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水銀

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
無機水銀から転送)
水銀 タリウム
Cd

Hg

Cn
Element 1: 水素 (H),
Element 2: ヘリウム (He),
Element 3: リチウム (Li),
Element 4: ベリリウム (Be),
Element 5: ホウ素 (B),
Element 6: 炭素 (C),
Element 7: 窒素 (N),
Element 8: 酸素 (O),
Element 9: フッ素 (F),
Element 10: ネオン (Ne),
Element 11: ナトリウム (Na),
Element 12: マグネシウム (Mg),
Element 13: アルミニウム (Al),
Element 14: ケイ素 (Si),
Element 15: リン (P),
Element 16: 硫黄 (S),
Element 17: 塩素 (Cl),
Element 18: アルゴン (Ar),
Element 19: カリウム (K),
Element 20: カルシウム (Ca),
Element 21: スカンジウム (Sc),
Element 22: チタン (Ti),
Element 23: バナジウム (V),
Element 24: クロム (Cr),
Element 25: マンガン (Mn),
Element 26: 鉄 (Fe),
Element 27: コバルト (Co),
Element 28: ニッケル (Ni),
Element 29: 銅 (Cu),
Element 30: 亜鉛 (Zn),
Element 31: ガリウム (Ga),
Element 32: ゲルマニウム (Ge),
Element 33: ヒ素 (As),
Element 34: セレン (Se),
Element 35: 臭素 (Br),
Element 36: クリプトン (Kr),
Element 37: ルビジウム (Rb),
Element 38: ストロンチウム (Sr),
Element 39: イットリウム (Y),
Element 40: ジルコニウム (Zr),
Element 41: ニオブ (Nb),
Element 42: モリブデン (Mo),
Element 43: テクネチウム (Tc),
Element 44: ルテニウム (Ru),
Element 45: ロジウム (Rh),
Element 46: パラジウム (Pd),
Element 47: 銀 (Ag),
Element 48: カドミウム (Cd),
Element 49: インジウム (In),
Element 50: スズ (Sn),
Element 51: アンチモン (Sb),
Element 52: テルル (Te),
Element 53: ヨウ素 (I),
Element 54: キセノン (Xe),
Element 55: セシウム (Cs),
Element 56: バリウム (Ba),
Element 57: ランタン (La),
Element 58: セリウム (Ce),
Element 59: プラセオジム (Pr),
Element 60: ネオジム (Nd),
Element 61: プロメチウム (Pm),
Element 62: サマリウム (Sm),
Element 63: ユウロピウム (Eu),
Element 64: ガドリニウム (Gd),
Element 65: テルビウム (Tb),
Element 66: ジスプロシウム (Dy),
Element 67: ホルミウム (Ho),
Element 68: エルビウム (Er),
Element 69: ツリウム (Tm),
Element 70: イッテルビウム (Yb),
Element 71: ルテチウム (Lu),
Element 72: ハフニウム (Hf),
Element 73: タンタル (Ta),
Element 74: タングステン (W),
Element 75: レニウム (Re),
Element 76: オスミウム (Os),
Element 77: イリジウム (Ir),
Element 78: 白金 (Pt),
Element 79: 金 (Au),
Element 80: 水銀 (Hg),
Element 81: タリウム (Tl),
Element 82: 鉛 (Pb),
Element 83: ビスマス (Bi),
Element 84: ポロニウム (Po),
Element 85: アスタチン (At),
Element 86: ラドン (Rn),
Element 87: フランシウム (Fr),
Element 88: ラジウム (Ra),
Element 89: アクチニウム (Ac),
Element 90: トリウム (Th),
Element 91: プロトアクチニウム (Pa),
Element 92: ウラン (U),
Element 93: ネプツニウム (Np),
Element 94: プルトニウム (Pu),
Element 95: アメリシウム (Am),
Element 96: キュリウム (Cm),
Element 97: バークリウム (Bk),
Element 98: カリホルニウム (Cf),
Element 99: アインスタイニウム (Es),
Element 100: フェルミウム (Fm),
Element 101: メンデレビウム (Md),
Element 102: ノーベリウム (No),
Element 103: ローレンシウム (Lr),
Element 104: ラザホージウム (Rf),
Element 105: ドブニウム (Db),
Element 106: シーボーギウム (Sg),
Element 107: ボーリウム (Bh),
Element 108: ハッシウム (Hs),
Element 109: マイトネリウム (Mt),
Element 110: ダームスタチウム (Ds),
Element 111: レントゲニウム (Rg),
Element 112: コペルニシウム (Cn),
Element 113: ニホニウム (Nh),
Element 114: フレロビウム (Fl),
Element 115: モスコビウム (Mc),
Element 116: リバモリウム (Lv),
Element 117: テネシン (Ts),
Element 118: オガネソン (Og),
Mercury has a rhombohedral crystal structure
80Hg
外見
銀白色
一般特性
名称, 記号, 番号 水銀, Hg, 80
分類 貧金属
, 周期, ブロック 12, 6, d
原子量 200.59(2) 
電子配置 [Xe] 4f14 5d10 6s2
電子殻 2, 8, 18, 32, 18, 2(画像
物理特性
液体
密度室温付近) 13.534 g/cm3
融点 234.32 K, -38.83 °C, -37.89 °F
沸点 629.88 K, 356.73 °C, 674.11 °F
臨界点 1750 K, 172.00 MPa
融解熱 2.29 kJ/mol
蒸発熱 59.11 kJ/mol
熱容量 (25 °C) 27.983 J/(mol·K)
蒸気圧
圧力 (Pa) 1 10 100 1 k 10 k 100 k
温度 (K) 315 350 393 449 523 629
原子特性
酸化数 4, 2 (Hg2+), 1 (Hg22+)
(塩基性酸化物)
電気陰性度 2.00(ポーリングの値)
イオン化エネルギー 第1: 1007.1 kJ/mol
第2: 1810 kJ/mol
第3: 3300 kJ/mol
原子半径 151 pm
共有結合半径 132±5 pm
ファンデルワールス半径 155 pm
その他
結晶構造 菱面体晶系
磁性 反磁性
電気抵抗率 (25 °C) 961nΩ⋅m
熱伝導率 (300 K) 8.30 W/(m⋅K)
熱膨張率 (25 °C) 60.4 μm/(m⋅K)
音の伝わる速さ (液体, 20 °C) 1451.4 m/s
CAS登録番号 7439-97-6
主な同位体
詳細は水銀の同位体を参照
同位体 NA 半減期 DM DE (MeV) DP
194Hg syn 444 y ε 0.040 194Au
195Hg syn 9.9 h ε 1.510 195Au
196Hg 0.15% >2.5×1018 y α 2.0273 192Pt
β+β+ 0.8197 196Pt
197Hg syn 64.14 h ε 0.600 197Au
198Hg 9.97 % 中性子118個で安定
199Hg 16.87 % 中性子119個で安定
200Hg 23.1 % 中性子120個で安定
201Hg 13.18 % 中性子121個で安定
202Hg 29.86 % 中性子122個で安定
203Hg syn 46.612 d β- 0.492 203Tl
204Hg 6.87 % 中性子124個で安定

水銀(すいぎん、: mercury: hydrargyrum)は、原子番号80の元素元素記号Hg汞(みずがね)とも書く。第12族元素に属す。常温常圧凝固しない唯一の金属元素[注釈 1]で、のような白い光沢を放つことからこの名がついている。

硫化物である辰砂 (HgS) 及び単体である自然水銀 (Hg) として主に産出する。

水銀には、三方晶系のα-Hgと、正方晶系のβ-Hgの2種の同素体がある。

名称

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元素記号の Hg は、古代ギリシア語: ὕδράργυρος (hydrargyros ; < ὕδωρ 「水」 + άργυρος 「銀」)に由来する ラテン語: hydrargyrum の略。また、古くは ラテン語: argentum vivum (「生きている銀」、流動する点を「生きている」と表現した)ともいい、この言い方は 英語: quicksilver(古語。なお形容詞 quick は古くは「生きている」の意味であった[1])、ドイツ語: Quecksilberなどへ翻訳借用された。

古来の日本語(大和言葉)では「みづかね」と呼ぶ。漢字では古来「」(拼音: gǒng)の字をあて、標準中国語(普通話)でもこの表記が正式である(中国では「水銀」は通称として用いられる)。

英語名 mercury は14世紀から用例があり[2]占星術錬金術の分野で最初用いられたものである[2]。これは、天球上をせわしなく移動する水星を流動する水銀に結びつけたもの[2]とも、また、液体で金属であるという流動性が、神々の使者として天地を自由に駆け巡ったヘルメースギリシア神話の神で、ローマ神話メルクリウスMercurius)と同一視される)の性格と関連づけられたためともいわれる[3]

性質

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水銀は、各種の金属と混和し、アマルガムと呼ばれる合金をつくる。これは水銀が大半を占める場合には液体、水銀の量が少なければ固体となる。従来は広くの治療に使われていた。白金マンガンコバルトニッケルタングステンとは合金を形成しないので、水銀の保存には鉄の容器が用いられる。

生物に対して毒性が強いため、使用が控えられている金属である。 また、その特異な性質から様々な科学者の興味の対象となり、多くの現象の発見にかかわっている。

同位体

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7種の安定同位体が存在する。同位体は、中性子の数が異なることから、僅かに質量が異なる。従って、同じ元素であっても物理学的な特性に違いを持つ。この特性を利用し、環境中に蓄積された水銀の同位対比を精密に測定する事で、水銀の循環を解明することが可能になる[4]

毒性

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古代においては、辰砂(シンシャ。主成分は硫化水銀:鮮血色をしている)などの水銀化合物は、その特性や外見から不死のや船底の防腐剤として珍重され、また辰砂の一種である朱砂(スサ)は赤色塗料として使用された。特に中国皇帝に愛用されており、不老不死の薬、「仙丹」の原料と信じられていた(錬丹術)。

しかし現代から見ればまさにを飲んでいるに等しい。中世以降、水銀は毒として認知されるようになった。日本では辰砂の産地は丹生と呼ばれ丹生神社が建てられており、水銀中毒事件が神社社伝に記録されている場合がある[5]

世界中において有機水銀はかつて農薬として広く使われ、1970年代イラクでは、メチル水銀で消毒した小麦の種を食用に流用したパンによって有機水銀中毒で400人以上が死亡する事件が起きた。そして、その毒性から現在は使用が禁止され、代わりに無機水銀などが使われるようになった。さらに、水銀化合物自体の使用が環境汚染につながるとして忌避されるようにもなった。

2001年アメリカ合衆国では「乳児の際に受けた予防接種中のチメロサール(エチル水銀チオサリチル酸ナトリウム・ワクチンの防腐剤として使用される)によって自閉症になった」として製薬会社に対する訴訟が発生した。三種混合ワクチン日本脳炎ワクチン、インフルエンザワクチン、B型肝炎ワクチンなどの保存剤としてチメロサールが使われていたためである。そのためチメロサールを使わないか低濃度のものに替えるなど規制が強化されたが、その後の大規模調査で自閉症との関連は否定され[6]、関連を示唆した発端の論文は科学的不正があったとして撤回されている。

有機水銀は無機水銀に比べ毒性が非常に強い。特にメチル水銀の中枢神経系)に対する毒性は強力で、日本で起きた水俣病熊本県八代海)や、阿賀野川流域(新潟県)での工場排水に起因する有機水銀中毒(第二水俣病)の原因物質である。

地球上においては地殻などに水銀が比較的豊富に存在する。これら自然界に存在する水銀は水圏において非酵素的反応や微生物の作用によって有機水銀に変化し、食物連鎖を通じて、大形魚類や、深海魚、海洋動物に蓄積される(生物濃縮)。日本の厚生労働省キンメダイカジキマグロなどの魚類、クジライルカなどの海棲哺乳類に含まれる水銀が胎児の発育に影響を及ぼす恐れがあるとして、妊娠中かその可能性のある女性は、魚介類の摂取量や回数を制限するように注意を喚起している[7]

食物に占める魚介類の割合が多い日本では、メチル水銀の摂取量が他国と比較して高いことが知られている。メチル水銀の摂取量の地域的特徴は、マグロ類の消費傾向とよく一致し、関東地方などを中心とする東日本で高く、中国地方から九州北部にかけて比較的低くなっている。一方、発育途中にある胎児の神経系は、メチル水銀の影響を最も受けやすいと考えられる。魚介類にはある種の不飽和脂肪酸など、胎児の発育などにも有効な成分も多く含まれており、魚介類中に含まれる微量のメチル水銀が、胎児の発達にどれほどの影響を及ぼしているかは、研究者によっても見解が分かれるところである。

欧米の政府機関は、基準を設けて、マグロカジキなどの摂取制限を行っている[8]。特に妊婦や妊娠する可能性のある女性は、メチル水銀を多く含む大形食魚やイルカ、キンメダイなどの魚介類などを、基準より食べ過ぎないよう注意するとよい[9]。なお、マグロなどの魚介類はセレンを含んでおり、これがメチル水銀の毒性を軽減させているとの可能性も指摘されているが、詳細は不明である。

自然界では無機水銀及び有機水銀を処理して、金属状態の水銀に変化させるが存在する。この菌は通称水銀耐性菌と呼ばれ、水俣病の発生した地域の土壌から単離された。水銀耐性菌において無機水銀及び有機水銀を金属水銀に代謝するのは、この菌の産生するタンパク質によるものであることが遺伝子工学的な解析により判明しており、その担当遺伝子の解析も行われている(メタロチオネインも参考のこと)。環境汚染の浄化技術として、いわゆるバイオレメディエーションへの応用も行われている。

体温計に使われている水銀は金属水銀なので安全だと言われていた。[要出典]金属水銀は間違って飲み込んだとしても、消化管からはほとんど吸収されないので、急性中毒を起こすことはないと思われていたからである(ただし、一部が腸内細菌叢により酸化されたり、有機水銀に転換されて吸収される余地が示唆されている)。しかし、水銀は20℃で気化し、気化した場合にはから吸収されやすく、体内に吸収された場合にはヘモグロビン血清アルブミン結合して毒性を示す。このため水銀を含有する物(蛍光灯体温計血圧計ボタン型電池朱肉など)を焼却することは危険である。

これら水銀を含有する使用済み物品は分別回収の対象であるが、一般ゴミに紛れて焼却炉に入れられることもあり、東京都清掃センター水銀排ガス事件が起きている。

水銀体温計1本が混じったゴミを燃やすと、排気の水銀濃度は1立方メートル当たり数千マイクログラムに達する。日本では、新設のゴミ処理施設では排気の水銀濃度を1時間平均で1立方メートル当たり30マイクログラムまでとする規制が実施された。このため既存施設を含めて、排気の分析と活性炭などによる浄化が行われている[10]

許容摂取量

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許容摂取量は、国際専門家会議 (JECFA) において、胎児を保護するため、暫定的耐容量 (PTWI) 1.6 μg/kgと定められており[11]諸外国[12]、においても、妊婦等への摂食制限の啓蒙や規制強化が行われている[13][14]

底質における水銀の蓄積

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水銀の外部環境への排出抑制は取組が進んでいるが、過去に排出された水銀や現在でも水銀を含む農薬が許可されている国域では、河口や湖などの底質に蓄積されていることがある。日本国については産業技術総合研究所で全国の河川の底質を分析して、日本の地球化学図としてそのデータを公開している[15]。また環境省は基準値以上の水銀化合物を含む底質を除去するように政令で通達している[16]

水銀の基準

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生産

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水銀の鉱山としては、スペインシウダ・レアルにある世界遺産の国営アルマデン鉱山が有名。古代ローマ紀元前372年からイスラム帝国時代、そして2004年7月の生産停止に至るまで辰砂及び自然水銀を産出していた。日本では、佐世保市相浦の佐世保層群相浦層[17][18]北海道留辺蘂町にあったイトムカ鉱山(自然水銀の産出が多いことでも有名)や古代から産出記録がある丹生鉱山が知られている。

辰砂を空気中で約600℃まで加熱することで水銀地金が単離する。水銀地金は液体であるため、アマルガムを生じさせない素材の容器に入れて流通させる。国際市場では34.5kgの鉄製容器(フラスコボンベと呼ばれる。近年は腐食による水銀の漏出を防ぐため容器の両面を樹脂で表面処理する事が多い)に充填して流通する事が慣習となっている。ただし、国内向けや小口向けでは他の試薬同様、ガラス製や樹脂製の瓶に入れて出荷される事が多い。

水銀鉱石

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水銀鉱石を構成する鉱石鉱物には次のようなものがある。

商業的には辰砂及び自然水銀が主要な鉱石となっている。

国内水銀利用量

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「我が国の水銀に関するマテリアルフロー(2010年度ベース)」によれば、以下の通り[19][20]

  • ランプ類 38.1%
    • 蛍光ランプ
    • 冷陰極蛍光ランプ (CCFL)
    • HIDランプ
  • 医療用計測器 23.8%
    • 水銀式血圧計
    • 水銀式体温計
  • 無機薬品 14.7%
    • 銀朱/硫化水銀(II)
    • 水銀化合物
  • ボタン電池 12.5%
    • 空気亜鉛
    • 酸化銀
    • アルカリボタン
  • 工業用計量器 10.6%
    • ガラス製水銀温度計
    • 水銀充満式温度計
    • 高温用ダイヤフラムシール圧力計
    • 液柱型水銀気圧計
    • 基準液柱型圧力計
  • 歯科用水銀 0.3%

用途

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産業用、研究用

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医療用など

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  • 単体の水銀は熱膨張性の良さと、温度に対する膨張係数が線形に近いことから体温計に用いられる。現在ではデジタル式に押されて廃れつつある。
  • 血圧計では、水銀柱を利用して圧を読みとるものが伝統的であり、医療現場や医療教育で広く使われている。しかし、現在は都立病院などで電子式の血圧計が普及してきている(医療用の電子式血圧計ならば、聴診法にも対応している)[23]。ちなみに血圧の単位は、国際単位系の例外として、mmHg(水銀柱ミリメートル)を用いる。
  • スズなどとのアマルガムは、歯科治療において歯を削った後の詰め物として一般に用いられていた時期がある。これはアマルガム修復と呼ばれる手法で、該当金属粉末と水銀を混合した直後はアマルガム化が進んでいないためにシャーベット状であり、アマルガムが形成されて全体が固化するまでにしばらく時間がかかることを利用していた。
  • 日本において、かつては消毒薬マーキュロクロム (C20H8Br2HgNa2O6) (赤チン)の材料として使用されていたが、2020年12月25日に赤チンの生産が終了した。[24]
  • 性病の治療に水銀軟膏が用いられていた。
  • 硫化物辰砂と呼ばれ、催眠、鎮静効果のある生薬として漢方の処方に用いられることがある。
  • 密かに堕胎薬としても使われた(無論極めて危険である)[注釈 3]
  • 有機水銀のチメロサールは、ワクチンの防腐剤として使用される[25]

その他の日用品など

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  • 蛍光灯水銀灯などでは、水銀蒸気が電子放出物質として使用されている。
  • 辰砂朱色顔料岩絵具としても用いられる。ただし、そのまま用いるケースは稀となり、金属水銀から工業的に製造された銀朱(バーミリオン。硫化水銀の一種)が用いられるようになった。この銀朱は、今のところ代替品が見つからないので、銀朱を用いた絵画や工芸品などの修繕・修復に使用されている。
  • かつては電池乾電池水銀電池など)の亜鉛と混合しアマルガム化することによって負極の化学反応抑制用として使用された。現在国内では酸化銀電池、アルカリボタン電池等に使用されているのみである。なお、日本でマンガン電池の水銀が0使用になったのは1991年(平成3年)、アルカリ電池では1992年(平成4年)であり、古い電池の破棄には注意を要する(各市町村の処分方法に従うこと)。
  • 鏡が銅などの金属を磨いて作られていた時代には、鏡の表面にアマルガムを形成させることで鏡研ぎの仕上げとしていた。

分析法

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水銀は常温で容易に気化するため、分析法は還元気化原子吸光法が主である。測定機器としては原子吸光分析装置のバーナヘッド部を石英セルに置き換えるほか、水銀測定専用の装置が市販されている。有機水銀の場合は試料を分解せず溶媒抽出後、ガスクロマトグラフィー分離して電子捕獲検出器質量分析装置で検出する場合もある。

総水銀の分析手順は概ね次のようなものである。詳細は成書を参照されたい。

  1. 試料を強酸で分解する。硝酸-過塩素酸、硝酸-過塩素酸-硫酸、硝酸-硫酸の系がよく用いられる。
  2. さらにペルオキソ二硫酸カリウム過マンガン酸カリウム等で有機水銀と残余の有機物を完全に酸化分解する。
  3. 分解液を還元気化装置の容器に採り、還元剤を加え通気する。
  4. 水銀イオンが水銀原子に還元され、気相中にパージされてくる。
  5. 水銀原子の波長253.7 nmにおける吸光度測定する。

処分・廃棄

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かつては民生用・産業用機器に幅広く使われていたが、水銀に関する水俣条約(水俣条約)の発効に伴い、日本を含む水俣条約の締結国では2020年末をもって水銀を利用した製品の製造および輸出入が原則的に禁止された。その後も利用自体は可能であるが、環境省からは早期の回収のお願いが出されている。

2015年に施行された「水銀による環境の汚染の防止に関する法律(水銀汚染防止法)」に対する附帯決議においては、特に退蔵されている水銀血圧計および水銀体温計に関して、いずれ国際的な水銀の需要低下によってリサイクルして売却することによる収益が難しくなり、回収した水銀の廃棄処理費が高騰すると考えられているので、環境省では「早期に処分することを推奨」としている[26]。水銀使用蛍光灯に関しては販売が許可されているが、2023年の水俣条約第5回締約国会議の合意に基づき、これも2027年末をもって禁止される予定。

日本において水銀を含む物質や製品等を処分、廃棄する際には、環境省が示す水銀廃棄物ガイドライン[27]に沿って適切に保管、廃棄することが求められる。具体的な方法に関しては、「各自治体が定めた方法に従い分別して廃棄」することとしている。水俣条約の発効に伴い、処分方法は必ず自治体に確認する必要がある。特に水銀使用製品を「燃えるゴミ」で出すと、気化した水銀により清掃工場が汚染され、巨額の除去費用が必要となるので、水銀体温計・水銀血圧計・水銀使用蛍光管などは絶対に「燃えるゴミ」で出してはならない[28]。自治体に回収してもらう場合、例えば目黒区では、「水銀を含む製品」は、必ず中身の見える袋に入れて、必ず袋に中身を書く必要がある。水銀を含んだボタン電池は、回収ボックスに入れること。

2018年には、実験に使った水銀を排水に流すなどの不適切な扱いを続けていた元大学教授に対し、水銀の除去費用として1550万円の支払いを命じる判決が言い渡された例がある[29]

化合物

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水銀(IV)の化合物は存在が予言されるにとどまっていたが、2007年に初めて HgF4 の合成が報告された。固体 Ar または Ne マトリクス中の極低温下で水銀と F2 との反応により合成された[30]

Unicodeの符号位置

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記号 Unicode JIS X 0213 文字参照 名称
U+32CC - &#x32CC;
&#13004;
SQUARE HG

脚注

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注釈

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  1. ^ 常温常圧付近で液体状態をとりうる金属としては他にガリウム(融点30℃)、ルビジウム(融点39℃)、セシウム(融点28℃)、フランシウム(融点27℃(理論推定))などがあるが、融点が−38.83℃と常温より十分に低いものは現在発見されている金属元素の中では水銀が唯一である。
  2. ^ 東大寺盧舎那仏像(奈良の大仏)の金めっきは金アマルガムを大仏に塗った後、加熱して水銀を蒸発させることにより行われた。一説には、この際起こった水銀汚染が平城京から長岡京への遷都の契機となったという。しかし2013年、東京大学大気海洋研究所が現地で当時の土壌を採取調査をしたところ、現代の環境基準よりはるかに低かったという[22]
  3. ^ 川柳に「水銀(みずかね)で心の曇りを研いでおき」などと詠まれている。

出典

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  1. ^ Online Etymology Dictionary
  2. ^ a b c Online Etymology Dictionary
  3. ^ 桜井弘『元素111の新知識』講談社、1998年、326-327頁。ISBN 4-06-257192-7 
  4. ^ 武内章記、柴田康行、田中敦「水銀同位体生物地球化学」『環境化学』第19巻第1号、日本環境化学会、2009年3月17日、1-11頁、doi:10.5985/jec.19.1NAID 10024803660 
  5. ^ 岡部, 富久市八満宇佐宮もう一つの謎」『大分縣地方史』第201巻、2007年11月、30- 49頁。 
  6. ^ メチル水銀ばく露による健康被害に関する国際的レビュー (PDF) 有村公良
  7. ^ 厚生労働省・魚介類等に含まれる水銀について
  8. ^ 水銀 渡辺和男氏(浜松医大)
  9. ^ 水俣病からメチル水銀中毒症へ 熊本大学
  10. ^ 【注目クリーン技術】排ガスの水銀 効率除去(JFEエンジ)ゴミ焼却施設、分析計工夫『日経産業新聞』2019年2月5日(環境・エネルギー・素材面)。
  11. ^ Opinion of the CONTAM Panel related to mercury and methylmercury in food JECFA
  12. ^ Mercury Levels in Commercial Fish and Shellfish アメリカ合衆国 FDA
  13. ^ 妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項 日本国 厚生労働省
  14. ^ FDA ANNOUNCES ADVISORY ON METHYL MERCURY IN FISH アメリカ合衆国 FDA
  15. ^ 日本の地球化学図
  16. ^ 法令・告示・通達>底質の暫定除去基準について 日本国 環境省
  17. ^ 木下龜城九州の水銀礦床」『岩石鉱物鉱床学会誌』第25巻、第1号、29-36頁、1941年。doi:10.2465/ganko1941.25.29https://www.jstage.jst.go.jp/article/ganko1941/25/1/25_1_29/_pdf 
  18. ^ 松井和典・古川俊太郎・沢村孝之助「佐世保地域の地質」『地域地質研究報告(5万分の1地質図幅)』、地質調査所、1989年https://www.gsj.jp/data/50KGM/PDF/GSJ_MAP_G050_14068_1989_D.pdf 
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関連項目

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外部リンク

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