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2020年8月20日 (木) 00:04時点における版
悪霊島 | ||
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著者 | 横溝正史 | |
発行日 | 1981年5月15日 | |
発行元 | 角川書店 | |
ジャンル | 小説 | |
国 | 日本 | |
言語 | 日本語 | |
ページ数 | 347 | |
コード |
ISBN 4041304679 ISBN 978-4041304679(文庫本) | |
ウィキポータル 文学 | ||
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『悪霊島』(あくりょうとう)は、横溝正史の長編推理小説。「金田一耕助シリーズ」の一つ。『野性時代』に1979年から1980年まで連載された。
本作を原作として、2014年3月までに映画1本、テレビドラマ2作品が制作されている。
ストーリー
この節にあるあらすじは作品内容に比して不十分です。 |
1967年(昭和42年)。金田一耕助は、瀬戸内海に浮かぶ
しかし、捜していた男は海で瀕死の状態となって発見される。金田一は友人である岡山県警の磯川警部から、男の最期の言葉を録音したテープを聴かされる。そこには「あの島には恐ろしい悪霊が取り憑いている…腰と腰がくっついた双子…鵼の鳴く夜は気をつけろ……」という不気味なダイイング・メッセージが録音されていた。
登場人物
- 金田一耕助(きんだいち こうすけ)
- 私立探偵。
- 磯川常次郎(いそかわ つねじろう)
- 岡山県警警部。
- 広瀬(ひろせ)
- 岡山県警警部補。
- 藤田(ふじた)
- 岡山県警刑事。
- 山崎宇一(やまざき ういち)
- 刑部島駐在巡査。
- 木下(きのした)
- 嘱託医。
事件の関係者達
- 刑部大膳(おさかべ だいぜん)
- 刑部島の最高権力者。錨屋を取り仕切る。
- 刑部辰馬(おさかべ たつま)
- 刑部島村長。大膳の甥。
- 刑部守衛(おさかべ もりえ)
- 刑部神社神主。婿養子。
- 刑部巴(おさかべ ともえ)
- 大膳の一人娘。守衛の妻。「巴御寮人」とも。
- 刑部真帆(おさかべ まほ)
- 守衛と巴の娘。双子の姉。
- 刑部片帆(おさかべ かたほ)
- 守衛と巴の娘。双子の妹。
- 越智竜平(おち りゅうへい)
- 実業家。アメリカ帰りで刑部島出身。
- 越智多年子(おち たねこ)
- 竜平の叔母。
- 越智吉太郎(おち きちたろう)
- 竜平の従兄弟。
- 松本克子(まつもと かつこ)
- 竜平の秘書。
- 青木修三(あおき しゅうぞう)
- 竜平の部下。
- 妹尾四郎兵衛(せのお しろべえ)
- 神楽太夫社長。
- 妹尾松若(せのお まつわか)
- 神楽太夫。四郎兵衛の息子。1948年(昭和23年)に失踪。
- 妹尾平作(せのお へいさく)
- 神楽太夫。
- 妹尾徳右衛門(せのお とくえもん)
- 神楽太夫。
- 妹尾嘉六(せのお かろく)
- 神楽太夫。
- 妹尾弥之助(せのお やのすけ)
- 神楽太夫。
- 妹尾誠(せのお まこと)
- 神楽太夫。松若の息子。
- 妹尾勇(せのお いさむ)
- 神楽太夫。松若の息子で誠の弟。
- 三津木五郎(みつぎ ごろう)
- 観光客。※物語のキーマン。当時はヒッピーで、1981年(昭和56年)ではどこかのラジオ局のプロデューサーかDJとして勤めている。
- 荒木清吉(あらき せいきち)
- 置き薬行商人。1958年(昭和33年)に失踪。
- 荒木定吉(あらき ていきち)
- 置き薬行商人。清吉の息子。
- 浅井はる(あさい はる)
- 市子。
その他
- 刑部天膳(おさかべ てんぜん)
- 大膳の双子の兄で巴の祖父。故人。
- 宮本勇雄(みやもと いさお)
- 雲竜丸船長。
- 山下亀吉(やました かめきち)
- 学生服卸販売業者。
- 田中静恵(たなか しずえ)
- クラブ「モナミ」の女将。
- 川島ミヨ(かわしま ミヨ)
- はるの近所に住む婦人。
- 三津木秀吉(みつぎ しゅうきち)
- 三新証券元社長。五郎の父。故人。
- 三津木貞子(みつぎ さだこ)
- 秀吉の亡妻。
- 浅野こう(あさの こう)
- 三津木家の留守を預かる婦人。
- 新田穣一(にった じょういち)
- 三新証券社長。
- 山城太市(やましろ たいち)
- 人形遣い。1961年(昭和36年)に失踪。
- 磯川糸子(いそかわ いとこ)
- 磯川警部の亡妻。
- 磯川平太郎(いそかわ へいたろう)
- 磯川警部の兄。
- 磯川八重(いそかわ やえ)
- 平太郎の妻。
- 磯川健一(いそかわ けんいち)
- 平太郎の息子。
- 磯川清子(いそかわ きよこ)
- 健一の妻。
解説
1980年(昭和55年)初刊。横溝正史による最後の長編小説作品で、昭和40年代の瀬戸内を舞台にした連続殺人事件を追う金田一耕助の活躍を描く。金田一シリーズとしても最後のリリースであり[1]、また「岡山編」の最後の作品でもある。岡山県警の磯川警部が活躍を見せるほか、磯川の過去の掘り込みもなされている。
舞台の刑部島は作中の解説によると、下津井および水島の付近にあり、鷲羽山山頂の展望台から見下ろせる場所にある[2]。
映画
1981年版
悪霊島 | |
---|---|
監督 | 篠田正浩 |
脚本 | 清水邦夫 |
原作 | 横溝正史 |
製作 |
角川春樹 橋本新一(プロデューサー) 飯泉征吉(プロデューサー) |
出演者 |
鹿賀丈史 室田日出男 古尾谷雅人 |
音楽 | 湯浅譲二 |
撮影 | 宮川一夫 |
編集 | 浦岡敬一 |
製作会社 | 角川春樹事務所 |
配給 | 東映洋画/日本ヘラルド |
公開 | 1981年10月3日 |
上映時間 | 131分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
配給収入 | 9億3000万円[3][5] |
1981年10月3日に公開された。角川映画、監督は篠田正浩。
原作発表から直ちに映像化された作品。原作発表の年に発生したジョン・レノン暗殺のニュースを本編に折り込むという方針から、物語のキーマン・三津木五郎が、1980年の現在から本編で描かれた刑部島事件のあった約10年前の1969年(原作の設定より2年遅い)を回想するという形式に変更されている。本作完成直後に横溝正史が逝去し、弔報が逆に集客に一役買うことに。
挿入歌にビートルズの「レット・イット・ビー(Let It Be)」、同じく「ゲット・バック(Get Back)」を使用し作品に強い印象を残していた。1980年代のTV放送時と東芝EMIから発売されたビデオソフトは公開当時のオリジナル版だったが、後年これら楽曲の使用権が切れたためTV放映・ソフト発売がされず、長らく幻の作品となっていた。2004年にようやくDVDが発売されたものの楽曲部分は別歌手によるカバー版に変更されており、近年のCS等でのテレビ放映においてもその変更版が放映されている。
原作では岡山県にあるとされている刑部島が広島県となっており、原作の下津井吹上に相当する本土側の港は「竹田」、真帆と片帆の姉妹が預けられている倉敷と玉島の兼務神社は尾道と広島で、磯川警部の所属も広島県警に変更されている。関連して、巴には双子の姉・ふぶきがあり、巴とは別れて広島近郊で育てられていたのを戦後に引き取ったことになっているが、実際には原爆で死亡したと推定されることが終盤で明らかになる。巴が一見すると神々しいが実は性的に無軌道という二面性は原作通りだが、恋人と引き裂かれたショックで発症した二重人格という形でそれを明確化しており、無軌道な方の人格を表向きはふぶきということにしたという設定になっている。
妹尾兄弟は初来島ではなく何度か刑部島に来ていて、火事の直前にも父・松若の痕跡を求めて拝殿付近を探っていたところ、巴の犯行を目撃して事後共犯となった直後の三津木に遭遇し、双方が供述を躊躇する。また、誠が片帆と恋仲になっており、現場を目撃した巴が嫉妬でふぶきの人格になり片帆を殺害した。片帆が島を抜け出す具体的な計画を立てていた設定は無い。なお、松若の失踪は19年前ではなく5年前であり、誠が幼時の記憶で「千畳敷」という地名を覚えていた設定は無い。
刑部大膳が事件に積極的に関与していた設定に変更されている。三津木と荒木に目撃された蓑笠の人物は大膳で、片帆の遺体を隠亡谷へ移動させた。警察が三津木の証言で守衛殺害犯をふぶきと判断し連行しようとした際には、吉太郎にふぶきの扮装をさせて断崖から転落死したように装った。しかし、その後も巴にふぶきの人格が現れてしまい、その現場を真帆に目撃されて扼殺しようとする。その直後、鵼の鳴き声で竜平が巴を呼び出し連れ去る。金田一は真帆の手当てを磯川に任せて大膳の足跡を追い、紅蓮洞に行き着く。巴と竜平も紅蓮洞に至り、吉太郎も追ってくる(神楽太夫たちや真帆は来ない)。吉太郎が太郎丸と次郎丸の死骸を撃ったことから状況は急展開し、巴は奈落に転落して行方不明となり、暗闇の中で金田一と誤って吉太郎を刺した大膳は吉太郎の銃で自殺する。
結末の詳細やそれに関わる経緯が以上のように大幅に変更されている他は概ね原作通りの流れであるが、簡略化が目的と思われる以下のような変更が多々ある。
- 青木修三の身元は指輪の印鑑ではなく背広のネームで判明する。ダイイングメッセージに「蟹」に関する文言は無い。
- 船の乗客の1人が本土で青木修三に遭遇していた設定は無い。
- 「浅井はる」は戦後の変名ではない。磯川は殺害の10日ほど前に手紙を受け取っていて、出張中だったため1週間後に読んでいた。第1発見者ではなく、事件を聞いて自ら現場へ出向いた。
- 明治26年以前のみの賽銭は登場しない。
- 金田一が一旦東京へ帰って竜平に会った設定や、その前日に守衛が東京に来ていた設定は無い。
- 金田一は大膳の案内ではなく自主的に漁船を雇って島の南側を見て回る。洞窟内には入らない。
- 「巨大な土佐犬」ではなく多数の野犬の群れが登場する。
- 三津木が尺八を嗜み、神社で琴と合奏する設定は無い。
- 荒木定吉は薬行商人の息子ではあるが、自身は昆虫採集と称して来島している。鵼に関することは父親の最後の手紙に明記されていた。
- 淡路の人形遣いも失踪していた設定は無い。
- 三津木の実の親が何者であるかは結局判明しない。
- キャスト
- スタッフ
テレビドラマ
1991年版
『横溝正史シリーズ・悪霊島』は、フジテレビ系列の2時間ドラマ「金曜ドラマシアター」(金曜日21時3分 - 23時22分)で1991年10月4日に放送された。
簡略化されているが原作に比較的忠実な内容。しかし本作の重要なポイントであるシャム双生児「太郎丸・次郎丸」の骸は倫理上から改変され、単独の死児に変更されている。
その他、原作からの主な変更点は以下の通りである。
- 原作よりも14年早い昭和28年7月の事件としている。
- 原作の三津木五郎が三津木五十子という女性に変更されている。浅井はるから実母が巴だと聞かされていたが嘘と判明し、不明なままとなる。
- 巴は実は刑部大膳が姪を犯して産ませた子であり、大膳は天膳を殺害して刑部神社を継いでいるという設定である。
- 人形遣いの失踪は省略されている。
- 金田一は越智竜平の依頼ではなく単に休養のために来島した。
- 序盤で合図としての意味を知らずに鵼の鳴きまねをしていた金田一に巴が迫る。
- 片帆は島からの脱出を阻止しようとした吉太郎が殺してしまった。
- 最後に吉太郎が竜平を殺そうとするが大膳に斬殺され、大膳は竜平を射殺しようとするが庇おうとした巴が撃たれて死ぬ。大膳は銃で自殺を図るが弾切れで未遂となる。
- キャスト
- スタッフ
1999年版
『名探偵・金田一耕助シリーズ・悪霊島』は、TBS系列の2時間ドラマ「月曜ドラマスペシャル」(毎週月曜日21時 - 22時54分)で1999年3月8日に放送された。
原作の構成要素の多くを継承しているが、ストーリーは大幅に再構成されており、苗字や属性が変更されている登場人物も多い。
- 浅井はるからの手紙を受け取った金田一は下津井の家を訪ねて押入に隠されていた死体を発見、刑部神社の神籤を手がかりに刑部島へ向かう。島への渡船が漂流していた青木修一を収容、金田一が直接ダイイングメッセージ(内容は悪霊と鵼のみ)を聞く。
- 刑部一族と越智一族は露骨に反目しあっている。原作同様の経緯で巴との仲を裂かれた越智竜平は、神戸で貿易商として成功して島へ戻ってきた。なお、金田一と面識は無かった。
- 巴は天膳の孫ではなく大膳の実子である。山岡吉太郎は越智一族ではなく代々刑部に仕えている。
- 越智一族は竜平の姉・多年子の夫婦が仕切っているが実子は無い。養子・拓郎は真帆と恋仲だが周囲が許さない。なお、片帆は登場しない。
- 巴と竜平の子は男女の双生児であった。2人とも浅井はるが斡旋する予定だったが女児・真帆の引き取り手が無く、浅井を紹介した守衛が自分の子ということにして巴と結婚した。男児は回りまわって越智拓郎になっていた。つまり恋仲の拓郎と真帆は実は兄妹だった。
- 15年前に失踪したのは妹背(妹尾ではなく)四郎兵衛で、神楽太夫ではなく人形遣い。その親族は登場しない。浅井はるから秘密を聞いて巴を恐喝し撲殺されていた。青木も同様に巴を恐喝しようとして揉み合って転落していた。
- 巴は浅井はるが秘匿を守らないことを抗議しに行くが、守衛がやめさせてくれないと開き直られて絞殺した。
- 守衛は拓郎と真帆の秘密をネタに神社の財産処分を強要しようとしたため巴が黄金の矢で刺殺、目撃した竜平が自分の犯行に見せかけるため矢を貫通させた。なお、火事の設定は無い。
- 守衛と不倫関係にあった越智家の番頭格・松本克子は、守衛を引き継いで巴を恐喝しにかかったため絞殺された。
- 全てを金田一に告白した巴は真帆への遺書を金田一に託して投身自殺した。
- キャスト
- スタッフ
漫画
- 前田俊夫 『横溝正史劇画 悪霊島』上下巻(双葉社、1981年)
- 『週刊平凡』に連載された。
- たまいまさこ 『悪霊島』全1巻(あすかコミックス、角川書店、1991年)
- JET 『名探偵・金田一耕助シリーズ 悪霊島』全1巻(あすかコミックスDX、角川書店、2004年、ISBN 9784048537742)
- 「鴉」を併録。
脚注
- ^ 作品の時系列では『病院坂の首縊りの家』が最後の物語である。
- ^ 柴田一 (2014/11/11). 岡山「地理・地名・地図」の謎 意外と知らない岡山県の歴史を読み解く!. 実業之日本社
- ^ 中川右介「資料編 角川映画作品データ 1976-1993」『角川映画 1976‐1986 日本を変えた10年』角川マガジンズ、2014年、281頁。ISBN 4-047-31905-8。
- ^ 「邦画フリーブッキング配収ベスト9作品」『キネマ旬報』1982年(昭和57年)2月下旬号、キネマ旬報社、1982年、123頁。
- ^ 〔引用者註〕キネマ旬報1982年2月下旬号では『悪霊島』の配給収入は8.5億円になっている[4]。
- ^ 映画本編にこの表現は出てこず、原作の科白「鵼のなく夜に気をつけろ」を踏襲している。なお志村けんは、このキャッチコピーを『志村けんのバカ殿様』内の由紀さおりとの共演コントでギャグとして使用している。
関連項目
外部リンク
- 悪霊島 : 角川映画
- 悪霊島のチラシ[リンク切れ]エラー: タグの貼り付け年月を「date=yyyy年m月」形式で記入してください。間違えて「date=」を「data=」等と記入していないかも確認してください。 - ぴあ