一畑百貨店
一畑グループ共通シンボルマーク | |
種類 | 株式会社 |
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略称 | 一畑 |
本社所在地 |
日本 〒690-8555[1] 島根県松江市朝日町661番地[1] |
設立 |
1958年(昭和33年)10月1日[2] 1996年(平成8年)10月1日(松江ターミナルデパート)[1] |
業種 | 小売業 |
法人番号 | 2280001000705 |
事業内容 | 百貨店業 |
代表者 | 代表取締役社長 錦織要 |
資本金 | 1億円[3] |
売上高 | 86.72億円(2011年3月期)[4] |
純利益 |
▲4億2470万6000円 (2022年3月期)[5] |
総資産 |
23億7536万7000円 (2022年3月期)[5] |
従業員数 | 118人 |
支店舗数 | 2店 |
主要株主 | 一畑電気鉄道 100.0%[4] |
外部リンク | https://www.ichibata.co.jp/dept/ |
特記事項:2017年度時点 |
一畑百貨店(いちばたひゃっかてん)は、かつて島根県に存在した日本の百貨店。県庁所在地の松江市の基幹店が2024年(令和6年)1月14日で営業を終了した。同名の運営会社は一畑電気鉄道の完全子会社である[3]。
歴史
[編集]一畑百貨店松江店 Ichibata Department Store | |
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店舗概要 | |
所在地 |
〒690-8555 島根県松江市朝日町661番地 |
座標 | 北緯35度27分52.2秒 東経133度3分52.2秒 / 北緯35.464500度 東経133.064500度座標: 北緯35度27分52.2秒 東経133度3分52.2秒 / 北緯35.464500度 東経133.064500度 |
開業日 |
1958年(昭和33年)10月創業[4] 1998年(平成10年)4月1日現店舗で開業[6] |
閉業日 | 2024年(令和6年)1月14日[7] |
延床面積 | 18,846 m²[8] |
商業施設面積 | 13,617 m²[9] |
駐車台数 | 510[6]台 |
前身 | ジャスコ松江店→ピノ専門店街 |
最寄駅 | JR松江駅 |
外部リンク | 公式サイト |
1958年(昭和33年)10月[4]に松江市殿町で、一畑電気鉄道に三越が出資する形での提携に基づき、一畑電気鉄道直営事業の一畑百貨店として開業した[4]のが始まりである。
1964年(昭和39年)4月に一畑電車北松江線出雲市駅ターミナルビル内に出雲支店を出店して多店化し、1966年(昭和41年)12月に出雲支店を増床して2店舗体制とした。
本店の松江店も1971年(昭和46年)4月、1982年(昭和57年)9月、1988年(昭和63年)10月と増床し、1973年(昭和48年)5月に株式会社一畑友の会を設立する[4]など積極策を進めた1984年(昭和59年)8月には株式会社一畑百貨店(旧法人)として独立を果たすなど順調に拡大した。
郊外型大型店との競争激化などの商業環境の変化に対応すべく、松江店をジャスコの撤退により空き店舗となったJR松江駅前のピノビル[8]に移転・増床するため、新会社株式会社松江ターミナルデパート[6]を1996年(平成8年)10月に設立[4]し、ビルを改装した[8]。1998年(平成10年)3月22日に株式会社一畑百貨店(旧法人)が営業していた旧松江店を閉店し[6]、地下食品売場をスーパーマーケットと同じ集中レジのセルフ形式の売場とメインとする一方で、レディスファッション売場には高級宝飾ブランドなど島根県内初のブランドを導入し、百貨店らしさを出して総合スーパーとの差別化を図った[6]。松江のみならず出雲市や米子市などからの集客も狙い、株式会社松江ターミナルデパートが営業する新たな一畑百貨店松江店を4月1日に開業した[6]。
2000年(平成12年)2月29日に旧出雲店を閉店[10]して、跡地にツインリーブスホテル出雲の入る7階建て複合ビルを建設し、その1階に規模を縮小した新出雲店を出店し直す[11]など店舗のほぼ全面的なスクラップアンドビルドを行なった。2007年(平成19年)8月25日には山陽百貨店、京阪百貨店、津松菱と地方百貨店特有の課題や成功事例の交換会「DIA」(デパートメント・インテリジェンス・アソシエイション)を設立、会合を2ヶ月に一度の割合で必要に応じて開催し、地方百貨店で役立つ販促情報などの交換を始めた[12]。
松江の中心市街地では、1997年(平成9年)に545.55億円あった小売販売額が2007年(平成19年)には443.79億円と落ち込んだ[13]、一畑百貨店は2005年(平成17年)3月期には売上高106.30億円で当期純利益888.7万円[14]、2006年(平成18年)3月期には売上高103.90億円で当期純利益2689万円、2007年(平成19年)3月期には売上高102.53億円で当期純利益920.8万円[15]、2008年(平成20年)3月期には売上高102.11億円で当期純損失520.9万円[16]と、コンスタントに年商100億円以上を上げ続けた。
しかし、いわゆるリーマンショック後の2009年(平成21年)3月期には年商が100億円の大台を割り込んで売上高96.17億円となって当期純損失6772.4万円[17]、2010年(平成22年)3月期には売上高89.21億円で当期純損失5482.2万円[18]、2011年(平成23年)3月期86.72億円で当期純損失9576万円[4]と連続して売上が減少するとともに数千万単位の赤字が連続するなど業績が悪化。2011年(平成23年)3月期中には従来の資本金3億円[18] から1億円増資して資本金を4億円[4]に増強して自己資本の減少をカバーするなど苦しい状況に陥った。
2019年(平成31年)2月に出雲店を閉店し、旧店舗から半世紀以上となる歴史に幕を下ろした[19]。出雲市中心部にはその後2021年(令和3年)3月、大型ショッピングセンター「ゆめタウン出雲」内に百貨店の商品を扱うサテライトショップを開店した[20]が、翌2022年(令和4年)7月に閉店[21]。新型コロナ禍や郊外型大型店の出店、さらにインターネット通販の台頭などが響き、唯一残った松江店も2024年(令和6年)1月14日をもって閉店した[7]。閉店によって島根県は山形県、徳島県に次いで国内3番目の百貨店がない都道府県となった[7][22]。
年表
[編集](初代)一畑百貨店松江店 Ichibata Department Store | |
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山陰中央ビル。 (旧)松江店新館として1982年に建てられた。写真手前側(ビルの西側)の駐車場が旧館の跡地。 | |
店舗概要 | |
所在地 |
松江市殿町130番地(旧館)[23] 松江市殿町383番地(新館) |
開業日 | 1958年(昭和33年)10月1日 |
閉業日 | 1998年(平成10年)3月22日 |
正式名称 | 一畑百貨店松江店 |
延床面積 | 7,029 m²[23] |
商業施設面積 | 3,925 m²[23] |
営業時間 | 10:00-18:00[23] |
後身 |
取り壊し→島根県民会館駐車場(旧館) 山陰中央ビル(新館) |
最寄駅 | 一畑電車北松江線松江温泉駅(現:松江しんじ湖温泉駅) |
- 1958年(昭和33年)10月1日:一畑電気鉄道が松江市にて一畑百貨店(現・松江店)を開業[4]。
- 1964年(昭和39年)4月:一畑電鉄出雲市駅駅ビル内に出雲支店を開店。
- 1966年(昭和41年)12月:出雲支店の店舗拡張工事が完成。
- 1971年(昭和46年)4月:松江店の店舗拡張工事が完成。
- 1973年(昭和48年)5月:株式会社一畑友の会を設立[4]。
- 1982年(昭和57年)9月:松江店の新館が完成、全館増床改装。
- 1984年(昭和59年)5月:株式会社一畑百貨店(初代)を松江市殿町に設立。
- 1984年(昭和59年)8月:百貨店業を株式会社一畑百貨店(初代)に譲渡
- 1988年(昭和63年)10月:創業30周年を迎え、松江店を増床改装。
- 1996年(平成8年)10月1日:株式会社松江ターミナルデパート設立[1](現・株式会社一畑百貨店[4])。
- 1998年(平成10年)3月22日:旧松江店が閉店[6]。
- 1998年(平成10年)4月1日:松江店を松江駅前(現在地)に移転・増床し、株式会社松江ターミナルデパートが一畑百貨店松江店として営業を開始[6]。
- 2000年(平成12年)2月29日:旧出雲店閉店[10]。
- 2001年(平成13年)9月:旧出雲店跡地に竣工した複合ビル内に出雲店を再出店、大田市に大田ショップ開店[24]。
- 2007年(平成19年)8月25日:山陽百貨店、京阪百貨店、津松菱と「DIA」(デパートメント・インテリジェンス・アソシエイション)を設立[12]。
- 2011年(平成23年)3月期中:1億円増資し、資本金4億円に増強。
- 2015年(平成27年)4月:株式会社いずもを合併[25][26]。
- 2016年(平成28年)2月:資本金を1億円に減資。浜田店を閉店。
- 2019年(平成31年)2月28日:出雲店閉店[19]。
- 2021年(令和3年)3月12日:ゆめタウン出雲店開店[20]。
- 2022年(令和4年)7月10日:ゆめタウン出雲店閉店[21]。
- 2023年(令和5年)2月1日:観光営業部を株式会社いずもとして再分社化し、土産物店等5店舗を移管[26]。
- 2024年(令和6年)1月14日:この日を最終営業として松江市の店舗が閉店し、島根県から百貨店が姿を消す[7][27]。
特色
[編集]地元の宍道湖七珍の一つに数えられるスズキの幼魚「セイゴ」を材料にした練り製品の販売も手掛けていた[28]など地方百貨店として地域密着の営業戦略も展開していた。
包装紙
[編集]創業時から三越(現・三越伊勢丹ホールディングス)と提携していたため、先代の紙袋と包装紙は三越で使用しているものに酷似したデザインとなっているが、かつて雑誌『暮しの手帖』を創刊した花森安治が、松江高等学校 (旧制)のOBでもあり、夫人が松江出身の上、当時の一畑電気鉄道の社長の夫人と姉妹でもある関係で1959年から1971年にかけて使われた包装紙をデザインしていた[29]。
店舗
[編集]かつて営業していた店舗・サテライトショップ。
- 出雲店(出雲市):旧店舗は百貨店協会に加盟していたが、建替え後の新店舗は大幅に売場を縮小[11]し、「ツインリーブスホテル出雲」1階にてサテライト店として営業、百貨店協会非加盟となった。2019年2月閉店[19]。
- ゆめタウン出雲店(出雲市):2022年7月閉店[21]。
- 出雲空港売店(出雲市):2023年2月に株式会社いずもへ移管[26][30]。
- 大田ショップ(大田市):2018年12月閉店。
- 浜田店(浜田市):2016年2月閉店。
- 松江店(松江市):2024年1月閉店[27]。最後まで日本百貨店協会に加盟していた店舗。
その後
[編集]松江店跡地については、2024年8月に松江市が主導する「松江駅前デザイン会議」が打ち出した駅前再開発案の中で、建物を解体した上で新たに複合施設を建設する方針が打ち出された。テナントの一部は、同じく老朽化が問題となっている松江テルサからの移転を見込んでいる。一方で一畑百貨店側は、同時点でマスコミの取材に対し「複数の事業者と敷地の売却について交渉中で、まだ何も決まっていない」と語っている[31]。
脚注
[編集]- ^ a b c d 『流通会社年鑑 2003年版』(日本経済新聞社、2002年12月20日)p.84
- ^ 『流通会社年鑑 1990年版』(日本経済新聞社、1990年11月24日)pp.175-176
- ^ a b 『一畑電気鉄道株式会社 第168期有価証券報告書』p.6(日本経済新聞社サイト掲載)
- ^ a b c d e f g h i j k l 一畑電気鉄道株式会社 第161期有価証券報告書 (Report). 一畑電気鉄道. 29 June 2011.
- ^ a b 株式会社一畑百貨店 第26期決算公告
- ^ a b c d e f g h 「ブランド商品売り場を新設 移転する一畑松江店 島根県内初 婦人用品中心に」『山陰中央新報』1998年2月11日
- ^ a b c d 一畑百貨店、65年の歴史に幕 島根「空白県」に、全国3番目『日本経済新聞』朝刊2024年1月15日ビジネス面(2024年3月6日閲覧)
- ^ a b c 柳原隆司 (2007-7-1). “一畑百貨店松江店空調設備改修計画”. ヒートポンプとその応用 No.73 (ヒートポンプ研究会).
- ^ 国土審議会調査改革部会 第4回国際連携・持続的発展基盤小委員会配付資料 人口減少下での活力ある地域社会と二層の広域圏形成に資する国土基盤の現状と課題(資料編) (Report). 国土審議会調査改革部会. June 2000.
- ^ a b 「一畑百貨店出雲店2月29日に閉店 島根県出雲市」『タイハン特報』平成12年(2000年)3月30日号 大量販売新聞社
- ^ a b 「一畑出雲店跡地に、7階建て複合ビル 島根県出雲市」『タイハン特報』平成12年(2000年)7月6日号 大量販売新聞社
- ^ a b 山陽、京阪、一畑、津松菱 地方百貨店が「DIA」設立『繊研新聞』2007年8月29日
- ^ 松江市 中心市街地活性化基本計画 平成20年7月9日認定 平成21年3月27日変更 (Report). 松江市. 27 March 2009.
- ^ 一畑電気鉄道株式会社 第156期有価証券報告書 (Report). 一畑電気鉄道. 29 June 2006.
- ^ 一畑電気鉄道株式会社 第157期有価証券報告書 (Report). 一畑電気鉄道. 28 June 2007.
- ^ 一畑電気鉄道株式会社 第158期有価証券報告書 (Report). 一畑電気鉄道. 26 June 2008.
- ^ 一畑電気鉄道株式会社 第159期有価証券報告書 (Report). 一畑電気鉄道. 26 June 2009.
- ^ a b 一畑電気鉄道株式会社 第160期有価証券報告書 (Report). 一畑電気鉄道. 29 June 2010.
- ^ a b c “一畑百貨店出雲店営業終了のお知らせ”. 2019年2月28日閲覧。
- ^ a b “ゆめタウン出雲に一畑百貨店のテナントがオープン”. 山陰中央新報. 2021年3月17日閲覧。
- ^ a b c 「一畑百貨店サテライト店 ゆめタウン出雲から撤退へ」『山陰中央新報』2022年5月25日。オリジナルの2022年5月24日時点におけるアーカイブ。2023年6月17日閲覧。
- ^ 百貨店がない県が3県に…地方百貨店が「打たれ弱い」意外な理由 M&A Online
- ^ a b c d 『デパート・ニューズ調査年鑑 1969年度版』(デパートニューズ社、1969年)p.307
- ^ “沿革~平成から創立100周年まで|一畑グループオフィシャルウェブサイト”. 一畑電気鉄道. 2023年6月17日閲覧。
- ^ “沿革~次の100周年へ向けて|一畑グループオフィシャルウェブサイト”. 一畑電気鉄道. 2023年6月17日閲覧。
- ^ a b c 「島根の一畑百貨店、土産物販売事業を分社化」『日本経済新聞』2023年2月7日。オリジナルの2023年2月8日時点におけるアーカイブ。2023年6月17日閲覧。
- ^ a b “【速報】一畑百貨店が閉店へ 2024年1月14日”. 山陰中央新報. 2023年6月13日閲覧。
- ^ 「厄介者セイゴ練り物大歓迎、松江の老舗4製品開発」『読売新聞』2011年12月13日
- ^ “明窓「美しい暮らし」の実践”. 山陰中央新報 (山陰中央新報社). (2012年3月18日)
- ^ “企業概要|観光センターいずも”. 株式会社いずも. 2023年6月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年6月17日閲覧。
- ^ 一畑百貨店の跡地に複合施設 JR松江駅前再整備の素案 松江テルサは撤去、17日まで意見公募 - 山陰中央新報デジタル・2024年8月27日