タンタンの冒険
『タンタンの冒険』(タンタンのぼうけん、仏: Les Aventures de Tintin)は、ベルギーの漫画家エルジェによる漫画(バンド・デシネ)シリーズ。ベルギー人の少年タンタンと相棒である愛犬スノーウィと共に世界中を旅行し、事件に巻き込まれ、活躍する物語である。日本語版では、かつては『タンタンの冒険旅行』(タンタンのぼうけんりょこう)と呼ばれていた。
本項ではタイトルやキャラクター名など、日本語版については福音館書店版に準拠する。
掲載と出版
[編集]作者のエルジェ(本名:ジョルジュ・レミ)は、故郷ブリュッセルにあったローマ・カトリック系の保守紙『20世紀新聞』(Le Vingtième Siècle)で働いており、同紙の子供向け付録誌『20世紀子ども新聞』(Le Petit Vingtième)の編集とイラストレーターを兼ねていた。エルジェは、『20世紀新聞』の編集長であったノルベール・ヴァレーズの企画で、世界中に派遣されるベルギー人の少年記者を主人公とした子供向け漫画の週刊連載を描くことになり、こうして1929年1月10日に始まったのがタンタンの冒険シリーズであった。初期3作はヴァレーズがテーマと舞台を決めていたが、その後は基本的にエルジェが構想やプロットを練るようになり、第二次世界大戦による混乱期を挟みながら、最終的に1983年の死まで、生涯をかけて続けた作品となった。
基本的には雑誌で約1年ほど週刊連載した後、改変を伴ってまとめられ、カステルマン社より書籍版として出版された。初期はモノクロ作品であったが、1942年のシリーズ第10作目『ふしぎな流れ星』の書籍版よりカラー作品となり、過去作もエルジェ自身の手で順次カラー化されていった(ただし『タンタン ソビエトへ』を除く)。原作はフランス語だが、フランス語圏以外にも数多く翻訳出版され、その際には『黒い島のひみつ』のように、現地出版社の依頼で更に大幅な修正や改変を加えたリメイク版が製作されることもあった。80か国語以上に翻訳され、シリーズの全世界での発行部数は3億5,000万部以上になる。
掲載誌
- 『20世紀子ども新聞』(Le Petit Vingtième) / 期間:1929年-1940年
- 『20世紀新聞』の子供向け付録誌で、1929年に第1作『タンタン ソビエトへ』を連載開始。1940年、本来は9作目予定であった後の『燃える水の国』の連載中にナチス・ドイツによるベルギー占領を受けて廃刊。
- 『ル・ソワール・ジュネス』(Le Soir Jeunesse) / 期間:1940年-1941年
- 『ル・ソワール』の子供向け付録誌。1940年の創刊号から第9作目『金のはさみのカニ』を連載。戦時統制下の紙不足により廃刊し、連載中であった『金のはさみのカニ』は『ル・ソワール』本誌へ移行。
- 『ル・ソワール』(Le Soir) / 期間:1941年-1944年
- ベルギーの主流フランス語日刊紙。『ジュネス』廃刊に伴い『金のはさみのカニ』の残りを日刊で連載。以降も日刊で連載するが、1944年、第13作目『七つの水晶玉』の連載中に起こったベルギー解放に伴い、ナチス協力者の容疑で追放される。
- 『タンタン・マガジン』 / 期間:1946年-1976年
- 元レジスタンスのレイモン・ルブランの支援を受け、タンタンの名を冠し、エルジェを主執筆者とした雑誌を創刊。未完だった『七つの水晶玉』を第1話から再連載して完結させ、以降1983年のエルジェの死までシリーズを続ける。
日本語版
[編集]最初の日本語版は1968年に主婦の友社から阪田寛夫訳で『ぼうけんタンタン』というシリーズ名で出版された。『ブラック島探険』(黒い島のひみつ)・『ふしぎな大隕石』(ふしぎな流れ星)・『ユニコン号の秘密』(なぞのユニコーン号)の3作が翻訳されたが、ほとんど注目されず、続かなかった。
1983年から福音館書店にて川口恵子訳で『タンタンの冒険旅行』というシリーズ名で出版された(2011年に『タンタンの冒険』に改題[1])。福音館書店版は『黒い島のひみつ』から始まり、本来は前後編である『ファラオの葉巻』と『青い蓮』がバラバラに出版されるなどしたが、2007年12月の『タンタンとピカロたち』『タンタンとアルファアート』まで、シリーズ全24作を刊行した。
日本の福音館書店版は2011年12月時点でハードカバー版が約107万部、ペーパーバック版が約26万部を発行している[2]。
タイトル
[編集]第9作目まではモノクロ原稿であり第10作目からカラーとなったが、旧作も順次カラー化されていった(ただし、初作で第1作目『タンタン ソビエトへ』のみ2017年)。第24作目はエルジェが執筆中に死亡した為、ラフとメモをまとめた物となっている。当初はアシスタントにペン入れなどをさせて完成させるプランが持ち上がったものの、全員が辞退した為、夫人の一存で現行の形で刊行された[3]。
カラー化などの再版に関して内容に大きく手が加えられることもあったため、登場人物の初登場情報などは初版を基準とする。また、日本語版タイトルは福音館書店版に基づき、刊行順序が大きく異なるため、オリジナル版の順番のほかに日本語版刊行順序を示す。
刊行 | 日本 | 刊行年 | 同カラー | タイトル | 原題 (フランス語) |
備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 21 | 1930年 | 2017年 | タンタン ソビエトへ | Tintin au pays des Soviets | |
2 | 22 | 1931年 | 1946年 | タンタンのコンゴ探険 | Tintin au Congo | |
3 | 20 | 1932年 | 1946年 | タンタン アメリカへ | Tintin en Amérique | |
4 | 8 | 1934年 | 1955年 | ファラオの葉巻 | Les Cigares du pharaon | デュポンとデュボン、ラスタポプロスが登場。 |
5 | 14 | 1936年 | 1946年 | 青い蓮 | Le Lotus bleu | 『ファラオの葉巻』の続編。チャンが登場。 |
6 | 16 | 1937年 | 1943年 | かけた耳 | L'Oreille cassée | アルカサル将軍が登場。 |
7 | 1 | 1938年 | 1943年 | 黒い島のひみつ | L'Ile Noire | 再カラー版が1965年に刊行される。 |
8 | 17 | 1940年 | 1947年 | オトカル王の杖 | Le Sceptre d'Ottokar | カスタフィオーレ夫人が登場。 |
9 | 18 | 1941年 | 1943年 | 金のはさみのカニ | Le Crabe aux pinces d'or | ハドック船長が登場。 |
10 | 2 | 1942年 | - | ふしぎな流れ星 | L'Etoile mysterieuse | 書籍版が最初からカラー版で出版される。 |
11 | 3 | 1943年 | - | なぞのユニコーン号 | Le Secret de La Licorne | 映画『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』(2011年)のメイン原作。 |
12 | 4 | 1944年 | - | レッド・ラッカムの宝 | Le Trésor de Rackham le Rouge | 『なぞのユニコーン号』の続編。ビーカー教授が登場。 |
13 | 6 | 1948年 | - | ななつの水晶球 | Les Sept Boules de cristal | |
14 | 7 | 1949年 | - | 太陽の神殿 | Le Temple du Soleil | 『ななつの水晶玉』の続編。映画『タンタンの冒険: 太陽の神殿』(1969年)のメイン原作。 |
15 | 10 | 1950年 | - | 燃える水の国 | Tintin au pays de l'or noir | オリジナルは第9作目予定であった未完成作品。 |
16 | 12 | 1953年 | - | めざすは月 | Objectif Lune | |
17 | 13 | 1954年 | - | 月世界探険 | On a marché sur la Lune | 『めざすは月』の続編。 |
18 | 15 | 1956年 | - | ビーカー教授事件 | L'Affaire Tournesol | スポンツ大佐が登場する。 |
19 | 11 | 1958年 | - | 紅海のサメ | Coke en stock | |
20 | 5 | 1960年 | - | タンタンチベットをゆく | Tintin au Tibet | |
21 | 9 | 1963年 | - | カスタフィオーレ夫人の宝石 | Les Bijoux de la Castafiore | |
22 | 19 | 1968年 | - | シドニー行き714便 | Vol 714 pour Sydney | |
23 | 23 | 1976年 | - | タンタンとピカロたち | Tintin et les Picaros | |
24 | 24 | 1986年 | - | タンタンとアルファアート | Tintin et l'Alph-Art | 製作中にエルジェが死去した未完作。彼の死後に刊行される。 |
登場人物
[編集]※特記なき限り、各キャラクターの担当声優は1990年代に制作されたテレビアニメ版の日本語吹き替え版でのキャスト。「日活版」は日活から発売されたタンタンの長編アニメーション映画の日本語吹き替え版でのキャスト。
主要人物
[編集]- タンタン(Tintin)
- 声 - 草尾毅、三ツ矢雄二(日活版)
- 本作の主人公。少年ルポライター。ベルギー出身。ブリュッセルのラブラドル通り26番地で愛犬かつパートナーでもあるスノーウィと暮らしている。
- くるっと跳ね上がった髪の毛とニッカボッカが特徴。この風貌は、作者の弟であり職業軍人であったポールの風貌をモデルにしているとされる。「タンタンとピカロたち」では、ニッカボッカからジーンズに変更された(原作のみ)。
- 正義感が強く色々な事件に首を突っ込むため、警察に容疑をかけられたり、殺し屋、麻薬売人など悪者に命を狙われたりと、何かと波乱が絶えない。また大怪我を負ったり死にかけたりする事も多々ある。
- ハドックの登場以降は彼との交友関係を主軸とした生活面が濃く描かれるようになり、事件に首を突っ込むというよりは巻き込まれる形になることが多くなる。唯一、ハドックが後半から登場する「燃える水の国」では、久々に自ら調査に乗り出している[4]。
- 過去に『タンタン新聞』にて「タンタンの年齢はいくつくらいか?」という質問が挙がり、エルジェはそれに関して「最初は14歳くらい…あと最終的には17歳かな」と答えていた。
- 博識で多才な技能を持っており、特に乗り物は自動車を始めバイク、機関車、飛行機、ヘリコプター、戦車、船舶などの運転、操縦を器用にこなしている。他にも無線の知識もあり、狙撃術や格闘技なども心得ている。
- スノーウィ(Milou)
- 声 - スーザン・ローマン(世界共通)
- タンタンの相棒のホワイト・フォックステリア犬(実際はワイアー・フォックス・テリアがモデル)。少々ドジでおっちょこちょいな面があり、かなりの酒好きで骨にも目がない。その上いつも猫を追いかけたりオウムと喧嘩したりするため、その度にタンタンの悩みの種になっているが、いざという時は彼にとって頼もしい存在になっている。蜘蛛が苦手。
- 原作では人間語のセリフが付いており、何かとぼやいたりするが、この言葉はタンタンにしか通じない模様。アニメではスノーウィ独自の台詞は一切なく、原作にあるようなスノーウィからの視点も省かれている。
- 各国語に翻訳される際、それぞれ親しみやすい名前に変更されている。フランス語版での名前は「ミルゥ」、英語および日本語では「スノーウィ」、ドイツ語では「シュトルッピ」(Struppi)、オランダでは「ボビー」(Bobbie) 、ウェールズ語では「スウィーティン」(switin)、スロバキア語では「スノー」(snow)、中国語では「白雪」である。
- →詳細は「スノーウィ」を参照
- ハドック船長(Capitaine Haddock)
- 声 - 内海賢二
- 本名アーチボルド・ハドック(Archibald Haddock)。Haddockはフランス語では「アドック」と読み、苗字はコダラから。初登場は『金のはさみのカニ』。
- 顎鬚を生やした船乗りらしい偉丈夫で、大の酒好き。パイプも愛用する。初登場時は貨物船「カラブジャン号」の船長で、配下のアランに利用され麻薬の密輸に加担させられていた。事件を追っていたタンタンと出会い、彼の頼れる仲間として以降、スノーウィに次ぐタンタンの相棒として数々の冒険や事件を共にする。
- 船員禁酒連盟会長であるにもかかわらず、コルクが開いた音だけでウィスキーだと分かるほどの大酒飲み。肝硬変の兆候が見つかり「酒を飲むな」と言われながらも酒を持ち込んだり、自分の用意した酒を飲み損ねて嘆いたり怒ったりする場面がしばし見られる。「カラブジャン号」の船長時代にアランが好き勝手に行動できたのもアルコールが原因である。しかし『タンタンとピカロたち』にて、ビーカーが発明した「酒が不味くなる薬」を飲んだ結果、酒を受け付けない体質になった。『タンタンとアルファアート』でもこの体質を引きずっているが、ビーカーの特効薬で髪は抜けて顔はシミだらけになるものの、再び酒が飲める体質に戻る、という展開も構想の一部にあった。
- 非常に口が悪く、地口(掛詞)を多用した悪態をつくことが多い。各国語版でセリフが異なり、日本語版では「コンコンニャローのバーロー岬」「何とナントの難破船」がよく登場する。原語版では「Tonnerre de Brest!」と叫ぶセリフで、これは直訳すると「ええい、またか、忌々しい城砦の大砲め!また凶悪犯が逃げやがったぞ!」となる。脱走者が頻発し、その度に大砲が鳴らされていた刑務所が建つフランスの城砦・軍港都市ブレストの住民感情に因み、引用されている。
- フランソワ・ド・アドック卿という先祖がおり、誇りにしている。『なぞのユニコーン号』『レッドラッカムの宝』では、アドック卿の隠し財宝を巡ってタンタンと行動を共にし、最終的にアドック卿の居城であったムーランサール城を手に入れ、自宅とした。
- デュポンとデュボン(Dupond et Dupont)
- 声 - 永井一郎、石井敏郎(日活版トマソン) / 上田敏也(日活版トンプソン)
- インターポール(ICPO)の刑事コンビ。初登場は『ファラオの葉巻』。
- 血縁関係がないにもかかわらず、容姿、名前、顔、声、性格に至るまでそっくりな2人組で、イギリス風の黒い紳士服に山高帽、杖というお揃いの服装をしている。外見の違いは髭で、髭の両端が跳ね上がっているのがデュポンで、垂れ下がっているのがデュボンである。職務には忠実だが、基本的にはドジで間抜けな性格をしており、階段から落ちたり床で滑って怪我をするのがよくあるパターンである。簡単に機密事項を話してしまったり、捜査のための潜入でも奇抜な格好をして周囲から悪目立ちするなど、刑事らしからぬ間抜けなエピソードには事欠かないが、本人たちにその自覚はなく、むしろミスを互いに擦りつけ合って自分のせいだとは認めようとしない。最終的にはタンタンの活躍によって犯人がデュポンとデュボンに引き渡され、彼らの功績となるために優秀な刑事扱いをされている。
- 登場初期の『ファラオの葉巻』『黒い島のひみつ』では真犯人の罠にあっさりはまり、タンタンを麻薬密売人や強盗とみなして誤認逮捕する迷惑な人物として登場する。ただ、上記の間抜けさゆえに『ファラオの葉巻』ではタンタンをあっさり逃したり、『黒い島のひみつ』では居眠り中に逃亡されている。これらの事件解決後はタンタンを認めるようになり、捜査中の事件の内容を話すなど、信頼した友人関係となっている。
- 各言語版で名前は異なるが、英語版および日活版では「トムソン(トマソン)とトンプソン」であるなど、いずれもよく似た紛らわしい名前が付けられているという点は共通している。また、発音が紛らわしい言語版ではしばし何らかの区別読みを行う場合がある。例えば日本語版では「イカレポンチのポン」「ボンクラのボン」という形で、フランス語版ではDupondとDupontともにありふれた姓であり、加えていずれも発音が同じ「デュポン」であるため、語尾の文字を取って「デュポン・デー」(d)、「デュポン・テー」(t)と区別し、2人をまとめてLes Dupondtと称する。
- 本来の初登場作品は1934年の『ファラオの葉巻』であるが、1946年の『タンタンのコンゴ探険』のカラー化において改編が行われ、彼らが登場する形となったため、『タンタンのコンゴ探険』の方を初登場作とみなす余地も生まれている。
- ビーカー教授(Professeur Tryphon Tournesol)
- 声 - 辻村真人、槐柳二(日活版)
- 日本語版のフルネームはビルフリート・ビーカー。苗字はビーカーから。初登場は『レッド・ラッカムの宝』。
- 作中において潜水艦や原子力ロケット、カラーテレビなどを発明する中年男性の天才科学者。温厚な性格をしており、その知識は幅広く多様で、バラの新種栽培にも長けるが、普段の言動は世間離れした奇抜な人物であり、その行動原理は常人には理解し難い。また、耳が遠いために話が噛み合わないことが多く、それが原因で周りを苛立たせたり、トラブルに巻き込まれることも多い。しかし、なぜか補聴器をつけることは嫌がる(17作目『月世界探検』を除く)。基本的には自分が興味を持ったものに集中し、それが周りに迷惑をかけていても気づかないほどだが、自分の発明品が悪事に使われることははっきりと嫌悪感を示し、自ら壊すことも厭わない。また「バカ」という言葉に対して非常に敏感であり、自分の研究をバカにされると普段の温厚な姿からは考えられないほどに本気で激怒し、ハドックを圧倒するほどである。
- 『レッド・ラッカムの宝』では、財宝を手に入れたいタンタンとハドックの噂を聞きつけ、自らの発明品である潜水艦「サメマリン号」を貸与。ハドックのムーランサール城購入にも資金面で協力し、城の一角に研究室兼自宅を設けた。以後もレギュラーキャラクターとしてシリーズに登場し、ストーリーに直接的あるいは間接的に関わるようになる。特に第15作目『ビーカー教授事件』では物語の主要人物となり、彼が発明した超音波装置を狙う悪人に誘拐されてしまう。
- 各言語版で名前が異なり、フランス語版では本名が「トリフォン・トゥルヌソル」(Tryphon Tournesol)で、通常は「プロフェスール・トゥルヌソル」(Professeur Tournesol)と呼ばれている。「トゥルヌソル」(tournesol)はヒマワリの意。また、英語版では「カスバート・カルキュラス」(Cuthbert Calculus)、ドイツ語版では「バルドゥイン・ビーンライン」(Balduin Bienlein)とされる。
- モデルはスイスの世界初の成層圏飛行を成し遂げ、一時期ブリュッセル自由大学の教授でもあったオーギュスト・ピカール[5]。
悪役
[編集]- ロベルト・ラスタポプロス(Roberto Rastapopoulos)
- 声 - 青森伸(テレビシリーズ) / 坂東尚樹(劇場版『呪われた湖の謎』)
- 「暗黒街の顔役」として悪名高いタンタンの宿敵。禿げ頭に大きい鼻が特徴で、片眼鏡をかけている。
- 正式な初登場は『ファラオの葉巻』。以降も数々の事件に関与し、タンタンを苦しめている。表の顔は映画ビジネス会社の社長や、船舶王やメディア王としてその名を轟かす大富豪ゴルゴンゾラなどであるが、その裏の顔は麻薬密輸組織のボス、奴隷商人、武器商人などと様々である。
- 初登場は『タンタン アメリカへ』だが、物語の本格的な登場は『ファラオの葉巻』からである。同話での一連の事件の黒幕であったが、作中ではその正体は明かされないまま、続く『青い蓮』で正体が判明する。毎回、事件の真相を暴いたタンタンに組織や闇ビジネスを潰され追い込まれるものの、例えば『紅海のサメ』では沈むモーターボートから小型潜水艇によって脱出するなどして逮捕を免れ、新たな大掛かりな悪事の黒幕として再び現れる。ただし、最後の登場作となる『シドニー行き714便』では、もはや資金がないために大富豪カレイダスの乗った飛行機をハイジャックするというほどに落ちぶれてしまっている。また、同作の終盤において部下達共々UFOでどこかへ連れ去られた。
- 未完成作品『タンタンとアルファアート』にて黒幕の正体だとする資料が存在しているが、実際の話に組み込まれるものであったかは不明。
- アラン・トンプソン(Allan Thompson)
- 声 - 小島敏彦
- ラスタポプロスの腹心である船乗り。麻薬密輸や奴隷貿易など、様々な悪事に関与し、タンタン達と幾度となく対決している。ハドックとは同じ船乗りであるが故に因縁がある。
- 初登場は『ファラオの葉巻』。ラスタポプロスを頭領とする麻薬密輸の計画に関わり紅海にて麻薬の取引を行うが、警察の発見を恐れ、麻薬と間違えてタンタンらの入った棺桶を捨ててしまう。アニメでは麻薬組織の極秘会議に出席した際、潜入していたタンタンに棍棒で叩かれ気絶、そのまま他のメンバーと共に逮捕された。
- その後『金のはさみのカニ』にて、貨物船「カラブジャン号」の一等航海士として登場。船長のハドックをアルコール中毒にして船を思うがままに操り、麻薬の密輸を行っていたが、その事実が露見しタンタンとの追走劇の末、逮捕された。
- 『紅海のサメ』では、貨物船「ラモナ号」の船長として奴隷貿易に関与。ボスであるゴルゴンゾラ(ラスタポプロス)の命によって計画の邪魔になるタンタンとハドックを爆薬で葬ろうとするが、失敗に終わる。その後デンマークで当局によって逮捕された。
- 『シドニー行き714便』ではラスタポプロスと共に大富豪カレイダス誘拐計画に関与。ソンドネシア人(架空の人種)を率いてタンタンらと銃撃戦を繰り広げるが、終盤ではソンドネシア人らにリンチされる。
- 映画「タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密」にも登場している。
- ドクター・ミュラー(docteur Müller)
- 声 - 桑原たけし
- 『黒い島のひみつ』『燃える水の国』『紅海のサメ』に登場する悪役。
- スコットランドにある「黒島」を本部とする偽札組織のメンバーとして初登場。本部から届けられる偽札を受け取っていた。タンタンにそれを見破られ黒島へと逃亡するが、島に乗り込んだタンタンの活躍により警察に逮捕された。
- その後『燃える水の国』にて、中東の架空国家「ケメド」で暗躍し、反体制派が首長エザブの政権打倒のために起こしたガソリン爆発事件に関与する。『紅海のサメ』ではムル・パシャと名を変えて変わらず反体制派に与し、ケメドにやってきたタンタンの命を狙うが失敗する。また、アニメ版では味方の戦闘機から誤爆されている(誤爆自体は原作にもあるエピソードだが、ミュラーは部隊に同行していない)。
- 初登場時は小ざっぱりとした風貌で敬語主体の紳士的な言動だったが、再登場以降は粗野な風貌になり言動も荒っぽくなっている。
- ボリス侍従長 / ヨルゲン大佐(colonel Boris / Colonel Jorgen)
- 声 - 大塚明夫
- 東欧の架空国家「シルダビア」の侍従長。『オトカル王の杖』『めざすは月』『月世界探検』に登場する。
- 隣国のスパイで、シルダビアの王権の象徴である「オトカル王の杖」を奪取し王政の打倒を画策するが、タンタンの活躍によって失敗に終わる。その後ヨルゲンと名を変え(アニメ版では元からヨルゲン)、シルダビアのロケット計画に絡む陰謀に加担し、月ロケットの乗っ取りと計画に加わっているタンタンへの復讐を企む。ロケットに密かに乗り込みタンタンらを始末しようとするが、内通者のヴォルフ(声 - 清川元夢)と揉み合った末に銃が暴発して死亡。死体は宇宙に棄てられた。
- スポンツ大佐(Colonel Sponsz)
- 声 - 藤本譲
- シルダビアの隣国「ボルドリア」の軍人で、ボルドリア警察庁長官を務める。階級は大佐。右目にかけた片眼鏡が特徴で、髪型は半分坊主で頭の真ん中に毛が立っている。
- 初登場となる『ビーカー教授事件』にて、ビーカーが発明した震動兵器を奪うため教授をボルドリアに拉致するが、同国に潜入したタンタンとハドックにビーカーを救出され計画は破綻する。またカスタフィオーレの大ファンであり、自身の地位を利用して直接面会している。その際彼女に機密情報を喋ってしまい、それを盗み聞きしていたタンタン達に反撃のチャンスを与えてしまうことになった。
- その後『タンタンとピカロたち』にて、エスポンハと名前を変えて(中盤でスポンツと判明する)南米の架空国家「サン・テオドロス」の警察顧問として赴任し、反政府ゲリラ「ピカロ党」の殲滅とタンタンへの復讐を企む。彼をおびき寄せるため、サン・テオドロスの公演に訪れたカスタフィオーレと護衛であるデュポンとデュボンに無実の罪を着せて逮捕するが、タンタンの協力によってアルカサルによる無血革命が成功、企みは失敗に終わる。そしてタンタンによってボルドリアへ強制送還された。
- J.M.ドーソン(J.M.Dawson)
- 声 - 小山武宏
- オールバックの髪型にメガネ、チョビ髭といったビジネスマン風の外見が特徴、時折歯をむき出して笑うことがある。上海共同租界にて警視総監を務めたことのある人物であり、その地位を利用しタンタンを幾度となく陥れた。
- 『青い蓮』では上海共同租界警視総監として初登場。欧米人のメンツのためにタンタンを逮捕させてリンチをかけさせようとしたり、日本軍と結託してタンタンを捕らえたりと、彼を何度も陥れている。
- 『紅海のサメ』ではラスタポプロスの武器密輸に関与し、戦闘機などを売る「死の商人」として再登場。エザブの政敵バブエルエルに戦闘機モスキートを売りつけてクーデターを起こすよう仕向けたり、アルカサルとも取引を行っていた。タンタンに悪事を嗅ぎつけられると、ケメドに向かうタンタンが乗る飛行機に時限爆弾を仕掛けて彼を亡き者にしようとするが、飛行機のエンジントラブルによってこの企みは失敗に終わった。
- ボビー・スマイルズ(Bobby Smiles)
- 声 - 菅生隆之
- アル・カポネと対立するギャングのボス。『タンタン アメリカへ』に登場する。
- タンタンを仲間に引き入れようとするが反対され、毒ガスで葬ろうとするが失敗。その後も様々な手でタンタンを始末しようとするが、ことごとく失敗に終わり、最終的には逮捕された。
- アニメ版ではアル・カポネの部下として登場する。
その他
[編集]2話以上に登場する人物。
- チャン(Tchang)
- 声 - 西村明子
- 本名:張仲仁(Tchang Tchong-Jen)。中国人の少年。初登場は『青い蓮』。
- 孤児院にいたが嵐による洪水で川で溺れていたところをタンタンに助けられ、親友となる。以後タンタンと行動を共にし、上海で暗躍する日本人工作員ミツヒラト(声 - 中江真司)が関わる「青い蓮」事件の解決に貢献する。事件解決後はアヘンと戦う中国の秘密結社「小龍会(シャロンホイ)」の代表、ワン・チェンイー(声 - 村松康雄)の養子となる。
- 『タンタンチベットをゆく』では義理のおじの店を手伝うためロンドンに向かうが、乗っていた飛行機がチベットの雪山に墜落してしまう。その後、墜落現場に現れたイエティがチャンを安全な場所まで運び、保護されていたところを現地に赴いたタンタンとハドックによって救出された。
- エルジェの中国人の友人チャンがモデルとされている。
- ビアンカ・カスタフィオーレ(Bianca Castafiore)
- 声 - 此島愛子
- 世界的に有名なオペラ歌手。初登場は『オトカル王の杖』で、他6話に登場する。
- 「白いナイチンゲール」の異名を取る程の歌手であるが、彼女の歌声には耳の遠いビーカーを除く全員が拒絶反応を示す。特にハドックは彼女の歌声を聞くと、嵐の海で死にかけた時のことを思い出すという。
- ハドックの唯一にして最大の女性の天敵であるが、彼女は彼のことをいたく気に入っており、彼の為にはるばるムーランサール城を訪れたこともある。本作唯一のレギュラーともいえる女性。
- ハドックの名前を正しく言えた試しがなく(パドック、カポック、ハンモックなど)、興奮したときにはランピョンやネストルの名前でさえも間違えてしまう事もある。
- アルカサル将軍(Général Alcazar)
- 声 - 有本欽隆
- 南米の架空の国「サン・テオドロス」の革命家・独裁者。ステレオタイプな政治家で頑固な性格である。癇癪持ちで事ある毎に怒鳴り散らすが、妻のペギー(声 - 片岡富枝)には頭が上がらない。
- 『かけた耳』にて、サン・テオドロスの大統領として初登場。タンタンを副官に任命しチェスの相手をさせていたが、彼を敵国に協力したスパイだと勘違いし、処刑しようとするも逃げられてしまう。その後国内で革命が起き、タピオカ将軍(声 - 玄田哲章)に政権を奪取されたために亡命した。
- 『ななつの水晶球』では「ラモン・サラーテ」と名乗ってミュージックホールでナイフ投げをしており、タンタンと再会した。『紅海のサメ』ではタピオカとの戦争に使う戦闘機を買うためヨーロッパを訪れている。最終的に『タンタンとピカロたち』にて、タンタンの協力を得て無血革命に成功。タピオカから政権を奪取し、改めてサン・テオドロスの大統領となった。
- ネストル(Nestor)
- 声 - 上田敏也
- ムーランサール城の執事。初登場は『なぞのユニコーン号』。
- 当初はムーランサール城の主である悪人・バード兄弟に仕えており、タンタンたちと敵対していた。しかしバード兄弟の悪事は知らず、後にタンタンに潔白を証明され和解。ムーランサール城がハドックの所有になると、そのまま彼に仕えることとなる。『ななつの水晶球』ではハドックやタンタンと共に南米へ同行しようとするが一足遅かった。
- オリベイラ(Oliveira)
- 声 - 村松康雄
- ポルトガルの雑貨商人。初登場は『ファラオの葉巻』で、全3話に登場する。
- 弁舌巧みに商品、時にはガラクタをも売りさばき、最初はタンタンにも売りつける。とてつもないおしゃべりでゴシップやホラ話を好み、端役ながら後にも登場し、その話術で屋敷中の人間の注意を自分にそらすなどしてタンタンを助けている。
- ベン・カリシュ・エザブ(Emir Ben Kalish Esab)
- 声 - 石森達幸
- ケメド国の首長。初登場は『燃える水の国』。
- 非常に温和な性格であるが、時には人を「あの悪魔ども」などと罵るなど激情家の一面も見せる。息子のアブダラーを「かよわき子羊」「小さな砂糖菓子」などと呼んで溺愛しており、彼のためならどんな無理難題をも命令してしまう。アブダラーのいたずらに関しては寛容な態度を見せるが、自分の高級葉巻を全部爆竹に変えられた際には激怒したこともある。
- 『紅海のサメ』では、ムル・パシャ率いる反乱軍が起こしたクーデターにより一時的に身を潜めるが、終盤で政権を取り戻す。
- アブダラー(Abdallah)
- 声 - 松本梨香
- ケメド国の首長アミール家の王子。初登場は『燃える水の国』。初登場時の年齢は8歳。
- 非常に我儘かつ悪戯好きの少年で、ハドックのことを「バーロー岬」と呼ぶ。爆竹やおもちゃのピストルで大人をからかうのが大好きだが、一喝されるとすぐに泣き出す。王子ということで非常に甘やかされており、彼の悪戯が咎められることは基本的になく、むしろアブダラーを叱ると側近(特にお供のハシム)にたしなめられる。
- 『紅海のサメ』ではケメド国の政情不安から、一時的にムーランサール城に預けられることになるが、悪戯好きな性格は変わらずハドックやネストルを翻弄する。
- セラファン・ランピョン(Séraphin Lampion)
- 声 - 仲木隆司
- 保険の営業マン。初登場は『ビーカー教授事件』。
- いつも能天気で明るいが、場の空気が読めず迷惑がられることが多い。モータークラブの会長やサーカス団の代表を務めることもあり、『タンタンとピカロたち』ではアルカサルの革命に大きな貢献をすることになる。
- チェッ(Szut)
- 声 - 大滝寛
- 右目に眼帯をした金髪の飛行機操縦士。エストニア人。初登場は『紅海のサメ』。アニメ版では「ビオトル・チェッ」というフルネームで登場している。
- ゴルゴンゾラことラスタポプロスの部下で、メッカに向かうタンタンとハドック船長をモスキートで襲撃するが反撃を受け墜落。漂流していたところでタンタンとハドックに助けを求め救出され、以後彼らと行動を共にすることになる。彼がどこまでラスタポプロスの悪事を知っていたかは不明だが、その後殺されかけていたタンタン達を助け出し、ラスタポプロスが行っていた紅海での奴隷貿易に終止符を打つ手助けをする。根っからの悪党ではなかった上にタンタン達を手助けした事で、タンタンから警察に悪事を告発されたり、引き渡されずに済んだ。
- 後の『シドニー行き714便』にて再登場。大富豪ラズロ・カレイダス(声 - 大塚周夫)の専用ジェット機のパイロットを務めていたが、ジェット機をラスタポプロス達にハイジャックされカレイダス誘拐計画に巻き込まれてしまう。後に宇宙人にタンタン達共々救出され事なきを得るが、そのことに関する記憶を消去された。
- 名前が舌打ちの音に似ているために誤解されてしまうことがしばしばある。
- エルジェ
- 作者本人。様々な場面においてカメオ出演している。BS放送時には「エルジェを探せ」という、彼の出演した場面を探すコーナーがあった。
用語
[編集]ストーリー内にたびたび登場する地名・組織・架空の国を紹介する。シリーズ初期の頃は実在の国を舞台した作品が多かったが、中盤以降は架空の国が舞台になる事の方が多くなっていった。
- サン・テオドロス(San Theodoros)
- 南米の架空国家。主なモデルはボリビアとされる。共和制で、首都はラス・ドピコス(のちにタピオカポリスになり、さらにその後アルカサロポリスになる。)。政敵同士のアルカサル将軍とタピオカ将軍が政権争いを度々繰り広げており、タンタンが巻き込まれてしまうことがしばしばある。特に『タンタンとピカロたち』ではボルドリアの支援を受けたタピオカ政権によって「ピカロ党」殲滅作戦の標的にされてしまった。長らく大統領はタピオカ将軍であったが、タンタンの協力によってアルカサル将軍が政権の奪取に成功、現大統領である。
- 原住民には、アルンバヤ族などがいる。
- ヌエボリコ(nuevorico)
- 南米の架空国家。サン・テオドロスとはライバル。主なモデルはパラグアイとされる。モガドル将軍が政権を持つ。
- シルダビア(Syldavia)
- 東欧に位置する架空国家。主なモデルはユーゴスラビアとされる。君主制で、首都はクロウ。現君主はムスカル12世である。「オトカル様の杖賭けて!」というセリフがあるようにオトカルをとても崇めている模様。
- かつて長い間、隣国ボルドリアの支配下に置かれ続けたのち、オトカル王の蜂起により独立したという因縁の過去を持つ事もあり、ボルドリアとは今もライバル関係にある。王位の象徴として「オトカル王の杖」があり、これを失うと王はその資格を失うという決まりがある。
- 主な生産品はミネラルウォーターで、水を主に飲んでいる国民性からか酒に関しての税金は高くハドックには文句を言われていた。国内にあるツミルパチア山脈には莫大な量のウラン鉱脈があり、『めざすは月』では、ビーカー教授を招いて月ロケットの開発をしている。『ビーカー教授事件』では震動兵器を奪うべくビーカー教授を拉致するなど技術の発展を進めている面が見られる。
- ボルドリア(Borduria)
- 架空国家。主なモデルはナチス・ドイツとされ、国名はブルガリアをモチーフに作者が考案したとされる。首都はショホド。「アマイフ様のヒゲ賭けて!」というセリフがあるようにアマイフをとても崇めている模様。
- シルダビア国とはライバル関係となっている。
- 「ビーカー教授事件」で戦いの舞台になった国。振動兵器を奪おうとするが、タンタン達の妨害により失敗。
- ケメド・アラブ国
- 架空の国家。主なモデルはサウジアラビアとされる。首都はワデスダー。現在の首長はベン・カリシュ・エザブ。
- ベルギーには石油を輸出している。
- 『燃える水の国』で登場し、当時は内乱で、政府とバブエルエル率いる反乱軍とが戦っていた。(スミス教授と名乗った)ドクター・ミュラーによって輸出する石油を爆発する石油に変えられていた。
- 『紅海のサメ』では、バブエルエルが政権を取っていたが、最後に首長が政権を取り返した。
ゆかりの場所
[編集]- シュヴェルニー城
- ハドック船長が「レッド・ラッカムの宝」で手に入れ、その後の住まいになったムーランサール城は、フランスのロワール=エ=シェール県にあるシュヴェルニー城(Cheverny)がモデルになっている。シュヴェルニー城にはタンタンの常設展があり、本の中に出てくるサメの形の潜水艦(サメマリン号)があったり、作中の色々な場面が様々な部屋で再現されたりしている。
- ストッケル駅
- ブリュッセル地下鉄ストッケル駅の構内の壁一面に、タンタンの登場人物たちの絵が描かれている(画像)。
- ベルギー漫画センター
- ブリュッセルにあるベルギー漫画センター(Centre Belge de la Bande Dessinée)にはタンタンとスノーウィの銅像がある。
カフェ&レストラン
[編集]公式なものではないものの、タンタンをモチーフにしたり、あるいはグッズや絵本、メニューなどに出てくるカフェ、ダイニング、バーなどが世界各地にある。
- petite abeille
- ニューヨークにあるダイニング・カフェ。タンタンの壁画や本のあるベルギーカフェがあり、世界中からタンタン・ファンが集まる。所在地:134 W.Broadway New York, NY 10013-3328
タンタン・ショップ
[編集]日本の「タンタンの冒険」関連グッズ専門店は、2020年1月に京都店が閉店したため、2020年2月現在は東京都渋谷区と群馬県前橋市にのみ存在する[6]。
映像化作品
[編集]1940年代
[編集]2009年現在、タンタン最初の映像化作品として確認されているのは1946年から1947年にかけてベルギーのマペット作家であるクロード・ミソンヌ(Claude Misonne)による人形劇映画が最古とされている。3本製作された人形劇のうちの1編の「金のはさみのカニ」(The Crab with the Golden Claws)は、2005年にブリュッセルで開催されたタンタン・フェスティバルで記念上映された。動画HP
1950年代から1970年代
[編集]ブリュッセルのアニメーションスタジオであるベルヴィジョン・スタジオは、1955年頃にモノクロ版で『かけた耳』と『オトカル王の杖』の2本のアニメーション・フィルムを製作しているが、現時点で現存しているかどうかは不明。
その後1958年から1963年に掛けて、ベルヴィジョンはフランスのTele-Hachetteと組み、人気の高い原作を元にした5分間のカラーのテレビアニメ「Les Aventures de Tintin, d'après Hergé」(Hergé's Adventures of Tintin)を製作している。原作となったエピソードは以下の通り。
- 『黒い島のひみつ』
- 『ふしぎな流れ星』
- 『金のはさみのカニ』
- 『なぞのユニコーン号』と『レッド・ラッカムの宝』
- 『ビーカー教授事件』
- 『めざすは月』と『月世界探検』
なお1964年には、TVシリーズの『ビーカー教授事件』を約1時間に編集したアニメも制作されたという。
同じく1964年には日本のフジテレビ系で放映された。アメリカから輸入されたため、タイトルはTINTINを英語発音した「チンチンの冒険」となっており、またレイ・グーセンス監督によるTVシリーズなのか、それ以前の50年代半ばに作られたミニ・シリーズの編集版なのかは現在のところ不明とされている。
1969年にはタンタンの長編アニメーション映画『Tintin et le temple du Soleil(カートゥーン ネットワーク放映タイトル:ななつの水晶球と太陽の神殿)』と1972年に『Tintin et le lac aux requins』(Tintin and the Lake of Sharks、カートゥーン ネットワーク放映タイトル:呪われた湖の謎)) の劇場版アニメが制作された。
1990年代
[編集]19年後の1991年から1992年にかけて、カナダのアニメーション製作会社のネルバナとフランスのEllipseによりカナダ・フランス合作のテレビアニメ「Les Aventures de Tintin」(The Adventures of Tintin、邦題:『タンタンの冒険』)が制作された。「ソビエト」「コンゴ」「アルファアート」以外のエピソードがアニメ化されている。1998年にはNHK衛星第2テレビにて水曜18:00から放送され、VHSカセットは1997年7月22日にアスミックからよりぬき方式にて発売。カートゥーン ネットワークでは2010年から、4:3映像(SD)であるオリジナル映像に対して上下カット処理をして16:9サイズ化し、さらに画素変換(約34万画素→約210万画素)アップコンバートを施す事でHD映像化されたHDリマスター版が放送され、それを収録したDVDが2011年11月4日にTCエンタテインメントから発売。現在日本国内で一般的に知られているタンタンのアニメ作品となっている。
21世紀
[編集]2007年5月14日、スティーヴン・スピルバーグ監督率いるドリームワークスが『タンタンの冒険』をモーションキャプチャを用いたフルデジタル3Dアニメーションで映画化することを発表した。これは企画段階でアニメを実写化することには限界があると監督自身が考えた上でCGで描く事となった。スピルバーグは第1作「なぞのユニコーン号」を2011年に公開することを目標に、タンタンの3部作をピーター・ジャクソンと共同で2009年1月から撮影を開始した。ジェイミー・ベルがタンタンを、アンディ・サーキスがハドック船長を、ダニエル・クレイグが敵役である海賊レッド・ラッカム役の声で出演する。音楽はジョン・ウィリアムズに決定した。
実写版
[編集]1960年と1964年にはオリジナル・ストーリーの実写版映画も2本製作されている。
- タンタンとトワゾンドール号の神秘(Tintin et le mystère de la Toison d'or)、動画
- タンタンと水色のオレンジ(Tintin et les oranges bleues)、動画
この2作ではジャン・ピエール・タルボがタンタンを演じている。
中国での出版差し止め
[編集]2001年に「タンタンチベットをゆく」の中国語版が「タンタン中国のチベットをゆく」と題名を著作権者に無断で変えられたため、出版が一時停止された[7]。
関連書籍
[編集]- 著者:マイクル・ファー・翻訳:小野耕世による『タンタンの冒険 その夢と現実』(原題『TINTIN The Complete Companion』)が、2002年に刊行された。マイクルによる全24作品の解説本で、当時日本語版が未発売だった「ソビエト」「ピカロたち」「アルファアート」などについても詳細に踏み込んでいる。
- 『タンタンの冒険 その夢と現実』2002年3月1日発行、ISBN 4-9901097-0-8
脚注
[編集]- ^ 福音館書店. “福音館書店|タンタンの冒険ラインナップ”. 2013年8月2日閲覧。
- ^ 大人の女性が「タンタンの冒険」原作にハマる最大の理由とは?、INTERNATIONAL BUSINESS TIMES、2011年12月8日6時0分更新。
- ^ 最終巻『Tintin et l'Alph-Art』(1986年)の解説より。
- ^ 元々なハドック登場以前の1940年に発表される予定の作品であったが、ナチス・ドイツによる侵略の影響で一旦企画が白紙になってしまい、戦後のタンタン・マガジンで連載が開始されるまでお蔵入りの状態にあった。
- ^ ビーカー教授 TINTIN JAPAN
- ^ 国内タンタン・ショップ一覧
- ^ フランソワーズ・ポマレ「チベット」創元社、2003年、103頁
関連項目
[編集]- タンタンと私 - エルジェの生涯を描いたドキュメンタリー映画
- 千葉銀行:タンタンを自行のキャラクターに使用。
- リオの男:1963年のフランス映画。脚本家は、タンタン・シリーズのうち「かけた耳」「タンタン アメリカへ」「青い蓮」などを元ネタにしたことを明らかにしている。
- 大貫妙子:1985年発表のアルバム『コパン』の1曲目に本人の作詞・作曲による「Les aventures de TINTIN(タンタンの冒険)」を所収。スノーウィとハドック船長が歌詞に出演。
- ディルク・ブロッセ:ベルギーの指揮者、作曲家。タンタン・シリーズのうち「ななつの水晶球」「太陽の神殿」によるミュージカル『タンタン』を作曲した。
参考文献
[編集]- Dictionnaire amoureux de Tintin、Albert Algoud著(2016年、Plon出版)
- Le Dictionnaire Tintin、Renaud Nattiez著(2017年、Honoré Chompion出版)
外部リンク
[編集]- Tintin.com:ベルギーの公式サイト
- TINTIN JAPAN:日本公式サイト
- 福音館書店 「タンタンの冒険」シリーズ:日本語翻訳版出版社サイト