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== 概要 == |
== 概要 == |
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語源は[[古代ギリシア語]]のグリュプス({{el|γρυψ}})で、「曲がった嘴」の意味。古くから多くの[[物語]]に登場しており |
語源は[[古代ギリシア語]]のグリュプス({{el|γρυψ}})で、「曲がった嘴」の意味。古くから多くの[[物語]]に登場しており、伝説の生物としての歴史は古い。 |
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古くは[[ヘーロドトス]]の『歴史』やアイスキュロスの悲劇(前5世紀中葉)が、{{仮リンク|アリステアース|en|Aristeas}}(前7世紀)による中央アジア北部の地誌を残しており、これによれば黄金を集めるグリュプスと言う禽獣と、その黄金を略奪する単眼族の{{仮リンク|アリマスポイ|en|Arimaspi|label=アリマスポイ人}}との抗争があるとされる。 |
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ただこれら古い文献ではグリュプスは嘴を持つが「犬」だとも形容されていて、あるいは翼を持たなかった動物ではなかったか、との推察がある。しかし後、[[大プリニウス]](1世紀)において、グリフォンは有翼で長耳だと初めて明記された。ただし同時代の[[テュアナのアポロニオス]]によれば、グリフォンは真正の鳥翼は持たず、足指間の膜によって、ごく近距離の跳躍が可能なのだとする。 |
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またグリュプスは[[インド亜大陸|旧インド]]の北部にいるとクテシアスはしており、また、ヘーロドトスも知るインドの巨大蟻が黄金を集める伝承も、グリフォンの伝説に混合していると考察されている。 |
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[[アイリアノス]](3世紀没)の記述における脚色以降は、概して新たな材料の追加はなく、その後の西洋のグリフォン伝説は主に古典の取捨選択に過ぎないとされるが、グリフォンがその巣に[[メノウ]]や石を置くという伝説は後発的なものである。 |
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[[イラン神話]]では、鷲獅子を意味する Shirdal という名で登場し、[[紀元前3千年紀]]初期頃の[[スーサ]]製シリンダーの封印にも見られる<ref>[http://www.granger.com/results.asp?image=0018458&screenwidth=977 Image of Persian griffin from The Granger Collection]. www.granger.com. Retrieved on 26 May 2014.</ref>。その後も、古代イラン芸術、古代ギリシア芸術や、その後の中世の紋章など、多くの芸術でモチーフとされている。 |
[[イラン神話]]では、鷲獅子を意味する Shirdal という名で登場し、[[紀元前3千年紀]]初期頃の[[スーサ]]製シリンダーの封印にも見られる<ref>[http://www.granger.com/results.asp?image=0018458&screenwidth=977 Image of Persian griffin from The Granger Collection]. www.granger.com. Retrieved on 26 May 2014.</ref>。その後も、古代イラン芸術、古代ギリシア芸術や、その後の中世の紋章など、多くの芸術でモチーフとされている。 |
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まずは、[[ゼウス]]や[[アポローン]]等の天上の神々の車を引くことであるが、ギリシア神話の女神[[ネメシス]]の車を引くグリフォンは、ほかのグリフォンと違い身体も翼も漆黒である。馬を目の敵にしており、馬を喰うと言われるが、これは同じ戦車を引く役目を持つ馬をライバル視しているためである<ref>[[山北篤]]『幻想生物 西洋編』[[新紀元社]]133頁。</ref>。そこから不可能なことを表すのに「グリフォンと馬を交配させるようなもの」という言葉が生まれたが、それをヒントに生み出されたのが前述のヒッポグリフである(このため、グリフォンが殺すのは牡馬だけであり、牝馬は殺さず犯して仔を産ませるとする伝承もある)<ref>『幻想生物 西洋編』149頁。</ref>。また、神話では[[オーケアノス]]の乗り物とされる<ref>松原國師『西洋古典学事典』京都大学学術出版会、2010年、524頁。</ref>。 |
まずは、[[ゼウス]]や[[アポローン]]等の天上の神々の車を引くことであるが、ギリシア神話の女神[[ネメシス]]の車を引くグリフォンは、ほかのグリフォンと違い身体も翼も漆黒である。馬を目の敵にしており、馬を喰うと言われるが、これは同じ戦車を引く役目を持つ馬をライバル視しているためである<ref>[[山北篤]]『幻想生物 西洋編』[[新紀元社]]133頁。</ref>。そこから不可能なことを表すのに「グリフォンと馬を交配させるようなもの」という言葉が生まれたが、それをヒントに生み出されたのが前述のヒッポグリフである(このため、グリフォンが殺すのは牡馬だけであり、牝馬は殺さず犯して仔を産ませるとする伝承もある)<ref>『幻想生物 西洋編』149頁。</ref>。また、神話では[[オーケアノス]]の乗り物とされる<ref>松原國師『西洋古典学事典』京都大学学術出版会、2010年、524頁。</ref>。 |
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さらに、黄金を守る、あるいは、[[ディオニューソス]]の[[クラテール]](酒[[甕]])を守る役目もあるとされる<ref>健部伸明と怪兵隊『幻想世界の住人たち』新紀元社、235頁。</ref>。自身が守る黄金を求める人間を引き裂くといわれている<ref>『幻想生物 西洋編』134頁。</ref>。その地は北方の[[ヒュペルボレイオス|ヒュペルボレイオイ人]]の国と |
さらに、黄金を守る、あるいは、[[ディオニューソス]]の[[クラテール]](酒[[甕]])を守る役目もあるとされる<ref>健部伸明と怪兵隊『幻想世界の住人たち』新紀元社、235頁。</ref>。自身が守る黄金を求める人間を引き裂くといわれている<ref>『幻想生物 西洋編』134頁。</ref>。その地は北方の[[ヒュペルボレイオス|ヒュペルボレイオイ人]]の国と{{仮リンク|アリマスポイ|en|Arimaspi|label=アリマスポイ人}}の地の国にある{{仮リンク|リーパイオス山脈|en|Riphean Mountains}}とされるが、[[エチオピア]]、[[インド]]の砂漠(現在では[[パキスタン]]近辺か)などの異説もある。 |
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== 古代ギリシア・ローマの伝承 == |
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前述のように[[ヘーロドトス]]は『歴史』(前5世紀)の中で翼のある怪物としてグリフォンに触れ{{Refn|name="herodotus"}}、[[ガイウス・プリニウス・セクンドゥス|プリニウス]]は『[[博物誌]]』(紀元1世紀)の中ですでに伝説の生物として語っている{{Refn|プリニウス『博物誌』7巻2;10巻70<ref name="pliny-tr-bostock07.2&10.70"/>。}}。 |
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=== ヘーロドトス等 === |
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ヘーロドトスは、[[スキタイ]]人より以北の[[アルギッパイオイ]]([[ウラル山脈]]の居住部族と同定)の東に住む[[イッセドネス人]]を情報源とするが、必ずしも信頼していない{{sfnp|織田|1956|p=691}}。その(イッセドネス人)によれば彼らの奥地には{{仮リンク|アリマスポイ|en|Arimaspi}}という隻眼の部族が、そしてさらに奥地(北の果て)には黄金を守る怪鳥グリフォン(グリュプス)が住むとされていた{{Refn|name="herodotus"|ヘロドトス『歴史』第4巻第13章<ref name="herodotus-tr-aoki"/>{{sfnp|織田|1956|p=692}}<ref name="nagasawa1983"/><ref name="mikami&mori&sakuma1974"/>}}。またアリマスポイという部族は、黄金を求めてグリュプスのところへ奪いに行くのだとも伝わっていた{{Refn|ヘロドトス『歴史』第3巻第116章<ref name="mikami&mori&sakuma1974"/>}}。 |
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ヘーロドトス『歴史』の当該箇所(中央アジア北部一帯)の情報源となったのは、前7世紀に地域を訪れた[[マルマラ島|プロコンネーソス]]の{{仮リンク|アリステアース|en|Aristeas}}という人物の詩(逸失)である<ref name="herodotus-tr-aoki"/><ref name="mikami&mori&sakuma1974"/><ref name="nagasawa1983"/>{{Refn|group="注"|ヘーロドトスは、上述したように、伝えられた北方の地理(北の果ての海等{{sfnp|織田|1956|p=692}})にしてもすべてを鵜呑みにした訳ではなく、アリマスポイが全て単眼族だとは信じていなかった<ref>{{harvp|Mayor|Heaney|1993|loc=n9}}: "Heordotus doubted that Arimaspeans were monocular"</ref>。 |
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劇作家[[アイスキュロス]]もグリフォンについて作中に記しているが(『[[縛られたプロメテウス]]』、 |
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前460年頃。ヘーロドトスより若干以前)、やはりアリステアースを情報源としたと考えられている{{sfnp|Mayor|Heaney|1993|p=42}}{{sfnp|Phillips|1955|pp=161–163}}。アイスキュロスもやはりアリマスポイという部族がグリフィンの集めた黄金を略奪するとしているが、アリマスポイの住む地域に「黄金ころがる」[[プルートン]]の川が流れるとしており、黄金の少なくとも一部は、そもそもその川の産出なのであろうと考察される。騎馬民族であるアリマスポイは黄金を掠めて馬で逃げ、それをグリフォンが追う展開となる{{Refn|Aeschylus, ''Prometheus Bound'' vv. 805–806, Watson編註<ref name="aeschylus-ed-watson1870"/>。}}。 |
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アイスキュロスは、グリフォンを鋭い嘴(くちばし)を持つが、「吠えないゼウスの犬」のようだと形容する |
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<ref>{{harvp|Phillips|1955|p=163}}: "unbarking"</ref>{{Refn|group="注"|[[ハルピュイア]](鳥人のハーピー)のことを「ゼウスの犬」とも呼ぶので([[ロドスのアポローニオス]]、II.289)それと区別したのだろうという考察がある<ref name="aeschylus-ed-watson1870"/>。}}。また「犬」に譬えられる限りは、翼で飛べずに走る禽獣の位置づけであろうという推察もされている<ref>{{harvp|Mayor|Heaney|1993|p=42}}; {{harvp|Mayor|2011|p=23}}</ref>{{Refn|group="注"|理屈としては、アイスキュロスが同作品の別箇所で鷲のことを「有翼のゼウスの犬」(1022–1025行)と称しているので、これと対照してグリフォンは無翼であろう、と説く(Mayor)。しかしながらロドスのアポローニオスの場合は、有翼のハーピーだろうと単に「ゼウスの犬」と呼んでいるようである(前註で既述)。}}。}}。 |
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=== インド産のグリュフォンと採掘蟻 === |
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一方、[[クテシアス]]はグリフォンをインドに棲息するとしており{{sfnp|織田|1956|p=692}}、嘴を持った、四足の鳥類だとする{{sfnp|Mayor|Heaney|1993|p=42}}。 |
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ヘーロドトスは、インドには[[カシミール地方]]に黄金を集める蟻種がいると記しているが、これは黄金を集めるグリフォン伝説の亜流か転訛版だとする学説がみられる<ref>{{harvp|Mayor|Heaney|1993|loc=n9}}: "doublets or garbled versions". {{harvp|Bolton|1962|p=81}}; {{harvp|Costello|1979|p=75}}による。</ref>。後のプリニウスによるグリュフォン伝もインドの採掘蟻の伝承の影響がみられ{{sfnp|Phillips|1955|p=163}}、さらに後の[[アイリアノス]]もグリュフォンにインドの採掘蟻の属性を習合させたと見られている{{sfnp|Mayor|Heaney|1993|loc=n9}}。 |
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=== プリニウス以降 === |
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プリニウス(『博物誌』、1世紀)は、グリフォンが有翼<ref>Plin. 7.2: "{{lang|la|grypis, ferarum volucri genere}}(グリュプス、有翼な野獣の一種)"</ref>かつ長耳を持つと<ref>Plin. 10.70: "{{lang|la|gryp[h]as aurita aduncitate rostri fabulosos reor}}(グリュプス/グリュフス、耳持ち[長耳持ち・大耳持ち]、曲った嘴とまた伝聞される)"</ref>、文献史上初の明記をしている<ref>{{harvp|Mayor|Heaney|1993|p=42}}; {{harvp|Mayor|2011|pp=31–32}}(Pliny the Elder 10.70.136; 7.2.10 に拠るとする)</ref>。また、[[ペガサス]]はスキタイ産、グリュプスは{{仮リンク|アイティオピア|en|Aethiopia}}(アフリカ)産としている<ref>Plin. 10.70</ref>。 |
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ほぼ同時代の[[テュアナのアポロニオス]]もグリフォンについて語ったとその伝記に伝えられているが{{efn2|[[ピロストラトス]]著『[[テュアナのアポロニオス伝]]』}}、それによればグリュフォンは獅子ほどの大きさで、鳥のようなきちんとした翼は持たず、足に"赤色の皮膜"がついていて、これが回転してごく短い飛翔を可能にするのだという<ref>Philostr. VA 3.48: "{{lang|grc|μὴ γὰρ ἐπτιλῶσθαι σφᾶς, ὡς ὄρνισι πάτριον, ἀλλ᾽ ὑμέσι τοὺς ταρσοὺς ὑφάνθαι πυρσοῖς, ὡς εἶναι κυκλώσαντας }}(雑役:羽所有は、まともな鳥の様であらず、炎色の皮膜がついており、これが回転して[短距離の飛翔を可能とする])"<!--http://data.perseus.org/citations/urn:cts:greekLit:tlg0638.tlg001.perseus-grc1:3.48--></ref><ref name="philostratus-i.ii.xlvii">{{cite book|ref={{SfnRef|Philostratus|Conybeare tr.|1912}} |others=translated by [[F. C. Conybeare]] |title=The Life of Apollonius of Tyana |publisher=W. Heinemann |date=1912 |url=https://www.google.com/books/edition/The_Life_of_Apollonius_of_Tyana/ci4jAQAAMAAJ?gbpv=1&bsq=griffins&pg=PA333 |at=volume I, book III. Chapter XLVIII, p. 333}}<br /> |
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{{blockquote|As to the gold which the griffins dig up, there are rocks which are spotted with drops of gold as with sparks, which this creature can quarry because of the strength of its beak. “For these animals do exist in India” he said, “and are held in veneration as being sacred to the Sun ; and the Indian artists, when they represent the Sun, yoke four of them abreast to draw the images ; and in size and strength they resemble lions, but having this advantage over them that they have wings, they will attack them, and they get the better of elephants and of dragons. But they have no great power of flying, not more than have birds of short flight; for they are not winged as is proper with birds, but the palms of their feet are webbed with red membranes, such that they are able to revolve them, and make a flight and fight in the air; and the tiger alone is beyond their powers of attack, because in swiftness it rivals the winds".}}</ref>{{sfnp|Mayor|Heaney|1993|p=42}}{{Refn|group="注"|テュアナのアポロニオスは、グリフォンを黄金採掘の蟻と比較するが、蟻をインド産ではなくアイティオピア産とする<ref>{{harvp|Philostratus|Conybeare tr.|1912|loc={{URL|1=https://www.google.com/books/edition/The_Life_of_Apollonius_of_Tyana/vntFAQAAMAAJ?&gbpv=1&bsq=griffins&pg=PA5|2=vol. II, book VI.I., p. 5}}<br/>{{blockquote|And the griffins of the Indians and the ants of the Ethiopians, though they are dissimilar in form, yet, from what we hear, play similar parts; for in each country they are, according to the tales of poets, the guardians of gold, and devoted to the gold reefs of the two countries.}}}}</ref>。}}。 |
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{{仮リンク|ポンポニウス・メラ|en|Pomponius Mela}} (紀元43年頃)も地理誌の第2巻第6章において、いわゆる{{仮リンク|リパエイ山脈|en|Riphean Mountains}}に接する地方の事項としてその地方に産する黄金を欲するグルフォンについて述べている{{Refn|{{blockquote|In Europe, constantly falling snow makes those places contiguous with the [[:en:Riphean Mountains|Riphaean Mountains]].. so impassable that, in addition, they prevent those who deliberately travel here from seeing anything. After that comes a region of very rich soil but quite uninhabitable because griffins, a savage and tenacious breed of wild beasts, love.. the gold that is mined from deep within the earth there, and because they guard it with an amazing hostility to those who set foot there.<ref name="Mela-tr-romer 1998"/>}}}}。 |
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アイリアノス(前出、クラウディオス・アイリアノス、紀元235没)は、幾つかの脚色を加えているが、例えばグリフォンは風評によれば"背に黒い羽根を負い、胸は赤く、翼は白い<!--black plumage on its back with a red chest and white wings-->"としている{{Refn|name="aelian"|Aelian ''De natura animalium''IV , 27:"Gryphem, Indicum animal, audio similiter quadrupedem, ut leonem,.."<!-- esse; robustissimis item exsistere unguibus, leonum similibus; tum dorsum ejus pennis indui nigris, anteriorum corporis partem rubris, alas vero candidis. Ctesias eus ait [cervicis pennas coeruleas et floridas habere], aquilino ore esse et capite cujusmodi pictores fingunt; oculis autem igneis, uidosque in montibus facere, utque aetatis processu grandes non capi, ita eorum pullos comprehendi posse. Bactri autem Indis finitimi eos illic auri custodes esse, aurumque effodere ajunt, et simul eo ipso nidos construere; quod vero auri in terram deciderit, Indos homines auferre. Contra Indi eos auri (quod vero quidem simile videtur) custodes esse negant; neque enim gryphes auri egere, sed cum ad colligendum aurum homines accesserunt, hos de pullis suis majorem in modum timentes, pro eis pugnare; atque cum aliis etiam animalibus concertare, eaque facillime vincere; contra autem leones et elephantos non stare. Indigenae, quod ab hujusmodi animalium robore timeant, non interdiu, sed ad collectionem auri noctu proficiscuntur, quod se tum melius latere arbitrentur. Locus ubi gryphes versantur, ac ubi aurum effoditur, desertissimus est. Quocirca aurum venari studentes mille aut bis mille armati eo perveniunt, simulque [ligones et] saccos adferunt, silentem lunam observantes. Quod si gryphes fallant, duplicem commoditatem adsequuntur; quod et eorum vita ab illorum atrocitate servatur, et simul aurum domum avehunt; [ubi auro purgato ab iis, qui hanc artem callent, ingentes sibi pro periculis opes comparant]: sin in furto deprehendantur, perierunt. Domum autem non nisi trienni aut quadrienni intervallo, ut audio, revertuntur.--><ref name="aelian-ed-jacobs1832"/>。英訳の引用は{{harvp|Mayor|2011|p=33}}にあり、訳出の表現は多少異なるが{{harvp|Mayor|Heaney|1993|pp=44–45}}にも抜粋的に英訳されている。}}。このアイリアノスを最後に、真新しい情報が加わることはほぼ無く、その後の著書(中世ヨーロッパのものも)は、アイリアノスまでの古典情報を取捨選択して編んだにすぎないとされる。ただ例外的につけたされた後世の伝承は、グリフォンとその「メノウの卵」に関する事案だという(後述)<ref>{{harvp|Mayor|Heaney|1993|loc=n14}}: "Aelian is the last literary text dealing with the griffin considered here; after his account,.. no new information about the ''gryps'' was added, except for 'agate eggs'"</ref>。 |
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== 中世ヨーロッパの伝承 == |
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グリフォンの巣は黄金で出来ており、卵の代わりに[[瑪瑙]](メノウ)を産むとも考えられた{{Refn|name="bulfinch"|[[トマス・ブルフィンチ]]『ギリシア・ローマ神話 付 インド・北欧神話』[[岩波書店]]、1991年、177頁。参照:英語版原文<ref name="bulfinch-eng"/>。}}。瑪瑙を巣に置くという記述は、[[アルベルトゥス・マグヌス]](1280年没)の『動物について』第23巻"'''グリフェ'''"(複数形:Grifes)の項に見られ、某著者によれば |
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"この鳥は{{仮リンク|鷲石|en|aetites}}({{lang|la|echytem}})あるいはメノウ({{lang|la|gagatem}})を卵と一緒に置き<!--this bird places an eagle-stone (''echytem'') or agate (''gagatem'') among its eggs-->"、温度の調整をして生殖力を伸ばしているのだという<ref name="albertus-ed-scanlan"/>{{sfnp|Nigg|1999|p=144}}。 |
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=== キリスト教義 === |
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[[神学者]]の[[イシドールス|セビーリャのイシドールス]](636年没)は、グリフォンについて{{仮リンク|語源 (著書)|en|Etymologiae|label=『語源』}}において |
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{{blockquote| |
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"'''グリュフェ'''(複数形:Gryphes)どもは、有翼の四足動物ゆえにそう呼ばれている。この種の野獣はヒュペルボレイオスの山脈に見られる。胴体の全ては獅子で、翼と頭は鷲のようであり、馬にとって獰猛な敵である。さらには人間もずたずたに引き裂く<!--The Gryphes are so called because they are winged quadrupeds. This kind of wild beast is found in the Hyperborean Mountains. In every part of their body they are lions, and in wings and heads are like eagles, and they are fierce enemies of horses. Moreover they tear men to pieces-->"<ref name="brehaut" />{{sfnp|Nigg|1999|p=121}}}} |
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と述べているが、キリスト教の寓意的解釈はしておらず、博物学的に「狩猟動物」の一種に分類しているのみである<ref>{{harvp|Nigg|1999|p=121}}: "Isidore's entries contain traditional folkloric material, but without Christian allegory".</ref>。 |
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[[ダンテ・アリギエーリ|ダンテ]]の『[[神曲]]』(1321年頃成立)ではグリフォンが凱旋車を曳く場面があるが(「煉獄篇」第29曲)、その注釈によれば、グリフォンは飛ぶ鳥と歩む獣の合成獣であるため、グリフォンは天性(神性)と人間性を併せ持つキリストの具象であると多くのダンテ解説者からみなされている<ref name="longfellow"/>{{sfnp|Millington|1858|p=277}}。若干の異論として、グリフォンは実は「教会」または[[教皇|ローマ教皇]]のシンボルであると{{仮リンク|アドルフ・ナポレオン・ディドロン|en|Adolphe Napoleon Didron|label=ディドロン}}は主張している{{Refn|ボルヘス『幻獣辞典』{{sfnp|Borges|1966|p=84}}{{sfnp|Borges|1969|p=116}}。}}<ref name="longfellow"/>。 |
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{{仮リンク|ランツベルクのヘルラート|en|Herrad of Landsberg}}の写本({{仮リンク|楽しみの庭|en|Hortus deliciarum|label=『楽しみの庭』}}、1185年頃成立)をみれば、二色の鳥類グリフォンが「教会」の象徴なのは明らかである、とディドロンは述べており、自説の根拠としている<ref name="longfellow"/>。 |
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=== 爪、卵、羽 === |
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中世ヨーロッパでは、グリフォンの爪、卵、羽と称する物が貴重品として愛でられた例が数々あるが、実際には異国の動物などより得られた贋物であった<ref name="bedingfeld"/>{{sfnp|Mayor|2022|pp=43–48}}。グリフォンの卵とされるものは、ダチョウの卵や、稀な例では恐竜の卵の化石であった{{sfnp|Mayor|2022|pp=43–44}}。羽は、[[ラフィアヤシ]]の繊維でこしらえた工芸品を着色したものも使われた{{sfnp|Mayor|2022|p=44}}。爪は飲むための杯に加工された<ref name="bedingfeld"/>{{sfnp|Mayor|2022|p=47}}(また、卵も杯として使われたと紋章学の著作に見える<ref name="bedingfeld"/>{{sfnp|Millington|1858|pp=278–279}})。 |
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グリフォンの爪の例は幾つかあり、極大であったともされる{{Refn|ジェラルド・リー Gerald Leigh は紋章学(1563年)で、自分の持つ爪からグリフォンは"ライオン二頭大 bigge as two lyons"と推定した{{sfnp|Mayor|2022|p=44}}。また[[メアリー・ウォートリー・モンタギュー]](1716年)は、ドナウ川紀行において、その"巨大な爪 prodigious claw"を見た、と書いている{{sfnp|Mayor|2022|p=44}}。}}。 {{仮リンク|聖カスバート|en|Cuthbert}}が爪や卵を得たという逸話があり、1383年付の、その聖遺物匣の内容一覧(インベントリー)を見るとグリフォンの爪2本、羽2本と記載される{{sfnp|Mayor|2022|pp=42–43, 47–48}}。現存する、長さ{{convert|2|ft|cm}}程の「爪」は、[[アイベックス]]の角であると鑑定されている{{efn2|元は角に浮いた節のような凹凸があるはずだが、平らかに削り磨かれている。}}{{sfnp|Mayor|2022|p=47}}。 |
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伝説では、グリフォンの爪は杯に加工されてカスバートへの[[献辞]]がなされたという{{sfnp|Millington|1858|p=278}} 。上述したように、実際の話として、グリフォンの爪は多くの場合ゴブレット(酒杯、[[角杯]])に加工された<ref name="bedingfeld"/>{{sfnp|Mayor|2022|p=47}}<!--Bedingfieldが、角杯は[[レイヨウ]]の角としているが、Mayorの詳しい説明を見れば、カスバートの爪がレイヨウ系(アイベックス)であり、角杯であればやはり牛角。-->。その一例が、伝・[[カール大帝|シャルルマーニュ]]所有のグリフォンの爪で、[[サン=ドニ大聖堂]]所蔵だったが、[[フランス革命|革命]]後に一旦失われた後、現在は[[フランス国立図書館]]に保管されている。実際は牛の一種の角とみられる。[[猛禽類|猟禽]]の爪足をかたどった金箔の銅製のスタンドの上にマウントされている{{sfnp|Mayor|2022|pp=44–45}}{{Refn|group="注"|[[ハールーン・アッ=ラシード]]はシャルルマーニュに[[アブル=アッバース]]という名の生きた像や、"彫刻された象牙の角"を送ったとされているので、グリフォンの爪(の「角杯」)ではないかとメイヤーは示唆しているが{{sfnp|Mayor|2022|pp=44–45}} 、おそらくこれは角笛の{{仮リンク|象牙の角笛|en|Olifant (instrument)}}であり、伝・シャルルマーニュのものはアーヘン市に展示されている。}}。また、シャルル大帝の旧都エクス・ラ・シャペル(現今のドイツ・[[アーヘン]]市)に在する{{仮リンク|コルネルミュンスター修道院|en|Kornelimünster Abbey}} には、伝・[[コルネリウス (ローマ教皇)|コルネリウス]]所蔵のグリフォンの爪が存在するが、アジア水牛の角製とみられる{{sfnp|Mayor|2022|p=46}}。 |
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=== 図像学 === |
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12世紀頃までにはグリフォンの外見についての認識が定まりつつあり、"体幹の部分はすべて獅子似、翼と面は鷲似<!--All its bodily members are like a lion's, but its wings and mask are like an eagle's.-->"が定着した<ref name="white"/>。 |
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前述のアルベルトゥス(13世紀)によれば、前足には鷲状の長爪、後ろ足に獅子状の重い爪をもつ。生息地の住民は短いほうの爪を飲む杯に利用するとしている{{sfnp|Nigg|1999|p=144}}<ref name="albertus-ed-scanlan"/>。 |
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=== 地誌 === |
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[[14世紀]]には、架空の人物である[[ジョン・マンデヴィル]]によって書かれたとされる『旅行記』(東方旅行記、東方諸国旅行記)によって詳細な描写がなされた(第85章)。 |
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== 近世 == |
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[[File:Jonston1660-quadruped-TabXLIX-gryphus.jpg|thumb|240px|グリフォン{{right|{{small|—ヨンストン『鳥獣虫魚図譜』(オランダ訳、1660年)}}}}]] |
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[[ヨハネス・ヨンストン]]の『鳥獣虫魚図譜』(原書ラテン語、1650年。オランダ訳、1660年)にグリフォンの図({{lang|el-short|gryps}}, {{lang|la-short|gryphus}})が掲載される<ref name="jonston1650-latin"/><ref name="jonston1660-nl"/>。オランダ訳本では、第一部の「四足動物自然誌」{{Refn|ラテン名 Grÿphus ギリシア名 Grÿps のキャプション入り。第一部「四足動物自然誌」の図表XLIX<ref name="jonston1660-nl"/>。}}と第三部の「鳥類自然誌」{{Refn|ラテン名 Grÿphus ドイツ名? Greiff のキャプション入り。第三部「鳥類自然誌」の図表62<ref name="jonston1660-nl"/>。}}に、つごう2回、グリフォンの銅版画が掲載されており<ref name="isozaki-p68"/>、「鳥」の部のほうにオランダ語で"Griffoen[en]"についての説明文が載る{{Refn|name="jonston1660-nl-griffoen"|第三部「鳥類自然誌」のpp. 171–172<ref name="jonston1660-nl"/>。}}。 |
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同書によればグリフォンは"四足で、鷲({{lang-nl|Arent>{{linktext|arend}}}})のような頭部、翼、くちばし、足をもち、後部はライオンのよう"とあり{{Refn|name="jonston1660-nl-griffoen"}}、すなわち前足は[[猛禽類]]のようだとしている(右図参照){{efn2|ただし、これと矛盾するピロストラトスの説明(指の間に被膜があって、ごく限られた飛翔力がある)も掲載する。}}。また、グリフォンは"その掘り出した黄金でつくった巣に二個の卵を産むが、鷲の卵より硬く、厚く、乾いている"、とする{{Refn|name="jonston1660-nl-griffoen"|}}<ref name="seager"/>。 |
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この蘭訳本は、8代将軍[[徳川吉宗|吉宗]]に献上されており{{sfnp|磯崎|1995|pp=56–57}}、内容を[[野呂元丈]]が抄訳しているが{{Refn|group="注"|1000種以上の動物のなかから81種にしぼり、和名とラテン名・蘭名を併記、略説をのべている{{sfnp|磯崎|1995|pp=61}}。}}{{sfnp|磯崎|1995|pp=61}}、グリフォンについても述べられている{{sfnp|磯崎康彦|1995|p=81}}<ref name="noro"/>。すなわちオランダ人の説明に拠れば{{Refn|group="注"|野呂元丈は、訳出といってもオランダの医師(ムスクルス、 Philip Pieter Musculus)に質問し、通詞を通して情報をまとめている{{sfnp|磯崎|1995|pp=56, 58}}<ref>本書の奥付に「ムスクルス」より得たと記載([https://www.ndl.go.jp/nichiran/data/R/046/046-003r.html 書誌詳細]の画像参照)。</ref><ref name="goodman2013"/>。}}、グリフォンは「ゲレイヒプホウゴル」(Grijp-Vogel)とも称し、これは「つかむ」と「鳥」の意味の複合語であるとする<ref name="isozaki-p68">{{harvp|磯崎|1995|p=68}}: "「ケレイヒ」(フレイペン・grijpen)を「捕える、つかむ」、また「ホウゴル」(Vogel)を鳥と解釈している。原本には、ライオンと鷲ということで、四足動物と鳥類の二か所にグリフィン銅版画が記載されている。元丈は、本文でなく銅版画挿絵から順次、動物を選択していったから、最初に目にした四足動物自然誌からグリフィンをとり上げたと推定されよう。"</ref><ref name="noro"/>。 |
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== 後世の民間伝承 == |
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グリフォンの羽は盲目を治癒するとされるが、その原典は、イタリアの民話に見られ<ref name="hand2021"/>、これは「[[歌う骨]]」の話群([[アールネ・トンプソンのタイプ・インデックス|AT]] 780型)に分類される話例である<ref name="lewis"/>。スコットランドのバラッド{{仮リンク|二人の姉妹|en|The Twa Sisters|label=「二人の姉妹」}}([[チャイルド・バラッド]]の10番)の類話としても研究されている<ref name="brewster"/>。ただし、このイタリア民話には異本が複数あり、盲目を治癒するのは必ずしもグリフォンの羽根ではない(例:[[クジャク]]の羽根<ref name="zipes&russo2009"/>)。 |
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== 紋章学 == |
== 紋章学 == |
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</gallery> |
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== 現代 == |
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== 後世における展開 == |
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現代では[[エンターテインメント]]やフィクション作品の中に見られるようになり、『[[ナルニア国物語]]』ではナルニアの兵士として登場し、『[[ハリー・ポッターシリーズ]]』では、主人公の所属する寮である[[ハリー・ポッターシリーズの地理#グリフィンドール|グリフィンドール]]などの名前及び紋章に使用されている<ref>J・K・ローリング『幻の動物とその生息地』静山社、2001年、他</ref>。 |
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前述のように[[ヘーロドトス]]は『歴史』の中で翼のある怪物としてグリフォンに触れ、[[ガイウス・プリニウス・セクンドゥス|プリニウス]]は『[[博物誌]]』(10巻70)の中ですでに伝説の生物として語っている。[[14世紀]]には、架空の人物である[[ジョン・マンデヴィル]]によって書かれたとされる『旅行記』(東方旅行記、東方諸国旅行記)によって詳細な描写がなされた(第85章)。またヨーロッパ中世においては、動物物語集等では悪魔として表されたものの、多くはキリストの象徴とされ、[[神学者]]の[[イシドールス|セビーリャのイシドールス]]も『語源』([[:en:Etymologiae|Etymologiae]])でその立場をとる。[[ダンテ・アリギエーリ|ダンテ]]が「キリストの人性」をグリフォンの部位の色に表したと、ディドロン([[:en:Adolphe Napoleon Didron|Didron]])によって解釈されるのは『[[神曲]]』「浄化篇」第29曲での、凱旋車を曳く場面である<ref>ボルヘス『幻獣辞典』。</ref>。 |
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== 脚注 == |
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中世の伝承において、Stephen Friar's New Dictionary of Heraldryによれば、爪は医療効果を持ち、羽根も失明を治すと信じられていた<ref>Friar, Stephen(1987). A New Dictionary of Heraldry. London: Alphabooks/A & C Black. p. 173. ISBN 0-906670-44-6</ref>。中世ヨーロッパの宮廷では、グリフォンの爪(実際は[[レイヨウ]]の角)やグリフォンの卵(実際はダチョウの卵)で作られたゴブレットが珍重された<ref name="bedingfeld">{{cite book |
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{{脚注ヘルプ}} |
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|last=Bedingfeld |
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=== 注釈 === |
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|first=Henry |
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{{notelist2}} |
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|authorlink=Henry Bedingfeld |
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|author2=Gwynn-Jones, Peter |authorlink2=Peter Gwynn-Jones |
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|title=Heraldry |
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|year=1993 |
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|pages=80–81 |
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|location=Wigston |
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|publisher=Magna Books |
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|isbn=1-85422-433-6}}</ref>。また、その巣は黄金で出来ており卵の代わりに[[瑪瑙]]を産むとも考えられた<ref>[[トマス・ブルフィンチ]]『ギリシア・ローマ神話 付 インド・北欧神話』[[岩波書店]]、1991年、177頁。</ref>。 |
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=== 出典 === |
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現代では[[エンターテインメント]]やフィクション作品の中に見られるようになり、『[[ナルニア国物語]]』ではナルニアの兵士として登場し、『[[ハリー・ポッターシリーズ]]』では、主人公の所属する寮である[[ハリー・ポッターシリーズの地理#グリフィンドール|グリフィンドール]]などの名前及び紋章に使用されている<ref>J・K・ローリング『幻の動物とその生息地』静山社、2001年、他</ref>。 |
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{{Reflist|2|refs= |
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<ref name="aelian-ed-jacobs1832">{{citation|author=Claudius Aelianus |author-link=Claudius Aelianus |editor-last1=Jacobs |editor-first=Friedrich |editor-link=<!--Friedrich Jacobs-->|editor-mask=Scanlan, James J. (tr.) |title=Aeliani de natura animalium libri xvii |volume=1 |location= |publisher=Impensis Friderici Frommanni |year=1832 |url=https://www.google.com/books/edition/Aeliani_de_natura_animalium/8vwOAQAAIAAJ?&gbpv=1&bsq=Gryphem&pg=RA1-PA53 |pages=53–54}}</ref> |
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<ref name="aeschylus-ed-watson1870">{{cite book|author=Aeschylus |author-link=:en:Aeschylus |editor-last=Watson |editor-first=John Selby |editor-link=:en:John Selby Watson |title=Aischulou Promētheus desmōtēs. The Prometheus vinctus, from the text of Dindorf |location= |publisher= |year=1870 |url=https://www.google.com/books/edition/Aischulou_Prom%C4%93theus_desm%C5%8Dt%C4%93s_The_Pro/VX4CAAAAQAAJ?gbpv=1&pg=RA1-PA115 |at=vv. 802–806, and endnotes, pp. 115–116 }}</ref> |
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<ref name="albertus-ed-scanlan">{{citation|author=Albertus Magnus |author-link=:en:Albertus Magnus |editor-last1=Scanlan |editor-first=James J. |editor-link=<!--James J. Scanlan-->|editor-mask=Scanlan, James J. (tr.) |title=Man and the Beasts (De Animalibus, Books 22-26) |location= |publisher=Medieval & Renaissance Texts & Studies |year=1987|url=https://books.google.com/books?id=qOgmAAAAMAAJ&q=grifes |page=290 |isbn=<!--0866980326, -->9780866980326}}</ref> |
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<ref name="bedingfeld">{{cite book|last1=Bedingfeld |first1=Henry |author1-link=:en:Henry Bedingfeld |last2=Gwynn-Jones |first2=Peter |authorlink2=:en:Peter Gwynn-Jones |title=Heraldry |location=Wigston |publisher=Magna Books |year=1993 |url=https://www.google.com/books/edition/Heraldry/xiiqxdVU5T0C?&gbpv=1&bsq=goblets |pages=80–81 |isbn=1-85422-433-6 |quotation=Goblets in the shape of gryphon's claws or eggs were highly prized in the courts of medieval Europe, and were usually made from antelope horns and ostrich eggs.}}</ref> |
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<ref name="brehaut">{{citation|author=Isidore of Seville |author-link=:en:Isidore of Seville |editor-last1=Zipes|editor-first=Jack |editor-link=<!--Ernest Brehaut-->|editor-mask=Brehaut, Ernest (tr.) |title=An Encyclopedist of the Dark Ages: Isidore of Seville |location=New York |publisher=Columbia University Press |year=1912 |url=https://books.google.com/books?id=QBcOAQAAIAAJ&pg=PA225 |page=225 |series=Columbia Studies in the Social Sciences, 48}}. {{URL|1=http://www.eaudrey.com/myth/griffin.htm|2="Griffin"}}@eaudrey.com</ref> |
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<ref name="brewster">{{cite book|last=Brewster |first=Paul G. |author-link=<!--Paul G. Brewster--> |title=The Two Sisters |location=Helsinki |publisher=Academia Scientiarum Fennica |year=1953 |url=https://www.google.com/books/edition/FF_Communications/ATRLAAAAYAAJ?gbpv=1&bsq=griffins |page=55 |series=FF Communications, 147}}</ref> |
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<ref name="bulfinch-eng">{{cite book|last=Bulfinch |first=Thomas |author-link=:en:Thomas Bulfinch chapter=The Griffin, or Gryphon |title=The Age of Fable; Or, Stories of Gods and Heroes |location=Boston |publisher=Sanborn, Carter & Bazin |year=1855 |chapter-url=https://books.google.com/books?id=ERhdAAAAcAAJ&pg=PA178 |pages=178–179}}</ref> |
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<ref name="goodman2013">{{cite book|last=Goodman |first=Grant Kohn |author-link=<!--Grant Kohn Goodman--> |title=Japan: The Dutch Experience |location= |publisher=Bloomsbury Publishing |year=2013 |url=https://www.google.com/books/edition/Japan_The_Dutch_Experience/AVIQAgAAQBAJ?gbpv=1&bsq=Noro+Musculus&pg=PA72 |pages=72–73 |isbn=<!-- 1780934920, -->9781780934921}}</ref> |
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<ref name="hand2021">{{cite book|last=Hand |first=Wayland D. |author-link=:en:Wayland D. Hand |title=Magical Medicine: The Folkloric Component of Medicine in the Folk Belief, Custom, and Ritual of the Peoples of Europe and America|location= |publisher=University of California Press |year=2021 |url=https://www.google.com/books/edition/Magical_Medicine/CODrDwAAQBAJ?gbpv=1&dq=griffin+feather&pg=PA298 |page=298 |isbn=9780520306783<!-- 0520306783-->}}</ref> |
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<ref name="herodotus-tr-aoki">{{Cite book|和書|author=ヘロドトス |author-link=ヘロドトス |others=青木巌(訳)|title=歴史 |volume=上 |publisher=グーテンベルク21 |date=2013年11月21日 |url=https://www.google.com/books/edition/歴史_上/pVImCwAAQBAJ?&gbpv=1&bsq=グリュプス&pg=PT219 |at=第4巻第13章}}</ref> |
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<ref name="jonston1650-latin">{{cite book|last=Jonston|first=Johannes |author-link=:en:Johannes Jonston |others=engraved by [[:en:Matthäus Merian|Matthäus Merian]] |chapter=Liber II. /Titulus I. De Bisulcis terrestribus. Caput. IV De Quadrupedibus non-ruminantibus. Articulus I. De Apro. |title=Historiae naturalis de quadrupetibus. Liber 2. De Quadrupedibus bisulcis |location=Francofuerti ad Moenum|publisher=Impensis hæredum Math. Meriani |year=1650 |chapter-url=https://catalog.lindahall.org/discovery/delivery/01LINDAHALL_INST:LHL/1286247090005961#page=205 |at=p. 110f, Tab. XLII<!--205/393 pdf-->}}<!--https://catalog.lindahall.org/permalink/01LINDAHALL_INST/1qmluk6/alma99412843405961--></ref> |
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<ref name="jonston1660-nl">第一部の「四足動物自然誌」:{{cite book|last=Jonston|first=Johannes |author-link=:en:Johannes Jonston |chapter=Beschyvingh van de Natuur der Viervoetigen Dieren<!--"Quadrupeds" subpart-->/ Boeck II.: Van der Vier-voetige Dieren, met Gekloofde Voeten/ <!--題/Title-->I. Op-Schrift: Van de Kloof-voetige Land-dieren /<!--章-->IV. Hooft-st.: Van de Nietherkauwende vier voetige /<!--節/Article-->II. Lid: Van't wilde Zwijn oft Aper <!--説明文があるわけでないので場所指定のみである。--> |title=Beschryvingh van de Natuur der Vier-Voetige Diren, Vissen en Bloedlooze Water-Dieren, Vogelen, Kronkel-Dieren, Slangen en Draken |location=Amsterdam |publisher=I. I. Schipper |year=1660 |url=https://books.google.com/books?id=gWjq9i6nlbAC&pg=PA89-IA10 |page=86f, Tab. XLIX}}<!--alt: https://books.google.com/books?id=NLuU8budw_oC&pg=PA89-IA7-->。<br />第三部の「鳥類自然誌」:''Beschrijving vande Natuur der Vogelen'' / <!--題/Title[?]-->Anhangsel Vande verdighte Voghels/<!--章-->I. Hooft-stuk. Van de Griffoenen en Harpijen", [https://books.google.com/books?id=gWjq9i6nlbAC&pg=RA6-PA171 pp. 171–172], [https://books.google.com/books?id=gWjq9i6nlbAC&pg=RA6-PA172-IA1 Tab. 62]</ref> |
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<ref name="lewis">{{cite book|last=Lewis |first=Thomas P. |author-link=<!--Thomas P. Lewis--> |chapter=Singing Bone |title=The Pro/Am Book of Music and Mythology|location= |publisher=Pro/Am Music Resources |year=2021 |chapter-url=https://www.google.com/books/edition/The_Pro_Am_Book_of_Music_and_Mythology/LAM8AQAAIAAJ?gbpv=1&bsq=griffin |page=721–723|isbn=9780912483511<!-- 0912483512-->}}</ref> |
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<ref name="longfellow">{{cite book|last=Longfellow |first=Henry Wadsworth |author-link=:en:Henry Wadsworth Longfellow |title=The Writings of Henry Wadsworth Longfellow, with Bibliographical and Critical Notes |volume=10 |location=Cambridge, MA |publisher=Riverside Press |year=1886 |url=https://books.google.com/books?id=K9Q-AQAAMAAJ&pg=PA338 |pages=338, 351–352}}</ref> |
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<ref name="Mela-tr-romer 1998">{{cite book|author=Pomponius Mela |author-link=:en:Pomponius Mela |editor-last=Romer |editor-first=Frank E. |editor-link=<!--Frank E. Romer--> |title=Pomponius Mela's Description of the World |location= |publisher=University of Michigan Press |year=1998 |url=https://books.google.com/books?id=6AplSod8IDcC&q=griffins&pg=PA68 |at=Book 2.1, p. 68}}</ref> |
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<ref name="mikami&mori&sakuma1974">{{Cite book|和書|ref={{SfnRef|三上|護|佐久間|1974}}|author1=三上次男 |author1-link=三上次男 |author2=護雅夫 |author2-link=護雅夫 |author3=佐久間重男 |author3-link=佐久間重男 |title=シルクロード文化史 |publisher=講談社 |date=1974 |url=https://www.google.com/books/edition/シルクロード歴史と文化/uQBJAAAAMAAJ?hl=ja&gbpv=1&bsq=グリュプス |p=111}};<br />{{Cite book|和書|author=長澤和俊 |author-link=長澤和俊 |author-mask=2 |title=中国文明と内陸アジア |publisher= |series=角川選書 143 |date=1983b年12月 |url=https://www.google.com/books/edition/中国文明と內陸アジア/NzMzAQAAIAAJ?hl=ja&gbpv=1&bsq=グリュプス |pp=62, 65, 67}}</ref> |
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<ref name="nagasawa1983">{{Cite book|和書|author=長澤和俊 |author-link=長澤和俊 |title=シルクロード文化史 |volume=1 |publisher=白水社 |date=1983a年7月 |url=https://www.google.com/books/edition/シルクロード歴史と文化/uQBJAAAAMAAJ?hl=ja&gbpv=1&bsq=グリュプス |p=111}};<br />{{Cite book|和書|author=長澤和俊 |author-link=長澤和俊 |author-mask=2 |title=シルクロード歴史と文化 |publisher= |series=角川選書 143 |date=1983b年12月 |url=https://www.google.com/books/edition/シルクロード歴史と文化/CgFkAAAAIAAJ?hl=ja&gbpv=1&bsq=グリュプス |p=47}}</ref> |
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<ref name="noro">{{Cite book|和書|author=野呂元丈 |author-link=野呂元丈 |others= |date=1912<!--野呂元丈に白井光太郎が内閣文庫(現国立公文書館)所蔵本を書写させたもの--> |origdate=1742–1750 |chapter=阿蘭陀禽獣虫魚図和解 (ヨンストン『動物図説』) |title=阿蘭陀本草和解 ([[レンベルト・ドドエンス|ドドネウス]]『草木誌』)|publisher= |chapter-url=https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2555966/18 |quote=一鳥頭獣身一種 ゲレイヒプホウゴル}} ([https://www.ndl.go.jp/nichiran/data/R/046/046-003r.html 書誌詳細] [https://www.digital.archives.go.jp/DAS/pickup/view/detail/detailArchives/0412000000/0000001015/00 現本・上巻] (国立公文書館蔵 画像19/67)。 </ref> |
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<ref name="pliny-tr-bostock07.2&10.70">{{citation|author=Pliny the Elder |author-link=:en:Pliny |others=translated by [[:en:John Bostock (physician)|John Bostock]]; [[:en:Henry Thomas Riley|Henry Thomas Riley]] |title=The Natural History of Pliny |location= |publisher=H. G. Bohn |year=1855 |url=https://www.google.com/books/edition/The_Natural_History_of_Pliny/sDwZAAAAYAAJ?&gbpv=1&bsq=Griffins&pg=PA123 |at=VII.2 (p. 123); [https://www.google.com/books/edition/The_Natural_History_of_Pliny/sDwZAAAAYAAJ?gbpv=1&bsq=griffons&pg=PA539 X.70 (p.539)]}}<!--cf. {{URL|1=http://data.perseus.org/citations/urn:cts:latinLit:phi0978.phi001.perseus-eng1:7.2|2=Plin. Nat. 7.2}} and {{URL|1=http://data.perseus.org/citations/urn:cts:latinLit:phi0978.phi001.perseus-eng1:10.70|2=Plin. Nat. 10.70}} @Perseus Project--></ref> |
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<ref name="seager">{{cite book|last=Seager |first=Herbert West |author-link=<!--Herbert West Seager--> |title=Natural History in Shakespeare's Time: Being Extracts Illustrative of the Subject as He Knew it |location=London |publisher=Elliot Stock |year=1896 |url=https://www.google.com/books/edition/Natural_History_in_Shakespeare_s_Time/EzZaAAAAMAAJ?gbpv=1&pg=PA137 |pages=136–138}}</ref> |
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<ref name="white">{{cite book|last=White |first=T. H. |author-link=:en:T. H. White |title=The Book of Beasts: Being a Translation From a Latin Bestiary of the Twelfth Century |year=1992 |orig-year=1954 |
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|pages=22–24 |publisher=Alan Sutton |location=Stroud |isbn=978-0-7509-0206-9}}</ref> |
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<ref name="zipes&russo2009">Endnotes, {{URL|1=http://books.google.com/books?id=fIskVVNHEXoC&pg=PA869 |2=volume 2, p. 869}}, to : {{citation|editor1-last=Zipes |editor1-first=Jack |editor1-link=:en:Jack Zipes |editor2-last=Russo |editor2-first=Joseph |editor2-link=<!--Joseph Russo (literary scholar, Haverford College)-->|chapter=79. The King of Naples―Lu Re di Napuli |title=The Collected Sicilian Folk and Fairy Tales of Giuseppe Pitrè |volume=1&2 |publisher=Routledge |year=2009 |url=http://books.google.com/books?id=tRgjAQAAQBAJ&pg=PA348 |pages=348-349}}</ref> |
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== 脚注 == |
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{{Reflist}} |
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== 参考文献 == |
== 参考文献 == |
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{{refbegin}} |
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* [[ホルヘ・ルイス・ボルヘス]]『幻獣辞典』[[晶文社]]、[[1974年]]。 - 「グリュプス」として。 |
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* {{citation|和書|author=磯崎康彦 |author-link=磯崎康彦 |title=ヨ-ン・ヨンストン著『動物図譜』の舶載と翻訳 |journal=洋学: 洋学史学会研究年報 |volume=4 |date=1995 |url=https://books.google.com/books?id=BVk0AQAAIAAJ&q=ゲレイヒプホウゴル |page=81<!--45–83-->}} |
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* {{cite journal|和書|ref={{SfnRef|織田|1956}}|author=織田武雄 |author-link=織田武雄 |title=ヘロドトスとスキティア : その地理的知識に就いて |trans-title= |journal=京都大學文學部研究紀要<!--Memoirs of the Faculty of Letters, Kyoto University--> |volume=4 |date=1956-11-20 |url=https://hdl.handle.net/2433/72880 |pages=675–700 |hdl=2433/72842 |publisher=}} |
|||
* [[ホルヘ・ルイス・ボルヘス|ボルヘス、ホルヘ・ルイス]]『幻獣辞典』[[晶文社]]、1974年 {{ISBN2|4794922868}}。 - 「グリュプス」として。 |
|||
** {{cite book |last=Borges |first= Jorge Luis |authorlink=:en:Jorge Luis Borges |first2= Margarita|last2=Guerrero |chapter=El Grifo |title=Manual de zoología fantástica |location= |publisher=Fondo de Cultura Económica |year=1966 |origyear=1957 |pages=83– |url=https://books.google.com/books?id=t5bfAAAAMAAJ&q=grifo}} |
|||
** {{cite book |last= Borges |first= Jorge Luis |authorlink=:en:Jorge Luis Borges |first2= Margarita|last2=Guerrero |others=translated by [[:en:Norman Thomas di Giovanni|Norman Thomas di Giovanni]] |chapter=The Griffon |title=Book of Imaginary Beings |location= |publisher=Dutton |year=1969 |pages=115–124|chapter-url=https://books.google.com/books?id=KOQSAAAAYAAJ&q=griffon}} |
|||
* {{cite book |last=Costello |first=Peter |authorlink=:en:Peter Costello (author) |title=The Magic Zoo |location=New York |publisher=Sphere Books |date=1979 |url=https://www.google.com/books/edition/The_Magic_Zoo/L3WBAAAAMAAJ?gbpv=1&bsq=griffins}} |
|||
* {{cite journal|last1=Mayor |first1=Adrienne |author1-link=:en:Adrienne Mayor |last2=Heaney |first2=Michael |author2-link=<!--Michael Heaney (academic)--> |title=Griffins and Arimaspeans |journal=Folklore |date=1993 |volume=104 |issue=1–2 |pages=40–66 |doi=10.1080/0015587X.1993.9715853 |jstor=1260795}} |
|||
* {{cite book|ref=harv|last=Mayor |first=Adrienne |authorlink=:en:Adrienne Mayor |title=Flying Snakes and Griffin Claws |publisher=Princeton University Press |year=2022 |url=https://www.google.com/books/edition/Flying_Snakes_and_Griffin_Claws/cQpUEAAAQBAJ?gbpv=1&q=griffin&pg=PA46 |page= |isbn=<!--9780691211183、 -->0691211183}}<!--https://www.google.com/books/edition/Flying_Snakes_and_Griffin_Claws/awpUEAAAQBAJ?gbpv=1&bsq=griffin--> |
|||
* {{cite book|last=Millington |first=Ellen J. |authorlink=<!--Ellen J. Millington--> |title=Heraldry in History, Poetry, and Romance |publisher=Chapman and Hall |year=1858 |url=https://books.google.com/books?id=jPRsAAAAMAAJ |page=}} |
|||
* {{cite book|last=Nigg |first=Joe |author-link=<!--Joe Nigg (author)--> |title=The Book of Gryphons: A History of the Most Majestic of All Mythical Creatures |location=Cambridge, Massachusetts |publisher=[[Applewood Books]] |year=1982 |url= |page= |isbn=<!--0918222370, -->978-0918222374 |quotation=}} |
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* {{cite book|last=Nigg |first=Joe |author-link=<!--Joe Nigg (author)--> |author-mask=2 |title=The Book of Fabulous Beasts: A Treasury of Writings from Ancient Times to the Present |location= |publisher=Oxford University Press |year=1999 |url=https://books.google.com/books?id=qonfAAAAMAAJ&q=%22Christian+allegory%22+griffin |page=|isbn=<!--0195095618, -->9780195095616 |quotation=}} |
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* {{cite journal |last=Phillips |first=E. D. |authorlink=<!--Edward D. Phillips--> |title=The Legend of Aristeas: Fact and Fancy in Early Greek Notions of East Russia, Siberia, and Inner Asia |journal=Artibus Asiae|volume=18 |number=2 |publisher=<!--Artibus Asiae Publishers--> |date=1955 |url= |pages=161–177 |jstor=3248792}} |
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== 関連項目 == |
== 関連項目 == |
2024年7月1日 (月) 09:58時点における最新版
グリフォン(フランス語: griffon, gryphon)、グリフィン(英語: griffin)、グライフ(ドイツ語: Greif)、グリュプス(グリュープス、ラテン語: gryps,grȳpus, ギリシア語: γρύψ)は、鷲(あるいは鷹)の翼と上半身、ライオンの下半身をもつ伝説上の生物。
概要
[編集]語源は古代ギリシア語のグリュプス(γρυψ)で、「曲がった嘴」の意味。古くから多くの物語に登場しており、伝説の生物としての歴史は古い。
古くはヘーロドトスの『歴史』やアイスキュロスの悲劇(前5世紀中葉)が、アリステアース(前7世紀)による中央アジア北部の地誌を残しており、これによれば黄金を集めるグリュプスと言う禽獣と、その黄金を略奪する単眼族のアリマスポイ人との抗争があるとされる。
ただこれら古い文献ではグリュプスは嘴を持つが「犬」だとも形容されていて、あるいは翼を持たなかった動物ではなかったか、との推察がある。しかし後、大プリニウス(1世紀)において、グリフォンは有翼で長耳だと初めて明記された。ただし同時代のテュアナのアポロニオスによれば、グリフォンは真正の鳥翼は持たず、足指間の膜によって、ごく近距離の跳躍が可能なのだとする。
またグリュプスは旧インドの北部にいるとクテシアスはしており、また、ヘーロドトスも知るインドの巨大蟻が黄金を集める伝承も、グリフォンの伝説に混合していると考察されている。
アイリアノス(3世紀没)の記述における脚色以降は、概して新たな材料の追加はなく、その後の西洋のグリフォン伝説は主に古典の取捨選択に過ぎないとされるが、グリフォンがその巣にメノウや石を置くという伝説は後発的なものである。
イラン神話では、鷲獅子を意味する Shirdal という名で登場し、紀元前3千年紀初期頃のスーサ製シリンダーの封印にも見られる[1]。その後も、古代イラン芸術、古代ギリシア芸術や、その後の中世の紋章など、多くの芸術でモチーフとされている。
形態
[編集]鷲の部分は金色で、ライオンの部分はキリストの人性を表した白であるともいう。コーカサス山中に住み、鋭い鈎爪で牛や馬をまとめて数頭掴んで飛べたという。紋章学では、グリフォンは黄金を発見し守るという言い伝えから、「知識」を象徴する図像として用いられ、また、鳥の王・獣の王が合体しているため、「王家」の象徴としてももてはやされた。
グリフォンと雌馬の間に生まれた、鷹の上半身に馬の下半身をもつ生物は、ヒッポグリフ(hippogriff)と呼ばれる。
多くの描写では足は鳥のような鉤爪であるが、古い絵ではライオンの前肢の物もある。紋章学では、これにラクダのような長い首と尻尾を持つものを Opinicus と呼ぶ。
役目
[編集]グリフォンには重要な役目が幾つかある。
まずは、ゼウスやアポローン等の天上の神々の車を引くことであるが、ギリシア神話の女神ネメシスの車を引くグリフォンは、ほかのグリフォンと違い身体も翼も漆黒である。馬を目の敵にしており、馬を喰うと言われるが、これは同じ戦車を引く役目を持つ馬をライバル視しているためである[2]。そこから不可能なことを表すのに「グリフォンと馬を交配させるようなもの」という言葉が生まれたが、それをヒントに生み出されたのが前述のヒッポグリフである(このため、グリフォンが殺すのは牡馬だけであり、牝馬は殺さず犯して仔を産ませるとする伝承もある)[3]。また、神話ではオーケアノスの乗り物とされる[4]。
さらに、黄金を守る、あるいは、ディオニューソスのクラテール(酒甕)を守る役目もあるとされる[5]。自身が守る黄金を求める人間を引き裂くといわれている[6]。その地は北方のヒュペルボレイオイ人の国とアリマスポイ人の地の国にあるリーパイオス山脈とされるが、エチオピア、インドの砂漠(現在ではパキスタン近辺か)などの異説もある。
古代ギリシア・ローマの伝承
[編集]前述のようにヘーロドトスは『歴史』(前5世紀)の中で翼のある怪物としてグリフォンに触れ[7]、プリニウスは『博物誌』(紀元1世紀)の中ですでに伝説の生物として語っている[9]。
ヘーロドトス等
[編集]ヘーロドトスは、スキタイ人より以北のアルギッパイオイ(ウラル山脈の居住部族と同定)の東に住むイッセドネス人を情報源とするが、必ずしも信頼していない[10]。その(イッセドネス人)によれば彼らの奥地にはアリマスポイという隻眼の部族が、そしてさらに奥地(北の果て)には黄金を守る怪鳥グリフォン(グリュプス)が住むとされていた[7]。またアリマスポイという部族は、黄金を求めてグリュプスのところへ奪いに行くのだとも伝わっていた[15]。
ヘーロドトス『歴史』の当該箇所(中央アジア北部一帯)の情報源となったのは、前7世紀に地域を訪れたプロコンネーソスのアリステアースという人物の詩(逸失)である[11][14][13][注 3]。
インド産のグリュフォンと採掘蟻
[編集]一方、クテシアスはグリフォンをインドに棲息するとしており[12]、嘴を持った、四足の鳥類だとする[17]。
ヘーロドトスは、インドにはカシミール地方に黄金を集める蟻種がいると記しているが、これは黄金を集めるグリフォン伝説の亜流か転訛版だとする学説がみられる[23]。後のプリニウスによるグリュフォン伝もインドの採掘蟻の伝承の影響がみられ[24]、さらに後のアイリアノスもグリュフォンにインドの採掘蟻の属性を習合させたと見られている[25]。
プリニウス以降
[編集]プリニウス(『博物誌』、1世紀)は、グリフォンが有翼[26]かつ長耳を持つと[27]、文献史上初の明記をしている[28]。また、ペガサスはスキタイ産、グリュプスはアイティオピア(アフリカ)産としている[29]。
ほぼ同時代のテュアナのアポロニオスもグリフォンについて語ったとその伝記に伝えられているが[注 4]、それによればグリュフォンは獅子ほどの大きさで、鳥のようなきちんとした翼は持たず、足に"赤色の皮膜"がついていて、これが回転してごく短い飛翔を可能にするのだという[30][31][17][注 5]。
ポンポニウス・メラ (紀元43年頃)も地理誌の第2巻第6章において、いわゆるリパエイ山脈に接する地方の事項としてその地方に産する黄金を欲するグルフォンについて述べている[34]。
アイリアノス(前出、クラウディオス・アイリアノス、紀元235没)は、幾つかの脚色を加えているが、例えばグリフォンは風評によれば"背に黒い羽根を負い、胸は赤く、翼は白い"としている[36]。このアイリアノスを最後に、真新しい情報が加わることはほぼ無く、その後の著書(中世ヨーロッパのものも)は、アイリアノスまでの古典情報を取捨選択して編んだにすぎないとされる。ただ例外的につけたされた後世の伝承は、グリフォンとその「メノウの卵」に関する事案だという(後述)[37]。
中世ヨーロッパの伝承
[編集]グリフォンの巣は黄金で出来ており、卵の代わりに瑪瑙(メノウ)を産むとも考えられた[39]。瑪瑙を巣に置くという記述は、アルベルトゥス・マグヌス(1280年没)の『動物について』第23巻"グリフェ"(複数形:Grifes)の項に見られ、某著者によれば "この鳥は鷲石(echytem)あるいはメノウ(gagatem)を卵と一緒に置き"、温度の調整をして生殖力を伸ばしているのだという[40][41]。
キリスト教義
[編集]神学者のセビーリャのイシドールス(636年没)は、グリフォンについて『語源』において
と述べているが、キリスト教の寓意的解釈はしておらず、博物学的に「狩猟動物」の一種に分類しているのみである[44]。
ダンテの『神曲』(1321年頃成立)ではグリフォンが凱旋車を曳く場面があるが(「煉獄篇」第29曲)、その注釈によれば、グリフォンは飛ぶ鳥と歩む獣の合成獣であるため、グリフォンは天性(神性)と人間性を併せ持つキリストの具象であると多くのダンテ解説者からみなされている[45][46]。若干の異論として、グリフォンは実は「教会」またはローマ教皇のシンボルであるとディドロンは主張している[49][45]。
ランツベルクのヘルラートの写本(『楽しみの庭』、1185年頃成立)をみれば、二色の鳥類グリフォンが「教会」の象徴なのは明らかである、とディドロンは述べており、自説の根拠としている[45]。
爪、卵、羽
[編集]中世ヨーロッパでは、グリフォンの爪、卵、羽と称する物が貴重品として愛でられた例が数々あるが、実際には異国の動物などより得られた贋物であった[50][51]。グリフォンの卵とされるものは、ダチョウの卵や、稀な例では恐竜の卵の化石であった[52]。羽は、ラフィアヤシの繊維でこしらえた工芸品を着色したものも使われた[53]。爪は飲むための杯に加工された[50][54](また、卵も杯として使われたと紋章学の著作に見える[50][55])。
グリフォンの爪の例は幾つかあり、極大であったともされる[56]。 聖カスバートが爪や卵を得たという逸話があり、1383年付の、その聖遺物匣の内容一覧(インベントリー)を見るとグリフォンの爪2本、羽2本と記載される[57]。現存する、長さ2フィート (61 cm)程の「爪」は、アイベックスの角であると鑑定されている[注 6][54]。
伝説では、グリフォンの爪は杯に加工されてカスバートへの献辞がなされたという[58] 。上述したように、実際の話として、グリフォンの爪は多くの場合ゴブレット(酒杯、角杯)に加工された[50][54]。その一例が、伝・シャルルマーニュ所有のグリフォンの爪で、サン=ドニ大聖堂所蔵だったが、革命後に一旦失われた後、現在はフランス国立図書館に保管されている。実際は牛の一種の角とみられる。猟禽の爪足をかたどった金箔の銅製のスタンドの上にマウントされている[59][注 7]。また、シャルル大帝の旧都エクス・ラ・シャペル(現今のドイツ・アーヘン市)に在するコルネルミュンスター修道院 には、伝・コルネリウス所蔵のグリフォンの爪が存在するが、アジア水牛の角製とみられる[60]。
図像学
[編集]12世紀頃までにはグリフォンの外見についての認識が定まりつつあり、"体幹の部分はすべて獅子似、翼と面は鷲似"が定着した[61]。
前述のアルベルトゥス(13世紀)によれば、前足には鷲状の長爪、後ろ足に獅子状の重い爪をもつ。生息地の住民は短いほうの爪を飲む杯に利用するとしている[41][40]。
地誌
[編集]14世紀には、架空の人物であるジョン・マンデヴィルによって書かれたとされる『旅行記』(東方旅行記、東方諸国旅行記)によって詳細な描写がなされた(第85章)。
近世
[編集]ヨハネス・ヨンストンの『鳥獣虫魚図譜』(原書ラテン語、1650年。オランダ訳、1660年)にグリフォンの図(gryps, gryphus)が掲載される[62][63]。オランダ訳本では、第一部の「四足動物自然誌」[64]と第三部の「鳥類自然誌」[65]に、つごう2回、グリフォンの銅版画が掲載されており[66]、「鳥」の部のほうにオランダ語で"Griffoen[en]"についての説明文が載る[67]。
同書によればグリフォンは"四足で、鷲(オランダ語: Arent>arend)のような頭部、翼、くちばし、足をもち、後部はライオンのよう"とあり[67]、すなわち前足は猛禽類のようだとしている(右図参照)[注 8]。また、グリフォンは"その掘り出した黄金でつくった巣に二個の卵を産むが、鷲の卵より硬く、厚く、乾いている"、とする[67][68]。
この蘭訳本は、8代将軍吉宗に献上されており[69]、内容を野呂元丈が抄訳しているが[注 9][70]、グリフォンについても述べられている[71][72]。すなわちオランダ人の説明に拠れば[注 10]、グリフォンは「ゲレイヒプホウゴル」(Grijp-Vogel)とも称し、これは「つかむ」と「鳥」の意味の複合語であるとする[66][72]。
後世の民間伝承
[編集]グリフォンの羽は盲目を治癒するとされるが、その原典は、イタリアの民話に見られ[76]、これは「歌う骨」の話群(AT 780型)に分類される話例である[77]。スコットランドのバラッド「二人の姉妹」(チャイルド・バラッドの10番)の類話としても研究されている[78]。ただし、このイタリア民話には異本が複数あり、盲目を治癒するのは必ずしもグリフォンの羽根ではない(例:クジャクの羽根[79])。
紋章学
[編集]グリフォンは、様々な紋章や意匠に利用されている。
-
ポーランドのグリフ家の紋章
現代
[編集]現代ではエンターテインメントやフィクション作品の中に見られるようになり、『ナルニア国物語』ではナルニアの兵士として登場し、『ハリー・ポッターシリーズ』では、主人公の所属する寮であるグリフィンドールなどの名前及び紋章に使用されている[80]。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ ハルピュイア(鳥人のハーピー)のことを「ゼウスの犬」とも呼ぶので(ロドスのアポローニオス、II.289)それと区別したのだろうという考察がある[19]。
- ^ 理屈としては、アイスキュロスが同作品の別箇所で鷲のことを「有翼のゼウスの犬」(1022–1025行)と称しているので、これと対照してグリフォンは無翼であろう、と説く(Mayor)。しかしながらロドスのアポローニオスの場合は、有翼のハーピーだろうと単に「ゼウスの犬」と呼んでいるようである(前註で既述)。
- ^ ヘーロドトスは、上述したように、伝えられた北方の地理(北の果ての海等[12])にしてもすべてを鵜呑みにした訳ではなく、アリマスポイが全て単眼族だとは信じていなかった[16]。 劇作家アイスキュロスもグリフォンについて作中に記しているが(『縛られたプロメテウス』、 前460年頃。ヘーロドトスより若干以前)、やはりアリステアースを情報源としたと考えられている[17][18]。アイスキュロスもやはりアリマスポイという部族がグリフィンの集めた黄金を略奪するとしているが、アリマスポイの住む地域に「黄金ころがる」プルートンの川が流れるとしており、黄金の少なくとも一部は、そもそもその川の産出なのであろうと考察される。騎馬民族であるアリマスポイは黄金を掠めて馬で逃げ、それをグリフォンが追う展開となる[20]。 アイスキュロスは、グリフォンを鋭い嘴(くちばし)を持つが、「吠えないゼウスの犬」のようだと形容する [21][注 1]。また「犬」に譬えられる限りは、翼で飛べずに走る禽獣の位置づけであろうという推察もされている[22][注 2]。
- ^ ピロストラトス著『テュアナのアポロニオス伝』
- ^ テュアナのアポロニオスは、グリフォンを黄金採掘の蟻と比較するが、蟻をインド産ではなくアイティオピア産とする[32]。
- ^ 元は角に浮いた節のような凹凸があるはずだが、平らかに削り磨かれている。
- ^ ハールーン・アッ=ラシードはシャルルマーニュにアブル=アッバースという名の生きた像や、"彫刻された象牙の角"を送ったとされているので、グリフォンの爪(の「角杯」)ではないかとメイヤーは示唆しているが[59] 、おそらくこれは角笛の象牙の角笛であり、伝・シャルルマーニュのものはアーヘン市に展示されている。
- ^ ただし、これと矛盾するピロストラトスの説明(指の間に被膜があって、ごく限られた飛翔力がある)も掲載する。
- ^ 1000種以上の動物のなかから81種にしぼり、和名とラテン名・蘭名を併記、略説をのべている[70]。
- ^ 野呂元丈は、訳出といってもオランダの医師(ムスクルス、 Philip Pieter Musculus)に質問し、通詞を通して情報をまとめている[73][74][75]。
出典
[編集]- ^ Image of Persian griffin from The Granger Collection. www.granger.com. Retrieved on 26 May 2014.
- ^ 山北篤『幻想生物 西洋編』新紀元社133頁。
- ^ 『幻想生物 西洋編』149頁。
- ^ 松原國師『西洋古典学事典』京都大学学術出版会、2010年、524頁。
- ^ 健部伸明と怪兵隊『幻想世界の住人たち』新紀元社、235頁。
- ^ 『幻想生物 西洋編』134頁。
- ^ a b ヘロドトス『歴史』第4巻第13章[11][12][13][14]
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- ^ 織田 (1956), p. 691.
- ^ a b ヘロドトス『歴史』 上、青木巌(訳)、グーテンベルク21、2013年11月21日、第4巻第13章 。
- ^ a b c 織田 (1956), p. 692.
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長澤和俊『シルクロード歴史と文化』〈角川選書 143〉1983b年12月 。 - ^ a b c 三上次男、護雅夫、佐久間重男『シルクロード文化史』講談社、1974年 。;
長澤和俊『中国文明と内陸アジア』〈角川選書 143〉1983b年12月 。 - ^ ヘロドトス『歴史』第3巻第116章[14]
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- ^ Aeschylus, Prometheus Bound vv. 805–806, Watson編註[19]。
- ^ Phillips (1955), p. 163: "unbarking"
- ^ Mayor & Heaney (1993), p. 42; Mayor (2011), p. 23
- ^ Mayor & Heaney (1993), n9: "doublets or garbled versions". Bolton (1962), p. 81; Costello (1979), p. 75による。
- ^ Phillips (1955), p. 163.
- ^ Mayor & Heaney (1993), n9.
- ^ Plin. 7.2: "grypis, ferarum volucri genere(グリュプス、有翼な野獣の一種)"
- ^ Plin. 10.70: "gryp[h]as aurita aduncitate rostri fabulosos reor(グリュプス/グリュフス、耳持ち[長耳持ち・大耳持ち]、曲った嘴とまた伝聞される)"
- ^ Mayor & Heaney (1993), p. 42; Mayor (2011), pp. 31–32(Pliny the Elder 10.70.136; 7.2.10 に拠るとする)
- ^ Plin. 10.70
- ^ Philostr. VA 3.48: "μὴ γὰρ ἐπτιλῶσθαι σφᾶς, ὡς ὄρνισι πάτριον, ἀλλ᾽ ὑμέσι τοὺς ταρσοὺς ὑφάνθαι πυρσοῖς, ὡς εἶναι κυκλώσαντας (雑役:羽所有は、まともな鳥の様であらず、炎色の皮膜がついており、これが回転して[短距離の飛翔を可能とする])"
- ^ The Life of Apollonius of Tyana. translated by F. C. Conybeare. W. Heinemann. (1912). volume I, book III. Chapter XLVIII, p. 333
As to the gold which the griffins dig up, there are rocks which are spotted with drops of gold as with sparks, which this creature can quarry because of the strength of its beak. “For these animals do exist in India” he said, “and are held in veneration as being sacred to the Sun ; and the Indian artists, when they represent the Sun, yoke four of them abreast to draw the images ; and in size and strength they resemble lions, but having this advantage over them that they have wings, they will attack them, and they get the better of elephants and of dragons. But they have no great power of flying, not more than have birds of short flight; for they are not winged as is proper with birds, but the palms of their feet are webbed with red membranes, such that they are able to revolve them, and make a flight and fight in the air; and the tiger alone is beyond their powers of attack, because in swiftness it rivals the winds". - ^ Philostratus & Conybeare tr. (1912), vol. II, book VI.I., p. 5And the griffins of the Indians and the ants of the Ethiopians, though they are dissimilar in form, yet, from what we hear, play similar parts; for in each country they are, according to the tales of poets, the guardians of gold, and devoted to the gold reefs of the two countries.
- ^ Pomponius Mela (1998). Romer, Frank E.. ed. Pomponius Mela's Description of the World. University of Michigan Press. Book 2.1, p. 68
- ^ In Europe, constantly falling snow makes those places contiguous with the Riphaean Mountains.. so impassable that, in addition, they prevent those who deliberately travel here from seeing anything. After that comes a region of very rich soil but quite uninhabitable because griffins, a savage and tenacious breed of wild beasts, love.. the gold that is mined from deep within the earth there, and because they guard it with an amazing hostility to those who set foot there.[33]
- ^ Claudius Aelianus (1832), Aeliani de natura animalium libri xvii, 1, Impensis Friderici Frommanni, pp. 53–54
- ^ Aelian De natura animaliumIV , 27:"Gryphem, Indicum animal, audio similiter quadrupedem, ut leonem,.."[35]。英訳の引用はMayor (2011), p. 33にあり、訳出の表現は多少異なるがMayor & Heaney (1993), pp. 44–45にも抜粋的に英訳されている。
- ^ Mayor & Heaney (1993), n14: "Aelian is the last literary text dealing with the griffin considered here; after his account,.. no new information about the gryps was added, except for 'agate eggs'"
- ^ Bulfinch, Thomas (1855). The Age of Fable; Or, Stories of Gods and Heroes. Boston: Sanborn, Carter & Bazin. pp. 178–179
- ^ トマス・ブルフィンチ『ギリシア・ローマ神話 付 インド・北欧神話』岩波書店、1991年、177頁。参照:英語版原文[38]。
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第三部の「鳥類自然誌」:Beschrijving vande Natuur der Vogelen / Anhangsel Vande verdighte Voghels/I. Hooft-stuk. Van de Griffoenen en Harpijen", pp. 171–172, Tab. 62 - ^ ラテン名 Grÿphus ギリシア名 Grÿps のキャプション入り。第一部「四足動物自然誌」の図表XLIX[63]。
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- ^ a b c 第三部「鳥類自然誌」のpp. 171–172[63]。
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- ^ a b 磯崎 (1995), pp. 61.
- ^ 磯崎康彦 (1995), p. 81.
- ^ a b 野呂元丈「阿蘭陀禽獣虫魚図和解 (ヨンストン『動物図説』)」『阿蘭陀本草和解 (ドドネウス『草木誌』)』1912年(原著1742–1750) 。「一鳥頭獣身一種 ゲレイヒプホウゴル」 (書誌詳細 現本・上巻 (国立公文書館蔵 画像19/67)。
- ^ 磯崎 (1995), pp. 56, 58.
- ^ 本書の奥付に「ムスクルス」より得たと記載(書誌詳細の画像参照)。
- ^ Goodman, Grant Kohn (2013). Japan: The Dutch Experience. Bloomsbury Publishing. pp. 72–73. ISBN 9781780934921
- ^ Hand, Wayland D. (2021). Magical Medicine: The Folkloric Component of Medicine in the Folk Belief, Custom, and Ritual of the Peoples of Europe and America. University of California Press. p. 298. ISBN 9780520306783
- ^ Lewis, Thomas P. (2021). “Singing Bone”. The Pro/Am Book of Music and Mythology. Pro/Am Music Resources. p. 721–723. ISBN 9780912483511
- ^ Brewster, Paul G. (1953). The Two Sisters. FF Communications, 147. Helsinki: Academia Scientiarum Fennica. p. 55
- ^ Endnotes, volume 2, p. 869, to : Zipes, Jack; Russo, Joseph, eds. (2009), “79. The King of Naples―Lu Re di Napuli”, The Collected Sicilian Folk and Fairy Tales of Giuseppe Pitrè, 1&2 , Routledge, pp. 348-349
- ^ J・K・ローリング『幻の動物とその生息地』静山社、2001年、他
参考文献
[編集]- 磯崎康彦「ヨ-ン・ヨンストン著『動物図譜』の舶載と翻訳」『洋学: 洋学史学会研究年報』第4巻、81頁、1995年 。
- 織田武雄「ヘロドトスとスキティア : その地理的知識に就いて」『京都大學文學部研究紀要』第4巻、1956年11月20日、675–700頁、hdl:2433/72842。
- ボルヘス、ホルヘ・ルイス『幻獣辞典』晶文社、1974年 ISBN 4794922868。 - 「グリュプス」として。
- Borges, Jorge Luis; Guerrero, Margarita (1966) [1957]. “El Grifo”. Manual de zoología fantástica. Fondo de Cultura Económica. pp. 83–
- Borges, Jorge Luis; Guerrero, Margarita (1969). “The Griffon”. Book of Imaginary Beings. translated by Norman Thomas di Giovanni. Dutton. pp. 115–124
- Costello, Peter (1979). The Magic Zoo. New York: Sphere Books
- Mayor, Adrienne; Heaney, Michael (1993). “Griffins and Arimaspeans”. Folklore 104 (1–2): 40–66. doi:10.1080/0015587X.1993.9715853. JSTOR 1260795.
- Mayor, Adrienne (2022). Flying Snakes and Griffin Claws. Princeton University Press. ISBN 0691211183
- Millington, Ellen J. (1858). Heraldry in History, Poetry, and Romance. Chapman and Hall
- Nigg, Joe (1982). The Book of Gryphons: A History of the Most Majestic of All Mythical Creatures. Cambridge, Massachusetts: Applewood Books. ISBN 978-0918222374
- Phillips, E. D. (1955). “The Legend of Aristeas: Fact and Fancy in Early Greek Notions of East Russia, Siberia, and Inner Asia”. Artibus Asiae 18 (2): 161–177. JSTOR 3248792.
関連項目
[編集]- チャムローシュ - ペルシア神話に登場するアルボルズ山の山頂に住むという犬の体に鳥の頭と羽を持つ生き物。
- サーブ 39 グリペン - グリペン(Gripen)とはスウェーデン語でグリフォンの意。
- スカニア - 創業地マルメの紋章に由来する王冠をかぶったグリフィンがロゴになっている
- ボクスホール - 旗を手にしたグリフィンがロゴになっている
- Sd.Kfz.250/3 - Sd.Kfz.250シリーズの半装軌車。エルヴィン・ロンメルドイツ陸軍元帥は、車体に「GREIF(グライフ)」とペイントしていた。グライフ(Greif)とはドイツ語でグリフォンの意。
- 紀元前4世紀 - オクサスの遺宝。