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ラジ・レディ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ラジ・レディ
生誕 (1937-06-13) 1937年6月13日(87歳)
インドの旗 インド アーンドラ・プラデーシュ州 Katur
居住 インドの旗 インドアメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
国籍 インド系アメリカ人
研究分野 人工知能
ロボット工学
マンマシンインタフェース
研究機関 カーネギーメロン大学
スタンフォード大学
Rajiv Gandhi University of Knowledge Technologies
出身校 ギンディ工科大学英語版
ニューサウスウェールズ大学
スタンフォード大学
博士課程
指導教員
ジョン・マッカーシー
博士課程
指導学生
James K Baker[1]
Kai-Fu Lee[1]
主な受賞歴 レジオンドヌール勲章 (1984)
チューリング賞 (1994)
パドマ・ブーシャン (2001)
プロジェクト:人物伝
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ラジ・レディDabbala Rajagopal "Raj" Reddy1937年6月13日 - )はインド系アメリカ人の計算機科学者で、計算機科学と人工知能の先駆者の1人であり、スタンフォード大学カーネギーメロン大学 (CMU) で40年間研究を行っている[2]。CMUではロボティクス研究所英語版の初代所長を務めた。インドでは低所得層や地方の有能な若者の教育のため Rajiv Gandhi University of Knowledge Technologies の創設に貢献した。インド情報技術大学ハイデラバード校英語版の運営評議会会長も務めている。人工知能での業績が認められ、1994年アジア系で初めてチューリング賞を受賞した。2012年現在はカーネギーメロン大学計算機科学科で計算機科学とロボット工学の教授を務めている。

経歴

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インドチェンナイ近郊の Katur で生まれた。1958年、インドのマドラス大学を卒業後、交換留学生としてオーストラリアに移り住む。オーストラリアのニューサウスウェールズ大学で土木工学の修士号を取得し、1960年からオーストラリアのIBMで働いた[2]。その後アメリカに渡り、1966年にはスタンフォード大学で計算機科学の博士号を取得した。彼は、ジョン・マッカーシーの下で博士号を取得した最初の学生でもある。

1966年から1969年までスタンフォード大学で計算機科学の助教授を務めていた[3]。1969年にカーネギーメロン大学の準教授となる。1973年に正教授となり、1984年に大学教授 (University Professor) となった[4]

1979年から[5]1991年まで[3]カーネギーメロン大学ロボティクス研究所英語版の初代所長務め[6]、1991年から1999年まで計算機科学部の学部長を務めた。学部長として Language Technologies Institute、Human Computer Interaction Institute、Center for Automated Learning and Discovery(後に機械学習科に改称)、Institute for Software Research の創設に関与した。インドでは、インド情報技術大学ハイデラバード校英語版の運営評議会会長を務め[7]Rajiv Gandhi University of Knowledge Technologies の学長と運営評議会会長を務めている[8]

1999年から2001年まで、ビル・クリントン大統領のための情報技術諮問委員会 (PITAC) の共同議長も務めた[9][10]アメリカ人工知能学会設立にも尽力し[11]、1987年から1989年まで会長を務めた[12]。また、イスラエルのペレス平和センター英語版の国際理事会の理事も務めている[13]。インドの過疎地での効率的医療を技術革新で可能にすることを目的とするEMRI[14]とHMRI[15]の運営委員も務めている。

研究

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レディの初期の研究は当初は大学院生として、後には助教授として1969年にCMUに移るまでスタンフォード大学人工知能研究所で行われた[16]。主に知覚と運動の面を研究し、会話、言語、視覚、ロボット工学などを主題としていた。30年に渡り、レディと同僚らは言語の発声に関するシステムの歴史的デモンストレーションをいくつか行っている。例えば、ロボットの音声制御[17]、大規模な語彙を接続した音声認識[18][19]、話者を選ばない音声認識[20]、語彙を制限しない音声認識[21]などがある。また、タスク指向コンピュータアーキテクチャ[22]、自然風景の分析[23]、情報への普遍的アクセス[24]、自律ロボットシステム[25]といった分野でも独創的な貢献をしている。Hearsay I は連続的な音声認識が可能な世界初のシステムで、後継の Hearsay II、Dragon、Harpy で現代の商用音声認識技術の基盤となる様々なアイデアを具現化していった。中でも複数の知識源をうまく扱う "blackboard model" は、様々な人工知能の領域で応用されている[26]

他の主要な関心領域として「社会サービスにおけるテクノロジー」の役割の研究がある[25]。その分野での初期の試みとしては、1981年にフランスで Jean-Jacques Servan-Schreiber が設立した“Centre Mondial Informatique et Ressource Humaines”がある。これには技術チームとしてニコラス・ネグロポンテアラン・ケイシーモア・パパートテリー・ウィノグラードが関わり、レディは同センターのチーフサイエンティストを務めた[27]。また1980年代のこととしては他に、1メガバイトの主記憶・1メガピクセルのディスプレイ(1024x1024)・1MIPSのCPUを要求する「3M computer」という、当時の水準として見ると「高スペックのワークステーション」の目安を具体的に示した、というものがある(詳細は英語版 en:3M computer を参照)。

最近の研究のひとつとして "Universal Digital Library Project" がある[24]。このプロジェクトはあらゆる書籍を電子化することを目標としている[28]

賞と栄誉

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また、全米技術アカデミーアメリカ芸術科学アカデミー中国工程院、インド科学アカデミー、インド工学アカデミーの会員である[3]。Sri Venkateswara University、アンリ・ポアンカレ大学、ニューサウスウェールズ大学、Jawaharlal Nehru Technological University、マサチューセッツ大学[35]ウォーリック大学[36]、Anna University、インド情報技術大学インド工科大学カラグプル校[37]、Andhra University、香港科技大学[38]から名誉博士号を授与されている。

著作

[編集]

脚注

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  1. ^ a b CMU Computer Science Ph.D. Awards by Advisor”. Carnegie Mellon. 2011年8月3日閲覧。
  2. ^ a b “CMU's Raj Reddy fills lives with big questions”. Pittsburgh Post-Gazette. (Monday, June 15, 1998). http://www.post-gazette.com/businessnews/19980615braj1.asp 2011年8月2日閲覧。 
  3. ^ a b c Raj Reddy”. rr.cs.cmu.edu. 2011年7月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年7月24日閲覧。
  4. ^ CS50: FIFTY YEARS OF COMPUTER SCIENCE”. Carnegie Mellon. 2010年6月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年8月2日閲覧。
  5. ^ Robotics Institute Founders”. Carnegie Mellon University Article Dec. 2004, Vol. 1, No. 4. 2011年9月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年8月20日閲覧。
  6. ^ History of the Robotics Institute”. Robotics Institute, Carnegie Mellon. 2015年6月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年8月2日閲覧。
  7. ^ Governing Council of International Institute of Information Technology”. IIIT. 2011年8月2日閲覧。
  8. ^ Governing Council of Rajiv Gandhi University of Knowledge Technoloiges”. RGUKT. 2011年8月2日閲覧。
  9. ^ Draft Minutes of PITAC”. Networking and Information Technology Research and Development(NITRD). 2011年9月7日閲覧。
  10. ^ Former PITAC Members (1997-2001)”. Networking and Information Technology Research and Development(NITRD). 2011年9月7日閲覧。
  11. ^ “Origins of the American Association for Artificial Intelligence”. AAAI Magazine 26 (4): 5–12. http://www.aaai.org/ojs/index.php/aimagazine/article/view/1834/1732. 
  12. ^ “Foundations and Grand Challenges of Artificial Intelligence”. AAAI Magazine 9 (4): 9–21. http://www.aaai.org/ojs/index.php/aimagazine/article/view/950/868. 
  13. ^ “International Board of Governors of the Peres Center for Peace”. Peres Center. オリジナルの2011年7月20日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20110720030801/http://www.peres-center.org/fulllist.html. 
  14. ^ GVK EMRI - GVK Emergency Management and Research Institute - Governing Board
  15. ^ http://www.hmri.in/gov-brd.aspx アーカイブ 2011年7月21日 - ウェイバックマシン
  16. ^ CMU-Software Engineering-Faculty-Raj Reddy”. Carnegie Mellon. 2011年8月18日閲覧。
  17. ^ HearHere Video”. CMU. 2011年9月2日閲覧。
  18. ^ Hearsay Video”. CMU. 2011年9月2日閲覧。
  19. ^ Harpy Video”. CMU. 2011年9月2日閲覧。
  20. ^ “An Overview of the Sphinx Speech Recognition System.”. IEEE Trans on ASSP 38 (1): 35–44. (1990). http://ieeexplore.ieee.org/xpl/freeabs_all.jsp?arnumber=45616. 
  21. ^ Introduction to Xuedong Huang, Alejandro Acero, Alex Acero, Hsiao-Wuen Hon (2001). Spoken language processing. Prentice Hall. ISBN 0-13-022616-5. http://www.pearsonhighered.com/educator/product/Spoken-Language-Processing-A-Guide-to-Theory-Algorithm-and-System-Development/9780130226167.page 
  22. ^ “Task-Oriented Architectures”. Proc. of the IEEE 71 (7): 885–898. http://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=1456953&tag=1. 
  23. ^ “Picture Segmentation Using a Recursive Region Splitting Method”. Computer Graphics and Image Processing 8 (3): 313–333. (1978). doi:10.1016/0146-664X(78)90060-6. http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/0146664X78900606. 
  24. ^ a b Electrifying Knowledge The Story of the Universal Digital Library_Pittsburgh Quarterly_Summer 2009 by Tom Imerito”. CMU. 2011年9月4日閲覧。
  25. ^ a b “Robotics and Intelligent Systems in Support of Society”. IEEE Transactions on Intelligent Systems 21 (3): 24–31. (2006). http://ieeexplore.ieee.org/xpl/freeabs_all.jsp?arnumber=1637347. 
  26. ^ a b ACM Award Citation / Raj Reddy”. awards.acm.org. 2011年7月25日閲覧。[リンク切れ]
  27. ^ a b NNDB Listing”. NNDB. 2011年9月26日閲覧。
  28. ^ ULIB About Us”. The Universal Digital Library. 2012年1月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年8月25日閲覧。
  29. ^ Padma Bhushan Awardees — Padma Awards”. india.gov.in. 2011年7月25日閲覧。
  30. ^ Honda Prize 2005”. Honda Foundation. 2012年8月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年8月3日閲覧。
  31. ^ National Science Board — Honorary Awards — Vannevar Bush Award Recipients”. nsf.gov. 2011年7月24日閲覧。
  32. ^ “Speech Pioneer to Be Honored by IEEE”. Speech Technology Magazine. (21 March 2008). http://www.speechtechmag.com/Articles/News/News-Feature/Speech-Pioneer-to-Be-Honored-by-IEEE-41316.aspx 2009年12月14日閲覧。 
  33. ^ “AI's Hall of Fame”. IEEE Intelligent Systems (IEEE Computer Society) 26 (4): 5–15. (2011). doi:10.1109/MIS.2011.64. http://www.computer.org/cms/Computer.org/ComputingNow/homepage/2011/0811/rW_IS_AIsHallofFame.pdf. 
  34. ^ “IEEE Computer Society Magazine Honors Artificial Intelligence Leaders”. DigitalJournal.com. (2011年8月24日). http://www.digitaljournal.com/pr/399442 2011年9月18日閲覧。  Press release source: PRWeb (Vocus).
  35. ^ Honorary Degree”. University of Massachusetts. 2011年9月7日閲覧。
  36. ^ Honorary Graduates and Chancellor's Medallists”. University of Warwick. 2011年9月7日閲覧。
  37. ^ Honoris Causa Awardees”. IIT-kgp. 2011年10月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年9月7日閲覧。
  38. ^ HKUST to Confer Honorary Doctorates on Eminent Academics and Leaders”. Press Release. 2011年9月7日閲覧。

外部リンク

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