真言宗御室派
真言宗御室派(しんごんしゅうおむろは)は、日本における真言系仏教宗派のひとつで、古義真言宗に属する。総本山は仁和寺。
開祖
[編集]寺格(順不同)
[編集]- 総本山 仁和寺(京都府京都市右京区)
- 大本山 金剛寺(大阪府河内長野市)・大聖院(広島県廿日市市)
- 準大本山 屋島寺(香川県高松市)
- 別格本山 龍寶寺(宮城県仙台市青葉区)、蓮華寺、尊寿院(京都府京都市右京区)、久米寺(奈良県橿原市)、神呪寺(兵庫県西宮市)、本福寺(兵庫県淡路市)、福王寺(広島県広島市)、蓮台寺(岡山県倉敷市)、観龍寺(岡山県倉敷市)、遍照院(岡山県倉敷市)、箸蔵寺(徳島県三好市)、讃岐国分寺(香川県高松市)、聖通寺(香川県宇多津町)、白峯寺(香川県坂出市)、不動護国寺(香川県三豊市)、出石寺(愛媛県大洲市)、海南寺(愛媛県今治市)、鎮国寺(福岡県宗像市)、持宝院(岡山県倉敷市)
- 準別格本山 延命寺(愛媛県四国中央市)、大瀧寺(徳島県美馬市)、三津寺(大阪市中央区)、遍照寺(京都府京都市右京区)
- その他の寺院 明通寺(福井県小浜市)、慈眼院(大阪府泉佐野市)、 初馬寺(三重県津市)、林昌寺(大阪府泉南市)、葛井寺(大阪府藤井寺市)、道明寺(大阪府藤井寺市)、雲辺寺(徳島県三好市)、出釈迦寺(香川県善通寺市)
沿革
[編集]真言宗御室派の歴史は仁和寺の開創に始まる。真言宗の事相の流派「広沢流」の本拠として発展し、仁和寺門跡に2世性信入道親王(大御室)が就任されて以降、江戸時代末期まで門跡には法親王(皇族)を迎えた。1167年(仁安2年)5世覚性入道親王(紫金台寺御室)が綱所の印璽を下賜され、日本総法務に任ぜられると諸宗格山を支配し、日本仏教界に君臨した。塔頭寺院・子院が60余を数えた時期もあった。なお紋所は、桜に引両である。
中世に入ると、応仁の乱の戦火で、仁和寺が全焼したことが原因で衰退した。戦国期以降は足利氏・織田氏・豊臣氏が復興に努めたが、本格的な再興には至らなかった。
江戸時代に入り、江戸幕府による資金援助があり、現在地に堂塔の再建がなり、再興を果たした。
明治政府の宗教政策により、他の真言宗宗派と1879年(明治12年)に合同する。勅命により、30世純仁法親王(楞厳定院御室)が還俗し改称した小松宮彰仁親王が、1883年(明治16年)に仁和会を組織し、仁和寺の復興に尽力。31世以降は門跡に皇族を迎えることは無くなった。
1900年(明治33年)9月、仁和寺を本山とする真言宗御室派として独立する。
1926年(大正15年)には(真言宗高野派(総本山金剛峯寺)・真言宗大覚寺派(大本山大覚寺))と合同して金剛峯寺を総本山とする古義真言宗を組織する。
1941年(昭和16年)3月、古義真言宗・新義真言宗系の宗派が政府の政策によって合同し、大真言宗が成立する。が、戦後独立し、1946年(昭和21年)、再び真言宗御室派として発足した。
仁和寺門跡歴代
[編集]- 宇多天皇(光孝天皇第7皇子):空理・金剛覚
- 大御室(三条天皇第4皇子):性信入道親王
- 中御室(白河天皇第3皇子):覚行法親王(覚念)
- 高野御室(白河天皇第4皇子):覚法法親王(真行)
- 紫金台寺(しこんだいじ)御室(鳥羽天皇第5皇子):覚性入道親王(信法)
- 喜多院御室(後白河天皇第2皇子):守覚法親王(守法)
- 後高野御室(後白河天皇第8皇子):道法法親王(尊性)
- 光台院御室(後鳥羽天皇第2皇子):道助入道親王
- 金剛定院御室(後高倉院第2皇子):道深法親王
- 開田准后(藤原道家第5子):法助准后
- 後中御室(後嵯峨天皇第6皇子):性助法親王
- 高雄御室(後深草天皇第4皇子):性仁法親王
- 尊勝院御室(後深草天皇第6皇子):深性法親王
- 常瑜伽院御室(伏見天皇第3皇子):寛性法親王
- 禅河院御室(後伏見天皇第3皇子):法守法親王
- 後常瑜伽院御室(後光厳天皇第5皇子):永助法親王(空助)
- 法金剛院御室(後小松天皇猶子):承道法親王
- 後光台院御室(後花園天皇猶子):法深法親王(弘覚・静覚)
- 後禅河院御室(後柏原天皇第2皇子):覚道法親王
- 厳島御室(伏見宮貞敦親王第4子):任助法親王
- 後南御室(後陽成天皇第1皇子):覚深法親王
- 後大御室(後水尾天皇第3皇子):承法法親王(性承)
- 後金剛定院御室(霊元天皇第2皇子):覚観法親王(覚恕・覚隆)
- 後光明寿院御室(京極宮文仁親王第2子):守恕法親王
- 宝荘厳院御室(中御門天皇第4皇子):慈仁法親王
- 三摩耶心院御室(中御門天皇第6皇子):遵仁法親王
- 金剛心院御室(有栖川宮職仁親王第3子):覚仁法親王
- 後喜多院御室(閑院宮典仁親王第2子):深仁法親王
- 不壊身院御室(有栖川宮職仁親王第11子):済仁法親王
- 楞厳定院御室(伏見宮邦家親王第5子):純仁法親王(勅命により復飾、還俗して小松宮彰仁親王と改称する)
- 冷泉照道
- 冷泉玄誉
- 別處栄厳
- 釈雲照
- 泉智等
- 土宜法龍
- 浦上隆応
- 石堂恵猛
- 岡本慈航
- 花桝智勝
- 森諦圓
- 小田慈舟
- 立部瑞祐
- 小林隆仁
- 松村祐澄
- 吉田裕信
- 堀智範
- 佐藤令宜
- 南揚道
- 立部祐道
- 瀬川大秀
宗務組織
[編集]- 管長(仁和寺門跡が就任。宗派の代表役員。任期あり。選挙制)
- 最高顧問・顧問会(管長の諮問機関・非公開)
- 宗務庁
- 宗務総長(仁和寺執行長が就任。責任役員・任期4年)
- 執行(執行長を置く)
- 責任役員会(5名)
- 総務部
- 教学部
- 財務部
- 宗会(公選議員14名・特選議員3名(計17名)で構成。任期4年。)
- 地方教区に宗務支所(三重・京都・奈良・和歌山・大阪・兵庫・備前・美作・広島・山口・香川・愛媛・徳島・福岡・肥前)の17ヶ所。宗務支所が設置されていない所は直轄とする。
関連組織
[編集]- 仁和会
- 仁和寺護持財団
僧階・僧籍
[編集]- 僧階(全15級)
- 1級 大僧正
- 2級 権大僧正
- 3級 中僧正
- 4級 権中僧正
- 5級 少僧正
- 6級 権小僧正
- 7級 大僧都
- 8級 権大僧都
- 9級 中僧都
- 10級 権中僧都
- 11級 少僧都
- 12級 権少僧都
- 13級 大律師
- 14級 律師
- 15級 権律師
- 権大僧都(真言宗各派経営の大学卒業者と細則の該当者)その他の僧階は細則による。
- 真言宗他派から御室派へ転入する僧侶・教師の僧階は、旧所属宗派の僧階をそのまま継承できない。御室派の管長より、僧階の補任を受け、礼録を納めなければならない。
- 教階(主教・弘教・示教・司教・補教)
- 住職(得度と度牒を受け、四度加行の後、伝法灌頂に入壇。練行を行った者)
- 名誉住職
- 教師(僧侶で教師の補任された者。教師に補任されることが、住職の就任条件でもある)
- 名誉住職または教師が教師義納金の納付を5年以上未納した場合は僧籍を削除する。
- 布教師教階(輔教・司教・示教・弘教・主教) また、(教師の研鑽と補任のために)教学審議会を開催する。
年中行事
[編集]- 1月1日: 修正会
- 1月6日: 御室流華道生初式
- 1月7日: 初祈祷
- 1月上旬: 御修法遥拝
- 1月21日: 献米供
- 2月3日: 大般若転読法要(節分会)
- 2月15日: 常楽会
- 2月下旬: 土砂加持法要
- 3月21日: 正御影供・彼岸会
- 4月1日~: 霊宝館・春季名宝展開催(50日間)
- 4月8日: 仏生会
- 桜開花期~: さくら祭り
- 4月18日: 観音大祭
- 5月中旬: 御室流華道全国挿華大会
- 5月下旬: 大般若転読法要
- 6月15日: 宗祖弘法大師降誕会
- 9月8日: 開山忌
- 9月21日: 彼岸会
- 10月1日~: 霊宝館秋季名宝展開催(50日間)
毎月行事
[編集]臨時法会
[編集]教育機関
[編集]施設
[編集]- 霊宝館(仁和寺内に設置・期間限定で有料一般公開される)
- 御室会館(仁和寺内、宿坊)
- 御室老人いこいの家(京都市委託経営)
教義
[編集]古義真言宗の教義に準じる。