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原子力艦再利用プログラム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

原子力艦再利用プログラム (Ship/Submarine Recycling Program, SRP) は、原子力船を処分するためにアメリカ海軍が使用するプロセスである。同プログラムはワシントン州ブレマートンピュージェット・サウンド海軍造船所でのみ実施される。しかし、同プログラムの準備は他の場所で行われる場合がある。

プログラム

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SRPプログラム開始前の核燃料除去のため、上部構造物を撤去され除去設備が装着されたCGN-38 バージニア

SRPプログラムの開始に先立って、艦から核燃料を取り出す必要がある。これは通常退役と同時に行われる。退役前は「合衆国の船」(United States Ship) を意味する「USS」が艦名に付いているが、退役後は「USS」が外され「ex-Name」(元xxxx)と呼ばれる。潜水艦燃料棒抜き取りは西海岸の5つの施設で行われ、燃料抜き取り後の船体はピュージェット・サウンド海軍造船所へ曳航される。再使用可能な設備は燃料と同時に取り外される。

使用済み核燃料はアイダホ州アイダホ・フォールズの67km北西に位置するアイダホ国立研究所 (Idaho National Engineering and Environmental Laboratory, INEEL) 内の海軍原子炉施設 (Naval Reactor Facility, NRF) に鉄道輸送され格納される。核燃料の再処理は行われない。

SRPプログラム専従となったピュージェット・サウンド海軍造船所でプログラムが開始される。潜水艦は船体を前部、原子炉コンパートメント、もしあればミサイルコンパートメント、そして後部の3つか4つの部分に切断される。ミサイルコンパートメントはSTART Iに従って分解される。原子炉コンパートメントは両端を密閉され、はしけおよび重量貨物車によってワシントン州にあるエネルギー省ハンフォード・サイトへ運ばれ埋め立て処理される。埋設のために掘られた溝は、原子炉保管区画の最も重要な密封エリアから少なくとも600年間は針の先ほども漏らさず、数千年間は漏洩が起きないと評価されている。

1991年まで、潜水艦の前部と後部は再接合して浮体保管所に係留されていた。処分方法としては、標的として海没させることを含めて複数考慮されていたが、いずれも経済的に問題があった。特に、環境保護局 (EPA) と沿岸警備隊 (US Coast Guard) からはポリ塩化ビフェニル (PCB) を初めとする様々な環境汚染物質を船体から除去するよう要請された。この要請に対応しつつ処分コストを削減するため、残りのセクションを再利用し、再使用できる部材は再生産に回されることになった。再利用の過程で危険あるいは有毒な廃棄物はすべて特定されて除去され、再使用可能な設備は撤去して在庫に入れられる。また、金属スクラップおよび他の材料は民間会社に売却されるかあるいは再使用される。全ての過程で利益をあげられる訳ではないものの、ある程度のコストが削減できる。このSRPプログラムによる潜水艦の処理には、1隻当たり2,500万-5,000万USドルを要する。

2005年の終わりまでに195隻の原子力潜水艦が建造あるいは発注された(NR-1深海潜行艇およびバージニアを含む)。最後のスタージョン級原子力潜水艦L・メンデル・リヴァーズ (USS L. Mendel Rivers, SSN-686) は2001年に退役し、スタージョン級の高度改修型であるパーチェ (USS Parche, SSN-683) は2004年に退役した。「自由のための41隻」の最後の1隻であるカメハメハ (USS Kamehameha, SSBN-642) は2002年に退役した。ロサンゼルス級原子力潜水艦の退役は1995年に始まり、大きく損傷したバトンルージュ (USS Baton Rouge, SSN-689) が最初に退役する艦となった。さらに、数隻が建造された原子力巡洋艦もプログラムに加えられた。それらの処理は進行中である。

アメリカ海軍が保有する原子力空母のうち、世界初の原子力空母「CVN-65 エンタープライズ」は2012年12月1日付で退役し、本プログラムに回された。

原子力巡洋艦

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艦名 船体番号 開始年月日 完了年月日
ロングビーチ(ex-Long Beach) CGN-9 2002年9月25日 2012年7月12日
ベインブリッジ(ex-Bainbridge) CGN/DLGN-25 1997年10月1日 1999年10月30日
トラクスタン(ex-Truxtun) CGN/DLGN-35 1997年10月1日 1999年4月28日
カリフォルニア(ex-California) CGN/DLGN-36 1998年10月1日 2000年5月12日
サウスカロライナ(ex-South Carolina) CGN/DLGN-37 2007年10月1日 未着手
ヴァージニア(ex-Virginia) CGN-38 1999年10月1日 2002年9月25日
テキサス(ex-Texas) CGN-39 1999年10月1日 2001年10月30日
ミシシッピ(ex-Mississippi) CGN-40 2004年10月1日 2007年11月30日
アーカンソー(ex-Arkansas) CGN-41 不明 1999年11月1日

攻撃型原子力潜水艦

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ジョージ・ワシントン級原子力潜水艦のいくつかは弾道ミサイル原子力潜水艦であったが、退役前に攻撃型原子力潜水艦に艦種変更されたため以下にリストする。

艦名 (船体番号) 開始年月日 完了年月日
ex-Seawolf (SSN-575) 1996年10月1日 1997年9月30日
ex-Skate (SSN-578) 1994年4月14日 1995年3月6日
ex-Swordfish (SSN-579) 不明 1995年9月11日
ex-Sargo (SSN-583) 1994年4月14日 1995年4月5日
ex-Seadragon (SSN-584) 1994年10月1日 1995年9月18日
ex-Skipjack (SSN-585) 1996年3月17日 1998年9月1日
ex-Triton (SSN-586) 2007年10月1日 未着手
ex-Halibut (SSN-587) 1993年7月12日 1994年9月9日
ex-Scamp (SSN-588) 1990年 1994年9月9日
ex-Sculpin (SSN-590) 2000年10月1日 2001年10月30日
ex-Shark (SSN-591) 1995年10月1日 1996年6月28日
ex-Snook (SSN-592) 1996年10月1日 1997年6月30日
ex-Permit (SSN-594) 1991年9月30日 1993年5月20日
ex-Plunger (SSN-595) 1995年1月5日 1996年3月8日
ex-Barb (SSN-596) 不明 1996年3月14日
ex-Tullibee (SSN-597) 1995年1月5日 1996年4月1日
ex-George Washington (SSBN/SSN-598) 不明 1998年9月30日
ex-Patrick Henry (SSBN/SSN-599) 1996年10月1日 1997年8月31日
ex-Robert E. Lee (SSBN/SSN-601) 不明 1991年9月30日
ex-Pollack (SSN-603) 1993年2月9日 1995年2月17日
ex-Haddo (SSN-604) 不明 1992年6月30日
ex-Jack (SSN-605) 不明 1992年6月30日
ex-Tinosa (SSN-606) 1991年7月15日 1992年6月26日
ex-Dace (SSN-607) 不明 1997年1月1日
ex-Ethan Allen (SSBN/SSN-608) 不明 1999年7月30日
ex-Sam Houston (SSBN/SSN-609) 1991年3月1日 1992年2月3日
ex-Thomas A. Edison (SSBN/SSN-610) 1996年10月1日 1997年12月1日
ex-John Marshall (SSBN/SSN-611) 1992年7月22日 1993年3月29日
ex-Guardfish (SSN-612) 不明 1992年7月9日
ex-Flasher (SSN-613) 不明 1994年5月11日
ex-Greenling (SSN-614) 不明 1994年9月30日
ex-Gato (SSN-615) 不明 1996年11月1日
ex-Haddock (SSN-621) 2000年10月1日 2001年10月1日
ex-Sturgeon (SSN-637) 不明 1995年12月11日
ex-Whale (SSN-638) 1995年10月20日 1996年7月1日
ex-Tautog (SSN-639) 2003年3月15日 2004年9月30日
ex-Kamehameha (SSBN/SSN-642) 2001年10月1日 2003年2月28日
ex-James K. Polk (SSBN/SSN-645) 1999年2月16日 2000年7月15日
ex-Grayling (SSN-646) 1997年7月18日 1998年3月31日
ex-Pogy (SSN-647) 1999年1月4日 2000年4月12日
ex-Aspro (SSN-648) 1999年10月1日 2000年11月3日
ex-Sunfish (SSN-649) 不明 1997年10月31日
ex-Pargo (SSN-650) 1994年10月1日 1996年10月15日
ex-Queenfish (SSN-651) 1992年5月1日 1993年4月7日
ex-Puffer (SSN-652) 1995年10月20日 1996年7月12日
ex-Ray (SSN-653) 2002年3月15日 2003年7月30日
ex-Sand Lance (SSN-660) 1998年4月1日 1999年8月30日
ex-Lapon (SSN-661) 2003年3月15日 2004年11月30日
ex-Gurnard (SSN-662) 不明 1996年10月15日
ex-Hammerhead (SSN-663) 不明 1995年11月22日
ex-Sea Devil (SSN-664) 1998年3月1日 1999年9月7日
ex-Guitarro (SSN-665) 不明 1994年10月18日
ex-Hawkbill (SSN-666) 1999年10月1日 2000年12月1日
ex-Bergall (SSN-667) 不明 1997年9月29日
ex-Spadefish (SSN-668) 1996年10月1日 1997年10月24日
ex-Seahorse (SSN-669) 1995年3月1日 1996年9月30日
ex-Finback (SSN-670) 不明 1997年10月30日
ex-Narwhal (SSN-671) 2015年6月1日 (博物館として公開
する計画であったが
取り消された。)
ex-Pintado (SSN-672) 1997年10月1日 1998年10月27日
ex-Flying Fish (SSN-673) 不明 1996年10月15日
ex-Trepang (SSN-674) 1999年1月4日 2000年4月7日
ex-Bluefish (SSN-675) 2002年3月15日 2003年11月1日
ex-Billfish (SSN-676) 不明 2000年4月26日
ex-Drum (SSN-677) 2008年12月1日 未着手
ex-Archerfish (SSN-678) 不明 1998年11月6日
ex-Silversides (SSN-679) 2000年10月1日 2001年10月1日
ex-William H. Bates (SSN-680) 2002年10月1日 2002年10月30日
ex-Batfish (SSN-681) 不明 2002年11月22日
ex-Tunny (SSN-682) 1997年10月1日 1998年10月27日
ex-Parche (SSN-683) 2004年9月30日 2006年11月30日
ex-Cavalla (SSN-684) 1999年10月1日 2000年11月16日
ex-Glenard P. Lipscomb (SSN-685) 不明 1997年12月1日
ex-L. Mendel Rivers (SSN-686) 2000年11月29日 2002年7月19日
ex-Richard B. Russell (SSN-687) 2001年10月1日 2002年9月19日
ex-Los Angeles (SSN-688) 2018年6月1日 未着手
ex-Baton Rouge (SSN-689) 1995年1月13日 1997年9月30日
ex-Philadelphia (SSN-690) 2019年9月1日 未着手
ex-Memphis (SSN-691) 2010年12月14日 未着手
ex-Omaha (SSN-692) 2009年10月1日 未着手
ex-Cincinnati (SSN-693) 2009年10月1日 未着手
ex-Groton (SSN-694) 2012年6月1日 未着手
ex-Birmingham (SSN-695) 2012年6月1日 未着手
ex-New York City (SSN-696) 2011年6月1日 未着手
ex-Indianapolis (SSN-697) 2013年10月1日 未着手
ex-Bremerton (SSN-698) 2014年2月13日 未着手
ex-Jacksonville (SSN-699) 2014年3月31日 未着手
ex-Dallas (SSN-700) 2014年6月26日 未着手
ex-La Jolla (SSN-701) 2014年9月30日 未着手
ex-Phoenix (SSN-702) 2013年6月1日 未着手
ex-Boston (SSN-703) 2001年10月1日 2002年9月19日
ex-Baltimore (SSN-704) 2013年6月1日 未着手
ex-City of Corpus Christi (SSN-705) 2015年11月24日 未着手
ex-Albuquerque (SSN-706) 2016年4月14日 未着手
ex-Portsmouth (SSN-707) 2015年6月1日 未着手
ex-Minneapolis-St. Paul (SSN-708) 2018年6月1日 未着手
ex-Hyman G. Rickover (SSN-709) 2016年9月30日 未着手
ex-Augusta (SSN-710) 2019年9月1日 未着手
ex-San Francisco (SSN-711) 2017年11月1日 未着手
ex-Atlanta (SSN-712) 2013年10月1日 未着手
ex-Houston (SSN-713) 2015年9月21日 未着手
ex-Norfolk (SSN-714) 2016年5月7日 未着手
ex-Salt Lake City (SSN-716) 2015年9月30日 未着手
ex-Honolulu (SSN-718) 2006年11月1日 進行中
  • †:船体が記念艦として保存されている。詳細は個々の記事を参照
  • ‡:パーチェの日付は2004年度会計予算で公式に示された物。実際は10月19日まで作業は開始されなかった。

弾道ミサイル原子力潜水艦

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ラファイエット級原子力潜水艦のいくつかは弾道ミサイル原子力潜水艦であったが、攻撃型原子力潜水艦に艦種変更、訓練用に係留され再利用プログラムの予定にない。

艦名 (船体番号) 開始年月日 完了年月日
攻撃型原子力潜水艦を参照 - (SSBN/SSN-598) n/a n/a
攻撃型原子力潜水艦を参照 - (SSBN/SSN-599) n/a n/a
ex-Theodore Roosevelt (SSBN-600) 不明 1995年3月24日
攻撃型原子力潜水艦を参照 - (SSBN/SSN-601) n/a n/a
ex-Abraham Lincoln (SSBN-602) 不明 1994年5月5日
攻撃型原子力潜水艦を参照 - (SSBN/SSN-608) n/a n/a
攻撃型原子力潜水艦を参照 - (SSBN/SSN-609) n/a n/a
攻撃型原子力潜水艦を参照 - (SSBN/SSN-610) n/a n/a
攻撃型原子力潜水艦を参照 - (SSBN/SSN-611) n/a n/a
ex-Lafayette (SSBN-616) 1991年3月1日 1992年2月25日
ex-Alexander Hamilton (SSBN-617) 1993年2月23日 1994年2月28日
ex-Thomas Jefferson (SSBN-618) 1996年10月1日 1998年3月6日
ex-Andrew Jackson (SSBN-619) 不明 1999年8月30日
ex-John Adams (SSBN-620) 不明 1996年2月12日
ex-James Monroe (SSBN-622) 不明 1995年1月10日
ex-Nathan Hale (SSBN-623) 1991年10月2日 1995年4月5日
ex-Woodrow Wilson (SSBN-624) 1997年9月26日 1998年10月27日
ex-Henry Clay (SSBN-625) 不明 1997年9月30日
ex-Daniel Webster (MTS-626) 訓練艦へ改修 n/a
ex-James Madison (SSBN-627) 不明 1997年10月24日
ex-Tecumseh (SSBN-628) 1993年2月15日 1994年4月1日
ex-Daniel Boone (SSBN-629) 不明 1994年11月4日
ex-John C. Calhoun (SSBN-630) 不明 1994年11月18日
ex-Ulysses S. Grant (SSBN-631) 不明 1993年10月23日
ex-Von Steuben (SSBN-632) 2000年10月1日 2001年10月30日
ex-Casimir Pulaski (SSBN-633) 不明 1994年10月21日
ex-Stonewall Jackson (SSBN-634) 不明 1995年10月13日
ex-Sam Rayburn (MTS-635) 訓練艦へ改修 n/a
ex-Nathanael Greene (SSBN-636) 1998年9月1日 2000年10月20日
ex-Benjamin Franklin (SSBN-640) 不明 1995年8月21日
ex-Simon Bolivar (SSBN-641) 1994年10月1日 1995年12月1日
ex-George Bancroft (SSBN-643) 不明 1998年3月30日
ex-Lewis and Clark (SSBN-644) 1995年10月1日 1996年9月23日
ex-George C. Marshall (SSBN-654) 不明 1994年2月28日
ex-Henry L. Stimson (SSBN-655) 不明 1994年8月12日
ex-George Washington Carver (SSBN-656) 不明 1994年3月21日
ex-Francis Scott Key (SSBN-657) 不明 1995年9月1日
ex-Mariano G. Vallejo (SSBN-658) 1994年10月1日 1995年12月22日
ex-Will Rogers (SSBN-659) 1993年4月12日 1994年8月12日

プログラムは進行中であり、このリストは不完全である。

サム・レイバーン (USS Sam Rayburn, SSBN-635) は訓練艦に改修され、繫留訓練艦 (Moored Training Ship) に艦種変更 (Sam Rayburn, MTS-635) された。サム・レイバーンの改修は1986年2月1日に始まり、1989年7月29日に訓練艦として最初の臨界を達成した。改修は推進主軸によって生成された力を吸収するメカニズムを含む特別な係留装置が取り付けられた。ダニエル・ウェブスターは1993年に2隻目の繫留訓練艦 (MTS-2/MTS-626) に変更された。繫留訓練艦はサウスカロライナ州グースクリークのチャールストン海軍兵器施設に係留される。サム・レイバーンは2014年まで繫留訓練艦として4年間隔で信頼性試験を受けながら活動予定である。