ガール (ビートルズの曲)
「ガール」 | ||||||||||
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ビートルズの楽曲 | ||||||||||
収録アルバム | 『ラバー・ソウル』 | |||||||||
英語名 | Girl | |||||||||
リリース | 1965年12月3日 | |||||||||
録音 |
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ジャンル | フォークロック[1] | |||||||||
時間 | 2分32秒 | |||||||||
レーベル | パーロフォン | |||||||||
作詞者 | レノン=マッカートニー | |||||||||
作曲者 | レノン=マッカートニー | |||||||||
プロデュース | ジョージ・マーティン | |||||||||
チャート順位 | ||||||||||
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「ガール」(Girl)は、ビートルズの楽曲である。1965年発売された6作目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム『ラバー・ソウル』に収録された。レノン=マッカートニー名義となっているが、ジョン・レノンによって書かれた楽曲[3][4]。アルバム『ラバー・ソウル』のセッションで最後に録音された楽曲[5][6]で、ビートルズのラブソングの中でも、メランコリックで複雑な楽曲となっている[7]。
背景・曲の構成
[編集]楽器によるイントロはなく、レノンのボーカルから始まる。演奏面では「アンド・アイ・ラヴ・ハー」や「ミッシェル」と同じくギリシャ音楽との類似点が見られる[7]。歌詞のインスピレーションについて、1980年のインタビューでレノンは「まだ見ぬ理想の女性像を歌ったもの。結果的にそれはヨーコのことだった」と語っている[8][9]。またレノンは同年に「ウーマン」という曲を発表しているが、これについても「ビートルズ時代に作った『ガール』の1980年版だよ」と語っている[8]。
ポール・マッカートニーは、1994年に「基本的なアイデアはジョンだけど、共作だ。"Was she told when she was young that pain would lead to pleasure"と"That a man must break his back to earn his day of leisure"というフレーズを書いたことを覚えている」と語っている[4]が、1970年の『ローリング・ストーン』誌のインタビューで、レノンはキリスト教に対する言及としてこれらのフレーズを書いたと説明している[10]。
レコーディング
[編集]「ガール」のレコーディングは、1965年11月11日にEMIレコーディング・スタジオで行われた。レノンとジョージ・ハリスンは、カポタストを付けたアコースティック・ギターを演奏した。音楽学者のウォルター・エヴェレットは、著書の中でハリスンのギターについて「ネックの高い位置にカポタストを付けて、シタールのような音を作り出している」と書いている[11]。
レノンのリード・ボーカルのトラックの合間には、息継ぎの音が含まれている。これについて、マッカートニーは「ジョンが息継ぎの音を使って親密な感じを出そうとしていたことを記憶している。ジョージ・マーティンが声に特別なコンプレッサーをかけて、そこにジョンがダビングしたんだ」と語っている。その後、リンゴ・スターがブラシで叩いたシンバルの音に近い、高音のバッキング・ボーカルが加えられた[12]。中間部では、マッカートニーとハリスンが「tit(おっぱい)」という単語を繰り返して歌っている。マッカートニーは、このボーカル・アレンジについてビーチ・ボーイズの影響を受けているとし、「彼らが"la la la la"と歌っているのが好きだったんだけど、同じことはしたくなかったから代わりの言葉を探した」と語っている[13]。
リリース
[編集]「ガール」は、イギリスで1965年12月3日に発売されたオリジナル・アルバム『ラバー・ソウル』のB面2曲目に収録された。3日後にアメリカで発売された同名の編集盤にもB面2曲目に収録された。イギリスや米国ではシングル・カットされなかったが、ヨーロッパ諸国では1966年初頭に発売されたシングル盤『ミッシェル』のB面曲、イタリアではB面に「ひとりぼっちのあいつ」を収録したシングル盤としてリカットされた。
その後『ザ・ビートルズ1962年〜1966年』、『ラヴ・ソングス』、『リヴァプールより愛を込めて ザ・ビートルズ・ボックス』などのコンピレーション・アルバムに収録され、1981年に韓国で発売された『ビートルズ バラード・ベスト20』の同国盤には、歌詞に検閲が入った「ノルウェーの森」の代替として1993年まで収録されていた。
2006年にシルク・ドゥ・ソレイユのミュージカルのサウンドトラックとして発売された『LOVE』が、2011年にiTunes Storeで配信が開始された際に、ボーナス・トラックとして他のビートルズの楽曲とコラージュされた音源が収録された[14]。
クレジット
[編集]※出典[6]
- ジョン・レノン - リード・ボーカル、アコースティック・ギター
- ポール・マッカートニー - バッキング・ボーカル、ベースギター
- ジョージ・ハリスン - バッキング・ボーカル、アコースティック・ギター(リードギター)、12弦ギター
- リンゴ・スター - ドラムス
カバー・バージョン
[編集]- セント・ルイス・ユニオン - 1966年1月にシングル盤として発売。全英シングルチャートで最高位11位を獲得した[15][16]。
- トゥルース - 1966年にシングル盤として発売。全英シングルチャートで最高位27位を獲得した[17]。
- ブラザース・フォア - 1966年に発売されたカバー・アルバム『The Brothers Four Sing Lennon/McCartney』に収録。
- 深町純 - 1972年に発売された『ピアノ・ソロ ベスト・オブ・ビートルズ』に収録。ピアノのインストゥルメンタルとしてカバー[18]。
- たま - 1990年代にテレビ番組やライブにて独自の訳詞をあててカバーした[注釈 1]。なお、1980年代からビートルズの楽曲著作権保護が強化され、その影響で、1960年代や1970年代にカバーの際に行われていた歌詞の変更(替え歌及び訳詞)が世界的に認められなったことから、このカバー版は現在も商品化されていない[19]。
- レット・ミラー - 2005年に発売されたトリビュート・アルバム『This Bird Has Flown - A 40th Anniversary Tribute to the Beatles' Rubber Soul』に収録[20]。
また、ビートルズのパロディ・バンドであるTHE GOGGLESは、本作のパロディ曲「BOY(ボーイ)」を発表している[21]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ Brackett, Nathan; Hoard, Christian (2004). David The New Rolling Stone Album Guide. Simon and Schuster. p. 53. ISBN 978-0-74320-169-8
- ^ “The Beatles - Girl - ultratop.be” (オランダ語). Ultratop 50. 2022年7月3日閲覧。
- ^ Sheff 2000, p. 197.
- ^ a b Miles 1997, pp. 275–276.
- ^ Lewisohn 1988, p. 68.
- ^ a b MacDonald 2005, p. 181.
- ^ a b Unterberger, Richie (2009年). “Girl - The Beatles | Song Info”. Allmusic. 2019年1月5日閲覧。
- ^ a b Cott 1980.
- ^ Ryan 2006, p. 404.
- ^ Wenner, Jann S. (2001). Lennon Remembers: The Full Rolling Stone Interviews from 1970. Verso. ISBN 1-8598-4376-X
- ^ Everett 2001, p. 333.
- ^ Everett 2001, pp. 333–334.
- ^ Kruth 2015, p. 192.
- ^ "The Beatles' Grammy-Winning 'LOVE' Album and 'All Together Now' Documentary Film to Make Digital Debuts Exclusively on iTunes Worldwide" (Press release). EMI Music/Apple Corps Ltd/Cirque du Soleil. 1 February 2011. 2021年2月3日閲覧。
- ^ “Official Singles Chart Top 50”. Official Charts Company (1966年2月10日). 2020年10月25日閲覧。
- ^ Roberts 2006, p. 479.
- ^ “Official Singles Chart Top 50”. Official Charts Company (1966年2月24日). 2020年10月25日閲覧。
- ^ “Discography 1972 [ Piano Solo / 深町 純 ]”. FUKAMACHI ism [深町純 Official Site]. 2021年2月3日閲覧。
- ^ “話題332 ビートルズ”. 石川浩司のひとりでアッハッハー (2010年12月31日). 2020年4月23日閲覧。
- ^ Erlewine, Stephen Thomas. This Bird Has Flown: 40th Anniversary Tribute to Rubber Soul - Various Artists | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック. 2020年10月25日閲覧。
- ^ “ゴーグルズのトリビュート・アルバム第1弾参加アーティスト発表に藤原さくら、キノコホテル、伊藤銀次ら5組!”. POPSCENE (2018年2月9日). 2020年4月23日閲覧。
参考文献
[編集]- Cott, Jonathan (1980年12月5日). “Rolling Stone Interview with John Lennon”. Rolling Stone. Penske Media Corporation. 2019年1月5日閲覧。
- Everett, Walter (2001). The Beatles as Musicians: The Quarry Men through Rubber Soul. New York, NY: Oxford University Press. ISBN 0-19-514105-9
- Kruth, John (2015). This Bird Has Flown: The Enduring Beauty of Rubber Soul Fifty Years On. Milwaukee, WI: Backbeat Books. ISBN 978-1617135736
- Lewisohn, Mark (1988). The Beatles Recording Sessions. New York: Harmony Books. ISBN 0-517-57066-1
- MacDonald, Ian (2005). Revolution in the Head: The Beatles' Records and the Sixties (Second Revised ed.). London: Pimlico (Rand). ISBN 1-84413-828-3
- Miles, Barry (1997). Paul McCartney: Many Years From Now. New York: Henry Holt & Company. ISBN 0-8050-5249-6
- Roberts, David (2006). British Hit Singles & Albums (19th ed.). London: Guinness World Records Limited. ISBN 1-904994-10-5
- Ryan, Kevin (2006). Recording The Beatles. Houston, Texas ref=harv: Curvebending Publishing. ISBN 978-0-9785200-0-7
- Sheff, David (2000). All We Are Saying: The Last Major Interview with John Lennon and Yoko Ono. New York: St. Martin's Press. ISBN 0-312-25464-4}
外部リンク
[編集]- Girl - The Beatles