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ミョルニル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
18世紀の写本『NKS 1867 4to』に描かれた、トールとミョルニル。
エーランド島で出土した、ミョルニルを象ったペンダント。

ミョルニルMjölnirミョッルニル 古ノルド語: Mjǫllnir IPA: [ˈmjɔlːnir] )は、北欧神話に登場するトールが持つトールハンマーという名でも知られる)である。

名称は古ノルド語で「粉砕するもの」を意味し[1]、思う存分に打ちつけても壊れることなく、投げても的を外さず再び手に戻る、自在に大きさを変え携行できるといった性質を持つが、柄がかなり短いという欠点もあった[2]

神話ではミョルニルはしばしば真っ赤に焼けているとされ、これを扱うためにはヤールングレイプルという製の手袋が必要だとされる[3]

神話

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ミョルニルはドワーフの兄弟ブロックとエイトリ(シンドリ)が、イールヴァルディの息子たちよりも優れた物を作り出せるかという競い合いの際にグリンブルスティドラウプニルと共に作られ、トールに献上され[2]、彼の所有物となり、多くの巨人を打ち殺したため、霜の巨人や山の巨人はミョルニルが振り上げられる音でそれが分かるといわれる[4]

その威力は凄まじく、一撃で死亡しなかった生物は世界蛇ヨルムンガンドぐらいであり(『ヒュミルの歌[5])、スカルド詩の『トール讃歌』では、巨人のゲイルロズがトールにミョルニルを持たずに自分の屋敷に来るようにと告げたという話が詠われている。

ミョルニルは相手を打つためだけに使われるものではなく、トールの戦車を引く2頭の牡山羊(タングリスニとタングニョースト)を食べても、骨さえ無事ならミョルニルを振るえば生き返らせることができた[6][注釈 1][注釈 2]。また、バルドル葬儀の際、火葬するための火を浄化するためにも用いられた[7]。『スリュムの歌』ではスリュムという巨人がミョルニルを盗み、フレイヤとの交換を要求するが、フレイヤに変装した花嫁姿のトールを聖別するために、隠していたミョルニルを花嫁(トール)の膝に乗せたため、ミョルニルを取り返されて頭を砕かれるという顛末が描かれている[8]

文化

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トールは、ローマ神話の雷神ユピテルと同一視されており、ゲルマン人はユピテルが司る木曜日をトールの日とした。木曜日は最も神聖な日とされており、オーディンが司る水曜日よりも格の高い日とされていた。

雷鳴の轟はトールの乗った戦車が天空を駆け巡る音、雷はミョルニルを投げつけた閃光と信じられ、空を支配する最強の神として崇拝されていた。また、雷雨は植物を成長させることから「農耕の神」としても崇められていた。

ミョルニルを象ったレプリカはスカンディナヴィアの広い地域でポピュラーで[9]、結婚式をはじめとする祭式で使われる[10]

ミョルニルは男性器を象徴しているともいわれる。

ボルボ・カーズでは2010年代からLEDヘッドライトにハンマーを横倒しにした意匠『トールハンマー』を取り入れている。

脚注

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注釈

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  1. ^ しかし骨の髄を傷つけてしまうとその骨は傷んだままとなり、完全に生き返らせることは不可能となる。
  2. ^ この能力はケルト神話に登場する巨神ダグザの持っていた棍棒と同じ能力である。

出典

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  1. ^ 『エッダ 古代北欧歌謡集』51頁。
  2. ^ a b スノッリのエッダ』の「詩語法」より(『「詩語法」訳注』41-43頁。
  3. ^ 『少年少女世界の名作文学 第39巻 北欧編2』、1967年、小学館、ASIN B000JBPPIW、371頁(篠原雅之「北欧神話」(トールの失敗))。
  4. ^ 「ギュルヴィたぶらかし 21章」(『エッダ 古代北欧歌謡集』243頁)
  5. ^ 『エッダ 古代北欧歌謡集』77-78頁。
  6. ^ 『ギュルヴィたぶらかし』(『エッダ 古代北欧歌謡集』261頁)など。
  7. ^ 『ギュルヴィたぶらかし』(『エッダ 古代北欧歌謡集』272頁)。
  8. ^ 『エッダ 古代北欧歌謡集』89-92頁。
  9. ^ ごく最近になってやっと解明が進んだ10のミステリー”. exciteニュース (2014年12月12日). 2020年4月25日閲覧。
  10. ^ 『詩のエッダ』「ヒュミルの歌」に、夫婦となるものの膝の前にミョルニルを置き、早嫁を浄める儀式に使った模様が描かれている

参考文献

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関連項目

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