花札
古くは「武蔵野」「花骨牌(はなかるた)」「花牌(はなふだ)」「花符(はなあわせ)」「花軍(はないくさ)」「花合戦(はながっせん)」「闘花(とうか)」とも表記され、「菅原」「弄花(ろうか)」「さしえん」「しば」「だめ」「相撲取り板」「かき餅焼き」「屋根板」「夜会」と隠語で呼ばれていた。
48枚というカード構成は、ポルトガルのトランプが伝来した名残である。2人で遊ぶこいこい、3人で遊ぶ花合わせという遊び方が一般的で、広く海外へも伝播する。100種類以上の遊技法が確認されており、愛好家には多人数で遊べる遠州花や八八の評価が高い。
歴史
[編集]日本にカードゲームが初めて伝播したのは16世紀後半(室町時代末期)で、南蛮貿易を契機にポルトガル人によって、鉄砲やキリスト教、カステラ、タバコ等と共に齎された。「カルタ(歌留多,加留多,骨牌)」とは、ポルトガル語でカードを意味する外来語で、札を裏貼りする製造法やゲームの進行が反時計回りなのも、この頃の名残である。天正年間(1573〜1591年)にカルタは国産化され、当時の天正かるたが1枚だけ現存し、兵庫県にある滴翠美術館に所蔵されている。
カルタを用いる賭博行為は、江戸時代を通じて一貫して禁止されていたが、それでも一向に減らないため、安永年間(1772〜1781年)に江戸幕府が小売店や製造元を一斉摘発したことで、以降は公然とは売買ができなくなった。一方、百人一首などの歌かるたは教育的なものとして公許されており、花かるたは禁制からの抜け道として、一部のカス札に古歌を入れて歌かるたに偽装、メクリかるたの代用品として、遅くとも寛政年間(1789〜1801年)までには、京都の山口屋儀助(井上家春)により「武蔵野」という名称で商品化され、江戸を中心とする武蔵国へ供給された。4スート(種)×12枚であったメクリかるたを、花かるたでは12スート(月)×4枚にして数字を隠してしまったわけで、メクリかるたの遊技法をそのまま踏襲することができた。様々なローカルルールが生み出され、製造元の物流事情により「地方札」が誕生した。
1807年(文化4年)12月に山形の幕府領内で出された御触書に「花かるたを使用して博奕をしてはならない」とある。1819年(文政2年)の大坂の濵松歌國の雑記に「當春、花合停止、武蔵野ともいふ歌留多也」とある。1831年(天保2年)2月に「花かるたは、メクリ札と紛らわしき品なので購入せぬこと」品川宿や新吉原遊廓の名主に通達が出される。1842年(天保13年)12月に京都で出された御触書に「お正月の婦女子の慰と言いながら、 花合せを賭け事に使用せぬこと」とある。1844年(弘化元年)に名古屋で出された御触書には「近頃、花合などと呼ばれるカルタを売り出し、賭け事ができると聞いている。今後は百人一首を除き、花合などと呼ばれるカルタは一切売り出さぬこと」とある。1860年(万延元年)11月、福井でも花合せの販売が禁止されている。
1881年(明治14年)12月31日までは、花かるたの売買は勿論のこと、所持することすら法律で禁止されていたが、1882年(明治15年)1月1日に施行された刑法典には明記されなくなった。1885年(明治18年)11月15日 大阪の書肆・綿屋(わたや)の当主・前田喜兵衛は、花かるたの販売が差支ないことを法律書より見出し、12月25日に内務省へ届け出ることで、東京京橋に八八屋花戦堂を開店して花かるたを販売した。以降、花かるたの製造販売が事実上の解禁となった。
1902年(明治35年)4月5日に骨牌税が制定されると、骨牌一組につき一律20銭(現在の価値で約620円)の収入印紙を製造業者に事前購入させ、商品に添付するよう義務付けた。1957年(昭和32年)6月14日、骨牌税法を全文改正したトランプ類税法が施行された。このトランプ類税は、1989年(平成元年)4月1日からの消費税導入に伴う間接税の整理により廃止となり、製造許可制度もなくなったため、誰でも自由に花かるたを製造販売することが可能となり、様々なキャラクターを用いたデザインの花かるたが販売されることとなった。
1902年(明治35年)に京都商業会議所が発行した『商報 135号』によると、この当時の一年の平均産出高は250万個で、主に裏張りは女性の内職になっており1500人が従事している。主税局統計年報告書の骨牌製造組数を比較すると、1923年(大正12年)がピークで、昭和時代に入ると右肩下りで衰退していくのがわかる。1954年(昭和29年)発行の『京都市の産業 : 京都市産業実態調査報告 第3輯』には骨牌業界について報告されている。1965年(昭和40年)発行の『京都府産業の展望』によると、全国で生産されるカルタは約300万個で、全国の製造業者はトランプのみが5社、花札のみが5社、両方が2社の計12社、そのうち京都市所在が10社で、全体の95%以上を占めている。『京都市の経済 1965』によると、花札、トランプ、麻雀の製造メーカーは、京都に9社あって従業員千名、年間生産高は42億円。そのうち花札の年間生産高は15億円で、花札製造メーカーの企業数は7社、印刷と裏貼り工程は外注である。『京都市の経済 1968』には、花札の生産高は年間6億円の352万組。京都が花札生産の全国に占める割合は100%と独占状態であった。任天堂の1960年(昭和35年)の売上高は3億8700万円、事業内容はトランプ68%、花札32%だったが、1979年(昭和54年)8月期の売り上げ構成を見ると、花札・トランプ類は、わずか5%で7億円強、その比重はかなり小さくなっている。
1950年(昭和25年)までには表紙の機械印刷が浸透して、合羽摺り(ステンシル)による製法は完全に途絶えていた。1975年(昭和50年)に京都の松井天狗堂が手摺りによる製造を復活させたが、2016年(平成26年)12月5日に三代目当主・松井重夫が死去したことで再び途絶えた。2020年(令和2年)に京都府長岡京市にある鈴木天狗堂が、手摺り花かるたを復活させてネット販売した。2024年(令和6年)、兵庫県芦屋市に住むスウェーデン人デザイナーのマルクス・リケルト(リケルトかるた)が、手摺り花かるたを製造販売している。
現在、花かるたを製造販売している企業としては、大石天狗堂、任天堂、田村将軍堂、エンゼルプレイングカードがある。
明治時代の警察当局は、花かるたが賭博用具であることから「花札」と蔑称で呼んでいた。製造元の広告や価格表では「花かるた」と表記されていたが、「花札」という呼称に侮蔑的な意味合いが込められていたという認識は次第に薄れ、昭和時代になると書名でも「花札」という呼称が使われ始める。現代では製造元の大石天狗堂や任天堂のサイトでも「花札」と表記しており、一般名詞化している。それでも、ヤクザや賭博との結びつきがイメージされることから、修学旅行に生徒がトランプを持参して遊ぶことは許可されても、花札は禁止するといった慣習があった。
明治時代に八々花の図柄が確定して以降、製造元でも新機軸を打ち出すことは少ないが、2003年(平成15年)には任天堂がクラブニンテンドーのポイントのグッズ交換用景品として、自社のビデオゲームに登場するキャラクター「マリオ」をあしらった「マリオ花札(非売品)」を製造した。2015年(平成27年)11月には、景品版とは異なる全ての札がオリジナル柄の「マリオ花札」が商品化された。
種類
[編集]日本各地の花札
[編集]- 八々花
- 江戸時代や明治時代の人々は、「武蔵野」の柳に描かれた妖怪・雨降小僧を『仮名手本忠臣蔵・五段目』に登場する盗賊・斧定九郎と認識していたため、1886年(明治19年)、花かるたを合法的な商品として一般販売しようと目論む前田喜兵衛が、イメージアップを図るため、京都や大阪の製造元に掛け合って、斧定九郎から平安貴族で能書家・小野道風へと図柄を差し替えた。メクリカルタの偽装品であることを隠すため「武蔵野」には鬼札が付属されていなかったが、地域によっては柳の札を鬼札や化札として遊んでおり、次第に柳のカス札が赤色に着色されるようになった。それで「八々花」では、柳のカス札に大津絵をモデルに「雷太鼓に鬼の手」を採用して、赤色で塗り潰した。明治時代に大流行した技法「八十八」を、関西では「八々」、関東では「横浜花」「吟味花」「綿羊花(らしゃめんばな)」と呼んでおり、この「八十八」を遊ぶための商品として、金銀彩を排除して、シンプルな図柄にリニューアルされた「八々花」は、急速に全国へと波及した。
- 虫花
- 大阪を中心に遊ばれる「むし」という技法では、牡丹(6月)・萩(7月)の札を使用しないため、総数の札の厚さは48枚と合致させつつ「むし」専用札として製造された。臼井日月堂では株札と虫花のデザインをミックスした「開化むし札」販売していたことがある。古来、カルタ遊びのことを隠語で「虫」と呼んでいたことから、40枚の花かるたを「大阪虫」、48枚の花かるたを「京虫」というように区別されていたことがあり、最終的に「虫」が40枚の花かるたを使った技法を意味するようになったと考えられる。「八々花」と差別化するため、鶯が小さく、鹿が前脚を曲げているなど「武蔵野」の図柄が採用されている。現在では絶版となり、流通品を残すのみ。
- 越後花
- 新潟県で使用された。「武蔵野」に金銀彩を施した豪華版で、歌かるたに偽装するために一部のカス札には古歌が記されており、柳の光札は妖怪の雨降り小僧(江戸時代の人たちは斧定九郎として認識)である。あまめはぎが描かれた鬼札が付属する。菊のカス札にある「本四枚」とは、芯紙3枚と表紙1枚を貼り合わせて作られていることを意味する。新潟県で製造されていたわけではなく、京都から供給されていた。「金画花」とも呼ばれ、「北海花」や「備前花」の祖型にあたる。 主に「大役」「小役」という技法で遊ばれたが、「小役」の遊び方は記録が残されていないこともあり不明である。現在では大石天狗堂から復刻版が販売されている。
- 越後小花
- 新潟県の上越地方および佐渡地方で使用された。一般的なサイズより小さく、柳の光札には蓑笠を被った妖怪・雨降小僧が描かれており、狸の尻尾が見えている。芒のカスの1枚には小さな月が描かれ、桐にも短冊の札があり、あまめはぎが描かれた鬼札が3枚あるのが特徴。新潟県で製造されていたわけではなく、京都から供給されていた。 オランダロッテルダムの博物館に収蔵されている江戸時代に製造された現存最古の「越後小花」は、越後花同様の古歌が記されており、鬼札は1枚のみ。どのような遊び方だったのかは不明。昭和後期(1970年頃)までは大石天狗堂や任天堂で製造しており、得意先は上越や糸魚川の色町の芸者衆であったと伝承されている。現在では大石天狗堂から復刻版が販売されている。
- 北海花
- 北海道で使用された。「金画花」とも呼ばれる。明治時代に屯田兵として全国から北海道へ人々が集まったため、出身地によって札の月順が異なる不都合が生じていた。その問題を解消するため、「越後花」の図柄をベースに月数を丸印で入れることで対処した。札に月数を入れるスペースの関係で鶴の首が短くなり、鹿の脚が真っ直ぐになるなどの特徴が見られる。また、短冊札にも月数が書き込まれている。北海道で製造されていたわけではなく、京都から供給されていたが、「八々花」の普及により、昭和初期の時点で絶版となっている。1920年(大正9年)発行の赤田猩々屋の『御注文便覧』、1928年(昭和3年)発行の任天堂の『かるた原価表』に掲載されている。大石天狗堂が製造した札が現存する。
- 備前花
- 岡山県を中心に中国地方で使用された。「金画花」とも呼ばれ、「北海花」から古歌を排除したもの。岡山県で製造されていたわけではなく、京都から供給されていたが、現在では絶版。1926年(昭和2年)発行の田中商會の『かるた大卸値段表』、1928年(昭和3年)発行の赤田猩々屋の『かるた卸売原価表』、1930年(昭和5年)発行の任天堂の『かるた原価表』に掲載されている。岡山県浅口郡玉島(現・倉敷市)の榮玉堂が京都の田中商會に製造させた札が現存する。
- 越前花
- つちや書店の『花札を初めてやる人の本』『マンガで覚える 図解 花札の基本』『イラストでまるわかり!花札であそぼう!!』では、まるで「越前花」が存在したかのように書かれており、その根拠は、1920年(大正9年)発行の赤田猩々屋の『御注文便覧』に「越前花」と記載されているからであろうが、これは「備前花」の誤植であって実在しない。
- 松引花
- 「武蔵野」の図柄をベースに古歌を排して、松と芒、梅と桜を区別できるように、赤や青の横線が複数引かれている。柳のカス札が赤色で塗りつぶされているが雷太鼓ではない。金銀彩の入った「備前花」をより簡素にしたタイプ。1926年(昭和2年)発行の田中商會の『かるた大卸値段表』に掲載されている。昭和初期の時点で絶版となっている。田中玉水堂が製造した札が現存する。
- 阿波花/金時花
- 徳島北東部が発祥地であることから「阿波花」と呼ばれ、金太郎の札があることから「金時花」とも呼ばれる。1886年(明治19年)以降に、阿波市の坂東笑和堂が製造して、四国、中国地方を中心に流通していたが、坂東笑和堂の廃業に伴い京都の製造元が製造するようになった。基本的な図柄は「北海花」を模倣しつつ、短冊札と素札(カス札)に月数を入れ、札が識別しやすいように、松と芒のカス札だけに古歌が残された。鶴は左向き、桜の幔幕には菊の紋章が描かれ、柳の光札は「八々花」を真似て小野道風を採用している。山城與三郎商店が明治初期に製造していたメクリカルタの「赤八」には、金太郎の図柄の鬼札が付属しており、坂東笑和堂がそれを真似て採用したと考えられる。現在では大石天狗堂から復刻版が販売されている。
- 山形花/奥州花
- 山形県を中心に東北地方で使用され、江戸時代から山形で製造されていた。「越後小花」と同様、桐のカスの1枚に短冊が描かれ、芒のカス札の一枚には小さな月が描かれており、5点の短冊札とする「秋田花(あきたばな)」という技法で遊ばれた。また2枚あるカス札のうち1枚には黒点が打たれ、メクリカルタのオウルのスートであることを暗示している。ぽっちゃりとした彩色が特徴。山形市の製造元の廃業に伴い、京都で製造するようになったが、現在では絶版。
- 花巻花/南部花
- 岩手県を中心とする東北地方で使用され、寛政年間(1789〜1801年)までには花巻で製造されていた。「奥州花」と同系統で、骨擦りは「武蔵野」を忠実に再現しているが、芒の満月そのものを赤く着色するなどの特徴を持つ。鶴田屋が製造した豪華な金彩を施した「金入花巻花」も販売され、芒のカス札の一枚には小さな月が描かれていることから、この札は短冊扱いだった可能性が考えられる。花巻市の製造者の廃業に伴い、京都の任天堂で製造するようになったが、現在では絶版。
- 敷島花札
- 大正11年に日本骨牌製造が売り出した八々花と株札とメクリカルタの札のデザインをミックスさせたオリジナル。現在では絶版。
- 金入花/惣金花
- 昭和初期に日本骨牌製造が製造した八々花に金銀彩を施した豪華版花かるた。柳は小野道風。現在では絶版。
- 小花/豆花/豆型八々花/懐中花/道中花
- 携帯しやすいように小型化した花札。
- 薄手花/薄口花/東京花
- 手の小さい女性でも扱いやすいように薄く作られた花かるた。東京の花柳界で使用されていたが、現在では絶版。
- 十三月花/十四月花/七々花
- 4人でも遊びやすいように札の枚数を増やした花かるた。十三月は笹、十四月には蓮が描かれている。特注により、松井天狗堂で製造されたが、現在では絶版。
外国に伝播した花札
[編集]- 大連花
- 元々は明治時代に大阪の製造元が作っていた「鱗花」と呼ばれていたもので、赤短は「青海波」、くさは「射線」、青短は「三崩し」の背景模様が特徴。国内で大量に売れ残っていた関係で、日本から満洲国の大連や奉天へ輸出され。在住邦人に使用され、満洲国では骨牌税が免税だったこともあり、日本へのお土産品としても重宝がられた。初期のタイプは柳の短冊にも背景模様が描かれていたが、租界地用として製造されるようになると、柳の短冊札からは背景模様が消えた。租界地から内地へ持ち帰った場合には、税関による許可印(横浜、神戸、門司など、通過させた税関、左から昭和年、月、日の順)が押された。大石天狗堂や任天堂では、手摺りから機械印刷への切り替わり時期ということもあり、2つのタイプが現存する。大石天狗堂の機械印刷の草短の斜線が左上から右下へと逆に変更されている。 満洲国で製造されていたわけではなく、京都や大阪の製造元から供給されていたが、現在では絶版。製造元や供給地においても「大連花」とは誰も呼んでおらず、後世に研究者がつけた呼称であり、大連に限定して供給されていたわけでもないので適切な呼称とは言えない。
- 花闘(ファトゥ:화투)
- 日本から朝鮮半島へ李氏朝鮮末期に伝えられた花札。
- 現在はプラスチック製で、商標が桐ではなく、薄の光札(20点札)の満月内に書かれている(メーカーによる)、藤の札が逆向きになっている(これもメーカーによる)といった細かい違いがある。赤短には「紅短(ホンダン、홍단 / 紅短 / hongdan)」・青短には「青短(チョンダン、청단 / 靑短 / cheongdan)」という字がそれぞれハングルで書かれている。光札には漢字で「光」と書かれた赤い丸印が入っている。また桐を11月、柳(雨)を12月とみなす。ほかにパックの中に柳のカス札の予備や、ジョーカーに似た特殊なカス札がはいっていることがあるが、実際のゲームには使わないことも多い。特殊なカス札は、手札やめくり札の中に出てきたら、それを自分の取った札に追加して(カス2枚または3枚に相当する)、山からもう一枚引くことができる。日本では伝統的なカードゲームといった地位に落ち着いた印象だが、韓国では現在でも「3人集まれば必ず花札をする」と言われるほど人気があり、「国民ゲーム」と称されるほどであるが、戦後、韓国で花札賭博が横行し社会問題になった。
- こいこいを元にした「ゴーストップ」がもっとも盛んであるが、ほかに六百間や、おいちょかぶ系統の「ソッタ」なども行われる。
- 韓国の他、延辺朝鮮族自治州などの朝鮮系住民の間でも行われているが、北朝鮮では禁止されているという。
- サクラ(ハワイの花札)
- 各札の点数や、どの役に使えるかを示すインデックスが札の上に書かれていることがある。ハワイでは短冊が10点・日本で通常10点とする札が逆に5点になる。また、柳に小野道風の札も5点と数える。カス札は0点である。ハワイの花合わせは「さくら」と呼ばれ(肥後花とも)、不如帰・八橋・猪(クサと同じ月の5点札)のように見慣れない出来役がある。
- パラオの花札
- パラオ共和国では、花札が盛んにプレイされており、「Hanakuda(ハナクダ)」とも呼ばれている。韓「梅に鶯」は光札、「黄桐」は種として扱う。「ニソロ」「アサヒ」など独自の出来役がある。2 - 4人でプレイでき、4人の時は2対2のチーム戦で遊ばれている。
花札トランプ
[編集]花札・株札(10月までを使用)・トランプのいずれにも使えるもの。任天堂はじめ複数の業者が製造している。13月=閏(雪)は八重垣姫(光)、竹に雀(タネ)、黄短冊(タン)、黄雪[注釈 1]の4枚、0月=ジョーカー(蓮)はカス札2枚。何も書かれていない予備の白札。業者によってはキングとジョーカー用のタネ札の絵柄(虎や龍ほか)や花種、短冊の文字(「さゝめゆき」など)が異なる。
構成
[編集]花札の絵柄は以下の通り。札の名称や漢字はもっとも一般的なもの。「短冊・赤短・青短」は「丹札・赤丹・青丹」とも書く。
なお、札の絵は昔は手描きだったものもあるので、細かな違いは多数あるが、一般的な八々札と構図が大きく違うものは特筆した。
月 | 植物 | 画像 | 光札(20点札) | 画像 | 種札(10点札) | 画像 | 短冊札(5点札)[絵札 1] | 画像 | カス札(1点札) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1月 | 松(まつ) | 松に鶴(つる)[絵札 2] | - | 松に赤短[絵札 3] | 松のカス(2枚) | ||||
2月 | 梅(うめ)[絵札 4] | - | 梅に鴬(うぐいす)[絵札 5] | 梅に赤短[絵札 3] | 梅のカス(2枚) | ||||
3月 | 桜(さくら) | 満開の桜に幔幕(まんまく) | - | 桜に赤短[絵札 6] | 桜のカス(2枚) | ||||
4月 | 藤(ふじ)[絵札 7] | - | 藤に時鳥(じちょう)[絵札 8] | 藤に短冊 | 藤のカス(2枚) | ||||
5月 | 杜若(かきつばた) | - | 杜若に八橋(やつはし)[絵札 9] | 杜若に短冊 | 杜若のカス(2枚) | ||||
6月 | 牡丹(ぼたん)[絵札 10] | - | 花王(かおう)に蝶(ちょう) | 牡丹に青短 | 牡丹のカス(2枚) | ||||
7月 | 萩(はぎ)[絵札 11] | - | 山萩(やまはぎ)に山猪(やまじし) | 萩に短冊 | 萩のカス(2枚) | ||||
8月 | 芒(すすき)[絵札 12] | 芒に望月(もちづき)[絵札 13] | 芒に雁(かり)[絵札 14] | - | 芒のカス(2枚) | ||||
9月 | 菊(きく)[絵札 15] | - | 菊に盃(さかずき) | 菊に青短 | 菊のカス(2枚) | ||||
10月 | 紅葉(もみじ) | - | 楓(かえで)に鹿(しか)[絵札 16] | 紅葉に青短 | 紅葉のカス(2枚) | ||||
11月 | 柳(やなぎ)[絵札 17] | 柳に小野道風[絵札 18] | 柳に燕(つばめ)[絵札 19] | 柳に短冊 | 柳のカス(鬼札)[絵札 20]。 | ||||
12月 | 桐(きり) | 梧桐(ごとう)に鳳凰(ほうおう) | - | - | 桐のカス(3枚)[絵札 21] |
植物と月数の対応
[編集]めくり系のゲームでは、植物と月数の対応に関する知識は必要ないが、おいちょかぶを花札を使って遊ぶ場合には、月数を覚えていないとプレイできない。植物と月数との対応は旧暦によるものだが、「柳に燕」や「桐」のように季節と一致しない札がある。
技法によっては、上記の構成の表とは異なる対応になっているものがある。例えば、ひよこでは、柳が2月、桐が6月、牡丹が11月、梅が12月である。これは中京地方において一般的な対応であった[1]。
臼井日月堂・当主の臼井茂助が考案しした「開化むし札」は、虫花と株札が融合しており、桐が6月、柳が7月になっている。ただ一部の地域では、この6月と7月が逆に認識されていたりする。
絵柄に関する注釈
[編集]- ^ 江戸時代中期の花かるたの短冊は、紐で枝や茎などにぶら下げられた構図で、青短冊は青(紺)だが赤短冊は白っぽい(太陽・幕の一部・盃や植物の赤色はそのまま残っている)もので文字は書かれていなかった。明治初期に桜の短冊に「みよしの」と書かれたものが現れ、松や梅が「宇良す(うらす)」、立三本の役が成り立つ月(藤・杜若・萩)の短冊に「たてさん」、すべての短冊に「〇月(1月は正月)」表記など、様々なパターンが存在した。また明治時代中期ごろから紐が省略され、短冊が宙に浮いた様な現在の構図になった。
- ^ 現在の札は「松の隙間から鶴が見える」だが、現存最古の江戸時代中期の札では「松の手前に鶴がいる」という構図だった。
- ^ a b 「あかよろし」と書かれている。(「の」のように見える2文字目は「可」の草書体、いわゆる変体仮名の「か」()である。)「赤はまあ良い」という意味。
- ^ 江戸時代中期では鶯の札のみ紅梅で後は白っぽい花だった。
- ^ 現在の花札ではこの鳥の背中側の体色が鮮やかな緑でメジロに似ている(ただし目は赤い)ものが多いが、江戸時代中期の花札ではかなり鈍い色(杜若や桐の葉よりも黒っぽい)で実際のウグイスに近い色だった。明治24年以前には現在のカラーリングのものが出現している。
- ^ 「みよしの」と書かれている。古くから桜の名所とされた、奈良県吉野地方の美称である。
- ^ 黒豆(くろまめ)や黒飯(くろまんま)とも言う。ただし江戸時代中期の頃はかなり淡い花の色で後期頃から色が濃くなってくる。
- ^ 江戸時代中期の花札では背景が無く藤の花とホトトギスのみだった。その後、明治前期に赤い雲が現れるようになり、八々花の成立に伴い「赤い三日月」が出現するようになった。
- ^ 八橋とは愛知県知立市にある地名である。構図は杜若の名所で知られる無量寿寺の庭園に因み、在原業平の和歌でも有名である。この札のことを菖蒲と書いた書籍が多く、すっかり杜若と菖蒲が混同されているが、正しくは杜若である。
- ^ 江戸時代中期の頃は得点札は白牡丹、カス札は紅牡丹のものと紅白2本という構図だった。
- ^ 赤豆(あかまめ)/赤飯(あかまんま)とも言う。ただし江戸時代中期の頃はかなり淡い花の色で後期頃から色が濃くなってくる。
- ^ 「薄」とも書く。坊主(ぼうず)、山(やま)とも言う。 現在のものは芒の丘ようになっているが、初期図柄は、芒の原が描かれており、これが武蔵野を象徴するイメージと重なった。樹木のないハゲ山を坊主山と言ったことから「坊主」と呼ばれるようになった。
- ^ 現在のものは「真っ赤な夜空」というものが主流だが江戸時代中期の頃はほぼ紙の地色で月に色を塗ってあるだけだった。 「無地or薄青(初期)→黄色or薄紅(幕末)→真っ赤(明治)」と変化した。木版合羽刷り時代は、白は印刷しない部分の色なので木版合羽刷りでは周囲を塗ってそこだけ残すのが難しかったため、下か左端の裾が隠れた月だった。
- ^ 江戸時代と現在は3羽の雁が「く」の字に飛んでいるが、明治20年代頃の一時期漢数字の「三」のように並列に並び空を覆いつくすように飛ぶ姿に描かれ、このため雁は大きな鳥とみなされ、鶴と鳳凰の札の3枚で「大鳥」という役があった。
- ^ 江戸時代中期の頃はカス札の1枚(赤菊)以外白菊だった、江戸時代後期頃から黄赤の花のものが現れてくる。
- ^ 無視したりすることを意味する隠語の「しかと」は、10月の札の鹿がそっぽを向いているので、「鹿十」(しかとお)が語源である。
- ^ 雨(あめ)とも言う。
- ^ 「柳に番傘をさして走る奴」は元々は妖怪であったが、江戸時代の人たちは『仮名手本忠臣蔵・五段目』に登場する「斧定九郎」と認識していた。
- ^ 現在は「黄色に赤」と派手な色の燕になっているが、江戸時代中期の頃は普通の燕の色(黒で喉が赤い)だった。
- ^ この札のみ他の雨札とデザインが大きく異なるが、江戸時代から明治初期にかけては他のカス札同様に「柳の木だけ描かれている」という札であった。鬼札として機能させるため、べったりと赤で塗り潰されるようになり、八々花では大津絵の「雷光の太鼓釣り」の図像が採用された。
- ^ 桐のカス札のうち1枚にはよく製造元が印刷されている(例:任天堂など)。桐のカス札の1枚は色違いとなっており、技法によっては特別な点数を持つ。
札点
[編集]種類 | 葡語 | 点数 | 枚数 | 備考 |
---|---|---|---|---|
光 | pica | 20 | 5 | 松に鶴(日の光)、桜に幕(春の光)、芒に月(月の光)、柳に小野道風(雷の光)、桐に鳳凰(星の光) |
種 | tênue | 10 | 9 | 動物や鳥が描かれている札と杜若に八橋、菊に盃。語源は種籾で、種とは主要な札という意味。 |
短冊 | tanto | 5 | 10 | 短冊が描かれている札 |
粕 | gás | 1 | 24 | 植物だけが描かれている札(0点とする場合がある)。語源は粕籾で、粕とは最も下等な札という意味。 |
地域や技法によって札点が異なる場合がある。例えば、「六百間」では光札および「梅に鴬」は50点、短冊と桐の黄色のカス札は10点、カス札は0点として計算する。ただし青短3枚あるいは文字入りの赤短3枚を揃えると加点がある。「遠州花」において光札は30点、ただし小野道風は種扱いで10点、カス札は0点として計算する。
ややこしいケースでは「素倒(すだおし)」では手役の時点でカス・5・10・20点判定は八八のものを使用し[注釈 2]、競技開始後は「短冊札=1点」、「動物や鳥の描かれているもの(桜に幕・桐に鳳凰除外)=5点」、「植物だけ+桜に幕・桐に鳳凰=10点」と計算する。
こいこいでは役を作る時にどれがタネでどれがカスであるかの区別が必要なだけで、得点を計算するときは札点は無視される。
札の撒き方
[編集]- 手十場八(2人用):山札20枚。「トッパに配る」と言う。
- 手八場八(2人用):山札24枚。8枚がゲームに使用されずに余る。「こいこい」における配り方。
- 手八場〇(3人用):山札24枚。場札がないので、親の優位性を解消できるが、ほとんど採用されていない。
- 手七場六(3人用):山札21枚。
- 手六場九(3人用):山札18枚。桐のカス3枚を抜いた45枚を使用。
- 手五場八(4人用):山札20枚。
不正を防止するため、ひとりで札を混ぜて配ったりせず、3人の分担作業で行うことを推奨する。
- ビキ(親の左隣)が札を混ぜる。
- 「焼きそば/ウォッシュ・シャッフル」と呼ばれるテーブルや座布団の上でグシャグシャとかき混ぜた後、ヒンドゥー・シャッフルかオーバーハンド・シャッフルを数回入れてから山札を作る。札が裏貼りされているので硬く、リフルやファロー・シャッフルするのは不向き。
- ナカ(親の右隣)が望む。
- 山札を上下に分け、入れ替える。トランプで言う「カット」。
- 親が配る。
- 手七場六の場合、ナカ→ビキ→親の順で、反時計回りに4枚ずつ配り、場に3枚を晒してから、ナカ→ビキ→親に3枚ずつ配ってから、最後に場に3枚晒す。その後で、山札を寝かせるように倒して置く。こうすれば、山札を崩すことなく、一番上の札だけが取りやすくなる。札を1枚ずつではなく纏めて配るのは、ポルトガル人が伝えた作法が引き継がれているからである。
作法として、配っている最中に、手札を取って見てはいけない。親の不正を警戒して「親手を貰う/親手を取る」と言って、親の手札と自分の手札を取り替えることができるからである。手札を見てしまうと、親手を貰うことはできない。一度と交換した札を別の人が交換を要求できる。
配っている最中に、札が1枚でも表向きになったり、枚数を配り間違えた場合、山札が足りなくなったり、余った場合には、「毀(こわし)」と呼ばれる無勝負となり、配り直しとなる。親は過料として一貫ずつを全員へ支払う。
黒裏と赤裏のペア・デックを交互に使用することで、配っている間にもう一組をシャッフルできるので時間短縮になり、スムーズに進行できる。
遊技法
[編集]めくり系
[編集]場札と手札を合わせ、さらに山札をめくって場札と合わせるもの。合わせた札は自分のものになる。取った札の組み合わせによって役を作ることができる。花札のゲームとしてはもっともよく行われ、イタリアのスコパやスコポーネ、英語圏のカシノ、中国で牌九を使った釣魚、トランプを使った撿紅点と類似しており、カシノ系のゲームとして分類される。山札からめくって場札と合せ取るルールは日本で独自に考案されたものと見られている。
- てんしょ/本花(3人用:「メクリかるた」の技法の転用)
- お花 (4 - 6人用:「武蔵野」を使用して遊ばれた)
- こいこい (2人用:会津地方発祥とされる)※意味は「来い、来い」
- 鬼こいこい(2人用:岐阜県発祥とされる)
- 八八 (3 - 7人用:大阪府発祥とされる)
- 二人八八 (2人用:関東地方)
- 抜き八八 (2人用)
- 花合わせ/馬鹿花/絵取り/目取り/数取り/目勝馬鹿花(3人用)
- 一二三(いちにさん)(3人用:関東地方)
- 二四六(にしろく) (3人用:関東地方)
- 三六九(さぶろっく)/馬鹿七短(3人用:関東地方)
- 平屋 (ひらや) (3人用:関東地方)
- 薬喰い (2人用)
- 六短/七短 (2人用:関東地方)
- 一束行 (2人用:関東地方)
- 十枚/十枚持ち (2人用:関東地方)
- 松桐坊主 (2人用:関東地方)
- トッパ (2人用:北海道)
- 百間バッサリ/百落ち/百落し(2人用:大分県)
- 三百間/坊間 (2人用:岡山県)
- 六百間/チャンガ/やまやく(2人用:大阪府,広島県,愛媛県,大分県,満洲)
- 大分臼杵市の馬鹿花 (4人用:大分県臼杵市)
- 奈良大仏前 (4人用:奈良県)
- 江多花/八十八元の鬼喰い (3人用:高知県)
- 讃岐花/讃岐めくり (2人用:近畿地方)
- 尾張花/名古屋花/百花 (2人用:中京地方)
- 遠州花/猪牡忠臣/與市兵衛(2 - 5人用:静岡県西部)
- 須原花 (3 - 5人用:木曽郡大桑村須原地区)
- 横浜花/一二四 (3人用、横浜市)
- 田無花/ピン転び/大物揃 (多人数でサシ勝負:田無市)
- 前橋花/千六十/カス十 (3人用:群馬県前橋市)
- 仙台花 (3 - 7人用:宮城県)
- 秋田花(3人用:秋田県 ※芒と桐に短冊の5点札がある「山形花」を使用して遊ばれた。技法は「八八」と同じ)
- 千本花/膳所花/メクラ花 (3人用:京都府,大津市)
- 馬鹿 (3人用:北海道)
- 加賀 (2人用:福井県,石川県)
- むし/むし花/むし引き/大阪むし/おち/十落/百落(2人用:大阪府)
- はち/盆遊び/夏遊び (2人用)
- 蹴転(けころ) (2人用:関東地方 ※ルールは『素倒』、役は『はち』)
- 素倒 (3人用:近畿地方)
- 菖蒲担ぎ (3人用:静岡県沼津市)
- 三十ツッパリ/三束ツッパリ/三百ツッパリ/三百ずっぱい(3人用:関東地方)
- 三束五十 (3人用:関東地方)
- スベタめくり/千十 (3人用:中京地方)
- 五文引 (3人用:中京地方)
- 運試し (3人用:関東地方)
- 猪鹿蝶 (2 - 3人用:「六百間」の派生系、北海道)
- 大役 (2 - 7人用:新潟県)
- 九十花/チュンチュン (3 - 7人用:岡山県)
- さくら (2 - 7人用:ハワイ、元は「肥後花」)
- ゴーストップ (3人用:韓国)
よみ系
[編集]台札に対して1つ上の月の札を出していき、手札を早くなくした人を勝ちとする。トランプを使ったポープ・ジョーンに類似しており、ゴーイングアウト系、シェディング系、ストップ系のゲームとして分類される。
かぶ系
[編集]札の月数の合計の1の位が9に近いほど強く、基本的には親と子で勝負するが、張り子同士で勝負させるアトサキは、トランプを使ったバカラ、牌九に類似しており、アディング系、バンキング系のゲームとして分類される。株札を使うゲームもここに含めた。
- おいちょかぶ
- 京カブ/虫カブ (関西地方)
- 引きカブ/打ちカブ(中京地方,東海地方)
- 三枚カブ (青森県)
- 五枚カブ (中京地方)
- 十枚カブ/相撲取りカブ(四国地方,北陸地方)
- カブ作り/エイ目作り(中京地方,東海地方)
- 樺太カブ (樺太)
- 四一(シッピン)
- 高目 (関東地方)
- かちかち/じゅんじゅん/ドンドン/トット(関西地方)/ソッタ /セッタ(韓国)/ソロ(沖縄県)
- アトサキ/バッタ撒き/手まき/蒔いた蒔いた/ジャンガー/ジャンガの後先
- 床々/やり取り/指し絵/指込/やり取り床々/初二番/半貫/胴取りカブ
- キッタ撒き/コイ撒き ※めくり系の場札に撒いた札で並行してやる賭博
きんご系
[編集]札の月数の合計が15に近いほど強く、基本的には親と子で勝負する。かぶ系とは異なり、15を超えるとバーストする。トランプを使ったブラックジャックに類似しており、アディング系、バンキング系のゲームとして分類される。
- きんご/シッピン/ドサリ/乙六/十五枚/十五取り/十五の高め取り
あてもの系
[編集]親が選んだ特定の札を子が当てると勝ちとするもの。
- 絵丁半/場丁半
- 絵本引き/絵樗蒲/六一(ムツイチ)
- 寶引 (北海道)
- 四ツ割源平 (北海道)
- 六ッ割/チョン(中京地方,東海地方)
- 樗蒲一/六点チョボ/チョツボ(四国地方,和歌山県,福井県)
- 猪鹿蝶 (関東地方)
- やっちゃば (関東地方)
- ピッタめくり/ボンサンめくり(福井県)
詳細不明
[編集]文献に技法名だけが出てくるもの。括弧内は引用元。
- 揚花 『司法警察特殊語百科辞典』
- 三枚花 『司法警察特殊語百科辞典』
- 抜花 『司法警察特殊語百科辞典』
- 間上花 『司法警察特殊語百科辞典』
- 大鹿児島『労働調査報告:復刻版8』
- 小役 (新潟県)※めくり系 『花かるたトランプ引方並に秘傳』
- キンキラ(大分県)※めくり系 『賭博と掏摸の研究』
- ツン (山口県)※かぶ系 『賭博と掏摸の研究』
- 押ヘタ (岡山県)※かぶ系 『賭博と掏摸の研究』
- スジヨミ(京都府)※よみ系 『賭博と掏摸の研究』
- ニゲ (愛知県)※めくり系 『賭博と掏摸の研究』
- 牛紫 (仙台市)※めくり系 『賭博と掏摸の研究』
- ダンダン(秋田県)※めくり系 『賭博と掏摸の研究』
- 高下 (函館市)※めくり系 『賭博と掏摸の研究』
- 上総メクリ(房総地方)※めくり系 『賭博:花札・さいころ・イカサマ手口』
- 発度直切(はっとじぎり:上州地方)『賭博:花札・さいころ・イカサマ手口』
- ざらちゃん 『花札ゲーム28種』『ゲーム探検隊』
- 狸 『花札ゲーム28種』『ゲーム探検隊』
- 手の筋 『花札ゲーム28種』『ゲーム探検隊』
- 善し悪し 『花札ゲーム28種』『ゲーム探検隊』
- よろしい 『花札ゲーム28種』
- 三勝(さんかつ)『花札ゲーム28種』
- 八雲 『ゲーム探検隊』
- こざら 『ゲーム探検隊』
- 飯田花 『最後の読みカルタ』『賭博事件裁判要旨集 (刑事資料集5)』
- かしこ花 『最後の読みカルタ』
- おおた/おうた 『最後の読みカルタ』
- カギ喰い 『最後の読みカルタ』
- 四下(ししずく) 『最後の読みカルタ』
- シチカケ 『最後の読みカルタ』
- 光坊主 『最後の読みカルタ』
- 目カス 『最後の読みカルタ』『賭博事件裁判要旨集 (刑事資料集5)』
- 駄目 『最後の読みカルタ』
- 馬の子(むまのご)『最後の読みカルタ』
- どんびき 『最後の読みカルタ』
- 絵丁半/場丁半
用語
[編集]特定のゲームで使用する用語は除く。
- はな/花見(はなみ)/札掴み
- 花札遊び、花札賭博のこと。
- サシ(さし)
- 2人競技のこと。差し向かって勝負をすることから。
- ミツ(みつ)
- 3人競技のこと。三つ巴で勝負をすることから。
- 月(つき)
- ラウンドのこと。あるいは、札に割り振られた月数のこと。例:松=1月
- 年(ねん)
- 12回(12ヶ月)戦の勝負を行う1ゲームのことで「どん」とも言う。6回(6ヶ月)戦のことを「半どん」と言う。
- 季(き)
- 3回戦(3ヶ月)ごとの単位。「こいこい」では1季で3連勝すると、その得点を倍づけにするというオプションルールがある。
- 親(おや)/胴親(どうおや)
- 親は札を配るディラーであり、スタートプレイヤーでもある。最初に場札と合わせられる点で優位とされる。誰も役ができなかったり、札点が同点だった場合には、親権(おやけん)により、親の勝ちとするルールが採用されることもある。
- 中(なか)/中絵(なかえ)/胴中(どうなか)/胴二(どうに)
- 二番目に手番を行う人。親やビキに比べ、不利とされる。
- 尾季(びき)/終(びき)/退(ひけ)/尾来(びけ)/大引(おおびき)
- 最後に手番を行う人。ビキが最終手番を行うので、最後まで残した手札は必ず獲得できるので有利とされる。:ポルトガル語で「vicke(下っ端)」が語源で、書籍では「退」や「末」の漢字を充て「ビキ」とルビが振られている。
- 親決(おやぎめ)/親定(おやさだめ)/親見(おやみ)/親めくり
- 各自が山札をめくって、親を決めること。基本的には一番早い月数の人が親になる。同月札を引いた場合には、札点の高い札が優先する。両者が同月札のカスの場合には、該当者だけで引き直す。以降はラウンドの勝者が親になる。
- 切る/繰る(くる)/練る(ねる)/突く(つく)
- 札を混ぜること。通常はビキの担当。トランプで言う「シャッフル」。
- 望む(のぞむ)/望み(のぞみ)/嫌わせる/手を入れる
- 山札の2つに割って上下を入れ替えること。通常は胴二の担当。北海道では「天を切る」と言う。トランプで言う「カット」。山札の一番上を指でチョコンと触れてカットしないことを「ケチをつける」、これを英語では「ノッキング」と言う。
- 撒く(まく)
- 札を配ること。通常は親の担当。トランプで言う「ディール」。
- 手札(てふだ)/手(て)/持札(もちふだ)
- 各自に配られた札のこと。トランプで言う「ハンド」。
- 場札(ばふだ)/場(ば)
- 場に表向きで並べられた札のこと。トランプで言う「レイアウト」。
- 晒札(さらしふだ)
- 表向きで公開された手役の札こと。
- 山札(やまふだ)/山(やま)/めくり札/箱札
- 裏向きで積まれた札のこと。トランプで言う「ストック」や「デック」または「パイル」。
- 打札(うちふだ)
- 手札から出す札のこと。
- 合札(あいふだ)
- 手札と合わせられる場札のこと。
- 取札(とりふだ)
- 合わせ取った札のこと。各自の前に表向きで点数ごとにまとめて置き、公開しなければならない。
- 捨札(すてふだ)
- 場札と合わない1枚を手札から出して、それが場札になること。トランプで言う「ディスカード」。
- 死札(しにふだ)
- そのラウンドでは使用されない札のこと。
- 化札(ばけふだ)/鬼札(おにふだ)
- 他の代わりになる札のこと。トランプで言う「オールマイティ」や「ジョーカー」。「越後花」や「越後小花」にはあまめはぎを描いた鬼札が付属。「阿波花」には金太郎が鬼札として付属。「ぽか」では松に鶴、梅に鶯、松に赤短の3枚が化札。9月9日が重陽の節句ということから「こいこい」では菊に盃がカス札としても見なすことができ、「お花」「遠州花」「八八」では、手役を作る際に全ての柳の札がカス札と見なされる。「むし」では雷公の太鼓釣り(柳のカス)が鬼札、「六百間」では小野道風が「ガジ」と呼ばれる化札として、どの札でも合わせ取ることができる。「がじる」とは「何でも喰う」という意味。
- 上札(じょうふだ)/大札(おおふだ)
- 得点の高い光札や種札のこと。
- 素札(すふだ)/空札(からふだ)
- 得点の低いカス札のこと。
- 役札(やくふだ)
- 出来役を構成する札のこと。
- 影札(かげふだ)
- 役札が取れるカス札のこと。
- 決札(きまりふだ)
- 必ず自分が獲得できる札のこと。
- 床札(とこふだ)
- 自分専用の山札のこと。
- 台札(だいふだ)
- 最初に表向きで場に出される札のこと。トランプで言う「リードカード」。
- 場四(ばし)/馬鹿場(ばかば)
- 場に4枚の同月札が出ている状態のこと。配り直しになるのが一般的だが、親が全て獲得するルールの場合もある。
- 場三(ばさん)/飛び込み三本/しっぽり/ひっぱり
- 場に3枚の同月札が出ている状態のこと。「しっぽり」とは落ち着いた状態を意味する。
- ヒコ札/一引(いちひき)/一丁引(いっちょうびき)/引(びき)/引ずり(ひきずり)/落とし札
- 場に3枚の同月札が出ている時に、残り1枚の札のこと。無理矢理引っぱるという意味の「ひこずる」が語源。ヒコ札を出すことで、その月札4枚全てを獲得する。
- 羽(はね)
- 同月札2枚が手札にあること。トランプで言う「ペア」。
- とんこば
- 札を裏向きで切ろうとするとき、その中に表向きで入っている札のこと。
- 初代
- 場に初めて出た月札のこと。
- 二代
- 初代が合わせ取られ、残こされたもう一組の同月札のこと。
- 手役
- 最初に配られた手札の組み合わせによって決まる役のこと。本来、不利な札が揃っている場合の救済処置として手役がつくようになっている。トランプで言う「メルド」。手役を公開することを「場晒(ばさらし)」、その札のことを「晒札」と言う。
- 出来役
- 取札の組み合わせによって出来る役のこと。
- 不見(みず)
- 配られた手札をまだ見ていない状態のこと。
- 取り出し
- 札を取り始めること。
- 王手/立直(リーチ)
- 残り1枚で出来役が完成する状態のこと。
- 尻(しり)/尻餅(しりもち)/ケツを舐める
- 札を合わせてから、山札をめくると、同月札が出てくること。
- 打ち当て/ぶち当て
- 捨札に出した同月札を山札からめくり、ズバリ合わせ取ること。
- 起こし
- 山札からめくった札で、場札を合わせ取ること。:合わせることができないと「起きが悪い」と言う。
- 定(さだめ)
- 捨札にすると、相手に出来役が完成しかねないため、安易には捨てられない運命にある札のこと。
- 叩く
- 光札や種札がまだ出ていない状態で、カス同士、あるいは、カスと短冊を合わせ取ること。
- 踏む
- 山札から場にめくられたばかりの札や、相手が捨札にしたばかりの札を合わせ取ること。
- かぶり
- 同月の高得点札を2枚とも一度に合わせ取ってしまうこと。例:桜の光札を桜の赤短冊札で合わせる
- 割り出す
- 同月札2枚が手札にある状態で、そのうち1枚を場に出すこと。
- 割る/壊す/預け
- 相手が目指している出来役を妨害すること。
- 割れる
- ひとつの出来役を構成する札が二人に分かれて、すでにその出来役が成立しなくなっている状態のこと。
- 打ち分かれ
- 妨害し合った結果、互いに出来役ができない状態になっていること。
- 打ち上げ
- ビキが押さえていた札を都合により放出せざるを得なくなり、その札を上席である親かナカに合せ取られること。
- 押さえる/押さえ札
- 先に手番が回る人が目指している出来役に関係する札を最後まで手札から出さずに阻止すること。
- 袖引き
- 複数の出来役が作れそうな手札を持ちながら、結局どちらの役も完成せずに終わること。語源は両袖を引っ張られることから。
- 掴み
- 出来役を構成する札が、手札に全てある状態のこと。
- 引っ掛け
- 手札に同月札が2枚ある状態で、場札に3枚目が出た時に合わせ取り、残り1枚も取れる状態にすること。
- お手から小判
- 場に同月札が2枚出ている状態で、まず影札を出して、次の手番で高得点の同月札を出して合せ取ること。
- お手つけ
- 何の指針もないまま、取り敢えず場札を合わせ取っておくこと。
- 手詰まり/手詰まる
- 場札と合せられる札が手札になく、しかも迂闊に札を捨てられない状態のこと。
- 手卸し/付け打ち
- 場に同月札2枚がある状態で、残り2枚が手札にある場合、手札の2枚とも出して、全ての同月札を獲得してしまう行為のこと。もしくは、すでに初代がいずれかに獲得されている状態で、二代の2枚が手札にある場合、それら見せて両方の札を獲得してしまう行為のこと。どちらも手順を省略したもので、他人より手札が1枚減ってしまうため、最終手番には山札からめくるだけになる。
- 手渡し
- 手札に役札を持ちながら、合わせ取る機会がないまま場に出して、それを相手に取られてしまうこと。
- お土産
- 仕方なく捨てる光札のこと。出す側は「お土産をつける」、取る側は「お土産を貰う」というように言う。
- なめ
- 山札の一番下にある札のこと。ビキがめくる札。:語源は、山札の一番下→舌→舐める
- 中なめ
- 山札の下から二番目にある札のこと。ナカがめくる札。
- 持ちなめ
- 山札の一番下にある札を合わせ取る札が手札にあること。
- ぶっく
- ひとりで赤短と青短の出来役を作ること。元はトランプ用語で「セット」を意味する。
- しま/四枚揃(しまいぞろ)
- 四枚(しまい)の略で、同月札4枚を獲得すること。
- 吹き消し/ふけ
- 敢えて札を合わせ取らないようにプレイして、札点を規定の点数以下に抑えること。成功すると勝負を流したり、勝利したりする。
- 半どん
- 12ヶ月戦の半分である6ヶ月戦のこと。:語源は、1876年(明治9年)から公官庁で土曜日半休のことを「半ドン」と呼んだことに由来する。
- 基準点/原点
- 全ての札点の合計を競技人数で割った点数のこと。これを基準に得失点を求めるゲームが多くある。例:3人競技では88点など
- 目勝ち
- 札点の合計が一番高いこと。
- 吟味役/銀見役(ぎんみやく)
- ゲーム終了後の決算の結果、一番得点が高い優勝者のこと。吟味とは、調べ確かめるいう意味。
- 掃除(そうじ)
- ラウンドの勝負が終わったら、札を集めて、次のラウンド(月)に備えること。黒裏と赤裏のかるたを用意しておけば、次のビキが先ほどまで使っていた札を回収してシャッフルする。そのため、ビキのことを「掃除番」と言ったりする。この間に新たな親は、裏紙が異なるもう一組のかるたをシャッフルして配ることで、時間が短縮されてスムーズに進行できる。
不正行為
[編集]俗に言うイカサマやインチキ。
- 目印/いかめん
- 特定の札に傷やシミなどの細工を施す、俗に言う「ガン札」。厚みを変える「厚薄ガン」、爪で印をつける「押ガン」「爪ガン」、札に塗料を塗って光を反射するようにする「ピカリ」、札の縁を針の先で小さな目印をつける「針仕様」、札の角に馬の毛などを入れる「角仕様」、手触りを変える「ざらすべガン」等がある。
- さくら
- 競技に参加していない第三者が、競技に参加している者と組んで対戦者の手札を覗き、それを相手に手振りなどのジェスチャーで伝える行為のこと。
- 鉄砲
- 予め自分の好む順序に組み合わせた山札を隠しておいて、山札ごとすり替えてしまうこと。
- 手品/隠し取り
- 光札などの役札を一枚、一番上に乗せておいて、親が札を切るときに、その一枚が一番上と一番下を移動させて、自分の手札にしようとすること。
- 尻のぞき
- 山札の一番下を覗き見る行為のこと。
- 揉み込み/持ち込み
- 別名「手八を撒く」。自分の手へわざと1枚多く8枚配って、知らんふりしてゲームを進めること。
- 切り込み/作り込み/込み
- 親が札を切り混ぜる際に、自分の好む順序に組み合わせること。
- 役逃げ
- 他人に手役があるとき、自分の手札1枚を隠して、札が足りないと主張して流してしまうこと。
- 二枚取り/蹴込み
- 山札から2枚まとめて取ってしまうこと。
- 吹き替え/打ち返し
- 手札を他の札と取り換えてしまうこと。
- 吸いつけ
- 掌に札を吸いつけて隠すこと。
- 即替え/ポン替え
- カブ賭博の際、合計すると九(カブ)になる二枚または三枚の札を手中に隠しておいて、すり替えてしまうこと。
- 床抜き/床上げ
- カブ賭博の際、分かっている札を山札の一番下に置き、必要に応じて、山札の一番上に繰り上げること。
- おかる/うつし
- 相手の札を盗み見すること。『仮名手本忠臣蔵』で遊女のお軽が由良之助にきた密書を二階から鏡を使って覗き見する場面から発生した言葉。
製造元によるブランドの等級
[編集]各製造元により、独自基準で等級が設定されており、ランクによる図柄の違いは基本的にはなく、品質の違いは実物を比較しても、素人には判別できるものではない。
- 大石天狗堂 1800年(寛政12年)創業
- ・金天狗 (1等)‥‥ ¥2,200
- ・銀天狗 (2等)‥‥ ¥1,650
- ・リンカーン(3等)‥‥ ¥1,320
- 紙質の違いはなく、職人の手作業による裏貼りの仕上がり具合で選別。
- 戦前は、内地向けで14ランク、外国向けで13ランクに分類されていた。
- 任天堂 1889年(明治22年)創業
- ・大統領 (1等)‥‥ ¥2,200 紙質は表裏ともに最上級。オリジナル・フラップ式ケース。1枚1.48グラム
- ・天狗 (2等)‥‥ ¥1,650 紙質は表は普通で裏は最上級。オリジナル・フラップ式ケース。1枚1.25グラム
- ・都の花 (3等)‥‥ ¥1,100 紙質は表裏ともに普通。汎用プラスティック製ケース。1枚1.25グラム
- コンビニ流通の「千代桜」(¥1,133)は、「都の花」と同等品。
- 1928年(昭和3年)の原価表(カタログ)によると、「八々花」は20ランクに分類されていた。
- 1973年(昭和48年)に裏貼り工程が機械化。
- 白札に刻印された番号は、西暦下二桁、月、日の順で、製造年月日を示している。ただし、昭和期に製造された白札の番号は、日、月、昭和年の順になっている。
- 田村将軍堂 1921年(大正10年)創業
- ・紫宸殿 (1等)‥‥ ¥4,950 最高級品
- ・大将軍 (2等)‥‥ 廃番 代表的高級品
- ・満点 (3等)‥‥ 廃番 高級品
- ・栄光 (4等)‥‥ 廃番 中級品
- ・京乃錦 (5等)‥‥ 廃番 中級品
- ・花くらべ (6等)‥‥ 廃番 中級品
- ・夜桜 (7等)‥‥ 廃番 下級品
- ・春風 (8等)‥‥ 廃番 下級品
- 白札に刻印された番号は、昭和年、月、日の順になっている。
- 現在では等級を廃止。紫宸殿は裏紙に美濃手漉き和紙を使用。
- エンゼル 1956年(昭和31年)創業
- ・元禄 (1等)‥‥ ¥1,500
- ・千鳥 (2等)‥‥ ¥1,000
- 自社工場で裏貼り工程を機械化。等級は検品による仕分け選別。
登録商標に関する民事訴訟
[編集]現○商會 vs 琴水堂
1925年(大正14年)、現○商會の溝口節夫は、第65種骨牌でマル正の商標登録を受けた。これに対して琴水堂(山崎佐都)は、「自分等は明治38年頃から骨牌製造業を営み、その商品には布袋の腹にマル正を図形し、上部に布袋號、下部に純良張貫と付記した商標を使用し、これを取引者間に周知せしめていた。且つ溝口はその登録出願前からこれを領知していた」という理由から登録無効審判を請求。始審も抗告審も「登録を経ない標章については法は商標権の如き権利を認めていない」として、琴水堂が敗れた。
任天堂 vs 大石天狗堂
1953年(昭和28年)、大石天狗堂が「アブラハムリンカーン大統領」で登録した商標に対して、任天堂は「大統領」の商標と類似するという理由から登録無効審判を請求。
1954年(昭和29年)、裁判官は非類似の商標であるとして、任天堂の請求は成り立たないと審決。
1956年(昭和31年)、任天堂は東京高等裁判所に提訴。
1958年(昭和33年)6月、東京高等裁判所は、任天堂が花かるたの国内シェアの60%を占めるだけでなく、「大統領」が任天堂の最も良質な製品であると認められているから、「アブラハムリンカーン大統領」はそれと混合誤認されるおそれが大きいとして、特許庁の審決を取り消す。その判決を不服とした大石天狗堂は上告。
1960年(昭和35年)12月、東京高等裁判所は大石天狗堂の上告を棄却して、上告費用を大石天狗堂が負担とするものとした。
1961年(昭和36年)4月、大石天狗堂と任天堂は和解。別件の登録取消審判請求と審議申立事件を取り下げ、以降、大石天狗堂は「大統領」の文字を含む商標は一切使用しないことを約して「リンカーン」に変更。任天堂は「金天狗」を「天狗」へと戻した。
1962年(昭和37年)7月、特許庁は原審決を破棄すると、任天堂の引用商標の指定商品と抵触する商品についての商標登録を無効とした。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ 司法省調査課『名古屋管内賭博要覧(司法資料第121号)』1927年、8頁。 (国会図書館近代デジタルライブラリー)
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関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 歴史・遊びかた|花札・株札 - 任天堂
- 『花札』 - コトバンク