利用者:高砂の浦/sandbox/4

外食テロ(がいしょくテロ)は、外食チェーンを中心とした飲食店において、客が迷惑行為や悪戯を行い、それを撮影した動画をソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)等に投稿する行為を指す日本スラング

飲食店テロ[1]客テロ[2]とも呼ばれるほか、回転寿司店のものについては回転寿司テロ[3]寿司テロ[4]などと呼称されている。また行為を行った者について、その多くが若者(Z世代)であることから「Z戦士」と嘲笑的に呼ぶ例もある[5]

概要[編集]

問題の経過[編集]

最初の事案は「はま寿司」店舗での動画だったとされている[6]。2023年1月初旬に他人の注文品を勝手に食べるという動画が、続いて14日にも他者注文の寿司にわさびをのせるという迷惑行為動画がSNSに投稿された[7]。同業他社でも迷惑動画が確認・拡散されていく中、社会に特に大きな影響を与えたのが、同月29日に発覚した、岐阜県内の「スシロー」店舗で高校生が醤油さしや湯呑茶碗を舌で舐める動画である(あきんどスシロー迷惑動画事件[6][3]。同31日にスシロー側が被害届を提出し、その後迷惑行為の当事者とその保護者が謝罪したがスシロー側はそれを拒否する厳しい姿勢をとった[8][9]。この事件では、因果関係の全てを証明することは難しいと言われながらも[10]、31日だけで株価が145円下落しており、時価総額170億円相当をスシローが失うことになった[11]。そしてこれを皮切りに外食チェーン店での迷惑動画が相次いで炎上[12]。拡散される動画はもはや回転寿司店にとどまらず、うどん店やカラオケ店、牛丼チェーンなどでのものも確認されて[13][14]、外食産業に多大な影響を与え社会問題化した[15]

企業側の対応とその評価[編集]

迷惑動画拡散の被害側企業は被害届を提出するなど厳正な対処を取っている[16][14]。このような対応は一般に今後同様の行為が行われないようにする「抑止力」に訴えるものとされている[17][18]。刑事罰としては、醤油さしなめる等の行為は器物損壊罪、他社注文品を食べるのは窃盗罪、動画拡散による被害は偽計業務妨害罪威力業務妨害罪に該当すると報じられている[16]。また、行為者だけでなく、動画撮影・投稿者らも罪に問われる可能性がある[16]。3月には実際に、くら寿司店舗で醤油さしを舐めるなどした3人が威力業務妨害の容疑で逮捕される事態となっている[19]

また、相次ぐ迷惑行為を受けて飲食チェーン各社は、卓上の調味料やコップを撤去するなどの対応を続々と発表した[20]。なかでも、「くら寿司」は回転レーンの上部にAIカメラを設置し、不自然な動きを検知できるシステムを導入したほか[21]、「すし銚子丸」は回転レーンを用いた寿司の提供を廃止した[22]

マーケティングコンサルタントの西山守はスシローを例に挙げて、トラブル発生時に企業側に求められることに、過剰とも思える対応をとること、「顧客を守る」という意思表示をすることなどを指摘し、スシローはそれを行い「リスクを最小限にとどめた」と高く評価した[23]

世間の反応と報道[編集]

一部からは「もう回転寿司には行けない」「怖くてもう外食できない!」といった外食自体を控えるという声も出ているという[24]。その一方でTwitter上での「#スシローを救いたい」ハッシュタグに見られるように、外食産業を応援しようとするムーブメントも起こった[25]。騒動後に安価な回転寿司店から客足が遠のいたのは中高年層で、主に学生や若者で賑わっていたというレポートもある[26]

また、ネット上では「テロ」の犯人を特定し「晒す」行為も過熱している[18]。住所や氏名などの個人情報がSNS上では拡散されており、1月29日発覚の事件については実行した高校生が高校を自主退学している[5]御田寺圭は一連の迷惑行為・動画を、SNSの発展に伴って可視化されただけの「若気の至り」であるとし、ネットリンチは「法治国家として明らかに度を越した」ものと批判した[5]。他方でこの騒動についてマスメディア・報道の責任を指摘する向きもある[27]窪田順生ワイドナショーなどが繰り返し迷惑動画を流し視聴者の外食への不安感を煽った、マスコミは視聴率だけを狙って「相次ぐ外食テロ」というブームを作り出したと指摘した[28]。海外メディアも炎上騒動について関心的に取り上げたが、「日本の食文化の一つ」としたうえで、人件費削減を背景としたスタッフの少なさを指摘したほか、日本人の清潔志向にも注目した[4][29]

脚注[編集]

  1. ^ ホリエモン、スシローぺろぺろ事件…相次ぐ“飲食店テロ”の解決策提示「変なヤツらを排除するには」」『スポニチ』、2023年2月10日。2023年2月12日閲覧。
  2. ^ 「客テロ」動画のなぜ リスクより承認欲求、「謝罪では再発防げず」」『朝日新聞デジタル』、2023年2月6日。2023年2月12日閲覧。
  3. ^ a b 週刊現代 (2023年2月10日). “回転寿司テロで「とばっちり被害」を受けた「意外すぎる企業」の正体”. 現代ビジネス: p. 1. https://gendai.media/articles/-/105803 2023年2月12日閲覧。 
  4. ^ a b 安倍かすみ「なぜアメリカでは「寿司テロ」が起きない?日本の飲食店との「決定的な違い」」『現代ビジネス』、2023年3月15日、p. 3。2023年3月25日閲覧。
  5. ^ a b c 御田寺圭「卒アルを晒し家族もろとも追い詰める…寿司テロ少年"微罪"を叩きまくる大人たちの行き過ぎ」『プレジデントオンライン』、2023年2月10日、pp. 1-4。2023年3月25日閲覧。
  6. ^ a b 長浜 2023, p. 1.
  7. ^ 他の客の寿司にワサビをのせる動画に批判殺到…相次ぐ迷惑行為にはま寿司が怒り「到底容認できない」」『女性自身』、2023年1月23日。2023年3月23日閲覧。
  8. ^ スシローでも迷惑行為、しょうゆボトルなめる動画…警察に被害届を出し謝罪受け入れ拒否」『読売新聞』、2023年2月1日。2023年3月23日閲覧。
  9. ^ 株式会社あきんどスシロー (2023年2月1日). “SNS で拡散されたスシロー店舗での迷惑行為に関するお知らせ” (PDF). 2023年3月23日閲覧。
  10. ^ スシロー〝なめなめ行為〟と株価下落「因果関係認めるのは難しい」 女性弁護士解説」『東スポWEB』、2023年2月3日。2023年3月23日閲覧。
  11. ^ 市場経済の核心に関わる問題、スシロー迷惑行為騒動 株価操作の可能性…闇バイトで迷惑行為をする人を雇うリスク」『ZAKZAK』産経新聞社、2023年2月7日、p. 1。2023年3月23日閲覧。
  12. ^ 新田龍「すしテロ」よりも注目すべき、外食チェーンの“本気の改革”」『ITmedia』、2023年3月10日。2023年3月23日閲覧。
  13. ^ スシロー、高校生による迷惑動画事件の現状と防止策を公表」『企業法務ナビ』、2023年2月6日。2023年3月24日閲覧。
  14. ^ a b 牛丼チェーン「吉野家」でも迷惑行為動画 SNS拡散、被害届提出へ」『サンスポ』、2023年2月7日。2023年3月24日閲覧。
  15. ^ 罪深き「外食テロ」が壊すビジネスモデル しわ寄せは一般客にも」『産経新聞』、2023年2月3日。2023年3月23日閲覧。
  16. ^ a b c 戸田一法「「回転ずしテロ」の大きすぎる代償、高額の賠償金や懲役・罰金の可能性は」『DIAMOND online』、2023年2月8日、pp. 1-2。2023年3月24日閲覧。
  17. ^ 西谷格「強盗殺人よりも「回転寿司テロ」が気になってしまう私たち」『ニューズウィーク日本語版』、2023年2月2日、p. 1。2023年3月24日閲覧。
  18. ^ a b 窪田 2023, p. 1.
  19. ^ シャイマ・ハリル「日本の「すしテロ」騒ぎで3人逮捕 しょうゆ差しを口に」『BBC NEWS JAPAN』、2023年3月9日。2023年3月25日閲覧。
  20. ^ 「手軽な外食」手間増える、卓上調味料やコップ撤去・回転ずしの皿にカバー…迷惑行為受け」『読売新聞』、2023年2月18日。2023年3月24日閲覧。
  21. ^ <特報>くら寿司が「すしテロ」対策でAIカメラ全店導入 客の迷惑行為を監視」『産経新聞』、2023年3月2日。2023年3月24日閲覧。
  22. ^ すし銚子丸「回転やめます」…迷惑行為対策で店員が直接客席に、価格別の色皿も廃止」『読売新聞オンライン』、2023年3月7日。2023年3月25日閲覧。
  23. ^ 西山守「スシローが「外食テロ」に打ち勝てた決定的な理由」『東洋経済オンライン』、2023年2月18日。2023年3月24日閲覧。
  24. ^ 三輪大輔「「寿司テロ」格安チェーンばかりで起こる特殊事情」『東洋経済オンライン』、2023年2月1日、p. 1。2023年3月25日閲覧。
  25. ^ 「すしテロ」動画、日本社会に波紋」『AFP BB NEWS』、2023年2月3日。2023年3月25日閲覧。
  26. ^ 長浜 2023, p. 6.
  27. ^ 窪田 2023, p. 2.
  28. ^ 窪田 2023, pp. 2–3.
  29. ^ 「寿司テロの波」「清潔志向の強い日本で騒動」 回転寿司で相次ぐ迷惑動画、海外メディアでも波紋」『J-CASTニュース』、2023年2月7日。2023年3月25日閲覧。

参考文献[編集]

関連項目[編集]