天竺五精舎
天竺五精舎(てんじくごしょうじゃ)とは、古代インドにあった初期仏教の5つの精舎(伽藍・寺院)をいう。天竺五山(てんじくごさん、ござん)ともいう。
一般的には、三蔵法数24に示される5つの精舎を指して呼称する。
- 竹林精舎(ちくりんしょうじゃ)
- 仏教で最初に建立された精舎といわれる。中インド、マガダ国の首都、王舎城(ラージャガハ)にあった。カランダ(迦蘭陀)長者の所有する林園で最初はジャイナ教に貸与していたが、カランダ長者が釈迦仏に帰依してからは仏教徒の僧園となった。ビンビサーラ(頻婆娑羅)王の寄進で伽藍が完成した。
- 祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)(祇樹給孤独園精舎(ぎじゅぎつこどくおんしょうじゃ)の略称)
- 身寄りのない者に施しをしていたスダッタ(須達多)長者が、ジェータ(祇陀)太子が所有する森を譲り受けて、コーサラ国の舎衛城近郊に建立した精舎。現在のサヘート遺跡とされる。
- 菴羅樹園精舎(あんらじゅおんしょうじゃ)
- 中インド、ヴェーサリー(毘舎離)のアンバパーリー(漢訳:菴摩羅女=あんまらにょ、マンゴーのこと)が所有していた、マンゴー樹園を寄進して建てられた精舎。
- 大林精舎(重閣講堂、彌猴池精舎とも)
- ヴェーサリー(毘舎離)の獼(彌)猴池(みこうち、彌猴とは大きな猿で、その池にたくさんいた)の附近の大森林中にあった講堂、また説法の時に使用していた精舎。
- 霊鷲精舎(りょうじゅしょうじゃ)
- マガダ国の王舎城(ラージャガハ)の霊鷲山(グリドラクータ)にあった精舎。
『大智度論』3では、以下の場所を挙げる。
- 鞞婆羅跋恕 (Vaibhāra-vana)
- 薩多般那求呵(Saptaparṇaguhā、南山石室)
- 因陀羅勢羅求呵 (Indraśailaguhā、帝釈窟)
- 薩簸恕魂直迦鉢婆羅 (Sarpiṣkuṇḍikā-prāgbhāra)
- 耆闍崛 (Gṛdhrakūta)
なお、五精舎あるいは五山の名称には差異があり、以下の5つをいう場合もある。
- 竹林精舎
- 祇園精舎
- 大林精舎
- 誓多林精舎(せいたりん)
- 那蘭陀寺(ナーランダ僧院) - マガダ国にあった寺院。なお、これは釈迦の死後に建てられた寺院である。
上記の5つを五精舎と呼ぶ場合も多い。ただし「誓多林」は「逝多林」とも書き、Jeta(ジェータ)太子が所有していた林園に建てられた祇園精舎のことをいい、これでは4つになってしまうので五精舎にはならない。
この他には、
- 鹿苑(鹿野苑)
- 祇園
- 大林
- 竹林
- 那蘭陀
を挙げる場合もある。(鹿苑ではなく鹿子母講堂を充てる場合もある。)
各地の五山[編集]
この天竺五精舎十塔所(また五山十刹)が、中国南宋の時代に模せられ、いわゆる支那五山・支那十刹ができ、また日本の鎌倉期の鎌倉五山・京都五山や日本十刹が起こったとされる。主に禅宗がそれに倣った。