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ウクライナでのスターリンク衛星サービス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ウクライナでのスターリンク衛星サービス(ウクライナでのスターリンクえいせいサービス)は、ウクライナ市場に提供されているスペースXスターリンクインターネット接続サービスである。ウクライナでのサービスは2022年ロシアのウクライナ侵攻後に開始され、ウクライナ全土の従来の通信インフラに対するロシアの継続的な爆撃にもかかわらず、ウクライナ政府と民間人に重要な通信ライフラインを提供している。このサービスはマリウポリの戦い(2022年)で極めて重要な役割を果たし、包囲され、抵抗しているウクライナ軍が執拗なロシアの爆撃と飢餓状態について世界に報告し続けることを可能にした[1][2]。スターリンクは現在、戦争で荒廃したウクライナの重要な通信回線として機能しており、不安定な従来の通信インフラを補完している。2022年9月時点で、ウクライナに2万3000台のスターリンクの端末があった[3]

交渉

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スペースXのグウィン・ショットウェル社長によると、スペースXは、(ロシアの)侵攻の一か月半前からスターリンクの開始に向けてウクライナと交渉しており、同社は許可通知書を待っていたという[4]

2022年に突然のロシアのウクライナ侵攻が始まり、ロシアは電気通信施設を含む重要なインフラを攻撃し、ウクライナではインターネット接続に重大な問題が生じた。インターネット接続を保つことはウクライナ軍とその他の政府機関にとって重要かつ緊急の問題となった[5]

サービス

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サービス早期

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キーウテレビ塔へのミサイル攻撃(3月1日)
スターリンクの端末と写るキーウ市長のビタリ・クリチコと彼の兄弟ウラジミール・クリチコ

2022年2月26日、ロシアの縦列がウクライナの首都キーウ制圧に向け進軍している最中、ウクライナデジタル改革相のミハイロ・フェドロフイーロン・マスクにツイッターでスターリンクの形でウクライナへの支援を提供するように求めた[5][4]。フェドロフのツイートから約10時間後、マスクはウクライナのスターリンクサービスが今ウクライナで有効になっているとリプライし(以前は利用可能な国のリストに無かった)、スターリンクの追加機材をウクライナに送った[6][7][8][9][10][11][12]

スペースXからの衛星ネットは、マリウポリで包囲されたウクライナの守備隊が数千人のロシア軍相手に抵抗し、何週間にも渡り彼らをマリウポリに束縛したアゾフスタリ包囲戦 (4月15~5月20日)で重要な役割を果たした[1]。3月21日、「空中回廊作戦」(3月21日~4月7日)のヘリコプター2機がウクライナの特殊部隊の戦闘員と武器、最初のスターリンク端末をマリウポリを包囲する敵陣の背後に運んだ。これらのスターリンク端末により、包囲された部隊はウクライナ軍司令部、ジャーナリスト、親族とのつながりを維持することができ、現地の英雄的で終末さながらの状況に対する意識と世界的な報道を高めた[1][2]

5月上旬、マスクは、ロシアのロスコスモスCEOで政治家のドミトリー・ロゴージンが、「イーロン・マスクを脅す内容を含むメモ」をロシアメディアに送付していたことをツイッターで報告し、そのメモを公開した[13][14]

スターリンクのインターネットは、キーウ州での解放された地域の通信の復旧中にウクライナ鉄道の列車でも使用され始めた(特にライフセルボーダフォンは、スターリンクを使用して携帯通信を提供した)[15]

成長

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タイムズは2022年3月にウクライナ軍がロシア軍を攻撃するドローンの接続にスターリンクを使用していると報じた[16]

ワシントン・ポストのインタビューで、ミハイロ・フェドロフは、欧州諸国が自国の在庫のスターリンク端末をウクライナに送っていると述べた[17]

時間が経つにつれて、スペースXから寄贈されたスターリンク衛星端末の数が増え始めた。ウクライナ政府機関も、より多くの端末(スターリンクの地上ステーション)を購入するための資金調達を開始した。特に、2022年6月にウクライナは、ウクライナの諜報部隊用の新しい端末群を受け取った[18]

10月の論争

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ロシアのウクライナ侵攻終結に向けた独自の「和平案」を示し、ロシア寄りの内容だとゼレンスキー大統領らから猛反発を招いていた[19]マスクは、2022年10月14日にツイッターで「既存の端末の費用を無期限に負担したり、データ通信量が一般家庭の最大100倍に達する端末を数千台追加するのは難しい」と述べ、ウクライナでスターリンクの衛星サービスを維持するために、毎月約2000万ドルを負担していると指摘した[20][21]。10月15日、マスクはスターリンクのウクライナへの無償提供を継続する考えを明らかにした[22]

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4月5日時点で、スペースXアメリカ合衆国国際開発庁(USAID)はウクライナに5000台の端末を送っており、そのうち3667台(73%)はスペースXが寄付し、残りをUSAIDが購入した[23]。2022年9月末時点で、ウクライナに2万3000台のスターリンクの端末がある[3]

脚注

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  1. ^ a b c Landry, Carole (2022年7月25日). “Inside the Azovstal Siege” (英語). The New York Times. ISSN 0362-4331. https://www.nytimes.com/2022/07/25/briefing/russia-ukraine-war-azovstal.html 2022年10月15日閲覧。 
  2. ^ a b Schwirtz, Michael (2022年7月24日). “Last Stand at Azovstal: Inside the Siege That Shaped the Ukraine War” (英語). The New York Times. ISSN 0362-4331. https://www.nytimes.com/2022/07/24/world/europe/ukraine-war-mariupol-azovstal.html 2022年10月15日閲覧。 
  3. ^ a b Olha Povaliaieva (2022年9月19日). “Worldwide "Starlink"” (英語). GTInvest. 2022年9月20日閲覧。
  4. ^ a b Starlink в Україні: кому доступний інтернет від SpaceX та як ним користуватися”. The Village Україна (2022年4月29日). April 29, 2022時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年7月12日閲覧。
  5. ^ a b @elonmusk while you try to colonize Mars — Russia try to occupy Ukraine! While your rockets successfully land from space — Russian rockets attack Ukrainian civil people! We ask you to provide Ukraine with Starlink stations and to address sane Russians to stand”. Twitter (26 February 2022). 2023年2月6日閲覧。
  6. ^ “Elon Musk's Starlink arrives in Ukraine but what next?” (英語). BBC News. (2022年3月1日). オリジナルのJuly 9, 2022時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20220709030211/https://www.bbc.com/news/technology-60561162 2022年7月12日閲覧。 
  7. ^ Welle (www.dw.com). “Ukraine is using Elon Musk's Starlink for drone strikes | DW | 27.03.2022” (英語). DW.COM. July 5, 2022時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年7月12日閲覧。
  8. ^ Перша партія StarLink прибула в Україну (фото)”. LB.ua. April 21, 2022時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年7月12日閲覧。
  9. ^ “Starlink Маска прибув в Україну. Хто і як може користуватись інтернетом” (ウクライナ語). BBC News Україна. オリジナルのApril 22, 2022時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20220422184435/https://www.bbc.com/ukrainian/news-60583913 2022年7月12日閲覧。 
  10. ^ В Україні запрацював супутниковий інтернет від Ілона Маска – Starlink. Яка швидкість та чи становить це небезпеку — Forbes.ua” (ウクライナ語). forbes.ua (2022年3月2日). March 11, 2022時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年7月12日閲覧。
  11. ^ イーロン・マスクの指示で衛星インターネット「Starlink」がウクライナであっという間に利用可能に”. GIGAZINE. 2023年2月6日閲覧。
  12. ^ マスク氏約束の衛星ネット機材、ウクライナ到着-閣僚が謝意”. Bloomberg.com. 2023年2月6日閲覧。
  13. ^ Ілон Маск відреагував на погрози Рогозіна нібито через постачання Starlink українській армії” (ウクライナ語). LIGA (2022年5月9日). June 11, 2022時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年7月12日閲覧。
  14. ^ 「イーロン・マスクを脅すメモ」がロシアメディアに送付されていたことが判明、マスクは不謹慎ジョークで応酬するも母親に怒られて謝罪”. GIGAZINE. 2023年2月6日閲覧。
  15. ^ Втратити вежі й мільярди, отримати Starlink: як мобільні оператори повертають зв'язок” (ウクライナ語). LIGA (2022年5月16日). June 19, 2022時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年7月12日閲覧。
  16. ^ Parker, Charlie. “Specialist Ukrainian drone unit picks off invading Russian forces as they sleep” (英語). The Times. ISSN 0140-0460. オリジナルのMay 9, 2022時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20220509223039/https://www.thetimes.co.uk/article/specialist-drone-unit-picks-off-invading-forces-as-they-sleep-zlx3dj7bb 2022年7月12日閲覧。 
  17. ^ “Elon Musk's Starlink is keeping Ukrainians online when traditional Internet fails” (英語). Washington Post. ISSN 0190-8286. オリジナルのJune 4, 2022時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20220604201537/https://www.washingtonpost.com/technology/2022/03/19/elon-musk-ukraine-starlink/ 2022年7月12日閲覧。 
  18. ^ Zaxid.net. “Ілон Маск передав партію Starlink для українських розвідників” (ウクライナ語). ZAXID.NET. July 11, 2022時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年7月12日閲覧。
  19. ^ ウクライナ支援打ち切り? 衛星通信の提供中止も―マスク氏:時事ドットコム”. 時事ドットコム. 2023年2月6日閲覧。
  20. ^ イーロン・マスク氏、ネット接続費を米政府に請求 ウクライナ向け”. 日本経済新聞 (2022年10月15日). 2023年2月6日閲覧。
  21. ^ ウクライナの衛星ネットサービス、無期限に提供できず=マスク氏」『Reuters』2022年10月14日。2023年2月6日閲覧。
  22. ^ マスク氏、ウクライナへのスターリンク無償提供継続へ」『Reuters』2022年10月16日。2023年2月6日閲覧。
  23. ^ Office of Press Relations (5 April 2022). “USAID SAFEGUARDS INTERNET ACCESS IN UKRAINE THROUGH PUBLIC-PRIVATE-PARTNERSHIP WITH SPACEX” (英語). USAID. US Government. 5 April 2022時点のオリジナルよりアーカイブ。4 October 2022閲覧。 “SpaceX donated 3,667 terminals and the internet service itself, and USAID purchased the additional 1,333 terminals”