国際消防救助隊
国際消防救助隊(こくさいしょうぼうきゅうじょたい、International Rescue Team of Japan FireーService:IRT-JF)とは、海外で大規模災害が発生した際に各自治体の国際消防救助隊登録消防本部の救助隊から編成され、国際緊急援助隊(JDR)救助チームの一員として被災地に派遣され救助活動を行う部隊である。
1985年にコロンビアで発生したネバドデルルイス火山噴火において、日本政府は消防救助隊の派遣を検討したものの、当時海外に消防本部の要員を派遣する制度はなく、コロンビア政府の意向もあり実現しなかった。この教訓から、自治省消防庁(現 総務省消防庁)は海外で大規模災害が発生した際に消防本部から救助隊を派遣する制度を整備することとなった。
1986年4月に国際消防救助隊が発足。同年8月にはニオス湖ガス噴出災害、10月にエルサルバドル地震災害に消防救助隊を派遣した。1987年9月に国際緊急援助隊の派遣に関する法律の施行に伴い、国際消防救助隊は国際緊急援助隊救助チーム(消防庁・警察庁・海上保安庁)の一員として位置づけられることになった。
部隊概要
[編集]国際消防救助隊は各消防本部の特別救助隊や特別高度救助隊などから選抜された隊員により編成され、隊員の多くは特別な訓練を受け、電磁波人命探査装置など高度救助資機材にも精通している。東京消防庁の消防救助機動部隊(ハイパーレスキュー)を中心に編成される場合が多く、他の消防本部が当番制であるのに対し、東京消防庁のみは常時派遣可能な体制をとっている[1]。
同部隊は海外で大規模災害発生時に被災国の要請を受けた政府が国際協力機構(JICA)の調整の下に編成される国際緊急援助隊の救助チームの一員として被災国に派遣され捜索救助にあたる。 なお、救助チームとして直接救援活動に従事するほかにも、国際緊急援助隊専門家チームとして被災地の情報収集や防災関係者への救助技術の指導等にあたる場合もある。
同隊のシンボルは、緑色の地球儀を背景に略称である「JF IRT」、下方に”握手する二つの手”の描かれたワッペンである。略称のIRTから「愛ある手」とも呼ばれている[2]。しかし、国際緊急援助隊の派遣に関する法律の施行に伴い、現在は国際消防救助隊も国際緊急援助隊救助チームの一員として消防・警察・海保の混成チームで活動する事や派遣に対して国際協力機構から活動服が支給されるために実際に現地で活動する際はIRTのワッペンではなく国際緊急援助隊の青色を背景に日本国旗と「Japan Disaster Relief Team JDR」と書かれているワッペンを付けている[3]。
なお、国際緊急援助隊救助チームは2010年に国連人道問題調整事務所が主催する国際都市型捜索救助チームの能力評価において、最高レベルの救助能力評価である「ヘビー級チーム」の認定を受けた[4]。
登録本部
[編集]主な活動実績
[編集]- 国際消防救助隊単体での派遣(国際緊急援助隊の派遣に関する法律の施行前)
- 1986年 8月 - カメルーン共和国有毒ガスの噴出
- 1986年10月 - エルサルバドル共和国地震災害(生存者2名救出)
- 国際緊急援助隊救助チームとしての派遣(国際緊急援助隊の派遣に関する法律の施行後)
- 1990年イラン北西部ルードバール地震 6月 -
- 1990年バギオ大地震災害 7月 -
- 1991年 4月 - バングラデシュ人民共和国サイクロン
- 1993年12月 - マレーシアビル倒壊災害
- 1996年10月 - エジプト・アラブ共和国ビル倒壊事故
- 1997年 9月 - インドネシア森林火災
- 1999年コロンビア・キンディオ地震 1月 -
- 1999年トルコ共和国地震(生存者1名救出[6][7]) 8月 -
- 1999年台湾地震災害 9月 -
- 2003年 5月 - アルジェリア民主人民共和国地震災害(生存者1名救出)
- 2004年 2月 - モロッコ王国地震災害
- 2004年12月 - インドネシア共和国スマトラ島沖地震災害
- 2005年10月 - パキスタン地震
- 2008年四川大地震災害 5月 - 中華人民共和国
- 2009年10月 - インドネシア共和国スマトラ島沖地震災害
- 2011年カンタベリー地震(クライストチャーチ) 2月 - ニュージーランド
- 2015年ネパール地震 [8] 4月 -
- 2017年メキシコ中部地震 9月 -
- 2018年花蓮地震(国際緊急援助隊専門家チームとして派遣) 2月 -
- 2023年トルコ・シリア地震 2月 -
参考文献は[9]を参照。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ 国際消防救助隊出動体制編成計画PDF(消防本部名や編成は当時のもの)
- ^ 国際消防救助隊の概要
- ^ 台湾地震災害 国際緊急援助隊及び国際消防救助隊のワッペン(消防防災博物館)-ページ一番下の写真より。左の青色で日本国旗とJDRと書かれているのが国際緊急援助隊ワッペン。右の緑色でIRT JFと握手する二つの手の描かれているのが国際消防救助隊ワッペン
- ^ 国際緊急援助隊・救助チームが「ヘビー」級に認定
- ^ 国際消防救助隊編成計画
- ^ 生存者の救出活動状況
- ^ 消防の動き344号
- ^ “「ネパール地震災害」に対する国際消防救助隊の派遣について(第16報・最終報)”. 消防庁 (2015年5月9日). 2015年8月26日閲覧。
- ^ “過去の国際緊急援助活動実績”. 2023年1月8日閲覧。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 消防庁の国際消防救助隊公式ページ
- 各消防本部等の国際消防救助隊紹介ページ