Ωカーブ
Ωカーブ(オメガカーブ)は、道路や線路において急勾配を越えるために急カーブを繰り返した結果として、上空から見た場合にギリシア文字の"Ω"のように見える路線形の通称である。
なお、つづら折り(ヘアピンカーブ)やループ線はΩカーブとは区別される。
例
[編集]例えば、Ωカーブは以下の場所に存在している。
道路
- 名阪国道: 福住IC~五ヶ谷IC~天理東ICの間[A 1]
- 国道422号: 三田坂バイパスの三重県伊賀市三田地区
- 国道308号: 暗越奈良街道の大阪府東大阪市東豊浦町地区
- 福島県道6号郡山湖南線: 三森バイパスの福島県郡山市逢瀬町多田野地区[R 1][R 2][R 3][R 4]
- 茨城県道42号笠間つくば線: 茨城県石岡市小幡地区
- 奈良県道187号福住上三橋線: 奈良県奈良市中畑地区にある旧道部分(名阪国道のΩカーブ沿いの側道部に、小さなΩカーブがある。)
- 島根県道37号松江鹿島美保関線: 島根県松江市鹿島町片句地区
- 島根県道338号美保関八束松江線: 中海堤防道路が島根県松江市美保関町下宇部尾地区の沖合で湾の形状に沿ってΩカーブを形成している
鉄道
- 留萌本線: 峠下駅と恵比島駅の間の恵比島峠の付近(2023年(令和5年)4月1日廃止)
- 石勝線·根室本線: 新得駅の西方の増田山の近辺
- 釜石線: 陸中大橋駅周辺 - 仙人峠の近辺
- 上越線: 岩原スキー場前駅の東方
- 飯田線: 田切駅と伊那福岡駅の間(田切オメガカーブ)[R 5]
- 小海線: 小淵沢駅と甲斐小泉駅の間および甲斐大泉駅と清里駅の間
- 中央東線: 東塩尻駅と塩尻駅の間の東塩尻信号場の付近
- 山陽本線: 三石駅と上郡駅の間
- 土讃線: 佃駅と箸蔵駅の間
- Autostrada A26: Città metropolitana di Genova, Liguria, Repubblica Italiana.
- モンゴル縦貫鉄道: ホンホル駅 , トゥブ県, モンゴル (ホンホルΩカーブ)
下記の場所にも、現存していないが、過去にはΩカーブが存在していた。
- 名神高速道路: 関ケ原ICの西方 - 今須トンネル掘削の末の線形改良により消滅した
- 伊奈川森林鉄道: 越百川の相ノ沢発電所の上流方
- 下津井電鉄線: 東下津井駅と下津井駅の間
- 韓国鉄道KORAIL嶺東線: 東栢山駅と道渓駅の間
- Ωカーブの例
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名阪国道のΩカーブ区間と奈良県道187号福住上三橋線との立体交差部周辺
名阪国道
[編集]名阪国道[R 6]の上記区間がΩカーブとして特に有名である。 この区間は大和高原側から奈良盆地方面へ順に『高峰カーブ』·『中畑カーブ』·『米谷カーブ』·『大道カーブ』の4つのカーブから成り[R 7]、急カーブや急勾配が11km連続して標高差414メートルを繋いでいる[R 8]。 特に大道カーブの最大下り勾配6%および最小曲線半径150mは道路構造令で定められている限界値である[R 9]。
そのため最高速度は、名阪国道で構造規格第一種第三級(設計速度80km/h)で建設された区間では実態に合わせようと70km/hに引き上げられたが、第一種第四級(設計速度60km/h)で建設されたΩカーブの区間では60km/hに制限されている[A 2]。 しかし、名阪国道全体が自動車専用道路の高規格で建設されているせいもあって大半の車輛が80km/h以上で進入して来るのが現状である。 そして、名阪国道の通行料が無料であることから、特にトラックなどの大型車の混入率も40%と高く、昼夜問わず混雑し、渋滞が頻発している。
このために、死亡事故率が全国ワースト1位である名阪国道の中で、本区間はその6割の事故が集中している[R 8]場所であり、特に下り車線での事故が多い[R 10][R 11]。 降雨によるスリップ事故をはじめとして、濃霧による視界不良による衝突事故も発生している。 下り車線においてカーブ外側となる中央分離帯のコンクリートブロックには車輛の接触痕が多数存在しており[R 12]、本線外への転落事故すらも発生している[R 13][R 14][R 15]。 また、冬季の積雪による路面凍結の中でも約4割の車輌がノーマルタイヤでの走行であり[R 16]、これが更なる事故を誘発している。
事故対策として、本区間には多機能型排水性舗装が施され[R 17]、道路照明もナトリウムランプから演色性に優れるセラミックメタルハライドランプへ交換されている[R 16]。 その結果として、スリップ事故の抑制が確認されている[R 18][R 7][R 16]。 また、ドライバーに対する連続式視線誘導施設が、その点灯時には道路線形の認知とカーブ流入時の十分な減速を、消灯時には路面前方の目標物を探しながらの減速を、それぞれ促すべく設置されている[R 19]。
注釈・出典
[編集]- ^ 本区間を奈良県道192号福住横田線が急勾配で短絡している。
- ^ 福住ICから天理東ICまでの下り線の区間の一部では、速度制限が当初は50 km/hに設定されていた。
- ^ 『主要地方道郡山湖南線三森I工区を供用開始します。』(pdf)(プレスリリース)福島県 土木部 道路整備課 · 福島県 県中事務所 道路課、2021年11月27日 。
- ^ 「「Ωカーブ」誕生 郡山湖南線三森I工区まもなく開通 ヘアピンカーブ解消へ」『乗りものニュース』メディア·ヴァーグ、2021年11月25日。
- ^ 『【郡山湖南線三森I工区が開通します!!】』(pdf)(プレスリリース)福島県、2021年11月28日 。
- ^ 『郡山湖南線 三森Ⅰ工区の道路改良工事について』(pdf)(プレスリリース)福島県、2021年12月31日 。
- ^ “伊那電車軌道(後の伊那電気鉄道)/Ωカーブ 伊那谷の悲劇が生んだΩカーブ” (PDF). 国土交通省 中部地方整備局. 2022年3月31日閲覧。
- ^ “中部圏と関西圏を結ぶ大動脈 名阪国道 より安全で円滑な道路をめざします” (PDF). 国土交通省 近畿地方整備局 奈良国道事務所. 2022年3月31日閲覧。
- ^ a b 渡邉大介. “一般有料道路のアセットマネジメントと新しい舗装技術(民間有料道路の維持管理事例)” (PDF). 国際協力機構. 2019年2月7日閲覧。
- ^ a b 喜多良樹. “「魔」は道にあらず人にあり” (PDF). 京都府トラック協会. 2021年12月31日閲覧。
- ^ “道路構造令について (2) ~道路構造の各規程~” (PDF). 国土交通省. 2022年3月31日閲覧。
- ^ 米田優人「名阪国道、魔の「Ωカーブ」なぜ生まれた 急勾配6%も」『朝日新聞デジタル』朝日新聞社、2018年10月20日。
- ^ 「大型トラック横転 23歳女性運転手が軽傷 名阪国道」『産経ニュース』産経新聞社、2016年12月27日。
- ^ 「【特集】事故多発「名阪国道Ωカーブ」」『MBSテレビ』毎日放送、2017年5月2日。オリジナルの2017年5月9日時点におけるアーカイブ。
- ^ 「名阪国道でトラック転落 男性運転手が意識不明の重体、ガードレール倒して10メートル下へ」『産経ニュース』産経新聞社、2016年6月19日。
- ^ 「トラック衝突事故、名阪国道上で“炎上” 1遺体見つかる 奈良」『産経ニュース』産経新聞社、2016年7月3日。
- ^ 「トラック35m転落、1人死亡 奈良の名阪国道」『毎日新聞』毎日新聞社、2016年7月3日。
- ^ a b c 「国道25号名阪国道事故対策検証と考察」(PDF)『近畿地方整備局研究発表会』第2011巻第11号、国土交通省 近畿地方整備局、02頁。
- ^ 「多機能型排水性舗装(FFP)施工による事故件数低減等の効果について」(PDF)『近畿地方整備局研究発表会』第2016巻第05号、国土交通省 近畿地方整備局、17頁。
- ^ ガイアート. “フル·ファンクション·ペーブ(FFP) 防水機能や凍結抑制機能を併せ持つ多機能型排水性舗装(縦溝粗面型ハイブリット舗装)” (PDF). 新技術·新工法説明会. 国土交通省 九州地方整備局. pp. 32-44. 2021年11月18日閲覧。
- ^ 土田健次. “視線誘導効果にすぐれた連続式視線誘導施設について” (PDF). 国土技術研究会. 国土交通省. 2007年10月16日閲覧。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 名阪国道 · 冬の名阪国道(12月~3月) | 道路ライブカメラ · 名阪国道ライブカメラ | 名阪国道開通50周年 · 名阪国道55年