それから先のことは…
『それから先のことは…』 | ||||
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加藤和彦 の スタジオ・アルバム | ||||
リリース | ||||
録音 |
1976年9月 マッスル・ショールズ・サウンド・スタジオ クライテリア・スタジオ ワーナー・ブラザース・レコーディング・スタジオ | - 11月|||
ジャンル |
リズム・アンド・ブルース ロック | |||
時間 | ||||
レーベル | DOUGHNUT (ドーナツ) | |||
プロデュース |
加藤和彦 新田和長 | |||
加藤和彦 アルバム 年表 | ||||
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『それから先のことは…』収録のシングル | ||||
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『それから先のことは…』(それからさきのことは)は1976年12月20日に発売された加藤和彦の3枚目のソロ・アルバムで、加藤が初めてアメリカ合衆国でレコーディングしたアルバム[1]である。サディスティック・ミカ・バンドの解散後、ソロ・アルバムとしては5年ぶりとなり、当時同棲をはじめていた安井かずみとの最初の共作アルバム[2]となった。
解説
[編集]『それから先のことは…』は加藤がスワンプ・ロックに取り組んだアルバムである。加藤はサディスティック・ミカ・バンドの解散後、シンガポールをはじめとする東南アジア諸国を旅するなど[3][4]、一時音楽活動を休止していたが、1976年になり同棲していた安井かずみとの共作アルバムの構想を思いつく。それは、当時多くのアーティストのレコーディングに起用されていたマッスル・ショールズ・リズム・セクションとの共演だった。加藤はミカ・バンド時代から彼らの出す音を再現しようと努力してきたが果たせなかったため、これを機会に渡米して彼らと共演することにしたものだった[1]。レコーディングは日本から持参した楽曲をもとにアラバマでリズム体とホーンを収録し、マイアミでストリングスを加え[注釈 1][注釈 2]、ロサンゼルスにてミックス・ダウンが行なわれた[1]。
後年、加藤は本作を「私小説アルバムのようなもの」[1]と評している。なお、本作発表後の1977年には、安井との共著で本作の収録曲と同じタイトルの『キッチン & ベッド』(主婦と生活社刊)というエッセイ集も出版している[6]。
アートワーク
[編集]オリジナル・アルバム・カバーにはエンボス加工が施され、インナースリーヴには歌詞とクレジット[注釈 3]が記載されていた。カバーアートに使われたポラロイド写真は、加藤と安井がロス滞在時の常宿にしていたビバリーウィルシャー・ホテルで互いに撮影したもので[4]、フロント・カバーで加藤が着用しているスーツは高橋幸宏のブランドBricks[7]の製品である。なお、初発売時のレコード帯には、以下のキャッチコピーが記載されていた。
南からはカリブの熱い風がニュー・オリンズを経て流れこみ
北からはメンフィスの黒い血が流れ込む
マスル・ショールズで東洋の叡智…
“加藤和彦と安井かずみ”が見たものは何か!!
収録曲
[編集]全曲作詞:安井かずみ、作編曲:加藤和彦
アナログ・レコードでは#1から#5までがA面に、#6から#10までがB面に収録されている。
楽曲の時間表記は初出アナログ・レコードに基づく。[8]
- シンガプーラ - (3:43)
- それから先のことは - (4:56)
- ジャコブ通り - (3:40)
- それぞれの夢 - (2:33)
- キッチン&ベッド - (4:17)
- 貿易風 - (4:31)
- 春夏秋・・ - (4:20)
- 光る詩(うた) - (3:37)
- 二度目の冬 - (3:27)
- 淋しい歌のつくり方 - (3:42)
クレジット
[編集]- Produced by Kazuhiko Kato & Kazunaga Nitta
- Horns & Strings Arranged by Mike Lewis
- Recording at Muscle Shoals Sound Sheffield, Alabama
- Strings Overdubbed at Criteria Recording Studios, Miami, Florida
- Mixed & Mastered at Warnor Bros. Recording Studios, N.Hollywood, L.A.
- Engineered by Jerry Masters, Steve Melton, Jack Adams & Loyd Clifft
- Special Thanks to Ichiro Asatsuma, Hiroshi Kuwashima & Yuji Konno
- Polaroid by Zuzu
- On the Cover Kazuhiko Kato Wears a Shit by Bricks, Training Shoes by Adidas
- A Gentleman's Cologne by Halston, Pictured at Beverly Wilshire Hotel
- Personal Management by Yoshiaki Nitta (Music Unlimited Ltd)
- All Songs Published by Watanabe Music Publishing Co.Ltd.
ミュージシャン
[編集]- Kazuhiko Kato - Vocal, Acoustic Guitar
- Muscle Shoals Rhythm Section
- Jimmy Johnson - Electric Guitar
- Barry Beckett - Keyboards
- Roger Hawkins - Drums
- David Hood - Bass
- Pete Carr - Acoustic & Electric Guitars
- Tim Henson - Keyboards
- Muscle Shoals Horns
- Harrison Calloway - Trumpet
- Harvey Thompson - Tenor Saxophone & Flute
- Charles Rose - Trombone
- Ronnie Eades - Baritone Saxophone
発売履歴
[編集]形態 | 発売日 | レーベル | 品番 | アートワーク | 解説 | リマスタリング | 初出/再発 | 備考 |
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LP | 1976年12月20日 | DOUGHNUT | DTP-72223 | ? | なし | なし | 初出 | A式ジャケット |
CT | 東芝EMI株式会社 | ZA-1614 | ? | なし | なし | 初出 | ||
CD | 1991年 | 3月20日EASTWORLD | TOCT-6037 | ? | 篠原章 | 記載なし | 初出 | |
CD | 2007年11月 | 2日SUPER FUJI DISCS | FJSP-29 | ? | 小倉エージ | オノ・セイゲン | 再発 | 紙ジャケット |
CD | 2017年 | 6月28日EXPRESS | UPCY-7308 | ? | 小松喜冶 | 記載なし | 再発 | 【名盤発見伝 ジャパニーズ・グラフィティー】 |
参考文献
[編集]- 『GORO vol.3. no.8. 1976年4月22日号』小学館、1976年3月。
- 『加藤和彦、安井かずみのキッチン&ベッド』主婦と生活社、1977年7月。
- 『加藤和彦スタイルブック あの頃、マリー・ローランサン』CBSソニー出版、1983年11月。ISBN 978-4-78-970111-2。
- 安井かずみ・加藤和彦『ワーキングカップル事情』(文庫版)新潮社、1986年3月。ISBN 978-4-10-145101-5。
- 『ミュージック・マガジン 2004年6月号』株式会社ミュージック・マガジン、2004年6月。
- 松木直也 (聞き手・構成) 編『加藤和彦 ラスト・メッセージ』文藝春秋、2009年12月。ISBN 978-4-16-372280-1。
- 文藝別冊 (編) 編『加藤和彦 あの素晴しい音をもう一度』河出書房新社、2010年2月。ISBN 978-4-30-997731-7。
- 高橋幸宏『心に訊く音楽、心に効く音楽 私的名曲ガイドブック』PHP新書、2012年8月。ISBN 978-4-56-980640-2。
- 島崎今日子 (編) 編『安井かずみがいた時代』(文庫版)集英社、2013年2月。ISBN 978-4-08-745299-0。
- 前田祥丈 (聞き手・構成) 編『エゴ〜加藤和彦、加藤和彦を語る』スペースシャワーネットワーク、2013年7月。ISBN 978-4-90-670088-2。
- 高橋健太郎『スタジオの音が聴こえる 名盤を生んだスタジオ、コンソール&エンジニア』DU BOOKS、2015年6月。ISBN 978-4-90-758351-4。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ マイアミのセッションではKC&ザ・サンシャイン・バンドのメンバーだったサックス奏者のマイク・ルイスが編曲を担当した。なお、セッションが行なわれたクライテリア・スタジオのスタッフとは、3年後『パパ・ヘミングウェイ』のセッションで再会することになる。
- ^ 加藤はマイアミでストリングスの収録を行なったことについて、同地にはオーケストラをリタイアしたプレイヤーが多く居住していて、人材に恵まれた地域であることを理由に挙げている[5]。
- ^ クレジットには撮影時に使用した香水も記載されており、2007年のリイシューの際にはこれらのカバーアートが忠実に再現されている。
- ^ アグネスがこの曲を歌うにあたり、安井かずみは新たに詞を書き下ろし、タイトルも「愛のハーモニー」に変更している。
出典
[編集]外部リンク
[編集]UNIVERSAL MUSIC JAPAN