コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

クラマトルスク駅へのミサイル爆撃

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
クラマトルスク駅へのミサイル爆撃
クラマトルスク駅周辺で発見された、弾道ミサイルのブースター部分。
「子供たちへ(За детей)」と白く書かれている。
クラマトルスク駅へのミサイル爆撃の位置(ドネツィク州内)
クラマトルスク駅へのミサイル爆撃
クラマトルスク駅へのミサイル爆撃 (ドネツィク州)
場所  ウクライナ ドネツィク州クラマトルスク クラマトルスク駅ウクライナ語版
座標 北緯48度43分34秒 東経37度32分34秒 / 北緯48.72611度 東経37.54278度 / 48.72611; 37.54278 (クラマトルスク駅へのミサイル爆撃)座標: 北緯48度43分34秒 東経37度32分34秒 / 北緯48.72611度 東経37.54278度 / 48.72611; 37.54278 (クラマトルスク駅へのミサイル爆撃)
日付 2022年4月8日 (2年前) (2022-04-08)
- 午前10時30分(東ヨーロッパ夏時間[1]
兵器
死亡者 52人以上
負傷者 87 - 400人[2]
テンプレートを表示

クラマトルスク駅へのミサイル爆撃(クラマトルスクへのミサイルばくげき)は、2022年4月8日の朝にロシア軍クラマトルスク市からの避難民に対して行ったミサイル攻撃。クラマトルスク駅ウクライナ語版は戦術弾道ミサイルシステムOTR-21 トーチカから発射されたクラスター弾頭を搭載した2発のミサイルによって攻撃された。

経緯

[編集]

クラマトルスクは紛争地であるドネツィク州に属していたが、2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻でも一部空襲があった程度で比較的平穏であった。しかし4月になると東部においてロシア軍が攻勢を強化するという情報もあり、クラマトルスクから避難しようとする多くの市民が駅に集っていた[3]。地元ドネツク州の検察当局の発表では、当時クラマトルスク駅には女性や子供を中心とする4,000人ほどの避難民がいたという[3]

4月8日10時30分頃、クラマトルスク駅上空で弾道ミサイルの9N123クラスター弾頭が起爆、最終段階で散布された金属球によって子供5人を含む少なくとも50人が死亡した[4][3][5]ウクライナ鉄道の代表は弾道ミサイルは駅周辺に2発が飛来したとし、目撃者の証言では、5回から10回の爆発音があったという[4]

攻撃翌日の時点でウクライナはロシア側、ロシアはウクライナ側による攻撃であると声明している。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は攻撃がトーチカU(スカラベ-B、SS24)によるものであると発表し[6]、またロシア側も同様にトーチカUであるとしている。アメリカ合衆国国防総省高官は、トーチカUはウクライナ国内に設置されたロシア側の拠点から発射されたものではないかと見ている[6][7]

またBBCウクライナ語版英語版も、トーチカUをロシア軍がウクライナのデスニャンカで使用したことを伝え、ブースターが無傷で残るのはクラスター弾頭が使われた時の通例であるとしている[8]

一部の海外メディアは、西側関係者が、チェチェンやシリアで残虐行為に及んだロシア軍のドボルニコフ司令官が駅攻撃を命じたのではないかと考えていると報じている。[9]

反応

[編集]

ウクライナ以外の批判

[編集]

アメリカ合衆国ジェン・サキ大統領報道官は「安全な場所へ避難しようとしている市民を攻撃したロシアによる恐ろしい残虐行為だ」と非難している[10]

日本林芳正外務大臣は「ロシアがウクライナ東部クラマトルスクの鉄道駅をミサイルで攻撃し、避難しようとしていた多数の民間人を殺害したことを強く非難します。」とし、戦争犯罪であるという認識を示した[11]

アントニオ・グテーレス国際連合事務総長国際人道法国際人権法への重大な違反であると指摘し、「全く容認できない」と声明を発した[12]

国際連合児童基金は、クラマトルスク駅が避難や援助のための重要な拠点であったとし、攻撃を強く非難した[13]

ロシアおよび親ロシア派の反応

[編集]

攻撃直後、親ロシア派のニュースサイトはアプリ「Telegram」で「ウクライナ軍が集結しているクラマトルスクの駅を10分前に攻撃した」と配信していたが、これらの配信はまもなく削除された[14]。BBCウクライナ語版では、これはドネツィクの「Типовий Донецьк」のテレグラムチャンネルから配信されているものとし、スクリーンショットを掲載している[8]。その後ロシア国防省は攻撃を否定し、トーチカUを現在保持していないと声明している[5]。しかし2月24日のドネツィク州への病院爆撃でトーチカUがロシア側によって使用されているほか[15]ベラルーシ国内でロシア軍の標章が書かれた車両によってトーチカUのシステムが運搬される様子や、ベラルーシ・ウクライナ国境付近にトーチカUが設置された様子は動画撮影されており、ロシアが保持していないという情報は信憑性が低いと見られている[16]

ロシアのイズベスチア紙は、目撃者の写真だとする画像を載せ、「Ш91579」のシリアル番号から駅に落下したミサイルはウクライナ軍によって攻撃がなされたことを証明していると主張し、刑事訴訟を開始したと伝えている[17]

ロシア国防省が運営するテレビ局ズヴェズダ英語版もウェブサイトで[18]で「Ш91579」のシリアル番号の写真を載せ、トーチカUを使っているのはウクライナ軍だけであると主張している。一方で2022年2月15日の記事では、ロシアがベラルーシと合同軍事演習を行いトーチカUからミサイルを2発発射している動画付きの記事を掲載している[19]

報道

[編集]

日本語

За детей

[編集]
  • イズベスチア紙は、これはロシア語で«Это за детей»の意味だと解している。[20]これは英語では This is for the children. に相当し、日本語であれば「これは子供たちのために」となる。
  • ニューズウィークはベルリン在住の専門家の意見を引用し、これは報復のメッセージに解釈できる、 'За детей'も'Для детей'も両方、「子供たちに」と訳せるが、後者だと「子供を狙う」になるが、前者だと「だってお前らは子供達に悪いことをしていただろう」になり、それはウクライナ人はロシアの子供たちを殺したという明らかな嘘に騙されたものであろう。「ドンバスのロシアの子供たちはウクライナの爆撃に苦しんでいる」というのは過去8年間、非常に頻繁に見かけるロシアのプロパガンダ話だったと述べている。[21]
  • ウクライナのニュースサイトDonPressは、ミサイルの残骸の写真と共に、ロシアの典型的な訓練マニュアルには「ドンバスの子供たちが砲撃されていた8年間、お前はどこにいたのか」と書かれている旨を解説者がコメントしている。[22]

画像

[編集]

2022年ロシアのウクライナ侵攻

上記写真では人もまばらな駅であるが、2022年4月8日付けのBBCは、最近は何万人もの人々がウクライナ東部を脱出するためにクラマトルスク駅を利用していたと人でごった返すホームの写真を掲載している。[23]

ミサイル攻撃直後

画像には犠牲となった市民の遺体の写真が含まれます。ご注意ください。

脚注

[編集]
  1. ^ “Kramatorsk station attack: What we know so far” (英語). BBC News. (2022年4月9日). https://www.bbc.com/news/world-europe-61036740 2022年4月9日閲覧。 
  2. ^ 'An evil without limits': Dozens killed, injured in rocket strike on train station in eastern Ukraine: Live updates” (English). USA Today News. Gannett (8 April 2022). 8 April 2022閲覧。
  3. ^ a b c 散乱する遺体、血まみれの人々… ウクライナ駅攻撃の現場”. AFPBB News (2022年4月9日). 2022年4月10日閲覧。
  4. ^ a b ウクライナ東部の駅に砲撃、避難民50人死亡 首都郊外では新たに130人超の遺体発見 - BBCニュース”. BBCニュース. BBCニュース (2022年4月9日). 2022年4月10日閲覧。
  5. ^ a b ReutersStaff (2022年4月8日). “ウクライナ駅砲撃、民間人死傷に非難相次ぐクラスター弾使用か”. Reuters. 2022年4月9日閲覧。
  6. ^ a b 駅にロシア軍攻撃、52人死亡ゼレンスキー氏「トーチカUで」-毎日新聞”. 毎日新聞 (2022年4月9日). 2022年4月10日閲覧。
  7. ^ 翻訳:CNN.co.jp編集部 (2022年4月9日). “ウクライナ鉄道駅攻撃で50人死亡、短距離弾道ミサイル使用か米分析”. CNN.co.jp. 2022年4月10日閲覧。
  8. ^ a b В Краматорську ракетами обстріляли вокзал. Усі подробиці - BBC News Україна”. BBC News Україна (2022年4月8日). 2022年4月13日閲覧。
  9. ^ Revealed: The monstrous Russian general behind the attack on a Ukrainian railway station that was branded a 'crime against humanity' after it killed at least 50 civilians - including five children - who were fleeing Kremlin's atrocities
  10. ^ 鉄道駅に無差別弾道ミサイル子ども5人含む52人死亡ロシアとウクライナ、双方「相手が発射」と主張”. 東京新聞TOKYOWeb (2022年4月9日). 2022年4月10日閲覧。
  11. ^ @MofaJapan_jp (2022年4月9日). "林芳正外務大臣のメッセージ". X(旧Twitter)より2022年4月10日閲覧
  12. ^ 国連事務総長、駅攻撃は「全く容認できない」”. 産経ニュース. 産経ニュース (2022年4月9日). 2022年4月9日閲覧。
  13. ^ ウクライナ駅攻撃で52人死亡EU軍事・財政面支援強化と強調” (2022年4月10日). 2022年4月10日閲覧。
  14. ^ ロシアの責任転嫁にほころび犠牲判明で「ウクライナの仕業」”. 時事通信社 (2022年4月9日). 2022年4月9日閲覧。
  15. ^ ウクライナ:ロシアがクラスター弾で病院を攻撃”. Human Rights Watch (2022年2月24日). 2022年4月10日閲覧。
  16. ^ Tlis, Fatima (2022年4月8日). “Suspect Claim by Russia on Rockets That Killed Fleeing Civilians” (英語). Polygraph.info (ボイス・オブ・アメリカ). https://www.voanews.com/a/fact-check-russia-kramatorsk-missile/6743344.html 2024年9月8日閲覧。 
  17. ^ Упавшая в Краматорске «Точка-У» оказалась одной серии с ракетами ВСУ
  18. ^ Стоит на балансе ВСУ: СМИ опубликовали серийный номер ударившей по Краматорску «Точки-У»
  19. ^ Разрушительная сила: опубликованы кадры ракетных пусков с комплекса «Точка-У» на учениях «Союзная решимость»
  20. ^ Спецоперация в Донбассе и антироссийские санкции. Главное
  21. ^ Missile That Hit Ukrainian Civilian Station Had 'For Children' On it
  22. ^ Убили ради мира. В СМИ показали фото русской ракеты, ударившей по Краматорску
  23. ^ Kramatorsk station attack: What we know so far