パパ・ヘミングウェイ
『パパ・ヘミングウェイ』 | ||||
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加藤和彦 の スタジオ・アルバム | ||||
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レーベル | ワーナー・パイオニア | |||
プロデュース | 加藤和彦 | |||
チャート最高順位 | ||||
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加藤和彦 アルバム 年表 | ||||
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『パパ・ヘミングウェイ』収録のシングル | ||||
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『パパ・ヘミングウェイ』(PAPA HEMINGWAY)は、1979年10月25日加藤和彦の5枚目のソロ・アルバムである。 加藤のワーナー・パイオニア移籍第1弾作品で、安井かずみとのコンビによるコンセプト・アルバム『ヨーロッパ三部作』[注釈 1]の1作目としてバハマとマイアミでレコーディングされた。
に発売された解説
[編集]『パパ・ヘミングウェイ』は、アーネスト・ヘミングウェイの生涯をテーマにしたアルバムである。以前からヘミングウェイの作品を愛読していた[注釈 2]加藤と安井は、ヘミングウェイが生きた時代の世界観を表現するため、多数の資料にあたって時代考証の正確さを期すべく準備を重ねたうえで楽曲を作り[2]、作家ゆかりの地であるナッソーのコンパス・ポイント・スタジオと、マイアミのクライテリア・スタジオ[注釈 3]でレコーディングを行なった。当時、海外レコーディングといえば現地のミュージシャンを起用することが通例だったが、加藤はサディスティック・ミカ・バンドからの僚友である小原礼と高橋幸宏、前作『ガーディニア』にも参加した坂本龍一、そして高橋と坂本が所属するYMOのツアーサポートメンバーとなる大村憲司を海外に同行させて合宿によるレコーディング[注釈 4]を敢行し、ミュージシャンが日常生活から解き放たれ、現地の空気に触れることで生まれるテンションの高まりをアルバム制作に活かそうとした[3]。レコーディング・スケジュールは、日本から持参した楽曲をもとにバハマで詞を書き、同地でリズム体を収録し、マイアミでストリングス、ホーン、キーボードなどを加え[注釈 5][注釈 6]、東京で最終的なオーバーダビングが行われた。なお、本作のレコーディングではヴォーカルやストリングス、ホーンなどの収録にダブルトラックが多用されている。
本作収録曲のうち、「アドリアーナ」「サン・サルヴァドール」「ジョージタウン」「アラウンド・ザ・ワールド」の4曲は、2017年 リリースの高橋幸宏監修・選曲によるコンピレーション・アルバム『ヨーロッパ三部作・ベストセレクション』[6]に収録された。
アートワーク
[編集]アート・ディレクションは奥村靫正が手がけ、フロント・カバーは礼服をモチーフにデザインされた。バック・カバーと歌詞カードにはトシ矢嶋が撮影した海外滞在時のスナップや南国をイメージしたイラストなどがコラージュされている。バック・カバーの写真は加藤がバハマの海岸の波打ち際にうつ伏せになって撮影したもので[注釈 7]、歌詞カードには今野雄二が失われた世代などに言及したライナーノーツを書いている[8]。これらは1988年 に本作が初めてCD化された際に金子國義デザイン[9]のものに変更されたが、2004年のリイシューで再び元のデザインに戻されている。なお、初発売時のレコード帯には、以下のキャッチコピーが記載されていた。
- 日本のロック・シーンに於いて最先端を行く男、加藤和彦のワーナー・ブラザーズ[注釈 8]移籍第1弾!!
- 洒落たセンスと色彩感溢れる音創り、最高にポップなアルバムがこれだ。
帯のコピーはCBSソニー移籍後の1983年 再発に際し、以下の通り変更された。
- ★日本のロック・シーンに於いて最先端を行く男、加藤和彦。
- 洒落たセンスと色彩感溢れる音創り、最高にポップなアルバムがこれだ
リミックス
[編集]『ヨーロッパ三部作』のリリースが完結した翌年の1982年デジタル・リミックスを施したコンピレーション・アルバム『アメリカン・バー』がワーナー・パイオニアから発売された。これは全体の音像、イントロ、ヴォーカルなどにオリジナル・ミックスと異同が見られるもので、一例としては、本作から選曲された「レイジー・ガール」に入っていた佐藤奈々子のヴォーカルがカットされている点が挙げられる。このリミックス音源は加藤がソニー移籍後の1985年 リリースのコンピレーション・アルバム『Le Bar Tango』や、1988年 と2004年 の『ヨーロッパ三部作』リイシューでも用いられたが、2014年 に初出時のオリジナル音源が初CD化された。
、三部作から選ばれた曲に収録曲
[編集]- 全作詞:安井かずみ、全作編曲:加藤和彦
- アナログ・レコードでは#1~4までをA面、#5~9をB面にそれぞれ収録。
- 曲名と楽曲の時間表記は初出アナログ・レコードに基づく。
- スモール・キャフェ (SMALL CAFÉ) – (5:09)
- タンゴ風の楽曲。加藤によれば、この曲はヨーロッパ三部作を作るきっかけになった作品で、バハマでのセッションの最後に偶然できた唯一のヨーロッパ的な曲だという[2]。
- メモリーズ (MEMORIES) – (5:16)
- アドリアーナ (ADRIANA) – (4:53)
- ヘミングウェイと親交があったイタリア人女性、アドリアーナ・イヴァンチッチ[10]をモデルにした楽曲。
- サン・サルヴァドール (SAN SALVADOR) – (3:41)
- サン・サルバドル島を舞台にした楽曲。
- ジョージタウン (GEORGETOWN) – (4:42)
- ガイアナの港町を舞台にした楽曲。
- レイジー・ガール (LAZY GIRL) – (5:25)
- アラウンド・ザ・ワールド (AROUND THE WORLD) – (4:25)
- この楽曲は加藤のワーナー移籍第1弾シングルとして、#5との両A面扱いでリリースされた。
- アンティルの日 (THE DAY OF ANTILLES) – (2:22)
- アンティル諸島を舞台にしたカリプソ風のインストゥルメンタル。
- メモリーズ (リプライズ) (MEMORIES-REPRISE) – (1:48)
- #2のアウトロにあたるインストゥルメンタル。原曲とはミキシングが異なっている。
ボーナス・トラック
[編集]- 2014年リットーミュージックから発売されたCD付き書籍『バハマ・ベルリン・パリ ヨーロッパ3部作』の当該CD(RMKS-005)には以下のボーナス・トラックが2曲追加されている。 に
- 時間表記は前記CDに基づく。
- ソルティ・ドッグ (SALTY DOG) – (4:18)
- アラウンド・ザ・ワールド – ダブ・ヴァージョン (AROUND THE WORLD – DUB VERSION) – (3:54)
クレジット
[編集]- All Songs Written, Arranged, Sung & Produced by Kazuhiko Kato
- Lyrics by Kazumi Yasui
- Strings & Horns Arranged by Ryuichi Sakamoto
- Strings & Horns Coordinated by Mike Lewis
- Executive Producer – Ikuzo Orita
- Special Production Collaboration by Yoshiaki Nitta, Music Unlimited Ltd.
- Album Recorded
- Compass Point Studios, Nassau, Bahamas
- Criteria Recording Studios, Miami, Florida. U.S.A
- Hitokuchizaka Studios, Tokyo, Japan
- Engineers
- Jack Nuber & Steve Stanley (Compass Point)
- Jerry Masters (Criteria)
- Kazuo Shima (Hitokuchizaka)
- Assistant Engineers
- Cass Rigby & Horace Pierre (Compass Point)
- Sam Tayler (Criteria)
- Masayoshi Okawa & Masato Kitagawa (Hitokuchizaka)
- Album Remixed at Hitokuchizaka Studios, Tokyo
- Engineers – Kazuo Shima & Kazuhiko Kato
- Assistant Engineer – Masato Kitagawa
- Mastered at Hitokuchizaka Studios, Tokyo
- Engineer – Kazuo Shima
- Cover & Inside Liner Designed by Yukimasa Okumura/THE STUDIO
- Photos by Toshi Yajima
ミュージシャン
[編集]- Kazuhiko Kato – Vocal, Guitar, Wood Block, Whistle
- Kenji Omura – Guitar, Vibraslap, Cabasa
- Ray Ohara – Bass
- Yukihiro Takahashi – Drums, Bell, Tambourine
- Ryuichi Sakamoto – Acoustic Piano, Fender Rhodes, Wurlitzer Organ, Clavinet, Synthesizer, Vocoder
- Mike Lewis[注釈 9] – Alto Saxophone (#3, #4)
- Mark Colby[注釈 10] – Tenor Saxophone (#5)
- Cecil Dorsett – Steel Drums (#2, #8)
- Chuei Yoshikawa – Mandolin (#1)
- Nanako Sato – Vocal Accompaniment (#6)
- Miami Chamber Orchestra (#1)
- Miami Strings Ensemble (#2, #9)
- Miami Brass Ensemble (#8)
- Yukihiro Takahashi & Ryuichi Sakamoto Appears Through the Courtesy Yellow Magic Orchestra/Alfa Records.
- Nanako Sato Appears Through the Courtesy of Nippon Columbia Co.
発売履歴
[編集]形態 | 発売日 | レーベル | 品番 | アートワーク | 解説 | リマスタリング | 初出/再発 | 備考 |
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LP |
1979年10月25日 | ワーナー・パイオニア | K-10019W | 奥村靫正 | 今野雄二 | なし | 初出 |
A式ジャケット |
LP |
1983年 | 9月21日CBS/SONY | 28AH1651 | 奥村靫正 | 今野雄二 | なし | 再発 |
E式ジャケット 真空パッケージ |
1979年10月25日 | ワーナー・パイオニア | LKF-5032 | 奥村靫正 | なし | なし | 初出 |
ドルビーシステム仕様 | |
CT |
1983年 | 9月21日CBS/SONY | 28KH1357 | 奥村靫正 | なし | なし | 再発 |
ドルビーシステム仕様 |
CD |
1988年 | 4月 6日EASTWORLD | CT32-5164 | 金子國義 | なし | 加藤和彦 | 初出 |
デジタル・リミックス |
CD |
2004年10月20日 | オーマガトキ (卸販売:CME) | OMCA-1032 | 奥村靫正 | 今野雄二/岩本晃市郎/加藤和彦 | 加藤和彦 | 再発 |
デジタル・リミックス/紙ジャケット |
CD |
2014年 | 3月20日リットーミュージック | RMKS-005 | 奥村靫正 | 今野雄二/折田育造/牧村憲一/大川正義 | 大川正義 | 再発 |
ボーナストラック2曲/CD付き書籍 |
CD |
2015年 | 5月20日日本コロムビア | COCP-39094 | 奥村靫正 | 今野雄二/立川直樹 | 大川正義 | 再発 |
参考文献
[編集]- 海野弘『四都市物語 ‐ ヨーロッパ・1920年代』冬樹社、1979年10月。
- 『POPEYE no.72. 1980年2月10日号』平凡出版、1980年2月。
- 『BRUTUS no.4. 1980年9月15日号』平凡出版、1980年9月。
- 『加藤和彦スタイルブック あの頃、マリー・ローランサン』CBSソニー出版、1983年11月。ISBN 978-4-78-970111-2。
- 安井かずみ・加藤和彦『ワーキングカップル事情』(文庫版)新潮社、1986年3月。ISBN 978-4-10-145101-5。
- ジャネット・フラナー 著、宮脇俊文 訳『パリ・イエスタデイ』白水社、1997年10月。ISBN 978-4-56-004640-1。
- 石一郎『ヘミングウェイと女たち』南雲堂、2003年2月。ISBN 978-4-52-326413-2。
- 『ミュージック・マガジン 2004年6月号』株式会社ミュージック・マガジン、2004年6月。
- 平地勲 編『金子國義の世界 (コロナ・ブックス)』平凡社、2008年7月。ISBN 978-4-58-263439-6。
- 『ミュージック・マガジン 2009年12月号』株式会社ミュージック・マガジン、2009年12月。
- 松木直也 (聞き手・構成) 編『加藤和彦 ラスト・メッセージ』文藝春秋、2009年12月。ISBN 978-4-16-372280-1。
- 文藝別冊 編『加藤和彦 あの素晴しい音をもう一度』河出書房新社、2010年2月。ISBN 978-4-30-997731-7。
- 前田祥丈 (聞き手・構成) 編『エゴ〜加藤和彦、加藤和彦を語る』スペースシャワーネットワーク、2013年7月。ISBN 978-4-90-670088-2。
- 牧村憲一 (監) 編『バハマ・ベルリン・パリ〜加藤和彦 ヨーロッパ3部作』リットーミュージック、2014年3月。ISBN 978-4-84-562367-9。
- 今村盾夫・真鍋晶子『ヘミングウェイとパウンドのヴェネツィア』彩流社、2015年1月。ISBN 978-4-77-917026-3。
- 高橋健太郎『スタジオの音が聴こえる 名盤を生んだスタジオ、コンソール&エンジニア』DU BOOKS、2015年6月。ISBN 978-4-90-758351-4。
- ギター・マガジン 編『大村憲司のギターが聴こえる』リットーミュージック、2017年2月。ISBN 978-4-84-562991-6。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 『パパ・ヘミングウェイ』(1979年うたかたのオペラ』(1980年 )、『ベル・エキセントリック』(1981年 )からなる海外レコーディングによる3枚のアルバム。加藤によれば、自分たちの音楽も結局は戦前のヨーロッパの人たちがやっていたことのコピーに過ぎないとし、これらもあえてそれらと対峙するつもりで作ったもので、当初は三部作としての意図はなかったという(『加藤和彦コレクション』 CD:OMCX-1032〜34 オーマガトキ 2004年 封入解説書およびフライヤーより)。 )、『
- ^ 加藤が最も好きなヘミングウェイの作品は『海流のなかの島々』である[1]。
- ^ このスタジオは本作に先立ち、1976年発表の加藤のソロ・アルバム『それから先のことは…』の録音に使用されている。
- ^ 加藤はヨーロッパ三部作の海外レコーディングを「高級合宿」と称していた[2]。
- ^ 加藤はマイアミでストリングスの収録を行なったことについて、彼の地にはオーケストラをリタイアしたプレイヤーが多く居住していて、ストリングスのレコーディングに好都合であることを理由に挙げている[4] 。
- ^ マイアミでの収録は波乱含みで進行した。まず、当初参加を要請する予定だったマイアミ在住のスタジオ・ミュージシャンたちが、ビージーズのツアーのために出払ってしまい、一時はレコーディングが危ぶまれたが、加藤のソロ・アルバム『それから先のことは…』の制作にも参加していたサックス奏者のマイク・ルイスが急遽地元のミュージシャンを招集して事なきを得た。また、このセッションでは坂本龍一が編曲を担当したが、譜面をバハマからマイアミへの移動中に仕上げなくてはならず、結局譜面が完成したのはセッション初日の朝だったという[5]。
- ^ 加藤は迫る夕闇と打ち寄せる波、蚊の来襲に悩まされたと述懐している[7]。
- ^ 正式な社名は『ワーナー・ブラザース』だが、帯の表記には濁点が付いている。
- ^ マイク・ルイス – アメリカのサックス奏者。1970年代にはKC&ザ・サンシャイン・バンドのオリジナル・メンバーとして活動していた。加藤のソロ・アルバム 『それから先のことは…』 のレコーディングにもアレンジャーとして参加している。
- ^ マーク・コルビー – アメリカのサックス奏者。リーダー・アルバムとして『Serpentine Fire』(1978年)などを発表したほか、メイナード・ファーガソンのバンドメンバーとしても活動した。ドクター・ジョンやビル・ワイマンなどのアルバムにも参加している。
出典
[編集]- ^ 加藤 & 松木 2010, p. 147.
- ^ a b c 加藤 & 前田 2013.
- ^ 安井 & 加藤 1986.
- ^ MM 2004, p. 40.
- ^ a b 牧村 2014.
- ^ 『ヨーロッパ三部作・ベストセレクション』 2017年10月25日 発売 UNIVERSAL MUSIC JAPAN CD:UPCY-7443
- ^ 加藤 1983, p. 44.
- ^ 海野 1979.
- ^ 金子 2008, p. 40.
- ^ 『ヘミングウェイと女たち』 / 『ヘミングウェイとパウンドのヴェネツィア』
外部リンク
[編集]- 日本コロムビア
- パパ・ヘミングウェイ – DISCOGRAPHY