王の写本
王の写本[1](おうのしゃほん、アイスランド語:Konungsbók[2]、ラテン語:Codex Regius, 王書、王室写本、欽定写本、レギウス写本とも。)は、『詩のエッダ』(Sæmundar-Eddu[2])が記録されているアイスランド語の写本(コデックスも参照)である。写本番号は「GKS 2365 4to」[3]など[4]。
概要
[編集]写本は、45枚の羊皮紙[5]でできており、1270年代に書かれたと考えられている。 ただし32枚目の後にあった[5]8枚のページが、現在はなくなってしまっている。 失われたのは『シグルドリーヴァの言葉』の終わりの部分から『シグルズの歌断片』の終わりの部分までであり、なくなった部分に書かれていたことは『ヴォルスンガ・サガ』の内容から想像できると考えられている[5]。 この写本に収録された詩の大部分が、唯一の情報源となっている。
1643年に、当時アイスランド南部の村スカールホルトで司教をしていたブリンニョウルヴル・スヴェインスソンの財産となるまで、その所在はまったくの不明であった。そして1662年、彼はデンマーク王フレデリク3世にその写本を贈った。
写本はその後、1971年4月21日までコペンハーゲンにある王立図書館で保管された。 それからレイキャビクへ運ばれ、以後はアウルトニ・マグヌッソン研究所で保管されている。そのような貴重な荷物を運ぶにあたり、飛行機での移動が十分に信頼されている時代ではなかったため、写本は儀仗兵に伴われて船で運ばれていった。
内容
[編集]- Völuspá - 『巫女の予言』
- Hávamál - 『高き者の言葉(ハーヴァマール)』
- Vafþrúðnismál - 『ヴァフスルーズニルの言葉』
- Grímnismál - 『グリームニルの言葉』
- Skírnismál - 『スキールニルの言葉』
- Hárbarðsljóð - 『ハールバルズの歌』
- Hymiskviða - 『ヒュミルの歌』
- Lokasenna - 『ロキの口論(ロカセナ)』
- Þrymskviða - 『スリュムの歌』
- Völundarkviða - 『ヴォルンドの歌』
- Alvíssmál - 『アルヴィースの言葉』
- Helgakviða Hundingsbana I - 『フンディング殺しのヘルギの歌 その一』
- Helgakviða Hjörvarðssonar - 『ヒョルヴァルズの息子ヘルギの歌』
- Helgakviða Hundingsbana II - 『フンディング殺しのヘルギの歌 その二』
- Frá dauða Sinfjötla - 『シンフィヨトリの死について』
- Grípisspá - 『グリーピルの予言』
- Reginsmál - 『レギンの言葉』
- Fáfnismál - 『ファーヴニルの言葉』
- Sigrdrífumál - 『シグルドリーヴァの言葉』
- The Great Lacuna - 欠損部分
- Brot af Sigurðarkviðu - 『シグルズの歌断片』
- Guðrúnarkviða I - 『グズルーンの歌 その一』
- Sigurðarkviða hin skamma - 『シグルズの短い歌』
- Helreið Brynhildar -『ブリュンヒルドの冥府への旅』
- Dráp Niflunga - 『ニヴルング族の殺戮』
- Guðrúnarkviða II - 『グズルーンの歌 その二』
- Guðrúnarkviða III - 『グズルーンの歌 その三』
- Oddrúnargrátr - 『オッドルーンの嘆き』
- Atlakviða - 『アトリの歌』(『グリーンランドのアトリの歌』とも)
- Atlamál - 『アトリの言葉』(『グリーンランドのアトリの詩』とも)
- Guðrúnarhvöt - 『グズルーンの扇動』
- Hamðismál - 『ハムジルの言葉』
『スノッリのエッダ』の『王の写本』
[編集]『スノッリのエッダ(散文のエッダ)』を伝える主要な写本のうちの1つ(GKS 2367 4to)もまた、『王の写本』(Konungsbók Sn-E)[2]という名前がついている。成立は14世紀前半にまで遡り、55枚のベラム皮紙で作られている。
それはまた、前述の、ブリンニョウルヴルからフレデリク3世への贈り物の中の1つであった。1985年にアイスランドに返却され、現在はアウルトニ・マグヌッソン研究所に置かれている。
脚注
[編集]- 注釈
- 出典
- ^ 菅原訳、ノルダル『巫女の予言 エッダ詩校訂本』p.9,43,115 などの表記。
- ^ a b c 『巫女の予言 エッダ詩校訂本』、9頁。
- ^ 「GKS」は「Gamle Kongelige Samling」[1](デンマーク語)の略で「王立図書館旧コレクション」を意味する。「4to」は「四つ折り版」であることを表す。
- ^ 他に、たとえばエリアス・ヴェセーン(菅原邦城訳)『北欧の言語 新版』(東海大学出版会、1988年、ISBN 978-4486002536)では「Cod. Reg. g. s. 2365」となっている。「コペンハーゲン王立図書館 (Cod. Reg.) 所蔵の旧コレクション (g. s.) 2365番」という意味とのこと。
- ^ a b c 『エッダ 古代北欧歌謡集』285頁。
参考文献
[編集]- V.G.ネッケルほか編『エッダ 古代北欧歌謡集』谷口幸男訳、新潮社、1973年、ISBN 978-4103137016。
- シーグルズル・ノルダル『巫女の予言 エッダ詩校訂本』菅原邦城訳、東海大学出版会、1993年、ISBN 978-4486012252。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 古エッダの王の写本 (GKS 2365 4to)
- Stafrænt handritasafn - アイスランドのアウルトニ・マグヌッソン研究所。写本のスキャン画像を公開。「GKS 2365 4to: Eddukvæði」を参照。
- スノッリのエッダの王の写本 (GKS 2367 4to)
- Stafrænt handritasafn - 上記同研究所。「GKS 2367 4to: Snorra-Edda」を参照。
- skaldic poetry project: GKS 2367 4° (R) - Codex Regius - 写本のスキャン画像を公開。