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還暦土俵入り

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
1956年に蔵前国技館で行われた出羽海理事長の還暦土俵入り

還暦土俵入り(かんれきどひょういり)は、相撲において現役時代の最高位が横綱の元力士還暦(60歳)を迎えた際に、「長寿祝い」として行われる特別な横綱土俵入りのことである。

概要

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大相撲において現役時代の最高位が横綱の元力士が還暦を迎える際に行われる特別な土俵入りで、1937年2月6日太刀山峯右エ門上野精養軒で開催したのが始まりである。開催場所は、還暦を迎えた際に日本相撲協会親方として在籍していれば両国国技館で行われることが多いが、退職していれば近隣のホテルなどで行われる(最初の還暦土俵入りである太刀山も後者に該当する)。太刀持ち、露払いもかつての弟子や現役・引退後問わず後輩横綱が務めることが多い[注釈 1]

還暦土俵入りの場合は通常の横綱土俵入りで用いられる物とは別に、特別に製作された赤い綱[注釈 2]を使用する。化粧廻しの前に垂らす御幣は白色を基本とするが、2015年に行われた千代の富士貢の還暦土俵入りでは、紙垂(しで)も綱と同様の赤色に染めた物を使用した[1][2]

還暦土俵入りを行うには現役時代のような健康体でなければならず、存命でも病気などを理由に一部所作を省略したり、還暦土俵入りを辞退したこともある。それでも赤い綱は記念で製作され、それを受け取るだけの場合もあるが、なかには赤い綱を受け取ったかどうか不明の元横綱もいたり、還暦前に死去する元横綱もいるなど(朝潮太郎のように赤い綱の作成まで済ませながら還暦前年に急死した例もある)、還暦土俵入りが行われる頻度は少ないのが現状である。

なお太刀山より以前、第12代横綱の陣幕が72歳であった1901年に、靖国神社社殿竣工式で土俵入りを奉納している。

還暦土俵入りの一覧

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※年齢順

四股名 年寄名跡 生年月日 還暦を迎えた日 開催年月日 開催地 露払い 太刀持ち 行司 備考
第22代
太刀山峯右エ門
(退職後) 1877年8月15日 1937年8月15日 1937年2月6日 上野精養軒 8代木村瀬平[注釈 3]
(前3・太刀ノ海
8代鳴戸[注釈 3]
(大関・太刀光
三役格・8代木村庄三郎[3][注釈 4]
第27代
栃木山守也
8代春日野 1892年2月5日 1952年2月5日 1952年5月31日 蔵前仮設国技館 10代藤島
(横綱・安藝ノ海
横綱・羽黒山 22代木村庄之助
第31代
常ノ花寛市
7代出羽海 1896年11月23日 1956年11月23日 1956年6月10日 蔵前国技館 横綱・千代の山 12代時津風
(横綱・双葉山
理事長在任中。
第44代
栃錦清隆
9代春日野 1925年2月20日 1985年2月20日 1985年5月7日 両国国技館 9代出羽海
(横綱・佐田の山
10代二子山
(横綱・若乃花
27代木村庄之助 理事長在任中。
第45代
若乃花幹士
10代二子山 1928年3月16日 1988年3月16日 1988年4月24日 13代鳴戸[注釈 3]
(横綱・隆の里
18代間垣[注釈 3]
(横綱・若乃花
理事長在任中。
第48代
大鵬幸喜
一代大鵬 1940年5月29日 2000年5月29日 2000年6月8日 13代九重
(横綱・千代の富士
一代北の湖
(横綱・北の湖
29代木村庄之助 脳梗塞の後遺症により、一部所作[注釈 5]のみ披露。
第52代
北の富士勝昭
(退職後) 1942年3月28日 2002年3月28日 2002年2月23日 ホテルイースト21東京 8代八角[注釈 3]
(横綱・北勝海
13代九重[注釈 3]
(横綱・千代の富士
32代式守伊之助
第57代
三重ノ海剛司
14代武蔵川 1948年2月4日 2008年2月4日 2007年6月14日 ホテル・グランパシフィック・メリディアン 前頭9[注釈 6]雅山 前頭10[注釈 6]出島 34代木村庄之助 武蔵川部屋創立25周年パーティーで披露[注釈 7]
第55代
北の湖敏満
一代北の湖 1953年5月16日 2013年5月16日 2013年6月9日 両国国技館 一代貴乃花
(横綱・貴乃花
13代九重
(横綱・千代の富士
山崎敏廣
(36代木村庄之助)
[注釈 8]
理事長在任中。
第58代
千代の富士貢
13代九重 1955年6月1日 2015年6月1日 2015年5月31日 横綱・日馬富士 横綱・白鵬 三役格・木村恵之助[注釈 4]
第63代
旭富士正也
9代伊勢ヶ濱 1960年7月6日 2020年7月6日 2021年10月3日[4] 8代安治川[注釈 3][注釈 9]
(関脇・安美錦
ダワーニャム・ビャンバドルジ[注釈 3]
(横綱・日馬富士
41代式守伊之助
第61代
北勝海信芳
8代八角 1963年6月22日 2023年6月22日 2023年9月2日[5] 前頭1[注釈 10][注釈 6]北勝富士 13代君ヶ濱[注釈 3][注釈 9]
(関脇・隠岐の海
幕内格・2代木村要之助[注釈 4] 理事長在任中。
稽古総見と併せて一般公開。

存命でありながら還暦土俵入りを実施していない横綱の一覧

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※年齢順

四股名 年寄名跡 生年月日 還暦を迎えた日 備考 赤い綱
第28代
大錦大五郎
(退職後) 1883年3月22日 1943年3月22日 実施せず。 作成有無不明。
第24代
鳳谷五郎
7代宮城野 1887年4月3日 1947年4月3日
第34代
男女ノ川登三
(退職後) 1903年9月17日 1963年9月17日
第37代
安藝ノ海節男
1914年5月30日 1974年5月30日
第42代
鏡里喜代治
13代立田川 1923年4月30日 1983年4月30日 脳梗塞の後遺症により実施せず。 作成。
第50代
佐田の山晋松
12代境川 1938年2月18日 1998年2月18日 理事長時代の騒動の責任を取る形で辞退。
第49代
栃ノ海晃嘉
10代春日野 1938年3月28日 1998年3月28日 現役時代、右上腕の筋肉を断裂した後遺症により断念。
第53代
琴櫻傑將
12代佐渡ヶ嶽 1940年11月26日 2000年11月26日 体調不良の理由等により辞退。
第54代
輪島大士
(退職後) 1948年1月11日 2008年1月11日 実施せず[注釈 11] 作成有無不明。
第56代
若乃花幹士
18代間垣 1953年4月3日 2013年4月3日 脳内出血の後遺症により実施せず。
第62代
大乃国康
12代芝田山 1962年10月9日 2022年10月9日 歩行に杖が必要なため実施せず。

還暦前の横綱の一覧

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※年齢順

四股名 年寄名跡 生年月日 還暦を迎える日 備考
第66代
若乃花勝
(退職) 1971年1月20日 2031年1月20日
第67代
武蔵丸光洋
15代武蔵川 1971年5月2日 2031年5月2日
第65代
貴乃花光司
(退職) 1972年8月12日 2032年8月12日
第68代
朝青龍明徳
1980年9月27日 2040年9月27日
第70代
日馬富士公平
1984年4月14日 2044年4月14日
第69代
白鵬翔
13代宮城野 1985年3月11日 2045年3月11日
第71代
鶴竜力三郎
24代音羽山 1985年8月10日 2045年8月10日
第72代
稀勢の里寛
13代二所ノ関 1986年7月3日 2046年7月3日
第73代
照ノ富士春雄
(現役) 1991年11月25日 2051年11月25日

脚注

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注釈

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  1. ^ 土俵入り参加回数は千代の富士の4回が最多(大鵬の露払い、北の富士の太刀持ち、北の湖の太刀持ち、自身)。次いで2回の初代若乃花(栃錦の太刀持ち、自身)、北の湖(大鵬の太刀持ち、自身)、日馬富士(千代の富士の露払い、旭富士の太刀持ち)、北勝海(北の富士の露払い、自身)がいる。
  2. ^ その綱は「赤綱」と呼ばれるが、これは俗称であって正式なものではない。
  3. ^ a b c d e f g h i 弟子(引退済み)
  4. ^ a b c 主役の元横綱が師匠を務める(務めていた)部屋に所属の行司。
  5. ^ 当時四股踏みが不可能だったため、せり上がりの構えと立った状態での柏手のみ行った。
  6. ^ a b c 弟子(当時現役)
  7. ^ この時は還暦7か月前だったが、武蔵川部屋の記念パーティーに合わせて早めに行った。
  8. ^ 土俵入り実施直前の2013年5月場所限りで停年退職。
  9. ^ a b 断髪式前のため、大銀杏姿で務めた。
  10. ^ 日時が番付発表後のため、他の現役関取と異なり土俵入り実施後に開催される場所の地位。
  11. ^ 池田雅雄は「相撲」の『質疑応答』で、輪島が事実上、破門されるような形で相撲協会を去った経緯からして、還暦土俵入りが行われることはないであろうという私見を述べていた。

出典

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  1. ^ 千代の富士(九重)の還暦土俵入り
  2. ^ ウルフ感無量「まんざら、悪くないね」 デイリースポーツ 2015年6月1日記事
  3. ^ 『激動の昭和スポーツ史⑪相撲上』83頁。
  4. ^ 伊勢ケ浜親方が還暦土俵入り「ここまでやってきて良かった」元日馬富士が太刀持ち」『デイリースポーツ』2021年10月3日。2021年10月3日閲覧。
  5. ^ 八角理事長が赤い綱締め還暦土俵入り ファンから「北勝海!」の声上がり「ジーンと来ました」」『日刊スポーツ』2023年9月2日。2023年9月2日閲覧。

関連項目

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