなプッチンプリン プッチンアイス』を販売した[69]。「プッチンバー」と呼ぶ棒を『プッチンプリン』に刺して冷凍庫で凍らせると、容器から引き抜いて食べられるという商品である[69]。ズボッと引き抜く感覚の楽しさと、凍った『プッチンプリン』のモチモチ感が味わえる[69]。価格は997円で、プリン色とイチゴ色の2色がある[69]。コラボレーションにあわせて『プッチンプリン』は凍らせても美味しいというメッセージを売り場で発信したところ、通常は売り上げの落ちる夏場に大きく売り上げが向上したという[69]

2020年令和元年)には、マクドナルドから「マックシェイク “プッチン”できないけど プッチンプリン」が期間限定で発売された[120]

脚注

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注釈

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  1. ^ 1979年発売[16]
  2. ^ 1997年発売[17]
  3. ^ 2007年発売開始。2019年生産終了[18]
  4. ^ 宣伝会議編集部著「ロングセラーブランドのコミュニケーション戦略 file.39」では2009年(平成21年)としている。
  5. ^ 田久晶子著「プッチンプリンとドロリッチができたっ!!」および2013年(平成25年)1月12日付『朝日新聞』では認定は2012年(平成24年)10月としており、ギネス世界記録公式WEBサイトでは2013年(平成25年)1月21日に行われたのは授与式としている。
  6. ^ 2023年4月12日時点での特許情報プラットフォームでの検索結果による。

出典

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  • 昭文社編集部 編『プリン本 大阪・京都・神戸』昭文社、2020年8月1日。ISBN 978-4-398-14412-6 
  • 新聞ダイジェスト社(編)「プッチンプリン、販売世界一 ギネスが認定」『月刊新聞ダイジェスト』第47巻第3号、新聞ダイジェスト社、2013年2月15日、国立国会図書館書誌ID:000000006853 
  • 宣伝会議編集部(編)「ロングセラーブランドのコミュニケーション戦略 file.39 1972~グリコ乳業「プッチンプリン」 誰もが笑顔になるような「楽しさ」と「驚き」を伝え続ける」『宣伝会議』第844号、宣伝会議、2012年9月1日、211-213頁、国立国会図書館書誌ID:023909814 
  • 宣伝会議編集部(編)「「プッチンプリン」から“植物生まれ”が登場 食べられなかった消費者へ向け新市場をつくる」『宣伝会議』第960号、宣伝会議、2021年9月1日、国立国会図書館書誌ID:031687454 
  • 田中理恵「新発売 植物生まれのプッチンプリンで家族のハッピータイム」『レタスクラブ』第904号、KADOKAWA、2020年3月25日、国立国会図書館書誌ID:000000059730 
  • 田久晶子「プッチンプリンとドロリッチができたっ!!」『サンキュ!』第17巻第12号、ベネッセコーポレーション、2013年3月2日、国立国会図書館書誌ID:000007849235 
  • チャーリィ古庄『ちょっと自慢できるヒコーキの雑学100』インプレス、2019年7月11日。ISBN 978-4-295-00656-5 
  • 角山祥道「愛しの『プリン』」『サライ』第33巻第10号、小学館、2021年9月10日。 
  • 日経デザイン 編『ロングセラーパッケージ大全』日経BP、2016年6月21日。ISBN 978-4-8222-3514-7 
  • ニューライフ編集部(編)「デザートプリンの定番 ロングセラーを誇るプッチンプリン」『ニューライフ』第50巻第7号、ニューライフ、2003年2月20日。 
  • Value creator編集部(編)「このブランド戦略が凄い!! プッチンプリン40周年 新商品、キャンペーン、異業種コラボレーション… グリコ乳業の『ネタの波状攻撃』に、今年は目が離せない!」『Value creator』第325号、Value creator社、2012年6月25日、88-91頁、国立国会図書館書誌ID:023865862 
  • 藤井龍二「商品に歴史あり 341 『プッチンプリン』」『THE21』第39巻第5号、PHP研究所、2022年4月6日。 
  • 吉田菊次郎『洋菓子はじめて物語』平凡社平凡社新書 121〉、2001年12月19日。ISBN 4-582-85121-5 

外部リンク

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