オスマニヤ文字
オスマニヤ文字 | |
---|---|
類型: | アルファベット |
言語: | ソマリ語 |
発明者: | イスマーン・ユースフ・ケーナディード |
時期: | 1920年代 |
Unicode範囲: | U+10480-104AF |
ISO 15924 コード: | Osma |
注意: このページはUnicodeで書かれた国際音声記号 (IPA) を含む場合があります。 |
オスマニヤ文字(オスマニヤもじ、Osmanya、ソマリ語: Cismaaniya、𐒍𐒖𐒇𐒂𐒖 𐒋𐒘𐒈𐒑𐒛𐒒𐒕𐒖、イスマーニヤ)は、ソマリ語の表記のために1920年代に考案された文字。単にソマリ文字とも呼ばれるが、歴史的にソマリ語はさまざまな文字で表記されてきた。
オスマニヤという名前は考案者のイスマーン・ユースフ・ケーナディードに由来する。
左から右へ書かれるアルファベットである。現在はソマリ語の表記にはラテン文字が使われる。
概要
[編集]ソマリアでは最初カーディリー教団のシャイフ、ウワイス・アル=バラーウィー(en、1846-1909)によってアラビア文字によるソマリ語表記法が考案された。ソマリアはイスラム世界に属するため、アラビア文字の採用は自然だったが、成功しなかった[1]。
ホビョのスルターン国(イタリア領ソマリランドの一部になる)を建国したユースフ・アリー・ケーナディードの子であるイスマーン・ユースフ・ケーナディードはアラビア語とイタリア語に通じ、またエチオピア文字の知識もあった。イスマーンはこれらの文字の特徴をもとに新しい表記体系を考案した。全体としてラテン文字と同様のアルファベットであるが、文字の順序と長母音の表記にはアラビア文字の影響が見られ、字形にはエチオピア文字の影響が見られる[1]。
イスマーン・ユースフの子であるヤーシーン・イスマーン・ユースフ・ケーナディードはオスマニヤ文字を喧伝し、1943年に結成されたソマリ青年同盟(当初はソマリ青年クラブ)によっても支持された。しかし1950年代になるとソマリ青年同盟は中東との連帯を重視するようになり、オスマニヤ文字はもはや重視されなくなった[2]。民族主義が勃興しつつあった当時のソマリアにおいてオスマニヤ文字はソマリ族固有の文字として有利な面があったものの、氏族社会であるソマリアではオスマニヤ文字がイスマーン・ユースフ・ケーナディードの属するイスマーン・マハムード氏族と結びつけられ、民族全体の文字になることを妨げた[3]。
ソマリ語をどの文字で書くかという問題はソマリアが独立した1960年以降も長い議論が続いたが、最終的に1972年にラテン文字による正書法が導入された[4]。
構造
[編集]オスマニア文字は22の子音字と5つの短母音字がある。長母音についてはa/e/oは専用の字があるが、長いiはy、長いuはwによって表現する[5]。
ソマリ語には前方舌根性の有無による2組の母音があるが[6]、綴りの上では区別されない。
文字 | 名称 | 音 |
---|---|---|
𐒀 | alef | [ʔ] |
𐒁 | ba | [b] |
𐒂 | ta | [t] |
𐒃 | ja | [dʒ] |
𐒄 | xa | [ħ] |
𐒅 | kha | [x] |
𐒆 | deel | [d] |
𐒇 | ra | [r] |
𐒈 | sa | [s] |
𐒉 | shiin | [ʃ] |
𐒊 | dha | [ɖ] |
𐒋 | cayn | [ʕ] |
𐒌 | ga | [ɡ] |
𐒍 | fa | [f] |
𐒎 | qaaf | [q] |
𐒏 | kaaf | [k] |
𐒐 | laan | [l] |
𐒑 | miin | [m] |
𐒒 | nuun | [n] |
𐒓 | waw | [w, ʉː, uː] |
𐒔 | ha | [h] |
𐒕 | ya | [j, iː, ɪː] |
𐒖 | a | [æ, ɑ] |
𐒗 | e | [e, ɛ] |
𐒘 | i | [i, ɪ] |
𐒙 | o | [ɵ, ɔ] |
𐒚 | u | [ʉ, u] |
𐒛 | aa | [æː, ɑː] |
𐒜 | ee | [eː, ɛː] |
𐒝 | oo | [ɵː, ɔː] |
Unicode
[編集]2003年のUnicode 4.0で、追加多言語面のU+10480-U+104AFに追加された[7][8]。22の子音字、5つの母音字、3つの長母音のための文字、10の数字からなる。
Osmanya[9] | ||||||||||||||||
0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | A | B | C | D | E | F | |
U+1048x | 𐒀 | 𐒁 | 𐒂 | 𐒃 | 𐒄 | 𐒅 | 𐒆 | 𐒇 | 𐒈 | 𐒉 | 𐒊 | 𐒋 | 𐒌 | 𐒍 | 𐒎 | 𐒏 |
U+1049x | 𐒐 | 𐒑 | 𐒒 | 𐒓 | 𐒔 | 𐒕 | 𐒖 | 𐒗 | 𐒘 | 𐒙 | 𐒚 | 𐒛 | 𐒜 | 𐒝 | ||
U+104Ax | 𐒠 | 𐒡 | 𐒢 | 𐒣 | 𐒤 | 𐒥 | 𐒦 | 𐒧 | 𐒨 | 𐒩 |
脚注
[編集]- ^ a b Diringer (1949) p.300
- ^ Laitin (1977) pp.98-99
- ^ Laitin (1977) pp.89-90
- ^ Saeed (1999) p.3
- ^ Michael Everson (2001-07-14), N2361R Revised proposal to encode the Osmanya script in the SMP of the UCS
- ^ Saeed (1999) pp.11-12
- ^ Supported Scripts, Unicode, Inc.
- ^ Unicode 4.0.0, Unicode, Inc., (2003-04-24)
- ^ Osmanya, Unicode, Inc
参考文献
[編集]- Diringer, David (1949) [1948]. The Alphabet: A Key to the History of Mankind (2nd revised ed.). Hutchinson's
- Laitin, David D. (1977). Politics, Language, Thought: The Somali Experience. University of Chicago. ISBN 0226467910
- Saeed, John (1999). Somali. John Benjamins. ISBN 9027238103