メルセデス・F1 W10 EQ Power+
カテゴリー | F1 | ||||||||||
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コンストラクター | メルセデス | ||||||||||
デザイナー |
アルド・コスタ (前エンジニアリングディレクター) ジョン・オーウェン (チーフデザイナー、エンジニアリングディレクター) ジェフリー・ウィリス (テクノロジーディレクター) ジェイムズ・アリソン (テクニカルディレクター) | ||||||||||
先代 | F1 W09 EQ Power+ | ||||||||||
後継 | F1 W11 EQ Performance | ||||||||||
主要諸元 | |||||||||||
エンジン |
メルセデス M10 EQ Power+ 1.6L V6ターボ | ||||||||||
タイヤ | ピレリ | ||||||||||
主要成績 | |||||||||||
チーム | メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ | ||||||||||
ドライバー |
ルイス・ハミルトン バルテリ・ボッタス | ||||||||||
出走時期 | 2019年 | ||||||||||
コンストラクターズタイトル | 1 (2019年) | ||||||||||
ドライバーズタイトル | 1 (2019年) | ||||||||||
通算獲得ポイント | 739 | ||||||||||
初戦 | 2019年オーストラリアGP | ||||||||||
初勝利 | 2019年オーストラリアGP | ||||||||||
最終戦 | 2019年アブダビGP | ||||||||||
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メルセデスAMG F1 W10 EQ Power+ (Mercedes-AMG F1 W10 EQ Power+) は、メルセデスが2019年のF1世界選手権参戦用に開発したフォーミュラ1カーである。
概要
[編集]2019年2月13日にシルバーストン・サーキットで正式発表され[1]、同日シェイクダウンを行った[2]。プレシーズンテストでは先端がスプーン状に丸みを帯びたノーズを導入した[3]。
前年のW09で弱点となっていたリアタイヤのパフォーマンス向上のため、サスペンションと空力特性の改善に努めつつ、新空力レギュレーションへの適応を行った。本車両はフロント・ダウンフォースがフェラーリより安定して強い特性がある。パワーユニットは前年型を進化させ、冷却面の構造を変更し、燃焼効率とERSシステムを改善している[2]。
2010年のF1復帰から10年目を迎え、シルバーの部分にメルセデスのロゴ(スリーポインテッドスター)を多数ちりばめたデザインが採用された[2]。また、メルセデスのノンエグゼクティブチェアマンを務めるニキ・ラウダが5月20日に急逝したことを受け、その直後のGPとなったモナコGPでは追悼のため、「ヘイローのカラーリングを赤へ変更・スリーポインテッドスターの1つを赤い星にする・フロントノーズにラウダの直筆サインを記す」というデザインに変更された。当初は追悼のための限定デザインと思われたが、赤い星については永遠に掲載していくことを表明した[4]。
ドイツGPではモータースポーツ誕生125周年とメルセデス・ワークスのF1参戦200戦目を記念して、フロント部分を白色にラッピングしたスペシャルカラーリングで登場した。1934年のアイフェルレンネンでW25の車重が規定を1 kg超えてしまったため、ドイツのナショナルレーシングカラーの白い塗装を削ってアルミの金属地剥き出しのまま出走したという「シルバーアロー誕生秘話」を再現している[5]。レーシングスーツやチームスタッフのユニフォームも1950年代風のレトロスタイルにした[6]。
2019年シーズン
[編集]ドライバーはルイス・ハミルトンとバルテリ・ボッタスのまま変更なし。
プレシーズンテストではテスト走行に専念し、テスト終盤に好記録を残したものの、フェラーリが優勢と思われる形でテストを終えた。だが、蓋を開けるとシーズン前半は予想とは違う展開となった。開幕戦オーストラリアGP[7]から第4戦アゼルバイジャンGPまではフェラーリ陣営の自滅やレッドブルの不調にも助けられ完勝。また、第5戦スペインGPのアップデートによって、マシンの優位性を維持することに成功。その結果、チームとしてはF1史上初の開幕から5戦連続ワンツーフィニッシュ[8][9]という記録を達成した。
それでも、フェラーリおよびレッドブルは脅威であり、第2戦バーレーンGPではシャルル・ルクレールに、第7戦カナダGPはセバスチャン・ベッテルに先行される形となった。ところが、前者はルクレールのマシントラブル[10]、後者はベッテルのレース中のタイムペナルティによりハミルトンが逆転勝利を飾った。また、第6戦モナコGPではタイヤの選択ミスにより、フェルスタッペンに追い詰められたものの凌ぎ切った。
そんななか、第9戦オーストリアGPでその歩みに待ったをかけられた。FP3以降はフェラーリ(ルクレール)に先行され、決勝ではレッドブル(フェルスタッペン)にも後塵を拝したうえ、フェルスタッペンの勝利によって連勝記録はストップ。今までのGPより苦戦が目立った理由として、想定を超える熱の負荷[11]とマシンの冷却能力が今季の課題になっているともコメントした[12]。それを証明するかのように、猛暑にならなかった第10戦イギリスGPでは再び他チームを圧倒した。その一方でホームグランプリとなる第11戦ドイツGPでは、予選までは好調であったが、ミックスウェザーとなった決勝は天候に翻弄され、タイヤ戦略も機能せず低迷。最終的にはハミルトンが繰り上げという形で9位入賞を果たしたが、同様の成績を記録したのは2015年シンガポールGP以来となる。第12戦ハンガリーGPではポールポジションこそはフェルスタッペンにとられたものの、決勝はタイヤ戦略を駆使してハミルトンがレース終盤に逆転し優勝を果たした。これには苦戦するレースもあるが基本的にライバル不在という見方をする識者も多く[13]、実際、シーズン前半だけでコンストラクターズタイトルをほぼ手中に収め、ドライバーズチャンピオンシップもハミルトンが圧倒的な優位性を築いた形でシーズン前半を終えた。
シーズン後半戦は、フェラーリが復調し予選で後れをとったが、決勝は前年同様チーム力と明確なレース戦略により、第16戦ロシアGPの逆転優勝や不利と思われた第13戦ベルギーGPと第14戦イタリアGP[14]の表彰台を2台で占領し失点を抑えるなど、リタイアやトラブル以外で表彰台を逃す結果となったといえる第15戦シンガポールGPの苦戦を除けば、メルセデスの勢いが落ちることはなかった。タイトルの方も第17戦日本GPでコンストラクターズを確定[15]。第19戦アメリカGPでハミルトンがドライバーズタイトルを獲得し、名実ともにダブルタイトルを獲得した。
W10が他を圧倒した理由はいくつかあり、マシン面ではチーム代表のトト・ヴォルフはよりダウンフォースの大きいマシンを目指したコンセプトによるものと考え[16]、レッドブルのマックス・フェルスタッペンはスペインGPで「メルセデスだけが今年のマシンを速く走らせる方法を理解している」と考察[17]。現にフェラーリはマシンコンセプトの変更に起因する苦戦[18]、レッドブルはレギュレーション変更の対応の苦戦[19]により、マシンに問題を抱えた。
前半戦に関しては、第9戦の前には2018年仕様のタイヤに変更する案が出された[20]ように、他チームは今季のマシン関連のレギュレーション変更とタイヤ規格の変更に振り回されていた面もあり、それが前半戦のメルセデス勢が相対的に優勢となった面[21]があった。 対応が進んだ後半戦ではフェラーリの逆襲にあったが、同チームのドライバー管理の混乱[22][23]や勝負所での戦略ミスによって自滅。もう一つのライバル、レッドブルはPU切り替え初年度ということもあり、タイトル争いに絡めないことは想定[24]されており、得意なコースで一矢報いたものの、メルセデスの勢いを止めることはできなかった。
マシンの速さの基準となる予選成績だが、フロントロー入りした予選も多く[25]遅くなった訳ではないが、ポールポジションは計10回と減少。今までのマシンに比べると予選での一発の速さという点では他チームに後れを取ったことも少なくなかったが、最終的には前年を上回る面が多く、計9回のワン・ツー・フィニッシュ、総獲得ポイントは2016年以来の700ポイント越え、ハミルトンは自身が持つ歴代最高得点記録も更新した。前年に続き、メルセデスチームの総合力が決め手となり、後半戦のフェラーリの追撃を凌ぎ切る形となった。
スペック
[編集]シャシー
[編集]- シャシー名:メルセデスAMG F1 W10 EQ Power+
- モノコック:カーボンファイバー/ハニカムコンポジット複合構造
- ボディワーク:カーボンファイバーコンポジット/エンジンカバー、サイドポッド、フロア、ノーズ、フロントウイング、リアウイング
- コクピット:OMPレーシング 6点式セーフティベルト、ハンスシステム
- 安全構造:コクピット・サバイバルシェル/耐衝撃構造&進入防止パネル、フロント/サイド/リア インパクトストラクチャー、フロント&リア ロールストラクチャー、チタニウム製ドライバー防護装置(Halo)
- フロントサスペンション:カーボンファイバー製ダブルウィッシュボーン、プッシュロッド式トーションバー&ロッカー
- リアサスペンション:カーボンファイバー製ダブルウィッシュボーン、プルロッド式トーションバー&ロッカー
- ホイール O・Z:マグネシウム製
- タイヤ:ピレリ
- ブレーキシステム:カーボン・インダストリー カーボンディスク&パッド、リア・ブレーキ・バイ・ワイヤ
- ブレーキキャリパー:ブレンボ
- ステアリング:パワーアシスト ラック・アンド・ピニオン
- ステアリング・ホイール:カーボンファイバー製
- エレクトロニクス:FIA(MES) スタンダードECU
- 計器:MES
- 燃料システム:ATL製ケブラー強化ゴムタンク
- 潤滑油:ペトロナス Tutela
トランスミッション
[編集]サイズ
[編集]- 全長:5,000mm以上
- 全幅:2,000mm
- 全高:950mm
- 重量:743kg
パワーユニット構成
[編集]- 型式:メルセデスAMG F1 M10 EQ Power+
- 重量:145kg
- パワーユニット構成:内燃機関/エンジン(ICE)、モーター・ジェネレーター・ユニット・キネティック(MGU-K)、モーター・ジェネレーター・ユニット・ヒート(MGU-H)、ターボチャージャー(TC)、エナジーストア(ES)、電子制御(CE)
内燃エンジン(ICE)
[編集]- 排気量:1,600cc
- 気筒数:V型6気筒
- バンク角:90度
- バルブ数:24
- 最高回転数:15,000rpm(レギュレーションで規定)
- 最大燃料流量:100kg/h(10,500rpm以上)
- 燃料噴射方式:高圧縮直噴(1つの噴射機/シリンダーあたり最大500bar)
- 過給機:同軸単段コンプレッサー、排気タービン
- エキゾーストタービン最大回転数:125,000rpm
ERS(エネルギー回生装置)
[編集]- 構成:電気モーター・ジェネレーター・ユニットを介した統合ハイブリッドエネルギー回生
- エナジーストア:リチウムイオンバッテリー(規定重量の20kg)
- 最大エネルギー蓄積量:4MJ
- MGU-K
- 最高回転数:50,000rpm
- 最大出力:120kW(161bhp)
- エネルギー回収:2MJ
- エネルギー放出:4MJ(フルパワー時で33.3秒)
- MGU-H
- 回転数:125,000rpm
- 最大出力:無制限
- 最大エネルギー回生:無制限(1周あたり)
- 最大エネルギー放出量:無制限(1周あたり)
燃料&潤滑油
[編集]- 燃料:ペトロナス Primax
- 潤滑油:ペトロナス Syntium
記録
[編集]年 | No. | ドライバー | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | ポイント | ランキング |
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AUS |
BHR |
CHN |
AZE |
ESP |
MON |
CAN |
FRA |
AUT |
GBR |
GER |
HUN |
BEL |
ITA |
SIN |
RUS |
JPN |
MEX |
USA |
BRA |
ABU | |||||
2019 | 44 | ハミルトン | 2 | 1 | 1 | 2 | 1 | 1 | 1 | 1 | 5 | 1 | 9 | 1 | 2 | 3 | 4 | 1 | 3 | 1 | 2 | 7 | 1 | 739 | 1位 |
77 | ボッタス | 1 | 2 | 2 | 1 | 2 | 3 | 4 | 2 | 3 | 2 | Ret | 8 | 3 | 2 | 5 | 2 | 1 | 3 | 1 | Ret | 4 |
脚注
[編集]- ^ “最強時代は続くのか? メルセデスF1、新車W10を公開”. motorsport.com (2019年2月13日). 2019年2月19日閲覧。
- ^ a b c “メルセデスF1、弱点克服に取り組み、新車『W10』をタイヤに優しいマシンに改善。10年目の節目でカラーリングも変更”. AUTOSPORTweb (2019年2月13日). 2019年2月19日閲覧。
- ^ “【F1ギャラリー】第2回バルセロナテスト1日目:メルセデスが新ノーズをテスト”. AUTOSPORT Web (2019年2月26日). 2019年10月8日閲覧。
- ^ メルセデス、ニキ・ラウダ追悼の”レッドスター”は「永遠に残す」 - jp.motorsport.com・(2019年5月27日)2019年5月27日閲覧
- ^ “”シルバーアロー誕生”の過程を再現。メルセデスF1、特別カラーリングを公開”. motorsport.com日本版 (2019年7月26日). 2019年10月31日閲覧。
- ^ “【画像】メルセデス、レトロな1950年代風ユニフォームをお披露目/F1ドイツGP”. Topnews (2019年7月27日). 2019年10月31日閲覧。
- ^ フェラーリのF1開幕戦惨敗に関する「5つの仮設」www.topnews.jp(2019年3月19日)2019年4月1日閲覧
- ^ “史上初の開幕4連続ワンツー……メルセデスがこれまで破った記録、これから破るべき記録”. motorsport.com (2019年5月1日). 2019年5月11日閲覧。
- ^ “F1スペイン決勝:『メルセデス帝国』前人未到の開幕5連続ワンツー! フェルスタッペン、3位表彰台獲得”. motorsport.com (2019年5月13日). 2019年5月13日閲覧。
- ^ ”悲劇のヒーロー”ルクレール「すごく不運な中、幸運だった」jp.motorsport.com(2019年4月1日)2019年4月1日閲覧
- ^ “メルセデス、オーバーヒートで”大火傷”「エンジンモードが一切使えなかった」F1オーストリアGP《決勝》”. formula1-data.com (2019年7月1日). 2019年7月1日閲覧。
- ^ メルセデスの冷却不足は”基本設計”が原因「パッケージング追求のあまり……」jp.motorsport.com(2019年7月4日)2019年7月4日閲覧
- ^ “イタリアのメディアも認める「ハミルトンのライバルたちにもうF1タイトルの望みはない」”. www.topnews.jp (2019年6月26日). 2019年6月26日閲覧。
- ^ “ハンガリー“惨敗”のフェラーリ、ベルギーとイタリアでは速さを見せる?”. motorsport.com. (2019年8月11日) 2019年9月23日閲覧。
- ^ 第17戦終了時点でドライバーズタイトルを獲得できるのがメルセデスのドライバーしかいなくなったため、事実上ダブルタイトルはこの時点で内定していた。
- ^ “フェラーリ、マシンコンセプトへの自信も揺らぐ? 「苦戦の根本的な理由を探る」”. motorsport.com (2019年5月14日). 2019年5月19日閲覧。
- ^ “メルセデス以外全チーム、マシンを速くする方法を見出せず? フェルスタッペンの考察”. motorsport.com (2019年5月12日). 2019年5月13日閲覧。
- ^ 今年もメルセデスに敗れ去ったフェラーリ…開幕前から勝負は決していた、とビノット代表formula1-data.com(2019年12月6日)2019年12月9日閲覧
- ^ レッドブル、今季の苦戦は“タイヤと新エアロ規定”のダブルパンチが要因かjp.motorsport.com(2019年5月16日)同年5月20日閲覧
- ^ “F1タイヤを2018年仕様に戻す案は廃案に。5チームが反対票を投じる”. motorsport.com (2019年6月29日). 2019年12月2日閲覧。
- ^ レッドブル、今季の苦戦は“タイヤと新エアロ規定”のダブルパンチが要因か jp.motorsport.com (2019年5月16日)2019年12月8日閲覧
- ^ ベッテルに対するフェラーリのチームオーダーに批判の声www.topnews.jp(2019年9月30日)2019年12月2日閲覧
- ^ ビルヌーブが指摘した2019年にフェラーリが犯した失敗とは?www.topnews.jp(2019年12月4日)2019年12月4日閲覧
- ^ レッドブル、既にホンダの信頼性不足を覚悟…戦略的エンジン交換の必要性を認めるformula1-data.com(2019年1月9日)2019年12月9日閲覧
- ^ フロントロー入りできなかったのは21戦中5戦のみ(そのうち、第9戦はペナルティによる降格で逃したため、実質的には4戦のみ)。
- ^ “F1 W10 EQ Power+”. メルセデスAMG F1 (2019年2月13日). 2019年2月19日閲覧。
- ^ “F1 M10 EQ Power+”. メルセデスAMG F1 (2019年2月13日). 2019年2月19日閲覧。