美術の祭典・東京展
美術の祭典・東京展は、東京展美術協会が運営する美術展。1975年から開催。例年、10月上旬に東京都美術館で開催される。
概要
[編集]- 展示作品は平面(具象、非具象)・立体・絵本・コミックアート・版画・イラスト・写真等広範囲に渡る[1]。中でも絵本は第2回より毎年開催され、国内最大規模の展示となっている。
- 作家展示のほか、企画展と顕彰故展が行われる。顕彰故展は東京展関係者に限らない場合もある。
- 展示は東京展美術協会会員と一般出品者の作品である。一般出品者は運営委員会によって推薦された作家で、公募審査は行わない。一度出品資格が認められると翌年以降も資格は継続される[2]。他団体と異なる最大の特徴で、公募審査(順位付け)を行わないのは、作品の創作者の間にヒエラルキーを作らず、創作者が対等にあるようにという強いこだわり、初期からのコンセプトであるため。[3]
- 当初、授賞はなかったが第6回以降出品者の意欲、作品の質の向上のため授賞制度が設置された。現在は東京展賞、優秀賞、功労賞、奨励賞の他地域おこし企画としてグルグルハウス賞、また5回ごとに記念展賞がある。[4][5]
- 現在、受賞者展、会員展、グルグルハウス賞展など付随する展示会も活発に行われている。
グルグルハウス賞
[編集]第39回から設置された賞。副賞としてギャラリーグルグルハウス[注 1]にてグルグルハウス賞受賞者展が行われる。
沿革
[編集]開催まで
[編集]1974年50余名の画家からなる都立新美術館問題対策協議会を結成。中村正義、笹岡勇らが展覧会実現の協力要請の為、中村哲(当時法政大学総長)を訪問。翌1975年東京展準備委員会発足。中村正義は山本正雄と共に針生一郎を訪ね、展覧会実現の要請を図り、針生は(方向性のあるアンデパンダン:招待部門・一般部門)とする事を前提に承諾。東京展実行委員会[注 2]が結成された。
11月1日~11月20日まで開催。後援:東京都 観客動員数7万7千人以上、出品総数1691点[1]。
カタログ執筆者
[編集]企画展 東京・きのう・きょう・あす
[編集]なつかしの人々(写真)/生きている町絵師/美術のなかの東京/東京大空襲(写真と絵画)/'75美術ハイライト/終末と未来の都市/ワークショップ(観客参加による制作実験)/「市民の手で原爆の絵を(ビデオ)/原爆の絵・展示
第2回(1976年)
[編集]9月21日~10月8日まで開催。針生一郎、丸木位里ら30名が東京展市民会議から退会。東京都は東京展の後援を外す。運営は「東京展」市民会議に。この年より「絵本の部屋」を開催[7]。
参加出品部門と企画部門があった。参加出品部門として「笑い」「告発」「エロス」「人間」「自然」「自由作品部」「立体」「映像」があり、企画部門として「どろ絵」「近代出版美術名作コーナー(明治・大正・昭和)」「書」「絵本」「アニメーションワークショップ」「ビデオワークショップ」「写真ワークショップ」「戯団・款徒」「SFワークショップ」「催事部門」があった。
主な出品作家
[編集]主な出品作家(書)
[編集]井上長三郎、大岡信、岡本太郎、加藤唐九郎、木内克、木村東介、草野心平、熊谷守一、今東光、島本多喜雄、神彰、高橋新吉、武見太郎、中河与一、中村哲、中村正義、野坂参三、のむら清六、細川隆元、真壁仁、宮川寅雄、宮田武義、吉野せい
主な出品作家(アニメーション ワークショップ)
[編集]亀井武彦、木下 蓮三、川本喜八郎、湯川高光、城ノ内あずま、岡本忠成、早川啓二、古川タク、中島興、鈴木伸一、辻真先
主な出品作家(催事部門)
[編集]三笑亭笑三、ギリヤーク尼ヶ崎
第3回(1977年)
[編集]9月21日から10月8日まで開催。絵画、版画、立体、絵本の他企画展示あり。[8]
主な出品作家
[編集]岡本太郎、小島功、手塚治虫、横山隆一、近藤日出造、富永一朗、サトウサンペイ、やなせたかし、今東光、武智鉄二、吾妻徳穂、細川隆元、永六輔、井上ひさし
企画展
[編集]漫画集団作品展/コンピューター・アート/書/中村正義遺作展
第4回(1978年)
[編集]9月27日から10月12日まで開催。絵画、立体のほか漫画、劇画展示が充実。絵本は原画と手作り絵本。企画として舞台美術のコーナー、またソヴィエト亡命作家の作品展示は総数248点(66名)にものぼった[9]
主な出品作家(洋画・日本画)
[編集]深尾庄介、岡本太郎、井上長三郎、此木三男[注 12]、一木平蔵、美濃部民子、室田豊四郎、井上リラ、勅使河原純、瀬川明甫、角章、彦一彦、織田泰児
主な出品作家(マンガ・イラスト)
[編集]泉昭二、茨田茂平、浜田貫太郎、杉浦幸雄、工藤恒美、岩本久則、近藤日出造、富田英三、やなせたかし、片山雅博、柳原良平、富永一朗、下谷二助、出光永、伊達圭次、永美ハルオ、ウノ・カマキリ、矢野徳、改田昌直、すずき大和、キリコ・タク、桜井勇、佐藤六朗
主な出品作家(劇画)
[編集]藤子不二雄、ちばてつや、石森章太郎、大和和紀、矢口高雄、とりいかずよし、手塚治虫、いがらしゆみこ、庄司陽子、里中満智子
主な出品作家(絵本I 原画)
[編集]安野光雅、おぼまこと、杉田豊、藤城清治、やなせたかし、長野博一、上野紀子、木村桂子、山口今日
第5回(1979年)
[編集]9月27日から10月12日まで開催。絵画、版画、立体、デザイン、イラスト、漫画、劇画、写真、映像、絵本、他企画展。5回展から、運営委員・会員制の設置。事務局長は田代光。顕彰故展精度発足。[8]
主な出品作家
[編集]立石鐵臣、大成瓢吉、白水興承、田島征彦、丸木位里、山藤章二、横尾忠則、長沢節、富永一朗、杉浦幸雄、ヒサクニヒコ、長新太、真鍋博、馬場のぼる、宇野亜喜良、小松崎茂[5]
企画展
[編集]武井武雄作品展/飛翻化蝶展(芸術療法)
第6回(1980年)
[編集]9月26日から10月12日まで開催。第6回より授賞制度新設。[8]
企画展
[編集]- イラストレーター150人の部屋
- 漫画家結集・合作大壁画展示(53名)
- 映像作画合成のための原画展(石井義雄)「西遊記、映画の夢の錬金士」
- 舞踏「大道芸人 -投げ銭に生きる男-」(ギリヤーク尼ヶ崎)
- 特別展示 岩中徳次郎
顕彰故展
[編集]第7回(1981年)
[編集]9月20日から10月6日まで開催。韓国現代美術作家の部追加。[8]
主な出品作家
[編集]山藤章二、田代素魁、黒田征太郎、赤塚不二夫、荻原賢次、小島功、サトウサンペイ、手塚治虫、藤子不二雄、加藤芳郎、柳原良平
企画展
[編集]近藤日出造遺作展/インドの師ラジニーシの光の下で創られた絵画とモビール展/イラストレーターの部展/漫画の部屋/韓国現代美術作家展
第8回(1982年)
[編集]9月21日から10月6日まで開催。[8]
企画展
[編集]江戸小紋の世界(小宮康孝)/ポーランドの現代版画/盲僧琵琶の世界(野田真吉の映像世界)
顕彰故展
[編集]第9回(1983年)
[編集]9月21日から10月6日まで開催。この年より漫画、劇画の部廃止となる。[8]
企画展
[編集]韓国民族刺繍/四君子書画/小松崎茂の部屋/世界の古典絵本(武蔵野美術大学所蔵品)
第10回(1984年)
[編集]9月27日から10月13日まで開催。映像の部廃止となる。[8]
企画展
[編集]丸木位里、丸木俊の世界
第11回(1985年)
[編集]9月18日から10月3日まで開催。[8]
企画展
[編集]世界の子どもの絵/組み木絵(中村道雄)
第12回(1986年)
[編集]9月18日から10月3日まで開催。[8]
企画展
[編集]桐生養護学校生徒作品展/加太こうじ紙芝居「黄金バット」実演と講演
第13回(1987年)
[編集]9月18日から10月3日まで開催。[8]
企画展
[編集]日本の手まり/ポーランド現代美術 スタニスワフ・ペイマン/アンナ・ソボル・ペイマン
第14回(1988年)
[編集]9月18日から10月3日まで開催。[8]
企画展
[編集]オランダ現代美術(11名66作品)
第15回(1989年)
[編集]9月19日から10月3日まで開催。[8]
第16回(1990年)
[編集]9月19日から10月3日まで開催。[8]
企画展
[編集]パックリ―・モス展/レニングラードの画家達「今」展
第17回(1991年)
[編集]9月19日から10月3日まで開催。[8]
企画展
[編集]現代美術と中世の音(東京都立美術館 講堂)/ロシア東と西3人の現代美術
第18回(1992年)
[編集]9月18日から10月3日まで開催。絵画、版画、立体、デザイン、イラスト、写真、絵本。[10]
企画展
[編集]韓国現代美術/「個性派一芸サラリーマンonステージ」(パフォーマンス)/PERFORMING ARTS「声の箱」
第19回(1993年)
[編集]9月18日から10月3日まで開催。[8]
企画展
[編集]縄文の鼓動脈打つ「土の芸術」猪風来/絵本古事記「神々の風景」油野誠一
第20回(1994年)
[編集]9月18日から10月3日まで開催。[8]
企画展
[編集]小松崎茂の世界/虹の部屋(橘幼稚園)
第21回(1995年)
[編集]9月19日から10月3日まで開催。[8]
企画展
[編集]特別出品 阪神大震災の現場より、会員吉見敏治氏の報告(含むデッサン)
第22回(1996年)
[編集]9月19日から10月3日まで開催。デッサンの部とイラストの部を統合[8]
企画展
[編集]長谷川集平絵本の世界
顕彰故展
[編集]第23回(1997年)
[編集]9月19日から10月3日まで開催。デッサンの部とイラストの部を統合[8]
顕彰故展
[編集]井上長三郎
第24回(1998年)
[編集]9月18日から10月3日まで開催。絵画、版画、立体、イラスト、写真、絵本。特別企画展(3人展)[11]
主な出品作家
[編集]中村岳、井上リラ
三人展 (企画展示)
[編集]カイサ・ハグルンド(絵画、スウェーデン)、ヴァシリス・セオドル(写真、スウェーデン)、城下るり子(平面作品)
顕彰故展
[編集]第25回(1999年)
[編集]9月18日から10月3日まで開催。韓国現代美術の部の廃止、5回ごとに「記念展賞」を新設[8]
企画展
[編集]ロシア現代画家2人展(アンドレイ・キム、オレグ・リャープクソフ)
第26回(2000年)
[編集]9月19日から10月3日まで開催。絵画、版画、立体、イラスト、写真、絵本。[12]
「戦艦大和の最期」(F100)、「サンダーバード」、浅草六区のスケッチ(昭和11年)など67作品の展示。
企画展・絵本・えばなし
[編集]信貴山縁起絵巻、伴大納言絵巻、鳥獣人物戯画、地獄草紙等の古典絵巻、近代の絵本復刻版、武井武雄童話集などもあった。世界図絵、靴ふたつさん、新年の贈り物等の西洋古典作品~近代の復刻版書籍展示など。
第27回(2001年)
[編集]9月19日から10月3日まで開催。[8]
企画展
[編集]富永秀夫の世界(絵本)
第28回(2002年)
[編集]9月19日から10月3日まで開催。絵画、版画、立体、イラスト、写真、絵本。企画展があった。[13]
イラスト
[編集]2001年末に亡くなった小松崎茂の遺作展示があった。ほか小妻要、沢登みよじ、濱野彰親、つだゆみ、メソポ田宮文明、藤原ようこう、西村春海、藤森玲子[14]等の作家の出品があった。
企画展
[編集]バングラデシュ現代美術展 8作家32作品の展示があった。
第29回(2003年)
[編集]9月18日から10月3日まで開催。韓国現代美術の部の開催。[8]
顕彰故展
[編集]深尾章介、岩崎年勝
第30回(2004年)
[編集]9月18日から10月3日まで開催。絵画、版画、立体、イラスト、写真、絵本。企画展があった。目録は第30回展記念出版で、多くのカラー図版が収録された。[15]
企画展
[編集]鴨下晁湖展/明日への飛翔(東京展で活躍・貢献された方から選出)
第31回(2005年)
[編集]9月18日から10月3日まで開催。[16]
特別企画
[編集]シンポジウム「今日の美術における<東京>」パネラー:赤津侃、永井龍之介、澤登丈夫、難波進
顕彰故展
[編集]第32回(2006年)
[編集]9月18日から10月3日まで開催。[17]
特別企画
[編集]シンポジウム「戦後ドイツ美術の新潮流」(私の留学体験とその後)対談:赤津侃、斎藤鐵心
第33回(2007年)
[編集]- 9月19日から10月3日まで開催。[18]
- 2月12日から17日に第一回春季会員展を開催。以降、毎年開催。
- 2月19日から3月1日まで受賞者展開催、以降毎年開催。
特別企画
[編集]シンポジウム「東京展 vs VOCA展 コンクールと団体展に見る日本美術の行方」/企画展示 VOCA賞受賞作品展示
第34回(2008年)
[編集]9月18日から10月3日まで開催。この年以降目録にカラー写真が多く用いられるようになった。[19]
特別企画
[編集]シンポジウム「世界の美術の潮流と日本の団体展の現在」
第35回(2009年)
[編集]9月18日から10月3日まで開催。[17]
特別企画
[編集]シンポジウム「東京展は何処から来て何処へ行くのか」/田中正造ドキュメンタリー映画「赤貧洗うが如き」上映
第36回(2010年)
[編集]7月6日~17日まで開催。東京都立美術館が改装工事のため2年間休館のため、ギャラリーくぼた本館・別館にて開催。[17]
第37回(2011年)
[編集]7月19日~30日まで開催。前年同様ギャラリーくぼた本館・別館にて開催。またギャラリーと提携して、アートフェスタ東京展という展示会を開催。東日本大震災チャリティーのための小品展を開催、義捐金を被災地へ送った。[17]
第38回(2012年)
[編集]- 1月17日~22日に、第一回「美術の祭典 関西展」を兵庫県立美術館 原田の森ギャラリーで開催。以降例年開催。[17]
- 9月9日から9月16日まで再び東京都立美術館にて「美術の祭典 東京展」開催。[17]
- 東京展プロジェクト in KANAGAWA をGallery SHIMIZU(横浜市中区)で開催。以降例年開催。
企画展
[編集]田所一紘展「水鏡シリーズ」/油野誠一:絵本原画と絵本展
第39回(2013年)
[編集]9月9日から9月16日まで東京展開催。グルグルハウス賞を新設。[5]
企画展
[編集]杉田五郎展/企画展示「インターネットと現代の絵師たち」実演:碧風羽/シンポジウム「若年層のいまどき芸術(美術)への思考法」
第40回(2014年)
[編集]9月9日から9月15日まで東京展開催。[5]中島ギドー名義で中島義道出品、以降例年出品。
企画展
[編集]山田實展/企画展示「インターネットと現代の絵師たち」/トークショー「現代美術とは」
第41回(2015年)
[編集]- 9月9日から9月16日まで東京展開催。[5]
企画展
[編集]横前裕子展
第42回(2016年)
[編集]- 9月9日から9月16日まで東京展開催。[5]
企画展
[編集]青柳芳夫展/本江邦夫講演会/シンポジウム
第43回(2017年)
[編集]- 10月7日から10月14日まで東京展開催。[5]
企画展
[編集]斎藤鐵心展/顕彰故展:中村正義/建畠晢講演会
第44回(2018年)
[編集]10月7日から10月14日まで開催。[5]
企画展
[編集]福井昭雄/3DCDゲーム体験/さいあくななちゃん作品メイキング動画
顕彰故展
[編集]中村正義
講演
[編集]中村正義とわたし 笹木繁男
第45回(2019年)
[編集]10月8日から10月14日まで開催。ただし12日、13日は台風19号のため美術館が休館。[20]
顕彰故展
[編集]第46回(2020年)
[編集]新型コロナウイルス感染拡大防止のため、2021年に延期。[21]
WEB東京展
[編集]10月7日から12月31日までオンライン展示会を実施。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b 東京展について
- ^ 東京展出品規定
- ^ 第38回目録 第38回美術の祭典東京展に寄せて 斎藤鐵心(アートスペース銀座ワン所蔵)2020年9月4日閲覧
- ^ 第38回目録 東京展略史(アートスペース銀座ワン所蔵)2020年9月4日閲覧
- ^ a b c d e f g h 第44回目録(アートスペース銀座ワン所蔵)2020年9月4日閲覧
- ^ 第一回目録
- ^ 第二回目録(アートスペース銀座ワン所蔵)2019年11月15日閲覧
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v 第30回目録 東京展誌 -内田信「東京展展史」による-(アートスペース銀座ワン所蔵)2020年9月2日閲覧
- ^ 第4回目録(アートスペース銀座ワン所蔵)2019年11月21日閲覧
- ^ 第18回目録(アートスペース銀座ワン所蔵)2019年11月24日閲覧
- ^ 第24回目録(アートスペース銀座ワン所蔵)2019年11月25日閲覧
- ^ 第26回目録(アートスペース銀座ワン所蔵)2020年9月1日閲覧
- ^ 第28回目録(アートスペース銀座ワン所蔵)2020年9月1日閲覧
- ^ 辰巳玲子
- ^ 第30回目録(アートスペース銀座ワン所蔵)2020年9月1日閲覧
- ^ 第31回目録(アートスペース銀座ワン所蔵)2020年9月4日閲覧
- ^ a b c d e f 第38回目録(アートスペース銀座ワン所蔵)2020年9月4日閲覧
- ^ 第33回目録(アートスペース銀座ワン所蔵)2020年9月4日閲覧
- ^ 第34回目録(アートスペース銀座ワン所蔵)2020年9月4日閲覧
- ^ [1]2020年9月14日閲覧
- ^ [2]2020年9月14日閲覧