ヘルヘイム
ヘルヘイム(古ノルド語: Helheim)は、北欧神話に登場する世界のひとつで、ロキの娘・ヘルが治め、ユグドラシルの地下にあるといわれる死者の国。三層構造の世界の一番下の層である。
時に「ヘル」(『アルヴィースの言葉』第32節[1]など)、「ニヴルヘル」(『ヴァフスルーズニルの言葉』第43節[2]など)とも呼ばれる。
ヘル(ヘルヘイム)は霧の世界であるニヴルヘイムの一部だが、ニブルヘイム全体と同一視されることもある。
注意すべき点は、英語のヘル(地獄)とは違い、北欧神話のヘル(ヘルヘイム)は、あくまでヴァルハラに行か(け)なかった一般的死者(病気や老衰や無抵抗で殺された者=「藁の上の死」という不名誉な死に方をした者)が赴く冥府であり、刑罰がある地獄ではないということである。
ニブルヘイムの中央には、煮えたぎるフウェルゲルミルの泉があり、怪物ニーズホッグがいる。泉からは、スヴォル川、グンスラー川、フィヨルム川、フィンブルスル川、スリーズ川、フリーズ川、シュルグ川、ユルグ川、ヴィーズ川、ギョッル川、が流れ出ている。
このうちギョッル川には、(暗く深い谷から続く先にある)黄金の橋が架かっており、モーズグズという処女の門番が見張りをしている。死者達は皆この橋を渡ってヘル(ヘルヘイム)に赴く。
ヘル(ヘルヘイム)はそこからさらに下って北方にある。そこに女神ヘルの住むエリューズニルという巨大な館がある。館は高い垣根で囲まれており、垣根の入り口には大きな門があり、ガルムという怪物の番犬がいる。この垣根の内側が(狭義の)ヘル(ヘルヘイム)である。
ヘル(ヘルヘイム)のさらに下には、ニヴルヘルという冥界があり、悪い人間が死後に送られるとされる。
脚注
[編集]関連項目
[編集]参考文献
[編集]- V.G.ネッケル他編『エッダ 古代北欧歌謡集』谷口幸男訳、新潮社、1973年、ISBN 978-4-10-313701-6。