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「橋」の版間の差分

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{{For|その他の用法|橋 (曖昧さ回避)}}
{{For|その他の用法|橋 (曖昧さ回避)}}
{{出典の明記|date=2018年3月}}
[[File:Akashi Bridge.JPG|thumb|250px|[[明石海峡大橋]]]]
[[File:Bosporus Bridge from Ortaköy 02.JPG|thumb|[[トルコ]]、[[イスタンブール]]の[[7月15日殉教者の橋|ボスポラス大橋]]]]
'''橋'''(はし、{{Lang-en-short|bridge}})は、[[地面]]が下がった場所や何らかの障害([[川]]など)を越えて、「[[みち]]」(路、道) のたぐい([[通路]]・[[道路]]・[[鉄道]]など)を通す[[構築物]]である<ref>Merriam Webster, definition of bridge.</ref>。工学上は'''橋梁''' (きょうりょう) という<ref name="Britannica">[[ブリタニカ国際大百科事典]] 小項目事典【橋】</ref>。


== 概説 ==
'''橋'''(はし)、'''橋梁'''(きょうりょう)とは、人や物が、[[谷]]、[[川]]、[[海]]、[[窪地]]や[[道路]]、[[線路 (鉄道)|線路]]などの交通路上の交差物を乗り越えるための構造物である(道路、窪地、線路などを跨ぐ橋は'''[[陸橋]]'''と呼ばれる)。
橋というのは、何らかの障害を越えて、[[路]]や道を通す構築物である。橋が通す「路」のたぐいには、[[道路]]や[[鉄道]]のほか[[水路]]もある<ref name="Britannica" />。橋が越える障害には、[[河川]]、[[湖沼]]、[[海峡]]、[[湾]]、[[運河]]、[[低地]]などのほか、他の交通路(他の鉄道や他の道路類)や他の構造物など、さまざまなものがある<ref name="Britannica" />。


== 歴史 ==
乗り越えるものにより、'''[[跨道橋]]'''や'''[[跨線橋]]'''など、個別の名称で呼ばれることもある。一方、[[水]]を渡すための橋を[[水道橋]]と呼び、地上に長い区間連続して架けられている橋は[[高架橋]]と呼ばれる。
=== 古代の橋 ===
[[紀元前4000年]](紀元前40世紀)頃の[[メソポタミア|メソポタミア文明]]では[[石橋|石造]]の[[アーチ橋]]が架けられている。[[紀元前2200年]]頃、[[バビロン]]では[[ユーフラテス川]]に長さ 200&nbsp;[[メートル|m]] の[[レンガ]]橋が架けられた。


[[File:Pont du Gard FRA 001.jpg|thumb|300px|[[ポン・デュ・ガール]]。古代[[ローマ帝国]]の[[水路橋]]。西暦[[50年]]ころに建造。[[ガルドン川]]にかけられており、当時の[[ガリア]]の地、現在の[[フランス]]の[[ガール県]][[ニーム (フランス)|ニーム]]あたりに位置する。]]
歩行者が道路を渡るための'''歩道橋'''については[[横断歩道橋]]を参照のこと。


なおアーチ橋の架橋技術は、古代メソポタミア地方で発祥した技術が、世界に伝播して[[西洋]]と[[東洋]]それぞれ独自に発展したとする研究が発表されている{{sfn|武部健一|2015|p=9|ps=、武部「アーチは東漸したか」『第九回日本土木史研究発表会論文集』より孫引き。}}。
== 歴史 ==
=== 有史以前の橋 ===
橋の起源についてははっきりしたことは判らないが、偶然に谷間部分を跨いだ倒木や石だったと推測されている。その後人類が道具を使うようになってからは伐採した木で[[丸木橋]]が造られるようになった。また、木々に垂れ下がっている蔓を編んだ吊橋の原型とされる蔓橋(つるはし)や、より長い距離を渡るために川の中で飛び出た石の頂部に丸木を渡したり自然石を積み上げて[[橋脚]]を築いたり、杭を打ち込み橋脚にした事も考えられている。

=== 古代の橋 ===
[[File:Pont du Gard FRA 001.jpg|thumb|[[ポン・デュ・ガール]]]]


[[古代ローマ帝国]]は技術力や軍事力に優れ、[[地中海世界]]や[[ガリア]]の地で支配地を広げ巨大な帝国となるにともなって、物資運搬([[ロジスティクス]]、[[兵站]])、軍が戦地へ移動する速度、水の供給、などの[[戦略]]的な重要さの理解も深まり、道路網と[[水道]]網([[水路]]網)も積極的・戦略的に整備した結果、多数の橋が架けられ、架橋技術も大きく進歩した。現存する古代ローマの水道橋は驚くべき精度を持っている。
[[紀元前5世紀]]から[[紀元前6世紀|6世紀]]ごろには[[バビロン]]や中国で[[石橋|石造]]の[[桁橋]]が架けられていた。紀元前4000年ごろの[[メソポタミア|メソポタミア文明]]では石造[[アーチ橋]]が架けられている。紀元前2200年ごろ、バビロンでは[[ユーフラテス川]]に長さ 200 [[メートル|m]] のレンガ橋が架けられた。アーチ橋の架橋技術は、古代メソポタミア地方で発祥した技術が、東西に伝播して西洋と東洋それぞれ独自に発展したとする研究が<!--元工学博士の武部健一により-->発表されている{{sfn|武部健一|2015|p=9|ps=、武部「アーチは東漸したか」『第九回日本土木史研究発表会論文集』より孫引き。}}。


[[古代ローマ|ローマ時代]]に道路網の整備に伴い各地に橋が架けられ、架橋技術は大きく進歩した。現存する水道橋は驚異的な精度を持っている。ローマ教皇は「ポープ」と呼ばれるが、この「Pope」の正式名称である「最高司教:Pontifex maximus」の前半部は「橋:Ponti」と「つくる:fex」から成り立っている。この名前が示すように、古代ローマ時代には橋を架けることは聖職者の仕事であった。中国や日本でも橋は仏教僧侶が架けることが多かった<ref name = "橋 HASHI">大野春雄監修『橋 HASHI なぜなぜ読本』山海堂 2000年5月20日 第1版第3刷発行</ref>。
なお[[ローマ教皇]]は英語で「ポープ」と呼ばれるが、この「Pope」の正式名称である「最高司教:Pontifex maximus」の前半部は「橋:Ponti」と「つくる:fex」から成り立っている。この名前が示すように、[[初期キリスト教]]の時代([[古代ローマ]]時代には橋を架けることは[[聖職者]]の仕事(聖職者が主導して行う仕事)あった。中国や日本でも橋は仏教[[僧侶]](主導して)架けることが多かったのである<ref name = "橋 HASHI">大野春雄監修『橋 HASHI なぜなぜ読本』山海堂 2000年5月20日 第1版第3刷発行</ref>。


{{Gallery
日本での記録に残っている最古の橋は、『[[日本書紀]]』によると[[景行天皇]]の時代に現在の[[大牟田市]]にあった御木のさ小橋(みきのさおはし)である。巨大な倒木による丸木橋とされている。人工の橋では同じく『日本書紀』によると324年([[仁徳天皇]]14年)に現在の大阪市に[[猪甘津橋]](いかいつのはし)が架けられたのが最古とされている{{sfn|武部健一|2015|p=25}}{{sfn|浅井建爾|2001|p=212}}。また、624年に[[道昭]]が京都の宇治川に[[宇治橋 (宇治市)|宇治橋]]を、726年には[[行基]]が[[山崎橋]]を架けるなど、古くは僧侶が橋を架けたことが知られている{{sfn|浅井建爾|2001|p=212}}。これは僧侶が[[遣隋使]]や[[遣唐使]]として中国に渡り技術を学んできたことや、救済の一環として土木事業を指導したことによる。一方、当時の[[律令政府]]は[[勢多橋]]などの[[畿内]]の要所を例外とすれば、橋の築造には消極的であった。『[[日本紀略]]』の[[延暦]]20年5月甲戌条には、河川に橋がないことで[[庸]]の搬送が困難な場合には、そのたびに[[舟橋]]を架けるように命じている。
|width = 220px
|Pont mycénien de Kazarma 2.jpg|[[アルカディコ橋]]。現存する最古の橋とされ、[[ミケーネ文明]]のもの。
|Eleutherna Bridge, Crete, Greece. Pic 01.jpg|{{仮リンク|エレウテルナ橋|en|Eleutherna Bridge}}。スパンが3.95メートルの[[持送りアーチ]]橋。[[紀元前4世紀]]か[[紀元前3世紀]]のものと推定されており、[[古代ギリシア]]、[[クレタ島]]の[[都市国家]]{{仮リンク|エレウテルナ|en|Eleutherna}}によるもの。
|Ancient Roman bridge near Dolen Bulgaria.jpg|ローマ帝国時代の橋(現在の[[ブルガリア]]南部のドレン [[:en:Dolen, Blagoevgrad Province|Dolen]]あたりにあるもの
|ファイル:Su kemeri (yakın).JPG|[[ヴァレンス水道橋]]。ローマ帝国の水道橋。現在のトルコ、[[イスタンブール]]に位置する。
}}
日本での記録に残っている最古の橋は、『[[日本書紀]]』によると[[景行天皇]]の時代に現在の[[大牟田市]]にあった「御木のさ小橋」(みきのさおはし)である。巨大な倒木による丸木橋とされている(ただし大きさに誇張がある。詳細は[[巨樹#伝説上の巨樹]]を参照)。人工の橋では同じく『日本書紀』によると[[324年]]([[仁徳天皇]]14年)に[[猪甘津橋]](いかいつのはし)が架けられたのが最古とされている{{sfn|武部健一|2015|p=25}}{{sfn|浅井建爾|2001|p=212}}(現在の[[大阪市]]にあたる場所にあったと推定されている)。また、[[624年]]([[推古天皇]]32年)に[[道昭]]が京都の宇治川に[[宇治橋 (宇治市)|宇治橋]]を、[[726年]]([[神亀]]3年)には[[行基]]が[[山崎橋 (山城国)|山崎橋]]を架けるなど、古くは僧侶が橋を架けたことが知られている{{sfn|浅井建爾|2001|p=212}}。これは僧侶が[[遣隋使]]や[[遣唐使]]として中国に渡り[[技術]]を学び独自の高度な知識を持っていたことや、その知識を使って庶民の救済の一環として土木事業を指導したことによる。


=== 中世ヨーロッパの橋 ===
=== 中世ヨーロッパの橋 ===
中世でも、中規模程度の石造りのアーチ橋は造られ続けていた。戦乱の続いた時代では橋は戦略上重要な拠点となるため、守備用の塔が付属して建てられたり、戦時に敵の進軍を妨害するため簡単に壊せるようになっていたりする橋も多い。
[[ローマ帝国]]が滅んだ後、優れた土木技術は失われてしまった。このため、流失した橋には再建されず放棄されたものも多い。
依然石造りのアーチ橋は造られていたが、この時代に橋を架けたのは[[聖職者]]だった。


戦乱の続いた時代では橋は戦略上重要な拠点となるため、守備用の塔が付属して建てられたり、戦時に簡単に壊せるようになっていたものも多い。
[[ルネサンス]]期になると扁平アーチが開発され、軽快な石橋が建設されるようになった。
[[ルネサンス]]期になると扁平アーチが開発され、軽快な石橋が建設されるようになった。


=== 中世・近世日本の橋 ===
=== 中世・近世日本の橋 ===
[[鎌倉時代]]、それ以前と同様に僧侶の勧進活動の1つとして、[[重源]]による[[瀬田橋]]や[[忍性]]による宇治橋の再建などが行われた。これは人々の労苦を救うとともに架橋を善行の1つとして挙げた[[福田 (仏教)|福田思想]]の影響によるところが大きいとされている。
[[File:Hiroshige le pont Nihonbashi à l'aube.jpg|thumb|[[歌川広重]]『[[東海道五十三次]]』より「[[日本橋 (東京都中央区)|日本橋]]」]]


[[戦国時代 (日本)|戦国時代]]の[[武将]]たちは、戦略・戦術上重要である[[築城]]に必要な土木技術を向上させ、大きな集団を組織・運営する能力もあり、大工を一時的に雇うだけでなく、土木技術を担う職人集団を自ら養成したので、その技術と技術者・作業員の集団が橋の建造にも次第に活かされるようになった。たとえば[[織田信長]]は、軍事・戦略的な意図もあり、それまで簡易的な橋でしかなかった[[瀬田の唐橋]]を本格的な橋に掛け変えた。また豊臣秀吉は[[大坂城]]の掘に「極楽橋」という橋を建造した。
律令制度の衰退とともに交通路も衰退し、橋の整備も資力や技術に乏しい現地にゆだねられたため、架橋技術は発達しなかった。更に治水技術の未熟からしばしば発生した雪解けや大雨に由来する増水にも弱く、船橋のような仮橋や渡し舟による代替で間に合わされるケースが多かった。こうした傾向は江戸時代末期まで続き、江戸時代に大河川に架橋がされなかったのも、実際には軍事的な理由とともに技術的要因による部分も大きかった。


鎌倉時代・戦国時代までの日本では木造の橋がほとんどであった。
そうした中でも特徴的な架橋の例はあり、[[鎌倉時代]]においては僧侶の勧進活動の1つとして、[[重源]]による瀬田橋や[[忍性]]による宇治橋の再建などが行われた。これは人々の労苦を救うとともに架橋を善行の1つとして挙げた[[福田思想]]の影響によるところが大きいとされている。安土桃山時代から江戸時代に入ると、都市部や街道においてようやく橋の整備が進められるようになった。江戸時代の大都市には[[江戸幕府|幕府]]が管理した橋と町人が管理して一部においては渡橋賃を取った橋が存在し、江戸では「御入用橋」「町橋」、大坂では「[[公儀橋]]」「町人橋」と称した。また、江戸時代以前の日本では木造の橋がほとんどであったが、九州や琉球では大陸文化の影響を受け、明出身の僧侶[[如定]]による[[長崎市|長崎]]の[[眼鏡橋 (長崎市)|眼鏡橋]]の造営をはじめとする石造りの橋が多く作られるようになり、江戸時代末期に作られた[[肥後国]]の[[通潤橋]]は同地方の石工らによって様々な工夫がされたことで知られている{{sfn|浅井建爾|2001|p=212}}。また、石積みの橋桁と木製のアーチを組み合わせた[[周防国]][[岩国市|岩国]]の[[錦帯橋]]など、中小河川における架橋技術の発達を示す例が各地でみられるようになった。


(日本が本格的に武家の世になった)[[安土桃山時代]]から[[江戸時代]]に入るとようやく、都市部や街道において橋の整備が進められるようになった<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.city.shinjuku.lg.jp/kusei/70kinenshi/edo.html|title=江戸時代 - 新宿区市年表|accessdate=2021-10-05}}</ref>。
この他、[[八橋]]と言って、川底が浅い場所に杭を打ち、その杭の間に板を渡すという方法で作られたために、川の途中で曲がりくねった構造をした木造の橋が作られたこともあった。なお、2016年現在の日本においても「八橋」と言う地名が残っている。

[[ファイル:Hiroshige le pont Nihonbashi à l'aube.jpg|thumb|300px|[[日本橋 (東京都中央区の橋)|日本橋]]の[[浮世絵]]。([[歌川広重]]『[[東海道五十三次]]』の「日本橋」)]]
[[江戸時代]]の大都市には[[江戸幕府]]が管理した橋と町人が管理して一部においては渡橋賃を取った橋が存在し、それを[[江戸]]では「御入用橋」と「町橋」と呼び、[[大坂]]では「[[公儀橋]]」と「町人橋」と呼んだ。

江戸時代には九州や琉球では大陸文化の影響を受け、石造りの橋が多く作られるようになった。たとえば明出身の僧侶[[如定]]による[[長崎市|長崎]]の[[眼鏡橋 (長崎市)|眼鏡橋]]の造営があり、江戸時代末期に作られた[[肥後国]]の[[通潤橋]]は同地方の石工らによって様々な工夫がされたことで知られている{{sfn|浅井建爾|2001|p=212}}。また、石積みの橋桁と木製のアーチを組み合わせた[[周防国]][[岩国市|岩国]]の[[錦帯橋]]など、中小河川における架橋技術の発達を示す例が各地でみられるようになった。

この他、[[八橋]]と言って、川底が浅い場所に杭を打ち、その杭の間に板を渡すという方法で作られたために、川の途中で曲がりくねった構造をした木造の橋が作られたこともあった。なお、2016年時点の日本においても「八橋」と言う地名が複数残っている。


=== 産業革命後の橋 ===
=== 産業革命後の橋 ===
[[File:The world's first iron bridge.jpg|thumb|[[アイアンブリッジ (橋)|アイアンブリッジ]]]]
[[ファイル:The world's first iron bridge.jpg|thumb|300px|[[アイアンブリッジ (橋)|アイアンブリッジ]]]]


18世紀末期から19世紀にかけて、産業革命によって生た[[鉄]]を用いた橋が出現する{{sfn|浅井建爾|2001|p=221}}。鉄の出現により橋梁技術が飛躍的に向上し、橋脚と橋脚の間隔を示す支間長(スパン)が大幅に伸びて長大橋が建設されるようになる{{sfn|浅井建爾|2001|p=221}}。日本で最初の鉄橋は、1868年(慶応4年)に長崎の眼鏡橋が架かる中島川の下流にオランダ人技師の協力を得て架けられた[[くろがね橋]]である{{sfn|浅井建爾|2001|p=221}}。純日本国産の鉄橋第1号は、1876年(明治11年)に東京の[[楓川]]に架けられた[[楓川#楓川に架かる橋|弾正橋]]であり{{sfn|浅井建爾|2001|p=221}}、鋼橋としては、1888年(明治21年)に完成した[[東海道本線]]の天竜川橋梁が日本初である{{sfn|浅井建爾|2001|p=221}}。さらに鉄道網の進展、[[自動車]]の普及と交通量の変化に合わせて重い[[活荷重]]に耐えられる橋が要求されるようになって、1900年代に入ってから鉄筋コンクリート製の橋も造られるようになった{{sfn|浅井建爾|2001|pp=212,221}}。また、経済の急速な発展に伴い、経済的で短い工期が重視された。
[[18世紀]]末期から[[19世紀]]にかけて、[[産業革命]]によって生産量が増えた[[鉄]]を用いた橋が出現する{{sfn|浅井建爾|2001|p=221}}。鉄の量産により橋梁技術が飛躍的に向上し、橋脚と橋脚の間隔を示す支間長(スパン)が大幅に伸びて長大橋が建設されるようになる{{sfn|浅井建爾|2001|p=221}}。初めは[[銑鉄]]を用いた全長30&nbsp;mの橋が[[イギリス]]で架けられ、製鉄技術の改良により[[鋼]]を用いた橋が誕生する{{sfn|石井一郎|1987|p=86}}。[[1873年]]には[[鉄筋コンクリート]]を用いた橋が[[フランス]]で初めて架けられ、その後全世界に普及する{{sfn|石井一郎|1987|p=86}}。日本で最初の鉄橋は、[[1868年]][[慶応]]4年)に長崎の[[眼鏡橋 (長崎市)|眼鏡橋]]が架かる[[中島川]]の下流に[[オランダ人]]技師の協力を得て架けられた[[くろがね橋]]である{{sfn|浅井建爾|2001|p=221}}。純日本国産の鉄橋第1号は、[[1876年]][[明治]]11年)に東京の[[楓川]]に架けられた[[楓川#楓川に架かる橋|弾正橋]]であり{{sfn|浅井建爾|2001|p=221}}、鋼橋としては、[[1888年]](明治21年)に完成した[[東海道本線]]の天竜川橋梁が日本初である{{sfn|浅井建爾|2001|p=221}}。さらに鉄道網の進展、[[自動車]]の普及と交通量の変化に合わせて重い[[活荷重]]に耐えられる橋が要求されるようになって、[[1900年代]]に入ってから[[鉄筋コンクリート]]製の橋も造られるようになった{{sfn|浅井建爾|2001|pp=212,221}}。また、経済の急速な発展に伴い、経済的で短い工期の工法が重視された。


=== 現代の橋 ===
=== 現代の橋 ===
橋に求められる基本的な要件は、橋に掛かる荷重を支えること及び通行する車両等の荷重が掛かったり、振動が長期に繰り返されたりしても変形が大きくなり過ぎないことである。さらに、[[地震]]や[[台風]]の多い日本では、地震発生時及び台風通過時の安全性を確保することも重要になる。また現代の橋には、実用性だけではなく、デザイン性も求められる。大きく目立つ橋はその地域のシンボルになりうるため、構造物自体のデザイン性や周囲と調和するデザインを有していることが望ましい。
構造の強さだけでなく、需要に即した規模、気象条件、[[景観]]を含めた周辺[[環境]]への配慮、[[ライフサイクルコスト]]の経済性を含めた設計が要求される。


現代の橋には、構造の強さだけでなく、需要に即した規模、気象条件、[[景観]]を含めた周辺[[環境]]への配慮、経済性、[[ライフサイクルコスト]]も考慮した設計が要求される。
日本全国には約15万7千(15m以上)の橋がある。橋に求められる要件は、橋に掛かる荷重を支えること及び荷重が掛かっても変形が大きくなり過ぎないことである。特に[[地震]]や[[台風]]の多い日本では、地震発生時及び台風通過時の安全性を確保することが重要になる。また、橋には実用性だけではなく、デザイン性も求められる。橋のような大きく目立つ構造物はその地域のシンボルになりうるため、構造物自体の優れたデザイン性や周囲と調和するデザインを有していなければならない。
;現在の日本の橋
現在の日本には、全国でおよそ'''72万6千'''の橋がある<ref>[https://www.mlit.go.jp/road/sisaku/yobohozen/yobohozen_maint_index.html#maint_27 国土交通省、道路メンテナンス年報]</ref>。


さらに、莫大に膨れ上がった[[公共事業]]費の削減が叫ばれる日本は経済性も重要である。国が直接管理するは5年ごとの定期点検が行われているが7県と1567市町村では橋の点検していないことが2007年時点で判明してこの2007年11月には吉野川水系の[[日開谷川]]の支流の1つである大影谷川にかかっていたトラス橋が、自動車通過中に落橋するという事故が起きた<ref>[http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/const/news/20071219/514427/ トラス橋が車の通過中に崩落、香川と徳島の県境で]</ref>。この事故後の調査で、この橋も管理がなされていなかったことが判明した<ref>[http://www.nikkei.com/news/print-article/?R_FLG=0&bf=0&ng=DGXNASFK1701N_X10C14A6000000&uah=DF250520127861 誰も管理しない橋、コンクリ落下で「発見」相次ぐ]</ref>。2012年4月時点で1378の橋が老朽化により通行止めとなっている<ref>「JAF Mate 2013-3」 P19-P26 橋にまつわるQ&A</ref>。[[高度経済成長期]]に大量に建設された橋が耐用期間を迎える今日では、[[メンテナンス|維持]]のやり繰りが大きな課題である
近年まで橋の定期点検が十分に行われていなかったため老朽化要因する事故相次[[2007年]]([[平成]]19年)11月には[[吉野川 (代表的なトピック)|吉野川]]水系の[[日開谷川]]の支流の1つである[[大影谷川]]にかかっていたトラス橋が、自動車通過中に[[落橋]]するという事故が起きた<ref>[http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/const/news/20071219/514427/ トラス橋が車の通過中に崩落、香川と徳島の県境で]</ref>。この事故後の調査で、この橋も定期的な管理がなされていなかったことが判明した<ref>[https://www.nikkei.com/news/print-article/?R_FLG=0&bf=0&ng=DGXNASFK1701N_X10C14A6000000&uah=DF250520127861 誰も管理しない橋、コンクリ落下で「発見」相次ぐ]</ref>。


こうした事故を受け、[[2012年]](平成24年)に[[道路法]]が改正され、道路管理者は管理する全ての橋梁について、5年に1度近接による目視で点検を行い、健全性を診断することにした。橋の定期点検をすることで、橋の安全性を確保し、点検結果を元に橋梁長寿命化修善計画を策定することで、橋の計画的な長寿命化及び更新を図っている。
{{Main2|日本の道路橋に対する技術基準の変遷については、[[道路橋示方書]]を}}


{{For2|日本の道路橋に対する技術基準の変遷|道路橋示方書}}
== 一般的な構造 ==
[[FIle:Bridge structure 2 NT.PNG|thumb|250px|断面(道路橋)<br/>1.全幅(ぜんぷく) 2.有効幅員(ゆうこうふくいん) 3.高欄(こうらん) 4.地覆(じふく) 5.歩道、歩道幅員 6.縁石(えんせき) 7.路肩(ろかた)、路肩幅員 8.車道 9.舗装 10. 床版(しょうばん)11.主桁]]
[[File:Bridge structure NT.PNG|thumb|250px|側面 <br/>1.橋長(きょうちょう) 2.支間(しかん) 3.橋桁(はしげた) 4.支承(ししょう) 5.橋台(きょうだい) 6.杭基礎 7.橋脚(きょうきゃく) 8.ケーソン基礎 9.直接基礎 10.上部構造(じょうぶこうぞう) 11.下部構造(かぶこうぞう)]]
=== 上部構造 ===
上部構造は川や道路などを横断する部分であり、車両や人間はこの上、または内部を通過することで橋を渡る。支間長に応じて各種の構造形式が提案されており、橋の外観にもっとも影響を与える部分である(構造別による橋の種類を参照)。桁橋やトラス橋などの場合、主に荷重を受け持つ主桁や主構などと、車両や人などを直接支える路面をつくる床板(しょうばん)、床板を支える縦桁と横桁が主要な部材である。[[吊り橋]]や[[斜張橋]]では主塔やケーブルも上部構造に含まれる。さらに、車両や人などが橋から落下するのを防ぐ高欄(こうらん、欄干・らんかん)や自動車防護柵、照明柱などの付加物、下部構造とをつなぐ[[支承]](ししょう)や道路と橋梁の境にあたる[[伸縮継手]]も上部構造に含まれる。


=== 下部構造 ===
==== 現代の橋の一般的な構造 ====
[[ファイル:Bridge structure 2 NT.PNG|thumb|250px|断面(道路橋)<br>1.全幅(ぜんぷく) 2.有効幅員(ゆうこうふくいん) 3.高欄(こうらん) 4.地覆(じふく) 5.[[歩道]]、歩道幅員 6.[[縁石]](えんせき) 7.[[路肩]](ろかた)、路肩幅員 8.[[車道]] 9.舗装 10. 床版(しょうばん)11.主桁]]
下部構造は上部構造を支え荷重を地盤に伝達する役目を持つ。橋台(きょうだい)と[[橋脚]](きょうきゃく)の上に設けられた[[支承]](ししょう)によって上部構造は支持される。橋の両端に設置されるものを橋台、中間に設置されるものを橋脚と呼ぶ。[[基礎]]は橋台、橋脚を含めた橋全体の荷重を地盤に伝達する役目を持ち、橋の形式や荷重の大きさ、地盤の状態により直接基礎、杭基礎、ケーソン基礎などの形式がある。
[[ファイル:Bridge structure NT.PNG|thumb|250px|側面 <br>1.橋長(きょうちょう) 2.支間(しかん) 3.橋桁(はしげた) 4.支承(ししょう) 5.橋台(きょうだい) 6.杭基礎 7.橋脚(きょうきゃく) 8.[[ケーソン]]基礎 9.直接基礎 10.上部構造(じょうぶこうぞう) 11.下部構造(かぶこうぞう)]]

;上部構造
上部構造は、床構造と主構造から成り立つ{{sfn|藤原稔|2010|p=3}}。床構造は[[床版]](しょうばん)や[[床組]](ゆかぐみ)によって形成され、通行する[[交通]]を支える役目を持つ{{sfn|藤原稔|2010|p=3}}。主構造は[[主桁]]など、床構造を支えて荷重を下部構造に伝達する役割がある{{sfn|藤原稔|2010|p=3}}。
[[吊橋]]や[[斜張橋]]では主塔やケーブルも上部構造に含まれる。さらに、車両や人などが橋から落下するのを防ぐ高欄(こうらん、欄干・らんかん)や自動車防護柵、照明柱などの付加物、下部構造とをつなぐ[[支承]](ししょう)や道路と橋梁の境にあたる[[伸縮継手]]も上部構造に含まれる。

;下部構造
下部構造は上部構造を支え荷重を地盤に伝達する橋台(きょうだい)と[[橋脚]](きょうきゃく)、それらを支える[[基礎]](きそ)を指す{{sfn|藤原稔|2010|p=3}}。橋の両端に設置されるものを橋台、中間に設置されるものを橋脚と呼ぶ。基礎には直接基礎、杭基礎、ケーソン基礎などの形式がある{{sfn|藤原稔|2010|p=3}}。{{-}}


== 橋の種類 ==
== 橋の種類 ==
橋には、用途や材料、橋床の位置、橋桁構造、可動するかどうかにより、様々に分類される{{sfn|浅井建爾|2001|pp=214-215}}。[[#機能別|用途別]]では[[道路橋]]、[[水路橋]]、[[歩道橋]]、これらの併用橋がある。[[#材料別|材料別]]では[[木橋]]、[[石橋]]、[[鋼橋]]、[[鉄筋コンクリート橋]]、[[複合橋]]がある。橋床の位置では、上路橋、中路橋、下路橋、[[二重橋]]などがある。橋が動くかどうかでは、[[固定橋]]と[[可動橋]]に分けられる。[[#形式別|橋桁の構造形式別]]では、[[桁橋]]、[[トラス橋]]、[[斜張橋]]、[[アーチ橋]]、[[ラーメン橋]]、[[吊橋]]などがある。それぞれ長所と短所があり、橋の用途や長さ建設コストの要素考慮されて決定される{{sfn|浅井建爾|2001|pp=214-215}}
橋には、用途や材料、橋床の位置、橋桁構造、可動するかどうかなどにより、様々に分類される{{sfn|浅井建爾|2001|pp=214-215}}。[[#機能別|用途別]]、[[#材料別|材料別]]、[[#形式別|構造形式別]]によって分類行われる。

それぞれ長所と短所があり、橋の用途や長さに建設コストの要素が考慮されて決定される{{sfn|浅井建爾|2001|pp=214-215}}。


=== 形式別 ===
=== 形式別 ===
橋の構造形式には以下のような種類がある。なお、主な部材に働く力については、[[構造力学]]、[[材料力学]]、[[力学]]などの項目を参照のこと。
橋の構造形式には以下のような種類がある。なお、主な部材に働く力については、[[構造力学]]、[[材料力学]]、[[力学]]などの項目を参照のこと。
*[[ビーム橋]] - 両端を橋脚などで支持したビーム(梁)を使い造る橋。ビーム橋は橋の形式として最も一般的なものである<ref>[https://www.britannica.com/technology/bridge-engineering Britannica, Bridgeの記事。Basic formsの節の中の「Beam」の節。「The beam bridge is the most common bridge form.」と説明してある。]</ref>。なお日本語では(次に説明する)桁橋と混同してしまう人がいるが、英語では桁橋とは区別することがある。渡る距離が比較的短い橋ではこのビーム橋方式が採用されることが多い。全長が長い橋をビーム橋方式で建造する場合は、ビームを縦に連続的に配置して建造する。長いビーム橋では全長が数十キロメートルに及ぶものもある。


*[[File:Girder bridge.png|thumb|桁橋]][[桁橋]] - 2つあるいは3つ以上の支点上に水平に桁を架け、その上あるいは内部を通行する橋。最も古くからある一般的な形式{{sfn|浅井建爾|2001|pp=214-215}}。桁には[[曲げモーメント]]により主桁内部の上側に圧縮応力が発生、下側に引張応力が発生する。材料には[[鋼]]、[[コンクリート]]、[[木材]]などが用いられ、I形、箱形、T形などの断面がある。一般に荷重を主として負担する[[主桁]]と通行路を造る[[床版]]は異なる部材だが、比較的小規模のコンクリート橋では床版が主桁としての役割も果たす床版橋(スラブ桁橋)もある。また、吊橋の桁は[[補剛桁]]と呼ばれる。建設費が比較的安価なことから、最も多く採用される形式{{sfn|浅井建爾|2001|pp=214-215}}。
*[[ファイル:Girder bridge.png|thumb|桁橋]][[桁橋]] - 2つあるいは3つ以上の支点上に水平に桁を架け、その上あるいは内部を通行する橋。桁には[[曲げモーメント]]により主桁内部の上側に圧縮応力が発生、下側に引張応力が発生する。材料には[[鋼]]、[[コンクリート]]、[[木材]]などが用いられ、I形、箱形、T形などの断面がある。一般に荷重を主として負担する[[主桁]]と通行路を造る[[床版]]は異なる部材だが、比較的小規模のコンクリート橋では床版が主桁としての役割も果たす床版橋(スラブ桁橋)もある。また、吊橋の桁は[[補剛桁]]と呼ばれる。建設費が比較的安価なことから、(近年の日本では)最も多く採用される形式{{sfn|浅井建爾|2001|pp=214-215}}。
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*[[ファイル:Deck and through arch.png|thumb|140px|アーチ橋のいくつかのタイプ]][[アーチ橋]] - [[アーチ]]つまり「上向きに凸な弧」を用いた橋であり、アーチ部分(アーチリブ)には大きな圧縮力と比較的小さな曲げモーメントが作用する。素材としては[[石材]]の他に、[[コンクリート]]や[[鋼]]、さらに[[材木]]も可能である。古代や中世でも、また19世紀や20世紀でも造られて続けた石橋([[石材]]を建築材料にした橋)で最も一般的な構造である。アーチと路の上下の位置関係で4種類ほどに下位分類がされており、石橋のようなアーチの上を路が通るアーチ橋は「上路アーチ」という。鋼材を用いるようになってからは、鋼材アーチの下に路をつくり路を吊るような構造の「下路アーチ」も増えた。東京都中央区の[[日本橋 (東京都中央区の橋)|日本橋]](1911年完成)もアーチ橋(石造り、2連)、隅田川にかかる[[永代橋]](1926年完成)もアーチ橋([[スチール]]製)であり、街中でも広く見かけられる形式である。「深い渓谷など、橋脚を造ることが困難な場所で採用されることが多い形式」{{sfn|浅井建爾|2001|pp=214-215}}。
*[[File:Truss bridge.png|thumb|トラス橋]][[トラス橋]] - 棒状の部材を三角形に組み合わせ交点([[格点]]と呼ぶ)をピンで結ぶ[[トラス]]構造を用いた橋。鉄道橋に多い形式{{sfn|浅井建爾|2001|pp=214-215}}。トラス部材には[[軸力]](圧縮力または引張力)のみが作用する。ただし、実際にはピン結合ではなく剛結とすることが多く、この場合トラス部材には曲げモーメントも作用する。材料には鋼や木がよく用いられる。トラス構造は、使用部材を減ずる目的で断面2次モーメントを極大化させるため、桁構造と比して鉛直方向に構造が大きくなる。特に下路式の場合は、構造下面と路面や軌道面との間の高さを減ずることが可能であることから、桁下に余裕の無い箇所や取り付け部での縦断勾配の得づらい箇所での採用例も多い。トラス部材の配置によって以下のような分類がある。平行弦ワーレントラス、曲弦ワーレントラス、垂直材付きワーレントラス、プラットトラス、ハウトラス、Kトラス。
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*[[ファイル:Truss bridge.png|thumb|トラス橋]][[トラス橋]] - 棒状の部材を三角形に組み合わせ交点([[格点]]と呼ぶ)をピンで結ぶ[[トラス]]構造を用いた橋。鉄道橋に多い形式{{sfn|浅井建爾|2001|pp=214-215}}。トラス部材には[[軸力]](圧縮力または引張力)のみが作用する。ただし、実際にはピン結合ではなく剛結とすることが多く、この場合トラス部材には曲げモーメントも作用する。材料には鋼や木がよく用いられる。[[トラス橋|トラス構造]]は、使用部材を減ずる目的で断面2次モーメントを極大化させるため、桁構造と比して鉛直方向に構造が大きくなる。特に下路式の場合は、構造下面と路面や軌道面との間の高さを減ずることが可能であることから、桁下に余裕の無い箇所や取り付け部での縦断勾配の得づらい箇所での採用例も多い。トラス部材の配置によって以下のような分類がある。[[トラス|平行弦ワーレントラス]]、[[トラス|曲弦ワーレントラス]]、[[トラス|垂直材付きワーレントラス]]、[[トラス|プラットトラス]]、[[トラス|ハウトラス]]、[[トラス|Kトラス]]。{{-}}
*[[File:Arch bridge.png|thumb|アーチ橋]][[アーチ橋]] - 上向きの弧([[アーチ]])を用いた橋で、アーチ(アーチリブ)には大きな圧縮力と比較的小さな曲げモーメントが作用する。コンクリートや鋼あるいは木のほかに、近代以前では[[岩石|石]]がよく用いられていた。深い渓谷など、橋脚を造ることが困難な場所で採用されることが多い形式{{sfn|浅井建爾|2001|pp=214-215}}。
*[[ファイル:Rigid frame bridge.png|thumb|方丈ラーメン橋]][[ラーメン橋]] - [[橋脚]]と[[主桁]]が剛に結合された骨組([[ラーメン (骨組)|ラーメン]])構造を用いた橋。ラーメンはドイツ語 Rahmen (鋼節骨組)に由来する{{sfn|浅井建爾|2001|pp=214-215}}。部材には軸力、せん断力と曲げモーメントが作用し、材料としてはコンクリートあるいは鋼が用いられる。構造力学の観点からは、ラーメン構造は力の釣り合い方程式の数より未知反力の数の方が多い[[不静定]]構造である。これにより過大な荷重によってある部材が大きく変形しても落橋は免れたり、橋脚上に支承がなく上部構造がずれ落ちたりすることがないため耐震性の高い構造と考えられている{{sfn|浅井建爾|2001|pp=214-215}}。{{-}}
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*[[File:Rigid frame bridge.png|thumb|ラーメン橋]][[ラーメン橋]] - [[橋脚]]と[[主桁]]が剛に結合された骨組([[ラーメン (骨組)|ラーメン]])構造を用いた橋。ラーメンはドイツ語 Rahmen (鋼節骨組)に由来する{{sfn|浅井建爾|2001|pp=214-215}}。部材には軸力、せん断力と曲げモーメントが作用し、材料としてはコンクリートあるいは鋼が用いられる。構造力学の観点からは、ラーメン構造は力のつりあい方程式の数より未知反力の数の方が多い[[不静定]]構造である。これにより過大な荷重によってある部材が大きく変形しても落橋は免れたり、橋脚上に支承がなく上部構造がずれ落ちたりすることがないため耐震性の高い構造と考えられている。あまり一般的ではなく高速道路を跨ぐなど、ごく一部でみられる形式{{sfn|浅井建爾|2001|pp=214-215}}。
[[File:Bridge-suspension.svg|thumb|吊橋]]
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*[[吊橋]] - [[ケーブル]]、[[ロープ]]など曲がりやすいが引張強度が大きい部材から桁あるいは床版を吊り下げた橋を呼ぶ。近代以降の大規模な吊橋は、両岸にケーブルを繋ぎ留める[[アンカーブロック]]やアンカレイジと呼ばれる構造とその間に(通常2本以上の)[[主塔]]を設け、その上に張り渡したメインケーブルから通行路となる桁を吊り下げる形式を採る。ケーブルには引張力、主塔には圧縮力が作用する。アンカレイジはケーブルに生じる引張力に対してその質量および底面の摩擦力によって抵抗する。なお、主塔とケーブルが接触する主塔頂部のサドルの形状を固定式とする場合、荷重の偏在によっては主塔に曲げ応力が生じる場合がある。ケーブルには高強度の鋼、主塔には鋼やコンクリートが主に用いられる。アンカレイジを用いず桁の両端でメインケーブルを固定する「自碇式吊橋」「自定式吊橋」という形式もあるが、橋桁に大きな圧縮力が働くので設計が複雑になる。床版をメインケーブルと一体化し、主塔を使わず橋台から直接吊り下げる「吊床版橋」というものもある。床版をそのまま通路とする「直路式」、桁を載せる「上路式」、上路式の派生として、床版と桁の両端を固定してアンカーブロックを不要とした「自碇式」がある。
[[File:SyachokyoVsTsuribashi.png|thumb|斜張橋と吊り橋]]
[[File:Bridge-fan-cable-stayed.svg|thumb|斜張橋]]
*[[吊り橋]] - [[ケーブル]]、[[ロープ]]など曲がりやすいが引張強度が大きい部材から桁あるいは床版を吊り下げた橋を呼ぶ。近代以降の大規模な吊橋は、両岸に大きな質量を持つ[[アンカーブロック]]やアンカレイジと呼ばれる[[橋台]]とその橋台の間に2本以上の[[主塔]]を設け、その間に張り渡したケーブルから通行路となる桁を吊り下げる形式を採る。このような吊橋では、桁および荷重の全ては、ケーブルおよびケーブルから下げられたハンガーが受け持つため、桁自体は通行路として橋の形状を保つ程度の剛性があれば十分なことから[[補剛桁]]と呼ばれる。ケーブルには引張力、主塔には圧縮力が作用する。アンカレイジはケーブルに生じる引張力に対してその質量および底面の摩擦力によって抵抗する。なお、主塔とケーブルが接触する主塔頂部のサドルの形状を固定式とする場合、荷重の偏在によっては主塔に曲げ応力が生じる場合があるので留意する。ケーブルには高強度の鋼、主塔には鋼やコンクリートが主に用いられる。橋台から床版を直接吊り下げる「吊床版橋」がある。アンカレイジを用いず桁の両端でケーブルを固定する「自碇式吊橋」「自定式吊橋」という形式もあるが、橋桁に大きな圧縮力が働くので設計が複雑になる。
*[[斜張橋]] - 吊橋の一種で、支点となる主塔から斜めに張ったケーブルで橋桁を吊ったもの{{sfn|浅井建爾|2001|pp=214-215}}。主塔上部から斜めに伸びた多数のケーブルが橋桁などの鉛直荷重を受け持つとともに、桁に対して圧縮力となる軸力を導入する。ケーブルには引張力が生じるため、鋼製。主塔には圧縮力がはたらき、桁には曲げモーメントと軸力が作用するため、コンクリートが用いられることが多いが、軟弱地盤の場合は主塔にも鋼構造が用いられる。また、多々良大橋のように、主塔の設置箇所の制限から、中央径間と側径間との延長のバランスが悪い場合、主塔に曲げ応力が生じるのを回避するため、単位長さ重量の大きいコンクリートと小さい鋼とを組み合わせた複合構造を用いることもある。ケーブルの張り方によって、主塔側面の異なった高さから斜め平行に張られる「ハープ」と主塔上部の一点から放射線状に張られる「ファン」の2つの形式があるほか、張る面を桁中央(道路の場合は中央分離帯)に寄せる1面吊り、桁側端に分離する2面吊り、1面に2条近接させる形式さまざまなバリエーションがある。<ref name = "橋 HASHI"/>。美観に優れることから、近年採用例が増えつつある{{sfn|浅井建爾|2001|pp=214-215}}。
*[[斜張橋]] - 吊橋の一種で、支点となる主塔から斜めに張ったケーブルで橋桁を吊ったもの{{sfn|浅井建爾|2001|pp=214-215}}。主塔上部から斜めに伸びた多数のケーブルが橋桁などの鉛直荷重を受け持つとともに、桁に対して圧縮力となる軸力を導入する。ケーブルには引張力が生じるため、鋼製。主塔には圧縮力がき、桁には曲げ[[モーメント]]と軸力が作用するため、コンクリートが用いられることが多いが、軟弱地盤の場合は主塔にも鋼構造が用いられる。また、主塔の設置箇所の制限から、中央径間と側径間との延長のバランスが悪い場合、主塔に曲げ応力が生じるのを回避するため、単位長さ重量の大きいコンクリートと小さい鋼とを組み合わせた複合構造を用いることもある。ケーブルの張り方によって、主塔側面の異なった高さから斜め平行に張られる「ハープ」と主塔上部の一点から放射線状に張られる「ファン」の2つの形式があるほか、張る面を桁中央(道路の場合は中央分離帯)に寄せる1面吊り、桁側端に分離する2面吊り、1面に2条近接させる形式など様々なバリエーションがある。<ref name = "橋 HASHI"/>。美観に優れることから、近年採用例が増えつつある{{sfn|浅井建爾|2001|pp=214-215}}。
*[[エクストラドーズド橋]] - 外ケーブルを用いたプレストレストコンクリート橋の一種。比較的高さの低い主塔から斜材(外ケーブル)により主桁を支持する構造。外ケーブルが構造断面の外側に飛び出していることから大偏心外ケーブル構造とも呼ばれる。外観は斜張橋に類似しているが、主桁の剛性が高く構造としては桁橋に近い。また、斜材ケーブルの角度が小さいことから、[[活荷重]]の影響によって斜材の張力変動が小さく疲労に対して有利であり、斜張橋に比べ斜材ケーブルの張力を高く取ることができる。さらに低い主塔と相まって、建設コストを低く抑えることができ、近年は鉄道、道路を問わず、採用例が増加している。
*[[エクストラドーズド橋]] - 外ケーブルを用いたプレストレストコンクリート橋の一種。比較的高さの低い主塔から斜材(外ケーブル)により主桁を支持する構造。外ケーブルが構造断面の外側に飛び出していることから大偏心外ケーブル構造とも呼ばれる。外観は斜張橋に類似しているが、主桁の剛性が高く構造としては桁橋に近い。また、斜材ケーブルの角度が小さいことから、[[活荷重]]の影響によ斜材の張力変動が小さく疲労に対して有利であり、斜張橋に比べ斜材ケーブルの張力を高く取ることができる。さらに低い主塔と相まって、建設コストを低く抑えることができ、近年は鉄道、道路を問わず、採用例が増加している。


=== 材料別 ===
=== 材料別 ===
主要構成部材の材料により、以下のような種類がある。鋼橋やコンクリート橋などは、昭和30年代頃から「永久橋」と呼ばれた<ref>{{PDFlink|[http://www.mlit.go.jp/common/001036084.pdf Ⅱ.道路の老朽化対策の本格実施に向けて]}}(国土交通省)</ref>
主要構成部材の材料により、以下のような種類がある。
* [[石橋]] - [[石材]]を用いた橋の総称<ref name=":0" />。古代から近代まで使われている、橋の建築材料。石材は圧縮力に対して強いが、引張力に対して弱いという特性を備えているので、主に[[アーチ橋]]で用いられる{{sfn|石井一郎|1987|p=87}}。一度造ると数百年や千年以上の耐久性があり、紀元前に造られた石橋が現存していて今でも普通に通行に使用されている例もある。
* [[鋼橋]] - 橋の上部構造に[[鋼]]を用いた橋。鋼はコンクリートに比べて[[比強度]]が高い、すなわち橋を軽くすることができるので、支間長の長い橋には鋼がよく使われる。

* [[コンクリート橋]] - 橋の上部構造がコンクリート製の橋。[[コンクリート]]は圧縮強度に比べて引張強度がおよそ 1/10 と低いため、引張応力を鋼材で負担する[[鉄筋コンクリート]]や、PC鋼材によりあらかじめ圧縮力を与え引張応力を打ち消す[[プレストレスト・コンクリート]](PC)を用いる。近年のコンクリート橋はアーチ橋やごく小規模なものを除き、ほとんどがPC橋である。
* [[木橋]] - [[木材]]を用いた橋。わずか数十年ほどで劣化してしまう素材。特に、濡れたり乾いたりを繰り返す箇所で腐敗が進む。木材で橋を作ってしまうと、数十年ごとに丸ごと作り直さなければならない状態に陥る。日本では手に入りやすい素材であり、橋の材料として古来用いられ現在でも[[人道橋]]など荷重強度が小さな橋を中心に架設例がある<ref name=":0" />。[[1990年代]]以降は、従来の無垢材に加えて[[集成材]]の利用も行われるようになりこれは以前の伝統的木橋と区別して「近代木橋」と呼ばれることもある。橋梁形式としては、桁橋、トラス橋、アーチ橋を中心に各種の形式がある。{{Efn|このほか鉄筋コンクリートや鋼材、[[繊維強化プラスチック]]などとの複合橋も架設されているが、それは[[複合橋]]で説明する。}}

* [[鋼橋]] - 上部構造に[[鋼]]([[スチール]])を用いた橋。鋼は[[比強度]]が高く、弾力性に富む<ref name=":0">{{Cite web|和書|url=http://www.pref.tokushima.jp/bridge/about/|title=橋の博物館とくしま 橋の種類・構成|accessdate=2018-02-10|publisher=徳島県道路整備課機能再生・管理担当}}</ref>。[[錆|発錆]]を防止するため[[塗装]]が必要<ref name=":0" />。塗装を怠ると錆で劣化が急速に進む。
* [[鉄橋]] - 上部構造に[[鉄]]を用いた橋。鋼(スチール)製の橋が登場する以前の鉄の橋が鉄橋であるが、後から登場した鋼橋も含めて漠然と「鉄橋」と呼ぶ習慣が残った。大正時代や昭和初期など[[鉄道橋]]は主に鉄橋(鋼橋)で造られたので、今でも「鉄橋」を「鉄道橋」とほぼ同義のように使う人が一部にいる。
* [[コンクリート橋]] - 橋の上部構造が[[コンクリート]]製の橋。コンクリートは圧縮強度に比べて引張強度がおよそ 1/10 と低く弱いため、引張応力を鋼材で負担する[[鉄筋コンクリート]]や、PC鋼材によりあらかじめ圧縮力を与え引張応力を打ち消す[[プレストレスト・コンクリート]](PC)を用いる。近年のコンクリート橋はアーチ橋やごく小規模なものを除き、ほとんどがPC橋である。
** [[鉄筋コンクリート橋]](RC橋)
** [[鉄筋コンクリート橋]](RC橋)
** [[プレストレスト・コンクリート橋|PC (Prestressed Concrete) 橋]]
** [[プレストレスト・コンクリート橋|PC (Prestressed Concrete) 橋]]
** PPC (Partialy Prestresssed Concrete) 橋 - PC橋のうち、ある程度の引張応力を許容する構造の橋。
** PPC (Partialy Prestresssed Concrete) 橋 - PC橋のうち、ある程度の引張応力を許容する構造の橋。
** PRC(プレストレスト鉄筋コンクリート)橋 - PPC橋のうち、ある程度のひび割れの発生を許容する構造の橋。日本において用いられる区分である。
** PRC(プレストレスト鉄筋コンクリート)橋 - PPC橋のうち、ある程度のひび割れの発生を許容する構造の橋。日本において用いられる区分である。
** 竹筋コンクリート橋(BRC橋) - 鉄筋の代わりに[[竹]]を用いた橋。竹材資源の豊富な東南アジア地域で見られるほか、鋼材が不足していた戦時中の日本でも架けられている
** 竹筋コンクリート橋(BRC橋) - 鉄筋の代わりに[[竹]]を用いた橋。竹材資源の豊富な東南アジア地域で見られるほか、鋼材が不足していた戦時中の日本でも架けられ
* [[舟橋]] - [[舟]](とロープと木の板)を材料とした橋。浮橋、[[浮体橋]]とも。多数の舟をロープや鎖で繋いで対岸まで並べ、その上に板を並べて簡易的な橋とするもの。古代から用いられている橋である。日本でも古代や平安時代には造られた。古代から世界各地で軍隊が遠征した先で河川を渡らなければならない場合、しばしばこの舟橋方式で橋を造った。速やかに架橋・撤去が可能だからである。現代でもアメリカ合衆国やノルウェイでは大規模な施工例がある。現代の軍隊でもこの舟橋が使われる(たとえば[[92式浮橋]])。日本では普段は見られなくなった。
* [[木橋]] - [[木材|木]]を用いた橋。橋の材料として古来から用いられており、現在でも人道橋など荷重強度が小さな橋を中心に架設例がある。特に1990年代以降は、従来の無垢材に加えて[[集成材]]の利用が進み、以前の伝統的木橋と区別して「近代木橋」と呼ばれることもある。このほか、鉄筋コンクリートや鋼材、[[繊維強化プラスチック]]などとの複合橋も架設されている。橋梁形式としては、桁橋、トラス橋、アーチ橋を中心に各種の形式がある。
* [[土橋]] - 木橋の橋面を丸太で作り、上を土でならした橋。簡素である。
* [[土橋]] - 木橋の橋面を丸太で作り、上を土でならした橋。簡素である。
* [[氷橋]] - 「すがばし」と読む。[[北海道]]開拓の初期から戦後にかけて見られた。凍結した川に丸太や枝などを敷いて雪を載せ、水をかけて凍らせる氷でできた橋。[[穂別町]]の例では、丸太を積載した[[馬橇]]が通行できる大型の橋も存在した<ref>{{Cite book |和書 |author=菅原昭二「十四歳の丸太馬搬」|year=2014 |title=穂別高齢者の語り聞き史(昭和編)大地を踏みしめて 上|page=p274 |publisher=穂別高齢者の語りを聞く会 }}</ref>。
* [[氷橋]] - 「すがばし」と読む。[[北海道]]開拓の初期から[[第二次世界大]]後にかけて見られた。凍結した川に丸太や枝などを敷いて雪を載せ、水をかけて凍らせる氷でできた橋。[[穂別町]]の例では、丸太を積載した[[馬橇]]が通行できる大型の橋も存在した<ref>{{Cite book |和書 |author=菅原昭二「十四歳の丸太馬搬」|year=2014 |title=穂別高齢者の語り聞き史(昭和編)大地を踏みしめて 上|page=p274 |publisher=穂別高齢者の語りを聞く会 }}</ref>。
* [[石橋]] - [[岩石|石]]を用いた橋。石材は材料の入手が容易であることから、古くから橋の材料として用いられてきた。他の材料の進歩により近代以降は採用事例が減っているが、耐食性が高いため現存する橋も多く、地域の文化的遺産として扱われる事例もある。石材は他の材料と異なり、個々の材料を相互に連結することができない。したがって、断面に引張応力の生じる桁橋には小規模な橋を除き採用事例は少なく、断面に絶えず圧縮力が作用するアーチ橋にその用途がほぼ限定される。
* [[複合橋]] - 異種材料や異種部材による[[合成構造]]あるいは[[混合構造]]を用いた橋。一般には、鋼部材とコンクリート部材を組み合わせた上部形式を指す。
* [[複合橋]] - 異種材料や異種部材による[[合成構造]]あるいは[[混合構造]]を用いた橋。一般には、鋼部材とコンクリート部材を組み合わせた上部形式を指す。
** 合成構造 - 古くから、床版を鉄筋コンクリート、主桁を鋼桁とした合成桁橋が古くから用いられてきたが、構造形式としてきわめて一般的であり、合成構造には含めないことが多い。近年の形式としては、
** 合成構造 - 古くから、床版を鉄筋コンクリート、主桁を鋼桁とした合成桁橋が古くから用いられてきたが、構造形式としてきわめて一般的であり、合成構造には含めないことが多い。近年の形式としては、
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*** 鋼複合トラス橋 - 上床版・下床版をコンクリートとし、鋼部材による斜材を組み合わせた[[トラス橋]]
*** 鋼複合トラス橋 - 上床版・下床版をコンクリートとし、鋼部材による斜材を組み合わせた[[トラス橋]]
** 混合構造としては、多径間の一部が鋼桁、他がコンクリート桁からなる橋などがある。[[鋼]]、[[コンクリート]]、[[木材|木]]、[[岩石|石]]の他に[[炭素繊維]]や[[ガラス繊維]]など比較的新しい材料を用いた複合橋も提案されている。
** 混合構造としては、多径間の一部が鋼桁、他がコンクリート桁からなる橋などがある。[[鋼]]、[[コンクリート]]、[[木材|木]]、[[岩石|石]]の他に[[炭素繊維]]や[[ガラス繊維]]など比較的新しい材料を用いた複合橋も提案されている。
※なお日本では、鋼橋やコンクリート橋などが[[昭和]]30年代頃から「永久橋」などと呼ばれた。出典:{{PDFlink|[https://www.mlit.go.jp/common/001036084.pdf 国土交通省「Ⅱ.道路の老朽化対策の本格実施に向けて」]}}。


=== 機能別 ===
=== 機能別 ===
橋はその果たす機能により様々な名称が用いられる。大きな区分として通過交通による分類、すなわちその橋が何を渡すものであるかが挙げられる。
橋はその果たす機能により様々な名称が用いられる。大きな区分として通過交通による分類、すなわちその橋が何を渡すものであるかが挙げられる。人車の交通に限らず物体の輸送用として、専用・兼用で用いられる事も多い。橋の下が水面でない物を、[[陸橋]]と呼ぶ
{| class="wikitable"
人車の交通に限らず物体の輸送用として、専用・兼用で用いられる事も多い。
|+用途による橋の呼称

! rowspan="2" |通過交通
{| class="wikitable" style="text-align:center; float: right ; margin-left: 0.5em" |
および総称
|+ 用途による橋の呼称
!道路
!歩道
!鉄道
|-
|-
|道路橋
!rowspan="2"|通過交通<br />および総称!!道路!!歩道!!鉄道
|人道橋
(歩道橋)
|[[鉄道橋]]
|-
|-
|川・谷・海を渡る
|道路橋||人道橋<br />(歩道橋)||[[鉄道橋]]
|橋・橋梁
|橋・人道橋
|橋梁
|-
|-
|道路を渡る
|川・谷・海を渡る||橋・橋梁||橋・人道橋||橋梁
|[[跨道橋]]
|[[横断歩道橋]]
|架道橋
|-
|-
|鉄道を渡る
|道路を渡る||[[跨道橋]]||[[横断歩道橋]]||架道橋
|[[跨線橋]]
|-
|跨線橋
|鉄道を渡る||[[跨線橋]]||跨線橋||線路橋
|線路橋
|}
|}
一般的な橋として、道路交通(自動車)を渡す'''道路橋'''、人を渡す'''人道橋'''(歩道橋)、列車を渡す'''鉄道橋'''などがあり、さらに何を渡る橋であるかによって前記の表に示す呼称が使い分けられる。なお、鉄道橋は鉄橋と略される場合もあるが、鉄または鋼を用いた橋と混同されることがある。
==== 陸上交通 ====
一般的な橋として、道路交通(自動車)を渡す'''道路橋'''、人を渡す'''人道橋'''(歩道橋)、列車を渡す'''鉄道橋'''などがあり、さらに何を渡る橋であるかによって右表に示す呼称が使い分けられる。


道路と鉄道の双方を渡す橋もあり、'''[[鉄道道路併用橋]]'''(併用橋)と呼ばれる。
道路と鉄道の双方を渡す橋もあり、'''[[鉄道道路併用橋]]'''(併用橋)と呼ばれる。
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== 保守・点検・防護 ==
==== 水上交通 ====
=== メンテナンス・老朽化問題と対策 ===
水路橋のうち、特に[[運河]]を立体交差させて[[河川舟運]]に用いる橋。ヨーロッパで多く見られる。
橋は例外なく屋外に設置され、気温や気象による自然環境の影響や、橋の上を通過する活荷重によって繰り返し応力が掛かる{{Sfn|五十畑弘|2019|p=191}}。これにより、コンクリート橋ではひび割れ・凍害、化学的侵入、摩耗、[[塩害]]、鉄筋の[[腐食]]や[[二酸化炭素]]による中性化、疲労などの劣化が生じる{{Sfn|五十畑弘|2019|p=191}}。また、鋼橋では特に[[溶接]]部の疲労や腐食も生じる{{Sfn|五十畑弘|2019|p=191}}。ひび割れに対しては樹脂やバテの注入、鋼板接着や[[炭素繊維]]による補強などが行われる{{Sfn|五十畑弘|2019|p=191}}。鋼橋では腐食に対しては[[サンドブラスト]]で古い塗膜を除去した上で再塗装をする、き裂がある場合にはその先端部に[[ストップホール]]を設けて進展を防ぐなどの方法で保守が行われる{{Sfn|五十畑弘|2019|p=193}}。


橋の点検は表面的な変状を目視点検し、場合によっては[[槌|ハンマー]]の打音などで手で触れることなどが行われる{{Sfn|五十畑弘|2019|p=188}}。こうした目視点検により、橋の[[舗装]]・[[高欄]]・排水装置・伸縮装置などの表面で分かる不具合から深部の不具合が疑われることがある{{Sfn|五十畑弘|2019|p=185}}。ある不具合が発見されれば、それを引き起こす原因となりうる不具合を推測する{{Sfn|五十畑弘|2019|p=185}}。目視点検を行いやすくするため、点検用の通路を設置する(小規模な橋の場合は仮設できるように足場を設置するための金具を設置する)、[[橋梁点検車]]で点検するなどの工夫が取られることがある{{Sfn|五十畑弘|2019|p=189}}。
現在、世界最長とされるのは[[ドイツ]]の[[マクデブルク]]にあるマクデブルク水路橋([[:de:Wasserstraßenkreuz Magdeburg]])で全長918m、[[エルベ川]]を跨いでハーフェル運河とミッテルラント運河を接続する。なお、ミッテルラント運河は[[ミンデン (ノルトライン=ヴェストファーレン)|ミンデン]]でも[[ヴェーザー川]]を渡っている。


一般に、劣化が軽度な状態で補修した方が、より劣化の進んだ状態で補修するよりも必要な費用が小さくなる{{Sfn|五十畑弘|2019|p=197}}。
==== 輸送用 ====
古代ローマの'''[[水道橋]]'''など、水利目的の水路橋が古くから建設、利用されてきた。現在は主に[[上水道]]用の'''水管橋'''<ref>[http://www.wsp.gr.jp/suikankyo.htm 水管橋] 日本水道鋼管協会</ref>が用いられる。


==== アメリカ合衆国 ====
その他、各種[[パイプライン輸送]]用の橋として'''ガス導管橋'''や石油パイプラインの橋が、港や工場で[[スクリュコンベア]]や気流輸送管による原材料・半製品の輸送が行われている。大規模な[[鉱山]]では鉱石運搬用[[ベルトコンベア]]が、道路や河川を横断する光景を目にする。
アメリカ合衆国では、1920年代以降に造られた橋梁をはじめとした近代的なインフラが[[1980年代]]に耐用年数を超え始め、使用に制限を加えざるを得ないなど社会問題化した。このため、積極的にインフラの老朽化対策が進められるようになった<ref>{{Cite web|和書|date= |url= https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h25/hakusho/h26/html/n1132000.html|title=社会インフラの維持管理をめぐる状況 「荒廃するアメリカ」とその後の取組み |publisher=国土交通省 |accessdate=2018-08-25}}</ref>。
また、[[電線路]]専用橋として[[多摩川大橋|多摩川専用橋]]がある。


=== 特殊な橋 ===
==== 日本 ====
[[ファイル:Car to inspect the bridge,Katori-city,Japan.jpg|サムネイル|右|橋の下まわりを点検するために開発された橋梁点検車。]]
[[File:Tower bridge London Twilight - November 2006.jpg|thumb|跳開橋 [[タワーブリッジ]]]]
1995年の[[兵庫県南部地震]]以降、耐震設計が見直され、橋の[[免震]]や[[制震]]に関する技術が開発されて耐震補強工事に活用されるようになった{{Sfn|五十畑弘|2019|p=195}}。地震後に橋が落下しないように、上部工と下部工でかかり長を確保することや、支承部の移動を制限する装置や地震のエネルギーを吸収する装置の設置、桁を相互に連結させる工事などが行われてきた{{Sfn|五十畑弘|2019|p=195}}。
[[File:Ponte Vecchio 001.jpg|thumb|家屋付きの橋 [[ヴェッキオ橋]]]]


日本では[[2020年代]]以降、[[高度成長期]]に建設された橋梁をはじめとした[[インフラストラクチャー]]の供用年数が50年を超え、前述の[[アメリカ合衆国]]同様に耐用年数が問題となる時期に差し掛かる<ref>{{Cite web|和書|date= |url=https://www.pwri.go.jp/caesar/overview/02-01.html |title= 橋を取り巻く交通環境と進行する高齢化|publisher= 国立研究開発法人 土木研究所|accessdate=2018-08-25}}</ref>ため、政府は2013年よりインフラの長寿命化計画を立案し、順次必要なメンテナンスを進めている<ref>{{Cite web|和書|date= 2013-11|url=https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/infra_roukyuuka/pdf/houbun.pdf |title=インフラ長寿命化基本計画 |publisher=インフラ老朽化対策の推進に関する関係省庁連絡会議 |accessdate=2018-08-25}}</ref>。限られた予算の中で長寿命化やメンテナンスを進めるため、橋が供用年数、劣化の程度、橋の重要度からメンテナンスの優先順位が定められる{{Sfn|五十畑弘|2019|p=196}}。
* [[可動橋]] - 河川上を船が通過するときに橋の一部が動くことで航路を確保している橋。架橋技術の進歩で桁下の空間が大きくとれるようになったので新規の架橋は少ない。形状によりさらに旋回橋、昇開橋、跳開橋、引込橋、等に分類される。
* [[運搬橋]] - 可動橋と同様、航路を確保するために考えられた形式。非常に高い位置に橋をかけ、そこからワイヤーで吊したゴンドラを行き来させることで人や荷物を対岸まで輸送する。現存数は非常に少ない。
* 浮橋 - 舟橋、[[浮体橋]]とも。鎖やロープで繋いだ舟を並べ、その上に橋桁を設置する。現在の日本ではあまり見られない形式だがアメリカ合衆国やノルウェイで大規模な施工例がある。速やかに架橋でき、いざというときには撤去も簡単なので軍事目的での利用も多い。
* [[クローバー橋]] - 中央部は通常の橋と同じく一本になっているが両端は二方向に分離し、上から見ると「 '''X''' 」のような形状の橋。[[釧路市]]にある[[旭跨線橋]](4車線路)、[[仙台市]]にある[[宮城野橋]](X橋。現在はy字型)、[[東京都]]・[[隅田川]]に架かる[[桜橋 (東京都)|桜橋]]が代表例。
* 家屋付きの橋 - 旧ロンドン橋、[[ヴェッキオ橋|ポンテ・ヴェッキオ(ベッキオ橋)]]
* 屋根付きの橋 - 橋の構造材の劣化速度を遅くする目的で覆いをかけたもの。
* [[橋上駅]] - [[鉄道駅]]の一種で、[[プラットホーム]]の上に駅舎があり、跨線橋と一体化しているもの。
* [[二層通路橋]]([[:en:Bridge#Double-decker bridge|Double-decker bridge]]) - 上下層で方向を別にしたり([[ジョージ・ワシントン・ブリッジ]]など)、道路と鉄道の併用にしたりするもの([[鉄道道路併用橋]])。
* [[鉄道道路併用橋]] - [[鉄道]]と[[道路]]が一つの橋を共用するもの。
* [[橋上店舗]] - 川に架かる橋の上が店舗になっているもの。日本に現存するものでは[[渋谷川]]の上にある[[東急百貨店]]東横店東館がその代表例である。
* [[橋上市場]] - [[岩手県]][[釜石市]]の[[鈴木東民]]市長の主導により、[[河川法]]の特例許可を受けて[[甲子川]](地元では大渡川と呼ばれた)に架かる大渡橋に並行する形で1958年に完成した全長 110 m 、全幅 13 m の市場。1965年の河川法改正により営利目的の河川占有が認められなくなり、市場内店舗は2003年1月5日に全店閉店、代替施設として建設された「駅前橋上市場 サン・フィッシュ釜石」へ移転し、その後解体された<ref>[[鎌田慧]]『反骨 鈴木東民の生涯』(講談社, 1989年)</ref><ref>[[サンデー毎日]](2003年3月2日号)「消えゆく光景・釜石橋上市場」</ref>。
* [[ループ橋]]
* [[門橋]] - [[陸軍]]が河を渡る際に使用。
* [[流れ橋]] - [[洪水]]の際に、橋桁が流される構造の橋。[[上津屋橋]]など。
* 八つ橋 - 公園施設などで池の上に折れ曲がる形(あるいは四方八方に延びる形)で設置される木製の橋。


地方の小規模な橋では、建設年の記録が残っていない例もある。人口減少が著しい地域([[過疎地域]])では、架け替えや補修に必要な財政負担に見合う通行者数や自動車交通量が今後見込めないため、管理する自治体が撤去を決断する橋も多い。[[国土交通省]]の2018年時点集計では、撤去・廃止が決まった橋は全国で137カ所ある<ref>[https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38035750R21C18A1EA4000/ 老朽で「廃橋」全国137ヵ所/改修断念、地方多く/人口減、利用頻度見極め]『日本経済新聞』朝刊2018年11月25日(6面)2018年11月29日閲覧。</ref>。
== 橋の長さ ==
工学的に橋の長さを議論する場合、橋全体の長さを表す「橋長」ではなく2つの「支承」間の距離である支間(しかん、span、スパン)を用い、特に最も長くなる事が多い中央支間の長さが問題とされる。[[高架橋]]のように支間長の短い橋を連続させれば橋長の長い橋は容易に造れるが、長い支間の橋を建設するには高度な技術が必要となるからである。


一方で、いつ、誰が設置したかを河川管理者(国や都道府県など)が把握していない「[[河川における管理者不明の橋|管理者不明橋]]」(「勝手橋」)が、日本全国の河川で多数発見されている<ref name="kattebashi">[https://www.yomiuri.co.jp/national/20211122-OYT1T50059/ 誰が設置したのか「勝手橋」…住民多数が利用でも、管理者不明のまま補修されず放置] 読売新聞 2021年11月22日</ref>。これらの橋は占用許可など法的手続きを経ないまま、河川管理者が定める基準を無視して設計・建造された可能性がある。迂回を嫌う地元住民の利用が多いとされるが、いずれも補修や点検が施されないまま放置されており、管理責任を曖昧なままにしておくことで、老朽化による崩落や、それに伴う事故や災害の拡大に繋がることが懸念されている<ref name="kattebashi" />。
== 記録 ==
=== 世界最長の橋 ===
* [[ポンチャートレイン湖コーズウェイ]]([[アメリカ合衆国]][[ルイジアナ州]][[ニューオリンズ]]/[[ポンチャートレイン湖]]) - 全長 38.4 [[キロメートル|km]] 。
* [[杭州湾海上大橋]]([[中華人民共和国]][[浙江省]]東部/[[杭州湾]]) - 海上橋として世界最長。海上区間は全長 36&nbsp;km 。[[上海市|上海]]と[[寧波]]を結ぶ高速道路のうち、杭州湾に建設。杭州湾跨海大橋ともいう。2007年6月26日に架設完了した。
* [[明石海峡大橋]]([[兵庫県]]) - 吊り橋として世界最長。全長 3,911 m{{sfn|浅井建爾|2001|p=224}}(中央支間長は 1,991 m で世界最長)
* [[関西国際空港連絡橋]]([[大阪府]]) - 鉄道車道併用トラス橋として世界最長{{sfn|浅井建爾|2001|p=224}}。全長 3,750 m 。
* [[ルースキー島連絡橋]] ([[ロシア連邦]]・東ボスフォル海峡) - 斜長橋として世界最長。 支間長1104m
* [[蓬莱橋 (静岡県)|蓬莱橋]]([[静岡県]][[島田市]]/[[大井川]]) - 木橋として世界最長。896 m 。[[ギネス・ワールド・レコーズ|ギネスブック]]に認定されている{{sfn|浅井建爾|2001|p=216}}。
* [[夢吊橋]]([[広島県]]) - 吊床版橋として世界最長。支間長 147.6 m 。
* [[瀬戸大橋]]([[岡山県]]・[[香川県]]) - 全長12.3 kmで、ギネスブックに「世界一長い道路鉄道併用橋」として認定されている。ただし、瀬戸大橋は[[南備讃瀬戸大橋]]や[[北備讃瀬戸大橋]]など6本の橋から成るものであり、ギネスではこれを1本の橋として認定している{{sfn|浅井建爾|2001|p=224}}。


=== 日本最長の橋 ===
==== イタリア ====
[[イタリア]]では、2018年に[[モランディ橋]]が崩壊した際、設計の不備が疑われたほかメンテナンスが追い付いていないことも問題となった。また、イタリア国内において2013年からの過去5年間に10カ所の高架橋が崩壊していたことも報道されている<ref>{{Cite web|和書|date= 2018-08-16|title= イタリア・高架橋崩落 過去5年間に10件|url=https://news.ntv.co.jp/category/international/401581|publisher= 日テレ24|accessdate=2018-08-25}}</ref>。
* [[東京湾アクアライン|アクアブリッジ]]([[千葉県]]) - 自動車の橋としては日本最長。4,384 m 。
* [[明石海峡大橋]](兵庫県) - (世界最長の橋を参照)
* [[多々羅大橋]](広島県・[[愛媛県]]) - [[斜張橋]]として日本最長(中央支間長 890 m)。[[本州四国連絡橋]]尾道・今治ルートに掛かる橋。
* [[関西国際空港連絡橋]](大阪府) - (世界最長の橋を参照)
* [[蓬莱橋 (静岡県)|蓬莱橋]](静岡県) - (世界最長の橋を参照)
* [[第一北上川橋梁]]([[岩手県]]) - [[東北新幹線]]の橋梁で、鉄道橋として日本最長{{sfn|浅井建爾|2001|p=224}}。3,868 m。
* [[長流川橋]]([[北海道]]) - 高速道路の橋で日本最長。1,773 m 。
* [[伊良部大橋]]([[沖縄県]])- 通行料無料の橋としては日本最長。3,540 m 。
* [[九重"夢"大吊橋]]([[大分県]]) - 歩行者専用の吊り橋として日本一の高さと長さ。高さ 173 m 、長さ 390 m 。


== 世界の著名な橋 ==
=== 橋桁の防護 ===
高さのある車両(高さのある貨物を積載した車両やクレーンを下ろし忘れた車両を含む)が橋桁にぶつからないようにするため橋の手前に'''橋桁防護工'''という頑丈なゲートが設置されることがある<ref name="hyou119">{{Cite book |和書 |year=2010 |author1=磯兼雄一郎|author2=井上孝司|title=標識と信号で広がる鉄の世界|page=119|publisher=秀和システム}}</ref>。橋桁防護工に表示された制限高を超える車両の通行をゲートで阻止するための設備である<ref name="hyou119" />。
=== 有史以前 ===
* [[天然橋]] - 天然の橋。[[雄橋]](日本・広島県)、プレヒシュ([[スイス]])、ロックブリッジ(アメリカ合衆国)が[[世界三大一覧#自然・地形|世界三大天然橋]]として有名。


なお、同じ目的で車両が踏切で空中の架線に引っかからないように制限高を表示して注意を促す道路の左右に渡した標識を踏切注意標という<ref>{{Cite book |和書 |year=2010 |author1=磯兼雄一郎|author2=井上孝司|title=標識と信号で広がる鉄の世界|page=117|publisher=秀和システム}}</ref>。
=== 古代 ===
* [[ポン・デュ・ガール]]([[フランス]]/ガルドン川) - ローマの水道橋。石造アーチ橋([[紀元前1世紀|紀元前19年頃]])
* 悪魔の橋([[スペイン]]・[[セゴビア]]) - ローマの水道橋。石造アーチ橋(紀元前)
* 悪魔の橋([[イギリス]]・[[ウェールズ]]) - 石造アーチ橋
* [[ヴァレンス水道橋]]([[トルコ]]・[[イスタンブール]]) - ローマの水道橋。石造アーチ橋([[4世紀]])
* [[安済橋|越州橋]](中華人民共和国・[[河北省]]) - 石造アーチ橋([[7世紀]])


=== 中世・近世 ===
== 記録を持った橋 ==
[[File:Mostar bridge.jpg|thumb|[[スタリ・モスト]]]]
;世界一高い橋

* [[ミヨー橋]](フランス/[[タルン川]]) - 世界一高い橋。斜張橋([[2004年]])
* [[魔橋]]([[スイス]]/シェーレネン渓谷) - 石造アーチ橋。[[アルプス山脈|アルプス]]越えの新規ルート開拓でヨーロッパの交通史で重要。「魔橋」または「悪魔の橋」 (Devil's bridge) は、他にも欧州各地に存在。
{{-}}
* [[盧溝橋]](中華人民共和国・[[河北省]]/[[永定河]]) - 石造アーチ橋([[1192年]])
[[File:Western Span of the San Francisco-Oakland Bay Bridge at dusk, seen from Yerba Buena Island.jpg|thumb|[[サンフランシスコ・オークランド・ベイブリッジ]]]]
* [[カレル橋]]([[チェコ]]・[[プラハ]]/[[ヴルタヴァ川]]) - 石造アーチ橋([[14世紀]])
;世界一 幅が広い橋
* [[ヴェッキオ橋|ポンテ・ヴェッキオ]]([[イタリア]]・[[フィレンツェ]]/[[アルノ川]]) - 石造アーチ橋(14世紀)
*[[サンフランシスコ・オークランド・ベイブリッジ]]([[アメリカ合衆国]][[カリフォルニア州]]の[[サンフランシスコ]]市 - [[オークランド (カリフォルニア州) |オークランド]]市間) デッキ部分の幅が総計で78.740メートルあり、自動車用の車線が10本および4.724メートル幅(15.5-ft)の自転車道および中央部の段差や[[パイロン]]なども含めてその幅になっている<ref>[https://www.guinnessworldrecords.com/world-records/69083-widest-bridge Guinness World Records, widest bridge.]</ref>。
* [[ソコルル・メフメト・パシャ橋]]([[ボスニア・ヘルツェゴビナ]]/[[ドリナ川]])- [[ミマール・スィナン]]の橋(16世紀)。『[[ドリナの橋]]』の舞台。
{{-}}
* [[スタリ・モスト]](ボスニア・ヘルツェゴビナ/[[ネレトヴァ川]])- ミマール・スィナンの門下生が手がけたとされる橋(1566年)。[[世界遺産]]。
;「世界最長」の歴史
* [[来遠橋]]([[ベトナム]]・[[クアンナム省]][[ホイアン]]/トゥボン川水路) - 日本人商人がかけたとされる橋(1593年)。世界遺産の一部。
* [[ハーバーブリッジ]]([[オーストラリア]]、[[シドニー]]) - 完成当時世界最長のシングルアーチ橋([[1932年]])

=== 近代~現代 ===
[[File:GoldenGateBridge-001.jpg|thumb|[[ゴールデン・ゲート・ブリッジ]]]]

* [[ウェストミンスター橋]]([[ロンドン]]/[[テムズ川]]) - 石造アーチ橋([[1750年]])
* [[アイアンブリッジ (橋)|アイアンブリッジ]](コールブルックデール橋)([[イギリス]]・[[アイアンブリッジ峡谷]]) - 世界初の鉄橋。アーチ橋([[1779年]])世界遺産に登録されている。
* [[ブルックリン橋]]([[ニューヨーク]]/[[イースト川]]) - 吊り橋([[1883年]])
* [[フォース鉄道橋]](イギリス/[[フォース入江]]) - トラス橋([[1890年]])
* [[ビスカヤ橋]]([[スペイン]]/[[ネルビオン川]])- 世界最古の[[運搬橋]](1893年)。[[世界遺産]]。
* [[タワーブリッジ]](ロンドン/テムズ川) - 近代吊り橋の原点。吊り橋([[1894年]])
* [[ハーバーブリッジ]]([[シドニー]]) - 完成当時世界最長のシングルアーチ橋([[1932年]])
* [[ゴールデン・ゲート・ブリッジ]]([[サンフランシスコ]]) - サンフランシスコのランドマークとなっている吊り橋([[1937年]])
* [[ノルマンディー橋]]([[フランス]]/[[セーヌ川]]) - 完成当時世界最長の斜張橋([[1995年]])
* [[ノルマンディー橋]]([[フランス]]/[[セーヌ川]]) - 完成当時世界最長の斜張橋([[1995年]])
[[File:Golden gate2.jpg|thumb|[[ゴールデン・ゲート・ブリッジ]]]]
* [[アレクサンドル3世橋]](フランス/セーヌ川) - [[露仏同盟]]締結を記念して、フランスが国家の威信をかけて建設した豪華な橋。橋名はロシア皇帝の名前。
* [[ゴールデン・ゲート・ブリッジ]]([[サンフランシスコ]]) - [[1937年]]完成。当橋は1937年の完成から27年に渡り「スパン世界一」であった橋であり、「スパン世界一 記録保持期間が最も長かった吊橋」である。(なおサンフランシスコのランドマークとなっており「世界で最も写真撮影された橋」とされている。)
* [[ミヨー橋]](フランス/[[タルン川]]) - 世界一高い橋。斜張橋([[2004年]])
{{-}}
;現在の「世界最長」の橋
{{See also|橋の一覧 (長さ順)}}
* [[丹陽-昆山特大橋]]([[中華人民共和国]][[江蘇省]][[丹陽市]]-[[崑山市]]間) - 陸上の高架橋として世界最長。[[ギネス世界記録|ギネスブック]]認定<ref>{{Cite web |date=2011-06|url=https://guinnessworldrecords.jp/world-records/longest-bridge|title=Longest bridge|publisher=ギネス・ワールド・レコーズ|accessdate=2020-02-20}}</ref>。全長164.8&nbsp;[[キロメートル|km]]で、うち9&nbsp;kmの水上区間を含む。
* [[バーンナー高速道路]]([[タイ王国|タイ]][[バンコク]][[バーンナー区]]-[[チョンブリー県]]間) - 道路橋として世界最長。ギネスブック認定<ref>{{Cite web |date=2000-07|url=https://guinnessworldrecords.jp/world-records/longest-road-bridge/|title=Longest road bridge|publisher=ギネス・ワールド・レコーズ|accessdate=2020-02-20}}</ref>。全長54&nbsp;km。
* [[港珠澳大橋]](中華人民共和国[[広東省]][[珠海市]]と[[香港]][[新界]][[離島区]][[ランタオ島]]及び[[マカオ]][[花地瑪堂区]]間)- 海上橋として世界最長。トンネル部分を含み49.968&nbsp;km。
** 上海舟山周湖橋(中華人民共和国[[上海市]]-[[浙江省]][[舟山市]]-浙江省[[寧波市]]間) - 建設中の道路鉄道併用橋。完成すると海上橋として世界最長となる(全長130&nbsp;km)<ref>{{Cite web|和書|url=http://tech.ifeng.com/discovery/detail_2013_07/30/28066473_0.shtml|date=2013-07-30|accessdate=2020-02-20|publisher=凤凰新媒体|title=舟山规划130公里通道连上海_科技频道_凤凰网}}</ref>。
* [[ポンチャートレイン湖コーズウェイ]]([[アメリカ合衆国]][[ルイジアナ州]][[ニューオリンズ]]/[[ポンチャートレイン湖]]) - 全長 38.4&nbsp;km 。
{{Double image aside|right|1915 Çanakkale Bridge 20220327.jpg|200|Akashi Bridge.JPG|200|[[チャナッカレ1915橋]]|[[明石海峡大橋]]}}
* [[チャナッカレ1915橋]] - [[トルコ共和国]]の[[ダーダネルス海峡]]に掛かる吊橋で、2022年3月18日に完成し、現在「主径間が世界最長」の吊橋。
** [[明石海峡大橋]]([[兵庫県]]) - 全長 3,911 m{{sfn|浅井建爾|2001|p=224}}(中央支間長  1,991&nbsp;m は当時世界最長だったが、上述のチャナッカレ1915橋に抜かれ、「主径間世界最長」の座は譲った。)
* [[関西国際空港連絡橋]]([[大阪府]]) - 鉄道車道併用トラス橋として世界最長{{sfn|浅井建爾|2001|p=224}}。全長 3,750&nbsp;m 。
* [[ルースキー島連絡橋]] ([[ロシア連邦]]・東ボスフォル海峡) - 斜張橋として世界最長。 支間長1,104&nbsp;m
* [[蓬萊橋 (大井川)|蓬萊橋]]([[静岡県]][[島田市]]/[[大井川]]) - 木橋として世界最長。896&nbsp;m 。ギネスブックに認定されている{{sfn|浅井建爾|2001|p=216}}。
* [[夢吊橋]]([[広島県]]) - 吊床版橋として世界最長。支間長 147.6&nbsp;m 。
* [[瀬戸大橋]]([[岡山県]]・[[香川県]]) - 全長12.3&nbsp;kmで、ギネスブックに「世界一長い道路鉄道併用橋」として認定されている。ただし、瀬戸大橋は[[南備讃瀬戸大橋]]や[[北備讃瀬戸大橋]]など6本の橋から成るものであり、ギネスではこれを1本の橋として認定している{{sfn|浅井建爾|2001|p=224}}。


;「日本最長」の橋
=== 崩落した橋 ===
* [[東京湾アクアライン|アクアブリッジ]]([[千葉県]]) - 自動車の橋としては日本最長。4,384&nbsp;m 。
* [[テイ橋]](イギリス)- [[1879年]][[12月28日]]、強風による風圧(風荷重)のため崩落。
* [[明石海峡大橋]](兵庫県) - (世界最長の橋を参照)
* [[タコマナローズ橋]](アメリカ合衆国)- [[1940年]][[11月7日]]、風による橋の共振のため崩落。
* [[多々羅大橋]](広島県・[[愛媛県]]) - 斜張橋として日本最長(中央支間長 890&nbsp;m)。[[本州四国連絡橋]]尾道・今治ルートに掛かる橋。
* [[シルバー橋]](アメリカ合衆国)- [[1967年]]、吊り橋の吊り部材が金属疲労で破断して崩落。
* [[広島空港大橋]]([[広島県]][[三原市]]) - 最大支間長380.0&nbsp;mの日本最長のアーチ橋<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/97/hiroshima-airport-bridge.html|title=広島空港大橋(ひろしまくうこうおおはし)|publisher=[[広島県]]土木建築局道路企画課|date=2015-03-11|accessdate=2018-03-12}}</ref>。
* [[マイアナス橋]](アメリカ合衆国)- [[1983年]]、疲労ひび割れによる鋼桁の破断により崩落。
* [[関西国際空港連絡橋]](大阪府) - (世界最長の橋を参照)
* [[聖水大橋]]([[大韓民国]])- [[1994年]][[10月21日]]、施工時の溶接不良が原因で崩落。
* [[蓬萊橋 (大井川)|蓬萊橋]](静岡県) - (世界最長の橋を参照)
* [[KBブリッジ]]([[パラオ]])- [[1996年]][[9月26日]]、手抜き工事による強度不足で崩落。
* [[第一北上川橋梁]]([[岩手県]]) - [[東北新幹線]]の橋梁で、鉄道橋として日本最長{{sfn|浅井建爾|2001|p=224}}。3,868 m。

* [[長流川橋]]([[北海道]]) - 高速道路の橋で日本最長。1,773&nbsp;m 。
=== 日本の主な橋 ===
* [[伊良部大橋]]([[沖縄県]])- 通行料無料の橋としては日本最長。3,540&nbsp;m 。
==== 伝統的な橋 ====
* [[箱根西麓・三島大吊橋]](静岡県)- 歩行者専用の吊橋として日本最長。 400&nbsp;m 。
[[File:Tofukuji Tsutenkyo.jpg|thumb|[[東福寺#境内|通天橋]]]]
[[File:20100724 Iwakuni 5235.jpg|thumb|[[錦帯橋]]]]
[[File:Togetsukyo in Kyoto Arashiyama.jpg|thumb|[[渡月橋]]]]

伝統があるか、または伝統的な構造を有する橋。
*'''街道筋の橋'''
*:江戸時代まで、街道筋といえども橋は多くなく、大きな川ほど[[渡し船]]や[[川越 (渡河)|川越]](かわごし)を使って越えるものが多かった。架橋の少なかった理由は維持経費などの関係と、また防衛上の理由も大きい。
**東海道の橋
*** [[日本橋 (東京都中央区)|日本橋]](東京都[[中央区 (東京都)|中央区]]) - [[東海道]]の起点とした経緯から[[重要文化財]]に指定されている。
***帷子橋(かたびらばし; 神奈川県[[横浜市]]) - [[程ヶ谷宿]]付近の橋。相鉄[[天王町駅]]前に橋の旧跡が遺る。
***大鋸橋(だいぎりばし; 神奈川県[[藤沢市]]) - 江ノ島参詣の起点であった。
***大池橋(静岡県[[掛川市]]) - [[秋葉山本宮秋葉神社|秋葉神社]]に至る秋葉道への分岐点。橋の西詰には[[常夜燈]]が灯り、旅人を迎えたという。
*** [[豊橋 (橋)|豊橋]](愛知県[[豊橋市]]) - 江戸幕府の管理下にある天下橋であった。[[吉田大橋]]も参照。
*** [[矢作橋]](愛知県[[岡崎市]]) - [[岡崎宿]]上手に架けられた東海道の橋。江戸時代には日本最長の大橋であった。
***[[瀬田の唐橋]](滋賀県[[大津市]]) - [[壬申の乱]]の決戦場になったと伝える、交通の要衝であり日本三古橋のひとつ。
*** [[三条大橋]]([[京都市]]) - 東海道と[[中山道]]の終点。
** [[千住大橋]](東京都[[荒川区]]/[[足立区]]) - [[日光街道]]をはじめ江戸から東・北への玄関口を担っていた大橋。
*'''特徴的な姿でよく知られた橋'''
** [[猿橋]](山梨県[[大月市]])- [[相模川|桂川]] 橋脚を使わず刎木で支持される肘木けた式橋。隣に鋼製橋が架けられる(1932年)まで現役。現在は史跡として保存されている。
** [[渡月橋]]([[京都市]]) - 9世紀の架橋になる、京都[[嵐山]]の著名な橋。
** [[東福寺#境内|通天橋]](京都市) - 寺院([[東福寺]])の渡り廊下が川をまたぐ例。屋根付の木造橋。
** [[木の根橋]]([[兵庫県]][[丹波市]])- 天然の[[ケヤキ]]の木の根が約6mの川を渡っている。樹齢は推定約1,000年。
** [[錦帯橋]](山口県[[岩国市]]) - [[錦川]]に架かる 5連アーチ木橋。
** [[御幸の橋]](愛媛県[[大洲市]](旧[[河辺村 (愛媛県)|河辺村]]))- 神社の参道に架かる[[屋根付橋]]。[[1773年]]建造の愛媛県指定民俗文化財。
** [[眼鏡橋 (長崎市)|眼鏡橋]]([[長崎市]]) - 2連のアーチが印象的な石橋。観光名所になっている。
** [[通潤橋]](熊本県[[山都町]]) - 日本では珍しい巨大な石造アーチ水道橋。[[重要文化財]]に指定されている。
** [[愛本橋]](旧[[宇奈月町]]) - かつては全長63mの[[刎橋]]であったため、錦帯橋、猿橋とともに日本三奇橋の1つといわれていた。
*'''その他'''
**日本三古橋 - いずれも近畿にあり、8世紀以前の架橋とされる。
***[[瀬田の唐橋]](滋賀県[[大津市]])
***[[宇治橋 (宇治市)|宇治橋]](京都府[[宇治市]])
***[[山崎橋]](京都府[[八幡市]]/[[大山崎町]])
** [[かずら橋]]([[徳島県]]の山間部各地) - 植物([[サルナシ]])のつるで架けられた吊り橋。祖谷のかずら橋は[[重要有形民俗文化財]]に指定されている。
** [[上津屋橋]](京都府[[八幡市]]/[[久御山町]]) - 356mの木橋。増水時には橋桁が分割され流れに身を任せる。通称は'''流れ橋'''。
**[[真間の継橋]](千葉県[[市川市]]) - [[万葉集]]に歌われる古い橋で、葦原の砂洲を縫うようにいくつもの木橋を継ぎ架けたものであった。原型はとどめないが、住宅街の中に現存。

==== 近代的な橋 ====
<!--各項目ごとに五十音順で-->
近代以降に近代的な技術を使って新設された橋。
*'''吊橋'''
** [[南備讃瀬戸大橋]](香川県坂出市) - 吊橋(補剛トラス部支間長1,100m)橋長1,723m、1988年竣工
** [[レインボーブリッジ]](東京都) - 吊橋(補剛トラス部支間長562m)橋長798m、1993年竣工
**[[若戸大橋]](北九州市) - 吊橋(補剛トラス部支間長367m)橋長627m、1962年竣工
*'''斜張橋'''
** [[新尾道大橋]](広島県・[[しまなみ海道]]) - 連続鋼箱桁斜張橋(支間長215m)橋長546m
** [[天保山大橋 (大阪府)|天保山大橋]](大阪市) - 斜張橋(支間長350m)橋長640m
** [[名港中央大橋]](名古屋市) - 鋼斜張橋(支間長590m)橋長1,170m
** [[横浜ベイブリッジ]](横浜市) - トラス斜張橋(支間長460m)橋長860m
** [[東神戸大橋]](神戸市) - トラス斜張橋(支間長485m)橋長885m
** [[新湊大橋]]([[射水市]]) - トラス斜張橋(支間長360m)橋長600m
*'''トラス橋'''
** [[出島橋]](長崎市)- 現役最古の鉄製道路橋
** [[港大橋]](大阪市) - 大阪港の入り口に架かる橋(最大支間長510m)。トラス橋としては世界三位の支間長を誇る。
** [[渡良瀬橋]]([[足利市]]) - [[森高千里]]の曲の舞台となった橋。
** [[青戸の大橋]]([[福井県]][[おおい町]])-[[若狭湾]]最大の海上橋。
*'''アーチ橋'''
** [[萬代橋]](新潟県[[新潟市]]/[[信濃川]]) - [[本州]][[日本海]]側の道路の起点でもある。[[重要文化財]]に指定されている。
** [[神戸大橋]](神戸市) - [[鋼橋|ダブルデッキアーチ型鋼橋]]。夜間は[[ライトアップ]]される。
** [[新木津川大橋]](大阪市)- アーチ橋として日本最長。
** [[城ケ倉大橋]](青森市)- 橋長360mを誇る有数の上路式アーチ橋。 渓谷に架橋されており、地上122mの高さにある。
*'''ループ橋'''
** [[奥出雲おろちループ]](島根県[[奥出雲町]])
** [[河津七滝ループ橋]](静岡県[[河津町]])
** [[音戸大橋]](広島県[[呉市]])
** [[天草瀬戸大橋]](熊本県[[天草市]])

==== その他様々な橋 ====
* [[旭跨線橋]](北海道[[釧路市]]) - 国内最大規模のクローバー橋。通常クローバー橋は橋脚への負荷が大きいため人道橋が多いが、旭跨線橋は自動車道が片側2車線ある4車線路を有しており世界的にも例がない。完成当時は世界最大であった。
* [[小田原ブルーウェイブリッジ]](神奈川県)- 世界初のエクストラドーズド橋。
* [[浜名大橋]](静岡県) - 張出架設で施工された建設当時世界最大の支間長を誇ったPC桁橋。
* [[犬山橋]]([[犬山市]]) - [[2000年]][[3月27日]]まで道路橋の中央を[[線路 (鉄道)|線路]]([[路面電車]]のではなく、れっきとした鉄道の)が通る、珍しい鉄道道路併用橋だった(現在は鉄道専用橋)。
* [[トゥインクル (橋)|トゥインクル]]揖斐川橋・木曽川橋([[三重県]][[桑名市]]) - 世界初のPC・鋼[[複合構造]][[エクストラドーズド橋]]。[[伊勢湾岸自動車道]]の橋梁。
* [[ヴィーナスブリッジ]]([[神戸市]]) - 8の字型螺旋橋。夜景がすばらしい。
* [[沈下橋]] - 潜水橋、潜り橋、潜流橋などともいう。沈下橋は[[四国]]/[[四万十川]]流域で、潜水橋は徳島県/[[吉野川]]などで使われる呼称。増水時には水に沈む。[[ハワイ]]の[[真珠湾]]には軍艦通行時に沈む橋がある。橋を利用するものは、その間待機する。
* [[天草五橋]](熊本県) - 日本のマイカーエイジが始まる時代に近代的な橋を先駆け的に作り、テストとして、種々の種類の橋を作った。有料道路から予定より早く無料になった。離島天草の生活も変わった。
**一号橋([[天門橋]]) 全長:502m 工法:連続トラス 二号橋(大矢野橋) 全長:249m 工法:ランガートラス 三号橋(中の橋) 全長:361m 工法:PCラーメン 四号橋(前島橋) 全長:520m 工法:PCラーメン 五号橋(松島橋) 全長:178m 工法:パイプアーチ
* [[大甲橋]](熊本市)- 天井川の[[白川 (熊本県)|白川]]に架かっているが、昭和28年の白川洪水([[昭和28年西日本水害]])の濁流に耐えた。
* [[生地中橋]](いくじなかばし) - [[黒部市]]生地の黒部漁港に架かる可動橋。昭和期に黒部漁港拡張のために動力昇降式可動橋となり、後に現在の旋回式可動橋に架け替えられた。これは日本では最初であり、世界でも珍しい。

==== 崩落した橋 ====
* [[永代橋]](江戸)- [[1807年]][[8月19日]]、[[富岡八幡宮]]の祭りで人が集中、荷重に耐えられなくなり崩落。
* [[海門橋]]([[茨城県]][[ひたちなか市]]・[[大洗町]])- 初代([[1896年]])は水害で、2代目([[1926年]])は腐食で、3代目([[1938年]])は施工ミスと水害で落橋。

== 文化 ==
古来より橋は人の流れの中継点となり、文化の要素を生み出してきた。

=== 歌に登場する橋 ===
*「[[アヴィニョン]]の橋の上で」([[:fr:Sur le pont d'Avignon]]) - [[フランス]]の童謡
*「[[明日に架ける橋]]」 - [[サイモン&ガーファンクル]]
*「橋」 - [[岩崎宏美]]
*「[[愛染橋]]」 - [[山口百恵]]、[[中森明菜]]
*「[[渡良瀬橋 (曲)|渡良瀬橋]]」 - [[森高千里]]

=== 伝承・伝説に登場する橋 ===
* かささぎ橋 - [[七夕|七夕伝説]]
* 天の浮き橋 - [[出雲神話]]で、『[[古事記]]』に記述がある。イザナギノミコトとイザナミノミコトの天地創造がなされた所。
* [[因幡の白兎]] - 出雲神話で、『古事記』に記述がある。兎が鮫をだまし、海面に並ばせて背中の上を渡る。
* 石橋 - 能[[石橋 (能)|石橋]]に登場する。浄土にかかる橋。
* [[一条戻橋]] - [[渡辺綱]]の鬼退治
* [[五条大橋]] - [[武蔵坊弁慶|弁慶]]と[[源義経|牛若丸]]

=== 小説・随想・評論に登場する橋 ===
* [[保田与重郎]] - 文芸評論『日本の橋』
* [[三島由紀夫]] - 短編小説『[[橋づくし]]』
* [[イヴォ・アンドリッチ]](ユーゴスラビア)- 長編小説『[[ドリナの橋]]』
* [[ソーントン・ワイルダー]](アメリカ)- 小説『サン・ルイ・レイの橋』

=== 映画・放送番組などに登場する橋 ===
*『[[君の名は]]』ラジオドラマ・映画など:[[数寄屋橋]]でのすれ違いを描く
*「[[ポンヌフの恋人]]」 - フランス映画。[[ポンヌフ]]はパリ市内[[セーヌ川]]に架かる橋。
*「[[戦場に架ける橋]]」 - イギリス映画。[[クワイ川]]マーチが有名。
*「[[レマゲン鉄橋]]」 - アメリカ映画、第二次世界大戦欧州西部戦線におけるライン川のルーデンドルフ鉄橋をめぐる攻防戦を描いた作品。
*「[[遠すぎた橋]]」 - アメリカ映画、第二次世界大戦欧州西部戦線におけるオランダのアーンエム橋をめぐる攻防戦を描いた作品。
* 橋(1959年/ベルンハルト・ヴィッキ監督) - 第二大戦末期を舞台に橋梁を守るドイツ少年兵達の悲哀を描いた作品。
*「[[哀愁]]」 - アメリカ映画、第二次世界大戦に巻き込まれた男女の悲恋を描いた作品。原題は「Waterloo Bridge」である。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
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=== 注釈 ===
{{Reflist}}
<references group="注釈"/>
=== 出典 ===
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== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
* {{Cite book|和書|ref=harv|author=石井一郎|title=土木工学概論|series=土木教程選書|date=1987-10-30|year=1987|publisher=鹿島出版会|ISBN=4-306-02222-6}}
* {{Cite book |和書 |author=浅井建爾 |edition= 初版|date=2001-11-10 |title=道と路がわかる辞典 |publisher=[[日本実業出版社]] |isbn=4-534-03315-X |ref=harv}}
* {{Cite book |和書 |author=浅井建爾 |edition= 初版|date=2001-11-10 |title=道と路がわかる辞典 |publisher=[[日本実業出版社]] |isbn=4-534-03315-X |ref=harv}}
* {{Cite book|和書|ref=harv|author=藤原稔|title=写真で見る橋の構造形式 -道路橋の保全のために-|date=2010-07-20|year=2010|publisher=技報堂|ISBN=978-4-7655-1772-0}}
* [[鈴木理生]]『江戸の橋』三省堂 ISBN 4-385-36261-0
* {{Cite book|和書|author=武部健一 |title=道路の日本史 |edition= |date=2015-05-25 |publisher=[[中央公論新社]] |series=中公新書 |isbn=978-4-12-102321-6 |ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author=武部健一 |title=道路の日本史 |edition= |date=2015-05-25 |publisher=[[中央公論新社]] |series=中公新書 |isbn=978-4-12-102321-6 |ref=harv}}
* {{Cite book|和書|title=図解入門 よくわかる「橋」の科学と技術|date=2019-07-01|year=2019|publisher=秀和システム|ref=harv|author=五十畑弘}}
<!--*橋の資料としては、日本の場合、製作、管理している団体の橋梁台帳が参考になる。-->


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
{{Commons&cat|Bridge|Bridges}}
{{Wiktionary|橋}}
* [[:Category:橋画像|橋の画像一覧]]
* [[:Category:橋画像|橋の画像一覧]]
* [[陸橋]]
* [[鉄道橋]]
* [[横断歩道橋]]
* [[土木工学]] - 橋梁工学
* [[土木工学]] - 橋梁工学
* [[応用力学]] - [[構造力学]]
* [[応用力学]] - [[構造力学]]
* [[アーチ橋]]
* [[ラーメン橋]]
* [[橋の一覧]]
* [[橋の一覧]]
** [[日本の橋一覧]]
** [[日本の橋一覧]]
* [[橋の一覧 (長さ順)]]
* [[橋の一覧 (長さ順)]]
* [[吊り橋の一覧 (長さ順)]]
* {{ill2|橋の崩落一覧|en|List of bridge failures}}
* [[橋]]
* [[支間長順の吊の一覧]]
* [[洗い越し]]
* [[洗い越し]]
* [[橋名板]]
* [[橋名板]]
* {{ill2|Fischbauchträger|de|Fischbauchträger}}、{{ill2|レンズトラス橋|de|Linsenträger}}


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
{{Sisterlinks
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|b=no|s=no|n=no|v=no
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}}
* [http://www.kajima.co.jp/gallery/const_museum/hashi/index.html 鹿島建設建築博物館の橋のホームページ]
* [http://www.kajima.co.jp/gallery/const_museum/hashi/index.html 鹿島建設建築博物館の橋のホームページ]
* [http://www.kojima-cci.or.jp/ftown/bridge/top.html 倉敷市瀬戸大橋架橋記念館]
* [http://www.kojima-cci.or.jp/ftown/bridge/top.html 倉敷市瀬戸大橋架橋記念館]
376行目: 274行目:
* [http://www.jasbc.or.jp/ 社団法人日本橋梁建設協会]
* [http://www.jasbc.or.jp/ 社団法人日本橋梁建設協会]
* [{{NDLDC|898142/160}} 「鉄橋の始」:石井研堂『明治事物起原』(国会図書館・近代デジタルライブラリー)]
* [{{NDLDC|898142/160}} 「鉄橋の始」:石井研堂『明治事物起原』(国会図書館・近代デジタルライブラリー)]
* {{Kotobank|橋(はし)}}
* [https://www.youtube.com/watch?v=cKk6BtvxWOs 橋造りの技術を訪ねて] - 『[[サイエンスチャンネル]]』([[科学技術振興機構]])YouTube内公式アカウントより



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2024年12月29日 (日) 18:23時点における最新版

トルコイスタンブールボスポラス大橋

(はし、: bridge)は、地面が下がった場所や何らかの障害(など)を越えて、「みち」(路、道) のたぐい(通路道路鉄道など)を通す構築物である[1]。工学上は橋梁 (きょうりょう) という[2]

概説

[編集]

橋というのは、何らかの障害を越えて、や道を通す構築物である。橋が通す「路」のたぐいには、道路鉄道のほか水路もある[2]。橋が越える障害には、河川湖沼海峡運河低地などのほか、他の交通路(他の鉄道や他の道路類)や他の構造物など、さまざまなものがある[2]

歴史

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古代の橋

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紀元前4000年(紀元前40世紀)頃のメソポタミア文明では石造アーチ橋が架けられている。紀元前2200年頃、バビロンではユーフラテス川に長さ 200 mレンガ橋が架けられた。

ポン・デュ・ガール。古代ローマ帝国水路橋。西暦50年ころに建造。ガルドン川にかけられており、当時のガリアの地、現在のフランスガール県ニームあたりに位置する。

なおアーチ橋の架橋技術は、古代メソポタミア地方で発祥した技術が、世界に伝播して西洋東洋それぞれ独自に発展したとする研究が発表されている[3]

古代ローマ帝国は技術力や軍事力に優れ、地中海世界ガリアの地で支配地を広げ巨大な帝国となるにともなって、物資運搬(ロジスティクス兵站)、軍が戦地へ移動する速度、水の供給、などの戦略的な重要さの理解も深まり、道路網と水道網(水路網)も積極的・戦略的に整備した結果、多数の橋が架けられ、架橋技術も大きく進歩した。現存する古代ローマの水道橋は驚くべき精度を持っている。

なおローマ教皇は英語で「ポープ」と呼ばれるが、この「Pope」の正式名称である「最高司教:Pontifex maximus」の前半部は「橋:Ponti」と「つくる:fex」から成り立っている。この名前が示すように、初期キリスト教の時代(古代ローマ時代)には橋を架けることは聖職者の仕事(聖職者が主導して行う仕事)でもあった。中国や日本でも橋は仏教僧侶が(主導して)架けることが多かったのである[4]

日本での記録に残っている最古の橋は、『日本書紀』によると景行天皇の時代に現在の大牟田市にあった「御木のさ小橋」(みきのさおはし)である。巨大な倒木による丸木橋とされている(ただし大きさに誇張がある。詳細は巨樹#伝説上の巨樹を参照)。人工の橋では同じく『日本書紀』によると324年仁徳天皇14年)に猪甘津橋(いかいつのはし)が架けられたのが最古とされている[5][6](現在の大阪市にあたる場所にあったと推定されている)。また、624年推古天皇32年)に道昭が京都の宇治川に宇治橋を、726年神亀3年)には行基山崎橋を架けるなど、古くは僧侶が橋を架けたことが知られている[6]。これは僧侶が遣隋使遣唐使として中国に渡り技術を学び独自の高度な知識を持っていたことや、その知識を使って庶民の救済の一環として土木事業を指導したことによる。

中世ヨーロッパの橋

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中世でも、中規模程度の石造りのアーチ橋は造られ続けていた。戦乱の続いた時代では橋は戦略上重要な拠点となるため、守備用の塔が付属して建てられたり、戦時に敵の進軍を妨害するため簡単に壊せるようになっていたりする橋も多い。

ルネサンス期になると扁平アーチが開発され、軽快な石橋が建設されるようになった。

中世・近世日本の橋

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鎌倉時代、それ以前と同様に僧侶の勧進活動の1つとして、重源による瀬田橋忍性による宇治橋の再建などが行われた。これは人々の労苦を救うとともに架橋を善行の1つとして挙げた福田思想の影響によるところが大きいとされている。

戦国時代武将たちは、戦略・戦術上重要である築城に必要な土木技術を向上させ、大きな集団を組織・運営する能力もあり、大工を一時的に雇うだけでなく、土木技術を担う職人集団を自ら養成したので、その技術と技術者・作業員の集団が橋の建造にも次第に活かされるようになった。たとえば織田信長は、軍事・戦略的な意図もあり、それまで簡易的な橋でしかなかった瀬田の唐橋を本格的な橋に掛け変えた。また豊臣秀吉は大坂城の掘に「極楽橋」という橋を建造した。

鎌倉時代・戦国時代までの日本では木造の橋がほとんどであった。

(日本が本格的に武家の世になった)安土桃山時代から江戸時代に入るとようやく、都市部や街道において橋の整備が進められるようになった[7]

日本橋浮世絵。(歌川広重東海道五十三次』の「日本橋」)

江戸時代の大都市には江戸幕府が管理した橋と町人が管理して一部においては渡橋賃を取った橋が存在し、それを江戸では「御入用橋」と「町橋」と呼び、大坂では「公儀橋」と「町人橋」と呼んだ。

江戸時代には九州や琉球では大陸文化の影響を受け、石造りの橋が多く作られるようになった。たとえば明出身の僧侶如定による長崎眼鏡橋の造営があり、江戸時代末期に作られた肥後国通潤橋は同地方の石工らによって様々な工夫がされたことで知られている[6]。また、石積みの橋桁と木製のアーチを組み合わせた周防国岩国錦帯橋など、中小河川における架橋技術の発達を示す例が各地でみられるようになった。

この他、八橋と言って、川底が浅い場所に杭を打ち、その杭の間に板を渡すという方法で作られたために、川の途中で曲がりくねった構造をした木造の橋が作られたこともあった。なお、2016年時点の日本においても「八橋」と言う地名が複数残っている。

産業革命後の橋

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アイアンブリッジ

18世紀末期から19世紀にかけて、産業革命によって生産量が増えたを用いた橋が出現する[8]。鉄の量産により橋梁技術が飛躍的に向上し、橋脚と橋脚の間隔を示す支間長(スパン)が大幅に伸びて長大橋が建設されるようになる[8]。初めは銑鉄を用いた全長30 mの橋がイギリスで架けられ、製鉄技術の改良によりを用いた橋が誕生する[9]1873年には鉄筋コンクリートを用いた橋がフランスで初めて架けられ、その後全世界に普及する[9]。日本で最初の鉄橋は、1868年慶応4年)に長崎の眼鏡橋が架かる中島川の下流にオランダ人技師の協力を得て架けられたくろがね橋である[8]。純日本国産の鉄橋第1号は、1876年明治11年)に東京の楓川に架けられた弾正橋であり[8]、鋼橋としては、1888年(明治21年)に完成した東海道本線の天竜川橋梁が日本初である[8]。さらに鉄道網の進展、自動車の普及と交通量の変化に合わせて重い活荷重に耐えられる橋が要求されるようになって、1900年代に入ってから鉄筋コンクリート製の橋も造られるようになった[10]。また、経済の急速な発展に伴い、経済的で短い工期の工法が重視された。

現代の橋

[編集]

橋に求められる基本的な要件は、橋に掛かる荷重を支えること及び通行する車両等の荷重が掛かったり、振動が長期に繰り返されたりしても変形が大きくなり過ぎないことである。さらに、地震台風の多い日本では、地震発生時及び台風通過時の安全性を確保することも重要になる。また現代の橋には、実用性だけではなく、デザイン性も求められる。大きく目立つ橋はその地域のシンボルになりうるため、構造物自体のデザイン性や周囲と調和するデザインを有していることが望ましい。

現代の橋には、構造の強さだけでなく、需要に即した規模、気象条件、景観を含めた周辺環境への配慮、経済性、ライフサイクルコストも考慮した設計が要求される。

現在の日本の橋

現在の日本には、全国でおよそ72万6千の橋がある[11]

近年まで橋の定期点検が十分に行われていなかったため、老朽化を要因とする事故が相次いだ。2007年平成19年)11月には吉野川水系の日開谷川の支流の1つである大影谷川にかかっていたトラス橋が、自動車通過中に落橋するという事故が起きた[12]。この事故後の調査で、この橋も定期的な管理がなされていなかったことが判明した[13]

こうした事故を受け、2012年(平成24年)に道路法が改正され、道路管理者は管理する全ての橋梁について、5年に1度近接による目視で点検を行い、健全性を診断することにした。橋の定期点検をすることで、橋の安全性を確保し、点検結果を元に橋梁長寿命化修善計画を策定することで、橋の計画的な長寿命化及び更新を図っている。

現代の橋の一般的な構造

[編集]
断面(道路橋)
1.全幅(ぜんぷく) 2.有効幅員(ゆうこうふくいん) 3.高欄(こうらん) 4.地覆(じふく) 5.歩道、歩道幅員 6.縁石(えんせき) 7.路肩(ろかた)、路肩幅員 8.車道 9.舗装 10. 床版(しょうばん)11.主桁
側面
1.橋長(きょうちょう) 2.支間(しかん) 3.橋桁(はしげた) 4.支承(ししょう) 5.橋台(きょうだい) 6.杭基礎 7.橋脚(きょうきゃく) 8.ケーソン基礎 9.直接基礎 10.上部構造(じょうぶこうぞう) 11.下部構造(かぶこうぞう)
上部構造

上部構造は、床構造と主構造から成り立つ[14]。床構造は床版(しょうばん)や床組(ゆかぐみ)によって形成され、通行する交通を支える役目を持つ[14]。主構造は主桁など、床構造を支えて荷重を下部構造に伝達する役割がある[14]吊橋斜張橋では主塔やケーブルも上部構造に含まれる。さらに、車両や人などが橋から落下するのを防ぐ高欄(こうらん、欄干・らんかん)や自動車防護柵、照明柱などの付加物、下部構造とをつなぐ支承(ししょう)や道路と橋梁の境にあたる伸縮継手も上部構造に含まれる。

下部構造

下部構造は上部構造を支え荷重を地盤に伝達する橋台(きょうだい)と橋脚(きょうきゃく)、それらを支える基礎(きそ)を指す[14]。橋の両端に設置されるものを橋台、中間に設置されるものを橋脚と呼ぶ。基礎には直接基礎、杭基礎、ケーソン基礎などの形式がある[14]

橋の種類

[編集]

橋には、用途や材料、橋床の位置、橋桁構造、可動するかどうかなどにより、様々に分類される[15]用途別材料別構造形式別によって分類が行われる。

それぞれ長所と短所があり、橋の用途や長さに建設コストの要素が考慮されて決定される[15]

形式別

[編集]

橋の構造形式には以下のような種類がある。なお、主な部材に働く力については、構造力学材料力学力学などの項目を参照のこと。

  • ビーム橋 - 両端を橋脚などで支持したビーム(梁)を使い造る橋。ビーム橋は橋の形式として最も一般的なものである[16]。なお日本語では(次に説明する)桁橋と混同してしまう人がいるが、英語では桁橋とは区別することがある。渡る距離が比較的短い橋ではこのビーム橋方式が採用されることが多い。全長が長い橋をビーム橋方式で建造する場合は、ビームを縦に連続的に配置して建造する。長いビーム橋では全長が数十キロメートルに及ぶものもある。
  • 桁橋
    桁橋 - 2つあるいは3つ以上の支点上に水平に桁を架け、その上あるいは内部を通行する橋。桁には曲げモーメントにより主桁内部の上側に圧縮応力が発生、下側に引張応力が発生する。材料にはコンクリート木材などが用いられ、I形、箱形、T形などの断面がある。一般に荷重を主として負担する主桁と通行路を造る床版は異なる部材だが、比較的小規模のコンクリート橋では床版が主桁としての役割も果たす床版橋(スラブ桁橋)もある。また、吊橋の桁は補剛桁と呼ばれる。建設費が比較的安価なことから、(近年の日本では)最も多く採用される形式[15]
  • アーチ橋のいくつかのタイプ
    アーチ橋 - アーチつまり「上向きに凸な弧」を用いた橋であり、アーチ部分(アーチリブ)には大きな圧縮力と比較的小さな曲げモーメントが作用する。素材としては石材の他に、コンクリート、さらに材木も可能である。古代や中世でも、また19世紀や20世紀でも造られて続けた石橋(石材を建築材料にした橋)で最も一般的な構造である。アーチと路の上下の位置関係で4種類ほどに下位分類がされており、石橋のようなアーチの上を路が通るアーチ橋は「上路アーチ」という。鋼材を用いるようになってからは、鋼材アーチの下に路をつくり路を吊るような構造の「下路アーチ」も増えた。東京都中央区の日本橋(1911年完成)もアーチ橋(石造り、2連)、隅田川にかかる永代橋(1926年完成)もアーチ橋(スチール製)であり、街中でも広く見かけられる形式である。「深い渓谷など、橋脚を造ることが困難な場所で採用されることが多い形式」[15]
  • トラス橋
    トラス橋 - 棒状の部材を三角形に組み合わせ交点(格点と呼ぶ)をピンで結ぶトラス構造を用いた橋。鉄道橋に多い形式[15]。トラス部材には軸力(圧縮力または引張力)のみが作用する。ただし、実際にはピン結合ではなく剛結とすることが多く、この場合トラス部材には曲げモーメントも作用する。材料には鋼や木がよく用いられる。トラス構造は、使用部材を減ずる目的で断面2次モーメントを極大化させるため、桁構造と比して鉛直方向に構造が大きくなる。特に下路式の場合は、構造下面と路面や軌道面との間の高さを減ずることが可能であることから、桁下に余裕の無い箇所や取り付け部での縦断勾配の得づらい箇所での採用例も多い。トラス部材の配置によって以下のような分類がある。平行弦ワーレントラス曲弦ワーレントラス垂直材付きワーレントラスプラットトラスハウトラスKトラス
  • 方丈ラーメン橋
    ラーメン橋 - 橋脚主桁が剛に結合された骨組(ラーメン)構造を用いた橋。ラーメンはドイツ語 Rahmen (鋼節骨組)に由来する[15]。部材には軸力、せん断力と曲げモーメントが作用し、材料としてはコンクリートあるいは鋼が用いられる。構造力学の観点からは、ラーメン構造は力の釣り合い方程式の数より未知反力の数の方が多い不静定構造である。これにより過大な荷重によってある部材が大きく変形しても落橋は免れたり、橋脚上に支承がなく上部構造がずれ落ちたりすることがないため耐震性の高い構造と考えられている[15]
吊橋
  • 吊橋 - ケーブルロープなど曲がりやすいが引張強度が大きい部材から桁あるいは床版を吊り下げた橋を呼ぶ。近代以降の大規模な吊橋は、両岸にケーブルを繋ぎ留めるアンカーブロックやアンカレイジと呼ばれる構造とその間に(通常2本以上の)主塔を設け、その上に張り渡したメインケーブルから通行路となる桁を吊り下げる形式を採る。ケーブルには引張力、主塔には圧縮力が作用する。アンカレイジはケーブルに生じる引張力に対してその質量および底面の摩擦力によって抵抗する。なお、主塔とケーブルが接触する主塔頂部のサドルの形状を固定式とする場合、荷重の偏在によっては主塔に曲げ応力が生じる場合がある。ケーブルには高強度の鋼、主塔には鋼やコンクリートが主に用いられる。アンカレイジを用いず桁の両端でメインケーブルを固定する「自碇式吊橋」「自定式吊橋」という形式もあるが、橋桁に大きな圧縮力が働くので設計が複雑になる。床版をメインケーブルと一体化し、主塔を使わず橋台から直接吊り下げる「吊床版橋」というものもある。床版をそのまま通路とする「直路式」、桁を載せる「上路式」、上路式の派生として、床版と桁の両端を固定してアンカーブロックを不要とした「自碇式」がある。
斜張橋
  • 斜張橋 - 吊橋の一種で、支点となる主塔から斜めに張ったケーブルで橋桁を吊ったもの[15]。主塔上部から斜めに伸びた多数のケーブルが橋桁などの鉛直荷重を受け持つとともに、桁に対して圧縮力となる軸力を導入する。ケーブルには引張力が生じるため、鋼製。主塔には圧縮力が働き、桁には曲げモーメントと軸力が作用するため、コンクリートが用いられることが多いが、軟弱地盤の場合は主塔にも鋼構造が用いられる。また、主塔の設置箇所の制限から、中央径間と側径間との延長のバランスが悪い場合、主塔に曲げ応力が生じるのを回避するため、単位長さ重量の大きいコンクリートと小さい鋼とを組み合わせた複合構造を用いることもある。ケーブルの張り方によって、主塔側面の異なった高さから斜め平行に張られる「ハープ」と主塔上部の一点から放射線状に張られる「ファン」の2つの形式があるほか、張る面を桁中央(道路の場合は中央分離帯)に寄せる1面吊り、桁側端に分離する2面吊り、1面に2条近接させる形式など、様々なバリエーションがある。[4]。美観に優れることから、近年採用例が増えつつある[15]
  • エクストラドーズド橋 - 外ケーブルを用いたプレストレストコンクリート橋の一種。比較的高さの低い主塔から斜材(外ケーブル)により主桁を支持する構造。外ケーブルが構造断面の外側に飛び出していることから「大偏心外ケーブル構造」とも呼ばれる。外観は斜張橋に類似しているが、主桁の剛性が高く構造としては桁橋に近い。また、斜材ケーブルの角度が小さいことから、活荷重の影響による斜材の張力変動が小さく疲労に対して有利であり、斜張橋に比べ斜材ケーブルの張力を高く取ることができる。さらに低い主塔と相まって、建設コストを低く抑えることができ、近年は鉄道、道路を問わず、採用例が増加している。

材料別

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主要構成部材の材料により、以下のような種類がある。

  • 石橋 - 石材を用いた橋の総称[17]。古代から近代まで使われている、橋の建築材料。石材は圧縮力に対して強いが、引張力に対して弱いという特性を備えているので、主にアーチ橋で用いられる[18]。一度造ると数百年や千年以上の耐久性があり、紀元前に造られた石橋が現存していて今でも普通に通行に使用されている例もある。
  • 木橋 - 木材を用いた橋。わずか数十年ほどで劣化してしまう素材。特に、濡れたり乾いたりを繰り返す箇所で腐敗が進む。木材で橋を作ってしまうと、数十年ごとに丸ごと作り直さなければならない状態に陥る。日本では手に入りやすい素材であり、橋の材料として古来用いられ現在でも人道橋など荷重強度が小さな橋を中心に架設例がある[17]1990年代以降は、従来の無垢材に加えて集成材の利用も行われるようになりこれは以前の伝統的木橋と区別して「近代木橋」と呼ばれることもある。橋梁形式としては、桁橋、トラス橋、アーチ橋を中心に各種の形式がある。[注釈 1]
  • 鋼橋 - 上部構造にスチール)を用いた橋。鋼は比強度が高く、弾力性に富む[17]発錆を防止するため塗装が必要[17]。塗装を怠ると錆で劣化が急速に進む。
  • 鉄橋 - 上部構造にを用いた橋。鋼(スチール)製の橋が登場する以前の鉄の橋が鉄橋であるが、後から登場した鋼橋も含めて漠然と「鉄橋」と呼ぶ習慣が残った。大正時代や昭和初期など鉄道橋は主に鉄橋(鋼橋)で造られたので、今でも「鉄橋」を「鉄道橋」とほぼ同義のように使う人が一部にいる。
  • コンクリート橋 - 橋の上部構造がコンクリート製の橋。コンクリートは圧縮強度に比べて引張強度がおよそ 1/10 と低く弱いため、引張応力を鋼材で負担する鉄筋コンクリートや、PC鋼材によりあらかじめ圧縮力を与え引張応力を打ち消すプレストレスト・コンクリート(PC)を用いる。近年のコンクリート橋はアーチ橋やごく小規模なものを除き、ほとんどがPC橋である。
    • 鉄筋コンクリート橋(RC橋)
    • PC (Prestressed Concrete) 橋
    • PPC (Partialy Prestresssed Concrete) 橋 - PC橋のうち、ある程度の引張応力を許容する構造の橋。
    • PRC(プレストレスト鉄筋コンクリート)橋 - PPC橋のうち、ある程度のひび割れの発生を許容する構造の橋。日本において用いられる区分である。
    • 竹筋コンクリート橋(BRC橋) - 鉄筋の代わりにを用いた橋。竹材資源の豊富な東南アジア地域で見られるほか、鋼材が不足していた戦時中の日本でも架けられた。
  • 舟橋 - (とロープと木の板)を材料とした橋。浮橋、浮体橋とも。多数の舟をロープや鎖で繋いで対岸まで並べ、その上に板を並べて簡易的な橋とするもの。古代から用いられている橋である。日本でも古代や平安時代には造られた。古代から世界各地で軍隊が遠征した先で河川を渡らなければならない場合、しばしばこの舟橋方式で橋を造った。速やかに架橋・撤去が可能だからである。現代でもアメリカ合衆国やノルウェイでは大規模な施工例がある。現代の軍隊でもこの舟橋が使われる(たとえば92式浮橋)。日本では普段は見られなくなった。
  • 土橋 - 木橋の橋面を丸太で作り、上を土でならした橋。簡素である。
  • 氷橋 - 「すがばし」と読む。北海道開拓の初期から第二次世界大戦後にかけて見られた。凍結した川に丸太や枝などを敷いて雪を載せ、水をかけて凍らせる氷でできた橋。穂別町の例では、丸太を積載した馬橇が通行できる大型の橋も存在した[19]
  • 複合橋 - 異種材料や異種部材による合成構造あるいは混合構造を用いた橋。一般には、鋼部材とコンクリート部材を組み合わせた上部形式を指す。
    • 合成構造 - 古くから、床版を鉄筋コンクリート、主桁を鋼桁とした合成桁橋が古くから用いられてきたが、構造形式としてきわめて一般的であり、合成構造には含めないことが多い。近年の形式としては、
      • 鋼合成桁橋 - PC床版と鋼桁を組み合わせた橋
      • 波形鋼板ウェブ橋 - PC箱桁橋のウェブ部材に波形上に加工した鋼板を用いる橋
      • 鋼複合トラス橋 - 上床版・下床版をコンクリートとし、鋼部材による斜材を組み合わせたトラス橋
    • 混合構造としては、多径間の一部が鋼桁、他がコンクリート桁からなる橋などがある。コンクリートの他に炭素繊維ガラス繊維など比較的新しい材料を用いた複合橋も提案されている。

※なお日本では、鋼橋やコンクリート橋などが昭和30年代頃から「永久橋」などと呼ばれた。出典:国土交通省「Ⅱ.道路の老朽化対策の本格実施に向けて」 (PDF)

機能別

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橋はその果たす機能により様々な名称が用いられる。大きな区分として通過交通による分類、すなわちその橋が何を渡すものであるかが挙げられる。人車の交通に限らず物体の輸送用として、専用・兼用で用いられる事も多い。橋の下が水面でない物を、陸橋と呼ぶ。

用途による橋の呼称
通過交通

および総称

道路 歩道 鉄道
道路橋 人道橋

(歩道橋)

鉄道橋
川・谷・海を渡る 橋・橋梁 橋・人道橋 橋梁
道路を渡る 跨道橋 横断歩道橋 架道橋
鉄道を渡る 跨線橋 跨線橋 線路橋

一般的な橋として、道路交通(自動車)を渡す道路橋、人を渡す人道橋(歩道橋)、列車を渡す鉄道橋などがあり、さらに何を渡る橋であるかによって前記の表に示す呼称が使い分けられる。なお、鉄道橋は鉄橋と略される場合もあるが、鉄または鋼を用いた橋と混同されることがある。

道路と鉄道の双方を渡す橋もあり、鉄道道路併用橋(併用橋)と呼ばれる。

保守・点検・防護

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メンテナンス・老朽化問題と対策

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橋は例外なく屋外に設置され、気温や気象による自然環境の影響や、橋の上を通過する活荷重によって繰り返し応力が掛かる[20]。これにより、コンクリート橋ではひび割れ・凍害、化学的侵入、摩耗、塩害、鉄筋の腐食二酸化炭素による中性化、疲労などの劣化が生じる[20]。また、鋼橋では特に溶接部の疲労や腐食も生じる[20]。ひび割れに対しては樹脂やバテの注入、鋼板接着や炭素繊維による補強などが行われる[20]。鋼橋では腐食に対してはサンドブラストで古い塗膜を除去した上で再塗装をする、き裂がある場合にはその先端部にストップホールを設けて進展を防ぐなどの方法で保守が行われる[21]

橋の点検は表面的な変状を目視点検し、場合によってはハンマーの打音などで手で触れることなどが行われる[22]。こうした目視点検により、橋の舗装高欄・排水装置・伸縮装置などの表面で分かる不具合から深部の不具合が疑われることがある[23]。ある不具合が発見されれば、それを引き起こす原因となりうる不具合を推測する[23]。目視点検を行いやすくするため、点検用の通路を設置する(小規模な橋の場合は仮設できるように足場を設置するための金具を設置する)、橋梁点検車で点検するなどの工夫が取られることがある[24]

一般に、劣化が軽度な状態で補修した方が、より劣化の進んだ状態で補修するよりも必要な費用が小さくなる[25]

アメリカ合衆国

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アメリカ合衆国では、1920年代以降に造られた橋梁をはじめとした近代的なインフラが1980年代に耐用年数を超え始め、使用に制限を加えざるを得ないなど社会問題化した。このため、積極的にインフラの老朽化対策が進められるようになった[26]

日本

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橋の下まわりを点検するために開発された橋梁点検車。

1995年の兵庫県南部地震以降、耐震設計が見直され、橋の免震制震に関する技術が開発されて耐震補強工事に活用されるようになった[27]。地震後に橋が落下しないように、上部工と下部工でかかり長を確保することや、支承部の移動を制限する装置や地震のエネルギーを吸収する装置の設置、桁を相互に連結させる工事などが行われてきた[27]

日本では2020年代以降、高度成長期に建設された橋梁をはじめとしたインフラストラクチャーの供用年数が50年を超え、前述のアメリカ合衆国同様に耐用年数が問題となる時期に差し掛かる[28]ため、政府は2013年よりインフラの長寿命化計画を立案し、順次必要なメンテナンスを進めている[29]。限られた予算の中で長寿命化やメンテナンスを進めるため、橋が供用年数、劣化の程度、橋の重要度からメンテナンスの優先順位が定められる[30]

地方の小規模な橋では、建設年の記録が残っていない例もある。人口減少が著しい地域(過疎地域)では、架け替えや補修に必要な財政負担に見合う通行者数や自動車交通量が今後見込めないため、管理する自治体が撤去を決断する橋も多い。国土交通省の2018年時点集計では、撤去・廃止が決まった橋は全国で137カ所ある[31]

一方で、いつ、誰が設置したかを河川管理者(国や都道府県など)が把握していない「管理者不明橋」(「勝手橋」)が、日本全国の河川で多数発見されている[32]。これらの橋は占用許可など法的手続きを経ないまま、河川管理者が定める基準を無視して設計・建造された可能性がある。迂回を嫌う地元住民の利用が多いとされるが、いずれも補修や点検が施されないまま放置されており、管理責任を曖昧なままにしておくことで、老朽化による崩落や、それに伴う事故や災害の拡大に繋がることが懸念されている[32]

イタリア

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イタリアでは、2018年にモランディ橋が崩壊した際、設計の不備が疑われたほかメンテナンスが追い付いていないことも問題となった。また、イタリア国内において2013年からの過去5年間に10カ所の高架橋が崩壊していたことも報道されている[33]

橋桁の防護

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高さのある車両(高さのある貨物を積載した車両やクレーンを下ろし忘れた車両を含む)が橋桁にぶつからないようにするため橋の手前に橋桁防護工という頑丈なゲートが設置されることがある[34]。橋桁防護工に表示された制限高を超える車両の通行をゲートで阻止するための設備である[34]

なお、同じ目的で車両が踏切で空中の架線に引っかからないように制限高を表示して注意を促す道路の左右に渡した標識を踏切注意標という[35]

記録を持った橋

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世界一高い橋
サンフランシスコ・オークランド・ベイブリッジ
世界一 幅が広い橋
「世界最長」の歴史
ゴールデン・ゲート・ブリッジ
  • ゴールデン・ゲート・ブリッジサンフランシスコ) - 1937年完成。当橋は1937年の完成から27年に渡り「スパン世界一」であった橋であり、「スパン世界一 記録保持期間が最も長かった吊橋」である。(なおサンフランシスコのランドマークとなっており「世界で最も写真撮影された橋」とされている。)
現在の「世界最長」の橋
「日本最長」の橋

脚注

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注釈

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  1. ^ このほか鉄筋コンクリートや鋼材、繊維強化プラスチックなどとの複合橋も架設されているが、それは複合橋で説明する。

出典

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  1. ^ Merriam Webster, definition of bridge.
  2. ^ a b c ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典【橋】
  3. ^ 武部健一 2015, p. 9、武部「アーチは東漸したか」『第九回日本土木史研究発表会論文集』より孫引き。
  4. ^ a b 大野春雄監修『橋 HASHI なぜなぜ読本』山海堂 2000年5月20日 第1版第3刷発行
  5. ^ 武部健一 2015, p. 25.
  6. ^ a b c 浅井建爾 2001, p. 212.
  7. ^ 江戸時代 - 新宿区市年表”. 2021年10月5日閲覧。
  8. ^ a b c d e 浅井建爾 2001, p. 221.
  9. ^ a b 石井一郎 1987, p. 86.
  10. ^ 浅井建爾 2001, pp. 212, 221.
  11. ^ 国土交通省、道路メンテナンス年報
  12. ^ トラス橋が車の通過中に崩落、香川と徳島の県境で
  13. ^ 誰も管理しない橋、コンクリ落下で「発見」相次ぐ
  14. ^ a b c d e 藤原稔 2010, p. 3.
  15. ^ a b c d e f g h i 浅井建爾 2001, pp. 214–215.
  16. ^ Britannica, Bridgeの記事。Basic formsの節の中の「Beam」の節。「The beam bridge is the most common bridge form.」と説明してある。
  17. ^ a b c d 橋の博物館とくしま 橋の種類・構成”. 徳島県道路整備課機能再生・管理担当. 2018年2月10日閲覧。
  18. ^ 石井一郎 1987, p. 87.
  19. ^ 菅原昭二「十四歳の丸太馬搬」『穂別高齢者の語り聞き史(昭和編)大地を踏みしめて 上』穂別高齢者の語りを聞く会、2014年、p274頁。 
  20. ^ a b c d 五十畑弘 2019, p. 191.
  21. ^ 五十畑弘 2019, p. 193.
  22. ^ 五十畑弘 2019, p. 188.
  23. ^ a b 五十畑弘 2019, p. 185.
  24. ^ 五十畑弘 2019, p. 189.
  25. ^ 五十畑弘 2019, p. 197.
  26. ^ 社会インフラの維持管理をめぐる状況 「荒廃するアメリカ」とその後の取組み”. 国土交通省. 2018年8月25日閲覧。
  27. ^ a b 五十畑弘 2019, p. 195.
  28. ^ 橋を取り巻く交通環境と進行する高齢化”. 国立研究開発法人 土木研究所. 2018年8月25日閲覧。
  29. ^ インフラ長寿命化基本計画”. インフラ老朽化対策の推進に関する関係省庁連絡会議 (2013年11月). 2018年8月25日閲覧。
  30. ^ 五十畑弘 2019, p. 196.
  31. ^ 老朽で「廃橋」全国137ヵ所/改修断念、地方多く/人口減、利用頻度見極め『日本経済新聞』朝刊2018年11月25日(6面)2018年11月29日閲覧。
  32. ^ a b 誰が設置したのか「勝手橋」…住民多数が利用でも、管理者不明のまま補修されず放置 読売新聞 2021年11月22日
  33. ^ イタリア・高架橋崩落 過去5年間に10件”. 日テレ24 (2018年8月16日). 2018年8月25日閲覧。
  34. ^ a b 磯兼雄一郎、井上孝司『標識と信号で広がる鉄の世界』秀和システム、2010年、119頁。 
  35. ^ 磯兼雄一郎、井上孝司『標識と信号で広がる鉄の世界』秀和システム、2010年、117頁。 
  36. ^ Guinness World Records, widest bridge.
  37. ^ Longest bridge”. ギネス・ワールド・レコーズ (2011年6月). 2020年2月20日閲覧。
  38. ^ Longest road bridge”. ギネス・ワールド・レコーズ (2000年7月). 2020年2月20日閲覧。
  39. ^ 舟山规划130公里通道连上海_科技频道_凤凰网”. 凤凰新媒体 (2013年7月30日). 2020年2月20日閲覧。
  40. ^ a b c d 浅井建爾 2001, p. 224.
  41. ^ 浅井建爾 2001, p. 216.
  42. ^ 広島空港大橋(ひろしまくうこうおおはし)”. 広島県土木建築局道路企画課 (2015年3月11日). 2018年3月12日閲覧。

参考文献

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  • 石井一郎『土木工学概論』鹿島出版会〈土木教程選書〉、1987年10月30日。ISBN 4-306-02222-6 
  • 浅井建爾『道と路がわかる辞典』(初版)日本実業出版社、2001年11月10日。ISBN 4-534-03315-X 
  • 藤原稔『写真で見る橋の構造形式 -道路橋の保全のために-』技報堂、2010年7月20日。ISBN 978-4-7655-1772-0 
  • 武部健一『道路の日本史』中央公論新社〈中公新書〉、2015年5月25日。ISBN 978-4-12-102321-6 
  • 五十畑弘『図解入門 よくわかる「橋」の科学と技術』秀和システム、2019年7月1日。 

関連項目

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外部リンク

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