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フランシス・E・アレン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
フランシス・エリザベス "フラン" アレン
生誕 (1932-08-04) 1932年8月4日
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 ニューヨーク州ペルー[1]
死没 (2020-08-04) 2020年8月4日(88歳没)
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 ニューヨーク州Schenectady
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
研究分野 計算機科学
研究機関 IBM
出身校 ニューヨーク州立大学アルバニー校
ミシガン大学
主な業績 ハイパフォーマンス・コンピューティング並列コンピューティングコンパイラ構成最適化
主な受賞歴 チューリング賞(2006)
プロジェクト:人物伝
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フランシス・エリザベス・アレン英語: Frances Elizabeth Allen1932年8月4日 - 2020年8月4日 )は、アメリカ計算機科学者で、コンパイラ最適化の分野における第一人者である。通称はフラン・アレン (Fran Allen)。コンパイラコード最適化、および並列化における発展的な業績を残している。アメリカ国家安全保障局 (NSA) にてプログラミング言語やセキュリティに関するインテリジェンス関連の仕事もしていた[2][3]

女性初のIBMフェローであり、2006年には女性として初めてチューリング賞を受賞している[4]

経歴

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アレンはニューヨーク州ペルー英語版の農家で生まれ育ち、1954年にニューヨーク州立師範学校(現在のニューヨーク州立大学アルバニー校)で数学の学士号を取得した[5]。彼女は1957年にミシガン大学で数学の修士号を取得し、ニューヨーク州ペルーの学校で教師となった[6]1957年7月15日、彼女はIBMに入社する。IBMに勤めるのは学費ローンを返済するまでの予定であったが、最終的に45年間をIBMで過ごすこととなった。

フラン・アレンの業績は、コンパイラの研究と実装に多大な影響を及ぼした。単独またはジョン・コックと共同で、様々な抽象化・アルゴリズム・実装を導入し、自動プログラム最適化技術(現代の用語にするとコンパイラ最適化のこと)の土台を築いた。1966年の論文 "Program Optimization" は、コンピュータプログラムの体系的分析と変換のための概念的基盤をもたらした。鍵となる先進点は、コンパイラ内部におけるプログラムの内部表現を、ソースコードそのままに文が直列したものとするのではなく、(節点とその接続関係からなるネットワーク的な)グラフ構造によるものとすることで、自動的かつ効率的に関係を引き出し、最適化可能な箇所を識別するものとしたことである。1970年の論文 "Control Flow Analysis" と "A Basis for Program Optimization" では、効率的で効果的なデータフロー分析と最適化における "intervals" の概念を確立。1971年のコックと共同の論文 "A Catalog of Optimizing Transformations" では、最適化変換について初の体系的記述を行っている。1973年と1974年の論文では、手続き間のデータフロー分析をプログラム全体の分析に拡張した。1976年のコックとの共同論文では、今日の最適化コンパイラでも使われている2つの分析戦略を記述している。

アレンは自身の手法を IBM STRETCH-HARVEST や実験的な Advanced Computing System英語版 のコンパイラに実装した。この仕事により、現代的なマシンや言語から独立したオプティマイザの構造と実現可能性を確かなものとした。その後、FORTRANプログラムの自動並列実行のプロジェクト PTRAN を立ち上げ、指揮。PTRANチームは新たな並列性検出方式を開発し、プログラム依存グラフの概念を生み出し、それが後の多くの並列化コンパイラで使われている。

Association For Computing Machinery (ACM)、Citation for the A.M. Turing Award 2006 [7]

2002年にIBMを退職。IBMコミュニティにおけるアレンの影響としては、1989年に彼女がIBMフェローに任命されたことが挙げられる。IBMフェローに女性が任命されたのは初めてのことであった。彼女はまた、IBMアカデミーの代表でもあった。2007年にはアレンの栄誉を記念してIBM博士号フェローシップ賞 (The IBM Ph.D. Fellowship Award) が設けられた[8][9]

2020年8月4日、自身の誕生日にこの世を去った[10]。88歳没。

受賞歴など

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アレンは、IEEEAssociation for Computing Machinery (ACM)、コンピュータ歴史博物館アメリカ芸術科学アカデミー (1994)[11] のフェローである。また、全米技術アカデミーの会員である。

また、いくつかの大学から名誉博士号を授与されている。

出典

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  1. ^ Abbate, Janet (August 2, 2001). “Oral-History:Frances "Fran" Allen”. IEEE Global History Network. New Brunswick, New Jersey: IEEE History Center. 2012年6月19日閲覧。 “I was born August 4th, 1932, and I grew up on a farm, up in upstate New York. The town is Peru, New York.”
  2. ^ IBM Corporation, "IBM Fellow becomes first woman to receive A. M. Turing Award"
  3. ^ Crump, Micheal, "Frances Allen's Computer Tipping", UAB Kaleidoscope magazine, University of Alabama at Birmingham, September 21, 2009.
  4. ^ Jr, S.; Guy, L. (2011). “An interview with Frances E. Allen”. Communications of the ACM 54: 39. doi:10.1145/1866739.1866752. 
  5. ^ Lohr, Steve (2002年8月6日). Scientist at Work: Frances Allen; Would-Be Math Teacher Ended Up Educating a Computer Revolution. ニューヨーク・タイムズ
  6. ^ Lasewicz, Paul (2003年4月5日). Frances Allen interview transcript.
  7. ^ a b Turing Award Citation”. Association for Computing Machinery. 2010年9月25日閲覧。
  8. ^ "IBM Creates Ph.D. Fellowship Award in Honor of First Female Turing Award Winner Fran Allen" (Press release). IBM. 19 October 2007. 2007年11月5日閲覧
  9. ^ Blake, Deirdre (2007年10月22日). “Fran Allen Fellowship Award Founded”. CMP Technology. 2007年11月5日閲覧。
  10. ^ "Frances E. Allen, première lauréate du Prix Turing et génie de l'informatique, est décédée". numerama (フランス語). PressTIC. 6 August 2020. 2020年8月6日閲覧
  11. ^ Book of Members, 1780-2010: Chapter A”. American Academy of Arts and Sciences. 2011年4月15日閲覧。
  12. ^ WITI Hall of Fame
  13. ^ Perelman, Deborah (February 27, 2007). “Turing Award Anoints First Female Recipient”. eWEEK (Ziff Davis Enterprise). http://www.eweek.com/article2/0,1895,2098922,00.asp 2007年11月5日閲覧。 
  14. ^ "First Woman to Receive ACM Turing Award" (Press release). The Association for Computing Machinery. 21 February 2007. 2007年11月5日閲覧
  15. ^ Lombardi, Candace (February 26, 2007). “Newsmaker: From math teacher to Turing winner”. http://www.news.com/From-math-teacher-to-Turing-winner/2008-1007_3-6161914.html 2007年11月5日閲覧。 
  16. ^ Marianne Kolbasuk McGee (February 26, 2007, online February 24, 2007). “There's Still A Shortage Of Women In Tech, First Female Turing Award Winner Warns”. InformationWeek (CMP Media). http://www.informationweek.com/showArticle.jhtml?articleID=197008472 2007年11月5日閲覧。 
  17. ^ Thomas, Jeffrey (16 March 2007). “Turing Award Winner Sees New Day for Women Scientists, Engineers”. Bureau of International Information Programs, U.S. Department of State. 2007年11月5日閲覧。

外部リンク

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