コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

ドント・パス・ミー・バイ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ビートルズ > 曲名リスト > ドント・パス・ミー・バイ
ドント・パス・ミー・バイ
ビートルズ楽曲
収録アルバムザ・ビートルズ
英語名Don't Pass Me By
リリース1968年11月22日
録音
ジャンルカントリーロック[1]
時間
  • 3分46秒(モノラル版)
  • 3分51秒(ステレオ版)
レーベルアップル・レコード
作詞者リチャード・スターキー
作曲者リチャード・スターキー
プロデュースジョージ・マーティン
ザ・ビートルズ 収録曲
ロッキー・ラックーン
(DISC 1 B-5)
ドント・パス・ミー・バイ
(DISC 1 B-6)
ホワイ・ドント・ウィ・ドゥ・イット・イン・ザ・ロード
(DISC 1 B-7)

ドント・パス・ミー・バイ」(Don't Pass Me By)は、ビートルズの楽曲である。1968年に発売された9作目のイギリス盤オリジナル・アルバム『ザ・ビートルズ』に収録された楽曲。リンゴ・スター[注釈 1]が作詞作曲を手がけたカントリーロック調の楽曲で、スターのソングライターデビュー作である[注釈 2][2]。1968年6月にスターとポール・マッカートニーに加えて、ヴァイオリン奏者のジャック・ファロン英語版の3人でレコーディングが行われ、ジョン・レノンジョージ・ハリスンは参加していない。

スカンジナビアでシングル・カットされたが、作者名がレノン=マッカートニーと誤表記されている。このシングル盤は、1969年4月にデンマークのシングルチャートで第1位を獲得した[3]

背景

[編集]

スターが本作の構想を練り始めたのは1964年で、同年6月のニュージーランドのラジオ局でのインタビューで、ポール・マッカートニーリンゴがはじめて曲づくりに挑んだ。美しいメロディだと語り、スターはカントリー&ウェスタンのつもりで書いたんだけど、ジョンとポールがブルースのフィーリングでうたうと、もう一気に打ちのめされたと語っている[4]

前述の番組から1か月後に出演したBBCラジオの番組『トップ・ギア英語版』で、スターがブライアン・マシューと本作を論じており[4]、同番組内でマッカートニーが「Don't pass me by, don't make me cry, don't make me blue, baby(僕を置いていかないで、僕を泣かせないで、僕をブルーにさせないで)」と本作のリフレイン部分の冒頭のフレーズを歌っている[5]

スターは、本作についてオレの最初の曲、オレが書いた曲を形にするのは、最高の気分だったすごく興奮したし、みんなも本当に協力的でね、あのイカれたヴァイオリニストのレコーディングは、特に胸がワクワクしたと語っている[6][4]

なお、本作の楽譜出版元はスターの楽曲専門会社スターティング・ミュージックが所有しているが発表されてしばらくはアップル・パブリッシング[注釈 3]が所有していた。

レコーディング

[編集]

「ドント・パス・ミー・バイ」のレコーディングは、1968年6月5日と6日、7月12日にEMIレコーディング・スタジオのスタジオ2で行われた。前述のとおり1964年から制作された楽曲だが、6月5日のセッション・テープのラベルには「Ringo's Tune (Untitled)」、6月6日のセッション・テープのラベルには「This Is Some Friendly」と表記され、7月12日までに元の「ドント・パス・ミー・バイ」に戻された[7]

6月6日にレコーディングされたリード・ボーカルのトラックの合間では、スターが2小節をカウントする声が入っており[8]、これは2回目のリフレインと3回目のリフレインの間で確認できる。モノラル・ミックスは、ステレオ・ミックスよりもテープの回転速度が上げられており、フェード・アウト部分でのヴァイオリンのフレーズも異なっている[4]。1996年に発売された『ザ・ビートルズ・アンソロジー3』には、ヴァイオリンがオーバー・ダビングされる前のテイクを編集した音源が収録された[4]

ジョージ・マーティンは、本作のイントロとしてオーケストラの小曲を制作したが、最終的に未使用となった[9]。この小曲は、1996年に発売された『ザ・ビートルズ・アンソロジー3』に「ア・ビギニング」として収録された[10][9][4]

なお、本作においてジョン・レノンジョージ・ハリスンは演奏に参加していないが、レノンは6月5日のセッションに同席しており、同日にレコーディングされたテープのテイクの合間で、「ユー・アー・マイ・サンシャイン」の1フレーズを歌うレノンのボーカルが残されている[4]

評価

[編集]

作家のバリー・マイルズ英語版は、本作を「リンゴのカントリー&ウェスタン・ナンバー」「素晴らしい曲」とし、ジャック・ファロン英語版ヴァイオリンの演奏とバグパイプ効果を称賛した[11]クラシック・ロック』誌のイアン・フォートナムは、「アルバム『ザ・ビートルズ』を『“永続的なロックの青写真”にした4曲」として「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」、「ヤー・ブルース」、「ヘルター・スケルター」と共に本作を挙げた[12]

クレジット

[編集]

以上が、イアン・マクドナルド英語版[13]マーク・ルイソン英語版[7]の著書を出典としたクレジット。

しかし、2018年に発売された『ザ・ビートルズ (ホワイト・アルバム)〈スーパー・デラックス・エディション〉』に付属のブックレットには、以下のようなクレジットが掲載されている[4]

  • リンゴ・スター - リード・ボーカル、ピアノ、スレイベル、パーカッション
  • ポール・マッカートニー - ピアノ、ベース、ドラム
  • ジャック・ファロン - ヴァイオリン

カバー・バージョン

[編集]

アメリカ・ジョージア州出身のロックバンド、ジョージア・サテライツが、1988年に発売されたアルバム『オープン・オール・ナイト』で本作をカバーし[14]、2004年にザ・パンクルズがアルバム『Pistol』でカバーした[15]

1994年10月31日、フィッシュがニューヨークでアルバム『ザ・ビートルズ』に収録の全曲をカバーするライブを行い、本作はブルーグラス調にアレンジされて演奏された。このライブでの演奏は、2002年に発売された4枚組のライブ・アルバム『LIVE PHISH 13 10.31.94』で音源化された[16]

スターは、2017年に発売されたアルバム『ギヴ・モア・ラヴ』で、ボーナス・トラックとして本作をセルフカバーした。

ア・ビギニング

[編集]
ア・ビギニング
ジョージ・マーティン楽曲
収録アルバムザ・ビートルズ・アンソロジー3
英語名A Beginning
リリース1996年10月28日
録音
ジャンルオーケストラ
時間50秒
レーベルアップル・レコード
作曲者ジョージ・マーティン
プロデュースジョージ・マーティン
ザ・ビートルズ・アンソロジー3 収録曲
ア・ビギニング
(DISC 1-1)
ハッピネス・イズ・ア・ウォーム・ガン
(DISC 1-2)

ア・ビギニング」(A Beginning)は、ビートルズのプロデューサーであるジョージ・マーティンが作曲したインストゥルメンタルである。「ドント・パス・ミー・バイ」のイントロとして作曲され[10]、「グッド・ナイト」のオーケストラ・セッションと同じ1968年7月22日にEMIレコーディング・スタジオに録音された[17]。しかし最終的に本作は未使用となった。

1968年に公開されたビートルズのアニメ映画『イエロー・サブマリン』にて、「エリナー・リグビー」のイントロとして本作の別テイクが使用された[10]

1996年に未発表音源やアウトテイクなどを収録した「ザ・ビートルズ・アンソロジー」シリーズの(CD作品としては)第3弾となる『ザ・ビートルズ・アンソロジー3』が発売され、本作はオープニング・トラックとして収録された[10]。当初、この作品の1曲目には新曲として「ナウ・アンド・ゼン」が収録される予定だった[18][注釈 4]が、諸問題により未完成となったためその代わりとして本作が取り上げられた[19]。タイトルは『ザ・ビートルズ・アンソロジー3』の最後に収録された「ジ・エンド」に呼応して付けられたもの[19]

2018年に発売された『ザ・ビートルズ (ホワイト・アルバム) <スーパー・デラックス・エディション>』のCD4に、この曲のテイク4が「ドント・パス・ミー・バイ (テイク7)」のイントロとして収録されている。タイトルも「ア・ビギニング (テイク4) / ドント・パス・ミー・バイ (テイク7)A Beginning (Take 4) / Don't Pass By Me (Take 7))」と表記されている[20][21]

クレジット(ア・ビギニング)

[編集]

※出典[22]

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ 名義は本名のリチャード・スターキー
  2. ^ 本作以前に発表されていたスター作の楽曲は、1965年に発表された「消えた恋」(※レノン=マッカートニー & リチャード・スターキー名義)と、1967年に発表された「フライング」(※メンバー全員で書いたインストゥルメンタル)。
  3. ^ ビートルズが設立したアップル・コア傘下の楽譜出版社。現在は解散している。
  4. ^ ザ・ビートルズ・アンソロジー1』(1995年)や『ザ・ビートルズ・アンソロジー2』(1996年)には、それぞれジョン・レノンが残したデモテープを基にポール・マッカートニージョージ・ハリスンリンゴ・スターの3人で仕上げた新曲「フリー・アズ・ア・バード」「リアル・ラヴ」が1曲目に収録されていた。
  5. ^ ヴァイオリン(12丁)、ヴィオラ(3丁)、チェロ(3台)、フルート(3本)、クラリネットホルンヴィブラフォンダブルベースハープで構成[22]

出典

[編集]
  1. ^ Halpin, Brooke (2017). Experiencing the Beatles: A Listner's Companion. Rowman & Littlefield. p. 190. ISBN 1442271442. "...the country-rock song "Don't Pass Me By" is the first song in the Beatles' catalog that is written entirely by Ringo." 
  2. ^ Lewisohn 1988, pp. 137, 142, 144.
  3. ^ Top 10/Tipparaden/1969/Uge 14 (week 14)” (Danish). danskehitlister.dk (1969年4月3日). 2020年9月25日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h White Album 2018, p. 20.
  5. ^ Complete BBC Sessions, Vol.8, track 5, at the 1:10 mark
  6. ^ Guesdon, Jean-Michel; Margotin, Philippe (2014) [2013]. Freiman, Scott. ed. All the Songs: The Story Behind Every Beatles Release. Philadelphia, Pennsylvania: Running Press. p. 435. ISBN 1603763716 
  7. ^ a b Lewisohn 1988, p. 137.
  8. ^ Lewisohn 1988, pp. 137, 142.
  9. ^ a b MacDonald 2005, p. 286.
  10. ^ a b c d Lewisohn 1996, p. 4.
  11. ^ Miles, Barry (1968年11月29日). “Multi-Purpose Beatles Music”. International Times: p. 10 
  12. ^ Fortnam 2014, pp. 42–43.
  13. ^ Lewisohn 2005, p. 286.
  14. ^ Jurek, Thom. Open All Night - The Georgia Satellites - オールミュージック. 2020年9月25日閲覧。
  15. ^ Luerssen, John D.. Pistol - The Punkles - オールミュージック. 2020年9月25日閲覧。
  16. ^ Jarnow, Jesse. Live Phish, Vol. 13: 10/31/94, Glens Falls Civic Center, Glens Falls, NY - Phish | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック. 2020年9月22日閲覧。
  17. ^ Womack 2014, p. 143.
  18. ^ Doggett, Peter (2009) [2005]. The Art and Music of John Lennon. London: Omnibus Press. p. 381. ISBN 085712126X 
  19. ^ a b 藤本 2022, p. 149.
  20. ^ “ビートルズ、『ホワイト・アルバム』の50周年スペシャル・エディションのリリースが決定”. NME Japan (ニュー・ミュージカル・エクスプレス). (2018年9月25日). https://nme-jp.com/news/61501/ 2019年10月28日閲覧。 
  21. ^ “ザ・ビートルズ、ホワイト・アルバム発売50周年を記念して未発表曲を含む豪華盤を発売”. CDJournal (株式会社シーディージャーナル). (2018年9月25日). https://www.cdjournal.com/main/news/the-beatles/80589 2019年10月28日閲覧。 
  22. ^ a b Womack 2014, p. 144.

参考文献

[編集]

外部リンク

[編集]