利用者:Lxylxy123456/時をかける少女 (アニメ映画)
時をかける少女 | |
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The Girl Who Leapt Through Time | |
監督 | 細田守 |
脚本 | 奥寺佐渡子 |
製作 |
渡邊隆史 齋藤優一郎 |
製作総指揮 | 角川歴彦 |
出演者 |
仲里依紗 石田卓也 板倉光隆 原沙知絵 谷村美月 垣内彩未 関戸優希 |
音楽 | 吉田潔 |
制作会社 | マッドハウス |
製作会社 | 「時をかける少女」製作委員会 |
配給 | 角川ヘラルド映画 |
公開 |
2006年7月15日 2007年3月9日 2007年6月14日 2007年7月4日 2007年8月23日 2008年6月13日 |
上映時間 | 98分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
興行収入 | 2.6億円 |
『時をかける少女』(ときをかけるしょうじょ)は、2006年7月15日に角川ヘラルド映画から公開された日本のSFアニメ映画。筒井康隆の同名の小説を原作としている。監督は細田守、アニメーション制作はマッドハウス。各国の映画祭などで多くの賞を受賞するなど、高い評価を受けた。キャッチコピーは「待ってられない 未来がある。」
概要
[編集]筒井康隆の小説『時をかける少女』が原作であるが、原作の物語の映画化ではなく、原作の出来事から約20年後を舞台に次世代の登場人物が繰り広げる物語を描く続編である。
興行規模はミニシアター並みであり、そのため上映館も発表当初は全国で21館のみと非常に少なかった[1]。『ゲド戦記』などの同時期に公開されたアニメーション映画に比して、宣伝規模は極めて小さかったが、インターネットなどによる口コミ効果により、公開後1か月を過ぎてからもテアトル新宿などでは連日立ち見が出るほどの観客で溢れかえり[2]、配給会社の角川ヘラルド映画は急遽、上映館を増やすなど異例の対策をとった。上映用のフィルムの数が14本しかないため[3]、上映が終わった館で使っていたフィルムを次の上映館へと使いまわす方式で各地で順次公開され、最終的には上映館は延べ100館以上[4]、2007年4月20日のDVD発売日まで9か月にわたり公開が続くという、ロングラン興行となった[5]。
日本における最終入場者数18万8092名、興収2億6439万40円と発表されている。また、2007年4月20日に発売されたDVDの出荷本数は約15万本に達した。国内外における映画・アニメ賞など23冠を受賞している[6]。
本作では奥華子の楽曲「ガーネット」が主題歌に起用された。作品が好評だったこともあり、奥の知名度を上げた作品としても知られている。[要出典]また、主人公の紺野真琴役を演じた仲里依紗は、4年後の2010年に公開された実写映画版『時をかける少女』でも主演を務めることとなった。
ストーリー
[編集]東京の下町にある倉野瀬高校2年生の紺野真琴は、医学部志望の津田功介、春に転校してきた間宮千昭という二人の同級生男子生徒と「遊び仲間」として親しくつきあう関係だった。7月13日、真琴は偶然立ち入った密室の理科準備室で不審な人影を目撃する。その人物を追おうとしたとき、なぜか真琴は転倒して不思議な空間に入る体験をする。気づいたときには誰も室内にいなかった。千昭と功介にそれを話すが、千昭には笑われ功介には「頭は大丈夫か」と言われてしまう。二人と別れて下校中、真琴の乗る自転車のブレーキが下り坂で故障。そのまま電車の接近する踏切に突入し、死を覚悟した真琴は気がつくと坂道の途中、少し前の時間に戻っていた。叔母の芳山和子にその体験を話すと、和子はそれは「タイムリープ」で真琴の年頃の少女には「よくあること」と返答する。納得できない真琴だったが、自らの意思で過去へのタイムリープを試みて成功する。味を占めた真琴はタイムリープを使って、抜き打ちテストでよい成績を収めたり、家庭科の調理実習で被ったトラブルを同級生(高瀬宋次郎)に変えたり、カラオケを何時間も続けたりするなど、自らのささやかな欲望を満たしていく。和子からは「真琴がいい目を見ている分、悪い目を見ている人がいるのでは」と言われるが、真琴は意に介さなかった。
そんなある日、功介がクラブの後輩(藤谷果穂)から告白されたことをきっかけに、真琴は千昭から交際を持ちかけられる。真琴はタイムリープを使って「なかったこと」にし、千昭を避けるようになる。すると今度は調理実習のトラブルのために同級生と諍っていた高瀬から恨みをぶつけられた。その対処にタイムリープを使ったことで、親友の早川友梨が千昭と交際することになる。真琴は面白くなかったが、どうすることもできない。その矢先、果穂とその友人から「功介とつきあっているのか」と問われた真琴は、功介と果穂の間を取り持とうと、7月13日まで戻って二人が話し合うきっかけを作った。うまくいったと自賛する真琴だったが、携帯電話で千昭から「タイムリープしているだろう」と指摘され、タイムリープでその会話をなかったことにした。その時点で真琴のタイムリープ能力は終わってしまう。そのとき、真琴の自転車を借りて乗った功介と果穂が通りかかる。真琴の目の前で自転車のブレーキは故障し、下り坂を暴走して遮断機の下りた踏切に突入する。万事休すと思った真琴が気づくと、時間は静止し、目の前には千昭がいた。
千昭は自分が未来から来た人間であると語り、真琴のタイムリープ能力が本来自分の持っていたものであること、功介たちを助けるために自分の最後のタイムリープ能力を使ったことを真琴に打ち明ける。未来に帰れなくなった千昭は「タイムリープを過去の人間に知らせてはならない」ルールを破ったからという理由で真琴の前から姿を消した。翌日、「自主退学した」という千昭の話題で学校が騒然となる中、真琴は屋上で一人号泣する。和子は真琴に、高校の頃にある男性を好きになりながら離れてずっと待ち続けた体験を語り、自分と真琴は違う、待ち合わせに遅れてきた人がいたら走って迎えに行くのが真琴だと慰めた。
その夜、真琴はタイムリープが1度だけ可能になっていることに気づく。千昭がタイムリープをしたことで自らの能力が戻ったと察知した真琴は、千昭を助けるためにもう一度7月13日の理科準備室にタイムリープし、千昭に会いに行く。千昭にまだタイムリープ能力が残っていることを確認した真琴は、千昭の秘密をすべて聞いて知っていると告げる。未来に戻ることになった千昭は去り際、泣きじゃくる真琴に「未来で待ってる」と言葉を残し、真琴は「すぐ行く、走っていく」と呟く。
時は経ち、表向きでは留学のために千昭は学校を退学していた。千昭の秘密を何も知らない功介は、千昭が何も言わずに退学した事について腑に落ちない様子で真琴に不満をのべる。真琴は「(千昭は)やりたいことが決まったんだよ」と返し、「実は私もさ、やること決まったんだ」と続ける。ふと、真琴が空を仰ぐと晴天の青々とした空と入道雲がどこまでも広がっているのであった。
登場人物
[編集]- 紺野真琴(こんの まこと)
- 声 - 仲里依紗
- 本作の主人公。東京の下町にある高校に通う2年生。ショートヘアで快活な性格。ある日突然、時間を跳躍する「タイムリープ」の能力を身につける。学校の成績は中の下。朝に弱く、始業時間ぎりぎりで登校するのが日常となっている。「タイムリープ」の使い方に慣れるとささやかな私利私欲のために能力を駆使するお調子者。
- 男友達の千昭や功介とは、放課後にキャッチボールやノックをして遊ぶ間柄だが、どちらにも恋愛感情を持っていなかった。
- ミニスカートでのアクションが多いが、スカートが不自然になっても下着が見えないように作画されている。
- 間宮千昭(まみや ちあき)
- 声 - 石田卓也
- 真琴のクラスメイト。高校2年の春に転校して来た。ワイシャツのボタンはすべてはずすなど、少しだらけたファッションをしている。転校当初は同級生と喧嘩もしていたが、真琴に野球を誘われて以来徐々に感化され丸くなっていった。ひそかに真琴を意識しており、「つきあおう」と持ちかけたものの、真琴のタイムリープによって「なかったこと」にされてしまう。
- 数学の成績は極めて優秀だが、一方で簡単な漢字が読めない。実は未来からタイムリープで現代にやってきた人物。その目的は、この時代のこの季節にのみ所在が確認されているある絵画を見ることであったが、真琴や功介と一緒にいることが楽しかったために長逗留することになったと真琴に話している。
- 津田功介(つだ こうすけ)
- 声 - 板倉光隆
- 真琴のクラスメイトで、遊び友達。真琴とは中学時代から親交がある。スポーツ刈りの精悍な容貌で勉学にも優れ、ボランティア部に所属している。家は病院で彼も医者を目指しており、将来を真剣に考えない真琴に苦言を呈する一面もある。授業中などには眼鏡をかける。
- 芳山和子(よしやま かずこ)
- 声 - 原沙知絵
- 真琴の叔母で、原作のヒロイン。美術館(東京国立博物館)で絵画の修復をする仕事をしている。30代後半だが独身で、浮世離れしたその雰囲気からか、真琴は彼女を「魔女おばさん」と呼んでいる。自分の若い頃に真琴を照らし合わせ、色々と助言のような、適当に調子を合わせているようなことを語る。
- 藤谷果穂(ふじたに かほ)
- 声 - 谷村美月
- ボランティア部に所属する、真琴たちの下級生。眼鏡をかけることがある。引っ込み思案な性格でいつも俯いている少女だが、過去のボランティア部の活動から功介に好意を抱いている。世話焼きな友人が2人おり、彼女らに引きずられるかたちで功介に告白する。
- 早川友梨(はやかわ ゆり)
- 声 - 垣内彩未
- 真琴のクラスメイトで、仲のいい女子生徒。千昭を気にかけており、真琴を通じて彼の事を知ろうとする。真琴がタイムリープを使ったことが原因で負傷し、それがきっかけとなって千昭と交際する。
- 紺野美雪(こんの みゆき)
- 声 - 関戸優希
- 真琴の妹で中学生。真琴には常々「バカ」と評されているが、真琴より早く起きたり、料理の手伝いを積極的にしたりと、真琴よりは真面目な性格。また、心配症な一面も。
- 上杉盛子(うえすぎ たかこ)
- 声 - 横張しおり
- 果穂の友人で、ボランティア部所属。髪を後ろで束ねている。友達思い。
- 野分析美(のわけ ともみ[注釈 1])
- 声 - 松岡そのか
- 果穂の友人で、ボランティア部所属。前髪をヘアピンで留めている。
- 福島(ふくしま)
- 声 - 立木文彦
- 真琴らの担任教師。担当教科は数学。長髪オールバック・口ひげ・ネックレス・細く整えた眉のチンピラファッションだが、テストの答案用紙に『もっと頑張りましょう』『Excellent!!』と書いて返したり、進路志望を出さなかった真琴を注意したりする真面目な教員。
- 高瀬宋次郎(たかせ そうじろう)
- 声 - 松田洋治
- 真琴のクラスメイト。タイムリープによって真琴が回避した不幸(調理実習での小火)をかぶり、それがきっかけで加藤たちとトラブルになる。
- 加藤(かとう)
- 声 - 反田孝幸
- 真琴のクラスメイト。調理実習の際、小火の対応で(真琴のタイムリープ後に)高瀬から消火器を吹きかけられたことを根に持ち、仲間とともに高瀬との間で嫌がらせをやり合うことになる。
- おばさん
- 声 - 山本圭子
- 坂道で真琴とぶつかる子連れの女性。
- 老守衛
- 声 - 中村正
- 真琴の父
- 声 - 桂歌若
- 真琴の母
- 声 - 安藤みどり
作中の設定
[編集]タイムリープ
[編集]本作ではタイムリープ能力はクルミ形の装置を体に接触させて「チャージ」する設定[注釈 2]。可能な回数が痣のような形で肌に2桁の数字で表示される(残り回数が1回の場合は「01」)。真琴の場合、理科準備室で左腕(肘の上)に装置が触れ、その後は左腕にこの数字が表示されていた[注釈 3]。また真琴が「タイムリープ」の能力を発動するためには助走をつけてジャンプする必要があり[注釈 4]、跳躍先で勢いがついたまま転がり回るため、周囲の人間から訝しがられていた。タイムリープの存在を現代人に知らせることは「ルール違反」と千昭は説明しているが、未来人と関わった人間の記憶を消すという原作や1983年版映画での設定は本作では採用されていない。
千昭が真琴のタイムリープに気づいた経緯や理由は本編では説明がない。絵コンテにおいては、高瀬から「仕返し」を受けそうになった真琴がタイムリープでそれを防いだ際に「おまえ……、今…、ありえないことしなかったか…?」と話すカット(本編未使用)があり[8]、『時をかける少女 NOTEBOOK』には「ある事件の際、真琴が『タイムリープ』していると気づく」という本編描写にはない説明がされている[9]。
未来の世界と来訪目的
[編集]本作では千昭の未来世界の年代や素性は明確にされていない[注釈 5]。千昭は真琴に現代の未来世界との違いとして「川が地面を流れていること」「空の広さ」「人の多さ」「野球や自転車の存在」を挙げている。千昭が来訪した目的は絵画「白梅ニ椿菊図」(架空の作品)の実物を見ることで、この作品は和子の勤める博物館で修復中だったが、千昭は目にする機会なく未来に帰った。和子はこの作品が「何百年も前の大戦争と飢饉の時代」「世界が終わろうとしていたとき」に描かれたと真琴に説明しており、真琴は千昭に絵と未来世界の関係について尋ねたが千昭は答えなかった[注釈 6]。
声の出演
[編集]キャラクター | 日本語版 | 英語版 |
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紺野真琴 | 仲里依紗 | Emily Hirst |
間宮千昭 | 石田卓也 | Andrew Francis |
津田功介 | 板倉光隆 | Alex Zahara |
芳山和子 | 原沙知絵 | Saffron Henderson |
藤谷果穂 | 谷村美月 | Natalie Walters |
早川友梨 | 垣内彩未 | Kristie Marsden |
紺野美雪 | 関戸優希 | Shannon Chan-Kent |
上杉盛子 | 横張しおり | タバサ・セント・ジェルマン |
野分析美 | 松岡そのか | Maryke Hendrikse |
福島 | 立木文彦 | Brian Dobson |
加藤 | 反田孝幸 | |
おばさん | 山本圭子 | |
老守衛 | 中村正 | |
高瀬宋次郎 | 松田洋治 | David Hurwitz |
真琴の父 | 桂歌若 | ブライアン・ドラモンド |
真琴の母 | 安藤みどり | Nicole Oliver |
主題歌
[編集]スタッフ
[編集]- 製作総指揮:角川歴彦
- 製作:井上伸一郎(角川書店)、江川信也(角川ヘラルド映画)、川島晴男(ハピネット)、川崎代治(メモリーテック)、森本義久(キュー・テック)、榊俊人(G.T.エンターテインメント)
- 制作:丸田順悟(マッドハウス)
- 企画:丸山正雄(マッドハウス)
- 製作統括:安田猛 (角川書店)
- プロデューサー:渡邊隆史(角川書店)、齋藤優一郎(マッドハウス)
- 脚本:奥寺佐渡子
- キャラクターデザイン:貞本義行
- 作画監督:青山浩行、久保田誓、石浜真史
- 作画監督補佐:藤田しげる、名倉靖博
- 美術監督:山本二三
- 美術監督補佐:橋本和幸、増山修、丸山智宏
- 色彩設計:鎌田千賀子
- 撮影監督:冨田佳宏(旭プロダクション)
- CG:ハヤシヒロミ(Spooky graphic)
- ラインコーディネーター:奈良井昌幸
- 編集:西山茂(リアル・ティ)
- 音響効果:倉橋静男・米原想(サウンドボックス)
- 録音:小原吉男
- 音楽:吉田潔
- ピアノ演奏:美野春樹
- 音楽プロデューサー:岡田こずえ
- アニメーション制作:マッドハウス
- 製作:「時をかける少女」製作委員会
- 配給:角川ヘラルド映画
- 監督:細田守
ソフト化
[編集]発売・販売元は角川書店。
本作のDVDは日本では2007年4月20日に発売された。通常版とプレミアムエディション(限定版)があり、プレミアムエディションには特典ディスクが封入されている。Amazon.co.jpでの2007年ベストセラーランキングのDVDビデオ部門では第8位(プレミアムエディションのみ)だった[11]。また、レンタル版もリリースされているが、音声についてはセル版のみ5.1ch仕様で、レンタル版の音声はステレオとなっている[12]。アメリカ合衆国では2008年11月に発売された。
ブルーレイディスク版は日本では2008年7月25日に発売された。音声フォーマットはドルビー TrueHDの他に日本製のブルーレイディスクソフトとしては数少ないDTS-HDマスターオーディオを採用した作品である。
- 時をかける少女 通常版(DVD1枚組、2007年4月20日発売)
- 映像特典
- 特報・劇場予告編
- 完成披露試写会舞台挨拶
- 奥華子「ガーネット」ミュージックビデオ
- プロモーション映像
- TVスポット集
- 音声特典
- オーディオコメンタリー「時かけ同窓会」(監督:細田守×仲里依紗×石田卓也×板倉光隆)
- 封入特典
- ブックレット(オールカラー8P)
- 映像特典
- 時をかける少女 プレミアムエディション(DVD3枚組、2007年4月20日発売、初回限定生産)
- ディスク1:本編DVD(通常版と同様)
- ディスク2:特典DVD1
- ビジュアル・ノート
- ディレクション・ファイル
- 完成披露試写舞台裏
- ディスク3:特典DVD2
- 「時かけ」スケッチブック(本編と絵コンテを同時収録)
- 音声特典
- オーディオコメンタリー(監督:細田守×助監督:伊藤智彦×作画監督:青山浩行)
- 封入特典
- 「時をかける少女」ハンドブック(96P)
- 真琴のストラップ2個セット(クワガタくんストラップ / テントウムシくんストラップ<携帯クリーナー付き>)
- フィルム・ブックマーク(5コマ)
- 特製アウターケース&クリアブルースリーブケース付き3枚組デジパック仕様
- 時をかける少女 Blu-ray(1枚組、2008年7月25日発売)
- 本編:日本語字幕付き本編も収録
- 映像特典
- 特報・劇場予告編
- 完成披露試写会舞台挨拶
- 奥華子「ガーネット」ミュージックビデオ
- プロモーション映像
- TVスポット集
- アートギャラリー
- 音声特典
- オーディオコメンタリー「時かけ同窓会」(DVD版と同様)
- 初回限定特典
- フィルム・ブックマーク(5コマ)
- 特製スリーブケース
- 時をかける少女 期間数量限定生産版(1枚組、2012年7月11日発売、Blu-rayとDVDでリリース)
- 映像・音声特典:それぞれDVD通常版、Blu-ray版と同様
- 封入特典
- 『時をかける少女』『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』貞本義行・夏のポストカードセット
制作
[編集]監督の細田が演出を務めたテレビアニメ『おジャ魔女どれみドッカ〜ン!』第40話(2002年11月10日放送)を見たマッドハウス取締役の丸山正雄が筒井作品のアニメ化を持ちかけたのがきっかけである[13]。 この第40話には、魔法を捨てた魔女・未来が登場し、未来の声優を務めたのは大林版『時をかける少女』で主役を演じた原田知世であることから、『時をかける少女』のオマージュではないかという見方もある[14]。
アニメ化については原作から大きく変更されているが、これは原作の面白さを伝えるためには今風の主人公を出すべきという細田の考えによるものである[15]。また、脚本の奥寺と相談した結果、『時をかける少女』にある「SF」「恋愛」「青春」のうち原作が「SF」を、大林版『時をかける少女』が「恋愛」を描いているとの結論から、「青春」を描くことになった、とも述べている[13]。
作画上の特徴として、作画に影が用いられていないことが挙げられる。これは監督の細田自身の以前からのこだわりの1つであり[5]、ともすれば記号的に描かれることの多い影を排除することで「アニメのキャラクターではなく生きた人間として見て欲しい」と述べている[16]。声優に関しては、フレッシュさを出すために[17]大部分は本職の声優ではなく、俳優やモデルなどから起用されており、高校生についてはその多くが現役高校生によって演じられている[18]。
作中の展覧会は、細田と大学時代の同級生で、現在は東京国立博物館で研究員を務める松嶋雅人がキュレーションしている。展示品は、「白梅ニ椿菊図」以外は、画面上ではっきり確認できないものも含めて実在する作品である。ほとんどが東博の所蔵品だが、「白梅ニ椿菊図」の向かって右横にある「隠岐配流図」だけはアメリカ・テキサス州のキンベル美術館の所蔵で、これは細田のリクエストによる[注釈 7]。また、細田は松嶋に作家名が不明なものを選ぶように依頼し、「隠岐配流図」の斜め前方にある「親指のマリア」(カルロ・ドルチ画)以外は、作者がはっきりしない作品で構成されている[19][注釈 8]。
テレビ放送
[編集]- 2007年7月21日 - フジテレビ系・『土曜プレミアム』枠でテレビ初放送、視聴率は12.2%(ビデオリサーチ)[21]。
- 2008年7月19日 - フジテレビ系・『土曜プレミアム枠』で放送。視聴率は10.0%。
- 2009年8月11日 - 日本テレビで細田監督による特別編集版を放送。視聴率は7.8%。
- 2010年2月27日 - NHK BShiで放送。
- 2010年3月25日 - NHK BS2で5.1chサラウンドで放送。
- 2011年10月15日 - 朝日放送『ノンスタ石田のガクショク! THE MOVIE』枠で放送。
- 2012年7月16日 - 日本テレビの『映画天国』(25時59分 - 27時50分)にて、細田が監督した『おおかみこどもの雨と雪』の公開記念として放送された。
- 2012年7月17日 - 読売テレビの『火曜ナイトパーク』枠(25時58分 - 28時11分)にて、細田が監督した『おおかみこどもの雨と雪』の公開記念として放送された。
- 2012年8月12日 - 長崎国際テレビ(26時45分 - 28時40分)で放送。
- 2015年7月17日 - 『バケモノの子』公開記念3週連続スペシャルの第3弾として、日本テレビ系『金曜ロードSHOW!』で放送された。視聴率は13.4%。なおこれに先立ち、7月13日深夜に同局の映画番組『映画天国』で、1983年実写版が放送された。
インターネット放送
[編集]- 2012年9月6日 - ニコニコ生放送(22時00分 - 23時46分)にて、「時をかける少女 4DAYS 無料上映会」として放送された。
- 2013年2月中旬~3月中旬、2015年7月17日~ - GYAO!にて無料配信。
海外展開
[編集]- 台湾 - 2007年3月9日、『跳躍吧! 時空少女』(ジャンプ! 時空少女)というタイトルで公開。
- フランス - 2007年7月4日、『la Traversée du Temps』(時間の横断)というタイトルで公開。
- ドイツ - 『Das Mädchen, das durch die Zeit sprang』というタイトルで吹き替え版DVD版が2007年9月24日に発売。
- ポーランド - 2007年10月18日、『O dziewczynie skaczącej przez czas』というタイトルで公開。
- アメリカ合衆国 - 2008年6月、『The Girl Who Leapt Through Time』というタイトルで公開[22]。
受賞
[編集]- 第39回シッチェス・カタロニア国際映画祭アニメーション部門(Gertie Award)最優秀長編作品賞[23]
- 第11回アニメーション神戸賞 作品賞・劇場部門[24]
- 第31回報知映画賞特別賞[25]
- 第10回(平成18年度)文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞[26]
- 第30回日本アカデミー賞 最優秀アニメーション作品賞[27]
- 第1回Invitation AWARDS アニメーション賞[28]
- 第61回毎日映画コンクールアニメーション映画賞[29]
- デジタル・コンテンツ・オブ・ジ・イヤー06/第12回AMDAward 「大賞(総務大臣賞)」「BestDirector」[30]
- 第21回デジタルコンテンツグランプリ優秀賞[31]
- 第6回東京アニメアワード『アニメーション・オブ・ザ・イヤー』、監督賞、原作賞、脚本賞、美術賞、キャラクターデザイン賞[32]
- 第31回アヌシー国際アニメーション映画祭 長編部門特別賞「feature films: Special distinction」[33]
- 第38回星雲賞 メディア部門[34]
- 2007年選定「新日本様式」100選(J100)[35]
- 第26回国際アニメーション映画祭Anima2008(ベルギーブルッセル)BeTV賞
- OACC2008(中国)Golden dragon award
- 第61回日本放送映画藝術大賞 最優秀アニメーション作品賞
国際映画祭の出品に関連し、時をかける少女公式ブログで英語字幕の一部が閲覧できる。
評価
[編集]- マイコミジャーナルのレビューでは、「青春映画の傑作としてアニメに興味がない方にも広くおすすめしたい」と評価した[18]。
- AV Watchでは、「『時かけ』の構成は非常に洗練されている」と評価している[5]。声優初挑戦の配役が大半を占める声優陣についても、おおむね評価している[18][5]。
- 岡田斗司夫は『BSアニメ夜話』の中で、恋愛感情が浮かんでくる寸前を描いているという点で恋愛ドラマとしては「ものすごい作品」とする一方、その代償として描かれる世界が狭くなり、「何か、すごい大きいリアリティみたいなものは失っちゃった」と評価した[36][注釈 9]。
- 原作者の筒井康隆は、「新しく付け加えられたシチュエーションというのは、突っ込もうと思えばいくらでも」[38]、「タイトルと僕の名前さえ出ていれば」[39]などと語ったが、今までの文学になかった世界をアニメーションで描いたことや、現在ならではの「時をかける少女」であることを評価した[40][41]。
- 富野由悠季はイベントで監督と同席した際に、「演出が優れており、実写より上手くまとまっている」、「高校生しか出てこないのでただの風俗映画に見える、キャラクターが活かしきれていない」と評価した。
その他
[編集]本作の主人公の紺野真琴は、アニメの登場人物として初めてアスキーのパソコン雑誌『週刊アスキー』(2006年8月15日号)の表紙を飾った[42][43]。
舞台のモデルの一つとなった東京国立博物館では、2014年10月に本作を夜間に野外上映する催しが行われた[44]。公開10周年となる2016年7月にも2日間企画されたが、うち1日については雨天のため、有料優先券購入者のみを対象とした館内上映となった[45]。野外上映がおこなわれた日は6500人を超える観客が集まり、日本における長編映画の野外上映では最大級の動員となったという[46]。
当作は主題歌を担当した奥華子にとっても出世作の一つとなった。奥は自身のライブ・コンサートにて観客にアンケート用紙を書いて提出するよう求めることが多く、アンケート用紙の中に奥を知るきっかけになった経緯を尋ねる質問が設けられることがあり、その質問がある場合は選択欄に「『時をかける少女』関連」という選択項目が設けられている。[要出典]また、奥はこの作品を通じて細田およびスタジオ地図とは現在も交流があり、細田作品の新作が作られる度に公開前に新作を鑑賞させてもらっているという[47][出典無効]。また、大規模なライブ・コンサートを行う時はコンサート会場に花輪を贈呈されることもある[48]。
漫画
[編集]- 時をかける少女 -TOKIKAKE-(2006年7月発行、ISBN 4047138401)
- 「月刊少年エース」で連載された琴音らんまるによるコミック版。本編では語られていない、芳山和子の過去にも触れている。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 音声コメンタリーでは名前の読みは「せきみ」。
- ^ クルミ形という設定について細田は、『銀河鉄道の夜』に登場するクルミの化石から着想したと述べている[7]。
- ^ 千昭はリストバンドで隠した左手首に表示されていた。表示箇所(チャージした場所との関連等)についての明確な説明や設定はなされていない。
- ^ 真琴が思い付いて実践した操作方法のうち、最初に利用できたものが「助走をつけてジャンプ」であった。
- ^ 原作や1983年版映画では「西暦2660年」の研究者である。
- ^ 監督の細田は、「個人個人が未来を構築する」という立場から、千昭が「個人的な想いから現代にやってくる」設定にしたと述べ、絵の制作背景から未来を想像させる形にしたと話している[10]。
- ^ 「隠岐配流図」は1989年の『室町時代の屏風絵 「国華」創刊100年記念特別展』で、実際に東京国立博物館で展示されたことがある。
- ^ ただし、舟木本「洛中洛外図屏風」については、本作公開後に岩佐又兵衛の作であることが有力視されるようになっている[20]。
- ^ なお、岡田は番組でオンエアされなかった箇所では、「見たことがない」タイムリープ機の表現と(現実にある)携帯電話による会話が共存する世界が、「すごい不思議なリアリティを出している」と評価する発言もおこなっている[37]。
出典
[編集]- ^ 「時をかける少女」公式ブログ (2006年6月13日). “映画公開日が確定しました”. 2007年12月19日閲覧。
- ^ シネマトゥデイ (2006年8月10日). “ネットの口コミで大ヒット?『時をかける少女』は連日超満員!”. 2007年12月19日閲覧。
- ^ NBonline (2006年9月15日). “【ヒットの“共犯者”に聞く】映画「時かけ」の場合 I”. 2007年12月19日閲覧。
- ^ マイコミジャーナル (2007年4月26日). “『時をかける少女』DVD発売 - 生みの親に聞いた「今だから言えるヒットの"秘密"”. 2007年12月22日閲覧。
- ^ a b c d AV Watch編集部 (2007年4月24日). “買っとけ!DVD 第238回 話題になってるけど面白いの?'06年最高のアニメ映画「時をかける少女」”. 2007年12月22日閲覧。
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参考文献
[編集]- 『時をかける少女 NOTEBOOK』 ニュータイプ編、角川書店、2006年。ISBN 4-04-853989-2。
- アニメスタイル編集部(編)『時をかける少女 絵コンテ 細田守』飛鳥新社、2006年
- 『BSアニメ夜話vol.9 時をかける少女』キネマ旬報社、2008年。