臨時災害放送局
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臨時災害放送局(りんじさいがいほうそうきょく)とは、放送法第8条に規定する「臨時かつ一時の目的(総務省令で定めるものに限る。)のための放送」(臨時目的放送)のうち、放送法施行規則第7条第2項第2号に規定する「暴風、豪雨、洪水、地震、大規模な火事その他による災害が発生した場合に、その被害を軽減するために役立つこと」を目的とする放送を行う基幹放送局である。「臨時災害放送局」の語は、電波法関係審査基準(平成13年1月6日総務省訓令第67号)による。しばしば、臨災局と略される[1]。
概要
[編集]1995年(平成7年)1月に発生した阪神・淡路大震災の際に、兵庫県から「災害情報の専用の放送局を開設したい」という要望があり、2月に放送法施行規則第7条第2項に規定する臨時目的放送の目的がイベント放送局のみであったものに追加される形[† 1]で創設された。地震、火山の噴火、風水害及び雪害によって甚大な被害が発生した場合に開設され、被災した地域に各種情報(地方公共団体からの災害関連情報、避難場所、救援物資、仮設住宅、ライフライン復旧状況など)を提供する。
免許
[編集]超短波放送(FM放送)によるものとされる。中波放送(AM放送)については、電波伝搬が広域にわたり周辺諸国との調整も要することもあって制度化されていない。阪神・淡路大震災時の際には、兵庫県が免許人となったが、以後は「市町村(広域連合を含む。)が免許人となり、被災地域を対象に必要最小の空中線電力で、被災者の日常生活が安定するまでを免許期間とする」とされた[2]。
臨機の措置として、口頭による申請で、即座に無線局免許状が交付される。ただし、コミュニティ放送局(CFM)がある市町村に関しては、基本的にその設備を使って実施されるため[† 2]、コミュニティ放送を休止し、臨時に中継局の開局や空中線電力の増力を申請することになる。
空中線電力は、原則としてコミュニティ放送局は20W以下であるが、臨時災害放送局は100W以下である[† 3]。これは書類申請を免除するものではなく、後日速やかに申請書を提出しなければならない。地上基幹放送局であるので、第二級陸上無線技術士以上の無線従事者も必須である[† 4]。
本来、地上基幹放送局の無線局免許状は、まず予備免許を取得し落成検査に合格して付与されるもので[† 5]、これらが免除されたわけではないので、落成検査は後日実施される。
但し、被災状況によっては落成検査を実施する前に臨時災害放送局を廃止し、結果として落成検査が行われないこともある。電波法関係手数料令第2条および第3条に規定する免許申請や落成検査の手数料については、電波法第103条第2項に該当すると認められれば免除される。
呼出符号はイベント放送局と同様に、JOYZ#*-FMまたはJOYZ#**-FM、#は管轄する総合通信局(沖縄総合通信事務所を含む)を表す1数字、*または**は免許の交付順に1または2英字[† 3]。無線局免許状の有効期間は、電波法施行規則第7条第1号に「当該放送の目的を達成するために必要な期間」とされ、一概にはいえない。電波法第13条第1項の5年間を超えることはできないが、これは再免許を妨げるものでもない。
送信機は、総合通信局や既存の放送事業者や災害対策を支援する団体などが保有する。地方公共団体が保有することも否定されないが、日常的に、つまり災害が発生していない時に使用することはできず、イベント時のイベント放送局や防災訓練時に実験試験局として開設することしかできない。[要出典]
関東地方(特に東京都区部とその周辺)に関してはコミュニティ放送局などの乱立により、FM放送の周波数が逼迫していることから、総務省関東総合通信局はBSデジタル放送への一本化に伴い、2018年9月に廃局し、未使用状態となっていた放送大学のFM放送跡地(77.1MHz・78.8MHz)を臨時災害放送局の専用周波数に転用することを2022年7月に発表した[3][4]。
運用
[編集]運営費その他の費用は、開設した市町村の負担とされる。総合通信局の送信機は無償貸与するものとされる。電波利用料は、地方公共団体等が免許人となるので、電波法第103条の2第14項[† 6]により免除される。
災害による大被害の最中に市町村が人員を割く余裕はなく、上級無線従事者を含め放送事業を知悉した人物を確保していることも稀であり、コミュニティ放送局が無い市町村では既存の県域放送やコミュニティ放送の事業者、その他支援団体などの民間団体に業務委託する形で実施する。
運用時間は、コミュニティ放送局と同様に連続して放送する義務はない。臨時災害放送局は放送法第108条にいう「被害を軽減するために役立つ放送」をするものであるが、放送事項は市町村や関連機関からの伝達事項ばかりでなく、精神的な被害を軽減する音楽やお笑いなどの軽い娯楽なども容認される。
CMについては、従来、免許人が自治体であることからできないと認識されてきた[5][6]。しかし、2011年(平成23年)の東日本大震災の際、登米災害FMを運営していたはっとエフエムから東北総合通信局への問い合わせをきっかけとして、法制度上、臨時災害放送局にCMの放送を禁止する規定はなく、禁止と自粛が混同され整理されていなかったことがわかり、総務省からすぐに「CM放送は制度上禁止されていない」「CM実施については、被災地である現地の状況、予想されるリスナーの反応等を十分勘案し免許主体である市町村において判断していただく」旨が関係局と自治体に通知された[7][6][8][† 7]。ただ、市町村による放送であるので公平性を欠かないことが望まれる[要出典]。なお、コミュニティ放送局が臨時災害放送局を開設する場合、コミュニティ放送局と臨時災害放送局は免許人が異なるため、コミュニティ放送局が契約したCMを臨時災害放送局が放送することはできない[9][† 8]。
落成検査と同様に臨時災害放送局であることで免除されるものではなく、電波法施行規則第41条の4の親局は1年、中継局には5年の規定が適用され、電波法関係手数料令第19条においても手数料の減免措置はない。ただし、最初の定期検査は、電波法施行規則第41条の3の規定により総務大臣又は総合通信局長から時期を指定されて初めて行われる。
事例
[編集]この節の加筆が望まれています。 |
2019年(令和元年)11月までに、のべ54局が開局した。
BSN川口ラジオ中継局とIBC山田災害臨時ラジオは臨時災害放送局ではないが[要出典]、便宜的に表に加えてある。
類例
[編集]1990年(平成2年)11月からの長崎県・雲仙普賢岳の火山活動に伴い、日本放送協会(NHK)長崎放送局が周辺地域への災害報道のため、大火砕流直前の1991年(平成3年)6月2日、島原中継局を利用した臨時のラジオ放送局「NHK島原放送局」(呼出符号:JOBG、演奏所は島原市・有明学園島原経理学校内)を開設、雲仙普賢岳の状況、気象状況、防災生活情報などを、1回5分、1日数回、第1放送で放送した。1996年(平成8年)3月31日、廃止。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 平成7年郵政省令第9号による放送法施行規則改正
- ^ コミュニティ放送局を休止せず並行して運用することも可能である。
- ^ a b 第1号であった「FM796 フェニックス」のみ異なっていた。
- ^ 平成31年政令第19号による電波法施行令改正で、地上基幹放送局のうち受信障害対策中継放送局及び特定市区町村放送局については第二級陸上特殊無線技士以上又は第三級総合無線通信士以上の資格で操作が認められるようになったが、臨時災害放送局を含む臨時目的放送については変更されなかった。
- ^ a b 基幹放送局は登録検査等事業者等による点検ができるので、点検結果により検査を一部省略することができ、検査手数料も減額される。
- ^ 平成4年法律第74号による電波法改正により第103条の2第2項に規定される。平成20年法律第50号による電波法改正により同条第12項に繰下げ。平成26年法律第60号による電波法改正により同条第14項に繰下げ。
- ^ 収入がなければ、臨時災害放送局を長く続けることは困難である。総務省から通知が出た時点で、すでに複数のコミュニティ放送局が、CMが流せないことを理由に、臨時災害放送局を閉局していた。また、新設型の臨時災害放送局では、CMという形で営業活動を行った局はみられなかった。(市村 p. 127、村上 p. 46)
- ^ 中継局の機能停止や空中線電力を減力して臨時災害放送局を休止し、コミュニティ放送局を再開してCMを放送することに制度上の問題はない。しかし、聴取者の情報収集が困難になる上に責任の所在が不明確になるので望ましいことではない。[要出典]
- ^ 免許期間より短い場合あり。
- ^ a b 免許の有効期間は2011年(平成23年)1月25日から3月31日までであるため、再免許をせずに放送を再開した。
- ^ 正式廃止は2012年(平成24年)2月29日。
出典
[編集]- ^ 臨時災害放送局の活用イメージ 臨時災害放送局用機器の貸与 信越総合通信局(国立国会図書館のアーカイブ:2015年11月2日収集)
- ^ 第186回国会総務委員会第23号(平成26年5月22日(木曜日)) 衆議院会議録
- ^ “放送大学の地上波放送が9月30日終了。BS完全移行でHD/SD 2ch同時放送”. AV Watch (2018年3月2日). 2022年9月4日閲覧。
- ^ 関東総合通信局 (2022年7月25日). “「放送大学FM跡地を利用する臨時災害放送局の 効果的な開設・運用に関する調査検討会」を開催”. 総務省. 2022年9月4日閲覧。
- ^ 村上圭子「ポスト東日本大震災の市町村における災害情報伝達システムを展望する〜臨時災害放送局の長期化と避難情報伝達手段の多様化を踏まえて〜」『放送研究と調査』(2012年3月号) (PDF) p. 45.
- ^ a b 市村元「東日本大震災後27局誕生した『臨時災害放送局』の現状と課題」『日本の地域社会とメディア』(関西大学経済・政治研究所、2012年) (PDF) p. 126.
- ^ 村上圭子「ポスト東日本大震災の市町村における災害情報伝達システムを展望する〜臨時災害放送局の長期化と避難情報伝達手段の多様化を踏まえて〜」『放送研究と調査』(2012年3月号) (PDF) pp. 45-46.
- ^ 今後に備えて 臨時災害放送局開設等の手引き〜東日本大震災の経験を生かすために〜(第1版)(特定非営利活動法人東日本地域放送支援機構、2012年) (PDF) p. 29.
- ^ 臨時災害放送局の開局等に関する手続き (参考)コミュニティFM局を臨時災害放送局として運用することについて(総務省北海道総合通信局)
- ^ 有珠山臨時災害対策用FM放送局の開設について(報道資料2000年5月8日)(郵政省北海道電気通信監理局)
- ^ 新潟県中越地震災害対策用FM放送局の開設(報道資料2004年10月27日)(総務省信越総合通信局)
- ^ 新潟県中越地震災害対策用FM放送局の開設(報道資料2004年10月28日)(総務省信越総合通信局)
- ^ 新潟県中越地震災害に伴う(株)新潟放送所属の中波放送の中継局の開設(報道資料2004年10月28日)(総務省信越総合通信局)
- ^ 「平成26年度市勢概要」 第9章第2節3、柏崎市役所、2015年3月
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- ^ 横手市雪害対策用FM放送局の開設(報道資料2011年1月25日)(総務省東北総合通信局)
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- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y 「東北地方太平洋沖地震」に伴う臨時放送局の免許情報(総務省東北総合通信局災害情報)
- ^ 奥州エフエム災害放送について(奥州エフエム放送)
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- ^ おおさきコミュニティFM準備室
- ^ エフエム放送(宮古市)
- ^ 市民励ます臨時ラジオ 宮古・さいがいエフエム(岩手日報 2011年3月22日)
- ^ 山元町災害臨時エフエム放送局「りんご ラジオ」を開局されました!(山元町)
- ^ 災害FM6年 一区切り…気仙沼:地域:読売新聞(YOMIURI ONLINE)
- ^ 気仙沼市から要請あり(H@!FM スタッフブログ 2011年3月19日)
- ^ 臨時災害ラジオ局を開局しました(亘理町)
- ^ FMながおか、放送局設置を支援(新潟日報)
- ^ 奥州エフエムからのお知らせ
- ^ 災害放送のノウハウ伝授 奥州エフエム(岩手日日)
- ^ おおふなとさいがいFMで本市の情報を発信(陸前高田市)
- ^ 臨時災害放送局設置のお知らせ
- ^ FM放送局 そうまさいがいエフエムを開設しました(相馬市)
- ^ 相馬市 生活情報FM放送開始(NHKオンライン 2011年3月30日)
- ^ 4/11〜釜石災害FM開始!!(エフエム岩手 釜石支局)
- ^ かまいしさいがいエフエム(釜石市)
- ^ 臨時災害放送局の設置について(須賀川市)
- ^ 臨時災害放送局(FM)の開設について(南相馬市)
- ^ 女川さいがいエフエム(公式サイト)
- ^ 総務省電波利用ホームページ
- ^ 南三陸災害エフエムが開局しました(南三陸町)
- ^ 宮城・南三陸町に災害FM開局(河北新報)
- ^ 東北地方太平洋沖地震に係る茨城県高萩市臨時災害放送局(FM放送)の開設について(報道資料2011年6月8日)(総務省関東総合通信局)
- ^ 臨時災害放送局「たかはぎ さいがい エフエム」開局(高萩市)
- ^ 「たかはぎ災害FM」開局 市民に安心安全発信(茨城新聞)
- ^ 陸前高田市の臨時災害用FM放送局に予備免許を付与(報道資料2011年11月25日)(総務省東北総合通信局)
- ^ りくぜんたかたさいがいFM開局(Aid TAKATA)
- ^ おだがいさまFM(富岡町生活復興支援センター)
- ^ おだがいさまFM開局!! (PDF) (おだがいさまセンター情報紙「みでやっぺ!」5号)
- ^ 東北地方太平洋沖地震に係る茨城県取手市臨時災害放送局(FM放送)の開設(報道資料2012年8月1日)(総務省関東総合通信局)
- ^ 臨時災害FM放送局「とりでエフエム」を開設します(取手市)
- ^ 臨時災害放送局の開設について(報道資料2011年3月25日)(総務省九州総合通信局)
- ^ 臨時災害FM開設へ 高原町29日から試験放送(宮崎日日新聞)
- ^ 島根県西部の豪雨に係る島根県鹿足郡津和野町の臨時災害放送局(FM放送)の開設(報道資料2013年7月29日)(総務省中国総合通信局)
- ^ 臨時災害放送局(FM放送)の開設(報道資料2014年9月17日)(総務省近畿総合通信局)
- ^ 茨城県常総市に臨時災害放送局(FM放送)の開設(報道資料2015年9月14日)(総務省関東総合通信局)
- ^ 常総災害FM放送局(89.2MHz)9月14日午前9時スタート(常総市)
- ^ 栃木県栃木市に臨時災害放送局(FM放送)の開設(報道資料2015年9月15日)(総務省関東総合通信局)
- ^ 臨時災害放送の開始について(栃木市)
- ^ 臨時災害放送局の開設について -平成28年熊本地震にかかる災害情報提供を目的に熊本市が開設-(報道資料2016年4月18日)(総務省九州総合通信局)
- ^ 「臨時災害放送局」開設(熊本シティエフエム)
- ^ 熊本シティエフエムに臨時災害放送局開設(熊本日日新聞)
- ^ “「臨時災害放送局〜くまもとさいがいエフエム〜」閉局のお知らせ”. 熊本シティエフエム 公式ウェブサイト. 2016年5月4日閲覧。 “4月18日(月)に開設された「臨時災害放送局〜くまもとさいがいエフエム〜」は、4月30日(土)をもって閉局となりました。”
- ^ 臨時災害放送局の開設について -甲佐町が平成28年熊本地震にかかる災害情報提供を目的に開設-(報道資料2016年4月23日)(総務省九州総合通信局)
- ^ 甲佐町臨時災害放送局(FM放送)を開設しました(甲佐町)
- ^ 『臨時災害放送局用FM送信機を熊本県御船町に貸与 -「熊本地震」被災地での臨時災害放送局の開設を支援-』(報道資料)総務省信越総合通信局、2016年4月26日 。2016年5月1日閲覧。
- ^ 臨時災害放送局の開設について -御船町が平成28年熊本地震にかかる災害情報提供を目的に開設-(報道資料2016年4月25日)(総務省九州総合通信局)
- ^ 御船町災害FMの放送について - Facebook(御船町)
- ^ 臨時災害放送局の開設について -益城町が平成28年熊本地震にかかる災害情報提供を目的に開設-(報道資料2016年4月27日)(総務省九州総合通信局)
- ^ 益城町臨時災害 FMがスタートします!(益城町)
- ^ 広島県熊野町の臨時災害放送局が開局(平成30年7月豪雨災害対応) 〈中国総合通信局の臨時災害放送局用機器を貸出〉(報道資料2018年7月13日)(総務省中国総合通信局)
- ^ 「くまのちょうさいがいエフエム」の開局のおしらせ(熊野町)
- ^ a b 広島県坂町の臨時災害放送局が開局(平成30年7月豪雨災害対応) 〈総合通信局の臨時災害放送局用機器を貸出〉(報道資料2018年7月19日)(総務省中国総合通信局)
- ^ a b 臨時災害放送局の開局について(坂町)
- ^ 北海道むかわ町が臨時災害放送局を開設 -平成30年北海道胆振東部地震対応-(報道資料2018年9月18日)(総務省北海道総合通信局)
- ^ Twitter:むかわさいがいFM(@mukawafm) 2018年9月18日 7:19
- ^ 北海道厚真町が臨時災害放送局を開設 -平成30年北海道胆振東部地震対応-(報道資料2018年9月20日)(総務省北海道総合通信局)
- ^ “令和元年台風第19号による被害状況等について(第9報)”. 総務省. 2019年10月14日閲覧。
関連項目
[編集]- コミュニティ放送(呼出符号は「JOZZ」で始まる。空中線電力は原則として20W以下)
- FM補完中継局
- 市町村防災行政無線
- 長野県西部地震#臨時放送局
- 報道特別番組
- 情報パレット - NHK仙台放送局で放送される番組で、東日本大震災後は「DJ通信」のコーナーで被災地の臨時災害放送局と電話で中継を行っている。
- 南相馬チャンネル
- ラジオ (テレビドラマ)
- おかえりモネ