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2021年9月6日 (月) 07:00時点における版
「アイ・アム・ザ・ウォルラス」 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
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ビートルズの楽曲 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
収録アルバム | 『マジカル・ミステリー・ツアー』 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
英語名 | I Am The Walrus | |||||||||||||||||||||||||||||||||
リリース | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
規格 | 7インチシングル | |||||||||||||||||||||||||||||||||
録音 |
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ジャンル | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
時間 | 4分33秒 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
レーベル | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
作詞者 | レノン=マッカートニー | |||||||||||||||||||||||||||||||||
作曲者 | レノン=マッカートニー | |||||||||||||||||||||||||||||||||
プロデュース | ジョージ・マーティン | |||||||||||||||||||||||||||||||||
チャート順位 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
後述を参照
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「アイ・アム・ザ・ウォルラス」(I Am the Walrus)は、ビートルズの楽曲である。1967年11月にシングル盤『ハロー・グッドバイ』のB面曲として発売された。レノン=マッカートニー名義となっているが、実質的にはジョン・レノンによって書かれたビートルズの曲の中でも特にサイケデリック色の強いナンバー。なお、EP『マジカル・ミステリー・ツアー』のブックレットには"No you're NOT!" Said Little Nicolaというサブタイトルがつけられている[注釈 1]。同年12月に公開されたテレビ映画『マジカル・ミステリー・ツアー』に演奏シーンが収められ、同名のサウンドトラックEP盤(英国)、LPアルバム(米国)に収録。現在ではアメリカ盤に倣った編集アルバムCDに収録されている。映画ではビートルズのメンバーがサイケデリックな格好をしたり、セイウチの着ぐるみを着て演奏するシーンで使われている。
本作は、ルイス・キャロル作の物語『鏡の国のアリス』の「セイウチと大工」に触発されて書いた楽曲。プロデューサーのジョージ・マーティンは、伴奏で追加されたヴァイオリン、チェロ、ホーン、クラリネットなどのオーケストラのアレンジも手がけた。
1967年12月の全英シングルチャートで、「アイ・アム・ザ・ウォルラス」が収録されたシングル盤『ハロー・グッドバイ』とEP『マジカル・ミステリー・ツアー』の2作品が上位2位を独占したため、「アイ・アム・ザ・ウォルラス」は同時に1位と2位を獲得した楽曲となった。なお、歌詞に出てくる「You've been a naughty girl, you've let your knickers down(まったくきみはいけない娘だね。すぐにニッカーズを下ろしちゃって。)」というフレーズが問題視されたことにより、BBCより放送禁止の措置を受けた。
背景・曲の構成
音楽評論家のイアン・マクドナルドは、「アイ・アム・ザ・ウォルラス」のモデルとなったのは、1967年夏に発売されたヒットを記録したプロコル・ハルムの「青い影」と推測している。同作はレノンのお気に入りの楽曲の1つであった[2]。ある朝、レノンはパトロールカーのサイレンから着想を得て「Mister city policeman」という楽曲を書き始め、他の未完成となっていた楽曲を融合して完成させた[3]。歌詞には「Lucy in the sky」と、本作と同じくレノン作の「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」についての言及も見られる[4]。
タイトルのウォルラス(セイウチ)は、ルイス・キャロル作の物語『鏡の国のアリス』の「セイウチと大工」からとられたものである[5]。後述のように、レノンはセイウチが善人と勘違いしており、「しまった!」と思ったことを明かしている[6]。
曲の途中の"Yellow matter custard..."からのくだりは、
という、過去に作った歌詞からの引用であるとレノンの友人であるピート・ショットンは語っている。なお、「You've been a naughty girl, you've let your knickers down(まったくきみはいけない娘だね。すぐにニッカーズを下ろしちゃって。)」というフレーズが問題視され、BBCでは放送禁止となった[8][9]。
後半部分のリズムについては宮城県民謡「斎太郎節」との共通点が指摘されている。ちなみにレノンはビートルズ日本公演で来日した際に東京ヒルトンホテルの10階のスイートルームに運び込まれたステレオセットで日本の民謡のアルバムを熱心に聞いており、その中でも“スゴくリズムがおもしろい”と言ってたのが「斎太郎節」だった[10]。
1980年のPLAYBOY誌のインタビューで、レノンは本作について「最初の部分はある週末にトリップした時に書いて、次の部分は次の週末にトリップした時に書いた。そしてヨーコと出会った後に完成した。一部はハレ・クリシュナについての言及。クリシュナに興味を持っていた人が多かったんだ。『Elementary penguin(ペンギン聖体)』というのは『ハレ・クリシュナ』のような偶像崇拝を簡素化した表現さ。当時はディランの影響もあって、いろんな意味に取れる表現を使っていたよ。あと『不思議の国のアリス』の『セイウチと大工』は僕にとってはとても美しい詩だった。ルイス・キャロルが資本家や社会構造について言及していたとは予想だにしてなかったけどね。でも後になって実はセイウチが悪人で、大工が善人だということに気がついて『しまった!』と思った。僕は『セイウチ』ではなく『大工』になるべきだった。'I Am The Carpenter'(俺は大工)でもそんなに違和感はないだろう?」と語っている[11]。
レコーディング
「アイ・アム・ザ・ウォルラス」のレコーディングは、1967年8月27日のマネージャーであるブライアン・エプスタインの死後初のレコーディング作業となった。
1967年9月5日にEMIスタジオのスタジオ2[12]でレコーディングが開始され、レノンがエレクトリックピアノ、ジョージ・ハリスンがギター、リンゴ・スターがドラムスという編成で16テイク録音された[13]。この日に録音されたテイク16が、1996年に発売された『ザ・ビートルズ・アンソロジー2』に収録されている。翌日、テイク16をリダクションし、ポール・マッカートニーによるベース、スターのドラム、レノンのリード・ボーカルがオーバー・ダビングされた[14]。
9月27日にスタジオ1にて、ヴァイオリン、チェロ、ホルン、クラリネットをはじめとしたオーケストラの演奏が加えられた[14]。アレンジはジョージ・マーティンが担当。なお、マッカートニーはオーケストレーションについて多少アイデアを提出したとされている。翌日には、マイク・サムスを中心とした16人の合唱団がレコーディングに参加し[14]、"Ho-ho-ho, hee-hee-hee, ha-ha-ha", "oompah, oompah, stick it up your jumper!", "everybody's got one"というコーラスが録音された[15]。
「リア王」のラジオ音源
曲の中間ほどから聞こえる朗読は、シェイクスピア著の「リア王」(第4幕、シーン6)の219行目から222行目と249行目から262行目の部分である[16]。1967年9月29日[14]にレノンがAMラジオのダイヤルを回し、この日の午後7時30から午後11時にかけて[17]BBCラジオ3で放送された「リア王」を朗読する声を加えた[18]。
219行目から222行目より、曲に使用された節が以下の部分になる[16]。
Gloucester: (2:35) Now, good sir, wh— (ここでレノンは一度別のチャンネルにダイヤルを回している)[16]
Edgar: (2:38) — poor man, made tame by fortune — (2:44) good pity —
曲のエンディング部分で、249行目から262行目が引用された[16][19]。
Oswald: (3:52) Slave, thou hast slain me. Villain, take my purse.
If ever thou wilt thrive, (4:02) bury my body,
And give the (4:05) letters which thou find'st about me
To (4:08) Edmund, Earl of Gloucester; (4:10) seek him out
Upon the British party. O, (4:14) untimely Death!
Edgar: (4:23) I know thee well: a (4:25) serviceable villain;
As duteous to the (4:27) vices of thy mistress
As badness would desire.
Gloucester: What, is he dead?
Edgar: (4:31) Sit you down father, rest you.
なお、ラジオ放送は、マーク・ディグナム(グロスター伯)、フィリップ・ガード(エドガー)、ジョン・ブライニング(オズワルド)によって朗読された[20]。
ミキシング
モノラル・ミックスと2種類のステレオ・ミックスが作られ、ミキシングによる差異がある。顕著な差異はイントロのリフがステレオは6回、モノラルは4回繰り返される[注釈 2]。1:20秒付近の"I'm crying"と歌われる個所で、モノラルではドラム、タンバリンがカットされ、英国(CD)ステレオではカットされていない。米国・西ドイツ等のステレオ版はオーヴァーダビングされたスネアドラムのみ残る。また1分35秒付近の"I'm crying"と"yellow matter custard"の間が1小節長いヴァージョンも存在する(米国モノラル・シングル)。後、米キャピトルにより英国ステレオ・ミックスと米国モノラル・ミックスが組み合わさった新しいミックスが作られ、アメリカ編集盤『レアリティーズ Vol.2』に収録された。
なお、モノラルのミキシングを行った際にその場で流れていたBBCのラジオ音声をマルチトラック・テープではなく、モノラル・マスターにオーバー・ダビングしたために、ステレオ・ミックスの"Sitting in an English garden"という歌詞から先の部分はモノラル・ミックスを疑似ステレオ化されている[21][注釈 3]。ただし4分04秒あたりから定位が左に寄り、4分13秒あたりから右に移る。こうした点から単純な疑似ステレオとは言い難い。
映画『マジカル・ミステリー・ツアー』のビデオ・ソフト化では後半パートがモノラル化されている。
ビートルズのマッシュアップ作品として2006年11月に発売された『LOVE』では、後半部分も完全なステレオとしてリミックスされている[注釈 4]。
演奏
- ビートルズ
- 外部ミュージシャン
-
- ジョージ・マーティン - 音楽プロデューサー
- セッションミュージシャン - ストリングス、ブラス、木管楽器
- マイク・サムス - バッキング・ボーカル
- レイ・トーマス - バッキング・ボーカル[23]
- マイク・ピンダー - バッキング・ボーカル[23]
- ジェフ・エメリック、ケン・スコット - レコーディング・エンジニア
カバー
- オアシス - 初期オアシスは定番としてライブのラストにこの曲を演奏していた。シングル『シガレッツ・アンド・アルコール』、日本盤シングル『ホワットエヴァー』、B面集アルバム『ザ・マスタープラン』に、グラスゴー・キャット・ハウスのライブを模した、新人契約会議で披露した演奏を収録。
- RED WARRIORS - シングル『バラとワイン』及び、ベスト・アルバム『RED SONGS』に収録
- フランク・ザッパ - 1988年のツアーの際演奏されたが、当時ビートルズの版権を所有していたマイケル・ジャクソンをこき下ろす歌を歌っていたことなどから、2014年現在もこのメドレーの作品化には至っていない。いわゆる海賊版などで聴くことが可能である。
- 斉藤和義 - 「Dream Power ジョン・レノン スーパー・ライヴ2006」にて演奏
- スプーキー・トゥース - 『ザ・ラスト・パフ』に収録
- スティクス - 『Big Bang Theory』に収録
- Gray Matter - 『Food for Thought/Take It Back』に収録
チャート成績
チャート(1967年) | 最高位 |
---|---|
ニュージーランド (Listener)[24] | 17 |
US Billboard Hot 100[25] | 56 |
US Cash Box Top 100[26] | 46 |
脚注
注釈
出典
- ^ Williams, Stereo (2017年11月26日). “The Beatles' 'Magical Mystery Tour' at 50”. The Daily Beast. 2020年2月16日閲覧。
- ^ MacDonald 2005, p. 268, 443.
- ^ LIFE (Time Inc) 65 (12): 72. (20 September 1968).
- ^ Kasser, Tim. Lucy in the Mind of Lennon. Oxford University Press. p. 96. ISBN 0-1998-7690-8
- ^ MacDonald 2005, p. 268.
- ^ Sheff 2000, p. 185.
- ^ Davies, Hunter (2002年). “My Friend John”. 2019年5月6日閲覧。
- ^ “The Beatles: 20 things you did not know about the Fab Four”. The Telegraph. Telegraph Media Group (2009年9月7日). 2020年8月6日閲覧。
- ^ “"I Am The Walrus" History”. BEATLES MUSIC HISTORY!. DKR Products. 2020年8月6日閲覧。
- ^ “ビートルズと日本 TOKYO 5 DAYS トークイベント・レポート”. シンコーミュージック・エンタテイメント. 2020年8月5日閲覧。
- ^ Sheff 2000, p. 184.
- ^ Russell 2006, p. 326.
- ^ Womack 2016, p. 218.
- ^ a b c d Lewis & Spignesi 2009, p. 95.
- ^ Lewisohn 1988, p. 68.
- ^ a b c d Lamb, Bill (2019年5月24日). “Top 25 Beatles Songs”. LiveAbout. Dotdash publishing. 2021年4月16日閲覧。
- ^ “Network 3 Programme Listings for Friday, 29 September, 1967”. BBC Genome Project. British Broadcasting Corporation. 2019年5月6日閲覧。
- ^ Lewisohn 1988, p. 128.
- ^ Everett 1999, p. 134-135.
- ^ Womack 2018, p. 348.
- ^ Here, There and Everywhere: My Life Recording the Music of the Beatles 2019年5月6日閲覧。
- ^ 『ジョン・レノンPlayboyインタビュー』集英社、1981年、95頁。ASIN B000J80BKM。
- ^ a b “Discussions Magazine Music Blog: An EXCLUSIVE interview with THE MOODY BLUES' Ray Thomas!”. Discussionsmagazine.com (2015年1月15日). 2018年11月1日閲覧。
- ^ “flavour of new zealand - search listener”. www.flavourofnz.co.nz. 2020年8月5日閲覧。
- ^ “The Hot 100 Chart”. Billboard (1967年12月23日). 2020年11月26日閲覧。
- ^ “Cash Box Top 100 Singles, December 23, 1967”. tropicalglen.com. 2020年11月26日閲覧。
参考文献
- Aldridge, Alan, ed (1990). The Beatles Illustrated Lyrics. Boston: Houghton Mifflin / Seymour Lawrence. ISBN 0-395-59426-X
- Everett, Walter (1999). The Beatles as Musicians. Revolver Through the Anthology. New York: Oxford University Press. ISBN 978-0195129410
- Lewis, Michael; Spignesi, Stephen J. (2009). 100 Beatles Songs - A Passionate Fan's Guide. Running Press. ISBN 1-6037-6265-5
- Lewisohn, Mark (1988). The Beatles Recording Sessions. New York: Harmony Books. ISBN 0-517-57066-1
- MacDonald, Ian (2005). Revolution in the Head: The Beatles' Records and the Sixties (2nd rev. ed.). Chicago, IL: Chicago Review Press. ISBN 978-1-55652-733-3
- Russell, Jeff P. (2006). The Beatles Complete Discography. Universe. ISBN 0-7893-1373-1
- Sheff, David (2000). All We Are Saying: The Last Major Interview with John Lennon and Yoko Ono. New York: St. Martin's Press. ISBN 0-312-25464-4
- Womack, Kenneth (2016). The Beatles Encyclopedia Everything Fab. ABC-CLIO. ISBN 1-4408-4427-5
- Womack, Kenneth (2018). Sound Pictures: The Life of Beatles Producer George Martin, The Later Years, 1966-2016. Chicago Review Press. ISBN 0-9127-7777-X
外部リンク
- I Am The Walrus - The Beatles