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青が散る

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
青が散る
作者 宮本輝
日本の旗 日本
言語 日本語
ジャンル 長編小説
発表形態 雑誌連載
初出情報
初出別冊文藝春秋
1978年夏号(145号) - 1982年夏号(161号)
出版元 文藝春秋
刊本情報
出版元 文藝春秋
出版年月日 1982年10月25日
総ページ数 445
ウィキポータル 文学 ポータル 書物
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青が散る』(あおがちる)は、宮本輝青春小説。『文藝春秋』の季刊誌『別冊文藝春秋』の1978年夏号(145号)から1982年夏号(161号)に連載。1982年に文藝春秋から単行本を刊行、1985年に文庫化された。

追手門学院大学の1期生である宮本輝が同大学を舞台に、大阪府茨木市の新設大学に1期生として入学した主人公が友人たちとテニス部を創設してテニスに打ち込み、ヒロインに恋をする姿を通じて、また彼らを取り巻く友人たちの抱える闇を通じて、青春の光と影を描いた作品[1][2]

TBSテレビ石黒賢二谷友里恵の主演によりテレビドラマ化され、1983年10月21日から1984年1月27日まで全13回にわたって放送された。

あらすじ

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大阪郊外茨木市の新設大学に入学した主人公の椎名燎平は、入学手続きの日に出会った洋菓子店の一人娘である同級生の佐野夏子に一目惚れする。その後、眼鏡の大男金子慎一に誘われてテニス部を設立し、自分たちの手でテニスコートを作る。高校時代は名選手だったものの精神病でテニスを辞めてしまった安斎克己や、女子部員の星野祐子に小学校時代から片思いしている貝谷朝海と言ったメンバーを加えてテニス部は活動を始める。夏子の父の病死、祐子の見合い相手との結婚など状況の変化もありながら、燎平は大学生活をひたすらテニスに費やす。

しかしある時、夏子は田岡幸一郎という婚約者のいる男と駆け落ちしてしまう。だが結局、田岡は夏子とは結婚せずに元の婚約者と結婚する。さらに安斎も病気が悪化して自殺する。季節が流れ、卒業試験の追試を2人で受ける燎平と夏子。帰り道、夏子は燎平に「私みたいな傷物はいや?」と訊ねるが燎平は言葉を返すことができない。そして「自分のまわりにいた者はすべて、大切な何物かを喪った」と感じながら、夏子と別れる。

登場人物

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書誌情報

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テレビドラマ版

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青が散る
ジャンル テレビドラマ
原作 宮本輝
企画 八木康夫
脚本 山元清多
演出 高畠豊
山田護
八木康夫
吉田秋生
出演者 石黒賢
二谷友里恵
オープニング 松田聖子蒼いフォトグラフ
製作
プロデューサー 柳井満
制作 TBS
放送
放送国・地域日本の旗 日本
放送期間1983年10月21日 - 1984年1月27日
放送時間金曜 20:00 - 20:54
放送枠TBS金曜8時枠の連続ドラマ
放送分54分
回数13
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東京郊外に新設された大学のテニス部に集う若者を中心に、さまざまな恋愛模様、人生観、生死を描いた青春ドラマ[3][4]TBS金曜8時枠にて1983年10月21日から1984年1月27日まで放送された。全13回。主演は石黒賢二谷友里恵

未ビデオ・DVD化作品である。

企画・制作

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物語の設定を原作の1960年代追手門学院大学大阪府茨木市)から1980年代の東京郊外の武蔵野学院大学[注 1]へと移し、ドラマ独自のキャストが登場するなど、原作とは異なった要素が多々盛り込まれている。

企画・演出を担当した八木康夫にとって本作は初めて企画した連続ドラマであり、またプロデューサーへ転身する前にディレクターとして演出を手掛けた最後の作品となった[注 2]。また、脚本を担当した山元清多にとっては、本作が初めて単独で連続ドラマの1クール全話を書き通した作品となった[5]。本作品からは石黒賢[注 3]二谷友里恵などの若手俳優がデビュー、また石黒や二谷以外にも佐藤浩市利重剛清水善三といった二世俳優もキャスティングされていることで放送開始前に話題として取り上げられた。若く経験の浅いスタッフ・キャストによって制作された本作は未熟で不器用な点も散見されるものの、それが本作らしい青春のキラキラとした初々しさ、心の揺れを生じさせている[5]

本作は本放送が始まると連続ドラマの視聴率が20%平均だった時代において10%前後の視聴率で推移、一時は5%台を記録するなど視聴率が伸び悩んだため、当初2クール(半年)・全19〜20回の放送予定であったが1クール・全13回で終了する脚本に書き換えられた[5][8]。しかし、放送終了後も再放送の要望が根強く、再放送時には本放送よりも高い視聴率を記録したという[5]

キャスト

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主なキャスト

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椎名燎平
演 - 石黒賢
家業の塗装材料店の経営が傾いたため大学受験をあきらめていたが、持ち直したため進学を許される。新設された三流の私立武蔵野学院大学に入学した。佐野夏子に想いを寄せており、「仲を取り持つ」という慎一の強引な勧誘によりテニス部に入部する。
佐野夏子
演 - 二谷友里恵
燎平の同級生。横浜の老舗洋菓子店「ドゥーブル」の社長令嬢。燎平を始めとする男子大学生の憧れの的であり、マドンナ的存在の女子学生。一見勝ち気で我儘なタイプであるが、異なる一面も持ち合わせている。恋愛に関しては奥手。
金子慎一
演 - 佐藤浩市
燎平の親友。新設校である武蔵野学院大学にテニス部を創設し、初代キャプテンに就任する。実家は薬局で、中学の時に父を亡くし母と3人の姉、3人の妹の女性7人に囲まれて育つ。
星野祐子 → 結城祐子
演 - 川上麻衣子
燎平の同級生。父は開業医。夏子とは系列の高校で同級生だった。小学生の頃からテニスをやっている経験者と知った慎一の強引な勧誘により入部する。

燎平の同級生

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和泉達雄
演 - 利重剛
映画の自主制作に燃える学生。
二宮耀子
演 - 浜尾朱美
ニュースキャスター志望の学生。和泉とはルームシェアをしている。
安斉克巳
演 - 清水善三
高校時代はテニス界のヒーローで関東ジュニアのチャンピオンだったが、高校3年の時に急性骨髄性白血病を患う[注 4]
荒井ゆかり
演 - 広田玲央名
テニス部員。二重まぶたにする整形手術に失敗し、大学に来なくなる。
藤井久美
演 - 辻靖美
テニス部員。ゆかりの友人。かなり太目の体型。
貝谷朝海
演 - 遠藤憲一
祐子とは小さい頃に同じテニス教室に通っており、大学で偶然再会する。

燎平をとりまく人々

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椎名洋介
演 - 井川比佐志
燎平の父親。塗装材料店「椎名塗料店」を営んでおり、善良で温厚な人物である。
椎名静枝
演 - 吉行和子
燎平の母親。洋介と離婚し、現在は小料理屋「静」の女将として生計を立て、静かに暮らしている。
椎名千絵
演 - 境真理子
燎平の妹。実家で父、兄と共に暮らしている。
八木助教授
演 - 斉藤洋介
武蔵野学院大学フランス文学部教授でありテニス部顧問。燎平達の新設第一期生を担任する。
端山
演 - 村田雄浩
東洋文化大学の応援団団長。大手建設会社社長の息子。
神崎
演 - 倉崎青児
東洋文化大学応援団員。夏子に一目惚れして猪突猛進し、団員が振り回される。
高末
演 - 掛田誠
東洋文化大学応援団員。
大沢勘太
演 - 諸岡義則
東洋文化大学応援団員。燎平の高校時代の同級生。
ポンク
演 - 内山俊哉
テニス部員。燎平の1年後輩。高校時代に関東ジュニアでベスト16入りした。
ガリバー(堰健一)
演 - 大塚ガリバー
通称「ガリバー」。有名大学の野球部員だったが野球選手になる夢は挫折。今はミュージシャンを目指している。
堰辰造
演 - 早崎文司
健一(ガリバー)の父親。中華料理屋「善良亭」の主人。
堰富子 - あき竹城
健一(ガリバー)の母親。夫婦で店を切り盛りしている。
佐野清
演 - 上條恒彦
夏子の父。老舗洋菓子店「ドゥーブル」の社長。ゴルフ中に心臓麻痺で急死する。
佐野夕子
演 - 高田敏江
夏子の母。夫の亡き後社長に就任し、洋菓子店の経営を取り仕切る。
ペール
演 - アンジェイ・シェドレッキー
洋菓子店「ドゥーブル」の職長。フランス人。
慎一の姉
演 - 庄司麻由里
金子光
演 - 石井富子
慎一の母。
星野守
演 - 佐原健二
祐子の父。開業医。
星野和江
演 - 柳川慶子
祐子の母。
彩子
演 - 岩本多代
祐子の伯母。祐子に結城との見合いを勧める。
結城宏
演 - 矢島健一
祐子の見合い相手。慶應義塾大学医学部卒のインターン
早瀬八太郎
演 - 渡部真二
祐子が小学校時代に通っていたテニス教室の常連。曲球の変則プレーヤー。
安斉の母
演 - 本山可久子
木田公治郎
演 - 三好圭一
東京大学法学部の学生。燎平の予備校時代の友人。司法試験合格を目指して喫茶店「白樺」で勉強している。
木塚
演 - 中野誠也
小料理屋「静」の客。静枝に結婚を申し込む。
遠藤
演 - 金子研三
ライブハウス「我楽苦多」の支配人。
恭子
演 - 萩尾みどり
ガリバーのファンの女性。
吉岡幸二郎
演 - 三沢慎吾
成城大学テニス部のコーチ。デビスカップの元候補選手。「吉岡実業」の御曹司。
朝原真佐子
演 - 山本郁子
吉岡の婚約者。
浅見カオル
演 - 黒田福美
レコード会社「ワールドレコード」のディレクター。
氏家陽介
演 - 吉沢健
端山の先輩。別荘地開発を手掛ける「氏家観光」の社長。端山に別荘地の販売会社の起業を勧める。
ラジオのDJ(声のみ)
演 - 遠藤京子

スタッフ

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放送日程

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話数 放送日 サブタイトル 演出 視聴率[9]
第1回 1983年10月21日 恋し始めたラクダたち 高畠豊 11.2%
第2回 10月28日 歌い始めたラクダたち 11.1%
第3回 11月04日 ちょっと危険なラクダたち 八木康夫 7.2%
第4回 11月11日 想いみだれるラクダたち 吉田秋生 5.5%
第5回 11月18日 明日が見えないラクダたち 山田護 8.7%
第6回 11月25日 好きと言えないラクダたち 高畠豊 10.5%
第7回 12月09日 恋をせおったラクダたち 八木康夫 8.3%
第8回 12月16日 雨つぶかぞえるラクダたち 吉田秋生 9.6%
第9回 12月23日 ふられてゆれて…ラクダたち 山田護 10.1%
第10回 1984年01月06日 春にときめくラクダたち 吉田秋生 9.2%
第11回 1月13日 恋に迷ったラクダたち 山田護 10.1%
第12回 1月20日 冬空にナミダ散らしたラクダたち 吉田秋生 9.5%
最終回 1月27日 歩きつづけるラクダたち 山田護 10.4%

関連商品

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  • TBSドラマ 青が散る シナリオ集(1995年1月30日、ひかり出版、ISBN 978-4906500123

その他

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  • 利重剛は自主映画の製作を夢見、浜尾朱美はニュースキャスターを志望するという役どころだったが、本放送後には利重は映画監督として、浜尾はニュースキャスターとして実際に活動することとなった。
  • 大塚ガリバーは放送開始前のクールで放送されていた『家族ゲーム』で主役を演じた長渕剛の付き人をしていたことから出演が決まり、ドラマを通してレコードデビューも果たした。放送終了後は表舞台から退き裏方に回り、柳葉敏郎の楽曲プロデュースを手掛ける[10]
  • 第3話と第7話で演出を担当した八木康夫は、本作の放送終了後にプロデューサーの柳井に呼び出され、以後はプロデューサー業に専念するよう伝えられた。このため、2014年時点で本作は八木がディレクターを務めた最後の作品となっている[11]
  • ウルトラマン80ゼットンの特撮カットを撮影する劇中劇シーンが第7回にある。
  • 2009年3月31日のひるおび!第1回放送でレギュラー出演する石黒のデビュー作として数シーン取り上げられた。
  • オープニング・クレジットの背景は、第一回は、室内のテーブルやピアノの上で各種の人形が動くものであったが、第二回目以降は、出演者扮するテニス部員達が、トレーニングをする実写に変わっている。
  • 武蔵野学院大学の本館の外観は、緑山スタジオ・シティのスタジオ棟が使われている。
  • 原作は、阪神間大阪神戸)が舞台であるが、東京制作のドラマのため、首都圏を舞台に変えている。たとえば、ペールが、出す洋菓子店は、原作が芦屋、ドラマでは横浜元町。また、夏子と吉岡の駆け落ち先は、原作が志摩賢島のホテル、ドラマでは逗子マリーナ。燎平は、原作では、近鉄特急で夏子の後を追うのに、ドラマでは横須賀線に乗って会いにゆく。

脚注

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注釈

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  1. ^ オンエアされた1983年当時は架空の大学であったが、2004年に学校法人武蔵野学院によって同名の武蔵野学院大学が開学した(本作との関連性はない)
  2. ^ 後にプロデューサーとして『パパはニュースキャスター』『オヤジぃ。』『恋を何年休んでますか』『はいすくーる落書』『十年愛』などの作品を手がける。
  3. ^ 知り合いのドラマ制作陣から「テニスができる新人はいないか」と相談を受けたプロテニス選手の父・石黒修に「出てみる気はあるか?」と打診され、本作へ出演。俳優デビューへと至った[6][7]
  4. ^ 原作では精神病。
  5. ^ この曲は1983年10月28日に松田聖子の15枚目のシングルとして発売された「瞳はダイアモンド」のB面扱いだったが、まもなく両A面として、ジャケットの文字部分も変更され(『蒼い〜』の文字が『瞳〜』と同等の大きさになった)、販売されるようになった。

出典

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  1. ^ 「青が散る」作品紹介” (PDF). 宮本輝 ミュージアム. 追手門学院大学. 2016年9月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年9月7日閲覧。
  2. ^ 鶴谷真 (2015年8月14日). “青春小説の系譜 宮本輝「青が散る」の残酷すぎるラスト”. 毎日新聞 経済プレミア. https://mainichi.jp/premier/business/articles/20150806/biz/00m/010/047000c 2016年9月7日閲覧。 
  3. ^ 「TV特報(2)秋の新番組総まくり」『映画情報』第48巻第11号、国際情報社、1983年11月1日、71頁、NDLJP:2343797/71 
  4. ^ 「〈折り込み〉週間番組表と番組ガイド」『財界ふくしま』第12巻第11号、行政問題研究所、1983年11月10日、91頁、NDLJP:2832618/48 
  5. ^ a b c d 山元清多「あとがき」『TBSドラマ 青が散る シナリオ集』ひかり出版、1995年1月30日、244-246頁。ISBN 978-4906500123 
  6. ^ “石黒賢「すごいおやじだった」父修さんをしのぶ”. 日刊スポーツ. (2016年11月14日). https://www.nikkansports.com/entertainment/news/1738226.html 2016年11月15日閲覧。 
  7. ^ “石黒賢、父・修さんの偉大さに涙「すごいおやじだったんだな」”. SANSPO.COM (産経デジタル). (2016年11月14日). https://www.sanspo.com/article/20161114-LUHLCIZI2VJIHAOTETHNHQIQWA/ 2016年11月15日閲覧。 
  8. ^ さとう (2000年8月23日). “■「久世塾おぼゑがき」58号 打ち切りなんてコワくない!”. 21世紀の向田邦子をつくろう。. ほぼ日刊イトイ新聞. 2016年9月7日閲覧。
  9. ^ 「テレビ視聴率季報(関東地区)」ビデオリサーチ。
  10. ^ 大塚氏本人のブログ2021年7月31日確認
  11. ^ 『テレビがくれた夢 八木康夫 その1』(2014年制作、TBSチャンネル

外部リンク

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TBS 金曜20:00枠
前番組 番組名 次番組
青が散る