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「あかつき (探査機)」の版間の差分

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{{現在進行}}
{{宇宙機
{{宇宙機
| 名称 = 金星探査機<br />「あかつき (PLANET-C)」
| 名称 = 金星探査機<br />「あかつき (PLANET-C)」
| 画像 = [[File:H-IIA_F17_launching_AKATSUKI.jpg|180px]]
| 画像 = [[File:Akatsuki CG01.png|250px]]
| 画像の注釈 = H-IIAロケット17号機による「あかつき」の打ち上げ
| 画像の注釈 =
| 所属 = [[宇宙科学研究所]] (ISAS)<br />現・[[宇宙航空研究開発機構]] (JAXA)
| 所属 = [[宇宙科学研究所]] (ISAS)<br />現・[[宇宙航空研究開発機構]] (JAXA)
| 主製造業者 = [http://www.ntspace.jp/ NEC東芝スペースシステム]
| 主製造業者 = [[NECスペーステクノロジー|NEC東芝スペースシステム]]
| 公式ページ = [http://www.stp.isas.jaxa.jp/venus/ 金星探査機 あかつき]
| 公式ページ = [https://www.stp.isas.jaxa.jp/venus/ 金星探査機 あかつき]
| 国際標識番号 = 2010-020D
| 国際標識番号 = 2010-020D
| NORAD_NO = 36576
| NORAD_NO = 36576
| 状態 = 運用中
| 状態 = 運用中
| 目的 = [[金星]]気象探査
| 目的 = [[金星]]気象探査
| 観測対象 = 金星
| 観測対象 = 金星
| 計画の期間 =
| 計画の期間 =
| 設計寿命 =
| 設計寿命 = 打上げ後4.5年
| 打上げ場所 = [[種子島宇宙センター]]
| 打上げ場所 = [[種子島宇宙センター]]
| 打上げ機 = [[H-IIAロケット]] 17号機
| 打上げ機 = [[H-IIAロケット]] 17号機
| 打上げ日時 = [[2010年]][[5月21日]]<br />6時58分22秒 ([[日本標準時|JST]])
| 打上げ日時 = [[2010年]][[5月21日]]<br />6時58分22秒 ([[日本標準時|JST]])
| 軌道投入日 = 2010年[[12月7日]] 予定
| 軌道投入日 = 2010年[[12月7日]](失敗)<br />2015年[[12月7日]](成功)
| 最接近日 =
| 最接近日 =
| ランデブー日 =
| ランデブー日 =
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| 消滅日時 =
| 消滅日時 =
| 物理的特長 = 物理的特長
| 物理的特長 = 物理的特長
| 本体寸法 = 1.04 × 1.45 × 1.4 m
| 本体寸法 = 1.04 × 1.45 × 1.4 [[メートル|m]]
| 最大寸法 =
| 最大寸法 =
| 質量 = 499.5 kg
| 質量 = 518 [[キログラム|kg]](打上げ時)
| 発生電力 =
| 発生電力 = 約500 [[ワット|W]](ミッション終了時)
| 主な推進器 = 2液式500Nスラスタ<br />ヒドラジンスラスタ (20N x 4 , 3N x 8)
| 主な推進器 = 2液式500Nスラスタ<br />ヒドラジンスラスタ (23 N x 8 , 3 N x 4)
| 姿勢制御方式 = 3軸姿勢制御方式<br />(4スキュー型バイアスモーメンタム)
| 姿勢制御方式 = 3軸姿勢制御方式<br />(4スキュー型バイアスモーメンタム)
| 軌道要素 = 軌道要素
| 軌道要素 = 軌道要素
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| 静止経度 =
| 静止経度 =
| 高度 =
| 高度 =
| 近点高度 = 300 km 予定
| 近点高度 = 1,000 [[キロメートル|km]] - 10,000 km
| 遠点高度 = 80,000 km 予定
| 遠点高度 = 370,000 km
| 軌道半長径 =
| 軌道半長径 =
| 離心率 =
| 離心率 =
| 軌道傾斜角 = 172予定
| 軌道傾斜角 = 3
| 軌道周期 = 30時間 予定
| 軌道周期 = 10.8日
| 回帰日数 =
| 回帰日数 =
| サブサイクル =
| サブサイクル =
| 回帰精度 =
| 回帰精度 =
| 降交点通過地方時 =
| 降交点通過地方時 =
| 搭載機器 = 観測機器
| 搭載機器 = 搭載機器
| 搭載機器名称1 = IR1
| 搭載機器名称1 = IR1
| 搭載機器説明1 = 近赤外カメラ1
| 搭載機器説明1 = 近赤外カメラ1
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| 搭載機器説明4 = 紫外イメージャー
| 搭載機器説明4 = 紫外イメージャー
| 搭載機器名称5 = LAC
| 搭載機器名称5 = LAC
| 搭載機器説明5 = 雷/大気光カメラ
| 搭載機器説明5 = 雷 / 大気光カメラ
| 搭載機器名称6 =
| 搭載機器名称6 = USO
| 搭載機器説明6 =
| 搭載機器説明6 = 超安定発振器
| 搭載機器名称7 =
| 搭載機器説明7 =
| 搭載機器名称8 =
| 搭載機器説明8 =
| 搭載機器名称9 =
| 搭載機器説明9 =
| 搭載機器名称10 =
| 搭載機器説明10 =
| 搭載機器名称11 =
| 搭載機器説明11 =
| 搭載機器名称12 =
| 搭載機器説明12 =
| 搭載機器名称13 =
| 搭載機器説明13 =
| 搭載機器名称14 =
| 搭載機器説明14 =
| 搭載機器名称15 =
| 搭載機器説明15 =
}}
}}
'''あかつき'''(第24号科学衛星: 計画名「'''PLANET-C'''」は「'''VCO'''(Venus Climate Orbiter、金星気候衛星)」 )は、[[宇宙航空研究開発機構]][[宇宙科学研究所]](ISAS)の[[金星#金星探査機|金星探査機]]。観測波長の異なる複数のカメラを搭載して[[金星の大気|金星大気]]を立体的に観測する。
'''あかつき'''(第24号科学衛星計画名「'''PLANET-C'''」または「'''VCO'''(Venus Climate Orbiter、金星気候衛星)」)は、[[宇宙航空研究開発機構]](以下JAXA)[[宇宙科学研究所]](以下ISAS)の[[金星#大気と温度|金星探査機]]。開発・製造は[[NEC東芝スペースシステム]]が担当した。観測波長の異なる複数のカメラを搭載して[[金星の大気]]を立体的に観測する。すいせい、のぞみに続くPLANETシリーズを冠した惑星探査機

2010年5月21日に[[種子島宇宙センター]]から打ち上げられ、半年後の12月7日に金星に到着予定。


== 概要 ==
== 概要 ==
[[2010年]][[5月21日]]に[[種子島宇宙センター]]より打上げられ、同年[[12月7日]]に金星周回軌道へ入る予定であったが、周回軌道への投入マヌーバの最中にメインエンジン(セラミックスラスタ)が故障。結果、金星に近い軌道で太陽を周回しながら、宇宙をさまようしかなく、この時点では計画は失敗したと見なされていた<ref>{{Cite web|和書|title=「あかつき」の金星周回軌道投入失敗の状況について|url=https://www.jaxa.jp/press/2010/12/20101217_sac_akatsuki_j.html |publisher=[[JAXA]] |date=2010-12-17 |accessdate=2020-08-29}}</ref>。
従来の気象学では説明ができない金星の大気現象([[金星#スーパーローテーション|スーパーローテーション]]と呼ばれる惑星規模の高速風など)のメカニズム解明を主目的としている。言ってみれば、あかつきは金星版気象衛星である。このミッションの成果は、惑星の気象現象を包括的に理解することにつながると期待される。加えて、赤外線により金星の地表面の物性や火山活動を調べ、また地球出発から金星到着までの間に惑星間の塵の分布([[黄道光]])を観測する。

しかしその後、メインエンジンの代わりに推力が5分の1しかない姿勢制御エンジンを使用することとした。このことで、6年後に金星に再接近する際に、金星の周回軌道に移ることが可能となった。当初計画とはまったく異なる新たなプランで、計画完遂を狙った。

[[2015年]]12月7日に金星周回軌道への再投入が行われ<ref>{{Cite news|date=2015-12-07|newspaper=毎日新聞|title=あかつき 金星周回軌道へ噴射成功 5年ぶり再挑戦|url = https://mainichi.jp/articles/20151207/k00/00e/040/116000c |accessdate=2015-12-07}}</ref>、12月9日に成功が確認された<ref name="20151209press">{{Cite press release|和書|date=2015-12-09|publisher=JAXA|title=金星探査機「あかつき」の金星周回軌道投入結果について|url=https://www.jaxa.jp/press/2015/12/20151209_akatsuki_j.html |accessdate=2015-12-09}}</ref><ref name="20151209press2">{{Cite press release|
和書|date=2015-12-09|publisher=JAXA|title = 金星探査機「あかつき」の金星周回軌道投入結果に関する記者説明会|url=https://fanfun.jaxa.jp/jaxatv/detail/6415.html |accessdate = 2015-12-09}}</ref><ref name="20151209news">{{cite news
|date = 2015-12-09|publisher=NHK NewsWeb|title=あかつき 金星軌道投入に成功 JAXA発表
|url = http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151209/k10010335321000.html |archiveurl=https://web.archive.org/web/20151209124659/http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151209/k10010335321000.html |archivedate=2015-12-09|accessdate = 2015-12-09}}</ref>。

[[2016年]][[4月4日]]、再度の軌道修正を行い、4月8日成功を確認した<ref name="yomiuri20160409">{{Cite news|title = 「あかつき」軌道修正|url = https://web.archive.org/web/20160419235207/http://www.yomiuri.co.jp/kyushu/news/20160409-OYS1T50006.html|publisher = [[読売新聞]]|date = 2016年4月9日 | accessdate = 2016年4月10日}}</ref>。この軌道修正に伴い、観測期間が当初予定の800日から2000日へ延びることとなった<ref name="yomiuri20160409"/>。

それ以後、金星を周回しながら、大量の写真を撮影した。2019年4月現在、5台のカメラのうち2台が故障したが残る3台が正常に作動している。これまでに送られた画像は、人類にとって未知のもので、金星の構造について多大な知見を与えた<ref>NHK 逆転人生「金星探査機あかつき 執念のカムバック」 2019年4月15日放送 [https://web.archive.org/web/20190417114124/https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/4470/1795003/index.html サイト]</ref>。2020年4月には、当初からの大きな目的である[[スーパーローテーション]]の謎を解明する論文が[[サイエンス]]誌に掲載されるに至った<ref>{{Cite press release|和書|url=https://www.jaxa.jp/press/2020/04/20200424-1_j.html |title=金星探査機「あかつき」観測成果論文のScience誌掲載について - JAXA|publisher=JAXA|date=2020-04-24|accessdate=2020-04-25}}</ref>。

== 計画概要 ==
[[金星#スーパーローテーション|スーパーローテーション]]と呼ばれる惑星規模の高速風など、従来の気象学では説明不可能な金星の大気現象メカニズム解明を主目的としている。言い換えれば、あかつきは金星版気象衛星である。このミッション成果は、惑星の気象現象を包括的に理解することへ繋がると期待される。加えて、赤外線により金星の地表面の物性や火山活動を調べ、また地球出発から金星到着までの間に惑星間の塵の分布([[黄道光]])を観測する。

当初の計画では金星到着後に高度300 kmから8万 km、公転周期約30時間の楕円軌道に投入される予定で、近金点前後を除く約20時間は金星のスーパーローテーションとほぼ同期しており、約2年間に渡って金星大気の挙動を継続的に観測する予定であった。


== 設計 ==
== 設計 ==
[[ファイル:Akatsuki PressConf02.jpg|サムネイル|報道公開時のあかつき]]
基本システムは「[[はやぶさ (探査機)|はやぶさ]]」のものを踏襲し、衛星本体の重量は500kg程度である。[[モーメンタムホイール]]を使用した3軸制御にて姿勢を安定させる。通信は主に新設計の[[フェーズドアレイレーダー|フェーズドアレイ]]型の高利得アンテナを用いて行われ、[[臼田宇宙空間観測所]]の64m[[パラボラアンテナ]]との間で最大約32kbpsの通信回線が確保される。推力500Nの軌道投入用スラスター (OME) には耐熱性に優れた窒化珪素 (Si<sub>3</sub>N<sub>4</sub>) 系モノリシックセラミックスを使用している。
基本システムは「[[はやぶさ (探査機)|はやぶさ]]」のものを踏襲し、衛星本体の重量は500 kg程度である。[[モーメンタムホイール]](MW)を使用した3軸制御で姿勢を安定させる。MWは、はやぶさの3個より1個多い4個を搭載する。推力500 Nの軌道投入用スラスター(OME, Orbit Maneuvering Engine)のノズル及び燃焼器には耐熱性に優れた[[窒化珪素|窒化珪素(]]{{Chem|Si|3|N|4}})系モノリシックセラミックスを用いる{{R|MHITR454056}}。


高利得アンテナ(HGA, High-Gain Antenna:ラジアルライン給電スロット[[アレイアンテナ]]<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.nec.co.jp/ad/cosmos/akatsuki/02/ |work=太陽系大航海時代の幕明け > 届け、あかつきの星へ|title=第2話 平面アンテナが金星と地球を結ぶ|publisher=NEC|accessdate=2015-12-07|author=松浦晋也|date=2010-10-13}}</ref>、{{Val|32|ul=kbps}})、中利得アンテナ(MGA, Middle-Gain Antenna:[[ホーンアンテナ]]、{{Val|512|ul=bps}})、低利得アンテナ(LGA, Low-Gain Antenna:超広角レンズアンテナ、{{Val|8|u=bps}})を各2基(ただしHGAはそれぞれ送信専用と受信専用、MGAとLGAはどちらも送受信兼用)搭載し、主にHGAを用いて[[臼田宇宙空間観測所]]の{{Val|64|ul=m}}[[パラボラアンテナ]]と交信する。臼田の可視時間外に交信する必要が生じた場合、[[アメリカ航空宇宙局|NASA]]の[[ディープスペースネットワーク]]を利用することもある。
観測機器は、地表面からの[[赤外線]]放射や雲による[[太陽]]散乱光を捉える1μmカメラ (IR1)、雲の下の大気からの赤外線放射を捉えて低高度の雲や微量ガスの分布を探る2μmカメラ (IR2)、雲からの赤外線放射を捉えてその構造を探る中間赤外カメラ (LIR)、雲による太陽散乱光を捉えて二酸化硫黄ガスなどの分布を探る紫外イメージャ (UVI) が搭載される。[[雷]]放電が起こっているか否かを把握するための雷・大気光カメラ (LAC) も搭載される。また、通信機器として超高安定発振器 (USO) を搭載し、探査機から地球に向けて送信される電波が[[金星]]大気をかすめる際に[[電波]]の周波数と強度が影響を受けることを利用して[[大気]]の層構造を調べる電波掩蔽観測も行われる。

また、太陽電池パドルは常に太陽面の方向に向けられ、その影と本体の影を利用して、衛星からの放熱を行う。
観測機器は、地表面からの[[赤外線]]放射や雲による[[太陽]]散乱光を捉える1μmカメラ(IR1)、雲の下の大気からの赤外線放射を捉えて低高度の雲や微量ガスの分布を探る{{Val|2|ul=um}}カメラ(IR2)、雲からの赤外線放射を捉えてその構造を探る中間赤外カメラ(LIR)、雲による太陽散乱光を捉えて二酸化硫黄ガスなどの分布を探る紫外イメージャ(UVI)が搭載される。[[雷]]放電が起こっているか否かを把握するための雷・大気光カメラ(LAC)も搭載される。また、通信機器として超高安定発振器(USO)を搭載し、探査機から地球に向けて送信される電波が[[金星]]大気をかすめる際に[[電波]]の周波数と強度が影響を受けることを利用して[[大気]]層構造を調べる電波[[掩蔽]]観測もする。

太陽電池パドルの取付軸は機体Z軸(OMEノズルがある面と高利得アンテナがある面を結んだ軸)と直交し、パドルが常に太陽の方向を向くように回転可能。取付軸のある面には日光が当たらないため、探査機からの放熱に用いられる。この面の片方に中利得アンテナ、もう片方に観測装置がある。残りの2面に低利得アンテナがある<ref>{{Cite web|和書|accessdate=2010-11-22|publisher=NEC|url=http://www.nec.co.jp/ad/cosmos/akatsuki/01/ |title=太陽系大航海時代の幕明け > 届け、あかつきの星へ 第1話「はやぶさ」を継ぎし「あかつき」へ}}</ref>。惑星間航行中は基本的にパドルの軸を黄道面に垂直な方向に向け、姿勢変更の際は観測装置のセンサが太陽方向を向かないようにする。

== 開発 ==


<!--あかつきの観測機器開発には、JAXA以外の大学・研究所も参画している。 コメント: 具体的に書いてください。-->
== 状況 ==
<!--2002年からの概念設計フェーズ、2004年からの基本設計フェーズを経て、2008年8月現在詳細設計フェーズにある。衛星の各サブシステム(推進系、通信系、姿勢系など)や観測機器の開発、試作モデル (PM) の製作が終了し、フライトモデル (FM) の設計・製作が行われている。今後は2009年度から総合試験が行われる予定。-->
<!--2002年からの概念設計フェーズ、2004年からの基本設計フェーズを経て、2008年8月現在詳細設計フェーズにある。衛星の各サブシステム(推進系、通信系、姿勢系など)や観測機器の開発、試作モデル (PM) の製作が終了し、フライトモデル (FM) の設計・製作が行われている。今後は2009年度から総合試験が行われる予定。-->
計画が提案された時点では、2007年2 - 4月頃に[[M-Vロケット]]によって打ち上げられ、いったん地球周回軌道に乗ったのち6月に太陽周回軌道へ投入され、1年後の2008年6月に地球[[スイングバイ]]を行って金星へ向かい、2009年9月に金星へ到着することになっていた<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.isas.jaxa.jp/home/rigaku/project/PLANET_C/PLANET-C_Proposal.pdf|publisher=宇宙理学委員会|title= 金星探査計画提案書|date=2001-01|author=金星探査計画ワーキンググループ|archiveurl=https://web.archive.org/web/20160307220810/https://www.isas.jaxa.jp/home/rigaku/project/PLANET_C/PLANET-C_Proposal.pdf|archivedate=2016-03-07|accessdate=2022-03-23}}</ref>。しかし2010年の打ち上げとなり、更に[[イプシロンロケット|新型固体ロケット]]開発に伴うM-Vロケットの運用中止に伴い、[[H-IIAロケット#衛星打ち上げ履歴|H-IIAロケット17号機]]による打ち上げに変更された。探査機本体とロケットとの結合部はM-Vロケットの直径に合わせて作られていたため、H-IIAロケット用のアダプタが新たに製作された。開発費用は146億円。
当初は[[M-Vロケット]]によって打ち上げられる予定であったが、新型固体ロケット開発に伴うM-Vロケットの運用中止に伴い、[[H-IIAロケット#今後の予定|H-IIAロケット17号機]]による打ち上げに変更された。


また、H-IIAロケットの打ち上げ能力からすると当機は軽量であり、ペイロード能力の余剰を有効利用するため、<!--また、打ち上げ時の振動が大きくなることが予想されたため、-->5つの小型副衛星([[IKAROS]]、[[UNITEC-1]]、[[WASEDA-SAT2]]、[[KSAT]]、[[Negai☆″]])が相乗りで打ち上げられた。上記のアダプタ内に収納する形でIKAROSを、その外部にUNITEC-1とJ-POD(JAXA Picosatellite deployer)と呼ばれるケースに他の小型副衛星3機を格納した。
2009年10月に「あかつき」という正式名称が発表され<ref>[http://www.jaxa.jp/press/2009/10/20091023_akatsuki_j.html 金星探査機「PLANET-C」の名称の決定について] JAXA、2009年10月23日</ref>、同時にメッセージを金星へ送るというキャンペーン「お届けします! あなたのメッセージ 暁の金星へ」<ref>[http://www.jaxa.jp/press/2009/10/20091023_akatsuki_campaign_j.html 金星探査機「あかつき」(PLANET-C) メッセージキャンペーンの実施について] JAXA、2009年10月23日</ref>が開始された。応募されたメッセージなどは探査機のバランスウェイト(アルミシート)に縮小印刷されるとあって<ref>{{Cite journal|和書

|year=2010
2009年10月に「あかつき」という正式名称が発表された<ref>{{Cite press release|和書|accessdate=2010-11-22|publisher=JAXA|url=https://www.jaxa.jp/press/2009/10/20091023_akatsuki_j.html |title=金星探査機「PLANET-C」の名称の決定について|date=2009-10-23}}</ref>。[[ファイル:H-IIA_F17_launching_AKATSUKI.jpg|H-IIAロケット17号機による「あかつき」の打上げ|thumb]]
|month=4
[[ファイル:Animation of Akatsuki trajectory.gif|サムネイル|打ち上げ後の軌道{{legend2|purple|あかつき}}{{·}}{{legend2|lime|金星}}{{legend2|blue|地球}}{{·}}{{legend2|yellow|太陽}}]]
|title=「あかつき」メッセージキャンペーンの舞台裏

|journal=JAXA's
== 運用 ==
|volume=31
=== 打上げから初期運用 ===
|pages=9-11ページ
あかつきと[[IKAROS]]含む5機の小型副衛星<!--JAXAサイトの表現より-->を搭載したH-IIAロケット17号機は、2010年5月18日から6月3日までの間に打ち上げられることとされ、1回目のち上げ予定時刻は5月18日6時44分14秒([[日本標準時|JST]])であった、[[射場]]付近に規定以上の氷結層を含む雲が観測され、5分前に打上げ中止となった<ref>{{Cite press release|和書|url=https://www.jaxa.jp/press/2010/05/20100518_h2af17_j.html |title= H-IIAロケット17号機による金星探査機「あかつき」(PLANET-C)の打上げ延期について|publisher=JAXA|accessdate=2010-05-18}}</ref>。3日後の21日6時58分22秒へ延期された打上げは予定通りの時刻に行われた。
|publisher=宇宙航空研究開発機構

|url=http://www.jaxa.jp/pr/jaxas/pdf/jaxas031.pdf
H-IIA17号機は地球周回軌道に乗った時点で第2段エンジンを一時停止し、小型副衛星のうち3機(Negai☆″、WASEDA-SAT2、KSAT)を分離、その後第2段エンジンに再点火して太陽周回軌道に移り、打ち上げから約27分29秒後にあかつき<ref>{{Cite press release|和書|url=https://www.jaxa.jp/press/2010/05/20100521_h2a-f17_j.html |title=H-IIAロケット17号機による金星探査機「あかつき」(PLANET-C)の打上げ結果について|publisher=JAXA|accessdate=2010-05-21}}</ref>、次いで残り2機の小型副衛星(IKAROS、UNITEC-1)を分離した。打上げロケットの能力に余裕があったため、月や地球を利用しての[[スイングバイ]]は行わずに、第2段ごと[[ホーマン遷移軌道]]に近い軌道に入り、直接金星へ向かった。
|format=PDF

|accessdate=2009-05-27
あかつきは6月28日、遠日点(約1.07[[天文単位]])近くでOME噴射を13秒間行い、セラミックスラスターの世界初の軌道上実証に成功した<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.jaxa.jp/press/2010/07/20100706_akatsuki_j.html |title=金星探査機「あかつき」の軌道制御の実施結果について|publisher=JAXA|accessdate=2010-07-18}}</ref>。軌道制御のためのOME噴射は2回予定されていたが、打上げ時の軌道制御が予想以上に高精度であためもう1回はキャンセルされた。
}}</ref>、日本国内外から約26万人の応募があり90枚のプレートが作成された<ref name="mycom">{{Cite news

|url=http://journal.mycom.co.jp/articles/2010/03/12/planet-c_ikaros/index.html
10月8日、LAC以外の4台のカメラで[[いて座]]の一部を撮影した。ほぼ事前に予測された通りの画像を取得し、各カメラが健全な状態であることを確認した。その後、[[おうし座]]や地球と[[月]]などの撮影も行った。
|title=打ち上げを目前に控えた「あかつき」と「IKAROS」の機体が公開

|work=[[マイコミジャーナル]]
=== 周回軌道投入マヌーバ ===
|publisher=[[毎日コミュニケーションズ]]
12月6日午前7時50分に金星周回軌道投入マヌーバ(VOI-1)のための姿勢変更を実施し、OMEを進行方向正面に向けた<ref name="akatuki1207">{{Cite web|和書|url=https://www.isas.jaxa.jp/j/topics/topics/2010/1119.shtml |title=「あかつき」の金星周回軌道投入日、12月7日と決定|accessdate=2010-12-12|publisher=JAXA}}</ref>。その後の予定は以下の通りとなっていた。
|date=2010年3月12日

|accessdate=2010年5月27日
{| class="wikitable"
}}</ref>。中でも[[VOCALOID]]の[[初音ミク]]イラストを送ろうというファン有志による運動では、1万4千名近い署名を集め3枚のプレートが割り当てを受け話題となった<ref name="mycom"/><ref name="ITmedia_20100223">{{Cite news
|+「あかつき」の軌道投入計画(引用資料:<ref name="akatuki1207"/>)
|url=http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1002/23/news024.html
! 予定していたイベント !! 時間 (JST) !! 金星最接近時刻<br />(12月7日09:00JST)<br />からの相対時間
|author=森岡澄夫
|-
|title=金星へ飛び立つ「あかつき」と初音ミクパネルを見てきた
| 軌道制御エンジン(OME)噴射開始 ||12月7日 08時49分00秒 ||11分前
|work=ITmedia news
|-
|publisher=[[ITmedia|アイティメディア]]
| [[掩蔽|地食]]開始、地上局との通信断 ||12月7日 08時50分43秒 ||約9分前
|date=2010年2月23日
|-
|accessdate=2010年5月30日
| OME噴射終了||12月7日 09時01分00秒||1分後
}}</ref><ref name="ITmedia_20100408">{{Cite news
|-
|url=http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1004/08/news044.html
| 地食終了、通信再開 ||12月7日 09時12分03秒 ||約12分後
|author=森岡澄夫
|-
|title=初音ミク「あかつき」に搭乗! 種子島で実機を見てきた
| 日陰開始 ||12月7日 09時36分37秒 ||約37分後
|work=ITmedia news
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|publisher=[[ITmedia|アイティメディア]]
| 日陰終了 ||12月7日 10時40分44秒 ||約1時間41分後
|date=2010年4月8日
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|accessdate=2010年5月30日
| Z軸地球指向への姿勢変更 ||12月7日 10時59分00秒 ||約2時間後
}}</ref><ref name="ITmedia_20100521">{{Cite news
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|url=http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1005/21/news046.html
| 中利得アンテナ(MGA)から高利得アンテナ(HGA)への切替 ||12月7日 12時09分00秒 ||約3時間後
|author=森岡澄夫
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|title=初音ミクついに宇宙へ! 「あかつき」打ち上げ成功
| 金星周回軌道決定 今後の軌道修正計画作成||12月7日 21時頃 ||約12時間後
|work=ITmedia news
|}
|publisher=[[ITmedia|アイティメディア]]
OMEを予定通り12分間噴射した場合、あかつきは約4日で金星を周回する長楕円軌道に投入される。4日後の金星再接近時に軌道修正を行って公転周期約2日の軌道に、さらに2日後の軌道修正で公転周期約30時間の観測軌道に入る予定であった。また、OMEを少なくとも9分20秒噴射できれば、約50日で金星を周回する超長楕円軌道に入れる可能性があった。
|date=2010年5月21日

|accessdate=2010年5月30日
12月7日午前8時52分36秒、あかつきが同日午前8時49分に逆噴射によって減速を開始したことが探査機からのドップラーデータより確認された<ref>{{Cite web|和書|title=金星探査機「あかつき」の軌道制御エンジン(OME)噴射開始及び金星による掩蔽に伴う通信中断について|url=https://www.jaxa.jp/countdown/f17/img/topics_20101207-1_j.pdf |format=PDF|publisher=JAXA|accessdate=2010-12-07}}</ref>。あかつきまでの通信ラグは約3分半である。同日午前8時50分にあかつきは地球から見て金星の向こう側に隠れ、予定通り地球との通信が途絶えた。同日9時12分に通信再開予定だったが、探査機からの電波を受信したのは10時28分で、予定されていたMGAではなくLGAによるものであった<ref>{{Cite web|和書|title=金星探査機「あかつき」の状況について|url=https://www.jaxa.jp/countdown/f17/img/topics_20101207-2_j.pdf |format=PDF|publisher=JAXA|date=2010-12-07|accessdate=2015-12-07}}</ref>。同日午後、太陽電池パドルと片方のLGAを太陽に、もう片方のLGAをその反対方向に向けたまま低速回転する「セーフホールドモード」となっていることが判明した。これは機体に重大なトラブルが発生した場合、電源確保とそのための姿勢の維持を最優先するモードである。翌12月8日までに3軸制御モードへの復帰と[[テレメトリ]]取得を行った。テレメトリによると、あかつきはOME噴射開始より約2分30秒後、横方向に異常な力が加わって姿勢が大きく乱れ、直後に噴射を中止してセーフホールドモードへ移行していた。減速が不十分だったことにより、金星周回軌道への投入はできなかった<ref>{{Cite press release
|和書|date=2010-12-08|url=https://www.jaxa.jp/press/2010/12/20101208_akatsuki_j.html |title=金星探査機「あかつき」の金星周回観測軌道投入(VOI-1)の結果について|work=プレスリリース|publisher=宇宙航空研究開発機構|language=日本語|accessdate=2010-12-08}}</ref>。

12月27日に、トラブル原因は加圧用のヘリウムタンクから燃料タンクへの配管に設置された逆止弁(逆流防止用弁)が閉塞したためと発表された<ref>{{Cite press release|和書|date=2010-12-27|url=https://www.jaxa.jp/press/2010/12/20101227_sac_akatsuki_2.pdf |format=PDF|title=「あかつき」の金星周回軌道投入失敗に係る原因究明と対策について(その2)|publisher=宇宙航空研究開発機構|language=日本語|accessdate=2011-01-02}}</ref><ref>{{Cite news|url=http://www.asahi.com/science/update/1227/TKY201012270077.html |title=あかつき投入失敗、燃料逆流防止弁の詰まりが根本原因|newspaper=[[asahi.com]]|date=2010-12-27|accessdate=2015-12-07|deadlinkdate=2015-12-07|archiveurl=https://web.archive.org/web/20101230053853/http://www.asahi.com/science/update/1227/TKY201012270077.html |archivedate=2010-12-30}} - この説明の中の「燃料を供給するパイプに取り付けられていた」は不適切。</ref><ref>{{cite news|url=https://www.astroarts.co.jp/news/2010/12/27akatsuki/index-j.shtml |title=「あかつき」軌道投入失敗の原因は燃料逆流防止弁の動作不良|date=2010-12-27|accessdate=2010-01-02|publisher=アストロアーツ}}</ref>。通常の燃焼では酸化剤に対して燃料を多めに混合することで意図的に燃焼温度を下げ、セラミックスラスタ耐熱温度を超えないようにしている<ref group="注">最も効率的な燃料と酸化剤の比を1:1(完全燃焼)とすると、あかつきでは1:0.8としている。</ref>。しかし、逆止弁が閉塞したことから燃料タンクの圧力が低下してスラスタへの燃料供給が滞り、酸化剤と燃料の混合比がより効率的な燃焼を促すものとなった。これにより異常燃焼が生じて機体に想定外の回転モーメントが掛かると共に想定外の高温でスラスタの一部が破損した{{Refnest|group="注"|従来の金属製スラスタに対してセラミックスラスタは数百度高い {{Val|1500|fmt=commas|u=degC}} まで耐えられるが、完全燃焼時の温度は {{Val|2000|fmt = commas|u = degC}} に達する{{R|MHITR454056}}。}}可能性がある。

2011年6月、JAXAは地上試験の結果、逆止弁閉塞の原因は燃料([[ヒドラジン]])と酸化剤([[四酸化二窒素]])が反応して生じた[[硝酸アンモニウム]]結晶である可能性が高いと発表した。酸化剤側逆止弁のシールに用いられていた樹脂材料が四酸化二窒素を透過する性質を持っていたために、酸化剤が徐々に燃料側逆止弁に向って拡散、燃料と反応して生じた結晶が弁を詰まらせたと推定された。また、異常燃焼によるセラミックスラスタの破損も再現され、再度スラスタを点火すれば損傷がさらに拡大するであろうことも確認された<ref>{{Cite press release|和書|date=2011-06-30|url=https://www.jaxa.jp/press/2011/06/20110630_sac_akatsuki.pdf |format=PDF|title=「あかつき」の金星周回軌道投入失敗に係る原因究明と対策について(その3)|publisher=宇宙航空研究開発機構|language=日本語|accessdate=2012-08-04}}</ref>。

=== 軌道修正制御 ===
[[File:Akatsuki spacecraft's orbit.jpg| 2017年6月5日時点の探査機あかつきの軌道(黄色)|thumb]]
あかつきは結果的に金星で[[スイングバイ#パワードスイングバイ|パワードスイングバイ]]を行う形となり、公転周期224.7日の金星よりやや内側を203日で公転する、近日点約9000万 km、遠日点約1億1000万 kmの軌道へ移った<ref>{{Cite press release
|和書|title=「あかつき」の金星周回軌道投入失敗の状況について|publisher=宇宙航空研究開発機構|date=2010-12-17|format=PDF|language=日本語|url=https://www.jaxa.jp/press/2010/12/20101217_sac_akatsuki_j.html |accessdate=2010-12-20
}}</ref>。太陽の周りをあかつきが約11周する間に金星は約10周して「周回遅れ」となるため、[[2016年]][[12月]]と[[2017年]][[1月]]に両者は再度接近する<ref>{{Cite news|http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819595E2EAE2E0E18DE2EAE3E0E0E2E3E29C9CEAE2E2E2 |title=「あかつき」逆噴射中に前転、姿勢崩す 6年後の再挑戦、電池寿命がカギ|newspaper=[[日本経済新聞]]|date=2010-12-08|accessdate=2015-12-07}}</ref><ref>{{Cite news|url=https://news.mynavi.jp/techplus/article/20101208-planet-c_retry/ |title=金星探査機「あかつき」の周回軌道への投入は失敗、6年後の再投入を目指す|newspaper=[[マイコミジャーナル]]|date=2010-12-08|accessdate=2015-12-07}}</ref>。2010年12月8日の宇宙開発委員会で、JAXAはこの時に金星周回軌道への再投入を行う可能性を追求すると報告した<ref>{{Cite press release
|和書|title=金星探査機「あかつき」の金星周回軌道投入結果について|publisher=宇宙航空研究開発機構|date=2010-12-08|format=PDF|language=日本語|url=https://www.jaxa.jp/press/2010/12/20101208_sac_akatsuki_j.html |accessdate=2010-12-08|quote=6年余り後の金星再会合時での軌道投入の可能性を追求する}}</ref>。

12月9日、あかつきは3台のカメラ(LIR・UVI・IR1)を起動、約60万 kmの距離より金星を撮影した<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.isas.jaxa.jp/j/topics/topics/2010/1210.shtml |title=「あかつき」の機能確認作業において金星を撮影!|date=2010-12-10|accessdate=2015-12-07|publisher=JAXA}}</ref>。

2011年1月、JAXAがあかつきについて「軌道を微修正して、金星と再会合する前に[[金星横断小惑星|金星付近の小惑星]]を観測する<ref>{{Cite news|url=http://www.asahi.com/science/update/0103/TKY201101030294.html |author=東山正宜|title=あかつき、寄り道を検討 金星再挑戦までに小惑星観測|publisher=[[朝日新聞]]|date=2011-01-04|accessdate=2011-01-07}}</ref>」あるいは「減速し(公転周期がより長くなるように軌道を修正し)、金星が後ろから追いついてくるのを待つことで、再会合までの期間を1年短縮する<ref>{{Cite news|url=http://mainichi.jp/select/science/news/20110105k0000m040105000c.html |author=山田大輔|title=あかつき:軌道再投入1年前倒し 「待ち伏せ作戦」を検討|publisher=[[毎日新聞]]|date=2011-01-05|accessdate=2011-01-07}}</ref>」などを検討しているとの報道がなされた。ただしその時点では、これらについてJAXAからの公式発表は無かった。2011年初頭の軌道のままであると2016 - 翌2017年にかけて金星に再接近するが、その距離はVOI-1の時より遥かに大きいため、いずれにせよ軌道修正は必要である。

2011年3月、科学データ取得と観測機器健全性確認を兼ねて4台のカメラ(LIR・UVI・IR1・IR2)を用いて1000万 km以上の距離より金星を複数回撮影しカメラの健全性を確認した。また、4月17日の第1回近日点通過では、衛星表面および表面に取付けた機器などの温度が上昇し、許容温度上限に迫る可能性<ref group="注">金星周回軌道上(当初予定)では、{{Val|2649|u=W|up=m2|fmt=commas}}(設計時に想定した最大熱入力は {{Val|2800|u=W|up=m2|fmt=commas}})。金星投入に失敗し、太陽周回軌道へ入ったが、その軌道上で想定される最大熱入力は {{Val|3,655|u=W|up=m2|fmt=commas}} で、金星周回軌道上の熱入力に対し、約 {{Val|1000|u=W|up=m2|fmt=commas}} 大きい。</ref>や断熱材の劣化等が想定された。このため近日点付近では、熱入力による機器への影響を最小にするため姿勢変更等の運用を行った<ref>{{Cite press release|和書|title=「あかつき」の現状について|publisher=宇宙航空研究開発機構|date=2011-04-13|format=PDF|language=日本語|url=https://www.jaxa.jp/press/2011/04/20110413_sac_akatsuki_j.html |accessdate=2011-04-27}}</ref>。

2011年6月30日の宇宙開発委員会でJAXAは、逆止弁を閉塞させる原因や、第2回(2011年11月)または3回(2012年6月)の近日点通過周辺で、OMEまたは姿勢制御スラスタを使い軌道調整を実施し遠日点高度を下げ周期を短くし、2015年11月に金星に再会合させる計画を報告した<ref>{{Cite press release
|和書|title=「あかつき」の金星周回軌道投入失敗に係る原因究明と対策について(その3)|publisher=宇宙航空研究開発機構|date=2011-06-30|format=PDF|language=日本語|url=https://www.jaxa.jp/press/2011/06/20110630_sac_akatsuk_j.html |accessdate=2011-09-02}}</ref>。

2011年9月7日午前11時50分(日本時間)に、再び軌道投入用スラスター(OME, Orbit Maneuvering Engine)が使用できるかどうか、またOME使用時の姿勢の乱れ量等を調べることを目的とした第1回OMEテスト噴射(噴射時間2秒)を実施した。9月9日JAXAは第1回OMEテストの結果、OMEの推力が想定の約1 / 9であったことを発表した。この結果を受け、9月14日の第2回OMEテスト噴射(同5秒)はOMEの噴射状況の再確認することを目的として実施した。9月15日JAXAは第2回OMEテストの結果、OMEの推力が第1回OMEテストの結果と同程度であったことを発表した。これにより当初計画された金星周回軌道への投入が困難であることが確認された。ただしOMEの代わりに姿勢制御用エンジン(RCS, Reaction Control System)を使う場合でも、軌道投入時期は同じ2015年11月とする計画が立てられた<ref>{{Cite news|url=https://www.j-cast.com/2011/09/16107578.html |title=金星探査機「あかつき」はあきらめない 次善の観測可能軌道だってある|newspaper=J-CASTニュース|date=2011-09-16|accessdate=2011-09-17}}</ref>。

2011年9月30日にJAXAは、OME燃焼器の今後の使用は断念し、今後は姿勢制御用エンジン(RCS)による軌道制御を行い、RCS運用のため、酸化剤を全投棄すると報告した<ref>{{Cite press release|和書|date=2011-09-30|url=https://www.jaxa.jp/press/2011/09/20110930_sac_akatsuki.pdf |format=PDF|title=「あかつき」の金星周回軌道投入失敗に係る原因究明と対策について(その4)|publisher=宇宙航空研究開発機構|language=日本語|accessdate=2015-12-07}}</ref>。

2011年10月26日にJAXAは、宇宙開発委員会に対し「あかつき」の現状と金星再会合に向けた軌道制御運用について報告を行った。これによればOME用酸化剤投棄を同年10月6日に6分、12・13日にそれぞれ9分行い計画通り成功したことが明らかとなった。また、姿勢制御エンジンRCSを用いた運用計画も報告され、2011年11月1日にΔ90 [[メートル毎秒|m/s]]、10日にΔ90 m/s、21日に過去2回の補正を含めΔ70 m/sの軌道制御を実施することが明らかとなった。2011年11月1日に1回目の軌道制御実施結果の会見が行われ、これによれば姿勢制御エンジンRCS噴射時間は9分48秒、テレメトリデータ解析後に次回計画詳細を決定するとの報告が成された。2011年11月10日に2回目の軌道制御に関する発表がJAXAより行われ、13時37分より544秒間(9分4秒)実施したとの報告が成された。同時に1回目の軌道制御の実施時間は587.5秒(9分47.5秒)であったことを明らかにした。2011年11月21日に3回目の軌道制御に関する発表がJAXAより行われ、13時57分から342秒間(5分42秒)実施したとの報告がなされた。

2012年1月31日に宇宙開発委員会調査部会は、「あかつき」の金星周回軌道への投入失敗に係る原因究明及び今後の対策についての調査審議の報告を宇宙開発委員会に行った
<ref>{{Cite press release|和書|date=2012-02-01|url=https://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2012/03/05/1317560_01.pdf |format=PDF|title=第24号科学衛星(PLANET-C)「あかつき」の金星周回軌道への投入失敗に係る原因究明及び今後の対策について|publisher=宇宙開発委員会|language=日本語|accessdate=2015-12-08}}</ref>。
同日、JAXAはこれまでの調整をまとめた上で今後の運用方針について宇宙開発委員会に報告を行った。上の調整の結果、2015年に金星に再会合できる軌道を飛行中であり、金星周回軌道再投入を含めて、今後全く補加圧出できない場合でもRCS運用が可能な状態となっている。探査機寿命を勘案しつつ、2015年以降の金星周回軌道再投入を検討しており、それに向けて各種調整や試験継続が引続き行われた<ref>{{Cite press release
|和書|title=「あかつき」の現状と今後の運用について|publisher=宇宙航空研究開発機構|date=2012-01-31|format=PDF|language=日本語
|url=https://www.jaxa.jp/press/2012/01/20120131_sac_akatsuki_2_j.html |accessdate=2013-08-16}}</ref>。

[[2015年]][[8月5日]]、JAXAは7月17・24・31日の3回、計7分半姿勢制御用の姿勢制御用エンジンを噴射し、再投入を[[11月]]から[[12月]]へ変更する軌道修正を行い<ref name="sankei20150805">{{Cite news|title =金星に向け軌道修正成功 探査機あかつき|url =https://web.archive.org/web/20150807171045/http://www.sankei.com/life/news/150805/lif1508050021-n1.html |publisher=[[産経新聞]]|date=2015-08-05| accessdate = 2015-08-05}}</ref><ref name="yomiuri20150805">{{cite news|title =「あかつき」軌道修正成功、太陽最接近が試練にみ|url =https://web.archive.org/web/20150807232959/http://www.yomiuri.co.jp/science/20150805-OYT1T50069.html |publisher=[[読売新聞]]|date=2015-08-05| accessdate = 2015-08-05}}</ref>、8月2日までの観測により目的の軌道修正が成功したと発表した<ref name="jaxa20150805">{{Cite web|和書|url=https://www.isas.jaxa.jp/j/topics/topics/2015/0805.shtml |title=金星探査機「あかつき」の金星周回軌道再投入に向けての軌道修正制御の実施結果について|publisher=JAXA|date=2015-08-05|accessdate=2015-08-06}}</ref>。

2015年[[8月31日]]、JAXAは「あかつき」が、太陽に最も近づく近日点を通過したことを明らかとした<ref name="sankei20150831">{{Cite news|title=金星探査機あかつき、太陽に最接近|url=https://web.archive.org/web/20150901021518/http://www.sankei.com/life/news/150831/lif1508310027-n1.html |publisher=[[産経新聞]]|date=2015-08-31|accessdate=2015-09-05}}</ref>。JAXAは1ヵ月程度かけて機体が無事か確認を行った<ref name="sankei20150831"/>。

=== 金星周回軌道再投入 ===
[[ファイル:Animation of Akatsuki trajectory around Venus.gif|サムネイル|金星周回投入後の軌道{{legend2|magenta|あかつき}}{{·}}{{legend2|Lime|金星}}]]
JAXAは2015年12月7日8時51分から「あかつき」の金星周回軌道投入のため、姿勢制御用エンジン(RCS)噴射を計画通り約20分実施、所要の噴射時間が得られたことが確認され<ref>{{Cite web|和書|date=2015-12-07|url=https://www.jaxa.jp/press/2015/12/20151207_akatsuki_j.html |format=HTML|title=金星探査機「あかつき」の金星周回軌道投入における姿勢制御用エンジン噴射結果について|publisher=宇宙航空研究開発機構|language=日本語|accessdate=2015-12-07}}</ref>、12月9日に金星周回軌道に投入されたことが確認された<ref name="20151209press"/><ref name="20151209press2"/><ref name="20151209news"/>。

[[2016年]][[4月4日]]、再度の軌道修正を行い、4月8日成功を確認した<ref name="yomiuri20160409"/>。この軌道修正により観測期間が当初予定の800日から2000日に延びる事となった<ref name="yomiuri20160409"/>。

2016年12月9日、搭載された5つのカメラのうち1μmカメラ(IR1)と2μmカメラ(IR2)の2つにて電流値が不安定になる不具合が発生し、翌日にはスイッチが入らなくなった。原因は機器劣化の可能性が高いと考えられている<ref name="IR1・IR2休止" />。2017年3月3日、JAXAはこれらのカメラによる科学観測を休止し、復旧に向けて地上検討と定期的に両カメラのスイッチを入れるコマンドの送信を行うことを発表した<ref name="IR1・IR2休止" />。なおIR1・IR2以外の3つのカメラ(中間赤外カメラ、紫外イメージャ、雷・大気光カメラ)は正常に観測を継続している<ref name="IR1・IR2休止">{{Cite web|和書|date=2017-03-03|url=https://www.isas.jaxa.jp/topics/000901.html|format=html|title=「あかつき」搭載の2つのカメラ、科学観測を休止|publisher=宇宙航空研究開発機構|language=日本語|accessdate=2017-08-17}}</ref>。
2018年4月に、定常運用を終了し、延長運用に入った<ref>{{Cite web|url=https://www.isas.jaxa.jp/outreach/isas_news/files/ISASnews446.pdf |title=ISASニュース 2018 5|accessdate=2024-01-24}}</ref>。2021年時点で、観測を続けている<ref>{{Cite web|url=https://akatsuki.isas.jaxa.jp/topics/news/001263.html |title=金星探査は続く|accessdate=2024-01-24}}</ref>。

=== 通信途絶 ===
2024年5月29日、延長運用を行っていたが2024年4月末の運用において、姿勢維持の精度の高くない制御モードが長く続いたことにより、通信の確立ができなくなった。<ref>{{Cite web |title=金星探査機「あかつき」との通信状況について |url=https://www.isas.jaxa.jp/topics/003749.html |website=宇宙科学研究所 |access-date=2024-05-29 |language=ja}}</ref>

== 広報 ==
2009年10月の正式名称発表と同時に、公募した名前やメッセージを金星へ送るというキャンペーン「お届けします! あなたのメッセージ 暁の金星へ」<ref>{{Cite press release|和書|url = https://www.jaxa.jp/press/2009/10/20091023_akatsuki_campaign_j.html |title=金星探査機「あかつき」(PLANET-C) メッセージキャンペーンの実施について|publisher = JAXA|date = 2009-10-23|accessdate = 2015-09-09}}</ref>が開始された。携帯やパソコンのメールからサイトにメッセージを送信すると、『金星探査機「あかつき」記念乗車証』と書かれた画像が、添付ファイルで返送されてくる(画像には金星に到着するあかつきのイラストの下部に自分の応募したメッセージが入っている)。この種のキャンペーンは日本の宇宙探査機では[[のぞみ (探査機)|のぞみ]]より行われているが、あかつきでは著名人や団体からのメッセージについては直筆の文章やイラストを搭載できるようにするなど、量より質を重視した<ref name="JAXA's031">{{Cite journal|和書|year=2010|month=4|title=「あかつき」メッセージキャンペーンの舞台裏|journal=JAXA's|volume=31|pages=9-11ページ|publisher=宇宙航空研究開発機構|url=https://fanfun.jaxa.jp/c/media/file/media_jaxas_jaxas031.pdf#page=5 |format=PDF|accessdate=2010-05-27}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url = https://www.jaxa.jp/countdown/f17/special/campaign_j.html |title=「あかつき」メッセージキャンペーンに寄せられたメッセージ|accessdate=2015-09-09|publisher=JAXA}}</ref>。2010年1月の締め切りまでに日本国内外から26万214人の応募があり、そのうち14万8204人は学校やプラネタリウムなど団体単位での応募であった<ref name="ITmedia_20100223">{{Cite news|url=https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1002/23/news024.html |author=森岡澄夫|title=金星へ飛び立つ「あかつき」と初音ミクパネルを見てきた|work=ITmedia news|publisher=[[ITmedia|アイティメディア]]|date=2010-02-23|accessdate=2010-05-30}}</ref>。中でも[[VOCALOID]]「[[初音ミク]]」のイラストを宇宙に送ろうというファン有志による運動では1万3849人ものメッセージが集まった<ref name="JAXA's031" /><ref name="ITmedia_20100223" />。メッセージは機体重心調節用バランスウェイトを兼ねている 12cm × 8cm × 0.2mm のアルミプレート約90枚に縮小印刷され、[[ベーキング]]処理を施して探査機の3箇所に取付けられた<ref name="JAXA's031" /><ref name="ITmedia_20100223" /><ref name="ITmedia_20100408">{{Cite news|url=https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1004/08/news044.html |author=森岡澄夫|title=初音ミク「あかつき」に搭乗! 種子島で実機を見てきた|work=ITmedia news|publisher=[[ITmedia|アイティメディア]]|date=2010-04-08|accessdate=2010-05-30
}}</ref>。
}}</ref>。


あかつきミッションマスコットキャラクターとして「あかつきくん」と「きんせいちゃん」がおり、公式サイトや関連グッズなどで描かれている<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.jaxa.jp/countdown/f17/mark_j.html|title=ミッションマーク|accessdate=2015-09-09|publisher=JAXA|work=あかつき特設サイト}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://www.jaxa.jp/countdown/f17/photo/work_index_j.html |title=あかつきくん・きんせいちゃんを作って軌道投入を応援しよう!応募作品集|accessdate=2015-09-09|publisher=JAXA|work=あかつき特設サイト}}</ref>。あかつきくんは公式[[Twitter]]にも登場し、ミッションの経過や搭載機器について説明したり、[[はやぶさ (探査機)|はやぶさ兄さん]](2010年6月13日まで)や[[IKAROS|イカロス君]]、[[準天頂衛星システム|みちびきさん]]達と会話したりしている<ref>{{Cite news|date=2010-06-11|newspaper=ITmedia News|title=イカロス君「はやぶさ兄さんに僕の広がった姿を見せられてよかった!|url=https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1006/11/news068.html |accessdate=2015-09-09|work=ねとらぼ}}</ref>。
あかつきと[[IKAROS]]を含む5機の小型副衛星<!--JAXAサイトの表現より-->を搭載したH-IIAロケット17号機は、2010年5月18日から6月3日までの間に打ち上げられることとされ、1回目の打ち上げ予定時刻は5月18日6時44分14秒([[日本標準時|JST]])だったが、[[射場]]付近に規定以上の氷結層を含む雲が観測され、5分前に打ち上げ中止となった<ref>{{cite web|url=http://www.jaxa.jp/press/2010/05/20100518_h2af17_j.html|title= プレスリリース > H-IIAロケット17号機による金星探査機「あかつき」(PLANET-C)の打上げ延期について|work=JAXA|accessdate=2010-05-18}}</ref>。3日後の21日6時58分22秒に延期された打ち上げは予定通りの時刻に行われた。H-IIA17号機は地球周回軌道に乗った時点で第2段エンジンを一時停止して小型副衛星のうち3機([[Negai☆″]]、[[WASEDA-SAT2]]、[[KSAT]])を分離、その後第2段エンジンに再点火して太陽周回軌道に移り、打ち上げから約27分29秒後にあかつき<ref>{{citeweb|url=http://www.jaxa.jp/press/2010/05/20100521_h2a-f17_j.html|title=H-IIAロケット17号機による金星探査機「あかつき」(PLANET-C)の打上げ結果について|work=JAXA|accessdate=2010-05-21}}</ref>、次いで残り2機の小型副衛星(IKAROS、[[UNITEC-1]])を分離した。


== 脚注 ==
あかつきは6月28日に1回目のOME噴射を行い、セラミックスラスターの世界初の軌道上実証に成功した<ref>{{citeweb|url=http://www.jaxa.jp/press/2010/07/20100706_akatsuki_j.html|title=金星探査機「あかつき」の軌道制御の実施結果について|work=JAXA|accessdate=2010-07-18}}</ref>。
{{脚注ヘルプ}}


=== 注釈 ===
11月上旬に2回目のOME噴射を行い、12月7日に金星へ到着、高度300kmから8万kmで周回する楕円軌道に投入される。軌道周期約30時間のうち約20時間は金星表面の[[金星の大気|スーパーローテーション]]とほぼ同期しており、約2年間にわたって金星大気の挙動を継続的に観測する予定である。
{{Reflist|group="注"}}

=== 出典 ===
{{Reflist|2|refs=
<ref name="MHITR454056">{{Cite journal|和書|author=松尾哲也|title=金星探査機(PLANET-C)向け500Nセラミックスラスタの開発|journal=三菱重工技報|publisher=[[三菱重工業]]|url=https://www.mhi.co.jp/technology/review/pdf/454/454046.pdf |format=PDF|volume=45|issue=4|year=2008|author2=森島克成|author3=井上涼平|author4=野中吉紀|accessdate=2015-08-12}}</ref>
}}


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
{{Commonscat}}
* [[中村正人 (宇宙科学者)]]:本探査機[[プロジェクトマネジャー]]。
* [[PLANET計画]]
* [[PLANET計画]]
* 日本の[[宇宙探査機]]
* 日本の[[宇宙探査機]]
** [[すいせい]] (PLANET-A)
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** [[のぞみ (探査機)|のぞみ]] (PLANET-B)
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** [[はやぶさ (探査機)|はやぶさ]] (MUSES-C)
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** [[IKAROS]]
* [[金星#金星探査機|金星探査機]]
* [[金星#大気と温度|金星探査機]]
** [[ビーナス・エクスプレス]]([[欧州宇宙機関]]の金星探査機)
** [[ビーナス・エクスプレス]]([[欧州宇宙機関]]の金星探査機)

== 脚注 ==
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== 外部リンク ==
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{{Portal|宇宙開発|[[ファイル:Jaxa-M-V-Rocket-No7-launches.jpg|70px]]}}
{{Portal|宇宙開発|[[ファイル:Jaxa-M-V-Rocket-No7-launches.jpg|70px]]}}
* [http://www.jaxa.jp/projects/sat/planet_c/ JAXA|金星探査機「あかつき」 (PLANET-C)]
* [https://www.jaxa.jp/projects/sas/planet_c/index_j.html JAXA|金星探査機「あかつき」 (PLANET-C)]
* [http://www.jaxa.jp/countdown/f17/index_j.html JAXA | あかつき特設サイト]
* [https://www.jaxa.jp/countdown/f17/index_j.html JAXA | あかつき特設サイト]
* [http://www.isas.jaxa.jp/j/enterp/missions/planet-c/ ISAS | 金星探査機 PLANET-C / 科学衛星]
* [http://www.isas.jaxa.jp/j/enterp/missions/akatsuki/compile/index.shtml JAXA | 金星周回軌道投入再挑戦特設サイト]
* [http://www.stp.isas.jaxa.jp/venus/ 金星気象衛星 あかつき]
* [https://www.isas.jaxa.jp/missions/spacecraft/current/akatsuki.html 金星探査機「あかつき」 | 科学衛星・探査機 | 宇宙科学研究所]
* [https://www.isas.jaxa.jp/j/column/akatsuki/index.shtml ISASコラム 金星探査機「あかつき」の挑戦]
* [https://www.stp.isas.jaxa.jp/venus/ 金星気象衛星 あかつき]
* {{twitter|Akatsuki_JAXA|「あかつき」チーム}}
* [http://www.nec.co.jp/techrep/ja/journal/g11/n01/110108.html 金星探査機「あかつき」の開発]-NEC技報
* {{PDFlink|[https://www.isas.jaxa.jp/j/topics/topics/2015/image/0206_akatsuki/akatsuki.pdf 金星探査機「あかつき」今後の金星周回軌道再投入および観測計画]}} - JAXA宇宙科学研究所 2015年2月6日 


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2024年12月3日 (火) 14:44時点における最新版

金星探査機
「あかつき (PLANET-C)」
所属 宇宙科学研究所 (ISAS)
現・宇宙航空研究開発機構 (JAXA)
主製造業者 NEC東芝スペースシステム
公式ページ 金星探査機 あかつき
国際標識番号 2010-020D
カタログ番号 36576
状態 運用中
目的 金星気象探査
観測対象 金星
設計寿命 打上げ後4.5年
打上げ場所 種子島宇宙センター
打上げ機 H-IIAロケット 17号機
打上げ日時 2010年5月21日
6時58分22秒 (JST)
軌道投入日 2010年12月7日(失敗)
2015年12月7日(成功)
物理的特長
本体寸法 1.04 × 1.45 × 1.4 m
質量 518 kg(打上げ時)
発生電力 約500 W(ミッション終了時)
主な推進器 2液式500Nスラスタ
ヒドラジンスラスタ (23 N x 8 , 3 N x 4)
姿勢制御方式 3軸姿勢制御方式
(4スキュー型バイアスモーメンタム)
軌道要素
周回対象 金星
軌道 長楕円軌道
近点高度 (hp) 1,000 km - 10,000 km
遠点高度 (ha) 370,000 km
軌道傾斜角 (i) 3度
軌道周期 (P) 10.8日
搭載機器
IR1 近赤外カメラ1
IR2 近赤外カメラ2
LIR 中間赤外カメラ
UVI 紫外イメージャー
LAC 雷 / 大気光カメラ
USO 超安定発振器
テンプレートを表示

あかつき(第24号科学衛星:計画名「PLANET-C」または「VCO(Venus Climate Orbiter、金星気候衛星)」)は、宇宙航空研究開発機構(以下JAXA)宇宙科学研究所(以下ISAS)の金星探査機。開発・製造はNEC東芝スペースシステムが担当した。観測波長の異なる複数のカメラを搭載して金星の大気を立体的に観測する。すいせい、のぞみに続くPLANETシリーズを冠した惑星探査機。

概要

[編集]

2010年5月21日種子島宇宙センターより打上げられ、同年12月7日に金星周回軌道へ入る予定であったが、周回軌道への投入マヌーバの最中にメインエンジン(セラミックスラスタ)が故障。結果、金星に近い軌道で太陽を周回しながら、宇宙をさまようしかなく、この時点では計画は失敗したと見なされていた[1]

しかしその後、メインエンジンの代わりに推力が5分の1しかない姿勢制御エンジンを使用することとした。このことで、6年後に金星に再接近する際に、金星の周回軌道に移ることが可能となった。当初計画とはまったく異なる新たなプランで、計画完遂を狙った。

2015年12月7日に金星周回軌道への再投入が行われ[2]、12月9日に成功が確認された[3][4][5]

2016年4月4日、再度の軌道修正を行い、4月8日成功を確認した[6]。この軌道修正に伴い、観測期間が当初予定の800日から2000日へ延びることとなった[6]

それ以後、金星を周回しながら、大量の写真を撮影した。2019年4月現在、5台のカメラのうち2台が故障したが残る3台が正常に作動している。これまでに送られた画像は、人類にとって未知のもので、金星の構造について多大な知見を与えた[7]。2020年4月には、当初からの大きな目的であるスーパーローテーションの謎を解明する論文がサイエンス誌に掲載されるに至った[8]

計画概要

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スーパーローテーションと呼ばれる惑星規模の高速風など、従来の気象学では説明不可能な金星の大気現象メカニズム解明を主目的としている。言い換えれば、あかつきは金星版気象衛星である。このミッション成果は、惑星の気象現象を包括的に理解することへ繋がると期待される。加えて、赤外線により金星の地表面の物性や火山活動を調べ、また地球出発から金星到着までの間に惑星間の塵の分布(黄道光)を観測する。

当初の計画では金星到着後に高度300 kmから8万 km、公転周期約30時間の楕円軌道に投入される予定で、近金点前後を除く約20時間は金星のスーパーローテーションとほぼ同期しており、約2年間に渡って金星大気の挙動を継続的に観測する予定であった。

設計

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報道公開時のあかつき

基本システムは「はやぶさ」のものを踏襲し、衛星本体の重量は500 kg程度である。モーメンタムホイール(MW)を使用した3軸制御で姿勢を安定させる。MWは、はやぶさの3個より1個多い4個を搭載する。推力500 Nの軌道投入用スラスター(OME, Orbit Maneuvering Engine)のノズル及び燃焼器には耐熱性に優れた窒化珪素(Si3N4)系モノリシックセラミックスを用いる[9]

高利得アンテナ(HGA, High-Gain Antenna:ラジアルライン給電スロットアレイアンテナ[10]32 kbps)、中利得アンテナ(MGA, Middle-Gain Antenna:ホーンアンテナ512 bit/s)、低利得アンテナ(LGA, Low-Gain Antenna:超広角レンズアンテナ、8 bit/s)を各2基(ただしHGAはそれぞれ送信専用と受信専用、MGAとLGAはどちらも送受信兼用)搭載し、主にHGAを用いて臼田宇宙空間観測所64 mパラボラアンテナと交信する。臼田の可視時間外に交信する必要が生じた場合、NASAディープスペースネットワークを利用することもある。

観測機器は、地表面からの赤外線放射や雲による太陽散乱光を捉える1μmカメラ(IR1)、雲の下の大気からの赤外線放射を捉えて低高度の雲や微量ガスの分布を探るµmカメラ(IR2)、雲からの赤外線放射を捉えてその構造を探る中間赤外カメラ(LIR)、雲による太陽散乱光を捉えて二酸化硫黄ガスなどの分布を探る紫外イメージャ(UVI)が搭載される。放電が起こっているか否かを把握するための雷・大気光カメラ(LAC)も搭載される。また、通信機器として超高安定発振器(USO)を搭載し、探査機から地球に向けて送信される電波が金星大気をかすめる際に電波の周波数と強度が影響を受けることを利用して大気層構造を調べる電波掩蔽観測もする。

太陽電池パドルの取付軸は機体Z軸(OMEノズルがある面と高利得アンテナがある面を結んだ軸)と直交し、パドルが常に太陽の方向を向くように回転可能。取付軸のある面には日光が当たらないため、探査機からの放熱に用いられる。この面の片方に中利得アンテナ、もう片方に観測装置がある。残りの2面に低利得アンテナがある[11]。惑星間航行中は基本的にパドルの軸を黄道面に垂直な方向に向け、姿勢変更の際は観測装置のセンサが太陽方向を向かないようにする。

開発

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計画が提案された時点では、2007年2 - 4月頃にM-Vロケットによって打ち上げられ、いったん地球周回軌道に乗ったのち6月に太陽周回軌道へ投入され、1年後の2008年6月に地球スイングバイを行って金星へ向かい、2009年9月に金星へ到着することになっていた[12]。しかし2010年の打ち上げとなり、更に新型固体ロケット開発に伴うM-Vロケットの運用中止に伴い、H-IIAロケット17号機による打ち上げに変更された。探査機本体とロケットとの結合部はM-Vロケットの直径に合わせて作られていたため、H-IIAロケット用のアダプタが新たに製作された。開発費用は146億円。

また、H-IIAロケットの打ち上げ能力からすると当機は軽量であり、ペイロード能力の余剰を有効利用するため、5つの小型副衛星(IKAROSUNITEC-1WASEDA-SAT2KSATNegai☆″)が相乗りで打ち上げられた。上記のアダプタ内に収納する形でIKAROSを、その外部にUNITEC-1とJ-POD(JAXA Picosatellite deployer)と呼ばれるケースに他の小型副衛星3機を格納した。

2009年10月に「あかつき」という正式名称が発表された[13]

H-IIAロケット17号機による「あかつき」の打上げ
打ち上げ後の軌道      あかつき ·       金星      地球 ·       太陽

運用

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打上げから初期運用

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あかつきとIKAROS含む5機の小型副衛星を搭載したH-IIAロケット17号機は、2010年5月18日から6月3日までの間に打ち上げられることとされ、1回目のち上げ予定時刻は5月18日6時44分14秒(JST)であった、射場付近に規定以上の氷結層を含む雲が観測され、5分前に打上げ中止となった[14]。3日後の21日6時58分22秒へ延期された打上げは予定通りの時刻に行われた。

H-IIA17号機は地球周回軌道に乗った時点で第2段エンジンを一時停止し、小型副衛星のうち3機(Negai☆″、WASEDA-SAT2、KSAT)を分離、その後第2段エンジンに再点火して太陽周回軌道に移り、打ち上げから約27分29秒後にあかつき[15]、次いで残り2機の小型副衛星(IKAROS、UNITEC-1)を分離した。打上げロケットの能力に余裕があったため、月や地球を利用してのスイングバイは行わずに、第2段ごとホーマン遷移軌道に近い軌道に入り、直接金星へ向かった。

あかつきは6月28日、遠日点(約1.07天文単位)近くでOME噴射を13秒間行い、セラミックスラスターの世界初の軌道上実証に成功した[16]。軌道制御のためのOME噴射は2回予定されていたが、打上げ時の軌道制御が予想以上に高精度であためもう1回はキャンセルされた。

10月8日、LAC以外の4台のカメラでいて座の一部を撮影した。ほぼ事前に予測された通りの画像を取得し、各カメラが健全な状態であることを確認した。その後、おうし座や地球となどの撮影も行った。

周回軌道投入マヌーバ

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12月6日午前7時50分に金星周回軌道投入マヌーバ(VOI-1)のための姿勢変更を実施し、OMEを進行方向正面に向けた[17]。その後の予定は以下の通りとなっていた。

「あかつき」の軌道投入計画(引用資料:[17]
予定していたイベント 時間 (JST) 金星最接近時刻
(12月7日09:00JST)
からの相対時間
軌道制御エンジン(OME)噴射開始 12月7日 08時49分00秒 11分前
地食開始、地上局との通信断 12月7日 08時50分43秒 約9分前
OME噴射終了 12月7日 09時01分00秒 1分後
地食終了、通信再開 12月7日 09時12分03秒 約12分後
日陰開始 12月7日 09時36分37秒 約37分後
日陰終了 12月7日 10時40分44秒 約1時間41分後
Z軸地球指向への姿勢変更 12月7日 10時59分00秒 約2時間後
中利得アンテナ(MGA)から高利得アンテナ(HGA)への切替 12月7日 12時09分00秒 約3時間後
金星周回軌道決定 今後の軌道修正計画作成 12月7日 21時頃 約12時間後

OMEを予定通り12分間噴射した場合、あかつきは約4日で金星を周回する長楕円軌道に投入される。4日後の金星再接近時に軌道修正を行って公転周期約2日の軌道に、さらに2日後の軌道修正で公転周期約30時間の観測軌道に入る予定であった。また、OMEを少なくとも9分20秒噴射できれば、約50日で金星を周回する超長楕円軌道に入れる可能性があった。

12月7日午前8時52分36秒、あかつきが同日午前8時49分に逆噴射によって減速を開始したことが探査機からのドップラーデータより確認された[18]。あかつきまでの通信ラグは約3分半である。同日午前8時50分にあかつきは地球から見て金星の向こう側に隠れ、予定通り地球との通信が途絶えた。同日9時12分に通信再開予定だったが、探査機からの電波を受信したのは10時28分で、予定されていたMGAではなくLGAによるものであった[19]。同日午後、太陽電池パドルと片方のLGAを太陽に、もう片方のLGAをその反対方向に向けたまま低速回転する「セーフホールドモード」となっていることが判明した。これは機体に重大なトラブルが発生した場合、電源確保とそのための姿勢の維持を最優先するモードである。翌12月8日までに3軸制御モードへの復帰とテレメトリ取得を行った。テレメトリによると、あかつきはOME噴射開始より約2分30秒後、横方向に異常な力が加わって姿勢が大きく乱れ、直後に噴射を中止してセーフホールドモードへ移行していた。減速が不十分だったことにより、金星周回軌道への投入はできなかった[20]

12月27日に、トラブル原因は加圧用のヘリウムタンクから燃料タンクへの配管に設置された逆止弁(逆流防止用弁)が閉塞したためと発表された[21][22][23]。通常の燃焼では酸化剤に対して燃料を多めに混合することで意図的に燃焼温度を下げ、セラミックスラスタ耐熱温度を超えないようにしている[注 1]。しかし、逆止弁が閉塞したことから燃料タンクの圧力が低下してスラスタへの燃料供給が滞り、酸化剤と燃料の混合比がより効率的な燃焼を促すものとなった。これにより異常燃焼が生じて機体に想定外の回転モーメントが掛かると共に想定外の高温でスラスタの一部が破損した[注 2]可能性がある。

2011年6月、JAXAは地上試験の結果、逆止弁閉塞の原因は燃料(ヒドラジン)と酸化剤(四酸化二窒素)が反応して生じた硝酸アンモニウム結晶である可能性が高いと発表した。酸化剤側逆止弁のシールに用いられていた樹脂材料が四酸化二窒素を透過する性質を持っていたために、酸化剤が徐々に燃料側逆止弁に向って拡散、燃料と反応して生じた結晶が弁を詰まらせたと推定された。また、異常燃焼によるセラミックスラスタの破損も再現され、再度スラスタを点火すれば損傷がさらに拡大するであろうことも確認された[24]

軌道修正制御

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2017年6月5日時点の探査機あかつきの軌道(黄色)

あかつきは結果的に金星でパワードスイングバイを行う形となり、公転周期224.7日の金星よりやや内側を203日で公転する、近日点約9000万 km、遠日点約1億1000万 kmの軌道へ移った[25]。太陽の周りをあかつきが約11周する間に金星は約10周して「周回遅れ」となるため、2016年12月2017年1月に両者は再度接近する[26][27]。2010年12月8日の宇宙開発委員会で、JAXAはこの時に金星周回軌道への再投入を行う可能性を追求すると報告した[28]

12月9日、あかつきは3台のカメラ(LIR・UVI・IR1)を起動、約60万 kmの距離より金星を撮影した[29]

2011年1月、JAXAがあかつきについて「軌道を微修正して、金星と再会合する前に金星付近の小惑星を観測する[30]」あるいは「減速し(公転周期がより長くなるように軌道を修正し)、金星が後ろから追いついてくるのを待つことで、再会合までの期間を1年短縮する[31]」などを検討しているとの報道がなされた。ただしその時点では、これらについてJAXAからの公式発表は無かった。2011年初頭の軌道のままであると2016 - 翌2017年にかけて金星に再接近するが、その距離はVOI-1の時より遥かに大きいため、いずれにせよ軌道修正は必要である。

2011年3月、科学データ取得と観測機器健全性確認を兼ねて4台のカメラ(LIR・UVI・IR1・IR2)を用いて1000万 km以上の距離より金星を複数回撮影しカメラの健全性を確認した。また、4月17日の第1回近日点通過では、衛星表面および表面に取付けた機器などの温度が上昇し、許容温度上限に迫る可能性[注 3]や断熱材の劣化等が想定された。このため近日点付近では、熱入力による機器への影響を最小にするため姿勢変更等の運用を行った[32]

2011年6月30日の宇宙開発委員会でJAXAは、逆止弁を閉塞させる原因や、第2回(2011年11月)または3回(2012年6月)の近日点通過周辺で、OMEまたは姿勢制御スラスタを使い軌道調整を実施し遠日点高度を下げ周期を短くし、2015年11月に金星に再会合させる計画を報告した[33]

2011年9月7日午前11時50分(日本時間)に、再び軌道投入用スラスター(OME, Orbit Maneuvering Engine)が使用できるかどうか、またOME使用時の姿勢の乱れ量等を調べることを目的とした第1回OMEテスト噴射(噴射時間2秒)を実施した。9月9日JAXAは第1回OMEテストの結果、OMEの推力が想定の約1 / 9であったことを発表した。この結果を受け、9月14日の第2回OMEテスト噴射(同5秒)はOMEの噴射状況の再確認することを目的として実施した。9月15日JAXAは第2回OMEテストの結果、OMEの推力が第1回OMEテストの結果と同程度であったことを発表した。これにより当初計画された金星周回軌道への投入が困難であることが確認された。ただしOMEの代わりに姿勢制御用エンジン(RCS, Reaction Control System)を使う場合でも、軌道投入時期は同じ2015年11月とする計画が立てられた[34]

2011年9月30日にJAXAは、OME燃焼器の今後の使用は断念し、今後は姿勢制御用エンジン(RCS)による軌道制御を行い、RCS運用のため、酸化剤を全投棄すると報告した[35]

2011年10月26日にJAXAは、宇宙開発委員会に対し「あかつき」の現状と金星再会合に向けた軌道制御運用について報告を行った。これによればOME用酸化剤投棄を同年10月6日に6分、12・13日にそれぞれ9分行い計画通り成功したことが明らかとなった。また、姿勢制御エンジンRCSを用いた運用計画も報告され、2011年11月1日にΔ90 m/s、10日にΔ90 m/s、21日に過去2回の補正を含めΔ70 m/sの軌道制御を実施することが明らかとなった。2011年11月1日に1回目の軌道制御実施結果の会見が行われ、これによれば姿勢制御エンジンRCS噴射時間は9分48秒、テレメトリデータ解析後に次回計画詳細を決定するとの報告が成された。2011年11月10日に2回目の軌道制御に関する発表がJAXAより行われ、13時37分より544秒間(9分4秒)実施したとの報告が成された。同時に1回目の軌道制御の実施時間は587.5秒(9分47.5秒)であったことを明らかにした。2011年11月21日に3回目の軌道制御に関する発表がJAXAより行われ、13時57分から342秒間(5分42秒)実施したとの報告がなされた。

2012年1月31日に宇宙開発委員会調査部会は、「あかつき」の金星周回軌道への投入失敗に係る原因究明及び今後の対策についての調査審議の報告を宇宙開発委員会に行った [36]。 同日、JAXAはこれまでの調整をまとめた上で今後の運用方針について宇宙開発委員会に報告を行った。上の調整の結果、2015年に金星に再会合できる軌道を飛行中であり、金星周回軌道再投入を含めて、今後全く補加圧出できない場合でもRCS運用が可能な状態となっている。探査機寿命を勘案しつつ、2015年以降の金星周回軌道再投入を検討しており、それに向けて各種調整や試験継続が引続き行われた[37]

2015年8月5日、JAXAは7月17・24・31日の3回、計7分半姿勢制御用の姿勢制御用エンジンを噴射し、再投入を11月から12月へ変更する軌道修正を行い[38][39]、8月2日までの観測により目的の軌道修正が成功したと発表した[40]

2015年8月31日、JAXAは「あかつき」が、太陽に最も近づく近日点を通過したことを明らかとした[41]。JAXAは1ヵ月程度かけて機体が無事か確認を行った[41]

金星周回軌道再投入

[編集]
金星周回投入後の軌道      あかつき ·       金星

JAXAは2015年12月7日8時51分から「あかつき」の金星周回軌道投入のため、姿勢制御用エンジン(RCS)噴射を計画通り約20分実施、所要の噴射時間が得られたことが確認され[42]、12月9日に金星周回軌道に投入されたことが確認された[3][4][5]

2016年4月4日、再度の軌道修正を行い、4月8日成功を確認した[6]。この軌道修正により観測期間が当初予定の800日から2000日に延びる事となった[6]

2016年12月9日、搭載された5つのカメラのうち1μmカメラ(IR1)と2μmカメラ(IR2)の2つにて電流値が不安定になる不具合が発生し、翌日にはスイッチが入らなくなった。原因は機器劣化の可能性が高いと考えられている[43]。2017年3月3日、JAXAはこれらのカメラによる科学観測を休止し、復旧に向けて地上検討と定期的に両カメラのスイッチを入れるコマンドの送信を行うことを発表した[43]。なおIR1・IR2以外の3つのカメラ(中間赤外カメラ、紫外イメージャ、雷・大気光カメラ)は正常に観測を継続している[43]。 2018年4月に、定常運用を終了し、延長運用に入った[44]。2021年時点で、観測を続けている[45]

通信途絶

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2024年5月29日、延長運用を行っていたが2024年4月末の運用において、姿勢維持の精度の高くない制御モードが長く続いたことにより、通信の確立ができなくなった。[46]

広報

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2009年10月の正式名称発表と同時に、公募した名前やメッセージを金星へ送るというキャンペーン「お届けします! あなたのメッセージ 暁の金星へ」[47]が開始された。携帯やパソコンのメールからサイトにメッセージを送信すると、『金星探査機「あかつき」記念乗車証』と書かれた画像が、添付ファイルで返送されてくる(画像には金星に到着するあかつきのイラストの下部に自分の応募したメッセージが入っている)。この種のキャンペーンは日本の宇宙探査機ではのぞみより行われているが、あかつきでは著名人や団体からのメッセージについては直筆の文章やイラストを搭載できるようにするなど、量より質を重視した[48][49]。2010年1月の締め切りまでに日本国内外から26万214人の応募があり、そのうち14万8204人は学校やプラネタリウムなど団体単位での応募であった[50]。中でもVOCALOID初音ミク」のイラストを宇宙に送ろうというファン有志による運動では1万3849人ものメッセージが集まった[48][50]。メッセージは機体重心調節用バランスウェイトを兼ねている 12cm × 8cm × 0.2mm のアルミプレート約90枚に縮小印刷され、ベーキング処理を施して探査機の3箇所に取付けられた[48][50][51]

あかつきミッションマスコットキャラクターとして「あかつきくん」と「きんせいちゃん」がおり、公式サイトや関連グッズなどで描かれている[52][53]。あかつきくんは公式Twitterにも登場し、ミッションの経過や搭載機器について説明したり、はやぶさ兄さん(2010年6月13日まで)やイカロス君みちびきさん達と会話したりしている[54]

脚注

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注釈

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  1. ^ 最も効率的な燃料と酸化剤の比を1:1(完全燃焼)とすると、あかつきでは1:0.8としている。
  2. ^ 従来の金属製スラスタに対してセラミックスラスタは数百度高い 1500 °C まで耐えられるが、完全燃焼時の温度は 2000 °C に達する[9]
  3. ^ 金星周回軌道上(当初予定)では、2649 W/m2(設計時に想定した最大熱入力は 2800 W/m2)。金星投入に失敗し、太陽周回軌道へ入ったが、その軌道上で想定される最大熱入力は 3655 W/m2 で、金星周回軌道上の熱入力に対し、約 1000 W/m2 大きい。

出典

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  3. ^ a b 金星探査機「あかつき」の金星周回軌道投入結果について』(プレスリリース)JAXA、2015年12月9日https://www.jaxa.jp/press/2015/12/20151209_akatsuki_j.html2015年12月9日閲覧 
  4. ^ a b 金星探査機「あかつき」の金星周回軌道投入結果に関する記者説明会』(プレスリリース)JAXA、2015年12月9日https://fanfun.jaxa.jp/jaxatv/detail/6415.html2015年12月9日閲覧 
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  6. ^ a b c d “「あかつき」軌道修正”. 読売新聞. (2016年4月9日). https://web.archive.org/web/20160419235207/http://www.yomiuri.co.jp/kyushu/news/20160409-OYS1T50006.html 2016年4月10日閲覧。 
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  8. ^ 金星探査機「あかつき」観測成果論文のScience誌掲載について - JAXA』(プレスリリース)JAXA、2020年4月24日https://www.jaxa.jp/press/2020/04/20200424-1_j.html2020年4月25日閲覧 
  9. ^ a b 松尾哲也、森島克成、井上涼平、野中吉紀「金星探査機(PLANET-C)向け500Nセラミックスラスタの開発」(PDF)『三菱重工技報』第45巻第4号、三菱重工業、2008年、2015年8月12日閲覧 
  10. ^ 松浦晋也 (2010年10月13日). “第2話 平面アンテナが金星と地球を結ぶ”. 太陽系大航海時代の幕明け > 届け、あかつきの星へ. NEC. 2015年12月7日閲覧。
  11. ^ 太陽系大航海時代の幕明け > 届け、あかつきの星へ 第1話「はやぶさ」を継ぎし「あかつき」へ”. NEC. 2010年11月22日閲覧。
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  23. ^ “「あかつき」軌道投入失敗の原因は燃料逆流防止弁の動作不良”. アストロアーツ. (2010年12月27日). https://www.astroarts.co.jp/news/2010/12/27akatsuki/index-j.shtml 2010年1月2日閲覧。 
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関連項目

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外部リンク

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