岡田利規
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岡田 利規(おかだ としき、1973年7月10日- )は、日本の劇作家、演出家、小説家。チェルフィッチュ主宰。神奈川県横浜市出身。熊本県在住。
経歴
[編集]- 横浜市の永田台小学校・永田中学校出身。中学時代は映画監督に憧れ、ジム・ジャームッシュが好きだった。
1990年代
[編集]- 1992年4月、慶應義塾大学商学部入学。同年、夢の遊眠社の解散公演『ゼンダ城の虜―苔むす僕らが嬰児の夜』を観劇し刺激を受ける。岩田暁一ゼミに所属していた。大学を「卒業するくらいの年」に影響を受けた本として平田オリザ『平田オリザの仕事1 現代口語演劇のために』(晩聲社、1995年3月)、ベルトルト・ブレヒト『今日の世界は演劇によって再現できるか―ブレヒト演劇論集』(白水社、1996年6月)を挙げている[1]。
- 地域振興のシンクタンクが、その地域の住民を対象に行なったヒアリングなどをテープ起こしするアルバイトをやっていた経験がある。それが「キチンと喋らない台詞、要領を得ない台詞を書くきっかけのひとつ」になったと語っている[2]。
- 1997年、ソロ・ユニットチェルフィッチュを旗揚げ。同年8月、相鉄本多劇場にて旗揚げ公演。
- 1999年、横浜STスポット主催のショーケース形式の演劇フェスティバル「スパーキングシアター」にチェルフィッチュとして参加。以降、STスポットを拠点に活動。
2000年代
[編集]- 2005年、『三月の5日間』で第49回岸田國士戯曲賞を受賞。選考委員からは、演劇というシステムに対する強烈な疑義と、それを逆手に取った鮮やかな構想が高く評価された。とらえどころのない日本の現在状況を、巧みにあぶり出す手腕にも注目が集まった。同年7月『クーラー』で「TOYOTA CHOREOGRAPHY AWARD 2005ー次代を担う振付家の発掘ー」最終選考会に出場。9月、横浜文化賞文化・芸術奨励賞を受賞。
- 2006年6月、ドイツ、ミュールハイム劇作家フェスティバル "Stuecke'06/International Literature Project in the course of the Football World Cup 2006" 日本劇作家代表として参加。
- 2007年、チェルフィッチュが舞台芸術祭クンステン・フェスティバル・デザールに招聘される。10月、第56回神奈川文化賞・スポーツ賞で文化賞未来賞を受賞。
- 2008年3月3日(水)、コンテンポラリー・パフォーミングアーツ国際ネットワーク会議にてクリストフ・スラフマイルダー(クンステン・フェスティバル・デザールの芸術監督)とともに基調講演を行った。モデレーターは内野儀。
- 2008年4月、『わたしたちに許された特別な時間の終わり』で第2回大江健三郎賞受賞。
2010年代
[編集]- 2010年3月1日 - 2日、東京芸術見本市2010にて平田オリザと対談。
- 2012年より岸田國士戯曲賞の審査員を務める。
- 2014年、東京都現代美術館にて映像インスタレーション作品『4つの瑣末な 駅のあるある』を発表。
- 2015年4月、『現在地』で第28回三島由紀夫賞候補になるも落選。上田岳弘「私の恋人」が受賞。
- 2016年、ドイツの公立劇場ミュンヘン・カンマーシュピーレ(Münchner Kammerspiele)のレパートリー作品の演出を3シーズンにわたって務める。第1弾として6月から7月にかけて(初日は6月24日)『ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶』を6回上演。同年8月、瀬戸内国際芸術祭にて長谷川祐子によるキュレーションのもと、ダンサー・振付家の森山未來との共作パフォーマンスプロジェクト『in a silent way』を滞在制作、発表。
- 2017年2月、ミュンヘン・カンマーシュピーレのレパートリー作品の演出第2弾として『NŌ THEATER』を上演。6月、自治区のトークシリーズ〈In a Grove〉の第2回目として、金沢21世紀美術館プロジェクト工房にてウティット・ヘーマムーンと対談「国民国家と芸術ータイについて考える」を行う。7月、日本のロームシアター京都 サウスホールにて『NŌ THEATER』を上演。
- 2018年4月から5月にかけて、ミュンヘン・カンマーシュピーレのレパートリー作品第3弾として『NO SEX』を発表。また、同年8月、タイ人作家ウティット・ヘーマムーンが2017年6月に発表した小説『プラータナー:憑依のポートレート』(原題 ”Rang Khong Pratthana” , 英題”Silhouette Of Desire”)を原作とした演劇作品のバンコク公演(世界初演)がチュラーロンコーン大学文学部演劇学科のソッサイパントゥムコーモン劇場にて行われるが、岡田はその脚本、演出を担当。12月には「ジャポニスム2018」の企画の一環としてフランスポンピドゥー・センターでの公演が予定されている。
2020年代
[編集]著作
[編集]戯曲
[編集]- 『三月の5日間』(2005年、白水社、ISBN 9784560035917) 「マリファナの害について」「三月の5日間」「労苦の終わり」収録
- 『エンジョイ・アワー・フリータイム』(2010年、白水社、ISBN 9784560080535) 「ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶」「フリータイム」「エンジョイ」収録
- フリータイム(『新潮』2008年6月号)
- 『現在地』(2014年、河出書房新社、ISBN 9784309023434) 「わたしたちは無傷な別人である」「現在地」「地面と床」収録
- 地面と床(『新潮』2014年1月号)
- 『三月の5日間[リクリエイテッド版]』(2017年、白水社、ISBN 9784560094143) 「三月の5日間[リクリエイテッド版]」「あなたが彼女にしてあげられることは何もない」「部屋に流れる時間の旅」「God Bless Bassball」収録
- あなたが彼女にしてあげられることは何もない(『新潮』2017年1月号)
- 部屋に流れる時間の旅 (『新潮』2016年4月号)
- God Bless Bassball(『新潮』2015年12月号)
- 『未練の幽霊と怪物 挫波/敦賀』(2020年7月、白水社、ISBN 9784560097830) 「未練の幽霊と怪物 挫波/敦賀」「NŌ THEATER」収録
- NŌ THEATER(『新潮』2018年7月号)
- 単行本未収録(出版されたもの)
- ゾウガメのソニックライフ(『新潮』2011年4月号)
- ZERO COST HOUSE(『群像』2013年2月号)
- THE VACUUM CLEANER(『ことばと』vol.2、書肆侃侃房)
舞台作品(初演のみ)
[編集]チェルフィッチュ名義の作品については同項目を参照。
表記:作品名[クレジット](年月、会場(都市)、フェスティバル名、カンパニー名、その他情報)
- 団地の心への旅[作・演出](2001年11月、STスポット横浜、STスポット演劇フェスティバル スパーキング21)
- エンジョイ[作・演出](2006年12月、新国立劇場 小劇場)
- 奇妙さ(2007年3月、伊丹アイホール、ワークショップ&パフォーマンス公演)
- ゴーストユース[作・演出](2007年11月、PRUNUS HALL)
- 三人の女[作](2008年12月、本多劇場、竹中直人の匙かげん3、演出:竹中直人)
- おにのこあんご[作](2010年5月、六本木Super Delux、紙芝居作品)
- 家電のように解り合えない[作・演出](2011年9月、あうるすぽっと、あうるすぽっとプロデュース、美術:金氏徹平)
- Unable to see[作・演出](2012年6月、Templehofer Park(ベルリン)、WORLD IS NOT FAIR)
- ZERO COST HOUSE[作](2012年9月、Arts Bank at the University of the Arts(フィラデルフィア)、Philadelphia Live Arts Festival & Philly Fringe、Pig Iron Company、演出:ダン・ローゼンバーグ)
- THE END[台本・共同演出](2012年12月、山口情報芸術センター[YCAM]、渋谷慶一郎+岡田利規、ボカロオペラ)
小説
[編集]単行本
[編集]- 『わたしたちに許された特別な時間の終わり』(2007年、新潮社、のち文庫、ISBN 9784101296715)
- 三月の5日間(『新潮』2005年12月号)
- わたしの場所の複数(『新潮』2006年10月号)
- 『ブロッコリー・レボリューション』(2022年6月 新潮社)
- 楽観的な方のケース(『新潮』2008年6月号)
- ショッピングモールで過ごせなかった休日(『新潮』2013年5月号)
- ブレックファスト(『GRANTA早稲田文学vol.1』2014年3月号)
- 黄金期(『文藝』2019年夏季号)
- ブロッコリー・レボリューション(『新潮』2022年2月号)
単行本未収録作品
[編集]- 耐えられるフラットさ(『新潮』2010年12月号)
- 距離、必需品(『群像』2011年2月号)
- 問題の解決(『群像』2011年12月号)
- 女優の魂(『美術手帖』2012年2月号)
- スティッキーなムード(『新潮』2015年6月号)
評論
[編集]- 『遡行 変形していくための演劇論』河出書房新社 2013
- 『コンセプション』佐々木敦、桜井圭介らとの対談 天然文庫、2014年2月。 - Kindleのみ。
新聞
[編集]- 神奈川新聞 ゆとり欄 「木もれ日」(リレー小説)
演出
[編集]- カスカンド(2007年3月、にしすがも創造舎、東京国際芸術祭2007・ベケット生誕100年記念フェスティバル、作:サミュエル・ベケット)
- タトゥー(2009年5月、新国立劇場、作:デーア・ローアー(Dea Loher))
- 友達(2008年11月、シアタートラム、作:安部公房)
- 歌劇『夕鶴』(2021年10月、東京芸術劇場、作曲:團伊玖磨、台本:木下順二)
→「#舞台作品(初演のみ)」も参照
- 木下歌舞伎『』桜姫東文章
受賞歴
[編集]- 第49回岸田國士戯曲賞(2005年2月、『三月の5日間』で受賞)
- 横浜文化賞文化・芸術奨励賞(2005年9月)
- 第2回大江健三郎賞(2008年4月、小説集『わたしたちに許された特別な時間の終わり』で受賞)
- 第72回読売文学賞(2021年1月、『未練の幽霊と怪物 挫波/敦賀』で受賞)
- 第35回三島由紀夫賞(2022年5月、『ブロッコリー・レボリューション』で受賞)
注
[編集]- ^ “アーティスト・インタビュー:岡田利規 | Performing Arts Network Japan”. www.performingarts.jp. 2018年7月13日閲覧。
- ^ “アーティスト・インタビュー:岡田利規 | Performing Arts Network Japan”. www.performingarts.jp. 2018年7月13日閲覧。