2018年自由民主党総裁選挙
| |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
各候補の獲得票数の結果 安倍 石破 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
2018年自由民主党総裁選挙(2018ねんじゆうみんしゅとうそうさいせんきょ)は、2018年9月20日に行われた日本の自由民主党の党首である総裁の選挙である[1]。
概要
[編集]2015年自由民主党総裁選挙において選出された現職の安倍晋三の任期満了に伴い実施。1974年の椎名裁定[注 1]の際に総裁連続3選を禁止する規定が導入されて以降[2]長らく継続されていたが、2017年に任期が「連続3期」に延長されたため、現職の安倍の立候補が可能となった[3]。
前回無投票だったこともあり、安倍は異例である閣内からの出馬を容認した[注 2][4][5]。このため、前回出馬を断念した総務大臣の野田聖子が出馬の意欲を示していたが[6]、推薦人を集められず立候補を断念し安倍の支持に回った[7]。また閣外からは、石破茂が出馬の意欲を示した[8]。
総裁選に向けては、安倍の出身派閥である細田派と麻生派、総裁任期を延ばす党則改正を主導した二階俊博幹事長率いる二階派の3派が早々に安倍支持を表明[9]。岸田派では若手を中心に岸田文雄政調会長の出馬を求める主戦論が優勢である一方、ベテランなど一部に今回は首相支持に回り3年後に首相からの「禅譲」を狙うべきだとする慎重論があり[10]、最終的に7月24日に岸田が自身の立候補見送りと安倍への支持を表明したが、党内からは「乗り遅れだ」との冷ややかな見方が広がった[11]。
竹下派は派内に影響力を持つ青木幹雄元参院議員会長の要請もあり、派閥会長の竹下亘総務会長が石破支持を表明。参院側は大半が石破支持で固まった[12]。一方、衆院側は会長代行の茂木敏充経済再生担当相など安倍に近い議員が多く、安倍支持が優勢を占める分裂選挙となった[13]。石原派は会長の石原伸晃がNAISの会の安倍、岸田両者と近い一方、派閥最高顧問の山崎拓元副総裁が「反安倍」を鮮明に打ち出し、石破にエールを送るなどしていたため、候補が正式に出そろった後に対応を決めるとし態度を保留していた。しかし、岸田が不出馬を表明し、竹下派が分裂選挙となったことから8月9日に安倍支持を表明した[14]。
本総裁選後、安倍晋三は2年後に首相を辞職[15]、約4年後の参院選の演説中に銃撃事件で死去したため[16]、安倍が首相として迎えた最後の総裁選となった。
候補者
[編集]立候補者
[編集]届出順[17]。
候補者名 | 年齢 | 派閥 | 現職 | キャッチフレーズ | 立候補歴 | |
---|---|---|---|---|---|---|
安倍晋三 | 63 | 清和政策研究会 (細田派) |
衆議院議員(9期・山口4区) 現職(2012年~) |
平成の、その先の時代を切り拓く | 4回目 (2006年・2012年・2015年) | |
石破茂 | 61 | 水月会(石破派)会長 | 衆議院議員(11期・鳥取1区) | 地方創生、日本創生、石破茂 | 3回目 (2008年・2012年) |
候補者 | 安倍晋三[18] | 石破茂[19] |
---|---|---|
推薦人代表 | 橋本聖子(細田派) | 尾辻秀久(竹下派) |
選挙責任者 | 甘利明(麻生派) | 古川禎久(石破派) |
推薦人 | 石原宏高(石原派) 衛藤征士郎(細田派) 遠藤利明(谷垣G) 大岡敏孝(二階派) 坂本哲志(石原派) 平沢勝栄(二階派) 堀内詔子(岸田派) 宮腰光寛(岸田派) 渡辺博道(竹下派) 青山繁晴(無派閥) 有村治子(麻生派) 佐藤正久(竹下派) 髙階恵美子(細田派) 柘植芳文(無派閥) 塚田一郎(麻生派) 羽生田俊(細田派) 三木亨(二階派) 水落敏栄(岸田派) |
石井準一(竹下派) 松村祥史(竹下派) 青木一彦(竹下派) 島田三郎(竹下派) 舞立昇治(石破派) 中西哲(石破派) 村上誠一郎(無派閥) 中谷元(谷垣G) 渡海紀三朗(無派閥) 橘慶一郎(無派閥) 伊藤達也(石破派) 田村憲久(石破派) 赤沢亮正(石破派) 平将明(石破派) 福山守(石破派) 田所嘉徳(石破派) 神山佐市(石破派) 冨樫博之(石破派) |
立候補を断念した人物
[編集]党総裁選データ
[編集]自民党総裁選が9月7日に告示され、現職の安倍晋三首相と石破茂衆院議員が立候補。しかし、告示日の前日(9月6日)に北海道で発生した北海道胆振東部地震を受けて、告示日から3日間は選挙活動を自粛し、記者会見や討論会などが延期された[21]。
日程
[編集]全て2018(平成30)年。(※)を付したものはニコニコ生放送にてネット中継された[22][23]。
- 9月7日 - 告示(候補者推薦届の受付)(※)
- 9月10日
- 候補者所見発表演説会(※)
- 候補者共同記者会見(※)
- 9月14日
- 公開討論会(日本記者クラブ主催)
- 公開討論会(青年局・女性局主催)(※)
- 9月15日
- 屋内演説会(選管主催、ANAクラウンプラザホテル京都)
- 街頭演説会(選管主催、佐賀駅南口)
- 9月16日
- 屋内演説会(選管主催、サオリーナ)
- 街頭演説会(選管主催、藤崎ファーストタワー館前[注 3])
- 9月19日 - 党員投票締切
- 9月20日
- 議員投票の投開票・党員投票開票(※)
- 当選者記者会見(※)
キャッチコピー
[編集]日本を守る責任。時代を拓く覚悟。
選挙票
[編集]種別 | 人数 |
---|---|
衆議院議員 | 283票(1人1票) |
参議院議員 | 122票(1人1票) |
都道府県 | 405票(各候補者の得票数を基に、党所属国会議員数と同数の票をドント方式により配分) |
合計 | 810票 |
選挙結果
[編集]得票数 | 議員票 | 党員算定票 | |
---|---|---|---|
安倍晋三 | 553 | 329 | 224 |
石破茂 | 254 | 73 | 181 |
- 議員票投票総数: 405票、うち有効票402票(無効票3票)
以上により、総得票の過半数を獲得した安倍晋三が3選を果した[24][25]。石破は議員票では大敗したものの予想を上回る票を獲得するとともに、党員票では約45%を得、前回同様「地方に強い」ことをアピールし、ポスト安倍として望みをつないだと評された[26][27]。
Pref. | 安倍 | 石破 | 安倍比率 | 石破比率 | 有効票数 |
---|---|---|---|---|---|
北海道 | 11711 | 9819 | 54.39% | 45.61% | 21530 |
青森県 | 3480 | 2517 | 58.03% | 41.97% | 5997 |
岩手県 | 2568 | 2170 | 54.20% | 45.80% | 4738 |
宮城県 | 4299 | 3301 | 56.57% | 43.43% | 7600 |
秋田県 | 3229 | 2843 | 53.18% | 46.82% | 6072 |
山形県 | 3172 | 4402 | 41.88% | 58.12% | 7574 |
福島県 | 5209 | 4368 | 54.39% | 45.61% | 9577 |
茨城県 | 9927 | 13951 | 41.57% | 58.43% | 23878 |
栃木県 | 6257 | 5124 | 54.98% | 45.02% | 11381 |
群馬県 | 6802 | 7847 | 46.43% | 53.57% | 14649 |
埼玉県 | 12177 | 10257 | 54.28% | 45.72% | 22434 |
千葉県 | 9131 | 8238 | 52.57% | 47.43% | 17369 |
東京都 | 33351 | 24110 | 58.04% | 41.96% | 57461 |
神奈川県 | 20901 | 13371 | 60.99% | 39.01% | 34272 |
新潟県 | 8880 | 7384 | 54.60% | 45.40% | 16264 |
富山県 | 9452 | 10685 | 46.94% | 53.06% | 20137 |
石川県 | 9161 | 4936 | 64.99% | 35.01% | 14097 |
福井県 | 4786 | 2791 | 63.16% | 36.84% | 7577 |
山梨県 | 6902 | 5310 | 56.52% | 43.48% | 12212 |
長野県 | 5406 | 5391 | 50.07% | 49.93% | 10797 |
岐阜県 | 10955 | 9630 | 53.22% | 46.78% | 20585 |
静岡県 | 9410 | 6916 | 57.64% | 42.36% | 16326 |
愛知県 | 14611 | 12122 | 54.66% | 45.34% | 26733 |
三重県 | 3437 | 4194 | 45.04% | 54.96% | 7631 |
滋賀県 | 4056 | 2991 | 57.56% | 42.44% | 7047 |
京都府 | 5073 | 3807 | 57.13% | 42.87% | 8880 |
大阪府 | 11813 | 7620 | 60.79% | 39.21% | 19433 |
兵庫県 | 8193 | 7063 | 53.70% | 46.30% | 15256 |
奈良県 | 3332 | 1674 | 66.56% | 33.44% | 5006 |
和歌山県 | 8698 | 2003 | 81.28% | 18.72% | 10701 |
鳥取県 | 421 | 7933 | 5.04% | 94.96% | 8354 |
島根県 | 2257 | 7748 | 22.56% | 77.44% | 10005 |
岡山県 | 7060 | 5218 | 57.50% | 42.50% | 12278 |
広島県 | 15095 | 6171 | 70.98% | 29.02% | 21266 |
山口県 | 12488 | 1760 | 87.65% | 12.35% | 14248 |
徳島県 | 2925 | 3963 | 42.47% | 57.53% | 6888 |
香川県 | 6752 | 4783 | 58.53% | 41.47% | 11535 |
愛媛県 | 6945 | 5581 | 55.44% | 44.56% | 12526 |
高知県 | 1499 | 3778 | 28.41% | 71.59% | 5277 |
福岡県 | 10442 | 5883 | 63.96% | 36.04% | 16325 |
佐賀県 | 3343 | 3149 | 51.49% | 48.51% | 6492 |
長崎県 | 7167 | 4704 | 60.37% | 39.63% | 11871 |
熊本県 | 6143 | 5011 | 55.07% | 44.93% | 11154 |
大分県 | 5768 | 3542 | 61.95% | 38.05% | 9310 |
宮崎県 | 3112 | 4380 | 41.54% | 58.46% | 7492 |
鹿児島県 | 5938 | 4478 | 57.01% | 42.99% | 10416 |
沖縄県 | 1753 | 1086 | 61.75% | 38.25% | 2839 |
合計 | 355487 | 286003 | 55.42% | 44.58% | 641490 |
註: 都道府県別でそれぞれ最多得票であった候補の票数を強調した。比率は有効投票数に占める各候補への投票率。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ 自民総裁選、来月20日投開票=安倍、石破氏、一騎打ちへ:時事ドットコム - ウェイバックマシン(2018年8月21日アーカイブ分)
- ^ “自民党「総裁」名の由来、選挙が必要な訳、任期と再選規定の変遷”. Yahoo News. Yahoo! JAPAN. (2018年8月23日). オリジナルの2018年9月20日時点におけるアーカイブ。 2018年9月20日閲覧。
- ^ 自民党、総裁任期「連続3期9年」に延長 党大会で了承:朝日新聞デジタル - ウェイバックマシン(2017年3月5日アーカイブ分)
- ^ “野田聖子氏起用「閣内不一致の時限爆弾」”. 毎日新聞. (2017年8月7日) 2020年9月2日閲覧。[リンク切れ]
- ^ “首相、閣内からの出馬容認 今秋の自民総裁選”. 日本経済新聞. (2018年1月15日)
- ^ “(自民党総裁選2018 候補たち:4)野田聖子氏 首相へ苦言、党の常識に挑む”. 朝日新聞. (2018年1月15日)
- ^ 野田氏、首相支持を表明 「安倍一色」に異論唱えたが…朝日新聞 2018年9月4日
- ^ “2018自民総裁選/1 石破茂・元幹事長(60) 非主流、深まる孤立 「安倍失速」待つ持久戦”. 毎日新聞. (2018年1月9日) 2018年2月9日閲覧。
- ^ “【自民党総裁選】首相3選支持へ麻生、二階氏呉越同舟 支持率急落に対抗”. 産経新聞. (2018年4月11日) 2020年4月4日閲覧。
- ^ “岸田氏、総裁選不出馬を表明 安倍首相の3選が有力に”. 日本経済新聞. (2018年7月24日) 2020年4月4日閲覧。
- ^ “2018自民党総裁選:岸田氏不出馬 派閥分裂回避に腐心”. 毎日新聞. (2018年7月26日) 2020年4月4日閲覧。
- ^ “2018自民党総裁選:竹下派「分裂選挙」へ 首相支持容認 竹下氏は石破氏支持”. 毎日新聞. (2018年8月8日) 2020年4月4日閲覧。
- ^ “2018自民党総裁選:竹下派は分裂選挙が鮮明に”. 毎日新聞. (2018年9月3日) 2020年4月4日閲覧。
- ^ “【政界徒然草】「バスに乗り遅れるな!」自民党総裁選に駆け込み乗車の石原派 背景に複雑な派内事情、山崎拓氏の影も…”. 産経新聞. (2018年8月17日) 2020年4月4日閲覧。
- ^ “安倍内閣が総辞職 連続在任最長、2822日で幕”. 日本経済新聞 (2020年9月16日). 2024年9月7日閲覧。
- ^ “安倍元首相の暗殺 どのように起きたのか”. BBCニュース (2022年7月9日). 2024年9月7日閲覧。
- ^ “自民党総裁選挙が告示|総裁選関連ニュース|総裁選2018|自由民主党”. 2018年9月20日閲覧。
- ^ “安倍 晋三 プロフィール|総裁選2018|自由民主党”. 2018年9月20日閲覧。
- ^ “石破 茂 プロフィール|総裁選2018|自由民主党”. 2018年9月20日閲覧。
- ^ “自民党総裁選 岸田氏、名門の重圧 揺れた末の総裁選不出馬”. 日本経済新聞. (2018年7月25日)
- ^ 自民党総裁選、3日間自粛 石破氏の延期主張は通らず朝日新聞 2018年9月7日
- ^ “総裁選スケジュール|総裁選2018|自由民主党”. 2018年9月20日閲覧。
- ^ 9月7日告示 20日投開票 自民総裁選正式決定 - FNN.jpプライムオンライン - ウェイバックマシン(2018年8月22日アーカイブ分)
- ^ 自民総裁に安倍首相3選 石破元幹事長破る | 共同通信 - This kiji is - ウェイバックマシン(2018年9月20日アーカイブ分)
- ^ 自由民主党. “【自民党総裁選】投開票ならびに両院議員総会(2018.9.20)”. YouTube. 2018年9月20日閲覧。
- ^ “「丁寧、正直、安倍批判」石破茂が抱えた“新たな課題””. FNNプライムオンライン. 2020年10月4日閲覧。
- ^ 日本放送協会. “3年待たず 戦国時代だ | 特集記事”. NHK政治マガジン. 2020年10月4日閲覧。
- ^ 2018年 総裁選 / 党員投票開票結果 - ウェイバックマシン(2018年9月20日アーカイブ分)