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アイ・ウィル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ビートルズ > 曲名リスト > アイ・ウィル
アイ・ウィル
ビートルズ楽曲
収録アルバムザ・ビートルズ
英語名I Will
リリース1968年11月22日
録音
ジャンルポップ・フォーク[1]
時間1分45秒
レーベルアップル・レコード
作詞者レノン・マッカートニー
作曲者レノン・マッカートニー
プロデュースジョージ・マーティン
ザ・ビートルズ 収録曲
ホワイ・ドント・ウィ・ドゥ・イット・イン・ザ・ロード
(DISC 1 B-7)
アイ・ウィル
(DISC 1 B-8)
ジュリア
(DISC 1 B-9)

アイ・ウィル」(I Will)は、ビートルズの楽曲である。1968年に発売された9作目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム『ザ・ビートルズ』に収録された。レノン=マッカートニー名義となっているが、ポール・マッカートニーによって書かれた楽曲。マッカートニーのボーカルギター、「口ベース」を主体としたバラード。

イギリスやアメリカではシングル・カットされなかったが、フィリピンではシングル『オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ』のB面曲としてシングル・カットされた。

背景

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「アイ・ウィル」は、1968年2月から4月にかけてインドリシケーシュに滞在していた時期に書かれた楽曲の1つだった。1968年春の段階でメロディはできていたが、歌詞はまだ出来上がっていなかった[2][3]。マッカートニーは、同じくインドに滞在していたドノヴァンに曲を聴かせ、それに合った歌詞を考え出そうと試み、ドノヴァンは「月」を題材にした歌詞を考えたが、これには満足することはなかった[4][3]。インドからの帰国後、5月にイーシャーにあるジョージ・ハリスンの自宅で、後に発売されたアルバム『ザ・ビートルズ』のデモをまとめる作業が行われたが、この時点でも未完成であったため、本作が採り上げられることはなかった[3]。この4か月後にマッカートニーは歌詞を書き上げた[3]

本作について、マッカートニーは「今も自分が書いたメロディの中で、最も気に入っているものの1つ」と語っている[3]

レコーディング

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「アイ・ウィル」のレコーディングは、1968年9月16日にEMIレコーディング・スタジオのスタジオ2で開始され、翌日にオーバー・ダビングが行われた[5][6]。ベーシック・トラックは67テイクで録音された[7][6]。なお、ジョージ・ハリスンは本作のセッションに参加していない[8][9]

本作のレコーディングにおいて、リンゴ・スタージョン・レノンパーカッションを演奏した。スターはスネアドラムリムショットでリズムを刻み、控えめにシンバルキックドラムタムタムも使用された[6]。一方レノンは、時折マラカスを振りながら、スカル(打楽器の一種)を叩いてリズムを刻んだ[6]。同日にレコーディングされたテイク1は、1996年に発売された『ザ・ビートルズ・アンソロジー3』に[5]、テイク3は2018年に発売された『ザ・ビートルズ (ホワイト・アルバム) 〈スーパー・デラックス・エディション〉』に収録された[10]

テイク19とされているテイクでは、ジャム・セッションが行われた[7]。これは後に「Can you take me back?」と題され、「クライ・ベイビー・クライ」終了後に付け加えるかたちで収録された[11]。この他にも「ロス・パラノイアス」、「ステップ・インサイド・ラヴ[注釈 1]、「ブルー・ムーン[注釈 2]、「The Way You Look Tonight[12][注釈 3]も演奏された。これらの楽曲のうち、「ステップ・インサイド・ラヴ」と「ロス・パラノイアス」は、1996年に発売された『ザ・ビートルズ・アンソロジー3』に収録され[13]、2018年に発売された『ザ・ビートルズ (ホワイト・アルバム) 〈スーパー・デラックス・エディション〉』には、「The Way You Look Tonight」以外の3曲が収録された[10]

テイク29では、マッカートニーがアドリブで「I will」の部分を「I won't」と歌い、それに対してレノンが「Yes you will」と返答して、演奏が中断している。このテイクも2018年に発売された『ザ・ビートルズ (ホワイト・アルバム) 〈スーパー・デラックス・エディション〉』に収録された[14]

テイク65の後に、レノンは「これで決まりだ、違うか?」と尋ねた[14]。このレコーディングは8トラック・レコーダーに移されたのち、テイク68とナンバリングされた[14]

9月17日にマッカートニーは、トラック5に口真似したベースのパートを録音し、ミドルエイトと最後のセクションにマラカスが追加された[14]。なお、マッカートニーはこの時に12弦ギターでいくつかフレーズを演奏している[14]

1968年9月26日にモノラル・ミックス、10月14日にステレオ・ミックスが作成された[13][14]。なお、モノラル・ミックスとステレオ・ミックスとでは差異があり、マッカートニーによるスキャット・ベースがステレオでは冒頭から入っているが、モノラルでは2番目のヴァースから入ってくる[14]。いずれのミックスもミドルエイト以降、マッカートニーのリード・ボーカルにADTがかけられた[13][14]

リリース・評価

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「アイ・ウィル」は、1968年11月22日にアップル・レコードから発売されたオリジナル・アルバム『ザ・ビートルズ』のB面8曲目に収録された[15]。楽曲中では南アメリカを思わせるリズムが取り入れられており、マッカートニーは1968年のラジオ・ルクセンブルク英語版でのインタビューで「ハンブルクで巡業をしていた僕たちは、一晩中ロックを演奏していたわけじゃない。『マンボをやれ。ルンバはできるのか?』なんて言ってくる勤め人達もいたからね。ずっと『いや、できない』と言ってるわけにもいかなかったから、僕らも少しばかりマンボやルンバを演奏するようになった。だからこの手の曲には、ラテンアメリカのロマンティックな『イパネマの娘』みたいなところがある」と語っている[16][3]

アルバム『ザ・ビートルズ』の発売50周年に連動して、『インデペンデント』誌のジェイコブ・ストールワーシーはアルバムに収録された30曲の中から12位に選出した。ストールワーシーは、本作について「誰もマッカートニーのようなラブソングを簡単に書けないということを証明した楽曲」と評した[17]

クレジット

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※出典[6]

カバー・バージョン

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脚注

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注釈

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  1. ^ いずれの楽曲もシラ・ブラックに提供した楽曲。
  2. ^ 1934年にロレンツ・ハートによって作詞、リチャード・ロジャースによって作曲された楽曲。
  3. ^ フランク・シナトラの楽曲ではなく、「アイ・ウィル」の歌詞から派生した短い楽曲[12]。この曲は現在も未発表となっている。

出典

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  1. ^ Lewis, Michael (2009). 100 Best Beatles Songs: A Passionate Fan's Guide. Philadelphia, Pennsylvania, U.S.: Running Press. p. 163. ISBN 1-6037-6265-5 
  2. ^ Miles 1994, p. 348.
  3. ^ a b c d e f White Album 2018, p. 21.
  4. ^ Margotin & Guesdon 2013, p. 486.
  5. ^ a b Winn 2009, pp. 211–212.
  6. ^ a b c d e White Album 2018, p. 22.
  7. ^ a b Lewisohn 1988, p. 155.
  8. ^ MacDonald 2005, p. 315.
  9. ^ ルウィソーン, マーク『ビートルズ/レコーディング・セッション』内田久美子(訳)、シンコー・ミュージック、1998年(原著1990年)、193-194頁。ISBN 978-4401612970 
  10. ^ a b White Album 2018, pp. 22–23.
  11. ^ Margotin & Guesdon 2013, pp. 486–487.
  12. ^ a b Lewis, Michael; Spignesi, Stephen J. (2009). 100 Best Beatles Songs: A Passionate Fan's Guide. Black Dog & Leventhal. p. 203. ASIN B0112OZ1EM. https://books.google.co.jp/books?id=ERIaCgAAQBAJ&pg=PT203&dq=The+Way+You+Look+Tonight+I+Will+The+Beatles&hl=ja&sa=X&ved=2ahUKEwjBhqDf-frtAhXCc3AKHTDkCmUQ6AEwAHoECAUQAg#v=onepage&q=The%20Way%20You%20Look%20Tonight%20I%20Will%20The%20Beatles&f=false 
  13. ^ a b c Winn 2009, p. 212.
  14. ^ a b c d e f g h White Album 2018, p. 23.
  15. ^ Lewisohn 1988, pp. 163, 200.
  16. ^ Winn 2009, p. 224.
  17. ^ Stolworthy, Jacob (2018年11月22日). “The Beatles' White Album tracks, ranked – from Blackbird to While My Guitar Gently Weeps”. The Independent (Independent News & Media). https://www.independent.co.uk/arts-entertainment/music/features/the-beatles-white-album-tracks-ranked-paul-mccartney-john-lennon-george-harrison-50-anniversary-a8643431.html 2020年9月15日閲覧。 
  18. ^ Viglione, Joe. Read My Lips - Tim Curry | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック. 2020年9月15日閲覧。
  19. ^ Batdorf, Rodney. Songs from a Parent to a Child - Art Garfunkel | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック. 2020年9月15日閲覧。
  20. ^ Paradise Found - Tuck & Patti | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック. 2020年9月15日閲覧。
  21. ^ Jarnow, Jesse. Live Phish, Vol. 13: 10/31/94, Glens Falls Civic Center, Glens Falls, NY - Phish | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック. 2020年9月15日閲覧。

参考文献

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外部リンク

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