スロープカー
スロープカーは、株式会社嘉穂製作所が開発・製作している跨座式・懸垂式のモノレール車両で、同社の登録商標(第5633935号)である。
現在供用されているものは全て、日本の法律上はエレベーターに分類されており(斜行エレベーターの一種)、鉄道事業法や軌道法に基づく許認可を受けた路線はない。
概要
[編集]用途
[編集]施設敷地の入口(門など)から建物の玄関口までの間に急な坂道や階段がある場合に、地形的に健常者でも歩行困難な2点間を連絡する目的で設置される。また、歩行困難な高齢者や車椅子利用者の輸送を目的としたバリアフリー対策として導入されるケースがある。一部の施設は呼び出し時間も含め、走行速度が遅く、健常者であればスロープカーに乗るより歩いた方が施設内の目的地に早く到着する場合がある。
構造
[編集]エレベーターのように、利用者のボタン操作で自動的に作動し目的地で停止するため、基本運転者は不要である。車体長さ3メートル程度で定員2 - 8名のものと、車体長さ6メートル程度で定員30名程度のものがあり、2両編成になっている施設がある。なお、防犯や観光案内のため添乗員が運転操作する施設もある。
鉄道車両としてのモノレールはコンクリートのレールの上をゴムタイヤで走るものが多いが、エレベーターとしてのスロープカーは鋼製のラックレールと車体に取り付けられた歯車の組み合わせで坂を登っていく。これにより、最大45度(1000‰)の登坂が可能である。主電動機はかご形三相誘導電動機が使用され、VVVFインバータ制御で速度制御を行う。いずれも走行機器類は安川電機製である。
車体支持部に車両床面水平自動制御装置を装備し、レールの勾配が変化しても常に車体の水平を保つように制御されている車両もある。
導入例
[編集]日本国内
[編集]- 一般的な利用が可能なもの
(赤文字は導入したスロープカーを廃止・休止した施設)。特記以外は1両単行タイプ。
- 北海道
- 留寿都村 - ルスツリゾートモノレール(3両編成)
- 仁木町 - 農村公園フルーツパークにき
- 青森県深浦町 - ウェスパ椿山(2両編成・閉館に伴い運用休止中・レール/車両は現存)
- 宮城県
- 秋田県湯沢市 - 稲庭城
- 栃木県
- 群馬県川場村 - 川場温泉 悠湯里庵
- 千葉県鎌ケ谷市 - 弥生の里
- 東京都
- 神奈川県
- 新潟県魚沼市 - 奥只見ダム「奥只見スロープカー」(2両編成)
- 富山県富山市 - 信行寺「かりがね号」
- 福井県敦賀市 - 中池見湿地(経費削減のため2020年4月より休止、レール/車両は現存)[2]
- 山梨県
- 長野県
- 岐阜県
- 静岡県
- 愛知県
- 上記スロープカー2路線は「愛・地球博記念公園」敷地内に所在。
- 京都府
- 大阪府
- 兵庫県
- 奈良県
- 山口県萩市 - 源泉の宿 萩本陣「奥萩モノレール」3路線
- 徳島県
- 鳴門市 - 鳴門市観光コンベンション(高速鳴門バスストップ)「すろっぴ~」
- 三好市 - イカワXパーク(ゾーブ用・2014年度廃止・荷物車含む2両編成・レール/車両は現存)
- 香川県直島町 - ベネッセハウスオーバル
- 愛媛県
- 福岡県
- 佐賀県
- 長崎県
- 熊本県
- 大分県
- 宮崎県
- 鹿児島県
その他、個人宅においても採用例がある。
嘉穂製作所製の懸垂式スロープカー(スカイラック)
[編集]嘉穂製作所製ケーブルカー
[編集]- 徳島県三好市 - ホテル祖谷温泉(下回りは東洋製作所製)
関係者および、競技者・ゴルフプレイヤー・該当住民に利用が限られるスロープカー
[編集]- 北海道
- 岩手県
- 宮城県大崎市 - 岩堂沢ダム(関係者用・堰体内懸垂式)
- 秋田県鹿角市 - 花輪スキー場アルパス(競技者用)
- 山形県
- 山形市 - アリオンテック蔵王シャンツェ(競技者用・2両編成)
- 尾花沢市 - 新鶴子ダム(関係者用・堰体内)
- 福島県西郷村 - グランディ那須白河ゴルフクラブ(プレイヤー用)
- 埼玉県秩父市 - 浦山ダム(関係者用・堰体内)2路線(左岸・右岸)
- 千葉県茂原市 - 真名カントリークラブ/ゲーリー・プレーヤーコース(プレイヤー用・荷物車含む2両編成)
- 神奈川県
- 横浜市保土ケ谷区 - 日本キリスト教団上星川教会(関係者用)
- 横須賀市 - 田浦梅の里(関係者2名・荷物車含む2両編成)
- 葉山町 - 葉山国際カンツリー倶楽部(プレイヤー用)
- 葉山町 - 葉山パブリックゴルフ(プレイヤー用)2路線
- 伊勢原市 - 伊勢原カントリークラブ(プレイヤー用)2路線(内1路線カート積載タイプ)、休止1、廃止1、計4路線
- 福井県南越前町 - 桝谷ダム (関係者用・堰体内)
- 長野県
- 静岡県浜松市天竜区 - 中部電力西渡発電所(荷物専用・動力車含む2両編成)
- 愛知県新城市 - 水資源機構明神無線中継所(関係者用・動力車1客車2荷物車1計4両編成)
- 三重県
- 滋賀県大津市 - 皇子山カントリークラブ(プレイヤー用)3路線(内1路線2両編成)
- 京都府南山城村 - 高山ダム(関係者用)
- 大阪府四條畷市 - 大東市水道施設課東部第五配水場(荷物用)
- 奈良県下北山村 - ワールドレコード池原(荷物用・内燃機関付電動車1座席車1荷物車1計3両編成)[注釈 5]
- 和歌山県白浜町 - 白浜マーメイドタウン(団地住人専用)
- 福岡県
- 佐賀県みやき町 - 山水カントリークラブ(プレイヤー用)2路線
- 長崎県
- 長崎市 - パサージュ琴海アイランドゴルフクラブ(プレイヤー用、カート搭載タイプ)
- 佐世保市 - 桧台団地(団地住人専用・2020年廃止)
- 大村市 - 萱瀬ダム(関係者用・堰体内懸垂式)
- 熊本県益城町 - 熊本益城カントリー倶楽部(プレイヤー用・カート搭載タイプ)
- 大分県
- 宮崎県
- 鹿児島県
- 沖縄県大宜味村 - 大保ダム(関係者用・堰体内懸垂式)
韓国
[編集]- ソウル特別市城東区 - 大峴山配水池公園モノレール(15人乗り)
- 釜山広域市
- 蔚山広域市南区 - 長生浦モノレール(9人乗り×1両単行6両稼働)
- 南楊州市 - 礼峯山観測基地(8人乗り×2両編成)
- 坡州市 - 烏頭山統一展望台(50人乗り×2両編成)
- 広州市 - 和談森(20人乗り×2両編成)
- 抱川市 - 抱川アートバレー(50人乗り×2両編成)
- 三陟市 - 幻仙窟モノレール(単線並列・40人乗り×2両編成)
- 三陟市 - 大金窟モノレール(30人乗り×3両編成)
- 洪川郡 - 加里山レーダー基地(4人乗り×2両編成)
- 平昌郡 - アルペンシアモノレール(20人乗り×2両編成)
- 旌善郡 - 古汗邑モノレール (12人乗り)
- 旌善郡 - 旌善花崗岩洞窟モノレール(30人乗り×3両編成)
- 鉄原郡 - 鉄原平和展望台(50人乗り×2両編成)
- 報恩郡 - 俗離山モノレール(20人乗り×2両編成)
- 丹陽郡 - 丹陽川駐車場(12人乗り)
- 礼山郡 - 礼唐湖モノレール(4人乗り×6両編成・2本レール式)
- 錦山郡 - 西台山レーダー基地(4人乗り×2両編成)
- 茂朱郡 - テコンドー公園(30人乗り×2両編成)
- 羅州市 - ピッカラム展望台モノレール(25人乗り)
- 求礼郡 - 生態の森(4人乗り×6両編成)
- 和順郡 - 母後山レーダー基地(5人乗り)
- 康津郡 - 駕牛島モノレール(30人乗り×2両編成)
- 海南郡 - 地の果てモノレール(20人乗り×2両編成)
- 莞島郡 - ワンドタワー(48人乗り)
- 永川市 - 普賢山モノレール(4人乗り×1両単行4両稼働)
- 鬱陵郡鬱陵島 - Teha 展望台(40人乗り×2両編成)
- 鬱陵郡鬱陵島 - 南西日没展望台(20人乗り)
- 咸陽郡 - 咸陽太鳳山スカイランド(8人乗り×1両単行13両稼働)
- 昌原市鎮海区 - 帝皇山公園(20人乗り×2両編成)
- 統営市 - 浴知島観光モノレール(8人乗り×1両単行8両稼働)
- 陜川郡 - 陜川庭園青瓦台セット(30人乗り×2両編成)
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ 公園再整備が10億円 大島亀山/モノレール新設など(宮城県 気仙沼市)(日本建設新聞、2022/11/2閲覧 宮城版)
- ^ 中池見湿地、スロープカー運行停止へ 保全基金減少で 来年4月から /福井(毎日新聞 2019/10/24閲覧 福井版)
関連項目
[編集]- 斜行エレベーター
- モノレール#産業用モノレール
- ケーブルカー - スロープカーとは違い車両に自走装置がついていない。
- ケーブルカー#インクライン - 産業用ケーブルカー。
- スカイレールサービス#スカイレール - 一部地域で安価な短距離移動手段として本項と採用を争った。