コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

想い出のロックン・ローラー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
無造作紳士から転送)
『想い出のロックン・ローラー』
ジェーン・バーキンスタジオ・アルバム
リリース
録音 1977年8月; フォノグラム・スタジオ (ロンドン)
ジャンル ロック、ポップ
時間
レーベル フォンタナ・レコード
プロデュース フィリップ・ルリショム
ジェーン・バーキン アルバム 年表
ロリータ・ゴー・ホーム
(1975年)
想い出のロックン・ローラー
(1978年)
バビロンの妖精
(1983年)
テンプレートを表示

想い出のロックン・ローラー』(おもいでのロックン・ローラー、原題: ex fan des sixties[* 1])は、ジェーン・バーキンのスタジオ・アルバムである。ソロ・アルバムとして3枚目になるこのアルバムは1978年にリリースされた。アルバムのすべての歌がバーキンの内夫セルジュ・ゲンスブールによる作である。1960年代のロック・スターを歌った表題曲の他、ニューオーリンズ風のビート、エレガントなポップなど多様なサウンドアプローチがある斬新なアルバムであり、この内夫ゲンスブールの才能が存分に発揮されている[1]。この作品によりバーキンの歌手としての地位が確立した[2][3]

このレコードは幾度かにわたりCD化され(フランス: 1998年2001年、日本: 1999年2011年など)[4]、2001年フランス盤は[* 2]、ボーナストラックが3曲付いている(「ジョニー・ジェーンのバラード Ballade De Johnny-Jane」、「Raccrochez C'Est Une Horreur[* 3]、「哀しみの影 Yesterday Yes A Day[* 4])。

2011年日本盤は[* 5]、ゲンスブール没後20年/ゲンスブール・フォーエヴァー&映画公開記念である。ゲンスブール没後20年ということでゲンスブール関連のCDとDVD計18作品が5月11日に同時リリースになり、その中の1枚が『想い出のロックン・ローラー』である[5]。公開映画とは2010年のフランス映画で2011年5月21日に日本で公開となった『ゲンスブールと女たち』である[5]。バーキンはこの前月の2011年4月6日に日本で震災復興支援コンサート「Together for Japan」を開催した[6]

収録曲

[編集]
  1. 想い出のロックン・ローラー Ex-fan des sixties (3:00)
    —— アルバムの表題曲。ザ・ビートルズのメンバー等、1960年代の著名なロックン・ローラーへのオマージュ。フランスで大ヒット[2]。バーキンにとっては歌うのが難しい曲で、リズムがよくわからなかったのだがゲンスブールはそのようなバーキンの状態を理解していなかったとバーキン本人が言っている[7]。この表題曲は日本の女優安田成美が「思い出のロックンロール」という題名の日本語カバー[8]1988年に発表した[* 6]。音楽グループピチカート・ファイヴ最後のボーカリスト野宮真貴は、2015年11月13日から始まったビルボードライブ公演において「想い出のロックンローラー」をカバーした[9][10]

  2. リップスティック黙示録 Apocalypstick (2:35)[11]

  3. Zによる問題集 Exercice en forme de Z (2:30)
    —— 歌の中の「ザジ」とはレーモン・クノーの小説『地下鉄のザジ』(1959年)のヒロインの少女。

  4. 禁じられたメロディ Mélodie interdite (3:10)

  5. 無造作紳士 L'aquoiboniste (2:18)
    —— 「aquoiboniste」(「"何にもならない"屋さん」)は、ゲンスブールの友人で何も気にしない男であるジャック・デュトロン(歌手、ギタリスト、俳優)がモデルになっていて[12]、この曲はデュトロンへのオマージュである[13]。ゲンスブールによる造語「aquoiboniste」は、「à quoi bon」(何にもならない)に「-iste」(-主義者)を付けたもの[14]。ロック・ジャーナリストたちは、憂鬱でシニカルなミュージシャンを評する際に「aquoiboniste」という言葉を使用するようになった[12]。フランスの歌手フランソワーズ・アルディがこの曲を拒否した[12]。フランソワーズ・アルディは1981年にジャック・デュトロンと結婚した。
    カジノ・ド・パリで行われたバーキンによる1992年のゲンスブール追悼ライブ第1曲を飾った[15]
    日本のTVドラマ『美しい人』(1999年10月15日-12月17日)の主題歌に起用。ドラマ放映期間中の1999年11月1日、日本限定企画ベストアルバム『ベスト』(レーベル: マーキュリー・ミュージックエンタテインメント、カタログ番号: PHCA-1065)がリリースされ、その先行シングル「無造作紳士」(カタログ番号: PHDR-955)が10月27日に日本でリリース。このドラマを放映したTBSの公式サイトにマーキュリー・ミュージックエンタテインメントによる日本語の対訳(田中まこ・訳)が掲載された[16]
    1999年12月8日、日本の音楽家岡崎律子が歌う日本語カバーシングル「アクアボニスト[* 7]」(日本語詞: かの香織、編曲: 門倉聡)がリリース。
    モーニング娘。の2代目リーダー飯田圭織は、ゲンスブールのフランス語歌詞でカバーした(2003年の飯田ソロデビュー・アルバム『オサヴリオ〜愛は待ってくれない〜[17]シャ乱Qライブビデオ『シャ乱Q ライブツアー 2006 秋の乱 ズルい「Live Live Live」』収録)。
    日本の歌手岩崎良美もまた「無造作紳士」をよく歌い[18]、フランス語歌詞で歌うことができる[19]。DVD『岩崎宏美・岩崎良美 Precious Night』(2008年)にフランス語歌詞によるカバーを収録(編曲: 藤野浩一)。
    2012年、日本のアパレルメーカーナノ・ユニバースnano・universe)はプライベートブランドAQUOIBONISTE」(アクアボニスト)を開始した。このブランドは作詞作曲したセルジュ・ゲンスブール本人をイメージモデルとしている[20]
    2014年MBSラジオ松井愛のすこ〜し愛して★』のコーナー「スナック愛」のオープニングテーマ曲に起用。

  6. 愛の受難 Vie et résurrection d'un amour passion (3:07)

  7. ニコチン Nicotine (2:30)

  8. 瞑想のロッキング・チェア Rocking chair (2:12)
    —— 歌詞はフランス語[* 8]。この曲はマリティとジルベール・カルパンティエのテレビショウのためにゲンズブールが作り、1974年にそれを歌ったのはイザベル・アジャーニである[21]

  9. 気力減退 Dépressive (3:40)
    —— この第9曲(B面第3曲)は、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの初期代表作ソナタ第8番作品13『大ソナタ悲愴』にインスパイアされた。

  10. 柔かい感触 Le velour des vierges (2:59)
    —— フランスの歌手エロディ・フレージュがカバーした(フレージュの2枚目のアルバム『Le Jeu des 7 erreurs』に収録)。

  11. X型クラセックス Classée X (2:07)

  12. メロ・メロ・メロディ Mélo mélo (2:45)
    —— シングルカット盤「想い出のロックン・ローラー」B面に「メロ・メロ・メロディー」(日本盤シングルでは長音が付く)として収録。

作詞・作曲: セルジュ・ゲンスブール

メンバー

[編集]
ボーカル ジェーン・バーキン
ベース ブライアン・オッジャーズ
ドラムス ドギー・ライト
パーカッション ジム・ローレス
エンジニア ピーター J. オリフ
作詞・作曲 セルジュ・ゲンスブール
編曲 アラン・ホークショウ
写真 アンドレ・ベルグ[22]
プロデュース フィリップ・ルリショム

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ 「1960年代のかつてのファン」という意味。「ex」はフランス語・英語ともに「元」、「旧」、「かつての」などの接頭辞。「fan」(英語)は「ファン」、「des」(フランス語)は前置詞と冠詞の縮約de + les)で「の」、「sixties」(英語)は「1960年代」。
  2. ^ Universal Records, Mercury France Cat# 586 649-2
  3. ^ ゲンスブールとのデュエット。
  4. ^ 1977年の映画『マダム・クロード』使用曲。日本のTVドラマ『美しい人』(1999年)の挿入歌に起用(主題歌は「無造作紳士 L'aquoiboniste」)。
  5. ^ ユニバーサルミュージック Cat# UICY-15044
  6. ^ 1988年3月25日にリリースされた安田成美の2枚目のアルバム『ginger』(ジィンジャー)に収録。その後1988年9月25日にアルバム『ginger』からのシングルカットCD「思い出のロックンロール」(DIAMIND COLLECTION CD MINI ALBUM)がリリースされた。日本語詞は大貫妙子(原曲の歌詞をアレンジしている)。編曲は大村憲司
  7. ^ 「アクアボニスト」とは、定冠詞Le」を除いた「aquoiboniste」のカタカナ表記。より原音に近づけるならば「アクヮボニスト」。
  8. ^ フランス語において揺り椅子(ロッキングチェア)を英語由来の「Rocking chair」で表現する場合がある。

出典注

[編集]
  1. ^ 「CDジャーナル」データベース: 3199090179, 4111030552
  2. ^ a b 『想い出のロックン・ローラー』 発売・販売元 提供資料 (2011年3月7日)”. TOWER RECORDS ONLINE. 2015年11月18日閲覧。
  3. ^ Annette Vezin, Luc Vezin 2003: “She had to wait for Ex-fan des sixties in January 1978 for Jane Birkin the singer to establish herself.”
  4. ^ Jane Birkin – Ex Fan Des Sixties”. ディスコグス. 2015年11月18日閲覧。
  5. ^ a b ゲンズブール没後20年 関連作SHM-CD化&貴重映像満載DVDほか”. TOWER RECORDS ONLINE (2011年5月10日). 2015年11月18日閲覧。
  6. ^ ジェーン・バーキン、日本に来て直接みなさんに愛してると伝えたかった. MOVIE Collection公式YouTube.
  7. ^ Vincent Leblanc (2015年6月22日). “Ex-fan des sixties pour Jane Birkin”. Serge Gainsbourg - La reconnaissance. 2015年9月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年11月18日閲覧。 ()
  8. ^ Ex Fan Des Sixties / 思い出のロックンロール / 安田成美. 歌詞検索サービス 歌詞GET.
  9. ^ 野宮真貴 ビルボードライブ公演のセットリストとケイタマルヤマの新作衣装を特別先行公開。そして超レアなアナログ盤プレゼント”. girlswalker (2015年11月24日). 2015年11月24日閲覧。[リンク切れ]
  10. ^ 野宮真貴、Billboard LIVEにて“フレンチ渋谷系”を歌う。ミュージック、カクテル、ファッション…視覚や味覚でも楽しめる大人のエンターテイメントを披露”. Billboard JAPAN (2015年11月27日). 2015年12月7日閲覧。
  11. ^ José Manuel Rambla (2015年8月27日). “Bienvenidos al Apocalypstick”. eldiario.es. 2015年12月7日閲覧。
  12. ^ a b c Jean-Emmanuel Deluxe 2013, chpt. 5 SERGE GAINSBOURG'S FILLES DE LA POP Jane B.: Nationality: British Sex: Female
  13. ^ Yann Plougastel (2013年8月26日). “"Signé Gainsbourg", l'intégrale en livres-CD”. ル・モンド. 2015年12月7日閲覧。
  14. ^ フランス語学習室 : L'aquoiboniste / Jane Birkin  無造作紳士”. オンライン語学学習プラットフォーム My E-com (2009年8月17日). 2016年1月20日閲覧。
  15. ^ Jane Birkin – Je Suis Venu Te Dire Que Je M'En Vais… (Concert Intégral Au Casino De Paris)”. ディスコグス. 2015年11月24日閲覧。
  16. ^ 美しい人: 無造作紳士 日本語訳詞”. TBS公式サイト (アーカイブ)
  17. ^ 第11回 ─ 飯田圭織”. TOWER RECORDS ONLINE (2003年5月20日). 2015年12月7日閲覧。 “それぞれ発音の特徴もあるし、すごく難しかった。(中略) 私の負けず嫌いパワーで乗り切りました (飯田圭織・談)”
  18. ^ Interview (2014〜2015)”. 岩崎良美 (歌手・女優) オフィシャルサイト. 2016年2月10日閲覧。
  19. ^ 岩崎良美30周年ライブを堪能”. Musicshelf (2010年3月11日). 2016年2月10日閲覧。
  20. ^ MEN'S EX 2014/10/06発売号』 (世界文化社 MEN'S EX)
  21. ^ Jérôme Lachasse, Bertrand Guyard (2015年6月29日). “Quand Isabelle Adjani était la muse de Serge Gainsbourg”. ル・フィガロ. 2015年12月7日閲覧。
  22. ^ André Berg (2) Discography at Discogs”. ディスコグス. 2015年11月24日閲覧。 “Photographer, born 1944

参考文献

[編集]
  • Annette Vezin, Luc Vezin (2003). The 20th Century Muse. Harry N. Abrams. ISBN 9780810991545. https://books.google.co.jp/books?id=WanpAAAAMAAJ&redir_esc=y&hl=ja 
  • Jean-Emmanuel Deluxe (2013). Ye-Ye Girls of '60s French Pop. Feral House. ISBN 9781936239726. https://books.google.co.jp/books?id=TWwKAQAAQBAJ&redir_esc=y&hl=ja 

外部リンク

[編集]