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「ふじ (リンゴ)」の版間の差分

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| genus = [[リンゴ属]] {{snamei||Malus}}
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'''ふじ'''[[英語|英]]: ‘[[w:Fuji (apple)|Fuji]]’)は、日本および世界で最も多く生産されている[[リンゴ]](セイヨウリンゴ)の[[栽培品種]]である。日本の農林省園芸試験場(現[[農業・食品産業技術総合研究機構|農研機構]]果樹研究所)において1939年に‘[[国光 (リンゴ)|国光]]’と‘[[レッドデリシャス]]’を交配して作出され、1962年に品種登録された。‘ふじ’の名は、育成地である[[青森県]][[藤崎町]]、[[富士山]]、および女優の[[山本富士子]]に由来する。[[果実]]は、袋かけをしておいて収穫前1か月ほどだけ光に当てると鮮やかに赤くなり、ずっと袋かけをしない(「'''サンふじ'''」ともよばれる{{efn2|name="サンふじ"}})と着色にむらが出やすいが、糖度が高くなる。果肉は歯ごたえがよく、果汁が多く、甘味が強く食味に優れる。収穫期は遅く、日本では10月末から11月中旬。貯蔵性が極めてよく、貯蔵技術の発展とともに日本におけるリンゴの周年供給を可能にしている。
'''ふじ'''’([[英語|英]]: ‘[[w:Fuji (apple)|Fuji]]’)は、日本および世界で最も多く生産されている[[リンゴ]](セイヨウリンゴ)の[[栽培品種]]である。日本の農林省園芸試験場(現[[農業・食品産業技術総合研究機構|農研機構]]果樹研究所)において1939年に‘[[国光 (リンゴ)|国光]]’と‘[[レッドデリシャス]]’を交配して作出され、1962年に品種登録された。‘ふじ’の名は、育成地である[[青森県]][[藤崎町]]、[[富士山]]、および女優の[[山本富士子]]に由来する。[[果実]]は、袋かけをしておいて収穫前1か月ほどだけ光に当てると鮮やかに赤くなり、ずっと袋かけをしない(「'''サンふじ'''」ともよばれる{{efn2|name="サンふじ"}})と着色にむらが出やすいが、糖度が高くなる。果肉は歯ごたえがよく、果汁が多く、甘味が強く食味に優れる。収穫期は遅く、日本では10月末から11月中旬。貯蔵性が極めてよく、貯蔵技術の発展とともに日本におけるリンゴの周年供給を可能にしている。


== 特徴 ==
== 特徴 ==
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樹姿は開張性(図2)、樹勢が強く生育旺盛、豊産性であるが、[[隔年結果]]性がやや強い<ref name="阿部2015" /><ref name="果樹研" />。[[自家不和合性 (植物)|自家不和合性]]に関わるS遺伝子型はS<sub>1</sub>S<sub>9</sub>である<ref name="阿部2015" />。早期落果や後期落果は少ない<ref name="果樹研" />。こうあ部(果柄がつながる部分のくぼみ)の裂果が起こることがある<ref name="果樹研" />。斑点落葉病に対しては中程度の抵抗性を示す<ref name="果樹研" />。他のリンゴ品種と同様、[[黒星病]]や[[うどん粉病]]など病害や[[アブラムシ]]など虫害にかかりやすい<ref name="Cooperative">{{Cite web|author=|date=|url=https://plants.ces.ncsu.edu/plants/malus-domestica-fuji/|title=''Malus domestica'' 'Fuji'|website=|publisher=N.C. Cooperative Extension|accessdate=2024-10-20}}</ref>。
樹姿は開張性(図2)、樹勢が強く生育旺盛、豊産性であるが、[[隔年結果]]性がやや強い<ref name="阿部2015" /><ref name="果樹研" />。[[自家不和合性 (植物)|自家不和合性]]に関わるS遺伝子型はS<sub>1</sub>S<sub>9</sub>である<ref name="阿部2015" />。早期落果や後期落果は少ない<ref name="果樹研" />。こうあ部(果柄がつながる部分のくぼみ)の裂果が起こることがある<ref name="果樹研" />。斑点落葉病に対しては中程度の抵抗性を示す<ref name="果樹研" />。他のリンゴ品種と同様、[[黒星病]]や[[うどん粉病]]など病害や[[アブラムシ]]など虫害にかかりやすい<ref name="Cooperative">{{Cite web|author=|date=|url=https://plants.ces.ncsu.edu/plants/malus-domestica-fuji/|title=''Malus domestica'' 'Fuji'|website=|publisher=N.C. Cooperative Extension|accessdate=2024-10-20}}</ref>。


‘ふじ’は、幼果時から着色が始まる頃(およそ収穫1か月前)までの間に果実に袋をかけて栽培するもの(有袋栽培)と、袋をかけずに栽培するもの(無袋栽培)があり、前者は狭義の「ふじ」、後者は「サンふじ」{{efn2|name="サンふじ"|「サンふじ」の名は、JA全農長野が1983年に商標登録している<ref>{{Cite web|author=|date=|url=https://www.nn.zennoh.or.jp/faq/2018/11/post-47.php|title=【りんご】「サンふじ」と「ふじ」の違いは何ですか?|website=|publisher=JA全農長野|accessdate=2024-10-20}}</ref>。}}とよばれることがあるが、品種としては同一である<ref name="青森りんご" />(下図3)。袋がかけられた果実は[[クロロフィル]]合成が抑制されるため、その後に光に晒された際の[[アントシアニン]]による着色が鮮明になる<ref name="平塚2020" />。有袋栽培の方が果皮が薄くなり、また保存性がよい<ref name="青森りんご" /><ref name="りんご大学CA">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/ringo_blog/blog/2019/04/16/4740.html|title=CA冷蔵庫とふじ|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-15}}</ref>。無袋栽培は着色の点では有袋栽培に劣るが(下図3b)、糖度がより高くなる傾向があり、また蜜(葉から送られてきた[[ソルビトール]]が他の糖に変換されずに蓄積したもの)が入りやすい<ref name="平塚2020">{{cite book|author=平塚伸|year=2020|chapter=果樹/仁果類、つる性果樹などの特徴|editor=荻原勲|title=図説 園芸学 第2版|publisher=朝倉書店|isbn=978-4254410402|pages=96–107}}</ref><ref name="青森りんご" />。また、‘ふじ’などの赤色系リンゴでは、色付きをよくするために、ふつう周囲の葉を摘み取って(葉摘み)光がよく当たるようにする<ref name="平塚2020" />。‘ふじ’では、省力化のため葉摘みをなるべく行わず(そのため色むらはより生じる)、多くの光合成産物が果実に蓄積するようにした栽培が行われることがあり、その果実は「葉とらずサンふじ」などとよばれる<ref>{{Cite journal|author=小原繁|year=1998|title=「葉とらずリンゴ」生産の条件と適正樹相の検討 (特集 落葉果樹の目的別仕立て方と整枝せん定)|journal=農耕と園芸|volume=53|issue=2|pages=154-156|naid=40003137141}}</ref><ref name="青森りんご葉摘み">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.aomori-ringo.or.jp/20230201/6498/|title=「葉とらず栽培」とは?|website=青森りんご|publisher=一般社団法人青森県りんご対策協議会|accessdate=2024-10-15}}</ref><ref>{{Cite web|author=|date=|url=https://www.masahiro-ringoen.com/product-list/180|title=葉とらずサンふじ」はどんなりんご?|website=|publisher=まさひろ林檎園|accessdate=2024-10-15}}</ref>。‘ふじ’は晩生品種であり、日本における収穫適期は10月末から11月中旬である<ref name="青森りんご" /><ref name="りんご大学サンふじ" /><ref name="りんご大学ふじ" /><ref name="全農">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.zennoh.or.jp/am/product/fruit/apple.html|title=りんご 品種紹介/成分|website=|publisher=全農 青森県本部|accessdate=2024-10-15}}</ref>。
‘ふじ’は、幼果時から着色が始まる頃(およそ収穫1か月前)までの間に果実に袋をかけて栽培するもの(有袋栽培)と、袋をかけずに栽培するもの(無袋栽培)があり、前者は狭義の「ふじ」、後者は「サンふじ」{{efn2|name="サンふじ"|「サンふじ」の名は、JA全農長野が1983年に商標登録している<ref>{{Cite web|author=|date=|url=https://www.nn.zennoh.or.jp/faq/2018/11/post-47.php|title=【りんご】「サンふじ」と「ふじ」の違いは何ですか?|website=|publisher=JA全農長野|accessdate=2024-10-20}}</ref>。}}とよばれることがあるが、品種としては同一である<ref name="青森りんご" />(下図3)。袋がかけられた果実は[[クロロフィル]]合成が抑制されるため、その後に光に晒された際の[[アントシアニン]]による着色が鮮明になる<ref name="平塚2020" />。有袋栽培の方が果皮が薄くなり、また保存性がよい<ref name="青森りんご" /><ref name="りんご大学CA">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/ringo_blog/blog/2019/04/16/4740.html|title=CA冷蔵庫とふじ|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-15}}</ref>。無袋栽培は着色の点では有袋栽培に劣るが(下図3b)、糖度がより高くなる傾向があり、また蜜(葉から送られてきた[[ソルビトール]]が他の糖に変換されずに蓄積したもの)が入りやすい<ref name="平塚2020">{{cite book|author=平塚伸|year=2020|chapter=果樹/仁果類、つる性果樹などの特徴|editor=荻原勲|title=図説 園芸学 第2版|publisher=朝倉書店|isbn=978-4254410402|pages=96–107}}</ref><ref name="青森りんご" />(下図3c)。また、‘ふじ’などの赤色系リンゴでは、色付きをよくするために、ふつう周囲の葉を摘み取って(葉摘み)光がよく当たるようにする<ref name="平塚2020" />。‘ふじ’では、省力化のため葉摘みをなるべく行わず(そのため色むらはより生じる)、多くの光合成産物が果実に蓄積するようにした栽培が行われることがあり、その果実は「葉とらずサンふじ」などとよばれる<ref>{{Cite journal|author=小原繁|year=1998|title=「葉とらずリンゴ」生産の条件と適正樹相の検討 (特集 落葉果樹の目的別仕立て方と整枝せん定)|journal=農耕と園芸|volume=53|issue=2|pages=154-156|naid=40003137141}}</ref><ref name="青森りんご葉摘み">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.aomori-ringo.or.jp/20230201/6498/|title=「葉とらず栽培」とは?|website=青森りんご|publisher=一般社団法人青森県りんご対策協議会|accessdate=2024-10-15}}</ref><ref>{{Cite web|author=|date=|url=https://www.masahiro-ringoen.com/product-list/180|title=葉とらずサンふじ」はどんなりんご?|website=|publisher=まさひろ林檎園|accessdate=2024-10-15}}</ref>。‘ふじ’は[[晩生]]品種であり、日本における収穫適期は10月末から11月中旬である<ref name="青森りんご" /><ref name="りんご大学サンふじ" /><ref name="りんご大学ふじ" /><ref name="全農">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.zennoh.or.jp/am/product/fruit/apple.html|title=りんご 品種紹介/成分|website=|publisher=全農 青森県本部|accessdate=2024-10-15}}</ref>。


{{multiple image
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| image2 = Fuji 20101209.jpg
| image2 = Fuji 20101209.jpg
| caption2 = '''3b'''. 「サンふじ」は色むらができやすい。
| caption2 = '''3b'''. 「サンふじ」は色むらができやすい。
| image3 = Cross section of Fuji, National Fruit Collection (acc. 1963-019).jpg
| image3 = Aomori apple called Sanfuji.jpg
| caption3 = '''3c'''. 果肉は黄白色。
| caption3 = '''3c'''. 「サンふじ」の実断面: 蜜が入った状態
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‘ふじ’の果実は円形からやや長円形、重さは300–400[[グラム]]ほどである<ref name="阿部2015" /><ref name="青森りんご" /><ref name="果樹研" /><ref name="りんご大学サンふじ">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/hu/huji.html|title=サンふじ(無袋)|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref><ref name="りんご大学ふじ">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/hu/huji_yuutai.html|title=ふじ|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>。有袋栽培の場合の果皮は鮮やかな紅色になるが、無袋栽培(サンふじ)の場合は一般的に黄緑色の地に縞状に赤くなる<ref name="青森りんご" /><ref>{{Cite web|author=Chris Turnbull|date=2023-08|url=https://www.nationalfruitcollection.org.uk/full2.php?id=2166&&fruit=apple|title=Fuji|website=|publisher=National Fruit Collection|accessdate=2024-10-30}}</ref>(上図3)。また、収穫まで袋かけをしたままにして果皮が淡いクリーム色になるものもあり、「ムーンふじ」とよばれる<ref>{{Cite web|author=|date=|url=https://foodslink.jp/syokuzaihyakka/syun/fruit/apple-moon.htm|title=ムーンふじ|website=旬の食材百科|publisher=フーズリンク|accessdate=2024-10-13}}</ref>。
‘ふじ’の果実は円形からやや長円形、重さは300[[グラム]]ほどである<ref name="阿部2015" /><ref name="青森りんご" /><ref name="果樹研" /><ref name="りんご大学サンふじ">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/hu/huji.html|title=サンふじ(無袋)|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref><ref name="りんご大学ふじ">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/hu/huji_yuutai.html|title=ふじ|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref><ref>{{Cite web|author=|date=|url=https://www.nn.zennoh.or.jp/products/fruits/more/apple/post.php|title=ふじ・サンふじ|website=|publisher=JA全農長野|accessdate=2024-12-01}}</ref>。有袋栽培の場合の果皮は鮮やかな紅色になるが、無袋栽培(サンふじ)の場合は一般的に黄緑色の地に縞状に赤くなる<ref name="青森りんご" /><ref>{{Cite web|author=Chris Turnbull|date=2023-08|url=https://www.nationalfruitcollection.org.uk/full2.php?id=2166&&fruit=apple|title=Fuji|website=|publisher=National Fruit Collection|accessdate=2024-10-30}}</ref>(上図3)。また、収穫まで袋かけをしたままにして果皮が淡いクリーム色になるものもあり、「ムーンふじ」とよばれる<ref>{{Cite web|author=|date=|url=https://foodslink.jp/syokuzaihyakka/syun/fruit/apple-moon.htm|title=ムーンふじ|website=旬の食材百科|publisher=フーズリンク|accessdate=2024-10-13}}</ref>。果肉は黄白色で硬く(上図3c)、肉質はやや粗めでシャキシャキしており、果汁が極めて多い<ref name="阿部2015" /><ref name="青森りんご" /><ref name="果樹研" /><ref name="全農" />。糖度は14–16%、酸度は0.3–0.5%、甘みが強いが酸味とのバランスがよく、食味に優れる<ref name="阿部2015" /><ref name="果樹研" />。成熟すると蜜が入りやすい<ref name="阿部2015" />(上図3c)。果実の貯蔵性に極めて優れるため、11月から翌年の8月まで販売され、リンゴの周年供給に重要な役割を担っている<ref name="青森りんご" /><ref name="農研機構" /><ref name="りんご大学CA" />。
果肉は黄白色で硬く(上図3c)、肉質はやや粗めでシャキシャキしており、果汁が極めて多い<ref name="阿部2015" /><ref name="青森りんご" /><ref name="果樹研" /><ref name="全農" />。糖度は14–16%、酸度は0.3–0.5%、甘みが強いが酸味とのバランスがよく、食味に優れる<ref name="阿部2015" /><ref name="果樹研" />。成熟すると蜜が入りやすい<ref name="阿部2015" />。果実の貯蔵性に極めて優れるため、11月から翌年の8月まで販売され、リンゴの周年供給に重要な役割を担っている<ref name="青森りんご" /><ref name="農研機構" /><ref name="りんご大学CA" />。


2018年、JAつがる弘前より、リンゴの生鮮食品としての機能性表示届出は第一例目となる、リンゴ由来[[ポリフェノール]]であるプロシア二ジンを関与成分とした「プライムアップル!(ふじ)」が販売された<ref>{{Cite web|title=機能性表示食品の商品紹介|url=http://www.ja-tu-hirosaki.jp/publics/index/329/|website=つがる弘前農業協同組合|accessdate=2020-11-18|language=|publisher=}}</ref>。[[内臓脂肪]]を減らす効果が期待されている。
2018年、JAつがる弘前より、リンゴの生鮮食品としての機能性表示届出は第一例目となる、リンゴ由来[[ポリフェノール]]であるプロシア二ジンを関与成分とした「プライムアップル!(ふじ)」が販売された<ref>{{Cite web|title=機能性表示食品の商品紹介|url=http://www.ja-tu-hirosaki.jp/publics/index/329/|website=つがる弘前農業協同組合|accessdate=2020-11-18|language=|publisher=}}</ref>。[[内臓脂肪]]を減らす効果が期待されている。
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‘ふじ’は日本国外でも多く生産されている。特に世界のリンゴ生産の約半分を占める[[中華人民共和国|中国]]では、品種別では‘ふじ’が最も多く、その比率は2015年には66%、2022年にも約70%であったと推定されている<ref name="一木3">{{Cite web|author=一木茂|date=2018-02-05|url=https://www.ringodaigaku.com/play/ichiki/index_3.html|title=第3回 中国のリンゴ|website=一木先生のリンゴ学講座|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-05}}</ref><ref name="中国生産">{{Cite web|author=米国農務省海外農業局|date=2023-11-06|url=https://www.japanfruit.jp/Portals/0/resources/JFF/kaigai/jyoho/jyoho-temp/No275.pdf|title=中国の落葉果実事情(リンゴ、ナシ、ブドウ)|website=|publisher=中央果実協会|accessdate=2024-11-15}}</ref>。そのため、‘ふじ’は世界で最も生産量が多いリンゴ品種であり、2015年時点で世界のリンゴ総生産量8,200万トン<ref>{{Cite web|author=|date=|url=https://www.maff.go.jp/j/kanbo/tizai/brand/attach/pdf/kaigai_license-13.pdf|title=1-5.りんご 1-5-1.生産・貿易・消費動向|website=|publisher=農林水産省|accessdate=2024-10-13}}</ref>に対して、‘ふじ’の生産量は3,540万トン(全体の約34%)と推定されている<ref name="一木3" />。
‘ふじ’は日本国外でも多く生産されている。特に世界のリンゴ生産の約半分を占める[[中華人民共和国|中国]]では、品種別では‘ふじ’が最も多く、その比率は2015年には66%、2022年にも約70%であったと推定されている<ref name="一木3">{{Cite web|author=一木茂|date=2018-02-05|url=https://www.ringodaigaku.com/play/ichiki/index_3.html|title=第3回 中国のリンゴ|website=一木先生のリンゴ学講座|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-05}}</ref><ref name="中国生産">{{Cite web|author=米国農務省海外農業局|date=2023-11-06|url=https://www.japanfruit.jp/Portals/0/resources/JFF/kaigai/jyoho/jyoho-temp/No275.pdf|title=中国の落葉果実事情(リンゴ、ナシ、ブドウ)|website=|publisher=中央果実協会|accessdate=2024-11-15}}</ref>。そのため、‘ふじ’は世界で最も生産量が多いリンゴ品種であり、2015年時点で世界のリンゴ総生産量8,200万トン<ref>{{Cite web|author=|date=|url=https://www.maff.go.jp/j/kanbo/tizai/brand/attach/pdf/kaigai_license-13.pdf|title=1-5.りんご 1-5-1.生産・貿易・消費動向|website=|publisher=農林水産省|accessdate=2024-10-13}}</ref>に対して、‘ふじ’の生産量は3,540万トン(全体の約34%)と推定されている<ref name="一木3" />。


[[ファイル:Fuji (apple) 1 2017-10-23.jpg|thumb|right|150px|米国市場の‘ふじ’]]
[[ファイル:Fuji (apple) 1 2017-10-23.jpg|thumb|right|150px|'''4'''. 米国市場の‘ふじ’]]
[[アメリカ合衆国]]では、‘ふじ’は1980年代に市場に参入し、それ以降栽培されて大きな需要を得ている。2022–2023年には、‘ふじ’の生産量は‘[[ガラ (リンゴ)|ガラ]]’、‘[[レッドデリシャス]]’、‘[[ハニークリスプ]]’に次いで第4位(24,321,992[[ブッシェル]]、全体の9.9%)となっている<ref name="USApple2023">{{Cite web|author=|date=|url=https://usaa.memberclicks.net/assets/2023/Outlook2023/USAPPLE-OutlookReport-2023.pdf|title=Industry Outlook 2023|website=|publisher=U.S. Apple Association|accessdate=2024-11-11}}</ref>。[[ヨーロッパ]]では、2022–2023年における‘ふじ’の生産量は17,531,978ブッシェル、全生産量の2.8%、品種別で第10位であった<ref name="USApple2023" />。
[[アメリカ合衆国]]では、‘ふじ’は1980年代に市場に参入し、それ以降栽培されて大きな需要を得ている(図4)。2022–2023年には、‘ふじ’の生産量は‘[[ガラ (リンゴ)|ガラ]]’、‘[[レッドデリシャス]]’、‘[[ハニークリスプ]]’に次いで第4位(24,321,992[[ブッシェル]]、全体の9.9%)となっている<ref name="USApple2023">{{Cite web|author=|date=|url=https://usaa.memberclicks.net/assets/2023/Outlook2023/USAPPLE-OutlookReport-2023.pdf|title=Industry Outlook 2023|website=|publisher=U.S. Apple Association|accessdate=2024-11-11}}</ref>。[[ヨーロッパ]]では、2022–2023年における‘ふじ’の生産量は17,531,978ブッシェル、全生産量の2.8%、品種別で第10位であった<ref name="USApple2023" />。
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== 歴史 ==
== 歴史 ==
1939年(昭和14年)、[[青森県]][[南津軽郡]][[藤崎町]]にあった農林省の園芸試験場東北支場(現 [[農研機構]]果樹研究所)において、優良品種育成のためいずれも[[米国]]産の品種である‘[[国光 (リンゴ)|国光]]’(英名は‘[[w:Ralls Janet|Ralls Janet]]’)を種子親、‘[[レッドデリシャス]]’を花粉親とした交配が行われた<ref name="定森1963">{{Cite journal|author=定森昌助, 吉田義雄, 村上兵衛 & 石塚昭吾|year=1963|title=リンゴ新品種 「ふじ」 について|journal=園芸試験場報告. C, 盛岡|volume=1|issue=|pages=1-6|crid=1050282813703294464}}</ref><ref name="青森りんご">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.aomori-ringo.or.jp/80th-anniversary/|title=「ふじ」りんご生誕80年|website=青森りんご|publisher=一般社団法人青森県りんご対策協議会|accessdate=2024-10-13}}</ref><ref name="阿部2015">{{cite book|author=阿部和幸 & 荒川修|year=2015|chapter=リンゴ|editor=金浜耕基|title=果樹園芸学|publisher=文永堂出版|isbn=978-4830041297|pages=59–90}}</ref><ref name="一木4">{{Cite web|author=一木茂|date=2018-03-12|url=https://www.ringodaigaku.com/play/ichiki/index_4.html|title=第4回 「ふじ」のルーツ|website=一木先生のリンゴ学講座|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-05}}</ref>。この結果形成された2,004粒の[[種子]]から787個体の[[実生]](このうち結実は596個体)が得られ、そこからのちに‘ふじ’となる個体(個体番号は「ロ-628」<ref name="発明協会" />)が選抜された<ref name="定森1963" /><ref name="農研機構">{{Cite web|title=りんご「ふじ」|url=http://www.naro.affrc.go.jp/archive/fruit/itiosi/2011/018007.html|website=|accessdate=2024-10-13|publisher=農研機構}}</ref>。この個体は戦中戦後の混乱を生き抜いて1951年(昭和26年)ごろに初めて果実をつけ、その優秀性が認められ、1958年(昭和33年)に「東北7号」として公表されるとともに、各県試験場に穂木が配布され、さまざまな環境での性質が調査された<ref name="定森1963" /><ref name="発明協会" /><ref>{{Cite web|author=|date=2021-04-21|url=https://applesandpeople.org.uk/stories/apple-number-one/|title=Apple Number One|website=Apples & People|publisher=The Brightspace Foundation|accessdate=2024-10-30}}</ref>。その後1962年(昭和37年)に全国リンゴ協議会名称選考会において‘ふじ’と命名され、また「リンゴ農林1号」として登録された<ref name="定森1963" /><ref name="青森りんご" /><ref name="果樹研" />。
1939年(昭和14年)、[[青森県]][[南津軽郡]][[藤崎町]]にあった農林省の園芸試験場東北支場(現 [[農研機構]]果樹研究所)において、優良品種育成のためいずれも[[米国]]産の品種である‘[[国光 (リンゴ)|国光]]’(英名は‘[[w:Ralls Janet|Ralls Janet]]’)を種子親、‘[[レッドデリシャス]]’を花粉親とした交配が行われた<ref name="定森1963">{{Cite journal|author=定森昌助, 吉田義雄, 村上兵衛 & 石塚昭吾|year=1963|title=リンゴ新品種 「ふじ」 について|journal=園芸試験場報告. C, 盛岡|volume=1|issue=|pages=1-6|crid=1050282813703294464}}</ref><ref name="青森りんご">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.aomori-ringo.or.jp/80th-anniversary/|title=「ふじ」りんご生誕80年|website=青森りんご|publisher=一般社団法人青森県りんご対策協議会|accessdate=2024-10-13}}</ref><ref name="阿部2015">{{cite book|author=阿部和幸 & 荒川修|year=2015|chapter=リンゴ|editor=金浜耕基|title=果樹園芸学|publisher=文永堂出版|isbn=978-4830041297|pages=59–90}}</ref><ref name="一木4">{{Cite web|author=一木茂|date=2018-03-12|url=https://www.ringodaigaku.com/play/ichiki/index_4.html|title=第4回 「ふじ」のルーツ|website=一木先生のリンゴ学講座|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-05}}</ref>。この結果形成された2,004粒の[[種子]]から787個体の[[実生]](このうち結実は596個体)が得られ、そこからのちに‘ふじ’となる個体(個体番号は「ロ-628」<ref name="発明協会" />)などが選抜された<ref name="定森1963" /><ref name="農研機構">{{Cite web|title=りんご「ふじ」|url=http://www.naro.affrc.go.jp/archive/fruit/itiosi/2011/018007.html|website=|accessdate=2024-10-13|publisher=農研機構}}</ref>。この個体は戦中戦後の混乱を生き抜いて1951年(昭和26年)ごろに初めて果実をつけ、その優秀性が認められ、1958年(昭和33年)に「東北7号」として公表されるとともに、各県試験場に穂木が配布され、さまざまな環境での性質が調査された<ref name="定森1963" /><ref name="発明協会" /><ref>{{Cite web|author=|date=2021-04-21|url=https://applesandpeople.org.uk/stories/apple-number-one/|title=Apple Number One|website=Apples & People|publisher=The Brightspace Foundation|accessdate=2024-10-30}}</ref>。その後1962年(昭和37年)に全国リンゴ協議会名称選考会において‘ふじ’と命名され、また「リンゴ農林1号」として登録された<ref name="定森1963" /><ref name="青森りんご" /><ref name="果樹研" />。


[[#生産|上記]]のように、‘ふじ’は日本のみならず世界で最も多く生産されるリンゴ品種となっており、2014年(平成26年)に公益財団法人[[発明協会]]が選定した「戦後日本のイノベーション100選」の1つに選出されている<ref name="青森りんご" /><ref name="発明協会">{{Cite web|author=|date=|url=https://koueki.jiii.or.jp/innovation100/innovation_detail.php?eid=00009&age=high-growth&page=kaihatsu|title=リンゴ「ふじ」: 発明技術開発の概要|website=|publisher=公益社団法人発明協会|accessdate=2024-10-30}}</ref>。
[[#生産|上記]]のように、‘ふじ’は日本のみならず世界で最も多く生産されるリンゴ品種となっており、2014年(平成26年)に公益財団法人[[発明協会]]が選定した「戦後日本のイノベーション100選」の1つに選出されている<ref name="青森りんご" /><ref name="発明協会">{{Cite web|author=|date=|url=https://koueki.jiii.or.jp/innovation100/innovation_detail.php?eid=00009&age=high-growth&page=kaihatsu|title=リンゴ「ふじ」: 発明技術開発の概要|website=|publisher=公益社団法人発明協会|accessdate=2024-10-30}}</ref>。
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== 派生品種 ==
== 派生品種 ==
=== 枝変わり ===
=== 枝変わり ===
[[リンゴ]]は[[接ぎ木]]によって増やすため、同じ[[栽培品種|品種]]は遺伝的に同一な[[クローン]]であるが、まれに[[突然変異]]が起こって枝など木の一部が他と異なる性質を示すことがあり、「[[枝変わり]]」とよばれる<ref name="りんご大学ふじ枝変わり" />。‘ふじ’の枝変わりに由来する品種には、以下のようなものがある。
[[リンゴ]]は[[接ぎ木]]によって増やすため、同じ[[栽培品種|品種]]は遺伝的に同一な[[クローン]]であるが、まれに分裂組織に[[突然変異]]が起こって枝など木の一部が他と異なる性質を示すことがあり、「[[枝変わり]]」とよばれる<ref name="りんご大学ふじ枝変わり" />。‘ふじ’の枝変わりに由来する品種には、以下のようなものがある。


‘ふじ’の枝変わり品種の中で、典型的な‘ふじ’よりも早く成熟するものは「早生系ふじ」と総称される<ref name="りんご大学ふじ枝変わり" />。‘ひろさきふじ’、‘やたか’、‘昴林’、‘紅将軍’、‘涼香の季節’、‘ほのか’、‘出羽ふじ’などがあり、味は‘ふじ似て甘酸適和である<ref name="りんご大学ふじ枝変わり" />。
‘ふじ’の枝変わり品種の中で、典型的な‘ふじ’よりも早く成熟するものは「'''早生ふじ'''」や「'''早生系ふじ'''」と総称される<ref name="りんご大学ふじ枝変わり" /><ref name="秋田県" />。「早生ふじ」には、‘ひろさきふじ’、‘昴林{{efn2|name="昴林"|不明花粉親との交雑に由来すること考えられていたが<ref name="秋田県">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.pref.akita.lg.jp/uploads/public/archive_0000046384_00/hinsyusehiyaso140512.pdf|title=3) 高接ぎに使用する穂品種の選択|website=|publisher=秋田県|accessdate=2024-12-10}}</ref>DNAの調査からふじ’の枝変わりまたはアポミクシス(単為生殖)に由来することが示唆されている<ref name="果物ナビ昴林">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.kudamononavi.com/zukan/apple/kourin|title=昂林(こうりん) リンゴ|website=|publisher=果物ナビ|accessdate=2024-12-13}}</ref>。}}、‘涼香の季節{{efn2|name="涼香の季節"|当初は‘ふじ’を種子親、‘[[スターキングデリシャス]]を花粉親とした交雑に由来するともされたが<ref name="秋田県" />現在ではふじ’の枝変わりまたは[[アポミクシス]]に由来すると考えられている<ref name="果物ナビ涼香の季節">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.kudamononavi.com/zukan/apple/ryoukanokisetsu|title=涼香の季節 リンゴ|website=|publisher=果物ナビ|accessdate=2024-12-13}}</ref>。}}、‘やたか’、‘ほのか’、‘出羽ふじ’、‘相伝ふじ’などがある<ref name="んご大学ふじ枝変わり" /><ref name="秋田県" />。これらの品種の、さらなる枝変わり由来する品種も存在し、‘紅将軍’、‘ひろの香り’などがある<ref name="りんご大学ふじ枝変わり" /><ref name="秋田県" />。


[[果実]]が濃紅になる‘ふじ’の枝変わりの品種として‘コスモふじ’<ref name="コスモふじ">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/ko/kosumohuji.html|title=コスモふじ|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘こまちふじ’<ref name="こまちふじ">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/ko/komachihuji.html|title=こまちふじ|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘みしまふじ<ref name="みしまふじ">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/mi/mishimahuji.html|title=みしまふじ|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘宮美ふじ’<ref name="宮美ふじ">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/mi/miyabihuji.html|title=宮美ふじ|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘長ふ6号’<ref name="長ふ6号">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/na/nagafu6gou.html|title=長ふ6号|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>などがある。果実が黄色系になる‘ふじ’の枝変わり由来の品種も存在し、‘ゴールドファーム’、‘金ふじ’、‘ふじ’などが知らている<ref name="りんご大学ふじ枝変わり" />。
[[果実]]の着性が良い‘ふじ’の枝変わり品種(およびそれらさらなる枝変わり品種)も多く、‘コスモふじ’<ref name="コスモふじ">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/ko/kosumohuji.html|title=コスモふじ|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘こまちふじ’<ref name="こまちふじ">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/ko/komachihuji.html|title=こまちふじ|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘みしまふじ’(秋ふ47)<ref name="秋田県" /><ref name="みしまふじ">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/mi/mishimahuji.html|title=みしまふじ|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘ふじロイヤル’<ref name="秋田県" />、‘峰村ふじ’<ref name="秋田県" /><ref name="奈良市農業委員会">{{Cite web|author=|date=2019-04-01|url=https://www.nara-kaigi.jp/pdftayori/nara67.pdf|title=がんばるファーマー No.27|website=なら農業委員会だより 第67号|publisher=奈良市農業委員会|accessdate=2024-12-13}}</ref>、‘2001年’<ref name="秋田県" />、‘宮美ふじ’<ref name="宮美ふじ">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/mi/miyabihuji.html|title=宮美ふじ|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘新富’(本沢ふじ)<ref name="秋田県" />、‘長ふ2号’<ref name="秋田県" />、‘長ふ6号’<ref name="秋田県" /><ref name="長ふ6号">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/na/nagafu6gou.html|title=長ふ6号|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘長ふ12号’<ref name="秋田県" />、‘らくらくふじ’<ref name="秋田県" />、‘みやふじ’<ref name="秋田県" />、‘ブラック三島ふじ’<ref name="秋田県" />、‘ふじいち’<ref name="秋田県" />、‘駒ふじ’<ref name="秋田県" />、‘ふじDX’<ref name="秋田県" />、‘ふじロイヤ21’<ref name="秋田県" />、‘ふじチャンピオン’<ref name="秋田県" />、‘レッセブン<ref name="秋田県" />、‘未来ふじ’<ref name="秋田県" />、‘たかねふじ’<ref name="秋田県" />、‘金一郎ふじ’<ref name="秋田県" />、‘ハイランドふじ’<ref name="秋田県" />、‘極ふじ’<ref name="秋田県" />、‘寿ふじ’<ref name="秋田県" />、‘新生ふじ’<ref name="秋田県" />、‘パインアップル’<ref name="秋田県" />、‘紅ほま<ref name="秋田県" />、‘紅しぐれ’<ref name="秋田県" />、‘天下ふじ’<ref name="秋田県" />、Kiku Fuji (‘Brak’)<ref name="PSU">{{Cite web|author=Pollock, R. & Crassweller, R.|date=|url=https://extension.psu.edu/why-all-the-new-apple-varieties|title=Why All the New Apple Varieties?|website=|publisher=The Pennsylvania State University|accessdate=2024-12-14}}</ref> などがある


また、果実が黄色系になる‘ふじ’の枝変わり由来の品種も存在し、‘ゴールドファーム’、‘黄金ふじ’、‘白ふじ’などが知られている<ref name="りんご大学ふじ枝変わり" /><ref name="秋田県" />。
=== 交配 ===
‘ふじ’を交配親とする新[[栽培品種|品種]]の開発も盛んに行われている<ref name="青森りんご" />。‘ふじ’を種子親とするものとして‘アルプス乙女’(花粉親はヒメリンゴ)<ref name="アルプス乙女">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/a/alpsmaiden.html|title=アルプス乙女|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘黄秋’(花粉親は‘金星’)<ref name="黄秋">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/o/ousyuu.html|title=黄秋|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘きたろう’(花粉親は‘はつあき’)<ref name="きたろう">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/ki/kitarou.html|title=きたろう|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘きみと’(花粉親は‘東光’)<ref name="きみと">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/si/sinanosweet.html|title=きみと|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘こうたろう’(花粉親は‘はつあき’)<ref name="こうたろう">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/ko/koutarou.html|title=こうたろう|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘シナノスイート’(花粉親は‘[[つがる (リンゴ)|つがる]]’)<ref name="シナノスイート">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/si/sinanosweet.html|title=シナノスイート|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘春名21’(花粉親は‘レイ8’)<ref name="春明">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/si/syunmei21.html|title=春明|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘新世界’(花粉親は‘あかぎ’)<ref name="新世界">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/si/sinsekai.html|title=新世界|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘スリムレッド’(花粉親は‘あかぎ’)<ref name="スリムレッド">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/su/slimred.html|title=スリムレッド|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘美丘’(花粉親は‘[[王林 (リンゴ)|王林]]’と‘世界一の混合花粉)<ref name="美丘">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/mi/mioka.html|title=美丘|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘ローズパール’(花粉親は‘ピンクパール’)<ref name="ローズパール">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/ro/rosepearl.html|title=ローズパール|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>などがある。一方、‘ふじ’を花粉親とするものとして‘アキタゴールド’(種子親は‘[[ゴールデンデリシャス]]’)<ref name="アキタゴールド">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/a/akitagold.html|title=アキタゴールド|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘安祈世’(種子親は‘千秋’)<ref name="安祈世">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/a/akiyo.html|title=安祈世|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘きざし’(種子親は‘[[ガラ (リンゴ)|ガラ]]’)<ref name="きざし">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/ki/kizasi.html|title=きざし|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘ぐんま名月’(‘名月’; 種子親は‘あかぎ’)<ref name="ぐんま名月">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/ku/gunmameigetu.html|title=名月(ぐんま名月)|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘こうこう’(種子親は‘弘大1号’)<ref name="こうこう">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/ko/koukou.html|title=こうこう|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘清明’(種子親は‘ゴールデンデリシャス’)<ref name="清明">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/se/seimei.html|title=清明|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘青林’(種子親は‘レッドゴールド’)<ref name="青林">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/se/seirin.html|title=青林|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘千秋’(種子親は‘東光’)<ref name="千秋">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/se/sensyuu.html|title=千秋|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘[[トキ (リンゴ)|トキ]]’(種子親は‘[[王林 (リンゴ)|王林]]’)<ref name="とき">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/to/toki.html|title=とき|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘めんこい姫’(種子親は‘ラリタン’)<ref name="めんこい姫">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/me/menkoi.html|title=めんこい姫|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>などがある。


そのほかに、短果枝型の‘セイリンスパー’、四倍体の‘天星’などもある<ref name="秋田県" />。
また、‘ふじ’の自然交雑実生から選抜された品種として、‘あいかの香り’<ref name="あいかの香り">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/a/aikanokaori.html|title=あいかの香り|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>がある。

=== 交配 ===
‘ふじ’を交配親とする新[[栽培品種|品種]]の開発も盛んに行われている<ref name="青森りんご" />。‘ふじ’を種子親とするものとして‘あいかの香り’(花粉親は不明)<ref name="あいかの香り">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/a/aikanokaori.html|title=あいかの香り|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘[[アルプス乙女]]’(花粉親はヒメリンゴ)<ref name="アルプス乙女">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/a/alpsmaiden.html|title=アルプス乙女|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘黄秋’(花粉親は‘金星’)<ref name="黄秋">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/o/ousyuu.html|title=黄秋|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘きたろう’(花粉親は‘はつあき’)<ref name="きたろう">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/ki/kitarou.html|title=きたろう|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘きみと’(花粉親は‘東光’)<ref name="きみと">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/si/sinanosweet.html|title=きみと|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘こうたろう’(花粉親は‘はつあき’)<ref name="こうたろう">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/ko/koutarou.html|title=こうたろう|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘[[シナノスイート]]’(花粉親は‘[[つがる (リンゴ)|つがる]]’)<ref name="シナノスイート">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/si/sinanosweet.html|title=シナノスイート|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘春名21’(花粉親は‘レイ8’)<ref name="春明">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/si/syunmei21.html|title=春明|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘新世界’(花粉親は‘あかぎ’)<ref name="新世界">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/si/sinsekai.html|title=新世界|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘スリムレッド’(花粉親は‘あかぎ’)<ref name="スリムレッド">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/su/slimred.html|title=スリムレッド|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘美丘’(花粉親は‘[[王林 (リンゴ)|王林]]’と‘[[青り4号]]’(世界一の混合花粉)<ref name="美丘">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/mi/mioka.html|title=美丘|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘ローズパール’(花粉親は‘ピンクパール’)<ref name="ローズパール">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/ro/rosepearl.html|title=ローズパール|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>などがある。一方、‘ふじ’を花粉親とするものとして‘アキタゴールド’(種子親は‘[[ゴールデンデリシャス]]’)<ref name="アキタゴールド">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/a/akitagold.html|title=アキタゴールド|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘安祈世’(種子親は‘千秋’)<ref name="安祈世">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/a/akiyo.html|title=安祈世|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘きざし’(種子親は‘[[ガラ (リンゴ)|ガラ]]’)<ref name="きざし">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/ki/kizasi.html|title=きざし|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘[[ぐんま名月]]’(‘名月’; 種子親は‘あかぎ’)<ref name="ぐんま名月">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/ku/gunmameigetu.html|title=名月(ぐんま名月)|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘こうこう’(種子親は‘弘大1号’)<ref name="こうこう">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/ko/koukou.html|title=こうこう|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘清明’(種子親は‘ゴールデンデリシャス’)<ref name="清明">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/se/seimei.html|title=清明|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘青林’(種子親は‘レッドゴールド’)<ref name="青林">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/se/seirin.html|title=青林|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘千秋’(種子親は‘東光’)<ref name="千秋">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/se/sensyuu.html|title=千秋|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘[[トキ (リンゴ)|トキ]]’(種子親は‘[[王林 (リンゴ)|王林]]’)<ref name="とき">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/to/toki.html|title=とき|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>、‘めんこい姫’(種子親は‘ラリタン’)<ref name="めんこい姫">{{Cite web|author=|date=|url=https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/me/menkoi.html|title=めんこい姫|website=|publisher=りんご大学|accessdate=2024-10-13}}</ref>などがある。


== 脚注 ==
== 脚注 ==

2024年12月15日 (日) 02:03時点における最新版

‘ふじ’
1. 果実
リンゴ属 Malus
セイヨウリンゴ M. domestica
交配国光’ (‘Ralls Janet’) × ‘レッドデリシャス’ (‘Red Delicious’)
品種 ‘ふじ’ (‘Fuji’)
開発 日本の旗 日本 青森県南津軽郡藤崎町(園芸試験場東北支場)、1962年
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ふじ’(: ‘Fuji’)は、日本および世界で最も多く生産されているリンゴ(セイヨウリンゴ)の栽培品種である。日本の農林省園芸試験場(現農研機構果樹研究所)において1939年に‘国光’と‘レッドデリシャス’を交配して作出され、1962年に品種登録された。‘ふじ’の名は、育成地である青森県藤崎町富士山、および女優の山本富士子に由来する。果実は、袋かけをしておいて収穫前1か月ほどだけ光に当てると鮮やかに赤くなり、ずっと袋かけをしない(「サンふじ」ともよばれる[注 1])と着色にむらが出やすいが、糖度が高くなる。果肉は歯ごたえがよく、果汁が多く、甘味が強く食味に優れる。収穫期は遅く、日本では10月末から11月中旬。貯蔵性が極めてよく、貯蔵技術の発展とともに日本におけるリンゴの周年供給を可能にしている。

特徴

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2. ‘ふじ’の果樹

樹姿は開張性(図2)、樹勢が強く生育旺盛、豊産性であるが、隔年結果性がやや強い[1][2]自家不和合性に関わるS遺伝子型はS1S9である[1]。早期落果や後期落果は少ない[2]。こうあ部(果柄がつながる部分のくぼみ)の裂果が起こることがある[2]。斑点落葉病に対しては中程度の抵抗性を示す[2]。他のリンゴ品種と同様、黒星病うどん粉病など病害やアブラムシなど虫害にかかりやすい[3]

‘ふじ’は、幼果時から着色が始まる頃(およそ収穫1か月前)までの間に果実に袋をかけて栽培するもの(有袋栽培)と、袋をかけずに栽培するもの(無袋栽培)があり、前者は狭義の「ふじ」、後者は「サンふじ」[注 1]とよばれることがあるが、品種としては同一である[5](下図3)。袋がかけられた果実はクロロフィル合成が抑制されるため、その後に光に晒された際のアントシアニンによる着色が鮮明になる[6]。有袋栽培の方が果皮が薄くなり、また保存性がよい[5][7]。無袋栽培は着色の点では有袋栽培に劣るが(下図3b)、糖度がより高くなる傾向があり、また蜜(葉から送られてきたソルビトールが他の糖に変換されずに蓄積したもの)が入りやすい[6][5](下図3c)。また、‘ふじ’などの赤色系リンゴでは、色付きをよくするために、ふつう周囲の葉を摘み取って(葉摘み)光がよく当たるようにする[6]。‘ふじ’では、省力化のため葉摘みをなるべく行わず(そのため色むらはより生じる)、多くの光合成産物が果実に蓄積するようにした栽培が行われることがあり、その果実は「葉とらずサンふじ」などとよばれる[8][9][10]。‘ふじ’は晩生品種であり、日本における収穫適期は10月末から11月中旬である[5][11][12][13]

3a. ‘ふじ’
3b. 「サンふじ」は色むらができやすい。
3c. 「サンふじ」の果実断面: 蜜が入った状態

‘ふじ’の果実は円形からやや長円形、重さは300グラムほどである[1][5][2][11][12][14]。有袋栽培の場合の果皮は鮮やかな紅色になるが、無袋栽培(サンふじ)の場合は一般的に黄緑色の地に縞状に赤くなる[5][15](上図3)。また、収穫まで袋かけをしたままにして果皮が淡いクリーム色になるものもあり、「ムーンふじ」とよばれる[16]。果肉は黄白色で硬く(上図3c)、肉質はやや粗めでシャキシャキしており、果汁が極めて多い[1][5][2][13]。糖度は14–16%、酸度は0.3–0.5%、甘みが強いが酸味とのバランスがよく、食味に優れる[1][2]。成熟すると蜜が入りやすい[1](上図3c)。果実の貯蔵性に極めて優れるため、11月から翌年の8月まで販売され、リンゴの周年供給に重要な役割を担っている[5][17][7]

2018年、JAつがる弘前より、リンゴの生鮮食品としての機能性表示届出は第一例目となる、リンゴ由来ポリフェノールであるプロシア二ジンを関与成分とした「プライムアップル!(ふじ)」が販売された[18]内臓脂肪を減らす効果が期待されている。

生産

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日本

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‘ふじ’が登録された1962年(昭和37年)当時、日本におけるリンゴの主要品種は‘国光’や‘紅玉’であり、品種更新は積極的には行われていなかった[5]。しかし翌1963年(昭和38年)、バナナが輸入自由化され、他の果実が豊作であったこと、高度経済成長で豊かになりグルメ嗜好が高まった国民の嗜好に対して当時多かったリンゴの品種が合致していなかったことなどから、リンゴの価格が暴落した[5]。そのため農家が山や川にリンゴを放棄することも起こり、「山川市場(やまかわしじょう)」とよばれた[5]

このためリンゴの品種更新が急速に進み、当初はデリシャス系が主力となったが、やがて1981年(昭和57年)に‘ふじ’がデリシャス系を抜いて日本で生産量が最も多い品種となった[5][19][20]。以降‘ふじ’はその座を維持しており、2023年の日本における‘ふじ’の生産量は306,900トンであり、リンゴ全体(603,800トン)の約51%を占めている[21]。‘ふじ’生産量が多い県は、青森県(181,400トン)、長野県(57,300トン)、山形県(17,400トン)、岩手県(15,300トン)、福島県(13,700)、秋田県(10,700トン)であった[21]

世界

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‘ふじ’は日本国外でも多く生産されている。特に世界のリンゴ生産の約半分を占める中国では、品種別では‘ふじ’が最も多く、その比率は2015年には66%、2022年にも約70%であったと推定されている[22][23]。そのため、‘ふじ’は世界で最も生産量が多いリンゴ品種であり、2015年時点で世界のリンゴ総生産量8,200万トン[24]に対して、‘ふじ’の生産量は3,540万トン(全体の約34%)と推定されている[22]

4. 米国市場の‘ふじ’

アメリカ合衆国では、‘ふじ’は1980年代に市場に参入し、それ以降栽培されて大きな需要を得ている(図4)。2022–2023年には、‘ふじ’の生産量は‘ガラ’、‘レッドデリシャス’、‘ハニークリスプ’に次いで第4位(24,321,992ブッシェル、全体の9.9%)となっている[25]ヨーロッパでは、2022–2023年における‘ふじ’の生産量は17,531,978ブッシェル、全生産量の2.8%、品種別で第10位であった[25]

歴史

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1939年(昭和14年)、青森県南津軽郡藤崎町にあった農林省の園芸試験場東北支場(現 農研機構果樹研究所)において、優良品種育成のためいずれも米国産の品種である‘国光’(英名は‘Ralls Janet’)を種子親、‘レッドデリシャス’を花粉親とした交配が行われた[26][5][1][27]。この結果形成された2,004粒の種子から787個体の実生(このうち結実は596個体)が得られ、そこからのちに‘ふじ’となる個体(個体番号は「ロ-628」[28])などが選抜された[26][17]。この個体は戦中戦後の混乱を生き抜いて1951年(昭和26年)ごろに初めて果実をつけ、その優秀性が認められ、1958年(昭和33年)に「東北7号」として公表されるとともに、各県試験場に穂木が配布され、さまざまな環境での性質が調査された[26][28][29]。その後1962年(昭和37年)に全国リンゴ協議会名称選考会において‘ふじ’と命名され、また「リンゴ農林1号」として登録された[26][5][2]

上記のように、‘ふじ’は日本のみならず世界で最も多く生産されるリンゴ品種となっており、2014年(平成26年)に公益財団法人発明協会が選定した「戦後日本のイノベーション100選」の1つに選出されている[5][28]

原木

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‘ふじ’は農林省園芸試験場東北支場があった青森県藤崎町で育成されたが、その後、試験場が東北農業試験場園芸部として岩手県盛岡市に移転するに伴い、この原木(個体番号「ロ-628」)も1961年に青森県藤崎町から岩手県盛岡市に移植された[5][27][19]。リンゴの品種は種子で増やすことができない(親の特徴がそのまま受け継がれない)ため、枝を接ぎ木して増やす。そのため、現在世界中で最も多く栽培されているリンゴである‘ふじ’のすべての木は、この原木のクローンである[注 2]。原木は高齢であるため、負担をかけないように果実をならせないように管理されている[5]

原木の枝を直接接いだ木は準原木とよばれ、弘前市のりんご公園や藤崎町のふじ原木公園などに存在する[5]

名称

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‘ふじ’の名は、育成地である青森県藤崎(ふじさき)と、富士山にちなむ[2][5]。また、当時の人気女優である山本富士子にもちなんでいるとされる[5]

中国語では「富士」や「富士苹果」[31]、英語では「Fuji」と表記される[32]

派生品種

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枝変わり

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リンゴ接ぎ木によって増やすため、同じ品種は遺伝的に同一なクローンであるが、まれに分裂組織に突然変異が起こって枝など木の一部が他と異なる性質を示すことがあり、「枝変わり」とよばれる[30]。‘ふじ’の枝変わりに由来する品種には、以下のようなものがある。

‘ふじ’の枝変わり品種の中で、典型的な‘ふじ’よりも早く成熟するものは「早生ふじ」や「早生系ふじ」と総称される[30][33]。「早生ふじ」には、‘ひろさきふじ’、‘昴林’[注 3]、‘涼香の季節’[注 4]、‘やたか’、‘ほのか’、‘出羽ふじ’、‘相伝ふじ’などがある[30][33]。これらの品種の、さらなる枝変わりに由来する品種も存在し、‘紅将軍’、‘ひろの香り’などがある[30][33]

果実の着色性が良い‘ふじ’の枝変わり品種(およびそれらのさらなる枝変わり品種)も多く、‘コスモふじ’[36]、‘こまちふじ’[37]、‘みしまふじ’(秋ふ47)[33][38]、‘ふじロイヤル’[33]、‘峰村ふじ’[33][39]、‘2001年’[33]、‘宮美ふじ’[40]、‘新富’(本沢ふじ)[33]、‘長ふ2号’[33]、‘長ふ6号’[33][41]、‘長ふ12号’[33]、‘らくらくふじ’[33]、‘みやまふじ’[33]、‘ブラック三島ふじ’[33]、‘ふじいち’[33]、‘駒ふじ’[33]、‘ふじDX’[33]、‘ふじロイヤル21’[33]、‘ふじチャンピオン’[33]、‘レッドセブン’[33]、‘未来ふじ’[33]、‘たかねふじ’[33]、‘金一郎ふじ’[33]、‘ハイランドふじ’[33]、‘極ふじ’[33]、‘寿ふじ’[33]、‘新生ふじ’[33]、‘パインアップル’[33]、‘紅ほまれ’[33]、‘紅しぐれ’[33]、‘天下ふじ’[33]、Kiku Fuji (‘Brak’)[42] などがある。

また、果実が黄色系になる‘ふじ’の枝変わり由来の品種も存在し、‘ゴールドファーム’、‘黄金ふじ’、‘白ふじ’などが知られている[30][33]

そのほかに、短果枝型の‘セイリンスパー’、四倍体の‘天星’などもある[33]

交配

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‘ふじ’を交配親とする新品種の開発も盛んに行われている[5]。‘ふじ’を種子親とするものとして‘あいかの香り’(花粉親は不明)[43]、‘アルプス乙女’(花粉親はヒメリンゴ)[44]、‘黄秋’(花粉親は‘金星’)[45]、‘きたろう’(花粉親は‘はつあき’)[46]、‘きみと’(花粉親は‘東光’)[47]、‘こうたろう’(花粉親は‘はつあき’)[48]、‘シナノスイート’(花粉親は‘つがる’)[49]、‘春名21’(花粉親は‘レイ8’)[50]、‘新世界’(花粉親は‘あかぎ’)[51]、‘スリムレッド’(花粉親は‘あかぎ’)[52]、‘美丘’(花粉親は‘王林’と‘青り4号’(世界一)の混合花粉)[53]、‘ローズパール’(花粉親は‘ピンクパール’)[54]などがある。一方、‘ふじ’を花粉親とするものとして‘アキタゴールド’(種子親は‘ゴールデンデリシャス’)[55]、‘安祈世’(種子親は‘千秋’)[56]、‘きざし’(種子親は‘ガラ’)[57]、‘ぐんま名月’(‘名月’; 種子親は‘あかぎ’)[58]、‘こうこう’(種子親は‘弘大1号’)[59]、‘清明’(種子親は‘ゴールデンデリシャス’)[60]、‘青林’(種子親は‘レッドゴールド’)[61]、‘千秋’(種子親は‘東光’)[62]、‘トキ’(種子親は‘王林’)[63]、‘めんこい姫’(種子親は‘ラリタン’)[64]などがある。

脚注

[編集]

注釈

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  1. ^ a b 「サンふじ」の名は、JA全農長野が1983年に商標登録している[4]
  2. ^ ただし、突然変異によって遺伝的にわずかに異なる子孫が生まれることもあり、枝変わりとよばれる[30]
  3. ^ 不明花粉親との交雑に由来すること考えられていたが[33]、DNAの調査から‘ふじ’の枝変わりまたはアポミクシス(単為生殖)に由来することが示唆されている[34]
  4. ^ 当初は‘ふじ’を種子親、‘スターキングデリシャス’を花粉親とした交雑に由来するともされたが[33]、現在では‘ふじ’の枝変わりまたはアポミクシスに由来すると考えられている[35]

出典

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  4. ^ 【りんご】「サンふじ」と「ふじ」の違いは何ですか?”. JA全農長野. 2024年10月20日閲覧。
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外部リンク

[編集]
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