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奥山和由

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おくやま かずよし
奥山 和由
奥山 和由
生年月日 (1954-12-04) 1954年12月4日(70歳)
出生地 日本の旗 日本愛媛県
職業 映画プロデューサー映画監督
ジャンル 映画
主な作品
ハチ公物語』/『その男、凶暴につき
いつかギラギラする日』/『無能の人
ソナチネ』/『GONIN』/『RAMPO
忠臣蔵外伝 四谷怪談』/『うなぎ
受賞
藤本賞
1987年ハチ公物語
1991年外科室
TAMA映画祭
最優秀作品賞

2020年海辺の映画館―キネマの玉手箱
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奥山 和由(おくやま かずよし、1954年12月4日 - )は、日本映画プロデューサー映画監督

松竹株式会社専務取締役を経て、現在は株式会社チームオクヤマ代表取締役社長。株式会社KATSU-do代表取締役会長[1]。株式会社祇園会館代表取締役社長。吉本興業株式会社エグゼクティブプロデューサー。沖縄国際映画祭エグゼクティブディレクター。実父は松竹元社長である奥山融。母方の曽祖父は教育者の横地石太郎

来歴

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生い立ち

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愛媛県で生まれ、東京都で育つ[2][3]東京学芸大学の附属小学校~付属中学校に通い[3]東京学芸大学附属高等学校に上がる予定だったが[3]、映画好きが高じ、渋谷全線座に学校終わりにバス一本で通える東京都立戸山高等学校に進学し、同校卒業[2]。ハードアクションが好きでやはり『仁義なき戦い』に行き着いた[3]東映実録路線の暴走に濁流のように飲み込まれ、頭の中は東映一色[3]、「健全映画の『男はつらいよ』って何?」という感覚だったという[3]学習院大学経済学部経済学科入学[3]。学生生活の終盤に自ら志願して斉藤耕一監督の八王子の自宅に押しかけ、父親の話はせず偽名を使って、弟子入り[3]。斉藤監督が当時撮っていたのは野口五郎主演の『季節風』でフォースの助監督として雑用係に勤しむ[3]。長く続く映画斜陽の影響で多くの助監督が監督に昇格する機会を失い、くすぶり続ける状況[4]松竹大船スタッフは社員で固まっているところに、斉藤監督が連れて来たどこのどいつか分からない若者に公然と酷いイジメに遭った[3]。ずっと培ってきた"不良性感度"で「いずれぶっ壊して革命してやるわ」という覚悟を持ち続けた[3]。『季節風』で唯一、優しい声をかけてくれたのが大竹しのぶで、女優から声をかけられるという興奮に別世界に足を踏み入れたという実感を持った[3]。『季節風』のラッシュでそれまでプロデューサー監督が大きな権限を持っていると思っていた映画は、大手映画会社の作品では編集音楽の選定には、あまり権限がないことを知る[3]。「クロード・ルルーシュ風に作る」と言っていた斎藤監督に「音楽酷くないですか?」と聞いたら「歌謡映画だからね。こういう感じでやらなきゃしょうがない。まず予算がないんだよ」と言われショックを受ける[3]。会社の中枢に入って幹部として映画を握らなければ何も変えられないと気付いた[3]。当然目指すのは東映で、東映京都撮影所深作欣二に会いに行ったり、手紙を書いたりし、深作と飲み機会もあり、東映に入るつもりだった[3]。ところがアルバイト経験があった『キネマ旬報』の黒井和男に呼び出され、「お前の親父から変な動きをするなと伝えられている」と釘を刺された[3]。奥山は「親から勘当されて松竹に行けるわけない。それで東映に入るつもりです」と言ったら、「親父さんがそんなことをするぐらいなら松竹に入れと言ってるぞ」と言われ、深作から甘い世界じゃないよと諭されていたこともあり、熟考の末、大学卒業後の1979年7月、松竹に入社した[3]

松竹入社

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経理部を経て興業部にいたとき、 升本喜年プロデューサーに出会う[5]。升本はメロドラマや文芸映画、喜劇映画と言った健全路線にある松竹では珍しく、安藤昇と組んで『血と掟』や『男の顔は履歴書』といったヤクザ映画を作っていた松竹内では異色のプロデューサーで、当時はテレビ部にいたが、升本の口利きでテレビ部に移り[5]、『火曜サスペンス劇場』などを手掛けた[5]大船撮影所が傾き、独立採算で切り離されて松竹撮影所製作部が升本と奥山の二人で発足され[6]1981年撮影所付きの映画プロデューサーとなる[5]

松竹取締役解任・退社

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1998年1月 松竹の専務取締役だったが、取締役会の緊急動議で、父で社長の奥山融氏と一緒に松竹取締役を業績不振を理由に解任された(奥山解任騒動)。

シネマジャパネスク

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シネマジャパネスク(CINEMA JAPANESQUE)は、奥山和由が中心となって進められたプロジェクトで、従来の全国画一的なブロックブッキングと異なる、邦画の新しい製作・興行体制の構築を目指すというものであった。1億円前後の低予算で作った映画を、3~4館ほどのシネマジャパネスク専用上映館を基本に、作品規模やテイストに応じて上映館の数を臨機応変に変化させるというものだった。また、CS放送チャンネル「衛星劇場」のオリジナルコンテンツ製作の側面も持たせるため、「衛星劇場」の名称は「シネマジャパネスク」に変更された。解任事件により1997年の10ヶ月間のみの短命プロジェクトとなってしまったが、奥山の前面指揮によって有望な若手監督による数多くの邦画が製作され、日本映画界のプロ達の投票によって選出される1997年第7回日本映画プロフェッショナル大賞では功績を評価され特別賞を受賞している。

プロジェクトの第1作となる『傷だらけの天使』(監督:阪本順治)は[注 1]、2作目として製作された『うなぎ』[注 2]はカンヌで最高賞のパルムドール賞を受賞した話題性もあり、興行的に貢献した。それ以降の作品は、『東京夜曲』(監督:市川準)、『CURE』(監督:黒沢清)、『バウンス ko GALS』(監督:原田眞人)、そして翌年のカンヌ国際映画祭正式出品となった『フラワーズ・オブ・シャンハイ』(監督:侯孝賢)など、世界各国の映画祭の多くの賞を受賞したが、興行的には振るわなかった。

1998年1月の奥山解任劇をもって「シネマジャパネスク」は終焉を迎えた。当時同プロジェクト内で撮影が進行・完成・上映間近になっていた映画は撮影中止や上映延期になり、CS放送の名前は再び「衛星劇場」に戻された。『ルーズボーイ』などお蔵入りになったままの作品もある。また、後に無事上映された映画からは「製作総指揮:奥山和由」のクレジットが外され、奥山色は一掃された。

主な作品

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出演

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テレビ

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ラジオ

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個人受賞歴

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  • 日本アカデミー賞企画賞(1985年)『恋文』
  • ゴールデングロス賞(1987年)『ハチ公物語』
  • 藤本賞(1987年)『ハチ公物語』
  • Genesis Award(米国)(1987年)『ハチ公物語』
  • 日本映画興業連盟マネーメイキング賞(1987年)『ハチ公物語』
  • 日本映画テレビプロデューサー協会賞(1992年)『遠き落日』
  • 経済界若手経営者賞(1993年)
  • 藤本賞奨励賞(1993年)『外科室』
  • スポニチグランプリ文化芸術大賞(1993年)『外科室』『パテオ』の新しい興業方法に対して
  • 日本アカデミー賞優秀監督賞(1994年)『RAMPO』
  • 日本アカデミー賞優秀脚本賞(1994年)『RAMPO』
  • ファンタスボルト映画祭最優秀監督賞(ポルトガル)(1994年)『RAMPO』
  • ソチ国際映画祭フィブレッシ賞(ロシア)(1994年)『RAMPO』
  • スポーツニッポン映画賞(1994年)『RAMPO』
  • カンヌ国際映画祭パルムドール賞(1997年)『うなぎ』
  • 日本映画プロフェッショナル大賞特別賞(1998年)『シネマジャパネスク』などプロデューサーとしての功績に対して
  • 山梨文学シネマアワード(2013年)日本映画界における長年の功績に対して

書籍

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共著

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関連書籍

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  • 春日太一『黙示録 映画プロデューサー・奥山和由の天国と地獄』文藝春秋、2019年。ISBN 9784163911083 

脚注

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注釈

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  1. ^ シネマジャパネスク発足以前に完成していたため製作費1億7000万円、松竹発表の配給収入は3500万円前後[9]
  2. ^ 『傷だらけの天使』同様にシネマジャパネスク発足以前に完成していたため製作費1億7000万円[9]

出典

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  1. ^ a b 吉本興業、映画会社を設立”. シネマトゥデイ (2014年10月6日). 2014年10月6日閲覧。
  2. ^ a b c BIOGRAPHY”. Team Okuyama. 2022年1月11日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 黙示録 2019, pp. 3–12.
  4. ^ 黙示録 2019, pp. 3–18.
  5. ^ a b c d 黙示録 2019, pp. 12–18.
  6. ^ 黙示録 2019, pp. 19–26.
  7. ^ 黙示録 2019, pp. 18–419.
  8. ^ 映画プロデューサー奥山和由さん、新作「女たち」公開 「まだまだ、やめない」(1/2ページ)”. 産経ニュース (2021年6月2日). 2021年6月4日閲覧。
  9. ^ a b 大高宏雄『日本映画逆転のシナリオ』WAVE出版、2000年4月24日、24-25頁。ISBN 978-4-87290-073-6https://books.google.co.jp/books?id=JKFtAAAACAAJ&redir_esc=y&hl=ja 
  10. ^ 奥山和由と千住明が語る映画音楽第4回<新時代の展開>”. ベストライフ・オンライン (2003年7月30日). 2022年7月29日閲覧。
  11. ^ 映画『RAMPO』公開
  12. ^ 映画『SCORE』公開

外部リンク

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