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「内閣総理大臣専用車」の版間の差分

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[[File:TOYOTA LEXUS LS600hL used by Japanese Prime Minister.jpg|thumb|240px|right|内閣総理大臣専用車([[トヨタ自動車|トヨタ]]・[[レクサス]][[レクサス・LSハイブリッド|LS600hL]])]]
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'''内閣総理大臣専用車'''(ないかくそうりだいじんせんようしゃ)は、[[日本]]の[[内閣総理大臣]]が使用する[[公用車]]である。
'''内閣総理大臣専用車'''(ないかくそうりだいじんせんようしゃ)は、[[日本]]の[[内閣総理大臣]]が使用する[[公用車]]である。
[[Toyota Century 3rd generation 2017 Tokyo Motor Show front 1 (cropped).jpgUWG60型|トヨタ・センチュリー(UWG60型)]]


== 概要 ==
== 概要 ==

2022年8月21日 (日) 12:55時点における版

内閣総理大臣専用車(トヨタレクサスLS600hL

内閣総理大臣専用車(ないかくそうりだいじんせんようしゃ)は、日本内閣総理大臣が使用する公用車である。

概要

現在では、いずれもトヨタ自動車製の「センチュリー」および「レクサスLS600hL」の2車種が併用されている。

内閣総理大臣が外出のため移動する際は、公用・私用問わず総理専用車を使用する。内閣総理大臣として主に東京都心部の公務では1台のUWG60型センチュリー(後述)が、地方公務や選挙遊説などの党務では3台のGZG50型センチュリー1998年頃、2002年頃、2006年にそれぞれ導入)や2台のUVF46型レクサスLS600hL(後述)がそれぞれ使われており、こうした車両の使い分けが自民党政権下では見られる。ただし、民主党政権下では地方公務や選挙遊説などの党務はハイヤーで移動しており、この辺りは政権党によって運用が異なる。なお、地方公務や選挙遊説においても原則的に総理専用車が用意されるようになったのは、第2次安倍内閣の頃からである。これは反対派やテロ行為への警戒を強化したためで、災害現場の視察など特殊な状況でない限り、可能な限り総理専用車が用意されるようになった。地方で総理専用車が用意できない場合は警視庁の特別警護車(防弾仕様)を運んで現地で総理を乗車させて移動したケースもあり、情勢や時代の変化に合わせた運用がなされている[1]

総理専用車は防弾ガラス特殊鋼装甲が施された防弾車仕様であるが、テロ対策の観点から詳細は一切明らかにされていない[2]。他の国務大臣の公用車には防弾改造は施されておらず、この点でも行政府の長たる内閣総理大臣の専用車は特別な仕様となっている。フロントグリルの内または外およびリアバンパーには、LED光源の青色の識別灯が装備されており、総理乗車時にはこれを点灯させて走る。車内には後部座席から視聴できるテレビが装備されているほか、新聞各紙が用意され、移動中も総理が情報収集に当たっているという[2]

運転手は官邸職員(内閣技官)。新総理の任命と共に退任し、新しい運転手が選任される。技官には、総理の会話がすべて筒抜けであるため、テロ対策の観点から身元は一切明かされない[2]

一般の自動車と同様にナンバープレートを取得しているが、老朽化等で車両の入れ替えがあっても番号は20-00、30-00、50-00、70-00、80-00等のキリ番であることが多いが、他に38-00も使われている。車検証上の所有者は内閣である。

回送時を除いて総理専用車が単独で移動することはなく、関係車両による車列を組んで走る。総理専用車を挟む形で前後2台の警護車を加えた3台が車列の最小構成単位であり、あとは状況に応じて、車列に警護車や白黒パトカーが加わったり、共同通信社時事通信社所属の総理担当記者番記者)が乗るいわゆる「番車」や、随行する秘書官の公用車が加わる[3]

なお、総理専用車と2台の警護車は可能な限りメーカーが統一される。現在の総理専用車は上記の通りいずれもトヨタ自動車製であることから、警護車もこれに倣って「センチュリー」、「クラウンマジェスタ」といったトヨタ製の大型セダンが使われ、車体色も黒で統一されている[4]。 2017年3月、総理専用車の車種に合わせる形で警護車として「レクサスLS」が新たに6台配備され、現在では「レクサスLS」がメインの警護車として使用されている。

総理は移動ルートが頻繁に変わるので、移動タイミングに合わせて信号機をすべて青にするなどの特別措置は基本的に取られず、赤信号でも停車するなど道路交通法を遵守しながら走行する。但し、総理の身の安全を最優先とする観点から、危険が予知される場合には警護車が赤色の誘導棒を振り回して四囲の一般車両を適宜規制する。この対応でも危険を排除できない場合は、警察の緊急自動車に誘導されている車両は緊急自動車とみなす道路交通法施行令第13条第2項の規定に則り、先導警護車の緊急走行に従って総理専用車も緊急走行し、危険から逃れる。

歴史

第26代田中義一内閣、第27代浜口雄幸内閣時代は、第一次世界大戦青島の戦いで戦利品としたベンツ、第28代若槻礼次郎内閣時代は若槻が内務大臣時代に使用していた内務省パッカード、第29代犬養毅内閣時代は宮内省1928年11月6日御大典のパレード用に購入した1928年式クライスラー、第30代斎藤実内閣、第31代岡田啓介内閣、第32代広田弘毅内閣、第33代林銑十郎内閣、第34代近衛文麿内閣、第35代平沼騏一郎内閣、第36代阿部信行内閣時代は新車で購入した1931年式リンカーンであった。このリンカーンには途中から防弾ガラスとボディに装甲が施されかなりの重量過大となったことで阿部信行から「戦車に乗っているようだ」と不興を買うこととなった。阿部がこの車に乗ることを拒否したため一時的に南洋庁のパッカードを使用していたが、代替となる車を探そうにも当時新たな車を輸入する目途は無かった。その後、上海に駐留する津田中将の乗車との交換で1939年式ビュイックが総理専用車となり、第38代米内光政内閣までこの車が使用された[5]

第二次世界大戦の進行と共に燃料が不足し、市中の一般車が木炭自動車に改造されていた第40代東条英機内閣の頃になると、総理専用車もプロパンガス仕様に改造されることとなったが[6]、皮肉にもこの頃になると占領地域で接収された車が入手できる状況となっていた。東条の専用車はシンガポールで接収された1940年式クライスラーで、これと並行して陸軍省にあった1936年式ビュイックをオープントップに改造して使用することもあった[7]

戦後も総理専用車を始めとする政府公用車はアメリカ車の使用が続いた。しかし、政府の自動車産業育成政策により、国産車に切り替えられるようになった。第57代岸信介内閣の時、日産がライセンス生産していたオースチンA50ケンブリッジを導入した。1960年代初頭、第61代佐藤栄作内閣の時代からは日本車(トヨタ「クラウンエイト」や日産「プレジデント」など)が使用されるようになった。

1963年ケネディ大統領暗殺事件を機に総理専用車の安全性向上が考慮されるようになり、当時発売されて間もない「センチュリー」(VG20型)を開発したトヨタ自動車がこれを引き受けることになった。ボディに使用する特殊鋼は当時の富士製鐵(現・日本製鉄)、はめ殺し式の防弾ガラスは旭硝子(現・AGC)が開発したものであった[8]

佐藤栄作内閣の末期に、公用車のみでは不便との理由から佐藤自ら私費で総理専用車と全く同じ仕様の初代「センチュリー」(VG20型)を発注。首相退任直後の1972年10月に納車された。総理専用車と全く同じ仕様のため、防弾ガラスやフロントグリルに青色の識別灯などが装備された。同車は佐藤が死去するまで使用され、佐藤死去後の1975年11月に綜合警備保障へ譲渡。その後、1992年頃まで同社の警護車として使用され、ダライ・ラマ14世ヨハネ・パウロ2世 (ローマ教皇)の来日時の警護に用いられた。現在、同車は日本自動車博物館に寄贈展示されている[9]

1967年以来、初代および2代目の「センチュリー」が総理専用車として使用されてきたが、北海道洞爺湖サミットを控えた2008年6月(第91代福田康夫内閣)からは、低燃費かつCO2排出量が少ない「レクサスLS600hL」(UVF46前期型)を導入。2015年6月頃(第97代安倍晋三内閣)には「レクサスLS600hL」の新型(UVF46後期型)に更新。2020年4月(第98代安倍晋三内閣)、3代目の「センチュリー」(UWG60型)が新たに導入された(UVF46前期型およびUVF46後期型のLS600hLも予備車として引き続き使用)[2]

脚注

  1. ^ 東奔西走する「総理大臣の専用車」~6台の現役車が分刻みのスケジュールをサポート - 自動車情報誌「ベストカー」
  2. ^ a b c d “安倍首相の車が新型センチュリーに変更!総理大臣専用車の謎に迫る”. FNNプライムオンライン (フジテレビジョン). (2020年4月24日). https://www.fnn.jp/articles/-/35965 2020年4月24日閲覧。 
  3. ^ “早朝から深夜まで緊張の連続、アナログ取材を積み重ねる「総理番」 ルポ・あの日の首相(上)” . 47NEWS . (2022年1月10日) 2022年1月29日閲覧。
  4. ^ 警護車が増車される場合や地方での運用等の場合は、「ランドクルーザープラド」などのSUVや、トヨタ製以外の車種(日産フーガ」やホンダレジェンド」、スバルレガシィ」など)も使われる。
  5. ^ 柄澤/NHK p.121 - 123
  6. ^ 柄澤/NHK p.130
  7. ^ 柄澤/NHK p.139
  8. ^ 柄澤/NHK p.199 - 200
  9. ^ “防弾車センチュリー公開 佐藤栄作元首相が発注”. 中日新聞 (中日新聞社). (2020年6月8日). https://www.chunichi.co.jp/article/69450 2020年6月8日閲覧。 

参考文献

  • 『首相官邸・今昔物語』(大須賀瑞夫 著、朝日ソノラマ、1995年、ISBN 4257034092
  • 『バックミラーの証言 -20人の宰相を運んだ男』(柄澤好三郎/NHK取材班 著、日本放送出版協会、昭和57年6月1日、ISBN 4-14-008275-5

外部リンク