ロギ
ギュルヴィたぶらかし
[編集]以下は『スノッリのエッダ』第一部『ギュルヴィたぶらかし』が伝える話[1]である。
トールがロキたちを従えてウートガルザ・ロキの治める巨人の国ウートガルズに行った際、ウートガルザ・ロキの宮廷において、トールたちと巨人たちとで競争をすることとなった。
最初にロキとロギが骨付き肉の早食い競争を行った。ロキは器用に骨や皮を除いて食べ、無事完食したが、ロギは肉はおろか骨や木皿、さらには桶までも食べつくし、ロキの負けとなった。
実はその正体は火であり、ウートガルザ・ロキが見せた幻影であった。
巨人フォルニョートの息子
[編集]サガの一つ『ノルウェーはいかに住まわれしか』[2]および『ノルウェーの発見』[3]では、ロギは、巨人フォルニョートの息子とされている。この場合のロギも、火の支配者とされている。しかしこのロギと前述のロギが同一人物かははっきりしていない[4]。
同サガでは、ロギの兄弟は、風の象徴であるカーリ (Kári) と、海の支配者であるフレール (Hlér) またはエーギル (Ægir) といわれている。
『スノッリのエッダ』第二部『詩語法』に収録されている火を表すケニングの一つに「風とエーギルの兄弟」という表現がある[5]。
ハーロガランドの王
[編集]『ヴィーキングの息子ソルステインのサガ』[6]では別名にハーロギ (Hálogi) があったとされ、ノルウェー北部にあった王国ハーロガランド(ホロガランド) (Hálogaland) の名祖とされている[注 1]。また妻の名はグロズ (Glöð) であり、2人の間にはエイサ (Eisa) とエイミリャ (Eimyrja) という2人の娘がいたとされる。
備考
[編集]北欧群(土星の衛星)と呼ばれる天体群の1つ、ロゲ (Loge) は、ロギに由来した名前である。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ ただしハーロガランドの英語版記事(2023年5月28日時点)では、由来には諸説あり、出典の記載は無いものの『ヴィーキングの息子ソルステインのサガ』が述べるハーロギを由来とする説は「疑わしい」とされている。
出典
[編集]- ^ 『エッダ 古代北欧歌謡集』264、267頁。
- ^ Dasent 1894.
- ^ Chappell 2011, Chapter 1.
- ^ Lindow (2001), p. 214 では、前述の物語とこの伝承の間に「繋がりが無いようにみえる」と述べられている。
- ^ 『「詩語法」訳注』38頁。
- ^ Anderson & Bjarneson 1877, Chapter 1.
参考文献
[編集]- V.G.ネッケル他編『エッダ 古代北欧歌謡集』谷口幸男訳、新潮社、1973年、ISBN 978-4-10-313701-6。
- 「スノリ『エッダ』「詩語法」訳注」谷口幸男訳、『広島大学文学部紀要』第43巻No.特輯号3、1983年。
- George W. Dasent (trans.) (1894年). “How Norway was Settled - germanicmythology.com”. 2023年5月28日閲覧。 - 『ノルウェーはいかに住まわれしか』の古ノルド語原文・英語訳併記
- Gavin Chappell (trans.) (2011年). “Norway Found - germanicmythology.com”. 2023年5月28日閲覧。 - 『ノルウェーの発見』の古ノルド語原文・英語訳併記
- Rasmus B. Anderson and Jón Bjarneson (trans.) (1877年). “Thorstein Vikingsson's Saga - germanicmythology.com”. 2023年5月28日閲覧。 - 『ヴィーキングの息子ソルステインのサガ』の古ノルド語原文・英語訳併記
- Lindow, John (2001). “Logi (Fire)”. Norse Mythology: A Guide to Gods, Heroes, Rituals, and Beliefs. Oxford University Press. pp. 213-214. ISBN 0-19-515382-0