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はつしま型掃海艇

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
はつしま型掃海艇
基本情報
艦種 中型掃海艇(MSC)
運用者  海上自衛隊
就役期間 1979年 - 2013年
前級 たかみ型
次級 うわじま型
要目
基準排水量 440トン(62MSCは490トン)
満載排水量 520トン(62MSCは550トン)
全長 55メートル (180 ft)
(62MSCでは58メートル)
最大幅 9.4メートル (31 ft)
深さ 4.2メートル (14 ft)
吃水 2.5メートル (8.2 ft)
(62MSCでは2.9メートル)
主機 三菱12ZC15/20I ディーゼルエンジン × 2基
(60MSC以降 三菱6NMU-TA-I)
推進器 スクリュープロペラ × 2軸
出力 1,440馬力
(60MSC以降 1,400馬力)
速力 14ノット (26 km/h)
乗員 45人
兵装 Mk.10 20mm機銃 ×1門
(53MSC以降 JM61-M 20mm機銃
搭載艇 ・3.9m搭載艇 × 1隻
 (後に4.9m型複合作業艇 × 1隻)
・ジェミニ・ディンギー処分艇 × 1隻
レーダー OPS-9B 対水上捜索用
ソナー ZQS-2B 機雷探知機
特殊装備 ・75式機雷処分具 S-4
・53式普通掃海具(O型)改4
・85式磁気掃海具 S-6
・71式音響掃海具 S-2
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はつしま型掃海艇(はつしまがたそうかいてい、英語: Hatsushima-class minesweeper)は海上自衛隊の中型掃海艇Mine Sweeper Coastal, MSC)の艦級。

海自で初めて自走式の機雷処分具を搭載した掃海艇であり、4次防末期から61中期防にかけて、合計で23隻が建造された。

来歴

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海上自衛隊では、第3次防衛力整備計画で整備したたかみ型掃海艇(42MSC)において、イギリスのASDIC 193型およびその技術を導入したZQS-2 機雷探知機を搭載して、機雷掃討能力を導入した。しかし同型をはじめとする機雷掃討技術導入直後の掃海艇においては、いずれも機雷処分は水中処分員に依存しており、危険が大きかった[1]

このことから、遠隔操縦による自走式・前駆式の機雷処分具によって、機雷掃討の危険性を低減することが求められるようになった。これに応じて、第4次防衛力整備計画における中型掃海艇は、掃討能力のさらなる向上を図ることとなり、これによって建造されたのが本型である[2]

設計

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本型は、昭和50年度計画から同62年度計画までの13年間にわたって23隻という多数が建造されているが、順次に改正を受けており、17隻の原型(50MSC)、4隻の改1型(60MSC)、2隻の改2型(62MSC)がある。

設計は、基本的には42MSCのものに基づいて、機雷処分具の搭載・運用や、上部構造物拡大(煙突の設置など)に伴う風圧側面積の増大・重心上昇に対応して拡張したものとなっており、基準排水量にして60トンの大型化となっている。また62MSCではさらに50トン大型化しており、科員居住区のベッドを2段式に変更するなど居住性改善が図られている。使用樹種は下記のとおりで、42MSCと同一である[2]

  • ベイマツ - キール・スケグ、船底縦通材、チャイン材、フレーム、外板・甲板
  • タモ - キール摩材、合板

また環境保全の観点から、従来の舷側排気にかえて煙突が設けられているが、この煙突と燃料タンクはガラス繊維強化プラスチック(GFRP)製とされている[2]

主機関は、当初は42MSCと同じ三菱製2サイクル12気筒の12ZC15/20型であったが、60MSC以降では4サイクル6気筒の6NMU-TA-Iに変更された。これは、同社のSU系列ディーゼル(S6U)を非磁性化して技術研究本部が1980年から1983年にかけて開発したもので、重量・全長は12ZC15/20より大きいが、部品数の大幅減少に伴い、信頼性・耐久性・整備性の向上および燃費低減が図られており、のちの自衛隊ペルシャ湾派遣において真価を発揮した[3]

掃海発電機は、当初は42MSCと同じ10ZC15/20-II型2基であったが、60MSC以降では主機と同様に6NMU-TK-II型1基に変更されている[3]。また主発電機は、当初は80kW×3基であったが、62MSC以降では200kW×2基とされている[4]

装備

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海上自衛隊呉史料館には下記のはつしま型掃海艇の掃討・掃海装備が展示されている。

センサ

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機雷探知機としては、42MSCと同じくZQS-2 機雷探知機が搭載された[5]。これはイギリス・プレッシー社のASDIC 193型を参考に技術研究本部が開発したもので、機雷探知用として100キロヘルツ、機雷類別用として300キロヘルツを使用することで、目標を探知すると共に確実に機雷と類別できるようになっていた[6]

対水上捜索レーダーとしては、40MSC(かさど型22番艇)以降および42MSCと同じく、Xバンドを使用して分解能に優れたOPS-9Bとされている[2][7]

機雷掃討

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75式機雷処分具S-4

上記の通り、本型では新開発の75式機雷処分具S-4が搭載される。これは沈底機雷の掃討を行う有線式の遠隔操作無人探査機(ROV)であり、技術研究本部によって、1968年から1972年にかけて開発された。

円盤型の機体の後方には2基の可変方向式スラスターを有しており、また機雷処分用として、下面の弾倉に処分爆雷2型を収容でき、これを海底の機雷に向けて投下して破壊する[8]

機雷掃海

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係維掃海具
係維機雷に対しては、28MSC以来の53式普通掃海具(O型)改4が搭載された。これは単艦で曳航するオロペサ型係維掃海具であり、展開器と呼ばれる水中凧によって掃海索を左右数百メートルに展開するとともに沈降器によって一定深度に沈下させて曳航し、機雷の係維索を引っ掛けて、掃海索の数カ所に装備した切断器によってこれを切断していくものである[9]
感応掃海具
71式音響掃海具S-2
磁気機雷に対しては、当初は30MSC以来の56式浮上電線磁気掃海具改1が用いられていた。しかし改1型(60MSC)以降では、掃海発電機の換装に伴い、新開発の85式磁気掃海具S-6に更新されている。
一方、音響機雷に対しては、たかみ型後期型と同じく71式音響掃海具S-2が搭載された。これは1個の発音体で低周波と中周波を同時発生することができた[2][7]

なお機雷処分用として、当初はエリコン20mm単装機銃を搭載していたが、53MSC以降ではJM61-M 20mm多銃身機銃に変更された。また掃海具の揚降用としては艇尾右舷に掃海用クレーンを有するが、60MSC以降では新しい中折式のものが用いられている[7]

配備

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1990年代半ばから掃海艇からの除籍が始まり、このうちの6隻がにいじま型掃海管制艇に転用されている。

同型艦一覧
計画年度 # 艦名 建造 起工 進水 就役 除籍
昭和51年 MSC-649
→ YAS-98
はつしま 日本鋼管
鶴見造船所
1977年
(昭和52年)
12月6日
1978年
(昭和53年)
10月30日
1979年
(昭和54年)
3月30日
2001年
(平成13年)
7月13日
昭和52年 MSC-650
→ YAS-100
にのしま 日立造船
神奈川工場
1978年
(昭和53年)
5月8日
1979年
(昭和54年)
8月7日
1979年
(昭和54年)
12月19日
2002年
(平成14年)
5月23日
MSC-651
→ YAS-101
みやじま 日本鋼管
鶴見造船所
1978年
(昭和53年)
11月8日
1979年
(昭和54年)
9月18日
1980年
(昭和55年)
1月29日
昭和53年 MSC-652 えのしま 1979年
(昭和54年)
10月4日
1980年
(昭和55年)
7月26日
1980年
(昭和55年)
12月25日
1996年
(平成8年)
12月6日
MSC-653 うきしま 日立造船
神奈川工場
1979年
(昭和54年)
5月15日
1980年
(昭和55年)
7月11日
1980年
(昭和55年)
11月27日
1997年
(平成9年)
3月12日
昭和54年 MSC-654 おおしま 1980年
(昭和55年)
6月2日
1981年
(昭和56年)
6月17日
1981年
(昭和56年)
11月26日
1998年
(平成10年)
3月23日
MSC-655
→ MCL-722
にいじま 日本鋼管
鶴見造船所
1980年
(昭和55年)
8月4日
1981年
(昭和56年)
6月2日
2002年
(平成14年)
3月4日
昭和55年 MSC-656
→ MCL-723
やくしま 1981年
(昭和56年)
6月15日
1982年
(昭和57年)
6月22日
1982年
(昭和57年)
12月17日
1999年
(平成11年)
2月16日
MSC-657 なるしま 日立造船
神奈川工場
1981年
(昭和56年)
5月29日
1982年
(昭和57年)
6月7日
1999年
(平成11年)
6月25日
昭和56年 MSC-658 ちちじま 1982年
(昭和57年)
6月2日
1983年
(昭和58年)
7月13日
1983年
(昭和58年)
12月16日
2000年
(平成12年)
3月13日
MSC-659 とりしま 日本鋼管
鶴見造船所
1982年
(昭和57年)
6月30日
1983年
(昭和58年)
6月23日
2000年
(平成12年)
12月1日
昭和57年 MSC-660
→ MCL-724
ははじま 1983年
(昭和58年)
5月20日
1984年
(昭和59年)
6月27日
1984年
(昭和59年)
6月27日
2000年
(平成12年)
2月8日
MSC-661 たかしま 日立造船
神奈川工場
1983年
(昭和58年)
6月7日
1984年
(昭和59年)
6月18日
1984年
(昭和59年)
12月18日
2001年
(平成13年)
6月4日
昭和58年 MSC-662 ぬわじま 1984年
(昭和59年)
5月21日
1985年
(昭和59年)
6月5日
1985年
(昭和60年)
12月12日
2002年
(平成14年)
5月29日
MSC-663 えたじま 日本鋼管
鶴見造船所
1984年
(昭和59年)
5月22日
1985年
(昭和60年)
6月17日
昭和59年 MSC-664
→ MCL-725
かみしま 1985年
(昭和60年)
5月10日
1986年
(昭和61年)
6月20日
1986年
(昭和61年)
12月16日
2008年
(平成20年)
12月17日
MSC-665 ひめしま 日立造船
神奈川工場
1985年
(昭和60年)
5月16日
1986年
(昭和61年)
6月10日
2004年
(平成16年)
12月16日
昭和60年 MSC-666
→ MCL-726
おぎしま 1985年
(昭和60年)
5月16日
1986年
(昭和61年)
6月10日
1986年
(昭和61年)
12月19日
2010年
(平成22年)
2月26日
MSC-667 もろしま 日本鋼管
鶴見造船所
1986年
(昭和61年)
5月22日
2005年
(平成17年)
2月9日
昭和61年 MSC-668 ゆりしま 1987年
(昭和62年)
5月14日
1988年
(昭和63年)
5月13日
1988年
(昭和63年)
12月15日
2007年
(平成19年)
2月23日
MSC-669 ひこしま 日立造船
神奈川工場
1987年
(昭和62年)
5月12日
1988年
(昭和63年)
6月2日
2008年
(平成20年)
3月11日
昭和62年 MSC-670 あわしま 1988年
(昭和63年)
5月12日
1989年
(平成元年)
6月6日
1989年
(平成元年)
12月13日
2009年
(平成21年)
3月6日
MSC-671
→ MCL-727
さくしま NKK鶴見造船所 1988年
(昭和63年)
5月17日
1989年
(平成元年)
6月2日
2013年
(平成25年)
3月21日

登場作品

[編集]
『原潜海峡を封鎖せよ』
「なるしま」が登場。ソ連海軍特殊潜航艇が、対馬海峡アメリカ軍が極秘に設置した最新の水中聴音装置を回収しようとしたことで作動した、装置を防衛する「ソードフィッシュ機雷」によって海峡が封鎖されたため、その機雷を処理すべく出動する。

参考文献

[編集]
  1. ^ 大平忠「機雷処分具 (現代の掃海艦艇を解剖する)」『世界の艦船』第427号、海人社、1990年10月、96-99頁。 
  2. ^ a b c d e 廣郡洋祐「海上自衛隊 木造掃海艇建造史」『世界の艦船』第725号、海人社、2010年6月、155-161頁、NAID 40017088939 
  3. ^ a b 「海上自衛隊全艦艇史」『世界の艦船』第630号、海人社、2004年8月、1-261頁、NAID 40006330308 
  4. ^ 技術開発官(船舶担当)『技術研究本部50年史』(PDF)2002年、72-115頁。オリジナルの2013年1月24日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20130124150822/http://www.mod.go.jp/trdi/data/pdf/50th/TRDI50_05.pdf2014年1月27日閲覧 
  5. ^ 「3.水雷兵器 (海上自衛隊の艦載兵器1952-2010)」『世界の艦船』第721号、海人社、2010年3月、94-99頁、NAID 40016963808 
  6. ^ 黒川武彦「センサー (現代の掃海艦艇を解剖する)」『世界の艦船』第427号、海人社、1990年10月、88-91頁。 
  7. ^ a b c 森恒英「図と写真で見る「はつしま」型掃海艇の明細」『世界の艦船』第427号、海人社、1990年10月、106-111頁。 
  8. ^ 岡部いさく「海上自衛隊の新型掃海/掃討システム (特集 新しい対機雷戦)」『世界の艦船』第631号、海人社、2004年9月、90-93頁、NAID 40006349317 
  9. ^ 梅垣宏史「掃海具 (現代の掃海艦艇を解剖する)」『世界の艦船』第427号、海人社、1990年10月、92-95頁。